(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】アンテナユニット、及び通信機器
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/52 20060101AFI20220701BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20220701BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q1/24 Z
H01Q21/28
(21)【出願番号】P 2021522781
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2020020711
(87)【国際公開番号】W WO2020241631
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019101376
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】若林 稔
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-072653(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230039(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/119289(WO,A1)
【文献】特開2005-244317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0351244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ無線信号を送信又は受信する第1アンテナ部、及び第2アンテナ部と、
前記第1アンテナ部及び前記第2アンテナ部のそれぞれと電気的に接続され、前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部に挟まれた部分を含むグラウンド部と、
を含み、
前記グラウンド部の前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部の間の位置に、所与の周波数で共振する貫通孔が設けられている
ことを特徴とするアンテナユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナユニットにおいて、
前記貫通孔は、平面視において、前記第1アンテナ部の給電点と前記第2アンテナ部の給電点とを結ぶ直線の一部分と重なる位置に形成されている
ことを特徴とするアンテナユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナユニットにおいて、
前記貫通孔は、前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部が並ぶ方向と交差する方向に沿って延伸する形状を有する
ことを特徴とするアンテナユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のアンテナユニットにおいて、
前記貫通孔の一端は、他の部分よりも広い幅を有する
ことを特徴とするアンテナユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナユニットにおいて、
前記貫通孔の両端のうち、前記第1アンテナ部及び前記第2アンテナ部それぞれの給電点から遠い側の一端が、他の部分よりも広い幅を有する
ことを特徴とするアンテナユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナユニットにおいて、
前記第1アンテナ部、前記第2アンテナ部、及び前記グラウンド部は、1枚の板状の導電部材によって形成されている
ことを特徴とするアンテナユニット。
【請求項7】
それぞれ無線信号を送信又は受信する第1アンテナ部、及び第2アンテナ部と、
前記第1アンテナ部及び前記第2アンテナ部のそれぞれと電気的に接続され、前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部に挟まれた部分を含むグラウンド部と、
を含むアンテナユニットを備え、
前記グラウンド部の前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部の間の位置に、所与の周波数で共振する貫通孔が設けられており、
前記第1アンテナ部、及び前記第2アンテナ部を介して他の通信機器との間で無線通信を行う
