(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】積層錠剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20220701BHJP
A61K 9/24 20060101ALI20220701BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220701BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K9/24
A61P1/04
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2021015174
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2019079630の分割
【原出願日】2015-04-21
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】石田 和裕
(72)【発明者】
【氏名】内藤 文仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 遼平
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0094117(KR,A)
【文献】国際公開第2012/118180(WO,A1)
【文献】特表2003-530423(JP,A)
【文献】特開2009-263305(JP,A)
【文献】特開2013-087061(JP,A)
【文献】特開2014-012660(JP,A)
【文献】特開2013-237640(JP,A)
【文献】特開2013-067667(JP,A)
【文献】社団法人 日本粉体工業技術協会,造粒ハンドブック,第1版,オーム社,1991年03月10日,p.206-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00- 1/18
A61P 29/00-29/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の層と、前記第一の層と境界面で隣接する第二の層とを備える略円柱状である積層錠剤であって、
前記第二の層における前記境界面とは反対側の面と、前記境界面とは、同じ方向に膨出する曲面であり、
前記第一の層及び前記第二の層の双方もしくはいずれか一方は、下記(B)成分である(α)成分を含有し
、
前記(α)成分を含有する層の水分含有量は2~13質量%であることを特徴とする積層錠剤。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩から選ばれる少なくとも1種。
【請求項2】
前記第二の層における前記境界面とは反対側の面は、前記境界面と同形状である請求項1に記載の積層錠剤。
【請求項3】
前記第二の層における前記境界面とは反対側の膨出面の高さは、1~2mmである請求項2に記載の積層錠剤。
【請求項4】
前記(α)成分の含有量は、前記(α)成分を含む層の総質量に対して30~80質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載の積層錠剤。
【請求項5】
平面視の直径が6~13mmであり、高さが3~10mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層錠剤。
【請求項6】
第一の層と、前記第一の層と境界面で隣接する第二の層とを備え、前記第一の層及び前記第二の層の双方もしくはいずれか一方は、下記(B)成分である(α)成分を含有し、
前記(α)成分を含有する層の水分含有量は2~13質量%であり、前記第二の層における前記境界面とは反対側の面と、前記境界面とは、同じ方向に膨出する曲面である、略円柱状の積層錠剤の製造方法であって、
前記第一の層を構成する第一の粉体を任意の圧力で圧縮する第一の圧縮工程と、
前記第一の圧縮工程を経た前記第一の粉体上に、前記第二の層を構成する第二の粉体を載せ、前記第一の圧縮工程よりも高い圧力で、前記第一の粉体と前記第二の粉体とを圧縮して、前記第一の層と前記第二の層とを形成する第二の圧縮工程とを備える、積層錠剤の製造方法。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩から選ばれる少なくとも1種。
【請求項7】
前記第二の層における前記境界面とは反対側の面は、前記境界面と同形状である請求項
6に記載の積層錠剤の製造方法。
【請求項8】
前記第二の層における前記境界面とは反対側の膨出面の高さは、1~2mmである請求項
7に記載の積層錠剤の製造方法。
【請求項9】
