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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-30
(45)【発行日】2022-07-08
(54)【発明の名称】改良型高温センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/18 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
G01K7/18 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021556676
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2020063419
(87)【国際公開番号】W WO2020234097
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】202019002164.7
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516284998
【氏名又は名称】ヘレウス ネクセンソス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Nexensos GmbH
【住所又は居所原語表記】Reinhard-Heraeus-Ring 23, 63801 Kleinostheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マツヴェイ ジンケヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ティム アスムス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ディートマン
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19742696(DE,A1)
【文献】特許第5641683(JP,B2)
【文献】特許第5855149(JP,B2)
【文献】特許第5976186(JP,B2)
【文献】特許第5777811(JP,B2)
【文献】特許第6017052(JP,B2)
【文献】特公昭63-53148(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムセラミックを含有しかつコーティングされた基板(16)と、少なくとも1つの抵抗構造体(11)と、少なくとも2つの端子コンタクト(12、13)とを有する温度センサ、特に高温センサであって、前記端子コンタクト(12、13)は、前記抵抗構造体(11)に電気的に接触接続しており、前記基板(16)は、金属酸化物層を含む絶縁層(17)によってコーティングされており、前記抵抗構造体(11)と、前記抵抗構造体(11)が配置されていない、前記絶縁層(17)の露出された領域とには、セラミック製の中間層(18)が、少なくとも部分的にコーティングされており、セラミック製の前記中間層(18)には、保護層(19)および/またはカバー(20)が配置されている、温度センサにおいて、
前記絶縁層(17)には、少なくとも局部的に前記基板(16)の表面を露出させる少なくとも1つの開口部(30、30a~d)が形成されている、
ことを特徴とする、温度センサ。
【請求項2】
1つの前記開口部(30、30a~30d)および/または複数の前記開口部(30、30a~30d)は、スリット状に形成されており、スリット幅は、好適には5μm~1mm、好ましくは10μm~300μm、特に好ましくは、20μm~100μmである、ことを特徴とする、請求項1記載の温度センサ。
【請求項3】
スリット状の前記開口部(30、30a~30d)の長手方向延在部は、前記基板(16)の長手方向延在部に対して平行および/または垂直に形成されており、かつ/または複数のスリット形状の前記開口部(30、30a~30d)の前記長手方向延在部に対して互いに平行に形成されている、ことを特徴とする、請求項2記載の温度センサ。
【請求項4】
1つの前記開口部(30、30a~30d)および/または複数の前記開口部(30、30a~30d)は、前記基板(16)の少なくとも1つの側面を露出させている、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項5】
1つの前記開口部(30)および/または複数の前記開口部(30)は、前記抵抗構造体(11)を完全に包囲している、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項6】
1つの前記開口部(30a~30d)および/または複数の前記開口部(30a~30d)の別の1つの開口部は、前記抵抗構造体(11)の2つの前記端子コンタクト(12、13)のうちの少なくとも1つを部分的に縁取っている、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項7】
1つの前記開口部(30、30a~30d)および/または複数の前記開口部(30、30a~30d)には、前記保護層(19)の材料が充填されている、ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項8】