ことを特徴とする通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信用のアンテナを複数備えるアンテナユニット、及び当該アンテナユニットを備える通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を行う通信機器の中には、複数の規格に対応したり通信品質を向上させたりする目的で、複数のアンテナを備えるものがある。例えば、Bluetooth(登録商標)規格に対応するアンテナ、及び無線LAN規格に対応するアンテナの双方を備えた通信機器が知られている。また、MIMO技術では、一つの無線通信接続のために複数のアンテナが用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来例の通信機器において、複数のアンテナが互いに重複する周波数帯の電波を送受信する場合、アンテナ間で相互干渉が生じて、通信性能を劣化させてしまうことがある。このような干渉を防いでアンテナ間のアイソレーションを向上させるためには、アンテナ間の物理的な距離を離すことが考えられる。しかしながら、アンテナ間の物理的な距離を離すと、通信機器のサイズを大型化する必要が生じたり、構造上の制約になったりする。特に、ノイズ対策の観点から各アンテナを他の電子部品(コネクタ等)と離れた場所に配置したい場合などにおいて、各アンテナを他の電子部品と離れた位置に配置しつつ、アンテナ同士の距離も離して配置することは困難なことがある。
【0004】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであって、その目的の一つは、比較的省スペースでアンテナ間の干渉を抑えることのできるアンテナユニット、及び通信機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るアンテナユニットは、それぞれ無線信号を送信又は受信する第1アンテナ部、及び第2アンテナ部と、前記第1アンテナ部及び前記第2アンテナ部のそれぞれと電気的に接続され、前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部に挟まれた部分を含むグラウンド部と、を含み、前記グラウンド部の前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部の間の位置に、所与の周波数で共振する貫通孔が設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る通信機器は、それぞれ無線信号を送信又は受信する第1アンテナ部、及び第2アンテナ部と、前記第1アンテナ部及び前記第2アンテナ部のそれぞれと電気的に接続され、前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部に挟まれた部分を含むグラウンド部と、を含むアンテナユニットを備え、前記グラウンド部の前記第1アンテナ部と前記第2アンテナ部の間の位置に、所与の周波数で共振する貫通孔が設けられており、前記第1アンテナ部、及び前記第2アンテナ部を介して他の通信機器との間で無線通信を行うことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアンテナユニットの形状を示す平面図である。
【
図2A】本発明の実施の形態に係るアンテナユニットの共振の様子を示す図である。
【
図2B】本発明の実施の形態に係るアンテナユニットの共振の様子を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るアンテナユニットにおけるアンテナ間のアイソレーション性能を示す図である。
【
図4】本発明の第1の変形例に係るアンテナユニットの形状を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2の変形例に係るアンテナユニットの形状を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第3の変形例に係るアンテナユニットの形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナユニット1の形状を示す平面図である。アンテナユニット1は、本発明の一実施形態に係る通信機器の内部に配置される。この通信機器は、例えばパーソナルコンピュータや据え置き型ゲーム機、携帯型ゲーム機、スマートフォン、タブレットなど、無線通信を行う各種の機器であってよい。
【0010】
アンテナユニット1は、全体として1個の導電体によって構成されている。より具体的に、アンテナユニット1は、1枚の板状の金属部材を加工して形成されている。アンテナユニット1は、第1アンテナ部10、第2アンテナ部20、及びグラウンド部30を含んでいる。以下では、第1アンテナ部10、第2アンテナ部20、及びグラウンド部30それぞれの平面視における形状、及び位置関係、並びに各部の機能について説明する。
【0011】