前記(α)成分の含有量は、前記(α)成分を含む層の総質量に対して30~80質量%である請求項
6~8のいずれか一項に記載の積層錠剤の製造方法。
【請求項10】
前記第一の圧縮工程における圧力が1~3kNであり、前記第二の圧縮工程における圧力が3kN超である請求項
6~9のいずれか一項に記載の積層錠剤の製造方法。
【請求項11】
前記第一の圧縮工程と前記第二の圧縮工程との間に中間圧縮工程を備え、
前記中間圧縮工程における圧力は、前記第一の圧縮工程における圧力よりも高く、かつ前記第二の圧縮工程における圧力よりも低い、請求項
6~10のいずれか一項に記載の積層錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の層を有する錠剤(積層錠剤)の製造方法として、いわゆる予備圧縮工程を備える方法がある。予備圧縮工程を備える製造方法は、下層を構成する粉体を任意の圧力で圧縮し(予備圧縮工程)、予備圧縮工程を経た粉体の上に上層を構成する粉体を載せ、下層を構成する粉体と上層を構成する粉体とを予備圧縮工程よりも高い圧力で圧縮して、下層と上層とを形成する(本圧縮工程)方法である。予備圧縮工程を備えることで、得られる積層錠剤は、上層と下層との境界が明瞭になる。加えて、予備圧縮工程を備えることで、得られる積層錠剤の密度を高めて、積層錠剤の小型化を図れる。さらに、予備圧縮工程を備えることで、得られる積層錠剤における各層の成分同士の接触面積が小さくなり、各層の成分変化を抑制できる。
【0003】
予備圧縮工程を備える製造方法で製造された積層錠剤は、上層と下層との界面で剥離しやすいという問題がある。
こうした問題に対して、表面に凹状の刻印を設けた積層錠剤が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、隣接する層同士の剥離(層間剥離)の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、凹状の刻印に対応する形状の凸状部を有する杵が用いられるため、上層を構成する粉体が杵に付着しやすくなり、刻印が不明瞭になりやすい。また、特許文献1の発明は、保存中に刻印部分が削れやすく、表面にコーティング層を設けた際に刻印が不明瞭になりやすい。加えて、特許文献1の発明は、表面の刻印を必須とするため、外観上の制約を生じる。
そこで、本発明は、予備圧縮工程を備える製造方法で製造された積層錠剤において、層間剥離をより生じにくい積層錠剤を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、隣接する層の少なくとも一方に、特定の成分を配合することで、層間剥離を良好に抑制できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の積層錠剤は、第一の層と、前記第一の層と境界面で隣接する第二の層とを備える略円柱状である積層錠剤であって、前記第一の層及び前記第二の層の双方もしくはいずれか一方は、下記(A)成分及び下記(B)成分から選ばれる少なくとも1種の(α)成分を含有することを特徴とする。
(A)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン及びスクラルファートから選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩から選ばれる少なくとも1種。
前記第二の層における前記境界面とは反対側の面は、前記境界面と同形状であることが好ましく、前記第二の層における前記境界面とは反対側の面と、前記境界面とは、同じ方向に膨出する曲面であることが好ましく、平面視の直径が6~13mmであることが好ましく、高さが3~10mmであることが好ましく、前記(α)成分を含有する層の水分含有量は2~13質量%であることが好ましい。
【0008】
本発明の積層錠剤の製造方法は、第一の層と、前記第一の層と隣接する第二の層とを備え、前記第一の層及び前記第二の層の双方もしくはいずれか一方は、下記(A)成分及び下記(B)成分から選ばれる少なくとも1種の(α)成分を含有する積層錠剤の製造方法であって、前記第一の層を構成する第一の粉体を任意の圧力で圧縮する第一の圧縮工程と、前記第一の圧縮工程を経た前記第一の粉体上に、前記第二の層を構成する第二の粉体を載せ、前記第一の圧縮工程よりも高い圧力で、前記第一の粉体と前記第二の粉体とを圧縮して、前記第一の層と前記第二の層とを形成する第二の圧縮工程とを備えることを特徴とする。
(A)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン及びスクラルファートから選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩から選ばれる少なくとも1種。
