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特許7098051ランナーを用いたマルチモールドシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ランナーを用いたマルチモールドシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20220701BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/26
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021507640
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019064035
(87)【国際公開番号】W WO2020117691
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】62/776,384
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】田島 潤子
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-513687(JP,A)
【文献】特開2009-279892(JP,A)
【文献】特公昭48-008346(JP,B1)
【文献】特開昭62-299316(JP,A)
【文献】特表2003-522654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/27
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティに樹脂を供給するためのランナーであって、
射出成形機のノズルから樹脂が注入されるように構成された注入口と、
注入口に接触する前記ノズルから前記注入口を介して供給された前記樹脂が流れる流路と、
前記注入口を開閉するためのピンであって、前記ノズルが前記流路に前記樹脂を供給開始する前に、前記ノズルから前記キャビティへ前記樹脂が流れる第1の方向に移動することで前記注入口を開くと共に、前記ノズルが前記流路への前記樹脂の供給を完了したあと、且つ、前記ノズルが前記注入口から分離される前に、前記第1の方向とは逆の第2の方向に移動することで前記注入口を閉じるピンと
を備え
前記ピンが前記注入口を閉じるために前記第2の方向に移動する場合において前記ピンが前記ノズルに接触しない位置で停止するよう構成されランナー。
【請求項2】
前記ピンは、前記第2の方向に移動して前記流路の断面積を減少させるように構成される、請求項1に記載のランナー。
【請求項3】
前記ピンは、前記第2の方向に移動して前記流路における樹脂の流量を減少させるように構成される、請求項1に記載のランナー。
【請求項4】
第2の位置における前記流路の断面積は、第1の位置における前記流路の断面積よりも小さく、前記第1の位置は、前記ノズルから前記樹脂が流れる方向において前記第2の位置の下流に位置する、請求項1に記載のランナー。
【請求項5】
前記ピンは、前記第1の方向に移動して前記ノズルが前記注入口に接触する場合における前記流路の容量を増大させるように構成される、請求項1に記載のランナー。
【請求項6】
前記ピンは、前記樹脂が前記流路に供給されている間、前記流路の容量を減少させるための前記第2の方向への移動を実施しないように構成される、請求項1に記載のランナー。
【請求項7】
前記ランナー内に形成される第2の流路と、
前記ノズルが前記ランナーへの前記樹脂の供給を完了した後に、前記第2の流路の容量を減少させるために移動するように構成された第2のピンと、
をさらに備え、
前記樹脂は前記第2の流路から前記キャビティ内へと流れる、請求項1に記載のランナー。
【請求項8】
キャビティに樹脂を供給するためのランナーであって、
射出成形機のノズルから樹脂が注入されるように構成された注入口と、
前記注入口に接触するノズルから前記注入口を介して供給された前記樹脂が流れる第1の流路と、
前記注入口を開閉するための第1のピンであって、前記ノズルが前記ランナーへの樹脂の供給を完了したあと、前記ノズルから前記キャビティへ前記樹脂が流れる第1の方向とは逆の第2の方向に移動することで前記注入口を閉じるように構成された第1のピンと、
前記ランナー内に形成される第2の流路であって、前記第1の流路から前記キャビティ内へと流れる前記樹脂が通る前記第2の流路と、
前記ノズルが前記ランナーへの前記樹脂の供給を完了したあと、且つ、前記第1のピンが前記第2の方向に移動する前に、前記ノズルから前記キャビティへと前記樹脂が流れる前記第1の方向に移動するように構成された第2のピンと、を備え
前記第1のピンが前記注入口を閉じるために前記第2の方向に移動する場合において前記第1のピンが前記ノズルに接触しない位置で停止するよう構成される、ランナ-。
【請求項9】
射出成形システムであって、
射出成形機のノズルから樹脂が注入されるように構成された注入口と、
注入口に接触する前記ノズルから前記注入口を介して供給された前記樹脂が流れる流路と、
前記注入口を開閉するための第1のピンと、
前記ノズルが前記流路に前記樹脂を供給開始する前に、前記ノズルからキャビティへ前記樹脂が流れる第1の方向に前記第1のピンを移動すると共に、前記ノズルが前記流路への前記樹脂の供給を完了したあと、且つ、前記ノズルが前記注入口から分離される前に、前記ノズルから前記キャビティへと前記樹脂が流れる前記第1の方向とは逆の第2の方向に前記第1のピンを移動するように構成されたアクチュエータと、
を備え
前記第1のピンが前記注入口を閉じるために前記第2の方向に移動する場合において前記第1のピンが前記ノズルに接触しない位置で停止するよう構成される、射出成形システム。
【請求項10】
前記ノズルは、前記アクチュエータが前記流路の容量を減少させるために前記第1のピンを前記第2の方向に移動した後であって、且つ、前記ノズルが前記注入口から分離される前に、前記樹脂を引き戻す、請求項9に記載の射出成形システム。
【請求項11】
金型を射出処理のための第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置との間で移動させる搬送装置をさらに備え、
前記第1のピンは、前記金型が前記第2の位置から前記第1の位置に移動した後で、且つ、前記ノズルが前記流路への前記樹脂の供給を開始する前に前記第1の方向に移動し、
前記第1のピンは、前記ノズルが前記流路への前記樹脂の供給を完了した後で、且つ、前記金型が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する前に、前記第2の方向に移動する、請求項9に記載の射出成形システム。
【請求項12】
前記第1の位置は前記射出成形の内部にあり、前記第2の位置は前記射出成形の外部にある、請求項11に記載の射出成形システム。
【請求項13】
前記搬送装置は、少なくとも2つの金型を移動する、請求項11に記載の射出成形システム。
【請求項14】
前記ランナーは、ホットランナーである、請求項9~13のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項15】
請求項9~14のうちいずれか1項に記載の射出成形システムを用いた成形品の製造方法。
【請求項16】
金型を射出処理のための第1の位置と、前記第1の位置とは異なる第2の位置との間で移動させる搬送装置と、
前記流路を開閉するための第2のピンと、をさらに備え、
前記アクチュエータは、前記搬送装置により前記金型が前記第2の位置から前記第1の位置に移動された後、且つ、前記ノズルが前記注入口に前記樹脂を供給開始する前に前記第1のピンを前記第1の方向に移動し、
前記第1のピンが前記第1の方向に移動した後、且つ、前記ノズルが前記注入口に前記樹脂を供給開始する前に前記第2のピンを前記第2の方向に移動する、
請求項9または10に記載の射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/776384号の利点を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は一般に、ホットランナー(runner)からの樹脂漏れを低減することに関する。
【背景技術】
【0003】
射出成形機のノズルをホットランナーから分離する場合、ホットランナー内部に加わる圧力が低下する。一方、ホットランナー内部に含まれる樹脂はホットランナーから逆流する。樹脂がホットランナーの外部に漏れ、ホットランナー内部の圧力が低下すると、ホットランナーに入った空気によって成形部品に気泡が発生することがある。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0204610号明細書では、ホットランナー内部にバネ付きのシール要素を取り付けることが開示されている。射出成形機のノズルとホットランナーを分離するときの、ホットランナー内部の圧力と大気圧の圧力差によって、バネが長くなる。シール要素は、ホットランナーの樹脂供給経路の開口部を閉じて、樹脂の漏れを防止する。
【0005】
樹脂流路をシールするためにバネ要素を使用する場合、米国特許出願公開第2006/0204610号明細書のように、バネ部分の体積の樹脂とバネ周囲の材料の体積の樹脂がホットランナーから漏れる。また、漏れる樹脂が多いほど、ホットランナー内部の圧力が低下する。これにより、気泡の生成を容易にすることができる。漏れた樹脂が分離したノズル側に付着するため、樹脂は、ノズルとホットランナーとの間で糸状に伸びて長くなる。糸状に伸びた樹脂は、ノズルの動きに応じて射出成形機内の他の場所に移動しうる。これにより、詰まりが発生し、連続成形が不可能となる。
【0006】
複数の金型(モールド)が射出成形機の射出位置と射出成形機の外側の位置との間の移動を繰り返し、金型から見て金型に付随する配管が射出成形機内部に向かう方向に突出すると、メンテナンスが困難となり、移動中に射出成形機内で配管が詰まりやすくなる可能性がある。
【0007】
必要とされているのは、上述の問題に対処し、克服するマルチモールドシステムである。
【発明の概要】
【0008】
本開示の態様によれば、ホットランナーからの樹脂漏れを低減することができる。その結果、射出成形機の一部で樹脂が挟まれたり、射出成形機を停止したり、連続成形を行う際に成形部品に空気が入ったりする可能性を低減することができる。
【0009】
本開示の少なくとも1つの態様によれば、キャビティに樹脂を供給するためのランナーは、射出成形機のノズルから樹脂を供給されるように構成されたスプルーと、前記ランナー内に形成された第1の経路であって、前記ノズルが前記スプルーに接触した場合に前記ノズルから前記第1の経路に流れる、前記第1の経路と、前記第1の経路に樹脂が供給される前に前記第1の経路の大きさを増大させるために第1の位置に移動し、前記ノズルが前記スプルーから分離する前に前記第1の経路の大きさを減少させるために第2の位置に移動するように構成された第1のピンと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、射出成形システムの上面図である。
