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  • 特許-シリカエアロゲルの調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】シリカエアロゲルの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
C01B33/16
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021032596
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2021138607
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】109106708
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521089591
【氏名又は名称】趙 國昇
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】謝 達華
(72)【発明者】
【氏名】陳 怡▲ウン▼
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091943(JP,A)
【文献】特開2002-167212(JP,A)
【文献】特開2009-046365(JP,A)
【文献】米国特許第06156386(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカエアロゲルの調製方法であって、以下のステップを含み、
(1)無機ケイ素源と純水を容器内で混合して溶液を形成し、
(2)上記の溶液を陽イオン置換樹脂で加水分解してケイ酸溶液を得て、
(3)上記のケイ酸溶液にアルカリ性触媒を加えてウェットゲルを得て、
(4)上記のウェットゲルを撹拌して粉砕し、
(5)粉砕したウェットゲルにアルコール溶媒を加え、1~12時間老化させ、
(6)老化後、ウェットゲルの溶媒置換2段階に分けて行い、第1段階は、老化したウェットゲルを容器に入れ、アルコール溶媒を加え、アルコール溶媒により、ウェットゲルの細孔内の水分を置換し、第2段階では、アルコール溶媒を置換した後、有機溶媒をウェットゲルの反応容器に追加して、ウェットゲルの細孔内のアルコール溶を置換し、
(7)溶媒置換後のウェットゲルの表面改質を行い、それは溶媒の置換が完了した後、シリコーン改質剤と有機溶媒の混合溶液をウェットゲルと有機溶媒の反応容器に加えて、ウェットゲルを元の親水性から疎水性に変更し、
(8)改質後に得られた疎水性ウェットゲルは、シリカエアロゲルを調製するための段階的加熱法である大気乾燥法により乾燥させ
ステップ6の溶媒置換プロセスにおいて、アルコール溶媒及び有機溶媒を添加する操作が「連続的循環濾過方式」で実行されることを特徴とし、これは、老化後のウェットゲルが入れられた反応容器の上にある、液体入口パイプの液体入口が前記反応容器に連通され、液体出口パイプは、液体出口を介して前記反応容器の底部に接続され、濾過装置が前記液体出口に配置されて、前記液体出口パイプは溶液貯蔵タンクにつながり、動力源は溶液貯蔵タンクと液体入口パイプの間に配置され、前記動力源は前記液体出口パイプを吸引し、前記液体入口パイプを押す機能を有し、第1段階において、前記溶液貯蔵タンクには、適切な量のアルコール溶媒が含まれ、しかも第2段階において、前記溶液貯蔵タンク内には、適切な量の有機溶媒が含まれ、前記動力源の作用により、前記アルコール溶媒及び前記有機溶媒は前記反応容器、前記液体出口パイプライン、溶液貯蔵タンク、動力源、および液体入口パイプライン内で循環を形成し、第1段階において、アルコール溶媒を介して、ウェットゲル細孔に含まれる水分を置換し、及び第2段階において、有機溶媒を介して、ウェットゲル細孔のアルコール溶媒を置換することを特徴とする、シリカエアロゲルの調製方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)において、固形分が40~50質量%のケイ酸ナトリウム(一般に水ガラスとして知られている)が無機ケイ素源として使用され、純水で希釈されたケイ酸ナトリウムのモジュラスは2.53~3.33であり、固形分は8~20重量%(8~20wt%)であることを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法