前記第一の圧縮工程と前記第二の圧縮工程との間に中間圧縮工程を備えることが好ましく、前記中間圧縮工程における圧力が1~4kNであることが好ましく、前記第一の圧縮工程における圧力が1~3kNであり、第二の圧縮工程における圧力が3kN超であることが好ましい。
【0009】
本発明の他の態様の積層錠剤は、第一の層と、前記第一の層と隣接する第二の層とを備え、前記第一の層を構成する第一の粉体が任意の圧力で圧縮され、次いで任意の圧力で圧縮された第一の粉体上に、前記第二の層を構成する第二の粉体が載せられ、前記第一の粉体に対する圧力よりも高い圧力で、前記第一の粉体と前記第二の粉体とが圧縮されて、前記第一の層と前記第二の層とが形成された積層錠剤であって、前記第一の層及び前記第二の層の双方もしくはいずれか一方は、下記(A)成分及び下記(B)成分から選ばれる少なくとも1種の(α)成分を含有することを特徴とする。
(A)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン及びスクラルファートから選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩から選ばれる少なくとも1種。
前記第一の層は前記(α)成分を含有し、前記第一の層中の前記(α)成分の含有量は10~80質量%であることが好ましく、前記第一の層の水分含有量は2~13質量%であることが好ましい。
前記第二の層は前記(α)成分を含有し、前記第二の層中の前記(α)成分の含有量は10~80質量%であることが好ましく、前記第二の層の水分含有量は2~13質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層錠剤は、層間剥離をより生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)本発明の一実施形態にかかる積層錠剤の側面図である。(b)
図1(a)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(積層錠剤)
本発明の積層錠剤は、第一の層と、第一の層と隣接する第二の層とを備える。
本発明の一実施形態の積層錠剤について、
図1を参照して説明する。
【0013】
図1の積層錠剤1は、第一の層10と第二の層20とを備える。
第一の層10と第二の層20とは境界面32で接している。即ち、第二の層20は、第一の層10に隣接している。
積層錠剤1は、略円柱状である。第二の層20における境界面32とは反対側の面(天面)22は、周縁から中央に向かうに従い上方に膨出する曲面とされている。第一の層10における境界面32とは反対側の面(底面)12は、周縁から中央に向かうに従い下方に膨出する曲面とされている。積層錠剤1は、いわゆる二段R錠である。
図1(b)に示すように、境界面32は、天面22と同形状とされている。積層錠剤1は、後述する製造方法において、第一の層10を構成する第一の粉体が杵で押圧され(第一の圧縮工程)、その後、第一の粉体に第二の層20を構成する第二の粉体が載せられ、これらが第一の圧縮工程と同じ形状の杵で押圧される。このため、境界面32が天面22と同形状となる。
図1(a)に示すように、側面視において第一の層10と第二の層20との境目には、境界線30が形成されている。
【0014】
積層錠剤1の大きさは、特に限定されない。積層錠剤1の直径Rは、例えば、6~13mmが好ましく、7~10mmがより好ましく、7~9mmがさらに好ましい。
積層錠剤1の高さHは、例えば、3~10mmが好ましく、3~7mmがより好ましい。
天面22の膨出の程度(キャップ高さh2)は、特に限定されず、例えば、1~2mmが好ましい。キャップ高さh2が上記範囲内であれば、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。底面12の膨出の程度(キャップ高さh1)は、キャップ高さh2と同様である。キャップ高さh1とキャップ高さh2とは、同じでもよいし、異なってもよい。
積層錠剤1の質量は、特に限定されず、例えば、150~550mgが好ましい。
【0015】
積層錠剤1は、下記(A)成分及び下記(B)成分から選ばれる少なくとも1種の(α)成分を含有する。
(A)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン及びスクラルファートから選ばれる少なくとも1種。
(B)成分:ロキソプロフェン及びその塩から選ばれる少なくとも1種。
【0016】
本実施形態において、(α)成分は、第一の層10及び第二の層20の双方もしくはいずれか一方に含有されればよい。(α)成分が第一の層10及び第二の層20の双方もしくはいずれか一方に含有されていることで、第一の層10と第二の層20とが境界面32で剥離しにくい(層間剥離が生じにくい)。
