(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】残光を低減するためのアンチモン及びその他のマルチバランスカチオンを含むCsI(Tl)シンチレータ結晶、ならびにシンチレーション結晶を含む放射線検出装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/61 20060101AFI20220701BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20220701BHJP
G01T 1/202 20060101ALI20220701BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20220701BHJP
G01N 23/10 20180101ALI20220701BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20220701BHJP
【FI】
C09K11/61
G01T1/20 B
G01T1/202
C09K11/00 E
G01N23/10
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2020565792
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 US2019034020
(87)【国際公開番号】W WO2019227057
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-11-24
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン-ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】SAINT-GOBAIN CERAMICS AND PLASTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】One New Bond Street, Worcester, MA 01615, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メン、ファン
(72)【発明者】
【氏名】メンジェ、ピーター アール.
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503706(JP,A)
【文献】特開2016-130272(JP,A)
【文献】特開2012-159394(JP,A)
【文献】特開2011-191143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0093557(US,A1)
【文献】特開2017-129580(JP,A)
【文献】特開2013-092528(JP,A)
【文献】特開2012-131964(JP,A)
【文献】国際公開第2015/007229(WO,A1)
【文献】米国特許第08709155(US,B1)
【文献】国際公開第2013/027671(WO,A1)
【文献】特表2014-522440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C30B 1/00-35/00
G01T 1/20
G01T 1/202
G01N 23/10
G01N 23/046
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータ結晶であって、
ヨウ化セシウムホスト材料と、
タリウム
を含む第1のドーパントであって、前記第1のドーパントのモル濃度が10%未満である、第1のドーパントと、
アンチモン
を含む第2のドーパントと、を含み、前記第2のドーパントが、減少した残光を有するシンチレータをもたら
し、前記シンチレータ結晶中の前記第2のドーパントの濃度が0モル%超で0.01モル%以下である、シンチレータ結晶。
【請求項2】
シンチレータ結晶であって、
ヨウ化セシウムホスト材料と、
タリウム
を含む第1のドーパントであって、前記第1のドーパントのモル濃度が10%未満である、第1のドーパントと、
アンチモンを含む第2のドーパントと、を含み、前記
アンチモンが少なくとも部分的にその3+酸化状態にあり、
前記シンチレータ中の前記第2のドーパントの量は、1×10
-7モル%~
0.01モル%を含む、シンチレータ結晶。
【請求項3】
放射線検出装置であって、
筐体と、
前記筐体内のシンチレータと、を含み、前記シンチレータが、
ヨウ化セシウムホスト材料と、
タリウム
を含む第1のドーパントであって、前記第1のドーパントのモル濃度が10%未満である、第1のドーパントと、
アンチモン
を含む第2のドーパントと、を含み、前記第2のドーパントが、減少した残光を有する前記シンチレータをもたら
し、前記シンチレータ結晶中の前記第2のドーパントの濃度が0モル%超で0.01モル%以下である、放射線検出装置。
【請求項4】
前記シンチレータ結晶中の前記アンチモンの量が、1×10
-7モル%~1×10
-2モル%のアンチモンを含む、請求項1に記載のシンチレータ結晶。
【請求項5】
第3のドーパントを更に含み、
前記第3のドーパントが3価ビスマスを含む、請求項2に記載のシンチレータ結晶。
【請求項6】
第3のドーパントを更に含み、前記第2のドーパントが5価ビスマスを含み、前記第3のドーパントが5価アンチモンを含む、請求項2に記載のシンチレータ結晶。