【0011】
図2図2は、射出成形機のノズルがスプルーに接続するノズルタッチ領域の拡大図である。
【0012】
図3図3は、ホットランナーのノズルと金型の樹脂成形部品の拡大図である。
【0013】
図4A】、
図4B】、
図4C図4A~4Cは、成形動作プロセスの一部を示す。
【0014】
図5A】、
図5B】、
図5C】、
図5D図5A~5Dは、成形動作プロセスの一部を示す。
【0015】
図6A】、
図6B】、
図6C】、
図6D図6A~6Dは、成形動作プロセスの一部を示す。
【0016】
図7図7は、射出成形機の一部を図示し、成形閉鎖および成形開放を行う。
【0017】
図8A】、
図8B図8A~8Bは、射出成形システムのプロセスを示す。
【0018】
図9図9は、射出成形機とカートとの位置関係を示す。
【0019】
図10図10は、第1可動プラテンの側面からの固定プラテンの図である。
【0020】
図11図11は、射出成形機の内側に位置する金型Aと、射出成形機の外側に位置する金型Bとの部分斜視図を示す。
【0021】
図12A】、
図12B】、
図12C】、
図12D図12A~12Dは、金型内部の冷却液流路を示す。
【0022】
図13図13は、金型内部の冷却液流路を示す。
【0023】
図14A】、
図14B】、
図14C図14A~14Cは、コネクタの取り付けを示す。
【0024】
図15図15は、コネクタの取り付けを示す。
【0025】
図16A】、
図16B図16A~16Bは、接続要素を示す。
【0026】
図17図17は、バルブピンとスプルーピンを移動させるための駆動構成を示す。
【0027】
図18A】、
図18B図18A~18Bは、スプルーピンを移動させるための駆動構成を示す。
【0028】
図19A】、
図19B図19A~19Bは、バルブピンを移動させるための駆動構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を実施するための一例に過ぎず、本発明が適用される装置の構成や各種条件に応じて適宜変更することが可能である。したがって、本開示は、以下の例示的な実施形態に限定されない。
【0030】
図1は、本例示的実施形態に係る射出成形システムの上面図である。より具体的には、マルチモールドシステムであって、一方の金型を冷却しながら、他方の金型(モールド)から成形部品を輩出して他方の金型に樹脂を射出するプロセスである。
【0031】
射出成形機シリンダ11は、射出成形機200の射出シリンダであり、樹脂を溶融射出することにより、射出成形機ノズル1を介して金型への樹脂の射出を可能にしている。
【0032】
射出成形機ノズル1は、射出成形機200の端部に取り付けられている。射出成形機シリンダ11内部の射出成形機ノズル側1に圧力を加えることによってホットランナー2への樹脂の射出が行われる。射出成形機ノズル1は、射出成形機ノズル1の先端に残った樹脂や、射出成形機ノズル1の先端領域から漏れた樹脂を、射出成形機システムの射出成形機シリンダ11側に戻すことができるプルバック(サックバック)機能を有している。
【0033】
ホットランナー2は、樹脂温度を任意の温度に維持する。これにより、通常使用されるコールドランナーのように、金型への射出毎にランナー内部の樹脂の冷却及び廃棄を回避することができ、従ってランナー領域の樹脂廃棄を回避することができる。ホットランナー2は、スプルー4と、マニホールド3と、ホットランナーノズル5とを含み、射出成形機シリンダ11から金型へ樹脂が通過する流路を形成している。
【0034】
スプルー4は、ヒータ(図示せず)を含み、射出成形機ノズル1と金型とが接触する部分であり、樹脂流路の一部である。マニホールド3は、ヒータ(図示せず)を備えており、スプルー4とホットランナーノズル5とが接触する部分であり、樹脂流路の一部である。
【0035】
ホットランナーノズル5は、ヒータ(図示せず)を含み、マニホールド3から流入する樹脂をキャビティ14に流入させることができる。ホットランナーノズル5の先端は狭く、先端の開口部を開閉できるバルブピン6を備えている。このように各要素が温度を維持する機能を有することにより、ランナー内部に位置する樹脂を廃棄することなく、連続的に射出成形を行うことができる。
【0036】
樹脂は、まず射出成形機シリンダ11から射出成形機ノズル1を通り、射出成形機200からの圧力によりホットランナー2に射出される。その後、樹脂は、ホットランナー2の内部に位置するスプルー4を通過し、マニホールド3を通過してホットランナーノズル5に流れる。以下に説明するように、ホットランナーノズル5の内径が狭いため、バルブピン6での開閉が可能である。
【0037】
射出成形機ノズル1から供給された樹脂は、ホットランナー2を構成するスプルー4、マニホールド3、及びホットランナーノズル5の樹脂流路を通り、固定側金型12および移動側金型13の内部の空隙空間を表すキャビティ14に流入する。流れ方向Fは、射出成形機シリンダ11から金型に射出される際に樹脂が流れる方向を示している。これにより、キャビティ14内に樹脂成形部品9が形成される。金型パーティング(parting)ライン10は、固定側金型12と移動側金型13とのパーティングラインを示す。カート300はX軸に沿って設置され、金型を移動させるためのレールまたはアクチュエータ(図示せず)がカート300上に配置される。
【0038】
図1に示すように、単一の射出成形機200で金型Aおよび金型Bへの射出を行うことにより、2タイプの樹脂成形部品が作成される。射出成形機200の側面のそれぞれには、開口部210が形成されている。開口部210は、図1において点線として示されている。金型Aと金型Bとは、開口部210を通って射出成形機200内に交互に挿入及び排出される。金型A及び金型Bは共に、固定側金型12と移動側金型13とから構成され、固定側金型12と移動側金型13との間でホットランナー2からキャビティ14に樹脂を射出することにより樹脂成形を行っている。金型Aおよび金型Bは、それぞれホットランナー2に接続されている。
【0039】
以下、本例示的実施形態の射出成形方法について説明する。
【0040】
まず、射出成形機ノズル1から金型A(または金型B)に溶融樹脂の射出/加圧保持を行い、射出成形機ノズル1が金型Aから分離する。金型Aを射出成形機200の外部に搬出して冷却する。並行して、金型Bが射出成形機200内に搬送され、射出成形機ノズル1は金型Bに向かって進み、金型Bと接触する。
【0041】
次に、金型Bに樹脂成形部品がある場合には、それを取り出し、樹脂成形部品を取り出した後、金型Bに対して溶融樹脂の射出/加圧保持を行う。射出成形機ノズル1が金型Bから分離した後、金型Bは射出成形機200の外部に搬送され、そこで冷却される。並行して、射出成形機200内に金型Aを搬入し、そこで射出成形機ノズル1が金型Aに向かって進み、金型Aと接触する。その後、金型Aの内側から樹脂成形部品を取り外し、金型Aに対して溶融樹脂の射出/加圧保持を行う。
【0042】
記載したように、射出成形機200は、金型との接続および金型からの分離を繰り返し、射出成形機200内外への金型の搬入搬出を繰り返す。
【0043】
本例示的実施形態によれば、射出成形機200から樹脂成形品を取り出して、1つの金型に樹脂を注入しながら、他の金型に射出された樹脂の冷却を行う。これにより、複数の金型、すなわち金型Aと金型Bを交互に冷却し、成形部品を除去して射出することで、生産の効率化を図ることができる。
【0044】
図2は、射出成形機ノズル1がスプルー4に接続するノズル接触領域25の拡大図を示す。前述したように、ホットランナー2は、金型Aと金型Bとの両方に接続する。
【0045】
距離a~cは上記要素の各々の内径を示す。距離aは、スプルー4内の第1樹脂流路28の内径を示す。距離bは、スプルー4内の第2樹脂流路29の内径を示す。距離cは、射出成形機ノズル1内の樹脂流路22の内径を示す。種々の内径間の関係は、c≦a<bである。
【0046】
スプルー4内の第2樹脂流路29の断面積は、スプルー4内の第1樹脂流路28よりも大きく、スプルー4内で狭まる樹脂流路によって射出成形機ノズル1から射出される樹脂の圧力損失が発生しないように構成されている。射出成形機ノズル1からホットランナー2に樹脂が流れているとき、樹脂は、スプルー4内の第1樹脂流路28からスプルー4内の第2樹脂流路29に向かう方向に流れる。射出成形機ノズル1がスプルー4から分離した後、樹脂はスプルー4内の第2樹脂流路29からスプルー4内の第1樹脂流路28の方向に流れるため、スプルー4から樹脂が漏れることがある。
【0047】
図2に示すように、スプルー4内の第1樹脂流路28の内径が「a」であり、スプルー4内の第2樹脂流路29の内径が「b」である場合、a<bの関係は真となる。「a」を「b」より小さくすることで、スプルー4内の第2樹脂流路29からスプルー4内の第1樹脂流路28に樹脂を押し出す圧力が高くなる。これにより、スプルー4から樹脂が漏れにくくなる。なお、ホットランナー2における樹脂流路の形状は、上記形状に限定されるものではない。別の例示的な実施形態では、樹脂流路は射出成形機ノズル1に向かってテーパ状にすることができ、ここで、樹脂流路の内径は徐々に変化させることができる。
【0048】
後述するスプルーピン7の端部7aの外径をdとし、d=aの関係が存在する。スプルーピン7はスプルー4の出口を閉鎖し、樹脂がスプルー4から漏れ出ること、または樹脂がスプルー4に入ることを防止する。スプルーピン7が射出成形機ノズル1側に向かって移動すると、内径が等しい(d=a)ため、スプルーピン7は射出成形機ノズル1を密閉できる。すなわち、樹脂流路の大きさが小さくなる。
【0049】
スプルーピン7を小さくすることにより、スプルーピン7の動きに基づいてスプルー4から押し出される樹脂の量を少なくすることができる。スプルーピン7は単一のロッド形状であり、射出成形機ノズル1側に移動するだけであるため、スプルーピン7を小さくすると、樹脂漏れのみが発生する。樹脂漏れ量は、スプルーピン7の移動量に相当する。樹脂漏れが少なければ、樹脂が糸状に伸びたり、空気がスプルー4に入り込んだりする可能性が低くなる。
【0050】
スプルーピン7の端部7aの外径「d」は、射出成形機ノズル1内部のスプルーピン7の移動を容易にするために、より小さくすることができる。
【0051】
射出成形機ノズル1がスプルー4に接触する際に、射出成形機ノズル1側のスプルーピン7の端部が射出成形機ノズル1に接触しないようにする。射出成形機ノズル1が金型に着脱する際にスプルーピン7との衝突を回避すると、スプルーピン7の寿命を延ばすことができる。
【0052】
上述した説明では流路の直径があるが、流路の断面形状は必ずしも丸くする必要はない。流路の断面積の関係は、断面積(スプルー内部の第1樹脂流路28)<断面積(スプルー内部の第2樹脂流路29)である。
【0053】
図3は、金型Aまたは金型Bのホットランナーノズル5および樹脂成形部品9の拡大図である。距離「e」および「f」は上述の要素の内径を示す。距離「e」はホットランナーノズル5内の第1樹脂流路30の内径を示す。距離「f」はホットランナーノズル5内の第2樹脂流路31の内径を示す。内径の関係は、f<eである。これにより、ホットランナーノズル5の先端が狭くなることにより、バルブピン6と共にホットランナーノズル5をより簡単に閉じることができる。