【0017】
(A)成分は、乾燥水酸化アルミニウムゲル、アルミニウムグリシネート、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン及びスクラルファートから選ばれる少なくとも1種である。中でも、(A)成分としては、胃障害を抑制し、層間剥離をより良好に抑制できる観点から、乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウムが好ましい。
(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
(A)成分は、第一の層10のみに含有されていてもよいし、第二の層20のみに含有されていてもよいし、第一の層10及び第二の層20の双方に含有されていてもよい。
【0019】
(B)成分は、ロキソプロフェン及びその塩から選ばれる少なくとも1種である。ロキソプロフェンの塩としては、薬学上許容される塩であればよく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
(B)成分は、水和物でも無水和物でもよい。(B)成分の水和物としては、例えば、ロキソプロフェンナトリウム二水和物が挙げられる。ロキソプロフェンナトリウム二水和物の原末の水分含有量は、11~13質量%である。このため、錠剤強度の向上や層間剥離の抑制に有効である。
(B)成分としては、ロキソプロフェンの塩が好ましく、ロキソプロフェンナトリウムがより好ましい。
(B)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0020】
(B)成分は、第一の層10のみに含有されていてもよいし、第二の層20のみに含有されていてもよいし、第一の層10及び第二の層20の双方に含有されていてもよい。
【0021】
(A)成分と(B)成分とは、共に第一の層10に含有されてもよいし、共に第二の層20に含有されてもよいし、各々が別の層に含有されてもよい。中でも、(A)成分と(B)成分とは別の層に含有されていることが好ましい。(A)成分と(B)成分とが各々別の層に含有されていることで、(A)成分と(B)成分とが接触することによる生じる変色や配合変化を抑制でき、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。
【0022】
第一の層10が(α)成分を含有する場合、第一の層10中の(α)成分の含有量は、10~80質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、30~80質量%がさらに好ましく、45~80質量%が特に好ましい。(α)成分の含有量が上記下限値以上であれば、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。(α)成分の含有量が上記上限値以下であれば、製造時において、第一の層10を構成する粉体(第一の粉体)が成形機に付着するのをより良好に抑制できる。
【0023】
第二の層20が(α)成分を含有する場合、第二の層20中の(α)成分の含有量は、上述の第一の層10中の(α)成分の含有量と同様である。
【0024】
第一の層10及び第二の層20が(α)成分を含有する場合、各々の層中の(A)成分の含有量は、上述の第一の層10中の(α)成分の含有量と同様である。この場合、第一の層10中の(α)成分の含有量と、第二の層20中の(α)成分の含有量とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0025】
(α)成分は、第一の層10又は第二の層20に含有されていればよい。ただし、打錠成形の際に、上層(第二の層)を構成する粉体が杵に付着して打錠障害を生じるのを抑制する観点から、第一の層10が(A)成分を含有し、かつ(B)成分を含有せず、第二の層20が(B)成分を含有し、かつ(A)成分を含有しないことが好ましい。(A)成分と(B)成分とが異なる層に含有されることで、(A)成分と(B)成分との接触による配合変化や変色を抑制できる。加えて、下層である第一の層10が(A)成分を含有することで、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。
【0026】
第一の層10が(α)成分を含有する場合、第一の層10の水分含有量は、特に限定されないが、例えば、2~13質量%が好ましい。
第一の層10が(A)成分を含有し(B)成分を含有しない場合、第一の層10の水分含有量は、5~13質量%が好ましく、6.5~12質量%がより好ましく、7~10質量%がさらに好ましい。
第一の層10が(B)成分を含有し(A)成分を含有しない場合、第一の層10の水分含有量は、2~12質量%が好ましく、4~10質量%がより好ましく、6~10質量%がさらに好ましい。