【請求項3】
前記ステップ(2)において、pH2~3のケイ酸溶液が得られることを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法
【請求項4】
前記ステップ(3)のアルカリ性触媒は、水酸化アンモニウム(NH4OH)または水酸化ナトリウム(NaOH)であり、しかも、1Mアルカリ触媒を、ケイ酸のpHが4~8になるまでケイ酸溶液に添加して、ウェットゲルを得ることを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法
【請求項5】
前記ステップ(4)におけるウェットゲルでは、粉砕機を用いて300~1000rpmの速度で粉砕されることを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法。
【請求項6】
前記ステップ(5)のアルコール溶媒はエタノール、イソプロパノールまたはメタノールであり、しかも添加するアルコール溶媒とケイ酸溶液との体積比は1:1であり、攪拌して粉砕するウェットゲルは25~80℃の温度で1~12時間老化されることを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法
【請求項7】
前記ステップ(6)のアルコール溶媒はエタノール、イソプロパノールまたはメタノールであり、アルコール溶媒を前記ウェットゲルの反応容器に加えた後、25~80℃の温度、300~1000rpmの速度で、1~12時間撹拌し、水をアルコール溶媒に置換する操作は、アルコール溶媒の濃度が設定値に下がるまで何度も繰り返し、前記有機溶媒はn-ヘキサン、アセトンまたはシクロヘキサンであり、有機溶媒とケイ酸溶液の体積比は1:1であり、有機溶媒を前記ウェットゲルの反応容器に加えた後、25~80℃の温度、300~1000rpmの速度で、1~12時間撹拌することを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法
【請求項8】
前記ステップ(7)において、シリコーン改質剤と有機溶媒との混合溶液が添加され、混合物は、25~80℃で300~1000rpmの速度で1~16時間撹拌し、前記シリコーン改質剤は、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシランまたはテトラエトキシシランであり、シリコーン改質剤対ケイ酸塩のモル比は、1:0.35~1.67であることを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法
【請求項9】
前記ステップ(8)において、段階的加熱法は、60℃、150℃、および230℃でそれぞれ1時間行われることを特徴とする、請求項1に記載のシリカエアロゲルの調製方法。
【請求項10】
前記溶液貯蔵タンクは、外部検出装置によって溶液貯蔵タンクのアルコール溶媒及び有機溶媒に通され、濃度を検出することを特徴とする、請求項1または請求項7に記載のシリカエアロゲルの調製方法。
【請求項11】
前記ステップ(2)において、酸および塩基価pH2.4~2.6のケイ酸溶液が得られることを特徴とする、請求項3に記載のシリカエアロゲルの調製方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカエアロゲルを調製する方法であり、特に溶媒置換プロセスにおいてシリカエアロゲルを調製する方法に関する。溶媒を添加する操作は、「連続的循環濾過モード」で実施されるエアロゲルの調製方法である
【背景技術】
【0002】