【請求項7】
前記シンチレータ結晶が、少なくとも1×10
-7モル%のアンチモンを含む、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【請求項8】
前記シンチレータ結晶が1×10
-3モル%未満のアンチモンを含み、前記シンチレータ結晶が、X線照射中に測定された光出力強度と比較して、前記X線照射への曝露後100msで0.4%未満の光出力強度を有する、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【請求項9】
前記シンチレータ結晶が1×10
-3モル%未満のアンチモンを含み、前記シンチレータ結晶が、X線照射中に測定された光出力強度と比較して、前記X線照射への曝露後500msで0.3%未満の光出力強度を有する、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【請求項10】
前記シンチレータ結晶が、結晶マトリックス内に2つ以上の酸化状態で存在することができる1×10
-6モル%を超える共ドーパント
を含む、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【請求項11】
前記放射線検出装置が、X線照射中に1時間あたり300個を超えるバッグを検査することができる、請求項3に記載の放射線検出装置。
【請求項12】
前記放射線検出装置が、コンピュータ断層撮影照射中に1時間あたり1000個を超えるバッグを検査することができる、請求項3に記載の放射線検出装置。
【請求項13】
前記残光が少なくとも20%減少する、請求項1又は3に記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【請求項14】
前記シンチレータ結晶が、0.003モル%以下の前記第2のドーパントを含む、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンチモン及び他のマルチバランスカチオンを含むシンチレーション結晶、ならびにそのようなシンチレーション結晶を含む放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出装置は、様々な用途で使用されている。例えば、シンチレータは、医用画像や石油及びガス業界の検層、環境モニタリング、セキュリティ用途、核物理学の分析及び用途に使用できる。CsI:Tlは、放射線検出装置に使用されるシンチレーション結晶である。ただし、CsI:TIの残光の問題により、このようなデバイスの機能、速度、及び精度が制限される。CsI:Tlシンチレーション結晶のさらなる改善が望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
実施形態は、例として示されており、添付の図に限定されない。
【
図1】一実施形態による放射線検出装置の例を示す。 当業者は、図中の要素が単純化及び明瞭化のために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解している。例えば、図中の要素のいくつかの寸法は、本発明の実施形態の理解を改善するのを助けるために、他の要素に対して誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0004】
図面と組み合わせた以下の説明は、本明細書に開示される教示を理解するのを助けるために提供される。以下の説明は、本教示の具体的な実装及び実施形態に焦点を合わせるであろう。この焦点は、本教示を説明するのを助けるために提供されており、本教示の範囲又は適用性に対する限定として解釈されるべきではない。
【0005】
本明細書で使用されているように、元素の周期表内の列に対応するグループ番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics第81版(2000-2001)に見られる「新しい表記法」の規則を使用している。
【0006】
本明細書で使用される場合、「VA族元素」という用語は、元素の周期表中のBi、Sb、及びAsを意味することを意図している。
【0007】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの任意の他の変形語は、非排他的な包含を含むことを意図している。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの特徴だけに限定されず、明示的に列挙されていない、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有でない他の特徴を含み得る。さらに、明示的にそうではないことが述べられていない限り、「又は(or)」は、包含的な「又は」を指し、排他的な「又は」を意味しない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれかによって満たされる。Aは真(又は存在する)かつBは偽(又は存在しない)、Aは偽(又は存在しない)かつBは真(又は存在する)、及びAとBの両方が真(又は存在する)である。
【0008】
「1つ(a)」又は「1つ(an)」の使用は、本明細書に記載の要素及び構成要素を説明するために使用される。これは単に便宜上及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われている。この説明は、そうでないことが明らかでない限り、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形もまた複数形を含み、又はその逆も同様である。