水分含有量が上記下限値以上であれば、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。水分含有量が上記上限値以下であれば、境界面32における変色を良好に抑制できる。
水分含有量は、電子水分計(MOISTURE BALANCE MOC-120H、島津製作所製)で、120℃、10分間の加熱をした時の乾燥減量から算出される値である。
【0027】
第二の層20が(α)成分を含有する場合、第二の層20の水分含有量は、第一の層10の水分含有量と同様である。
【0028】
第一の層10と第二の層20とが(α)成分を含有する場合、第一の層10の水分含有量と第二の層20の水分含有量とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0029】
積層錠剤1は、(α)成分以外の任意成分を含有してもよい。任意成分は、(α)成分を含有する層に含有されてもよいし、(α)成分を含有しない層に含有されてもよい。
【0030】
任意成分としては、例えば、(B)成分以外の生理活性物質(任意薬物);結合剤、賦形剤、崩壊剤、香料、色素、滑沢剤、甘味剤、酸味料等の添加剤;等が挙げられる。
任意薬物としては、(B)成分以外の解熱鎮痛成分(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、アセトアミノフェン、エテンザミド、スルピリン等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl-メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体ならびにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体ならびにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体ならびにそれらの塩類等)等が挙げられる。これらの任意薬物は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0031】
結合剤としては、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。
賦形剤としては、結晶セルロース、乳糖(乳糖水和物、乳糖造粒物を含む)、コーンスターチ、粉糖、マンニトール、L-システイン等が挙げられる。
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、部分α化デンプン等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
酸味料としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等が挙げられる。
色素としては、三二酸化鉄等が挙げられる。
【0032】
上述の添加剤の中でも、(B)成分と併有される任意成分としては、乳糖水和物、乳糖造粒物、マンニトール、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、三二酸化鉄、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、乳糖水和物、乳糖造粒物、低置換ドヒドロキシプロピルセルロース、三二酸化鉄がより好ましく、乳糖水和物又は乳糖造粒物と、三二酸化鉄及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの混合物と、の組み合わせがさらに好ましい。
【0033】
上述の添加剤の中でも、(A)成分と併有される任意成分としては、乳糖水和物、乳糖造粒物、マンニトール、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、乳糖水和物、乳糖造粒物、低置換ドヒドロキシプロピルセルロースがより好ましく、乳糖水和物又は乳糖造粒物と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとの組み合わせがさらに好ましい。
【0034】
(積層錠剤の製造方法)
本発明の積層錠剤の製造方法は、打錠成形法による製造方法であり、第一の圧縮工程と第二の圧縮工程とを備える。
【0035】
本製造方法の一例を説明する。
本例の製造方法は、杵と臼とを備える打錠機を用い、第一の層10を構成する第一の粉体と、第二の層20を構成する第二の粉体とを打錠する。
本例において、第一の粉体及び第二の粉体の双方又はいずれか一方は、(α)成分を含有する。
【0036】