前記酸化ジルコニウム、または前記酸化ジルコニウムセラミックにおける前記酸化ジルコニウムは、3価または5価の金属の酸化物によって安定化されており、かつ/または少なくとも1つの端子コンタクト(12、13)には、少なくとも1つの電極(14、15)が、前記抵抗構造体(11)に並んで前記絶縁層(17)に配置されており、
1つの前記電極(14、15)または複数の前記電極(14、15)が、前記抵抗構造体(11)と一体に形成されている、
ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項9】
前記絶縁層(17)は、酸化アルミニウム層である、ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項10】
セラミック製の前記中間層(18)は、1μm~50μmの厚さ、好ましくは4μm~10μmの厚さを有する、ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項11】
前記保護層(19)には、ガラスまたはガラスセラミックスが含まれ、かつ/または前記カバー(20)は、セラミック製の小プレートである、ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項12】
前記抵抗構造体(11)には、白金材料または白金合金、特に白金ベースの合金が含まれている、ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサに関し、特に、基板と、少なくとも1つの抵抗構造体と、抵抗構造体に電気的に接触接続する少なくとも2つの端子コンタクトとを有する高温センサに関する。
【0002】
このような温度センサは、排ガス温度および/エンジンガスの燃焼温度を測定するために自動車分野において使用される。この測定は、多くの場合に可能な限りエンジンの近くで行うのがよい。したがってこれらのセンサは、燃焼ガスの高温に耐えなければならない。平坦な抵抗構造体を有する温度センサは、例えば、独国特許出願公開第19742696号明細書から公知である。
【0003】
従来技術では、このような高温安定性の温度センサをどのように構成することができるかということについて、いつかの提案がなされている。例えば、独国特許発明第102007046900号明細書により、白金抵抗構造体用の保護部として、自己支持型のカバーを有するセンサが公知である。独国特許発明第102009007940号明細書からは、基板に酸化ジルコニウムを含有する別の高温センサが公知である。白金層抵抗構造体に有害なイオンによる汚染を防止するために、犠牲電極を付加的に基板に被着することが独国特許発明第102011051845号明細書によって提案されている。
【0004】
頻繁に温度が変化する場合であっても機能すべき温度センサは、独国特許発明第102012110210号明細書から公知である。しかしながらここで説明されている温度センサは、高温において、腐食性ガスに、特に内燃機関の排ガス流に比較的な長く曝された後、ドリフトしはじめてしまう。独国特許発明第102012110210号明細書に記載された温度センサの場合、観察されるずれは、例えば、クロム、ニッケル、鉄およびケイ素のような不純物原子が排ガスから抵抗構造体に拡散することに起因するとみなし得る。
【0005】
したがって本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。特に、センサドリフトの小さい温度センサを提供する。
【0006】
本発明の課題は、酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムセラミックを含有しかつコーティングされた基板と、少なくとも1つの抵抗構造体と、少なくとも2つの端子コンタクトとを有する温度センサ、特に高温センサによって解決され、端子コンタクトは、抵抗構造体に電気的に接触接続しており、基板は、金属酸化物層を含む絶縁層によってコーティングされており、抵抗構造体と、抵抗構造体が配置されていない、絶縁層の露出された領域とには、セラミック製の中間層が、少なくとも部分的にコーティングされており、セラミック製の中間層には、保護層および/またはカバーが配置されており、絶縁層には、少なくとも局部的に基板の表面を露出させる少なくとも1つの開口部が形成されている。
【0007】
本発明によれば、基板には酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムセラミックが含まれている。本発明の複数の実施例では、基板はまた、酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムセラミックから構成されるかまたは実質的にこれらから構成されていてよい。本発明の複数の実施例では、絶縁層はまた、金属酸化物層から構成されるかまたは実質的に金属酸化物層から構成されていてよい。一実施例において、基板は、酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムセラミックから構成され、絶縁層は、金属酸化物層から構成される。
【0008】