エアロゲル(aerogels)は一般に、ナノスケールの超微粒子が互いに凝集してナノポーラスネットワーク構造を形成し、ネットワークの細孔がガス状分散媒体で満たされている軽量のナノ固体材料を指す。エアロゲルが異なれば調製方法も異なるが、調製プロセスは似ている。一般に、ゾルゲル法を使用してウェットゲル(wet gel)を調製し、次にウェットゲルを溶媒置換および超臨界乾燥を経て、対応するエアロゲルを得る。エアロゲルの特徴は次のとおりである。(a)高い多孔性、最大99.8%(b)ナノレベルの細孔(2~50nm)および3次元ナノフレーム粒子(2~5nm)(c)高い比率表面積は1000m2/gまで高く、(d)低密度は0.003g/cm3まで低く、(e)熱伝導率は非常に低く、室温で0.013w/(mk)と低くなり、空気の熱伝導率よりも低い(f)低強度と高脆性、比表面積と多孔性が高く、密度が低いため、強度は非常に低くなる。エアロゲルは、現代のハイテク産業における一種の超断熱材であり、多くの産業で使用されている。米国のスタンフォード大学のS.S.Kistlerは、最初に水ガ
ラスを使用して、ゾルゲル法と超臨界乾燥技術によって「シリコンエアロゲル」とも呼ばれるシリカエアロゲル(SiO2aerogels)を調製した。
【0003】
シリカエアロゲルの従来の調製方法は、US10377637B2「エアロゲルとその製造方法」、CN103818912B「常圧下で比表面積の大きい低密度シリカエアロゲルを調製する方法」、CN104030301B「シリカエアロゲル材料とその調製方法」、CN105776234A「メタアルミン酸ナトリウム改質樹脂精製水ガラスエアロゲルの超臨界乾燥法」、CN106745000A「水ガラスベースのシリカエアロゲルの調製方法。」、CN106865558A「常圧下でのシリカエアロゲル調製方法および調製されたシリカエアロゲル」、CN109133070A「水ガラスを原料として超高速常圧で疎水性シリカエアロゲルを調製する方法」、CN104071797B「常圧および室温で水ガラスを用いた低密度で比表面積の大きいシリカエアロゲルコーティングを調製する方法」、CNI561561「エアロゲル粒子とその調製方法」、CNI516447「エアロゲルとその調製方法」、CNI588209「改良された疎水性エアロゲル材料」など、さまざまな国で多くの特許が取得されている。
【0004】
前述の場合、エアロゲルの調製方法はそれぞれ異なるが、すべて「置換」と「改質」の2つのステップを経る必要がある。最初に「置換」ステップで実行されるか、「改質」ステップで実行されるか、または「置換」ステップと「改質」ステップが組み合わされて実行されることも可能である。
上記従来の調製方法の中で、US10377637B2はゲルを「n-ヘキサン+イソプロパノール+ヘキサメチルジシロキサン」を使用し、55℃で1~12時間「溶媒置換+改質」操作を行う。CN103818912Bはゲルを「エタノール(またはイソプロパノール、アセトン)」の50℃で8時間の水浴置換操作3回を行い、次に「n-ヘキサン」を50℃で8時間の水浴改質操作2回を行う。CN104030301Bはゲルを「エタノール(またはプロパノール)+硫酸」を使用して、40℃で3時間の溶媒置換操作を行い、次に「n-ヘキサン+ヘキサメチルジシラザン」の溶媒改質操作を6時間行う。CN105776234Aは、ゲルを50~70℃で8~24時間の溶媒置換操作に「エタノール」を使用し、その後45℃で7~9時間の改質操作を行う。CN106745000Aは、ゲルを「pH6.5エタノール(またはプロパノール)」を使用して45℃、2~4時間の水浴加熱の溶媒置換操作を行い、、次に「n-ヘキサン+トリメチルクロロシラン(10~60ml)」50~70℃12時間の改質操作を行う。CN106865558Aはゲルを「n-ヘキサン+シラザン」で1~6時間改質した後、「硫酸または塩酸」で60℃、6時間攪拌する、水浴置換操作を行う。CN109133070Aはゲルを粉砕し、「脱イオン水(1~2時間)、エタノール(0.5~1時間)、改質剤(0.5~1時間放置した後、上層を取り)、およびn-ヘキサン(20~40min)」40℃で順次「溶媒置換+改質」操作を行う。