本例の製造方法における第一の圧縮工程は、臼内に第一の粉体を入れ、この臼内に杵を挿入し、臼内の第一の粉体を任意の圧力で圧縮する。本実施形態の第一の圧縮工程は、いわゆる予備圧縮工程である。
【0037】
第一の粉体としては、例えば、(α)成分を含有する粉体が挙げられる。第一の粉体は、下層である第一の層10を構成するため、(A)成分を含有し(B)成分を含有しないものが好ましい。このような第一の粉体を用いることで、臼内への第一の粉体の付着を抑制できる。
第一の粉体が(α)成分を含有する場合、第一の粉体の水分含有量は、例えば、2~13質量%が好ましい。
第一の粉体が(A)成分を含有し(B)成分を含有しない場合、第一の粉体の水分含有量は、5~13質量%が好ましく、6.5~12質量%がより好ましく、7~10質量%がさらに好ましい。
第一の粉体が(B)成分を含有し(A)成分を含有しない場合、第一の粉体の水分含有量は、2~12質量%が好ましく、4~10質量%がより好ましく、6~10質量%がさらに好ましい。
水分含有量が上記下限値以上であれば、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。水分含有量が上記上限値以下であれば、境界面32における変色を良好に抑制できる。
【0038】
第一の圧縮工程における圧力(第一の圧縮圧力)は、第一の粉体の組成や、積層錠剤の大きさ等を勘案して適宜決定される。例えば、直径Rが8~9mm、高さHが4~8mmの積層錠剤を製造する場合、第一の圧縮圧力は、1~3kN程度とされる。第一の圧縮圧力が上記下限値以上であれば、第一の粉体が適度な強度の塊を形成するため、第二の圧縮工程で第一の層10及び第二の層20を容易かつ美麗に形成できる。第一の圧縮圧力が上記上限値以下であれば、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。
【0039】
本例の製造方法における第二の圧縮工程は、第一の圧縮工程の後、臼内に第二の粉体を入れ、臼内の第一の粉体と第二の粉体とを圧縮して、第一の層10と第二の層20とを形成する。即ち、本実施形態の第二の圧縮工程は、いわゆる本圧縮工程である。
【0040】
第二の粉体としては、例えば、(α)成分を含有する粉体が挙げられる。第二の粉体は、上層である第二の層20を構成するため、(B)成分を含有し(A)成分を含有しないものが好ましい。このような第二の粉体を用いることで、臼や杵への第一及び第二の粉体の付着を抑制しつつ、第一の層10と第二の層20との密着性をより高められる。
第二の粉体が(α)成分を含有する場合、第二の粉体の水分含有量は、第一の粉体の水分含有量と同様である。
第一の粉体と第二の粉体とが(α)成分を含有する場合、第一の粉体の水分含有量と第二の粉体の水分含有量とは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0041】
第二の圧縮工程における圧力(第二の圧縮圧力)は、第一の圧縮圧力よりも高ければよく、第二の粉体の組成や、積層錠剤の大きさ等を勘案して適宜決定される。例えば、直径Rが8~9mm、高さHが4~8mmの積層錠剤を製造する場合、第二の圧縮圧力は、例えば、3kN超が好ましく、5~15kNがより好ましい。第二の圧縮圧力が上記下限値以上であれば、第一の層10と第二の層20との層間剥離をより良好に抑制できる。第二の圧縮圧力が上記上限値以下であれば、適度な硬度の積層錠剤1を製造でき、かつ製造中における積層錠剤1の破損を防止できる。
【0042】
第一の圧縮工程と第二の圧縮工程との間に、中間圧縮工程を設けてもよい。中間圧縮工程は、第一の粉体の上に第二の粉体を載せ、第一の圧縮圧力より高く、第二の圧縮圧力より低い圧力で圧縮する工程である。中間圧縮工程を設けることで、第一の層10と第二の層20とを異なる色調とする場合に、境界線30が鮮明になって、外観が美麗になる。また、配合禁忌の成分を第一の層10と第二の層20とに分けて配合する場合に、両層の接触面積が減少して、配合禁忌の成分の安定性が高まる。
中間圧縮工程における圧力は、例えば、1~4kNとされる。
【0043】
積層錠剤1が、第一の圧縮工程を備える製造方法で製造されたか否かは、例えば、以下の曝露試験により特定できる。錠剤を50℃、75%RHの環境下で3日間曝露して、第一の層10又は第二の層20を変色させる。曝露された錠剤の境界線を観察する。境界線が真っ直ぐなものは、第一の圧縮工程を備える製造方法で製造されたものである。境界線が歪んでいるものは、第一の圧縮工程を備えない製造方法で製造されたものである。
また、あるいは、錠剤を硬質面に落下させ、第一の層と第二の層とを剥離させ、第一の層と第二の層との境界面を観察することで、第一の圧縮工程を有する製造方法で製造されたか否かを判断できる。境界面が第二の層の天面と同じ形状のものは、第一の圧縮工程を備える製造方法で製造されたものである。境界面が第二の層の天面と異なる形状のものは、第一の圧縮工程を備えない製造方法で製造されたものである。