第1アンテナ部10、及び第2アンテナ部20は、それぞれ独立に、無線信号(電磁波)を送信及び/又は受信する。本実施形態に係る通信機器は、この第1アンテナ部10、及び第2アンテナ部20を利用して他の通信機器との間で無線通信を行う。以下では、第1アンテナ部10、及び第2アンテナ部20のそれぞれが送受信の対象とする無線信号の周波数帯を、目的周波数帯という。第1アンテナ部10の目的周波数帯と、第2アンテナ部20の目的周波数帯とは、その少なくとも一部が重複するものとする。例えば第1アンテナ部10及び第2アンテナ部20の一方は、IEEE802.11規格に基づく無線LAN通信に使用するものであって、他方はBluetooth通信に用いられるものであってもよい。あるいは第1アンテナ部10及び第2アンテナ部20は、MIMOなどの技術に基づいて、いずれも無線LANやBluetoothなどの同じ規格での通信に用いられるものであってもよい。本実施形態では、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20の目的周波数帯は略一致し、2.4GHz近傍の周波数帯であるものとする。
【0012】
第1アンテナ部10は、全体として略F字形状を有しており、逆Fアンテナとして機能する。第1アンテナ部10の形状及び大きさは、第1アンテナ部10の目的周波数帯の周波数で共振が発生するように決定されている。以下では、この第1アンテナ部10で発生する共振を、第1共振という。
【0013】
具体的に、第1アンテナ部10は、本体部11と、給電部12と、短絡部13と、を含んで構成されている。本体部11は、上下方向に延伸する形状を有し、その基端が短絡部13の先端と接続され、先端は開放端となっている。給電部12は、左右方向に延伸する形状を有し、その基端に第1アンテナ部10の給電点P1が配置されている。給電部12の先端は、本体部11の先端と基端の間のうち、基端に近い側の位置で本体部11に接続されている。短絡部13は、給電部12と平行になるように左右方向に延伸する形状を有し、その基端がグラウンド部30の上端に接続され、先端は本体部11の基端に接続されている。
【0014】
第2アンテナ部20は、
図1に示されるように、アンテナユニット1の左右方向の中心線を対称軸として、第1アンテナ部10と線対称になるように配置されている。すなわち、第2アンテナ部20は第1アンテナ部10と略同形であって、第1アンテナ部10を左右反転させた向きで配置されている。そして、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20は、アンテナユニット1の左右方向に沿って互いに対向するように並んで配置されており、アンテナユニット1の左右方向の中心線から互いに略等距離の位置に配置されている。さらに、第2アンテナ部20の給電点P2も、
図1に示されるように、アンテナユニット1の左右方向の中心線を対称軸として、第1アンテナ部10の給電点P1と線対称になる位置に配置されている。これにより第2アンテナ部20は、第1アンテナ部10と略一致する目的周波数帯で共振する。以下では、この第2アンテナ部20で発生する共振を、第2共振という。
【0015】
具体的に、第2アンテナ部20は、本体部21と、給電部22と、短絡部23と、を含んで構成されている。本体部21は、上下方向に延伸する形状を有し、その基端が短絡部23の先端と接続され、先端は開放端となっている。給電部22は、左右方向に延伸する形状を有し、その基端に第2アンテナ部20の給電点P2が配置されている。給電部22の先端は、本体部21の先端と基端の間のうち、基端に近い側の位置で本体部21に接続されている。短絡部23は、給電部22と平行になるように左右方向に延伸する形状を有し、その基端がグラウンド部30の上端に接続され、先端は本体部21の基端に接続されている。
【0016】
以上説明したように、第2アンテナ部20は、第1アンテナ部10と線対称になるように配置されている。これにより、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20の指向性もおおよそ左右対称になる。これにより、目的周波数帯において第1アンテナ部10と第2アンテナ部20との間の相関係数を低く抑えることができる。
【0017】
グラウンド部30は、第1アンテナ部10及び第2アンテナ部20の双方と一体に形成されることによって各アンテナに電気的に接続されており、各アンテナのグラウンドとして機能する。グラウンド部30は、全体として上下方向に延伸する形状を有し、その上端が第1アンテナ部10の短絡部13、及び第2アンテナ部20の短絡部23と接続されている。
【0018】
より具体的に、グラウンド部30は、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20に挟まれた中間部分31と、アンテナユニット1の下辺に沿った外縁部分32と、を含んで構成されている。なお、グラウンド部30はアンテナユニット1の左右方向の中心線に対して左右対称な形状を有している。そのため、アンテナユニット1全体がその中心線に対して左右対称になっている。
【0019】