CN104071797Bは、ゲルを密閉容器内で、「エタノール」を使用して、45℃、8時間の水浴溶媒置換操作を行い、次に、「n-ヘキサン+トリメチルクロロシラン20ml/回」を使用して、45℃の水浴の条件下で改質操作を行い、各反応は2時間で、3~4回かかる。CNI561561エタノールと水の混合物でエアロゲル粒子を洗浄し、次にエアロゲル粒子を高温真空で乾燥させてから、疎水性改質操作を行い、混合液を加熱しても、前述の有機溶媒を気化させ、塩素化有機分子を添加することにより、塩素化有機分子と前述のエアロゲル粒子のヒドロキシル基が反応してエアロゲル粒子を疎水性にする。そして、疎水性分散溶媒によって、前述のエアロゲル粒子が壊れるのを防ぐ。CNI516447は、「エタノール+n-ヘキサン」を使用して、ゲルを50℃で24時間の溶媒置換操作を行い、その後、50℃で24時間の操作でゲルを「n-ヘキサン+トリメチルクロロシラン」で改質操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第10377637B2号明細書
【文献】中国特許第103818912B号明細書
【文献】中国特許第104030301B号明細書
【文献】中国特許第105776234A号明細書
【文献】中国特許第106745000A号明細書
【文献】中国特許第106865558A号明細書
【文献】中国特許第109133070A号明細書
【文献】中国特許第104071797B号明細書
【文献】中国特許第I561561号明細書
【文献】中国特許第I516447号明細書
【文献】中国特許第I588209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシリカエアロゲルの調製方法では、皆、「置換」と「改質」の2つの操作を行うことができる。最初に「置換」ステップを実行し、「改質」ステップを後で実行するか、その逆操作であるか。または、「置換」と「改質」の2つの操作を組み合わせることも可能である。よく理解した結果、従来のシリカエアロゲルの製造方法では、「置換」、「改質」、あるいは「置換+改質」に関係なく、いずれも「容器浸漬」方式を採用していることがわかった。つまり、適切な容量の反応容器(効果容器とも呼ばれる)を用意し、反応容器は、有機溶媒の性質に応じて、閉じることと不完全に閉じることもできる。次に、ウェットゲルを反応容器に入れ、選択した適切な溶媒を注入して、予想される「置換」および「改質」操作を行う。なかでも、「置換」は時間がかかり、溶媒を多く使用するため、「置換」操作が特に重要である(「溶媒置換」操作とも呼ばれる)。したがって、「置換」操作において、操作時間を短縮し、置換効果を向上させることができれば、シリカエア
ロゲルの調製に役立つであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の欠陥を考慮して、本発明者らは、「置換」操作を改善するというアイデアを生み出し、その後、綿密な構想、研究、開発、および試験を経て、最後に何らかの努力をして本発明を完成させた。
【0008】
本発明の主な目的が、ウェットゲル溶媒置換操作時間を大幅に加速(短縮)することができるシリカエアロゲルを調製するための方法を提供することである。
本発明の別の主な目的は、置換効果を大幅に改善することができるシリカエアロゲルを調製するための方法を提供することである。
本発明の別の主な目的は、コスト節約、環境保護、およびエネルギー節約効果を達成するためにリサイクルおよび再利用するのに便利なシリカエアロゲルを調製するための方法を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明は、以下のステップを含む、シリカエアロゲルを調製するための方法を具体的に設計する。
(1)無機ケイ素源と純水を反応容器内で混合して溶液を形成する。
(2)上記の溶液を陽イオン置換樹脂で加水分解してケイ酸溶液を得る。
(3)上記のケイ酸溶液にアルカリ性触媒を加えてウェットゲルを得る。
(4)上記のウェットゲルを撹拌して粉砕する。
(5)粉砕したウェットゲルにアルコール溶媒を加え、1~12時間老化させる。