用語の「開口部」とは、絶縁層内または絶縁層の縁部における材料除去部のことを指すと理解可能である。材料除去部は、例えば、円形、楕円形、矩形、トレンチ形またはスリット形に構成されていてよい。用語の「層」は、平坦な層または実質的に平坦な層のことを指すと理解可能であり、複数の層は上下に配置されていてよい。
【0009】
有利には、少なくとも局部的に基板の表面を露出させる少なくとも1つの開口部を絶縁層に形成することにより、高温センサの安定性が高められる。本発明の複数の実施例では、絶縁層に複数の開口部が形成されている。
【0010】
従来技術から公知の温度センサでは、絶縁層は、不純物原子が入り込むためのチャネルを形成可能である。その理由として、絶縁層における金属酸化物の多孔性が考えられる。多孔性構造により、不純物原子の拡散が促進される。不純物原子が、抵抗構造体、例えば白金薄膜構造体に到達すると、不純物原子は、白金と混ざり、白金薄膜構造体の電気抵抗を変化させる。この作用は、少なくとも1つの開口部を入れることによって最小化されるかもしくは取り除かれる。
【0011】
基板の表面を少なくとも局部的に露出させる、絶縁層における1つまたは複数の開口部により、金属酸化物材料を有しない領域が形成され、1つまたは複数の開口部の構成に応じて、互いに分かれた個々の複数の区画に絶縁層が分割される。開口部は、好適には基板に中央に配置される少なくとも1つの中央区画が、絶縁層に得られるように形成可能である。好適には、複数の開口部は、つながっておりかつ中央区画を縁取っている。中央区画は、周縁部を有していてよく、中央区画の周縁部は、基板の周縁部と共通の終端部を有しない。抵抗構造体と、この上に被着される、パッシベーションのためのセラミック製の中間層とは、完全に中央構成要素の上にあってよい。抵抗構造体およびセラミック製の中間層を有する中央区画も、これを縁取る開口部も共に、例えばガラスセラミックス製の保護層から成る保護層によって覆われていてよい。本発明の複数の実施例では、1つの開口部/複数の開口部に保護層の材料が充填可能である。保護層の材料が充填された開口部により、絶縁層の周縁部から中央区画に進入する不純物原子に対する拡散バリアが形成される。
【0012】
一実施例では、1つの開口部および/または複数の開口部は、スリット状に形成されており、スリット幅は、好適には5μm~1mm、好ましくは10μm~300μm、特に好ましくは、20μm~100μmである。
【0013】
スリット状の開口部の長手方向延在部は、基板の長手方向延在部に対して平行および/または垂直に形成されていてよく、かつ/または複数のスリット形状の開口部の長手方向延在部は、互いに平行に形成されていてよい。
【0014】
一実施例において、1つの開口部および/または複数の開口部は、基板の少なくとも1つの側面を露出させている。用語の「側面」とは、この文脈において、基板の平坦な表面の側部または縁部における領域のことを指すと理解可能である。
【0015】
一実施例において、1つの開口部および/または複数の開口部は、抵抗構造体を完全に包囲している。
【0016】
さらなる一実施例では、開口部および/または複数の開口部の別の1つの開口部は、抵抗構造体の2つの端子コンタクトのうちの1つを少なくとも部分的に縁取っている。
【0017】
一実施例では、1つの開口部および/または複数の開口部には、保護層の材料が充填されている。
【0018】
別の一実施例では、酸化ジルコニウム、または酸化ジルコニウムセラミックにおける酸化ジルコニウムは、3価または5価の金属の酸化物によって安定化されており、かつ/または少なくとも1つの端子コンタクトには、少なくとも1つの電極が、抵抗構造体に並んで絶縁層に配置されており、1つの電極または複数の電極が、抵抗構造体と一体に形成されている。
【0019】
酸化ジルコニウム、または酸化ジルコニウムセラミックにおける酸化ジルコニウムの安定化は、特定の結晶構造化が安定化される構造的な安定化のことであると理解可能である。3価の金属の酸化物として、特に好ましくは酸化イットリウムが使用される。5価の金属酸化物として、特に好ましくは酸化タンタルおよび/または酸化ニオブが使用される。好適な混合物は、例えば、欧州特許第0115148号明細書から公知である。
【0020】
3価および5価の金属酸化物によって結晶構造を安定化することにより、基板の熱膨張を、中間層および抵抗構造体の貴金属の熱膨張に適合させることができる。これにより、抵抗構造体において熱によって誘導される応力を回避もしくは低減することができる。
【0021】
一実施例において、絶縁層は、酸化アルミニウム層である。
【0022】
別の一実施例において、セラミック製の中間層は、1μm~50μmの厚さ、好ましくは4μm~10μmの厚さを有する。
【0023】
これらの厚さは、熱膨張が異なることに起因して中間層、カバー層またはカバーの剥げ落ちを生じさせることなく、中間層にカバー層を、また場合によってカバーも配置するために選択される。
【0024】
さらなる一実施例では、保護層には、ガラスまたはガラスセラミックスが含まれ、かつ/またはカバーは、セラミック製の小プレートである。
【0025】
ここではガラスは、特に、カバーを固定するためにも使用可能である。
【0026】
一実施例では、抵抗構造体には、白金材料または白金合金、特に白金ベースの合金が含まれている。
【0027】