【0054】
図4A~4Cは、スプルーピン7がどのように移動するかを示す。より具体的には、図4A図4Cは、射出成形機ノズル1から金型のキャビティ14に樹脂が注ぎ込まれてから、樹脂の流入が停止するまでの順序を示す。説明のために、金型Aを参照するが、以下は金型Bに適用可能である。
【0055】
図4Aは、射出成形機ノズル1からホットランナー2および金型Aへの樹脂供給中の状態を示す。射出成形機ノズル1から圧力を加えて樹脂を流動させると、樹脂が金型Aのキャビティ14に流入する結果となる。これは、樹脂が、ホットランナー2の樹脂流路の内部で、樹脂方向Fによって示されるように樹脂の圧力が高い方向から低い方向へ流れるためである。
【0056】
図4Bは、成形機ノズル1からの樹脂供給が停止し、バルブピン6がキャビティ14内への流れを閉じた状態を示す。バルブピン6は、ホットランナーノズル5からの樹脂の漏れを防止するためのピンであり、高い耐摩耗性を有する。バルブピン6は、ホットランナーノズル5とマニホールド3の一部を通過する。バルブピン6は金型パーティングライン10に対して垂直に移動するため、バルブピン6は圧力が低い金型側に移動するホットランナーノズル5内部の樹脂に関連する圧力を受け、バルブピン6でホットランナーノズル5をより確実に閉じることが可能になる。
【0057】
樹脂がキャビティ14内に流入した後、これは、前述したように、金型間に位置する空の空間であり、キャビティ14は充填され、ホットランナー2からの樹脂の流れは停止する。キャビティ14への樹脂の流れは、ホットランナー2に取り付けられているバルブピン6を、ホットランナー2からキャビティ14への樹脂の流れの方向に移動させることによって停止させることができる。樹脂の流れを停止させるタイミングは、所定の時間に基づいて決定することができる。樹脂の射出位置または射出量も決定することができる。流動する樹脂の温度は典型的には170~400°Fの間であるが、温度は成形部品の形状に応じて変えることができる。樹脂の流速は、樹脂の溶融粘度などに応じて異なってもよい。樹脂の流動が停止した後、樹脂成形部品9の冷却が開始される。
【0058】
バルブピン6の移動は、射出成形機200からの信号の受信、または射出成形機200の外部からの信号の受信に基づくことができる。バルブピン6の移動の駆動は空気で行われる。バルブピン6の移動は、バルブピン6の上部に取り付けられた受圧領域に圧力を加えることによって起こる。バルブピン6を移動させるための駆動構成を以下に詳細に説明する。
【0059】
樹脂射出時に射出成形機ノズル1、ホットランナー2、およびキャビティ14に生じる樹脂圧力は、射出成形機ノズル1>ホットランナー2>キャビティ14の順になる。樹脂と流路との摩擦により圧力損失が発生する可能性がある。
【0060】
バルブピン6が樹脂の流れを停止すると、射出成形機ノズル1、ホットランナー2、およびキャビティ14の圧力は、(射出成形機ノズル1=ホットランナー2) >キャビティ14のようになる。
【0061】
図4Cは、スプルーピン7が射出成形機ノズル1側に移動し、樹脂がホットランナー2のスプルー4側から漏れるのを防いだ状態を示す。スプルーピン7はスプルー4の入口を閉じることができ、スプルー4およびマニホールド3内を移動するように位置決めされている。バルブピン6に関して上述したように、スプルーピン7は、圧力がより低いホットランナー2の外部に樹脂漏れようとする強さのため、スプルー4の出口のより強い封止を生成することができる。以下、スプルーピン7を移動させるための駆動構成について詳細に説明する。
【0062】
ホットランナー2に取り付けられているスプルーピン7を射出成形機ノズル1の方向に移動させることによって、ホットランナー2の内部に存在する樹脂がホットランナー2の外部に逆流するのを防ぐことができる。樹脂がホットランナー2の外部に漏れると、ホットランナー2に空気が入り、キャビティ14に入る空気を含む樹脂によって空気を含む成形樹脂部品9が形成される可能性がある。スプルーピン7で樹脂の流出を防止することにより、成形部品への空気の混入を防止することができる。
【0063】
前述したように、図4Bに示す状態から図4Cに示す状態までのスプルーピン7の移動量と同等の樹脂量が、ホットランナー2から押し出される可能性がある。スプルーピン7が移動した後、射出成形機ノズル1内部の樹脂をホットランナー2内に引き込もうとするプルバック(サックバック)を行うことで、射出成形機200から追加の樹脂漏れを防止することができる。射出成形機ノズル1から樹脂が流入するスプルー4側の入口はスプルーピン7により封止され、ホットランナーノズル5はバルブピン6により封止されている。これにより、ホットランナー2内部の圧力を一定の状態に維持することができる。
【0064】
図4Bに図示されているバルブピン6の封止のタイミングおよび図4Cに図示されているスプルーピン7の封止のタイミングは、逆転するか、同時に起こることもできる。
【0065】
射出成形機ノズル1、ホットランナー2、及びキャビティ14内の樹脂の圧力は、ホットランナー2の内部をバルブピン6及びスプルーピン7で封止したとき(図4C)、ホットランナー2>射出成形機ノズル1≧キャビティ14となる。射出成形機ノズル1の圧力は、プルバックを行うことにより圧力が低下するため、ホットランナー2の圧力よりも低くなる。キャビティ14内部のホットランナー2から加わる圧力は排除され、樹脂が硬化を開始すると、圧力はさらに低下する。
【0066】
図17は、バルブピン6、バルブピン6、およびスプルーピン7を移動するための駆動構成の概要を示している。射出成形システムは、コントローラ70と、エアコンプレッサ80と、エアバルブユニット81と、エアパイプ82とを含む。エアバルブユニット81は、エアコンプレッサ80とエアパイプユニット82との間に位置している。エアコンプレッサ80は、バルブピン6、バルブピン6及びスプルーピン7を動かすための圧縮空気を生成する。エアパイプ82は複数のエアパイプ(空気管)を含み、一方、エアバルブユニット81は複数のエアパイプに対応する複数のエアバルブ(空気弁)を含む。コントローラ70は、エアコンプレッサ80によって生成された圧縮空気がエアパイプ82の各エアパイプに供給されるかどうかにかかわらず、エアバルブユニット81(すなわち、複数のエアバルブの各々)を制御する。
【0067】
図18A~18Bは、スプルーピン7を移動させるための駆動構成を示している。なお、図18では、説明の簡略化のため、マニホールド3、スプルー4、及びスプルーピン7以外の部材は省略している。金型Aにはエアパイプ91、92が設置されている。空間90の一方の側にはエアパイプ91が接続され、空間90の他方の側にはエアパイプ92が接続されている。空間90は、スプルーピン7が移動する空間である。エアパイプ91、92は、金型Aの出口で複数のエアパイプ(エアパイプユニット82)の一部と接続されている。金型Bにも同種のエアパイプが設置されている。
【0068】
図18Aにおいて、コントローラ70は、エアバルブユニット81を制御して、エアパイプ92を通して空気が供給されるが、エアパイプ91を通しては供給されないようにする。この場合、図18Aに示すように、スプルーピン7が移動してスプルー4の入口を閉鎖する。図18Bにおいて、コントローラ70は、エアバルブユニット81を制御して、エアパイプ91を通して空気が供給されるが、エアパイプ92を通しては供給されないようにする。この場合、図18Bに示すように、スプルーピン7が移動してスプルー4の入口を開放する。
【0069】
図19A~19Bは、バルブピン6を移動させるための駆動構成を示す。なお、図19では、説明の簡略化のため、マニホールド3、ホットランナーノズル5、バルブピン6以外の部材は省略している。金型Aにはエアパイプ94、95が設置されている。空間93の一方の側にはエアパイプ94が接続されており、空間93の他方の側にはエアパイプ95が接続されている。空間93は、バルブピン6が移動する空間である。エアパイプ94、95は、金型Aの出口で複数のエアパイプ(エアパイプユニット82)の一部と接続されている。金型Bにも同種のエアパイプが設置されている。
【0070】
図19Aにおいて、コントローラ70は、エアバルブユニット81を制御して、エアパイプ94を通して空気が供給されるが、エアパイプ95を通しては供給されないようにする。この場合、図19Aに示すように、バルブピン6は移動してホットランナーノズル5の出口を閉じる。図19Bにおいて、コントローラ70は、エアバルブユニット81を制御して、エアパイプ95を通して空気が供給されるが、エアパイプ94を通しては供給されないようにする。この場合、図19Bに示すように、バルブピン6は移動してホットランナーノズル5の出口を開く。図19A図19Bはバルブピン6を移動させるための駆動構成を図示しているが、バルブピン6を移動させるために同じ駆動構成が適用可能である。
【0071】
上述のように、射出成形システムは、バルブおよびスプルーピンを移動させるためのアクチュエータを含む。アクチュエータは、射出成形機ノズル1がホットランナー2から分離する前に、スプルーピン7を移動させることを可能にする。これにより、射出成形機ノズル1は、スプルーピン7の移動によってホットランナー2から押し出された樹脂をプルバックする(引き戻す)ことができる。
【0072】
バルブピンおよびスプルーピンを移動するための駆動構成は、上述の方法に限定されない。別の例示的な実施形態では、サーボモータまたは油圧システムを使用して、バルブピンおよびスプルーピンを移動させることができる。
【0073】
図5A~5Dは、射出成形機ノズル1とホットランナー2の分離および接続を示している。図5Aおよび図5Bは、射出成形機ノズル1とホットランナー2の分離方法、および分離されたホットランナー2と、分離されたホットランナー2に接続された金型Aとが射出成形機200の外側に移動する方法を示している。
【0074】
図5Aは、射出成形機ノズル1とホットランナー2を分離することを示す。射出成形機ノズル1がホットランナー2から分離して移動する方向は、矢印D1で示す方向である。
【0075】
図5Bは、ホットランナー2および金型Aが射出成形機200の外側に移動する方向を示している。より具体的には、ホットランナー2および金型Aは矢印D2の方向に移動する。矢印D1の方向(図5A参照)と矢印D2の方向は互いに垂直である。ホットランナー2と金型Aが移動する方向と、射出成形機200の外側へホットランナー2と金型Bが移動する方向とが異なっている。
【0076】
より具体的には、金型Aおよび金型Bは軸(例えば、X軸)に沿って位置決めされる。金型Aが金型Bよりも軸のプラス方向に位置していれば、射出成形機200外の移動方向は、金型Aに対してはプラス方向となり、金型Bに対してはマイナス方向となる。金型Aと金型Bの位置関係が逆になっていれば、金型Aをマイナス方向に、金型Bをプラス方向に移動させることにより、射出成形機200外に移動させることができる。
【0077】
図5Cおよび5Dは、射出成形機ノズル1とホットランナー2の再接続方法を示す。
【0078】