(6)老化後、ウェットゲルの溶媒置換2段階に分けて行い、第1段階は、老化したウェットゲルを反応容器に入れ、アルコール溶媒を加え、アルコール溶媒により、ウェットゲルの細孔内の水分を置換する。第2段階では、アルコール溶媒を置換した後、有機溶媒をウェットゲルの反応容器に追加して、ウェットゲルの細孔内のアルコール溶媒を置換する。
(7)溶媒置換後のウェットゲルの表面改質を行い、それは溶媒の置換が完了した後、シリコーン改質剤と有機溶媒の混合溶液をウェットゲルと有機溶媒の反応容器に加えて、ウェットゲルを元の親水性から疎水性に変更する。
(8)改質後に得られた疎水性ウェットゲルをシリカエアロゲルを調製するための段階的加熱法である大気乾燥法により乾燥させる
ステップ6の溶媒置換プロセスにおいて、アルコール溶媒及び有機溶媒を添加する操作が「連続的循環濾過方式」で実行されることを特徴とする。これは、ウェットゲルが入れられた反応容器の上にある、液体入口パイプの液体入口が反応容器に連通され、液体出口パイプは、液体出口を介して反応容器の底部に接続され、濾過装置が液体出口に配置されている。液体出口パイプは溶液貯蔵タンクにつながり、動力源は溶液貯蔵タンクと液体入口パイプの間に配置され、動力源は液体出口パイプを吸引し、液体入口パイプを押す機能を有する。第1段階において、溶液貯蔵タンクには、適切な量のアルコール溶媒が含まれ、第2段階において、溶液貯蔵タンクには適切な量の有機溶媒が含まれ、動力源の作用により、アルコール溶媒及び有機溶媒は反応容器、液体出口パイプライン、溶液貯蔵タンク、動力源、および液体入口パイプライン内で循環を形成できる。第1段階において、アルコール溶媒により、ウェットゲル細孔に含まれる水分を置換して除去し、及び第2段階において、有機溶媒により、ウェットゲル細孔のアルコール溶媒を置換して除去する
上記のシリカエアロゲルの調製方法では、ステップ(1)において、固形分が40~50質量%のケイ酸ナトリウム(一般に水ガラスとして知られている)が無機ケイ素源として使用され、純水で希釈されたケイ酸ナトリウムのモジュラスは2.53~3.33であり、固形分は8~20wt%である。
上記のシリカエアロゲルの調製方法では、ステップ(2)において、酸および塩基価pH2~3のケイ酸溶液が得られる
上記のシリカエアロゲルの調製方法において、ステップ(3)のアルカリ性触媒は、水酸化アンモニウム(NH4OH)または水酸化ナトリウム(NaOH)であり、しかも、1Mアルカリ触媒を、ケイ酸の酸および塩基価pHが4~8になるまでケイ酸溶液に添加して、ウェットゲルを得る。
上記のシリカエアロゲルの調製方法において、ステップ(4)におけるウェットゲルでは、粉砕機を用いて300~1000rpmの速度で粉砕される。
上記のシリカエアロゲルの調製方法において、ステップ(5)のアルコール溶媒はエタノール、イソプロパノール、またはメタノールであり、添加するアルコール溶媒とケイ酸溶液との体積比は1:1であり、攪拌して粉砕するウェットゲルは25~80℃の温度で1~12時間老化される。
上記のシリカエアロゲルの調製方法において、ステップ(6)のアルコール溶媒はエタノール、イソプロパノールまたはメタノールであり、アルコール溶媒をウェットゲルの反応容器に加えた後、25~80℃の温度、300~1000rpmの速度で、1~12時間撹拌する。水をアルコール溶媒に置換する操作は、溶液貯蔵タンク内のアルコール溶の濃度が設定値に下がるまで何度も繰り返す(例えば、設定値は5%であるが、設定値は調整可能であり、限定されない)。有機溶媒はn-ヘキサン、アセトンまたはシクロヘキサンであり、有機溶媒とケイ酸溶液の体積比は1:1である。有機溶媒をウェットゲルの反応容器に加えた後、25~80℃の温度、300~1000rpmの速度で、1~12時間撹拌する。溶液貯蔵タンク内の有機溶の濃度が設定値(例えば、設定値は5%であるが、設定値は調整可能であり、限定されない)に低下するまで、有機溶媒をアルコール溶に置換する操作を何度も繰り返す。