【0044】
第一の圧縮工程と第二の圧縮工程とを経て、第一の層10と第二の層20とが形成された積層錠剤1は、必要に応じて、コーティング処理が施されてもよい。
コーティング処理に用いられるコーティング剤としては、積層錠剤1の崩壊性を著しく損なわないものであればよく、例えば、水溶性高分子化合物、可塑剤等が挙げられる。
コーティング剤としては、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖水和物、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。
可塑剤としては、クエン酸トリエチル、トリアセチン等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格(薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
これらのコーティング剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0045】
上述の積層錠剤は、隣接する第一の層及び第二の層の双方もしくはいずれか一方に、(α)成分を含有するため、予備圧縮工程を備える製造方法で製造された積層錠剤において、層間剥離をより生じにくい。
【0046】
本発明の積層錠剤は、(A)成分及び(B)成分を含有し、第一の層及び第二の層の双方もしくはいずれか一方が(A)成分及び(B)成分から選ばれる少なくとも1種の(α)成分を含有すれば、上述の実施形態に限定されない。
【0047】
上述の実施形態では、積層錠剤が平面視円形の二段R錠であるが、本発明はこれに限定されず、積層錠剤が、円形スミ角錠、円形スミ丸錠等でもよい。円形スミ角錠は、円柱の両端面の周縁が直線で面取り加工された形状の錠剤である。円形スミ丸錠は、円柱の両端面の周辺がR面で面取り加工された形状の錠剤である。
また、例えば、積層錠剤は、平面視円形に限定されず、平面視多角形でもよい。
【0048】
上述の実施形態では、積層錠剤が第一の層と第二の層との二層構造とされているが、本発明は、隣接する第一の層と第二の層とを備えればこれに限定されない。例えば、第一の層における第二の層の反対側に、他の層が形成されていてもよいし、第二の層における第一の層の反対側に、他の層が形成されていてもよい。
【0049】
上述の実施形態では、境界面の断面形状と天面の断面形状とが同じ形状とされているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第一の圧縮工程に用いられる杵の形状と第二の圧縮工程に用いられる杵の形状が異なる場合には、境界面の断面形状と天面との断面形状とが異なる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0051】
(使用原料)
<(A)成分>
・乾燥水酸化アルミニウムゲル(協和化学工業株式会社製)。
・酸化マグネシウム(富田製薬株式会社製)。
・炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製)。
・合成ヒドロタルサイト(協和化学工業株式会社製)。
・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社製)。
・アルミニウムグリシネート(協和化学工業株式会社製)。
・スクラルファート(富士化学工業株式会社製)。
・グリシン(関東化学株式会社製)。
<(B)成分>
・ロキソプロフェンナトリウム二水和物(大和薬品工業株式会社製)。
<任意成分>
・アセトアミノフェン(岩城製薬株式会社製)。
・アリルイソプロピルアセチル尿素(金剛化学株式会社製)。
・無水カフェイン(白鳥製薬株式会社製)。
・イブプロフェン(BASF社製)。
・乳糖水和物(DFE Pharma社製)。
・乳糖造粒物(フロイント産業株式会社製)。
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC、信越化学工業株式会社製)。
・ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)。
【0052】
(評価方法)
<打錠直後の層間剥離>
摩損度試験機(富山産業株式会社製)を用いて、各例の打錠直後の錠剤20錠を25rpmで10分間回転させた。回転終了後に錠剤を観察し、層間剥離を生じた錠剤の数を計数した。層間剥離を生じた錠剤の個数を下記評価基準に分類して評価した。評価結果が3点以上のものを合格と判定した。
【0053】
≪評価基準≫
6点:層間剥離を生じた錠剤がない。