図5Cは、射出成形機200の外側にあった金型Aが射出成形機200の内部をどのように移動するかを示す。射出成形機200の外側に移動したときに金型Aとホットランナー2が矢印D2の方向に移動したので、それらは矢印D3の方向に移動し、それは射出成形機200に再び入るときに矢印D2の方向とは逆方向になる。
【0079】
図5Dは、ホットランナー2と金型Aとが射出成形機ノズル1内に移動した後に、射出成形機ノズル1とホットランナー2と金型Aとがどのように再接続されるかを示している。射出成形機ノズル1は、ホットランナー2及び金型Aの方向(矢印D4の方向)に移動する。射出成形機ノズル1が図5Dに示すように移動した後、射出成形機ノズル1とスプルー4、は図4Cに示すように接続する。
【0080】
図6Aは、射出成形機ノズル1及びホットランナー2が再接続された後の状態を示している。射出成形機ノズル1及びホットランナー2が再接続された後、金型パーティングライン10が開き、樹脂成形部品9が取り外される。
【0081】
図6Bは、金型パーティングライン10が再度閉じられた後の状態を示す。
【0082】
図6Cは、射出成形機ノズル1の反対方向にスプルーピン7を移動させることによってスプルー4の樹脂流路が開く状態を示している。ホットランナー2に取り付けられているスプルーピン7を射出成形機ノズル1の反対方向に移動させることによって、射出成形機ノズル1から流れる樹脂を下流に流すことができる。
【0083】
図6Dは、バルブピン6を射出成形機ノズル1側に移動させることによって、ホットランナーノズル5を開き、樹脂をキャビティ14に射出することを示している。図6Dに示されているバルブピン6の閉鎖のタイミングおよび図6Cに示されているスプルーピン7のタイミングは、逆転させることも、同時に行うこともできる。
【0084】
図4A~4C、図5A~5D、および図6A~6Dに描写される種々の処理は、射出成形動作のフローを示す。
【0085】
図7は、金型の閉鎖および開放を行う射出成形機200の一部を示す。
【0086】
射出成形機シリンダ11は、ネジ51と、加熱バレル56と、射出成形機ノズル1と、材料投入ホッパ52とから構成される。ネジ51を後退及び回転させることにより、樹脂材料が射出成形機ノズル1側に送られる。加熱バレル56は、射出成形機ノズル1を通過した樹脂を加熱する。ネジ51と加熱バレル56との間の隙間は、射出成形機ノズル1に向かって狭まる。射出成形機シリンダ11及び射出成形機ノズル1への樹脂の投入を樹脂スケーリングと呼ぶ。
【0087】
樹脂スケーリングにより、材料投入ホッパ52に樹脂を投入すること、及び、ネジ51を後退及び回転させることにより射出成形機ノズル1側に樹脂を送ることができる。この時点で、樹脂がネジ51と加熱バレル56の内壁との間に挟持されると、加熱バレル56によって発生した熱と、ネジ51が回転することによって樹脂に付加される剪断熱とによって樹脂が溶融する。射出成形機200では、任意の決定された量の樹脂材料が溶融される。金型ごとに任意に決定される量が変化する。
【0088】
射出成形機ノズル1とネジ51との間に樹脂が蓄積された段階でスケーリングが完了する。射出成形機ノズル1から樹脂が漏れ出ないことを保証するために、遮断ノズル49が射出成形機ノズル1を閉じている。
【0089】
固定プラテン53および第1可動プラテン54は、金型を閉じるためのプラテンである。この金型は、固定プラテン53と第1可動プラテン54との間に挟持される。金型から見て、固定プラテン53は射出成形機ノズル1側にあり、金型側には移動しない。金型から見て、第2可動プラテン55は、射出成形機ノズル1の反対側に位置している。第1可動プラテン54を移動させることにより、固定プラテン53とともに固定側金型12および可動側金型13を閉じることができる。
【0090】
ホットランナー2がノズル接触領域25の平面に垂直な方向(図2参照)に沿って、または射出成形機ノズル1の移動方向に沿って移動しても、スプルーピン7は、射出成形機ノズル1とスプルー4との間で樹脂が長くなるのを防止する。
【0091】
上述したように、スプルーピン7を設置することにより、射出成形機ノズル1の分離中にホットランナー2から漏れ出した樹脂を引き戻し、射出成形機200内で樹脂が糸を形成する可能性を低減することができる。ホットランナー2からの樹脂の漏れが少なくなるため、射出成形機200の内部要素間に樹脂や樹脂が漏れ出して詰まりを起こす量の増加を低減することもできる。より具体的には、中断することなく連続成形を行う可能性が高くなる。また、空気を含む樹脂成形部品が形成される可能性を低減することができる。
【0092】
バルブピン6が最初に閉じられ、次いでスプルーピン7が閉じられる場合、樹脂流路内に位置する高圧下の樹脂は、スプルーピン7が閉じる前に射出成形機ノズル1に移動する。スプルーピン7を閉じた後に、プルバック(引き戻し)を行い、ホットランナー2内部に位置する樹脂を射出成形機ノズル1内に引き込むことにより射出成形機200及びホットランナー2からの樹脂漏れを防止することができる。
【0093】
まずスプルーピン7を閉じ、次にバルブピン6を閉じると、樹脂流路の内側に位置する高圧下の樹脂は、バルブピン6を閉じる前にキャビティ14に移動する。この場合、ホットランナー2からの樹脂漏れを確実に防止することができるが、高圧下の樹脂がキャビティ14内に流入しすぎるため、樹脂成形部品9には所定量以上の樹脂が含まれることになる。これにより、成形部品の精度が劣化することがある。
【0094】
スプルーピン7とバルブピン6を同時に閉じると、樹脂漏れや成形部品の劣化を軽減することができる。これは、樹脂流路の内部に位置する高圧下の樹脂が射出成形機ノズル1およびキャビティ14に移動できるので、達成することができる。
【0095】
上記実施形態では、射出成形機ノズル1が閉じて樹脂の流路を小さくするようにスプルーピン7を移動させることが説明されている。スプルーピン7を移動させることにより、流路の断面積を小さくしたり、射出成形機200の他の部分への樹脂の供給を少なくしたり、射出成形機200の他の部分からの樹脂の受け入れを少なくしたりすることができる。特に、スプルー4の流路の断面積が小さくなり、スプルー4に流入する樹脂が少なくなり、及び/又は、スプルー4から漏れる樹脂が少なくなる。流路の断面積は、図1のX-Z平面の面積である。
【0096】
樹脂漏れの量を低減するために、スプルーピン7が第1樹脂流路28と第2樹脂流路29との境界を移動するために使用できる。Y方向の第1樹脂流路28の高さが小さければ、スプルーピン7の先端の断面積の設計を第1樹脂流路28の断面積よりも大きくすることができる。この場合、スプルーピン7は、第1樹脂流路28と第2樹脂流路29との境界に進み、その結果、スプルーピン7が第2樹脂流路29における樹脂の流路を完全に閉じるようにすることができる。スプルーピン7は、スプルー4を通過してキャビティ14に到達する樹脂の障害となることにより、樹脂の流路の断面積を小さくすることができる。
【0097】
射出工程が行われる際、スプルーピン7は、樹脂の流路の断面積が、スプルーピン7が射出成形機ノズル1に向かって移動する際の樹脂の流路の断面積よりも大きい位置にある。例えば、スプルーピン7の第1の位置は図4Aのスプルーピン7の位置であり、スプルーピン7の第2の位置は図4Cのスプルーピン7の位置である。スプルーピン7が第1位置から第2位置に移動すると、樹脂流路内を流れる樹脂量が減少する。スプルーピン7が第2位置から第1位置に移動すると、樹脂流路を流れる樹脂量が増加する。
【0098】
スプルーピン7は、射出成形機ノズル1がスプルー4に接触してから金型への射出が完了するまでの第1位置にある。
【0099】
なお、射出成形機ノズル1を閉じる構造は、スプルーピン7に限らない。スプルー4の入口を覆う蓋も適用可能である。この蓋は、射出成形機ノズル1がスプルー4と係合解除すると、スプルー4の入口より上方にスライドすることができる。この蓋は、射出成形機ノズル1がスプルー4に接触すると、スプルー4の入口から滑り出ることができる。
【0100】
図2のX方向に沿って移動するスプルーピンも、樹脂の流路の縮小を可能にする。この場合、スプルー4はX方向に沿って移動し、第1樹脂流路28又は第2樹脂流路29の断面積を小さくする。
【0101】
なお、スプルー4の先端の形状は、円筒状に限らず、円錐状や三角錐状等であってもよい。スプルー4の形状にかかわらず、スプルーピン7はスプルー4の内部と接触することによってある点で停止する。
【0102】
スプルーピン7は、溶融した樹脂が漏れないように、少なくとも樹脂が冷えるまでスプルー4を閉じた状態に保たなければならない。例えば、スプルーピン7は、金型が射出成形機200の外に移動するまで樹脂の流路を減少させ続ける。
【0103】
バルブピン6および遮断ノズル49は、樹脂の流路を減少させるために移動する。これは、ホットランナーノズル5における流通経路の断面積が減少し、その結果、キャビティ14に流入する樹脂が少なくなり、かつ/又はホットランナーノズル5から樹脂が漏れることが少なくなることを意味する。射出成形機ノズル1内の流路の断面積は減少され、その結果、より少ない樹脂がスプルー4に流入し、かつ/又は射出成形機ノズル1から漏れる。
【0104】
図1~7は、本例示的な実施形態による金型の詳細を示す。ここで、射出成形システムの動作の一例を提供する。
【0105】
まず、図9図11を参照して、本実施形態の射出成形システムの装置構成について説明し、図8を参照して、本実施形態の射出成形システムの工程について説明する。
【0106】
図9は、本実施形態の射出成形機200とカート300との位置関係を示す。図9に示すように、射出成形機200は、射出成形機ノズル1及び射出成形機シリンダ11から構成される射出装置201と、型締装置(金型クランプ装置)58と、成形部品を除去する除去装置とを含む。射出装置201及び型締装置58は、Y方向に取り付けられている。
【0107】
型締装置58は、型締めを行うとともに、金型A及び金型Bの開閉を行うものであり、本実施形態ではトグル式型締装置である。また、固定プラテン53、第1可動プラテン54および第2可動プラテン55は、クランプ装置58内でY方向にこの順序で配置されている。プラテン53~55には、複数(本実施形態では4本)のタイバー59が挿通されている。各タイバー59は、一端が固定プラテン53に固定されたY方向に延びる軸である。各タイバー59は、第1可動プラテン54に形成されたそれぞれの貫通孔に挿入される。各タイバー59の他端は、調整機構55aを介して第2可動プラテン55に固定されている。第1可動プラテン54および第2可動プラテン55は、フレーム203と直交するY方向に移動することができる。固定プラテン53は、フレーム203に固定されている。フレーム203は、カート300のフレームを含み、アクチュエータ18及び複数のローラ240を支持する。
【0108】
第1可動プラテン54と第2可動プラテン55との間にはトグル機構(図示せず)が設置されている。トグル機構により、第1可動プラテン54は第2可動プラテン55に対して、すなわち、固定プラテン53に対して、Y方向に前方/後方に移動する。
【0109】
射出成形機200は、クランプ力を測定するためのセンサ(図示せず)を含む。本実施形態では、各センサはタイバー59に設置された歪みゲージであり、タイバー59の歪みを検出してクランプ力を算出する。