【0009】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。材料、方法、及び例は、例示的なものにすぎず、限定的であることを意図しない。本明細書に記載されていない範囲で、特定の材料及び処理行為に関する多くの詳細は従来通りであり、シンチレーション技術、放射線検出技術内の教科書及びその他の情報源に見られ得る。
【0010】
シンチレーション結晶は、タリウム及び別の元素と共ドープされたハロゲン化セシウムを含むことができる。共ドーピングは、残光を低下させ、エネルギー分解能、光収量、別の適切なシンチレーションパラメータ、又はそれらの任意の組み合わせを改善することができる。一実施形態では、シンチレーション結晶は、CsX:Tl,Meを含むことができ、ここで、Xはハロゲンを表し、Meは、VA族元素を表す。特定の共ドーパントの選択は、変化させる特定のシンチレーションパラメータに依存することがある。本明細書で使用されるように、共ドーピングは、2つ以上の異なる元素(Tl及び1つ以上の他の元素)を含むことができ、共ドーパントは、Tl以外の1つ以上のドーパントを指す。
【0011】
特定の実施形態によれば、特にハロゲン化セシウムの組成に関して、Xは、I又はIとBrの組み合わせであり得る。XがIとBrの組み合わせである場合、Xは、少なくとも50モル%のI又は少なくとも70モル%のI又は少なくとも91モル%のIを含むことができる。別の実施形態では、XがIとBrの組み合わせである場合、Xは99モル%以下のIを含むことができる。XにおけるIのモル%は上述の任意の最小値と最大値との間の任意の値であり得ることが理解されるであろう。XにおけるIのモル%は上述の任意の最小値と最大値との間の範囲の任意の値であり得ることが更に理解されるであろう。
【0012】
特定の実施形態によれば、特にTlの組成に関して、Tlは、シンチレーション結晶CsX:Tl,Me内の濃度を含むことができる。特定の実施形態では、Tlは、少なくとも1×10-4モル%のTl、少なくとも1×10-3モル%のTl、又は少なくとも0.01モル%のTlの濃度を有することができる。別の実施形態では、Tlは、10モル%以下のTl、5モル%以下のTl、0.9モル%以下のTl、又は0.2モル%以下のTlの濃度を有する。特定の実施形態では、Tlは、1x10-4モル%~10モル%、1x10-3モル%~0.9モル%、又は0.01モル%~0.2モル%の範囲の濃度を有する。シンチレーション結晶におけるTlのモル%は上述の任意の最小値と最大値との間の任意の値であり得ることが理解されるであろう。シンチレーション結晶におけるTlのモル%は上述の任意の最小値と最大値との間の範囲内の任意の値であり得ることが更に理解されるであろう。
【0013】
特定の実施形態によれば、特にMeの組成に関して、Meは、シンチレーション結晶CsX:Tl,Me内の濃度を含むことができる。共ドーパントがVA族元素である実施形態では、シンチレーション結晶中のVA族元素のドーパント濃度は、少なくとも1x10-7モル%、少なくとも1x10-6モル%、少なくとも1x10-5モル%、又は少なくとも1x10-4モル%である。別の実施形態では、シンチレーション結晶中のVA族元素の濃度は、0.01モル%以下、0.003モル%以下、又は0.002モル%以下、又は0.001モル%以下である。特定の実施形態において、シンチレーション結晶中のVA族元素の濃度は、1x10-7モル%~0.01モル%、1x10-6モル%~0.003モル%、1x10-5モル%~0.002モル%、又は1x10-4モル%~1x10-3モル%の範囲である。シンチレーション結晶におけるMeのモル%は上述の任意の最小値と最大値との間の任意の値であり得ることが理解されるであろう。シンチレーション結晶におけるMeのモル%は上述の任意の最小値と最大値との間の範囲内の任意の値であり得ることが更に理解されるであろう。前述の全てのドーパント濃度は、結晶中のドーパント濃度に関するものである。特定の実施形態では、共ドーパントは、3価又は5価の第5A族元素の1つである。別の実施形態では、共ドーパントは、3価もしくは5価のアンチモン、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0014】
特定の実施形態によれば、結晶中のドーパントの濃度は、シンチレーション結晶が形成される溶融物中のドーパントの濃度と異なっていることも、異なっていないこともある。結晶を形成する際の融物中のTl及びVA族共ドーパントの濃度は、前述のような値のいずれかを含むことができる。
【0015】
さらに他の実施形態によれば、共ドーパントを選択する場合、異なる考慮事項が、他の元素と比較して、特定のシンチレーションパラメータを改善するのにより適している特定の元素を決定し得る。以下の説明は、一般的なガイダンスとして使用されるべきであり、特定のシンチレーションパラメータを特定の共ドーパントに限定するものとして解釈されるべきではない。
【0016】
さらに他の実施形態によれば、シンチレーション結晶の光収量は、共ドーパントを含まないシンチレーション結晶の組成と比較して、共ドーパントMeを用いて増加させることができる。一実施形態では、22°Cで、662keVのエネルギーを有するガンマ線に曝露して、共ドーパントを含むシンチレーション結晶及び共ドーパントを含まないCsI:Tl結晶の光収量を測定したとき、共ドーパントを含むシンチレーション結晶は、共ドーパントを含まないCsI:Tl結晶の光収量よりも少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%多い光収量を有する。