白金または白金合金は、高温センサの製造に特に適している。
【0028】
さらに本発明では、エンジン、特に自動車エンジンを制御および/または調整する排ガスシステムにおける温度センサの使用も提案される。
【0029】
また本発明により、温度センサ、特に高温センサを製造する方法も提案され、この方法は、以下のステップを有する。すなわち、
酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムセラミックを含有する基板を準備して、基板に絶縁層をコーティングし、金属酸化物層を含む絶縁層に、少なくとも局部的に基板の表面を露出させる少なくとも1つの開口部を形成するステップと、
抵抗構造体と、抵抗構造体に電気的に接触接続している少なくとも2つの端子コンタクトとを絶縁層に配置するステップと、
抵抗構造体と、抵抗構造体が配置されていない、絶縁層の露出された領域とに、セラミック製の中間層を少なくとも部分的にコーティングするステップと、
セラミック製の中間層に保護層および/またはカバーを配置するステップと、を有する。
【0030】
一実施例において、絶縁層に少なくとも1つの開口部を形成するステップには、以下のサブステップ、すなわち、
開口部をフォトリソグラフィによって形成する、かつ/またはレーザーアブレーションによって開口部を形成するサブステップが含まれる。
【0031】
基板を準備するステップには、酸化イットリウムおよび酸化タンタルによって安定化された酸化ジルコニウムから成る基板を準備することが含まれていてよい。基板は、380μmの厚さを有し、かつ50×50mmの面積を有していてよい。絶縁層は、酸化アルミニウム層であってよく、PVD(Physical Vapor Deposition)法によって基板に被着可能である。上記の層は、多孔性であってよく、2.4μmの厚さを有していてよい。
【0032】
抵抗構造体を作製するために、PVD法を用い、まず絶縁層の全面に3850ppm/Kの温度係数を有する白金薄膜を被着することができる。抵抗構造体および端子コンタクトは、次に、フォトリソグラフィ法を用いて作製可能である。
【0033】
次に、例えば、スクリーン印刷法を用いて、またはADM(Aerosol Deposition Method)、スパッタリングまたはPVDを用いて、8μmの厚さを有する、酸化アルミニウムから成る中間層を被着することができる。この際には中間層により、白金構造体と、白金構造体に隣接する絶縁層の領域とを覆うことができる。コンタクトおよび基板の縁部領域は、露出されたままであってよく、中間層によって覆われていなくてよい。次に、抵抗構造体全体の周りに、また端子コンタクトの周りに、連続するトレンチまたはスリットとして、レーザーを用い、ミリング加工によって絶縁層における開口部を開けることができる。例えば、開口部の幅は、約100μmであってよい。絶縁層のこのようなレーザーアブレーションの際には、基板の表面をわずかに一緒に除去することもでき、これにより、絶縁層の完全な除去が保証されるようにする。別の複数の開口部は、例えば、端子コンタクトの周りに入れられてよい。
【0034】
1つの開口部または複数の開口部を形成した後、ガラスフリットから成る保護層をスクリーン印刷法によって全体表面に被着して焼き付けることができる。保護層は、中間層および絶縁層を覆うことができ、絶縁層の1つまたは複数の開口部を充填することができる。端子コンタクトには、保護層の材料がないままでよい。
【0035】
次に、カバー、例えば、酸化イットリウムおよび酸化タンタルによって安定化されていてよい厚さ250μmの酸化ジルコニウムから成るハードカバーを保護層に配置することができる。
【0036】
最後に、結果的に生じた温度センサをパネルから個別化し、端子ワイヤと端子コンタクトとを接続することができる。
【0037】
本発明の別の特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態が、概略図に基づいて述べられている以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】従来技術から公知の温度センサを示す概略分解図である。
図2a】従来技術から公知の温度センサの、抵抗構造体が配置された絶縁層を示す概略平面図である。
図2b】開口部と、絶縁層に配置された抵抗構造体と有する、本発明の実施形態による絶縁層を示す概略平面図である。
図2c】開口部と、絶縁層に配置された抵抗構造体と有する、本発明の実施形態による絶縁層を示す別の概略平面図である。
図2d】開口部と、絶縁層に配置された抵抗構造体と有する、本発明の実施形態による絶縁層を示すさらに別の概略平面図である。
図3a】絶縁層が配置されておりかつ開口部、抵抗構造体、中間層および保護層を有する、本発明の一実施形態による基板を示す概略断面図である。
図3b】絶縁層が配置されておりかつ開口部、抵抗構造体、中間層および保護層を有する、本発明の一実施形態による基板を示す別の概略断面図である。
【0039】
図1には、従来技術から公知の温度センサの概略分解図が示されている。メアンダ状の層状の抵抗構造体11は、2つの端子コンタクト12、13に電気的に接続されている。抵抗構造体11は、2つの辺よりもやや多くが、2つの電極14、15によって縁取られている。
【0040】