【0110】
調整機構55aは、第2可動プラテン55上で自在に回転できるようにナット55bで支持されており、駆動源としてモータ55cを、モータ55cの駆動力をナット55bに伝達する伝達機構(本実施形態ではベルト伝達機構)を備えている。各タイバー59は、第2可動プラテン55に形成された穴を通過し、ナット55bと係合する。ナット55bを回転させることにより、ナット55bとタイバー59とのY方向の係合位置が変更する。つまり、タイバー59に対して第2可動プラテン55が固定される位置が変更する。これにより、第2可動プラテン55と固定プラテン53との間の空間を変化させることができ、クランプ力等を調整することができる。モータ55cの各回転量は、ロータリエンコーダ等のセンサ(図示せず)によって検出される。モータ55cの回転量を検出しながらモータ55cを駆動することにより、タイバー59に対して第2可動プラテン55が固定される位置を初期位置に対して任意の位置でより高精度に変更することができる。
【0111】
固定プラテン53と第1可動プラテン54との間の領域(成形動作位置)に移動することにより、射出成形機200から金型が射出される。領域内に持ち込まれた金型Aまたは金型Bは、固定プラテン53、第1可動プラテン54、および第2可動プラテン55の間に挟持される。開閉は、第1可動プラテン54の移動を介して可動金型13の移動に基づいて行われる。
【0112】
金型A及びBは、固定金型12及び可動金型13に属する一対(ペア)であり、固定金型12に対して開閉される。成形部品は、固定金型12と可動金型13との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出することにより成形される。固定板(クランププレート)12aおよび13aは、固定金型12および可動金型13にそれぞれ固定されている。固定板12a、13aは、射出成形機200の固定プラテン53と第1可動プラテン54との間の領域(型締め位置)で金型A、Bをロックするために使用される。
【0113】
また、固定金型12と可動金型13との間の閉鎖状態を維持するための自閉ユニット301が金型A及び金型Bに対して取り付けられている。自閉ユニット301は、射出成形機200から金型A及びBが排出された後に、金型A及びBが開くのを防止することを可能にしている。本実施形態では、自閉ユニット301は磁力を利用して金型AおよびBを閉状態に保つ。自閉ユニット301は、固定金型12及び可動金型13の対向面に沿った複数箇所に設置されている。自閉ユニット301は、本実施形態では、固定金型12の側にある要素と、可動金型13の側にある要素とを組み合わせたものである。これらの要素の組合せは、例えば永久磁石および鉄などの磁性材料、又は一対の永久磁石の組合せである。
【0114】
別の例示的な実施形態では、自閉ユニット301のために、金属およびバネから作られた、プラスチックなどの弾性変形を使用する機構、または機械式機構を使用することができる。磁力を用いると、金型を少し開いたときに閉じた状態に戻ることができるので有利である。一部の自閉ユニットでは、一般に型締め装置のクランプ力との関係で閉鎖力が小さく、その結果、金型内の樹脂圧により金型がわずかに開く。磁力を利用した自閉ユニットにより、金型がわずかに開いても金型内の樹脂圧力の低減に連動して金型を再閉鎖することが可能である。このとき、金型と金型内の樹脂との密着状態が維持され、成形部品の品質が安定する。
【0115】
自閉ユニット301については、2対以上、4対が有利であり、金型(AおよびB)の1つのために設置することができる。一対の自閉ユニットは、金型AおよびBが閉鎖状態にあるとき、約0.1mm~数mmの間の空間を開いたままにすることができる。これにより、開状態から閉状態に遷移する際の磁力の急激な変化を防ぐことができ、ひいてはバランスのとれた閉状態を維持することができる。
【0116】
金型A及びBを移動させる駆動源であるアクチュエータ18、アクチュエータと金型Bとの間のリンク17、金型Bと金型Aとの間のリンク15、及びローラ240が、カート300に取り付けられている。金型B側に設置されたアクチュエータ18は1つだけである。2つの金型は、リンク15を介してアクチュエータ18と共に移動させることができる。ローラ240は、X軸に沿って設置され、射出成形機200への金型AおよびBの出入りを可能にする。複数のローラ240は2つの列を形成し、それぞれがY方向に分離する。
【0117】
ローラ240は、ローラ240Zとローラ240Yの2つのタイプのローラを含み、それらは2つの異なる軸上で回転する。ローラ240ZはZ方向の軸の周りを回転し、ローラ240YはY方向の軸の周りを回転する。ローラ240Zは、金型A及びBのX方向への移動を案内し、金型A及びBの側面(固定版12a及び13aの側面)に接触し、側面から金型A及びBを支持する。ローラ240Yは、金型A、BのX方向への移動を案内し、金型A及びBの底面に接触し、下から金型A及びBを支持する。
【0118】
コントローラ70は、射出成形機200、金型A及びB、並びにカート300を制御する。制御ユニット70は例えば、CPU等のプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置、センサやアクチュエータに接続されるインターフェース等を含む。プロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行する。以下、コントローラ70が実行するプログラム(制御)の一例について説明する。
【0119】
図10は、固定プラテン53を第1可動プラテン54の側から見た図である。射出成形機ノズル1が前後に移動する開口領域62は、固定プラテン53の中央領域に形成される。
【0120】
射出成形機200の内部にはローラ240Zと連続して設置されるローラはないが、ローラ240Yと連続してローラ63が設置されている。ローラ63および240Yは同じサイズであってもよいし、異なるサイズであってもよい。ローラ63は、射出成形機200の外側に並べられ、ローラ240Yと並ぶX軸上でほぼ直線状である。ローラ63は、金型AおよびBが射出成形機200の外部から射出成形機200の内部へスムーズに移動することを可能にする。
【0121】
典型的には、ローラ240Zと並ぶX軸上で略直線上のZ軸方向において円周方向に回転するローラ(図示せず)を設置する場合には、固定プラテン53と固定板12a、13aとの間にローラ240Zの大きさの隙間ができる。そのため、ローラ240Zと連続して設置されているZ軸周りに回転する場合、射出成形機200の内部にローラ(図示せず)を設置することはできない。
【0122】
金型A、Bが射出成形機200の内部を移動する際に、固定プラテン53のXZ平面と固定板12a,13aのXZ平面とが接触すると、摩擦力により金型A、BのX方向への移動が困難になったり、擦れによる摩耗が発生したりする可能性がある。そのため、固定プラテン53の内面は、X軸方向に延びる溝61を有している。互いに垂直方向に分離された2列の溝61が設けられている。溝61はそれぞれローラユニット61aを含む。
【0123】
ローラユニット61aは、ローラSRが自由に回転するようにローラSRを支持している。ローラSRはZ方向に回転軸回りに回転し、金型A、BのX方向への移動を案内する。ローラSRは金型A、Bの外面(固定板12a、13aの外面)に接触し、側面から金型A、Bを支持する。ローラユニット61aは、バネ(図示せず)の付勢によって、ローラSRが溝61から突出する位置に位置決めされている。本実施形態では、ローラユニット61a及びローラSRの複数の例を用いる。
【0124】
クランプ時には、ローラユニット61aは溝61内に退避され、ローラSRが溝61から突出しないように位置決めされる。ローラユニット61aは、金型A、B及び固定プラテン53の内面が金型A、Bを交代する際に内面と接触して傷つけるのを防止することができる。ローラユニット61aは、クランプ中に閉じている固定プラテン53及び金型A、Bの内面を妨げることはない。
【0125】
ローラ支持体64は、固定プラテン53のX方向の両側に取り付けられている。ローラSRはローラ支持体64に支持されている。ローラ支持体64及びローラSRは、射出成形機200内部と射出成形機200外部との間で金型A、Bを搬送する際に、金型A、Bをより高速かつより円滑に搬送することを可能にする。
【0126】
固定プラテン53には、固定金型12を固定プラテン53に固定するための複数の固定機構60(以下、「クランプ(複数)」という)が配置されている。各クランプ60は、固定板12a及び13aと係合する係合部60aと、係合位置と係合解除位置との間で係合部60aを移動させる内蔵アクチュエータ(図示せず)とを有している。アクチュエータは、油圧アクチュエータまたは空気アクチュエータのような流体アクチュエータである。多数の金型が頻繁に交互に配置される状況では、流体アクチュエータが有利である。
【0127】
本実施形態では、電磁クランプを用いている。電磁クランプは、クランプされるべき物体に存在するコイル内部の磁性体(磁性材料)を、コイルに電流を流すことにより、比較的短時間で磁化、消磁することができる。これにより、本実施形態では、金型の着脱が可能となる。
【0128】
第1可動プラテン54については、固定プラテン53と同様に、第2可動金型55を固定するためにローラSR及びクランプ60が用いられる。
【0129】
図11は、射出成形機200の内側に位置する金型Aおよび射出成形機200の外側に位置する金型Bの部分斜視図を示す。より具体的には、図11は、第2可動プラテン55(図9参照)が配置されている側から、および、アクチュエータ18が配置されている側から、金型AおよびBを見ることを図示する。金型A及びBは、ローラ240Y及び240Zの回転に基づいて、射出成形機200の外部から射出成形機200の内部に移動することができる。
【0130】
金型Bを交換する場合、図11に示す位置310から金型Bの取外し及び設置を行うことができる。金型Bは冷却されるときカート300上の位置310で待機する。金型Aを交換する場合、カート300のアクチュエータ18の反対側の位置から取り外し及び設置を行うことができる。金型B及びアクチュエータ18はリンク17で連結され、金型A及び金型Bはリンク15で連結されている。これにより、金型Aと金型Bとが一緒に移動する。なお、金型の交換位置は上述したものに限らず、上方から行ってもよいし、アクチュエータ18側で金型A、Bの両方の交換を行ってもよい。
【0131】
本実施形態で説明した金型A、Bは、成形部品の種類に応じて頻繁に交換することができる。近年、さまざまなタイプの金型が、一度に製造される金型の数と同様に、少量で製造される金型の数も増加している。したがって、射出成形機システムの1つの動作で2タイプの成形部品を製造することは、製造作業スペースにおいて大きなメリットがある。
【0132】