【0017】
さらに他の実施形態によれば、シンチレーション結晶の残光は、共ドーパントを含まないシンチレーション結晶の組成と比較して、共ドーパントMeを用いて低減させることができる。特定の実施形態において、共ドーパントを有するシンチレーション結晶は、共ドープシンチレーション結晶と共ドーパントなしのCsI:Tl結晶をシリコンフォトダイオードに結合し、X線(120 keV、タングステンターゲット)に露光した場合の、共ドーパントなしのCsI:TI結晶の残光よりも、少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%少ない、又は少なくとも60%少ない残光を有する。
【0018】
シンチレーション結晶は、Bridgman、Czochralski、Kyropoulos、縁部限定薄膜供給成長法(EFG)、Stepanov、勾配凝固などを含む様々な結晶成長技術のいずれかを使用して形成できる。原料には、ハロゲン化セシウム及びドーパントのハロゲン化物が含まれる。一実施形態では、原料は、CsI及びTlIを含むことができ、共ドーパントに応じて、原料は、SbI3、SbI5、BiI3、BiI5、AsI3などの任意の1つ以上を含むことができる。シンチレーション結晶の所望の組成を決定した後、基材(例えば、CsI)に関するドーパントの偏析係数を使用して、溶融物に使用する原料の量を決定することができる。結晶成長条件は、CsI:Tlの形成に使用される条件と同じにすることも、結晶形成プロセスを最適化するために比較的小さな変更を加えることもできる。
【0019】
前述のシンチレーション結晶はいずれも、様々な用途に使用できる。例示的な用途には、ガンマ線分光法、同位体同定、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)又はポジトロン放射断層撮影法(PET)分析、X線画像、油検層検出器、及び放射能の存在の検出が含まれる。シンチレーション結晶は他の用途に使用することができ、したがって、リストは単なる例示であり、限定するものではない。以下に、いくつかの特定の用途について説明する。
【0020】
図1は、単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)又はステップスルーX線装置などのガンマ線分析に使用することができる放射線検出装置100の実施形態を示している。
図1に示すように、本明細書に記載の実施形態によれば、放射線検出装置100は、フォトセンサ101、光インタフェース103、及びシンチレーション装置105を含み得る。フォトセンサ101、光インタフェース103、及びシンチレーション装置105が、互いに分離しているように
図1に示されているが、特定の実施形態によれば、フォトセンサ101及びシンチレーション装置105は、光インタフェース103がフォトセンサ101とシンチレーション装置105との間に配置された状態で、光インタフェース103に結合され得ることが理解されよう。さらに他の実施形態によれば、シンチレーション装置105及びフォトセンサ101は、光学ゲル又は結合剤の使用などの他の既知の結合方法を用いて、又は光学的に結合された元素の分子付着を介して直接、光インタフェース103に光学的に結合され得る。
【0021】
さらに他の実施形態によれば、フォトセンサ101は光電子増倍管(PMT)、半導体ベースの光電子増倍管又はハイブリッドフォトセンサであり得る。フォトセンサ101は、入力ウィンドウ116を介して、シンチレーション装置105によって放出された光子を受信し、受信した光子の数に基づいて電気パルスを生成することができる。フォトセンサ101は、電子モジュール130に電気的に結合されている。電気パルスは、電子モジュール130によって成形、デジタル化、分析、又はそれらの任意の組み合わせを行うことができ、フォトセンサ101で受信された光子又は他の情報のカウントを提供することができる。電子モジュール130は、アンプ、プリアンプ、弁別器、アナログ-デジタル信号変換器、光子カウンタ、パルス波形分析器もしくは弁別器、別の電子部品、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。フォトセンサ101は、金属、金属合金、他の材料、又はそれらの任意の組み合わせなどの、フォトセンサ101、電子モジュール130、又はそれらの組み合わせを保護することができる材料で作られた管又は筐体内に収容することができる。
【0022】
シンチレーション装置105は、CsX:Tl,Meの一般式によって表される前述のシンチレーション結晶のいずれか1つであり得るシンチレーション結晶107を含むことがあり、Xはハロゲンを表し、Meは第5A族元素を表す。シンチレーション結晶107は、反射体109によって実質的に囲まれている。一実施形態では、反射体109は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シンチレーション結晶107によって放出される光を反射するように適合された別の材料、又はそれらの組み合わせを含むことができる。例示的な実施形態では、反射体109は、衝撃吸収部材111によって実質的に取り囲まれ得る。シンチレーション結晶107、反射体109、及び衝撃吸収部材111は、ケーシング113内に収容することができる。