安定化された酸化ジルコニウムまたは酸化ジルコニウムセラミックから成る基板16には、金属酸化物から成る絶縁層17がコーティングされており、絶縁層17により、保証されるのは、抵抗構造体11が、高温時には導電性である酸化ジルコニウムによって短絡されてしまわないことと、酸化ジルコニウムと抵抗構造体11との間に悪影響を及ぼす相互作用が阻止されることとである。
【0041】
抵抗構造体11には、基板16とは反対側を向いた面に中間層18が拡散防止として設けられており、中間層18それ自体は、ガラスまたはガラスセラミックスから構成されていてよい、パッシベーションのための保護層19と、カバー20とによって覆われている。
【0042】
図1によれば、保護層19には、カバー20としてセラミックプレートが被着される。セラミックプレートは、付加的なパッシベーションであり、実際の温度センサが構成されるケーシング内の微粒子による摩耗に対する機械的な「保護シールド」として機能する。
【0043】
図1に示された温度センサでは、端子ワイヤ21および22を有する温度センサの端子コンタクト12、13は、端子パッド23および24を介し、電気絶縁性固定ビードから成る固定部25によって応力除去されている。この固定部25は、高純度のガラスまたはガラスセラミックスから成る。
【0044】
拡散バリアとしての中間層18の冒頭に述べた実施形態に対して補足的に述べたいのは、中間層18が、薄膜処理において0.2μm~10μmの範囲の、好適には5μmの厚さで、または厚膜処理において5μm~50μmの範囲の、好適には15μmの厚さで被着されることである。
【0045】
抵抗構造体11における端子パッド23、24の厚さは、10μm~50μmの範囲にあり、好適には20μmである。支持体としての基板16は、0.1mm~1mmの範囲の、好適には0.4mmの、特に好適には0.38mmの厚さを有する。
【0046】
端子コンタクト12、13はそれぞれ、一方の辺に配置されている。しかしながらさらに、2つの端子コンタクト12、13がそれぞれ、反対側の辺に配置されていることも可能である。
【0047】
図2aには、従来技術から公知の温度センサの、抵抗構造体11が配置された絶縁層17の概略平面図が示されている。図2aに示された絶縁層17および抵抗構造体11は、例えば、図1に示されている温度センサに使用可能である。図示された絶縁層17は、開口部を有しない。
【0048】
図2b~図2dには、開口部30、30a~30dと、絶縁層17に配置された抵抗構造体11と有する、本発明の種々異なる実施形態による絶縁層17の概略平面図が示されている。
【0049】
図2bに示された実施形態では、基板の表面を露出させる開口部30が絶縁層17に形成されている。開口部30は、基板の中央に配置される中央区画が絶縁層17に形成されるように構成可能である。中央区画は、周縁部を有し、中央領域の周縁部は、基板の周縁部と共通の終端部を有しない。図示された実施形態において、開口部30は、絶縁層17の材料において、基板の表面を露出させかつ周囲を取り囲む開口部として示されている。基板の周縁部と、周縁部に隣接する基板表面の領域とは、絶縁層によって覆われていない。ここでは、絶縁層17は、まず基板の表面全体被着可能であり、引き続いて、周囲を取り囲む縁部領域において除去して元に戻すことが可能である。
【0050】
図2cに示された実施形態では、開口部30は、絶縁層17にスリット状に形成されており、抵抗構造体11と端子コンタクト12、13とを完全に取り囲んでいる。スリット幅は、例えば、10μm~1mmの範囲にあってよい。
【0051】
図2dには、複数のスリット状の開口部30、30a~30dが、絶縁層17の材料に入れられており、絶縁層17に複数の区画を形成する一実施形態が示されている。図示されている実施形態において、個々のスリット状の開口部30、30a~30dは、端子コンタクト12、13および抵抗構造体11を取り囲んでいる。
【0052】
図3aおよび図3bには、絶縁層17が配置された基板16の、本発明の一実施形態による概略断面図が示されており、基板16は、開口部30、抵抗構造体11、中間層18および保護層19を有する。図示された実施形態では、保護層19の材料により、開口部30、30a~30dが完全に充填されている。保護層19の材料が充填されている開口部30、30a~30dにより、絶縁層17の周縁部から中央区画に進入する不純物原子に対する拡散バリアが形成される。端子コンタクト12、13の領域には、図3bに示されているように保護層19はない。図3bでは、端子コンタクト12、13を部分的に閉じ込める開口部30bおよび30cと、端子コンタクト12、13の間に配置されている開口部30dとが示されている。
【0053】
上記の説明ならびに特許請求の範囲、図面および実施例において開示された本発明の複数の特徴は、個別でも、または任意の組み合わせでも、本発明の種々異なる実施形態において、本発明を実現するために重要であり得る。
【符号の説明】
【0054】
11 抵抗構造体
12、13 端子コンタクト
14、15 電極
16 基板
17 絶縁層
18 中間層
19 保護層
20 カバー
21、22 端子ワイヤ
23、24 端子パッド
25 固定部
30、30a~30d 開口部
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b