上述したように、前述の射出成形機システムは、種々の金型を頻繁に交換しながら製造を行うことを可能にする。これを達成するために、冷却液流路が樹脂を冷却するための冷却液を流すために使用され、導管が金型A、B内のバルブピン6及びスプルーピン7などを制御するための電気信号を送信するために使用される。冷却液流路及び導管は、金型A、B内部を通り、それぞれ金型A、B外に位置する冷却液供給装置及びコントローラ70(図9参照)に接続されている。本実施形態では、冷却液は水であるが、同様の冷却効果を得るものであれば、任意の液体を適用可能である。
【0133】
図12A図12D図13図14A図14B、および図15を参照して、本例示的な実施形態の金型AおよびBのための冷却液流路および導管の構造を説明する。
【0134】
図12A図12D及び図13は、金型A及びBの冷却液流路の構造を示す。
【0135】
図12Aは、金型AまたはBの斜視図を示す。断面MはYZ平面に対して平行である。図12B図12Dは、断面Mからの金型Aまたは金型Bの図を示す。上述したように、樹脂成形部品9は、金型の中央領域に位置する。液体流入口20iおよび液体流出口20oは冷却液体流路20と関連しており、液体流入口21iおよび液体流出口21oは冷却液体流路21と関連しており、X軸、すなわち金型が移動する方向に沿った金型の異なる平面に設けられている。液体流入口20i、液体流出口20o、液体流入口21i、および液体流出口21oは、金型のための配管インターフェースと考えられる。
【0136】
また、冷却液流路20、21は金型内で互いに別々の経路をたどっており、一方の冷却液流路を流れる液体が、外部配管を取り付けることができる他方の冷却液流路から出て行くことはないが、使用されていない。別の例示的な実施形態では、使用されていない冷却液体流路から液体が漏れることが防止され、したがって、2つの独立した流路は必要とされない。
【0137】
冷却液流路20、21を固定側金型12に設置することにより冷却液流路20、21が移動する方向をX軸方向のみに制限することにより、安定した冷却を達成することができる。固定側金型12と可動側金型13との間に位置するキャビティ14の一定割合超、例えば半分超が、可動側金型13に位置するなら、固定側金型12に2つの冷却液路を設けた場合に冷却効率が低下しうる。
【0138】
図12B~12Dは、YZ平面からの金型Aまたは金型Bの図を示す。キャビティ14(図12B図12Dには図示せず)が固定側金型12に一定割合超である場合、図12C及び図12Dに図示されているように、2つの冷却液経路を固定側金型12に設置することができる。キャビティ14(図12Cまたは図12Dには図示せず)が固定側金型12に一定割合未満である場合、図12Bに示すように、冷却液経路を固定側金型12および可動側金型13内にそれぞれ設置することができる。
【0139】
冷却効率は、キャビティ14の形状と同様に、キャビティ14のサイズで達成することができる。キャビティ14の形状に応じて、2つの冷却液経路の位置を決めることができ、冷却液経路が容易に金型を通過できるようにする。金型内の冷却液経路の形状が複雑になると、金型のコストは比例的に上昇する。したがって、冷却液経路は、例えばキャビティ14の複雑な領域を含む金型を通過しない。
【0140】
図13は、金型AおよびBがカート300に設置される場合の冷却液経路、及び、それぞれの入力/出力を介して金型に取り付け/接続されている外部配管を示している。より具体的には、図13は、射出成形機用シリンダ11側から見たXZ平面を示している。金型Bから見て、金型AはX軸のプラス方向に位置し、アクチュエータ18はX軸のマイナス方向に位置している。射出成形機200からX軸のプラス方向に金型Aが移動し、射出成形機200からX軸のマイナス方向に金型Bが移動すると、いずれの金型も射出成形機200の外側に移動する。
【0141】
金型を設置した場合、図13のように、金型Aは冷却液経路20を使用し、金型Bは冷却液経路21を使用する。金型Aと金型Bとの位置関係が逆の場合、金型Aは冷却液経路21を使用し、金型Bは冷却液経路20を使用する。
【0142】
金型Aに対して、冷却液流路20に液体を供給する配管600iは、液体流入口20iに接続されている。配管600oは、液体が冷却液流路20を出ることを可能にするものであり、液体流出口20oに接続されている。金型Bに対して、配管600iは液体流入口21iに接続され、配管600oは液体流出口21oに接続されている。
【0143】
また、金型Aと金型Bとの位置関係にかかわらず、金型を設置する際に、射出成形機200に入る必要なく容易に配管の接続を行うことができる。配管が金型Aと金型Bとの間を通過せず、射出成形機200内に入らないため、配管が金型と射出成形機200内の他の構造物との間に挟まることによる目詰まり、又は、配管に損傷が生じたりするなどの問題の可能性を低減することができる。図13の場合、金型Aの冷却液経路21および金型Bの冷却液経路20は使用されず、そのようなものとして外部配管に接続されない。
【0144】
電気信号を供給するための導管の使用について、図14A~14Bおよび図15を参照して説明する。図14Aは、図12Aにおけるように、金型Aまたは金型Bの類似の斜視図を示す。図12Aと同様に、樹脂成形部品9の説明を簡略化するために、金型の中心領域が示されている。
【0145】
導管コネクタ22および23は、導管2223を介して金型内部の外部電気配線の接続を容易にする。導管コネクタ22および23は、X軸に沿って金型の異なる平面に設けることができ、金型の移動方向にそれぞれ金型の反対側に配置される。より具体的には、導管コネクタ22および23は、外部の電気配線が導管2223を介してホットランナー2に接続されているコネクタ24に到達することを可能にする。コネクタ24は、導管2223にも接続されている。
【0146】
コネクタ24は、外部電気配線をホットランナー2に関連するコントローラ(図示せず)に到達させることを可能にする。金型の外側の外部電気配線は、コントローラ70に接続される。したがって、制御ユニット70(図9参照)は、導管コネクタ22、23、導管2223、およびコネクタ24を介して提供される電気配線を介してホットランナー2を制御できる。
【0147】
導管2223および導管コネクタ22、23は、ホットランナー2の指示または制御を容易にするので、導管2223、導体22、および導管導体23は、ホットランナー2が配置されている固定側金型12の上に配置されている。別個の冷却液経路20及び21とは異なり、導管2223は、コネクタ24で交差する単一の経路である。冷却液経路とは異なり、導管コネクタ22及び導管コネクタ23を介して入る電気配線の経路が互いに干渉しないようにすることを保証する必要はない。逆に、場合によっては、導管導体22および導管導管23にそれぞれ関連する電気配線の経路を単純化するために、回路、プリント回路基板(PCB)、または他の電子デバイスを共有することが有益であり得る。
【0148】
図14Bは、金型Aまたは金型BをYZ平面から見た図である。導管コネクタ22または導管コネクタ23のいずれかに関連する電気配線の経路は、キャビティ14の形状またはサイズに関係なく、ホットランナー2側の導管2223を介してコネクタ24に接続できる。別の例示的な実施形態では、導管コネクタ22または導管コネクタ23に関連する電気配線の経路は、コネクタ24を使用することなく、導管2223を介してホットランナー2に関連するコントローラ(図示せず)と直接接続することができる。ホットランナー2は、任意の方向に整列(位置合わせ)させることができる。ホットランナー2は図14AのX軸に沿って整列されているが、図14Cではホットランナー2がZ軸に沿って整列されている。
【0149】
図15は、金型AおよびBがカート300(図15には示されていない)上に設置されている場合の電気配線接続の構造を示す。導管700は、射出成形機200の外側に、任意の方向に金型ごとに2つの異なる平面で配置され得る。例えば、金型が射出成形機200から出る方向である。追加の金型を設置する際の導管700の接続は、金型AおよびBの位置関係にかかわらず容易に達成することができる。導管700は、制御ユニット70に接続される電気配線を含む。金型Aでは、導管700は、導管コネクタ22を介して導管2223に接続する。金型Bでは、導管700は、導管コネクタ23を介して導管22223に接続される。
【0150】
別の実施形態では、冷却液経路および電気配線経路の両方について、それぞれの2つを1つの金型に含めることができる。オペレータの操作性は、冷却液体経路と電気配線経路の同じレイアウトを金型の任意の表面上に設けることによって強化される。
【0151】
上述のように、金型が射出成形機200を出る方向に、金型およびそれらの関連するコネクタのための配管および導管を配置することによって、射出成形機200内部の配管および導管の潜在的な詰まり、または配管または導管が損傷を受けることを低減することが可能である。金型の移動方向に配置された金型の2つの表面のそれぞれに外部配管および/または外部導管を接続することが可能であるため、金型の位置に関係なく、内部配管および/または内部導管を射出成形機200から出るように設置することが可能である。上述した液体流入口(20i、21i)、液体流出口(20o、21o)、導管コネクタ(22、23)を総称して「外部接続部(ユニット)」と呼ぶことができる。外部接続部により、射出成形機外部の機器、ユニット等の接続や、金型に対する所定の工程の動作が可能である。
【0152】
ユーザが任意の位置にある金型を別の金型に交換したいとき、ある位置に配置される金型が、2つの異なる平面において同じ機能を有する2セットの配管と2セットの導管とを有する場合、ユーザは、金型を容易に交換することができる。ユーザは、どの金型が任意の位置に配置され得るかを心配する必要がないので、ユーザは2つの金型が適切に配置され得るように、別の位置に配置される別の金型を選択する必要がない。金型の異なる平面にある配管および導管用の2つの入口/出口により、ユーザは任意の2つの金型の組合せを選択することができ、その結果、より高い生産性が得られる。
【0153】
例えば、位置Aの金型を金型1から金型2に交換し、位置Bの金型を金型3から金型4に交換した後、位置Aの金型を金型2から金型3に交換することができる。位置に関係なく金型を設置することができるので、交換する位置での作業のみを行うことができる。
【0154】
以下では、2セットの配管および導管が同じ機能を有する2つの異なる平面について説明する。同じ機能とは、例えば、金型を冷却するための液体を入力し、金型を冷却するために使用された液体を出力し、ホットランナーを制御部と通信するように制御することを指す。
【0155】
図16A~16Bは、本実施形態の接続要素を示す。図16Aは、金型Aまたは金型BのY-Z平面であり、図12A、14A、および14Cに図示される表面E1を示す。図16Bは、金型AまたはBのY-Z平面であり、図12A、14A、および14Cにも示される表面E2を示す。E1とE2は、金型AまたはBのY-Z平面の異なる平面であり、互いに反対側の平面である。
【0156】