上記のシリカエアロゲルの調製方法におけるステップ(7)において、シリコーン改質剤と有機溶媒との混合溶液が添加され、混合物は、25~80℃で300~1000rpmの速度で1~16時間撹拌する。シリコーン改質剤は、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシランまたはテトラエトキシシランであり、シリコーン改質剤対ケイ酸塩のモル比は、1:0.35~1.67である。
上記のシリカエアロゲルの調製方法におけるステップ(8)において、段階的加熱法は、60℃、150℃、および230℃でそれぞれ1時間行われる。
上記のシリカエアロゲルの調製方法において、溶液貯蔵タンクは、外部検出装置によって溶液貯蔵タンク内のアルコール溶媒及び有機溶媒に通され、濃度を検出する。
上記のシリカエアロゲルの調製方法におけるステップ(2)において、酸および塩基価pH2.4~2.6のケイ酸溶液が得られる
【発明の効果】
【0009】
本発明は、反応容器に迅速に出入りする溶媒を採用し、溶媒が排出されるときに濾過手順によって形成される「連続的循環濾過モード」には、以下の利点がある。
(1)ウェットゲルが比較的短時間で大量のアルコール溶媒と有機溶媒を通過することにより、それそれ、連続的循環置換(水浴置換)される、したがって、ウェットゲルの溶媒置換操作の時間を大幅に加速(短縮)することができる。
(2)ウェットゲル反応容器から出たアルコール溶媒とアルコール溶媒を濾過してウェットゲルと溶液を分離し、ウェットゲルが液体出口パイプラインに入るのを防ぐ。その後、溶液は反応容器に押し込まれ、ウェットゲルの溶媒置換を行い、連続的循環濾過を行うことで、置換効果を大幅に向上させることができる。
【0010】
本発明の上記およびその他の目的、利点および特徴は、添付の図面を参照した以下の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明におけるシリカエアロゲルを調製するためのステップのフローチャートである。
図2】本発明の調製方法における溶媒置換操作ステップのフローチャートである。
図3】本発明の調製方法における溶媒置換操作の構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明によって採用される技術的手段および達成可能な効果に関して、以下の好ましい実行可能な実施形態が、利点を完全に理解するために添付の図面と併せて詳細に説明される。
【0013】
本発明は、シリカエアロゲルの調製方法に関し、図1を参照されたい。本発明の調製方法は、主に以下のステップを経る。
【0014】
(1)無機ケイ素源と純水を容器内で混合して溶液を形成し、無機ケイ素源として固形分40~50質量%のケイ酸ナトリウム(一般に水ガラスとして知られている)を使用している。純水で希釈されたケイ酸ナトリウム(水ガラス)のモジュラスは2.53~3.33で測定され、固形分は8~20重量%(8~20wt%)である。
【0015】
(2)上記溶液を陽イオン置換樹脂で加水分解すると、酸および塩基価pHが2~3、特に酸および塩基価pHが2.4~2.6のケイ酸溶液が得られる。
【0016】
(3)上記のケイ酸溶液にアルカリ性触媒を加えてウェットゲルを得る。アルカリ性触媒は水酸化アンモニウム(NH4OH)または水酸化ナトリウム(NaOH)でありしかも、1Mアルカリ触媒を、ケイ酸のpHが4~8になるまでケイ酸溶液に添加して、ウェットゲルを得る。
【0017】
(4)上記のウェットゲルを、できれば粉砕機で300~1000rpmの速度で粉砕する。
【0018】
(5)粉砕したウェットゲルにアルコール溶媒を加え、アルコール溶媒はエタノール、イソプロパノール、またはメタノールである。アルコール溶媒とケイ酸溶液の体積比は1:1で、粉砕後のウェットゲルを25~80℃の温度で1~12時間老化させる。
【0019】