【0023】
シンチレーション装置105は、シンチレーション結晶107と、光インタフェース103、ケーシング113、衝撃吸収部材111、反射体109、又はそれらの任意の組み合わせなどの放射線検出装置100の他の要素との間の相対運動を低減するように適合された少なくとも1つの安定化機構を含み得る。安定化機構は、ばね119、エラストマー、別の適切な安定化機構、又はそれらの組み合わせを含み得る。安定化機構は、横方向の力、水平方向の力、又はそれらの組み合わせをシンチレーション結晶107に加えて、放射線検出装置100の他の1つ以上の要素に対するその位置を安定させるように適合され得る。
【0024】
図1に示すように、光インタフェース103は、フォトセンサ101とシンチレーション装置105との間で結合されるように適合され得る。光インタフェース103はまた、フォトセンサ101とシンチレーション装置105との間の光結合を容易にするように適合され得る。光インタフェース103は、シンチレーション結晶107及び入力ウィンドウ116の屈折率を整合させるために偏光されたシリコーンゴムなどのポリマーを含むことができる。他の実施形態では、光インタフェース103は、ポリマー及び追加の要素を含むゲル又はコロイドを含むことができる。
【0025】
多くの異なる態様及び実施形態が可能である。それらの態様及び実施形態のいくつかが本明細書に記載されている。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの態様及び実施形態が例示にすぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解するであろう。実施形態は、以下に列挙する項目のうちの任意の1つ以上に従うことができる。
【0026】
[実施形態1]シンチレータ結晶であって、ヨウ化セシウムホスト材料と、タリウムカチオンを含む第1のドーパントであって、前記第1のドーパントのモル濃度が10%未満である、第1のドーパントと、アンチモンカチオンを含む第2のドーパントとを含み、第2のドーパントが、減少した残光を有するシンチレータをもたらす、シンチレータ結晶。
【0027】
[実施形態2]シンチレータ結晶であって、ヨウ化セシウムホスト材料と、タリウムカチオンを含む第1のドーパントであって、前記第1のドーパントのモル濃度が10%未満である、第1のドーパントと、VA族元素を含む第2のドーパントとを含み、VA族元素が少なくとも部分的にその3+酸化状態にあり、シンチレータ中の第2のドーパントの量は、1×10-7モル%~0.1モル%を含む、シンチレータ結晶。
【0028】
[実施形態3]放射線検出装置であって、筐体と、筐体内のシンチレータとを含み、シンチレータが、ヨウ化セシウムホスト材料と、タリウムカチオンを含む第1のドーパントであって、前記第1のドーパントのモル濃度が10%未満である、第1のドーパントと、アンチモンカチオンを含む第2のドーパントとを含み、第2のドーパントが、減少した残光を有するシンチレータをもたらす、放射線検出装置。
【0029】
[実施形態4]シンチレータ結晶中のアンチモンの量が、1×10-7モル%~1×10-2モル%のアンチモンを含む、実施形態1に記載のシンチレータ結晶。
【0030】
[実施形態5]第3のドーパントを更に含み、第2のドーパントが3価アンチモンを含み、第3のドーパントが3価ビスマスを含む、実施形態2に記載のシンチレータ結晶。
【0031】
[実施形態6]第3のドーパントを更に含み、第2のドーパントが5価ビスマスを含み、第3のドーパントが5価アンチモンを含む、実施形態2に記載のシンチレータ結晶。
【0032】
[実施形態7]シンチレータ結晶が、少なくとも1×10-7モル%又は少なくとも3×10-4モル%又は少なくとも3.2×10-4モル%又は少なくとも4x10-4モル%又は少なくとも6x10-4モル%のアンチモンを含む、実施形態1、2、又は3のいずれか1つに記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【0033】
[実施形態8]シンチレータ結晶が1×10-3モル%未満のアンチモンを含み、シンチレータ結晶が、X線照射中に測定された光出力強度と比較して、X線照射への曝露後100msで0.4%未満の光出力強度を有する、実施形態1、2、又は3のいずれか1つに記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【0034】
[実施形態9]シンチレータ結晶が1×10-3モル%未満のアンチモンを含み、シンチレータ結晶が、X線照射中に測定された光出力強度と比較して、X線照射への曝露後500msで0.3%未満の光出力強度を有する、実施形態1、2、又は3のいずれか1つに記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【0035】
[実施形態10]シンチレータ結晶が、結晶マトリックス内に2つ以上の酸化状態で存在することができる1×10-6モル%を超える共ドーパントカチオンを含む、実施形態1、2、又は3のいずれか1つに記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【0036】
[実施形態11]シンチレータ結晶が、0.01モル%以下、0.003モル%以下、又は0.002モル%以下、又は0.001モル%以下の第2のドーパントを含む、実施形態1、2、又は3のいずれか1つに記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【0037】