金型AまたはBは、E1内の液体流入口20とE2内の液体流入口21iとを含み、これらは、上述のように、液体を入力するための外部配管に接続するために使用される。また、金型AまたはBは、E1内の液体流出口20oと、E2内の液体流出口21oとを含み、これらは、上述のように、液体を出力するための外部配管に接続するために使用される。E1およびE2はまた、導管コネクタ22および23を含む。したがって、金型の位置に応じて、ユーザは、E1上の外部接続部(ユニット)またはE2上の外部接続部のいずれかを使用することを選択することができる。図16A図16Bは、外部接続部の一例を示しており、ここで、外部接続部は、固定側金型12または移動側金型13のいずれかに配置することができる。
【0157】
リンク15およびリンク17を取り付ける機構もまた、E1平面およびE2平面の両方に配置される。E1は、液体流接続要素20i、20oおよび導管接続要素22cと、リンク15を取り付けるための機構と、リンク17を取り付けるための機構とを含む。E2は、液体流入口21iと、液体流出口21oと、導管接続要素23cと、リンク15を取り付ける機構と、リンク17を取り付ける機構とを含む。リンク15を取り付ける機構と、リンク17を取り付ける機構とは、単一の機構とすることができる。
【0158】
図18A図18Bおよび図19A図19Bに戻ると、別の例示的な実施形態では、2つの独立したエアパイプを、冷却液経路のように金型内に設置することができる。一方のエアパイプに接続可能な一方の空気入口(エアインレット)は金型の一方の側に設置でき、他方のエアパイプに接続可能な他方の空気入口(エアアウトレット)は金型の他方の側に設置できる。金型の他方の側は、金型の一方の側とは反対側である。
【0159】
図8は、コントローラ70が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図8A~8Bのフローチャートの各ステップは、図1~7および図9~11のそれぞれの状態を参照して説明される。なお、以下の例では、金型Aと金型Bを交代しながら成形動作を行う場合、例えば、金型Aを用いて成形する→金型Bを用いて成形する→金型Aを用いて成形する場合について説明する。
【0160】
S1では、初期設定を行う。ここで、例えば、金型A、Bのそれぞれについて、射出装置201及び型締装置58の動作条件が登録される。これらには、例えば、一度に射出される樹脂量、温度、射出速度、型締力(クランプ力)、タイバー59に対する第2可動プラテン55の位置の初期値等が含まれる。金型Aと金型Bが同じ場合でも、これらの条件は異なることがある。最初の成形動作に金型Aを使用すると、金型Aに関する条件が自動的に動作条件として設定される。さらに、射出成形機シリンダ11の加熱、樹脂の可塑化及び測定などが、初めて開始される。
【0161】
S2では、金型Aが射出成形機200内に搬送される。可動プラテンを摺動させるモータ57は、固定プラテン53と第1可動プラテン54との間の空間が金型Aの厚さ(Y方向の幅)よりも若干広くなるように駆動されることで、金型Aを固定プラテン53と第1可動プラテン54との間で摺動させることができる。次に、コントローラ70は、金型Aの投入(ロード)及びアクチュエータ18の駆動を制御して金型Aを射出成形動作位置に投入する。投入が完了すると、投入完了を示す信号がコントローラ70に送信される。投入完了を示す信号を受信すると、モータ57は固定プラテン53と第1可動プラテン54とを金型Aに密着させるように駆動される。このとき、成形中にクランプ力が発生するので不要となる。さらに、固定機構60の駆動により、固定プラテン53と第1可動プラテン54との両方に金型Aがロックされる。
【0162】
S3では、固定プラテン53および第1可動プラテン54による金型Aのクランプが、トグル機構を駆動するためにモータ57を駆動することによって行われる。トグル機構は互いに回転可能な複数のリンクから構成され、第1可動プラテン54と第2可動プラテン55との間の距離を変化させることができる。これにより、金型を強く締め付ける(クランプする)ことができる。
【0163】
S4では、金型A、Bに対する射出の準備を行う。ここでは、アクチュエータ57を駆動して射出装置201を移動させ、射出成形機ノズル1を金型Aに接触させる。アクチュエータ57は可動プラテンを移動させるための駆動源である。射出準備は、射出成形機ノズル1が金型に接触し、バルブピン6およびスプルーピン7を移動させて樹脂の流路を開放することを含む。
【0164】
S5では、溶融樹脂の射出及び保圧(dwelling)を行う。射出装置201は、射出成形機ノズル1から金型A内のキャビティ14に溶融樹脂を充填し、射出成形機シリンダ11内の樹脂を高圧で金型A内に押し込み、樹脂固化による体積減少分を補償するように駆動される。S5の処理により、実際のクランプ力がセンサ68によって測定される。成形中、金型Aの温度が徐々に上昇するため、金型Aは熱膨張する。場合によっては、ある期間が経過した後に、初期クランプ力とクランプ力とに差が生じる。したがって、センサ68による測定結果に基づいて、次回のクランプ時のクランプ力を補正することができる。
【0165】
クランプ力の調整は、モータ55cを駆動することによるタイバー59に対する第2可動プラテン55の位置の調整によって行われる。これにより、センサ68による測定結果に基づいて、タイバー59に対する第2可動プラテン55の位置の初期値を補正することで、クランプ力を調整してクランプ力の精度を高めることができる。タイバー59に対する第2可動プラテン55の位置の調整は、任意のタイミングで行うことができる。
【0166】
S6では、スプルーピン7を射出成形機ノズル1側に移動させ、樹脂がホットランナー2のスプルー4側から漏れないようにする。キャビティ14への開口部内の流れは、バルブピン6で停止される。
【0167】
S7では、射出成形機ノズル1の出口付近に存在する溶融樹脂のプルバック(引き戻し)が行われる。ネジ51は、射出成形機ノズル1の逆方向に退避させて後方に送られる。射出成形機ノズル1の出口付近に位置する樹脂は、射出成形機ノズル1の内部に戻される。
【0168】
S8では、射出成形機ノズル1への樹脂の供給が停止され、射出成形機ノズル1は遮断ノズル49で閉じられる。
【0169】
S9では、射出成形機ノズル1の退避が始まる。図5に示すように、射出成形機ノズル1は、金型から分離する。このとき、S6においてスプルー4がスプルーピン7で封止されているため、樹脂の逆流が生じにくい。射出成形機ノズル1は、射出成形機ノズル1の分離前に遮断ノズル49で封止されており、射出成形機ノズル1からの樹脂漏れが生じにくい。また、プルバックにより、射出成形機ノズル1の樹脂流路に存在する樹脂が減少し、射出成形機ノズル1からの樹脂漏れがより困難になる。その結果、射出成形機ノズル1とスプルー4との間に樹脂が溜まることがないので、射出成形機ノズル1に空気が入りにくくなる。また、成形を連続して行う場合であっても、射出成形機200の部品間に樹脂の塊が挟まって、射出成形機200の動作が停止する可能性が少なくなる。
【0170】
射出成形機ノズル1からの樹脂漏れが少なくなるため、S12で後述する樹脂スケーリングと同時に射出成形機ノズル1の退避を行うことができる。射出成形機ノズル1を後退させても射出成形機ノズル1から樹脂が漏れないため、樹脂のスケーリングを並行して行うことができる。
【0171】
S10では、S5でキャビティ14に射出された金型の冷却時間のタイミングが開始する。
【0172】
S11において、射出成形機200の射出成形条件が、金型変更に伴って変化する。具体的には、予め設定された射出成形条件を、この時点から射出される金型の射出成形条件に変更する。金型B(または金型A)の射出成形条件に合致する樹脂スケーリングを行う必要があるため、後述するS16において、金型A(または金型B)を射出成形機200の外部に搬送し、金型B(または金型A)を射出成形機200に搬入し、金型B(または金型A)の射出・保圧を実施する。
【0173】
S1又はS11で設定される射出成形条件には、金型の移動量、移動タイミング、射出成形機ノズル1の接触/分離のタイミング、プルバック(引き戻し)のタイミング等、金型が射出成形機200に入ってから出るまでの全てのプロセスが含まれる。したがって、射出成形機ノズル1が1セットのプロセスとして入る当該金型から退避するまでのプロセスを制御することにより、何らかの問題が生じた場合の管理が容易になる。
【0174】
S11が完了した後に行われるS12のスケーリング前にノズル退避が発生した場合、スケーリング中の背圧により射出成形機ノズル1から樹脂漏れが発生する可能性がある。その結果、射出成形機ノズル1とスプルー4との間に樹脂が蓄積する。背圧とは、射出成形機ノズル1が後退し、射出成形機ノズル1の先端側から出ている樹脂の方向に発生する圧力をいう。溜まった樹脂が大きくなると、射出成形機200の内部部品間に挟まれてしまう可能性がある。S12で実行される樹脂スケーリングは一般に、数秒~10秒間超必要であるが、これは射出成形機のサイズに応じて変化し得る。従って、射出成形機ノズル1の退避後にスケーリングを行うS11で射出成形条件の変更が生じる。その結果、ホットランナー2内の残圧や樹脂漏れによるスプルー4からの樹脂の逆流の可能性を低減することができる。
【0175】
S12では、S11で設定された射出成形条件に基づいて樹脂のスケーリングが行われる。
【0176】
S13では、射出成形機ノズル1の退避が完了する。
【0177】
S14では、固定機構(クランプ)60を解除する。図10に示すように、固定機構60は、金型を固定プラテン53/第1可動プラテン54に固定する機構である。金型を交代するために、固定プラテン53/第1可動プラテン54の固定板12a、13aに固定されている固定機構60を取り外す。
【0178】
S15では、第1可動プラテン54が固定プラテン53から分離する方向にわずかに移動する。その結果、金型が固定プラテン53と第1可動プラテン54とによって型締め(クランプ)されていたため、Y軸方向に移動できなかった金型を移動させることができる。より具体的には、固定プラテン53および第1可動プラテン54に金型が接触することなく、かつ摩擦が発生することなく、X軸方向に移動することが可能となる。
【0179】
S16では、金型の交換が行われる。より具体的には、一方の金型が射出成形機200に入り、他方の金型が射出成形機200から出る。2つの金型はリンクユニット15を介して連結されているため、射出成形機200への出入りは、アクチュエータ18の移動を介して同時に行うことができる。
【0180】
ステップS11-12及びステップS13-16は並行して実行されるので、製造効率が向上する。
【0181】
S17では、射出成形機200に存在する金型での最初の成形動作であるか否かを判断する。また、金型内に成形部品があるかどうかを判定することもできる。
【0182】
最初の成形動作であれば、処理はS3に戻り、別の金型についてステップS3~S16を実行する。第2以降の成形動作である場合はS18に進む。S17において、現在射出成形機200内部にある金型の射出および保圧が、現在のカウントが開始された後の最初の成形動作であると判定される場合、金型内部に樹脂成形部品9が存在しない。従って、S18-S22に対して後述するような成形部品を除去する処理が適用できないためS3に進む。
【0183】
S18では、S10で開始した冷却時間が所定時間に達したか否かに基づいて射出成形機200内部にある金型の冷却が完了したか否かを判定する。冷却が完了すると、処理はS19に進む。そうではない場合、処理は、所定の時間に達するまでS18に留まる。