(6)老化後、2段階に分けてウェットゲルの溶媒置換を行う。図2参照されたい。第1段階は、老化したウェットゲルを反応容器に入れ、アルコール溶媒を加え、アルコール溶媒により、ウェットゲルの細孔内の水分を置換する。アルコール溶媒はエタノール、イソプロパノール、メタノールであり、ウェットゲルの反応容器にアルコール溶媒を加えた後、25~80℃、300~1000rpmで1~12時間攪拌し、置換効果を高める。アルコール溶媒を水に置換する操作は、アルコール溶の濃度が設定値に下がるまで何度も繰り返すことができる(たとえば、設定値は5%であるが、設定値は調整可能であり、制限されない)。第二段階では、アルコール溶媒の置換後、有機溶媒をウェットゲルの反応容器に加えて、ウェットゲルの細孔内のアルコール溶を置換することができ、有機溶媒は、n-ヘキサン、アセトン、またはシクロヘキサンにすることができる。有機溶媒とケイ酸溶液の体積比比率は1:1であり、ウェットゲルの反応容器に有機溶媒を加えた後、300~1000rpm、25~80℃で1~12時間攪拌すると、置換効果が向上する。有機溶媒をアルコール溶に置き換える操作は、有機溶の濃度が設定値に低下するまで何度も繰り返すことができる(例えば、設定値は5%であるが、設定値は調整可能であり、限定されない)。
【0020】
(7)溶媒置換後のウェットゲルの表面改質を行う。これは、溶媒置換後のウェットゲルと有機溶媒の反応容器にシリコーン改質剤と有機溶媒の混合溶液を加えることである。25~80℃で、300~1000rpm、1~16時間撹拌して、ウェットゲルを親水性から疎水性に改質し、シリコーン改質剤は、ヘキサメチルジシロキサンニトラン、メチルトリメトキシシラン、またはテトラエトキシシランである。シリコーン改質剤とケイ酸塩のモル比は1:0.35~1.67であり、改質が完了した後、ウェットゲルを溶液から分離し、溶液をリサイクルして別処理することができる。
【0021】
(8)改質後に得られた疎水性ウェットゲルを、段階加熱法である大気圧乾燥法により乾燥し、60℃、150℃、230℃で1時間乾燥し、低熱伝導率と高疎水性を備える、シリカエアロゲルを得る。
【0022】
上記は、本発明におけるシリカエアロゲルの調製方法の簡単な説明であり、その中で、ステップ6(溶媒置換)のプロセスは、シリカエアロゲルを調製するための最も重要なステップである。したがって、本発明は、ステップ6に向けられる溶媒置換を改良し、溶媒置換の運転時間を加速(短縮)し、溶媒置換の効果を向上させた。
【0023】
図3を参照されたい。本発明のステップ6(溶媒置換)のプロセスにおいて、従来の溶媒浸漬操作(第1段階のアルコール溶媒または第2段階の有機溶媒に関係なく)は、「連続的循環濾過法」に変更されて実施される。例えば、ウェットゲルが入れられた反応容器10上の液体入口パイプ20の液体入口21は、反応容器10に入ることができる。液体出口パイプ30は、液体出口31を介して反応容器10の底部に接続されている。液体出口31は、濾過装置を備え、主にウェットゲルと溶媒を分離し、ウェットゲルが液体出口31を通って液体出口パイプ30に入るのを防ぐためである。したがって、最も簡単な方法は、フィルター32を取り付けることである。液体出口パイプ30は、溶液貯蔵タンク40に通じており、次に、動力源50(例えば、モーターによって作動される加圧器)が、溶液貯蔵タンク40と液体入口パイプ20との間に設けられる。したがって、ウェットゲル(Wet Gel)を反応容器10に入れ、溶媒(第1段階のアルコール溶または第2段階の有機溶に関係なく)を加えると、動力源50が発生する。液体出口パイプ30、溶液貯蔵タンク40の吸引および液体入口管20の押し効果を介して、溶媒は、反応容器10、液体出口パイプ30、溶液貯蔵タンク40、動力源50、および液体入口パイプ20内で循環を形成することができる。溶液(第1段階のアルコール溶媒または第2段階のアルコール溶媒に関係なく)は、出口パイプ30を通過する前にフィルター32を通して濾過され、ウェットゲルを水またはアルコール溶媒から分離するために、ウェットゲルが反応容器10内に留まっていることを確保する。次に、溶液は溶液貯蔵タンク40に入り、動力源50および液体入口パイプ20を通って吸引された後、反応容器10に入り、急速な循環を繰り返して、ウェットゲルが短時間で、大量の溶媒に置き換えられ、水の分離と除去を加速する(第1段階の場合)か、アルコール溶媒を分離して除去する(第2段階の場合)。このように、反応容器10の内外に溶液を迅速に循環させて濾過する方法が「連続的循環濾過モード」である。