5点:層間剥離を生じた錠剤が1~2錠。
4点:層間剥離を生じた錠剤が3~6錠。
3点:層間剥離を生じた錠剤が7~10錠。
2点:層間剥離を生じた錠剤が11~15錠。
1点:層間剥離を生じた錠剤が16錠以上。
【0054】
<保存後の層間剥離>
各例の錠剤25にPTP(Press Through Package)包装(個包装)を施した。PTP包装が施された錠剤を40℃、75%RHで1週間保存した。1週間保存後の錠剤を用いた以外は、「≪打錠直後の層間剥離≫」と同様にして、層間剥離を評価した。
【0055】
(実施例1~31、比較例1~7)
表1~8の組成に従い、第一の層を構成する粉体(第一の粉体)と第二の層を構成する粉体(第二の粉体)を調整した。第一の粉体と第二の粉体とを下記打錠条件で打錠して、各例の錠剤を得た。得られた錠剤について、打錠直後の層間剥離及び保存後の層間剥離を評価し、その結果を表中に示す。
なお、各例の錠剤における(α)成分を含有する層の水分含有量は、2.5~12質量%であった。
【0056】
(打錠条件)
・打錠機:ロータリー式打錠機 リブラ3L(株式会社菊水製作所製)。
・盤回転速度:20rpm。
・臼杵:φ8.5mm(二段R)×12本立て、刻印無し(キャップ高さh1及びh2=0.1mm、R1(側面と天面との境の曲率半径)=10、R2(天面の曲率半径)=3.4)。
・第一の圧縮圧力:1kN(約10MPa、約100kg/cm2)。
・中間圧縮工程の圧縮圧力:2kN(約20MPa、約200kg/cm2)。
・第二の圧縮圧力:10kN(約100MPa、約1000kg/cm2)。
【0057】
(実施例32~40)
表9の組成に従い、第一の層を構成する各成分を混合し、得られた混合粉体を表中の「水分含有量の調整方法」によって水分含有量を調整して、「第一の粉体の質量(質量部)」の第一の粉体を得た。
表9の組成に従い、第二の層を構成する各成分を混合し、得られた混合粉体を表中の「水分含有量の調整方法」によって水分含有量を調整して、「第二の粉体の質量(質量部)」の第二の粉体を得た。
得られた第一の粉体及び第二の粉体を用い、実施例1と同様にして、各例の錠剤を得た。得られた錠剤について、打錠直後の層間剥離及び保存後の層間剥離を評価し、その結果を表中に示す。
なお、水分含有量の調整方法は、以下の通りである。
・乾燥:乾燥器内(60℃)の棚に混合粉体を載せ任意の時間放置し、表9中の「第一の粉体の質量(質量部)」又は「第二の粉体の質量(質量部)」となるように混合物を乾燥した。
・加湿:恒温器内(40℃、75%RH)に混合粉体を入れ、任意の時間放置し、表9中の「第一の粉体の質量(質量部)」又は「第二の粉体の質量(質量部)」となるように混合物に加湿した。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
表1~2に示すように、第一の層が(A)成分を含有し、第二の層が(B)成分を含有する実施例1~11は、打錠直後の層間剥離の評価が4~6点、保存後の層間剥離の評価が3~6点であった。特に、アルミニウムを含む(A)成分を用いた場合い、層間剥離の評価が良好であった。
表2に示すように、第一の層が(A)成分を含有する実施例12、13は、打錠直後の層間剥離の評価が4点、保存後の層間剥離の評価が3~4点であった。
表3に示すように、第二の層が(B)成分を含有する実施例14~16は、打錠直後の層間剥離の評価が3~4点、保存後の層間剥離の評価が3点であった。
表4~5に示すように、第一の層及び第二の層が、(A)成分及び(B)成分を含有しない比較例1~7は、打錠直後の層間剥離の評価が1~2点、保存後の層間剥離の評価が1~2点であった。
【0068】
表6に示すように、第二の層中の(B)成分の含有量が多いほど、層間剥離を生じにくかった。
【0069】
表7に示すように、第一の層中の(A)成分の含有量が多いほど、層間剥離を生じにくかった。
【0070】
表8に示すように、実施例29~31は、実施例1~3における第一の層と第二の層とが逆転したものである。即ち、実施例29~31は、第一の層が(B)成分を含有し、第二の層が(A)成分を含有するものである。
実施例29~31は、打錠直後の層間剥離の評価が5~6点、保存後の層間剥離の評価が4~6点であり、対応する実施例1~3と同様の結果であった。実施例29~31の中でも、アルミニウムを含む(A)成分を配合した実施例29は、層間剥離の評価が良好であった。
【0071】
表9に示すように、(α)成分を含有する層の水分含有量が多いほど、層間剥離を生じにくかった。ただし、第一の層中の水分含有量が12質量%超である実施例32は、保存後において、第一の層と第二の層との境界に変色を生じていた。
【符号の説明】
【0072】
1 積層錠剤、10 第一の層、12 底面、20 第二の層、22 天面、30 境界線、32 境界面