【0184】
S19では、固定プラテン53と第1可動プラテン54とが閉じられる。第1可動プラテン54の移動は、S15に対して上述したとおりである。
【0185】
S20では、固定プラテン53/第1可動プラテン54と金型の固定板12a、13aとをクランプ60で固定する。その結果、金型がX軸方向、Y軸方向に移動しにくくなる。
【0186】
S21では、第1可動プラテン54および固定プラテン53に対して可動金型13および固定金型12が開放される。これにより、可動金型13と固定金型12との間に位置する樹脂成形部品9の除去が可能となる。第1可動プラテン54は、モータ57を駆動して固定プラテン53から離間される。固定金型12は、固定機構60によって固定プラテン53に固定され、可動金型13は、固定機構60によって第1可動プラテン54に固定される。これにより、自閉ユニット301の磁力に抗して可動金型13が固定金型12と離間して金型が開放される。
【0187】
S22では、S21において金型の開放により取り外し可能となった樹脂成形品9が除去される。金型の可動金型13の側に残っている成形部品は、射出成形機200の外部に除去搬送される。1つの例示的な実施形態では、成形部品の除去はロボットアセンブリを使用して達成することができる。樹脂成形部品9は、排出機構(図示せず)によって、又は真空ヘッド(図示せず)を樹脂成形部品9の位置まで移動させ、真空力を加えることによって、除去することができる。
【0188】
S23では、樹脂成形部品の製造数が完了したか否かを判定する。この判定は、所定の時間の経過、または所定の生産数が製造されたかどうかに基づく。また、判定を行うための基準は、所定時間や生産数の代わりに、使用した樹脂の量であってもよい。
【0189】
樹脂成形部品を製造した後に組み立てを行うと、大量に部分的な部品のみを製造することは、製造設備内のスペースを取りうる。このシナリオでは、判定は、生産ラインにおいて他の組立部品に基づく量が製造されたかどうかに基づくことができる。S23において、樹脂成形部品の生産数が完了したと判定された場合、図8A-8Bの処理は終了する。そうではない場合、処理はS24に進む。
【0190】
S24において、S21で開かれた第1可動プラテン54は、固定プラテン53に対して閉じられる。これにより、可動金型13と固定金型12とが閉じられる。そして、処理はS3に戻る。
【0191】
2つの金型への射出成形は上述されている。また、上記実施形態では、S7においてスプルーピン7による遮断を行っている。樹脂のスケーリングを待たずに射出成形機ノズル1を退避させる場合でも、空気がホットランナー2に入るのを防ぐ。この結果、サイクル時間を短縮することができる。
【0192】
S7、S8に記載のようなノズル遮断が行われるため、射出成形機ノズル1側から樹脂が漏れることなく、射出成形機ノズル1の退避とスケーリングとの両方を同時に行うことができる。
【0193】
S11で説明した各金型に合わせた射出成形条件の設定は、S8でのノズル遮断の開始およびS9での射出成形機ノズル1の退避の前に行うことができる。上記実施形態では、S9での射出成形機ノズル1の退避開始後にS11の設定変更を行った。S8、S9の処理は射出成形機200の側に関連する処理であるため、S9の処理後にS11の処理を行う必要はない。しかし、ノズル接触領域25の位置が異なる金型を用いた場合には、S9の前に射出成形条件の変更を行うと、S9における射出成形機ノズル1の移動を金型に合わせることができなくなる可能性がある。これらの場合には、S9における射出成形機ノズル1の退避開始後にS11における射出成形条件の変更を行う方がよい。
【0194】
S11の処理は、S7のプルバック(引き戻し)の前に実施することができる。しかし、金型に応じてプルバック(引き戻し)の量や強度が異なる。このため、S7の前に射出成形条件を変更すると、直前にS5で射出を行った金型内にあったプルバック(引き戻し)が不可能となる。以下のことを実行することで、この問題に対処する。具体的には、異なる2つの金型のうち、プルバック(引き戻し)量が大きい方に合わせて共通のプルバック(引き戻し)量を設定すれば、S7の前にS11を行うことができる。また、S11の設定変更の処理に時間がかかるため、S11の設定変更を他の処理と並行して行うことで製造効率を向上させることができる。
【0195】
図8Aに示すように、S11は、S10の冷却時間のタイミングの開始後に実行される。冷却時間は各金型の成形条件に依存するため、これらを同様に設定すると、冷却時間が不足したり製造効率が低下したりする可能性がある。別の例示的な実施形態では、2つの金型について冷却時間が同じである場合、またはより長い冷却時間を有する金型に基づいて冷却を行う場合でも、S11をS10の前に行うことができる。
【0196】
別の例示的な実施形態では、S16において金型を交換する処理はS12における樹脂のスケーリング後に行うことができる。金型の交換はスケーリング後に行うことができるが、これにより、金型の交換をスケーリングまで遅延させることは金型交換の時間が冷却時間を超えることにつながりうるので、必要とされる実際の冷却時間よりもサイクル時間が長くなることがある。
【0197】
上述の実施形態では2つの金型について論じたが、これに限定されるものではなく、上述の実施形態は3つ以上の金型に適用可能である。また、上述した実施形態では、金型の移動がY軸の方向に沿って設置された射出成形機200に対するX軸の方向であったことも論じたが、これに限定されるものではない。例えば、Z軸の方向への移動が可能であり、射出成形機200の射出位置を通る円を描くことに対応した移動も適用可能である。
【0198】
なお、冷却が行われる位置は、射出成形機200の外部に位置することに限定されない。例えば、冷却には時間がかかるが、樹脂の射出をより高速に可能にするような小型金型の場合には複数位置で冷却を行うことができる。3つ以上の金型を射出成形する場合には、冷却時間に基づいて金型を射出成形機200の外部に移動させることができるので、冷却時間が経過した金型を射出成形機200に移動させる優先順位を付けることができる。
【0199】
プラテンの開閉時には、金型は、金型移動中に移動を妨げることができる摩擦力を発生する程度にプラテンに接触することを回避しなければならない。従って、金型のY軸方向への実際の移動量は極めて少ない。しかし、ローラはY軸方向に動くように設置することができる。ローラがY軸方向に移動することを可能にすることは、金型にさらなる型締力を加えることを提供する。
【0200】
プラテンの開閉は、ローラ63上の金型で行われる。このとき、金型は、プラテンの開放状態または閉鎖状態でY方向にわずかに移動する。Y軸方向のローラ63のサイズ(大きさ)が短すぎると、プラテンが開いた状態にあるときに、金型がローラ63から脱落しうるので、ローラのサイズは、プラテンの開いた状態であるか閉じた状態であるかにかかわらず、金型がローラ63上に残るようなものでなければならない。
【0201】
上述の実施形態では、カート300上のローラについて説明したが、別の例示的な実施形態では、カート300の代わりにローラを金型に追加することができる。金型にローラを追加することにより、ローラ間の段差による金型への振動を低減することができる。これにより、高精度の部品を製造する際に、振動によって金型がずれないようにすることができ、高い精度で成形部品を生産する確率を高めることができる。また、ローラの損傷を軽減することができる。
【0202】
図10に示すように、クランプ60は、固定版12a及び13a上のそれらの穴領域に入ったときにクランプを達成するために、強い力で締め付けられる。クランプが繰り返される結果、穴の開いた領域がこすられたり、摩耗したりする可能性が高い。例示的な実施形態において、任意の穴の任意の部分が磨耗した場合に、金型全体を交換する必要がないことを確実にするために、固定板12a及び13aの穴部分は、交換可能なように設計される。
【0203】
上述した実施形態の図10は、ローラユニット61aを固定プラテン53又は第1可動プラテン54上に設置して、金型をXZ平面内で移動させることを示している。このとき、金型側でローラユニット61aと接触する位置に穴があると、ローラユニット61aが穴に入り込んで破損するおそれがある。別の例示的な実施形態では、金型のXZ平面上にある位置に穴を設けず、射出成形機200内部のプラテンのローラユニット61aと接触させることにより、金型をスムーズに移動させることができる。
【0204】
ローラユニット61aに接触する金型の部分は、金型が複数回移動することにより変形する可能性がある。これに対処するために、ローラユニット61aのローラに接触する金型の部分の材料の硬度はローラの硬度よりも低くすることができ、一方、金型のリーミング部分(reaming section)の硬度はより高い。ローラ側の摩耗は、金型の硬度がローラの硬度より高い場合に大きくなるので、ローラの硬度を高くする必要がある。別の例示的な実施形態では、ローラに接触する金型の部分が交換可能である。
【0205】
金型交換処理の開始から他の金型排出処理、射出処理及び保圧処理まで、並びに再度金型交換処理が完了するまでの全処理に要する時間がいずれかの金型の冷却に要する時間に収まれば、通常の成形に比べて生産性が2倍向上する。すなわち、コストの増加を抑制しつつ、高い生産性を実現することができる。この2倍の生産性向上は、幅広い成形部品に対して実現することができる。
【0206】
生産性の2倍の増加を実現するために、金型の冷却時間は全成形プロセス(1つの成形サイクルのための時間)の50%以上を占めることができ、これは、金型交換処理のための時間に依存する。自動車、家電製品、オフィス機器等の外装部品や電気機械部品に用いられる成形部品は、強度を確保するために数ミリメートルの厚さを有するものが多い。従って、全成形処理の間、冷却処理は最も長い時間を要し、1つの成形サイクルの時間に関連して、金型を冷却する時間が50%から70%まで達するのは珍しいことではない。したがって、上記実施形態は、この種の成形部品の生産性を向上させる上で特に有効である。特に、金型Aの射出成形サイクルの時間と金型Bの射出成形サイクルの時間とがほぼ同じで、1回の成形サイクルの時間に対する金型の冷却時間が50%以上であれば、生産性を向上させることができる。
【0207】
金型を冷却する時間が1回の成形サイクルの時間の50%未満であっても、冷却のための時間を有効に適用することにより、通常の成形に比べて1.5倍~1.8倍高い生産性を実現することができる。以上の実施形態により、1台の射出成形機200において従来の製造方法による2台の射出成形機の生産性を達成することができるため、設置スペースや消費電力量が削減される。
【0208】
また、上記実施形態では樹脂を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、ワックス、金属等の任意の材料を適用することができる。
【0209】
別の例示的な実施形態では、金型のためのヒータまたは断熱材なしでランナーを使用することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B