【0024】
上記のように、「---ウェットゲル(wet gel)を反応容器10に入れ、溶媒を加える---」という操作は、「溶媒を反応容器10に注入する」ことを意味する。その操作には多くの可能性があり、最も簡単なのは図3のとおりである。高所にはアルコール溶媒や有機溶媒など必要な溶媒を貯蔵する溶液タンクが多く、異なる溶媒は異なる溶液タンクに保管されている。したがって、溶媒が必要な場合は、必要な溶媒を貯蔵している溶液タンクから液体供給管を引き出して反応容器10と位置合わせし、次に液体供給スイッチをオンにして、必要な溶媒が反応容器10に注入されるようにして、「反応容器10への溶媒注入」の操作を達成する。しかしながら、「反応容器10に溶媒を注入する」という操作は、本発明の前期操作であり、本発明の範囲外であるため、繰り返さない。
【0025】
溶液貯蔵タンク40は、濃度検出のための外部検出装置60によって溶液貯蔵タンク40に通すことができる。主にアルコール溶媒置換操作の第1段階において、検出装置60は、溶液貯蔵タンク40内のアルコール溶の濃度を検出する。アルコール溶の濃度が設定値まで低下したことが検出された場合(例えば、設定値は5%であるが、設定値は調整可能であり、限定されない)、運転を停止し、アルコール溶を除去し、アルコール溶は後処理(水とアルコール溶の分離)してリサイクルして再利用できる。有機溶媒を反応容器10に注入し、その後、連続的循環濾過操作を再開し、有機溶媒置換操作の第2段階が行われると、検出装置60は、溶液貯蔵タンク40内のアルコール溶媒の濃度を検出する。アルコール溶媒の濃度が設定値まで低下したことが検出されると(例えば、設定値は5%であるが、設定値は調整可能であり、限定されない)、操作を停止し、アルコール溶媒を除去する。除去されたアルコール溶媒は後処理(アルコール溶媒とアルコール溶媒の分離)してリサイクルして再利用することができる。
【0026】
溶液を排出する操作(リサイクルおよび後処理)についても、多くの可能性があるが、最も簡単なのは図3に示すとおりである。溶液貯蔵タンク40の底部に排液管を設けるか、排液管開口部の下にリサイクル容器を設置するか、排液管をリサイクルバレルに直結した後、排液スイッチをONにして、反応容器10内の溶液をリサイクル容器またはリサイクルバレルに排出するだけで十分である。しかしながら、溶液の後処理およびリサイクル操作は本発明の範囲外であるため、ここでは繰り返さない。
【0027】
本発明は、シリカエアロゲルの調製工程において、ステップ6(溶媒置換)に「連続的循環濾過モード」を採用しており、様々な実験により試験され、効果が非常に良好であることが証明された。本発明のシリカエアロゲルの調製中にステップ6に「連続的循環濾過モード」を採用し、異なる操作条件を変更することによって得られた、最終的なシリカエアロゲルの特性は、(a)比表面積:最大649.29~727.79m2/g(b)細孔容積:0.97~2.63cm3/g(c)細孔径:5.80~14.80nm(d)疎水性角度:138~140℃(e)密度:0.1150~0.1749g/cm3(f)多孔度:92.1~94.8%(g)熱伝達係数:0.0299~0.0432W/mK(h)処理時間は17~23時間であり、最終的なシリカエアロゲルが良好な特性を持っていることが証明された。
【0028】
要約すると、本発明は、期待される機能および目的を明確に達成し、詳細な説明は、当技術分野に精通している人々がそれに応じてそれを実施することを可能にすることができる。しかし、上記の実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、同等の構造のすべての変更は、依然として本発明の特許範囲から逸脱しているわけではない。
【符号の説明】
【0029】
10 反応容器
20 液体入口パイプ
21 液体入口
30 液体出口パイプ
31 液体出口
32 フィルター
40 溶液貯蔵タンク
50 動力源
60 検出装置
図1
図2
図3