グラウンド部30の略中央には、平板状のアンテナユニット1を貫通する貫通孔であるスロット33が形成されている。スロット33は、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20の間の位置に配置されている。特に本実施形態では、スロット33は、アンテナユニット1の左右方向(第1アンテナ部10と第2アンテナ部20が並ぶ方向)の中心線に沿って、全体として上下方向(すなわち、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20が並ぶ方向と交差する方向)に延伸する形状を有している。さらに、スロット33は、スロット33から給電点P1までの距離と給電点P2までの距離とが互いに等しくなるように配置されている。また、スロット33は、平面視において、第1アンテナ部10の給電点P1と第2アンテナ部20の給電点P2を結ぶ直線の一部分と重なる位置に形成されている。
【0020】
スロット33は、上下方向に延伸する略矩形形状の延伸部分33aと、延伸部分33aの一端に連結し、延伸部分33aより広い幅を有する幅広部分33bと、を含んで構成されている。これにより、スロット33は全体として逆T字形状を有している。なお、スロット33もアンテナユニット1の左右方向の中心線に沿って左右対称になっている。
【0021】
中空のスロット33が存在することによって、第1アンテナ部10、及び第2アンテナ部20だけでなく、グラウンド部30内にもこのスロット33に沿って共振が発生する。以下、グラウンド部30内のスロット33に沿って発生する共振を、スロット共振という。スロット共振の周波数帯は、スロット33の外周の長さに応じて決定される。本実施形態では、このスロット共振の周波数帯が、第1アンテナ部10及び第2アンテナ部20それぞれの目的周波数帯と少なくとも一部重複するように、スロット33の大きさ及び形状が決定されている。すなわち、第1共振、第2共振、及びスロット共振は、互いに重複する周波数帯で発生することになる。以下では、この3個の共振に共通する周波数帯を、共振周波数帯という。
【0022】
スロット33の外周は、少なくとも共振周波数帯に対応する電磁波の波長の1/2に相当する長さ以上の長さを有する必要がある。この外周の長さを確保するために、スロット33の一端に幅広部分33bが形成されている。なお、第1アンテナ部10及び第2アンテナ部20との干渉を避けるために、上下方向に延伸するスロット33の両端のうち、給電点P1及びP2から遠い側の一端に幅広部分33bが形成されている。
【0023】
さらに、この共振周波数帯におけるスロット共振は、第1共振に対して90°ずれた位相で発生する。そのため、第1共振とスロット共振は、振動の節と腹が互いに入れ替わるような関係となる。このような関係によりスロット共振は、第1共振による第2アンテナ部20への影響を打ち消す逆共振として作用することになる。
【0024】
図2A及び
図2Bは、この第1共振とスロット共振の関係を示す図であって、第1アンテナ部10の給電点P1に信号を入力した場合に生じる電流分布のシミュレーション結果を示している。
図2Aは第1共振によって生じる電流分布を示しており、
図2Bは
図2Aに対して位相90°ずれたタイミングの電流分布を示している。これらの図に示されるように、第1アンテナ部10に第1共振による電流が生じているタイミングではスロット33周辺に大きな電流が生じておらず、逆にスロット33にスロット共振による電流が生じているタイミングでは第1アンテナ部10に大きな電流が生じていない。
【0025】
前述したように、スロット33は、第1アンテナ部10及び第2アンテナ部20のそれぞれまでの距離が互いに等しくなるように、二つのアンテナのちょうど中間の位置に配置されている。そのためスロット共振は、上述した第1共振と同様に、第2共振に対しても90°ずれた位相の振動となる。これによりスロット共振は、第2共振による第1アンテナ部10への影響を打ち消す逆共振としても作用することになる。具体的に、給電点P2に信号が入力された場合には、
図2A及び
図2Bに示した電流分布を左右反転させたような電流分布が生じることになる。
【0026】
以上説明したように、スロット33がスロット共振を発生させることによって、二つのアンテナ部の間の干渉を抑えることができる。
図3は、本実施形態に係るアンテナユニット1におけるアンテナ間のアイソレーション性能をシミュレーションによって調査した結果を示すグラフである。グラフの横軸は周波数であって、縦軸はアイソレーションの値を示しており、値が小さいほどアンテナ間のアイソレーション性能が向上していることを示している。この図に示されるように、本実施形態によれば、共振周波数帯(2.4GHz近傍の周波数帯)においてアイソレーションが向上していることがわかる。
【0027】
以上説明した本実施の形態に係るアンテナユニット1によれば、各アンテナ部で生じる共振に対して位相が90°ずれた共振をスロット33が発生させることによって、二つのアンテナ部を物理的に離れた位置に配置することなく、二つのアンテナ部の間のアイソレーション性能を向上させることができる。また、本実施の形態に係るアンテナユニット1によれば、第1アンテナ部10、第2アンテナ部20、及びグラウンド部30は一つの導電部材によって一体に形成されているので、構造が複雑にならず、製造コストを抑えることができる。