[実施形態12]放射線検出装置が、X線照射中に1時間あたり300個を超えるバッグを検査することができる、実施形態3に記載の放射線検出装置。
【0038】
[実施形態13]放射線検出装置が、コンピュータ断層撮影照射中に1時間あたり1000個を超えるバッグを検査することができる、実施形態3に記載の放射線検出装置。
【0039】
[実施形態14]残光が少なくとも20%又は少なくとも30%又は少なくとも45%減少する、実施形態1又は3に記載のシンチレータ結晶又は放射線検出装置。
【実施例】
【0040】
本明細書に記載の概念は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定しない実施例に更に記載される。実施例は、異なる組成のシンチレーション結晶の性能を示している。この実施例のセクションに開示されている数値は、便宜上、複数の読み取り値から平均化されるか、概算されるか、又は四捨五入され得る。サンプルは、垂直ブリッジマン法結晶成長技術を使用して形成された。
【0041】
シンチレーション結晶サンプルCS1、S1、及びS2は、共ドープされたサンプルの残光をCsI:Tl標準と比較するために形成された。シンチレーション結晶サンプルの組成を表1に示す。さらに、各サンプルCS1、S1、及びS2を試験して、残光(AG)及び相対光収量を判定した。CS1、S1、及びS2には約0.10モル%のTlが含まれていた。残光測定では、サンプルをシリコンフォトダイオードに結合し、X線(120 keV、タングステンターゲット)に露光した。フォトダイオード信号は、X線遮断後100ms及び500msでサンプリングされた。X線露光中の信号強度に対するこれらの信号強度の比率は、残光(AG)として定義される。シンチレーション結晶を137Csに曝露し、光電子増倍管及びマルチチャネルアナライザを使用してスペクトルを取得することにより、室温(約22℃)で相対光収量試験を実施した。シンチレーション結晶サンプルCS1、S1、及びS2の性能試験の結果も表1にリストされている。
【0042】
【0043】
表に示されているように、Sbを共ドープしたサンプルは、全体的な光収量を維持しながら、ドープしていないサンプルと比較して残光が少なくなっている。有利には、残光の減少を示すために、上で詳細に説明したような少量の共ドーパントが必要である。シンチレーション結晶S1は、ドープされていないサンプルと比較して、100msで少なくとも58%、500msで67.5%の残光の減少を示している。シンチレーション結晶S2は、ドープされていないサンプルと比較して、100msで少なくとも46.7%、500msで50%の残光の減少を示している。シンチレーション結晶S3は、ドープされていないサンプルと比較して、100msで少なくとも37%、500msで62.5%の残光の減少を示している。シンチレーション結晶S4は、ドープされていないサンプルと比較して、100msで少なくとも35%、500msで52.5%の残光の減少を示している。シンチレーション結晶S5は、ドープされていないサンプルと比較して、100msで少なくとも29%、500msで52.5%の残光の減少を示している。
【0044】
上記の一般的な説明又は例で説明した機能の全てが必要なわけではなく、特定の機能の一部が必要でない場合があり、説明した機能に加えて1つ以上の機能を実行できることに留意されたい。さらにまた、機能が記載される順序は、必ずしも実行される順序ではない。
【0045】
明確にするために、本明細書で別々の実施形態の文脈で説明されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできる。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている様々な特徴は、別々に又は任意の副組み合わせで提供することもできる。さらに、範囲で述べられた値への言及は、その範囲内のありとあらゆる値を含む。
【0046】
利益、他の利点、及び問題に対する解決策は、特定の実施形態に関して上記で説明されている。しかしながら、利益、利点、問題の解決策、及び任意の利益、利点、解決策が発生又はより顕著になる可能性のある任意の特徴は、いずれか又は全ての特許請求の重要な、必須の、又は本質的な特徴として解釈されるべきではない。
【0047】
本明細書に記載された実施形態の明細書及び図面は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することを意図している。明細書及び例示は、本明細書に記載の構造又は方法を使用する装置及びシステムの全ての要素及び特徴の網羅的かつ包括的な説明として役立つことを意図するものではない。別個の実施形態はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよく、逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている様々な特徴もまた、別個に又は任意の副組み合わせで提供されてもよい。さらに、範囲で述べられた値への言及は、その範囲内のありとあらゆる値を含む。本明細書を読んだだけで、他の多くの実施形態が当業者には明らかであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的置換、論理的置換、又は他の変更を行うことができるように、本開示から他の実施形態を使用して導き出すことができる。したがって、本開示は限定的ではなく例示的とみなされるべきである。