【0028】
なお、本発明の実施の形態は以上説明したものに限られない。例えば、以上の説明におけるアンテナユニット1の形状は例示に過ぎず、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20の間にスロット33を有するグラウンド部30が配置されていれば、アンテナユニット1は各種の形状であってよい。
【0029】
以下、アンテナユニット1のいくつかの変形例について説明する。
図4は、第1の変形例に係るアンテナユニット1の形状を示す斜視図である。この図の例では、第1アンテナ部10、及び第2アンテナ部20の形状が
図1と異なっており、これにより複数の周波数帯で共振するように構成されている。
【0030】
具体的に本変形例では、第1アンテナ部10の給電部12と短絡部13の間の部分に、メアンダ形状を有するスリット14が形成されている。このような構造により第1アンテナ部10は、本体部11によって第1の目的周波数帯の共振を発生させるとともに、スリット14に沿って第2の目的周波数帯の共振を発生させる。これにより第1アンテナ部10は、互いに異なる2つの目的周波数帯で無線信号を送受信する。第2アンテナ部20についても、第1アンテナ部10と左右対称な構造を有することにより、本体部21による第1の目的周波数帯の共振、及びスリット24による第2の目的周波数帯の共振を発生させる。
【0031】
本変形例においても、スロット33がスロット共振を発生させることによって、第1アンテナ部10と第2アンテナ部20との間のアイソレーション性能を向上させることができる。ただし、スロット33はその大きさ及び形状によって決まる共振周波数帯を対象としたスロット共振を発生させることによって、アイソレーション性能を向上させることになる。そのため、スロット33の大きさ及び形状は、第1の目的周波数帯、及び第2の目的周波数帯のうち、よりアイソレーション性能を向上させたい方の周波数帯に合わせて決定されることが望ましい。
【0032】
これまでの説明では、アンテナユニット1は平板状の金属部材によって形成されることとし、第1アンテナ部10、第2アンテナ部20、及びグラウンド部30は全て同一平面内に含まれることとした。しかしながら、アンテナユニット1の形状はこのようなものに限られない。
図5は、第2の変形例に係るアンテナユニット1の形状を示している。この図の例では、アンテナユニット1は、第1の変形例に係るアンテナユニット1と同じ形状の金属部材が、その左右方向の中心線に沿って内側に折り曲げられた形状を有している。
【0033】
また、
図6は第3の変形例に係るアンテナユニット1の形状を示している。本変形例に係るアンテナユニット1は、第2の変形例と同様に上下方向に延伸する直線に沿って内側に折れ曲がった形状を有している。具体的に、この第3の変形例に係るアンテナユニット1は、第1アンテナ部10とスロット33との間の直線、及び第2アンテナ部20とスロット33との間の直線の2本の直線に沿って平板状の金属部材が折り曲げられた形状を有している。
【0034】
このように、アンテナユニット1は必ずしも平面的な形状を有しておらずともよく、第1共振及び第2共振のそれぞれと90°ずれた位相の共振を発生させるスロット33がグラウンド部30内に形成されていれば、アンテナ間のアイソレーションを向上させることができる。
【0035】
また、以上の説明では、アンテナユニット1を1枚の金属板によって形成することとしたが、アンテナユニット1は銅箔等の金属箔によってプリント基板などの表面に形成されてもよい。この場合、スロット33内に誘電体が配置されることによって、スロット33の外周の電気長を物理的な長さより長くすることができる。そのため、共振周波数帯で共振するスロット33の外周の長さを、その内部が中空の場合と比較して短くすることができる。
【0036】
また、以上の説明では第1アンテナ部10、第2アンテナ部20、及びグラウンド部30を含むアンテナユニット1の全体を単一の導電部材によって形成することとしたが、複数の導電部材を連結してアンテナユニット1を形成してもよい。また、アンテナユニット1をプリント基板上に形成する場合、互いに電気的に接続される複数のプリント基板層にまたがるように形成させてもよい。また、以上の説明では第1アンテナ部10と第2アンテナ部20とは完全に同じ形状を有することとしたが、目的周波数帯に合わせて第1アンテナ部10と第2アンテナ部20とは互いに異なる形状を有してもよい。この場合にも、第1アンテナ部10の給電点P1と第2アンテナ部20の給電点P2の双方から略等距離の位置に、それぞれのアンテナの共振に対して90°ずれた位相の共振を発生させるスロット33を設けることによって、二つのアンテナ間のアイソレーション性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 アンテナユニット、10 第1アンテナ部、20 第2アンテナ部、11,21 本体部、12,22 給電部、13,23 短絡部、30 グラウンド部、31 中間部分、32 外縁部分、33 スロット、33a 延伸部分、33b 幅広部分。