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特許7098093プリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】プリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/382 20140101AFI20220704BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20220704BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20220704BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B23K26/382
B23K26/066
B23K26/082
H05K3/00 K
H05K3/00 M
H05K3/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019165755
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2020108904
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019008844
(32)【優先日】2019-01-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512052904
【氏名又は名称】大船企業日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒井 邦男
(72)【発明者】
【氏名】金谷 保彦
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-204137(JP,A)
【文献】特開2001-251054(JP,A)
【文献】特開平11-245071(JP,A)
【文献】特開2000-084692(JP,A)
【文献】特開2003-053560(JP,A)
【文献】特開2003-136267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/382
B23K 26/066
B23K 26/082
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ出力装置から出力されたレーザの外形をアパーチャにより整形し、ガルバノ装置とFθレンズにより前記レーザを位置決めして、銅層と絶縁層とからなるプリント基板の所望の位置に穴を形成するようにしたプリント基板のレーザ加工方法において、
第1のアパーチャで整形した前記レーザにより前記銅層に貫通穴を形成し、
その後、前記第1のアパーチャよりも小径の第2のアパーチャを用いると共に、パルス幅を調整することにより、前記絶縁層の加工に寄与する前記レーザの径を前記第1のアパーチャで加工された前記貫通穴の径に整形して、前記絶縁層を加工する
ことを特徴とするプリント基板のレーザ加工方法。
【請求項3】
レーザ出力装置と、アパーチャを備えるプレートと、ガルバノ装置と、fθレンズと、を備え、前記レーザ出力装置から出力されたレーザの外径を前記アパーチャにより整形し、整形した前記レーザを前記ガルバノ装置と前記fθレンズにより位置決めして、銅層と絶縁層とからなるプリント基板の所望の位置に穴を形成するようにしたプリント基板のレーザ加工機において、
径の異なる複数のアパーチャを備える第1のプレートと、
前記第1のプレートに設けた各アパーチャの軸線を前記レーザの軸線と同軸に位置決めする前記第1のプレート位置決め装置と、
それぞれの軸線が前記レーザの軸線と平行なアパーチャをn個(ただし、nは正の整数)備えるm個(ただし、mは正の整数)のプレ-トと、
前記m個の各プレ-トの移動方向を前記レーザの軸心と垂直な方向、かつ、それぞれに設けたアパーチャの軸線を前記レーザの軸線と同軸に位置決めする加工位置と、当該プレートが前記レーザと干渉しない待避位置とに位置決めするm個のプレート位置決め手段と、前記第1のプレートの位置決め装置と前記m個のプレート位置決め手段を制御する制御装置と、を設け、
前記第1のプレートを前記レーザの軸線方向の前記レーザ出力装置と前記ガルバノ装置との間の前記レーザ出力装置に最も近い側に配置すると共に、前記m個のプレートを前記レーザの軸線方向の前記第1のプレートと前記ガルバノ装置との間に配置し、
前記制御装置は、前記銅層を加工する場合には、前記第1のプレートの指定されたアパーチャの軸線を前記レーザの軸線と同軸に位置決めすると共に、他のm個のプレートを総て待避位置に位置決めし、
前記絶縁層を加工する場合は、前記銅層を加工するために用いた前記アパーチャ(以下、「第1のアパーチャ」という。)は当該軸線を前記レーザの軸線と同軸にしたままの状態でn×m個の内の1個の
前記銅層を加工するために用いたアパーチャよりも小径のアパーチャ(以下、「第2のアパーチャ」という。)を加工位置に位置決めし、前記第1のアパーチャにより外径を整形された前記レーザを前記第2のアパーチャに供給して加工
することを特徴とするプリント基板のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ式のプリント基板の所望の位置に表面の銅層(表面銅層)と下層の銅層(穴底銅層)を接続するブラインドホール(行止まり穴。以下、単に穴という。)あるいは両面基板を表と裏からそれぞれ加工して表面の銅層と裏面の銅層(裏面銅層)を接続するための貫通穴であるスルーホールを形成するようにしたプリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルドアップ式のプリント基板は導体である銅層とガラス繊維やフィラを含有する樹脂で形成された絶縁層(以下、単に「絶縁層」という。)を交互に積層して構成されている。銅層としてはレーザの吸収を高める目的で表面処理(黒化処理やブラウン処理等と呼ばれる)がされた厚さ5~12μmのものだけで無く、表面処理がされていない光沢面の厚さ1.5~2μmのものも使用されている。また、絶縁層の厚さは20~200μmである。また、炭酸ガスレーザにより穴を加工する場合、表面の銅層と下層の銅層をめっきで接続する層間接続用として40~120μmの穴を、また、回路パターンを形成する場合に基準穴として使用する120~250μmの穴を、それぞれ加工する。そして、レーザ加工としては、後工程であるめっき工程を容易にする加工結果が要求されている。
【0003】
初めに、従来のレーザ加工機の構成について説明する。
図9は、従来のレーザ加工機の構成図である。
レーザ発振器1は、パルス状のレーザ2を出力する。レーザ発振器1とプレート3との間に配置されたビーム径調整装置100はレーザ2のエネルギ密度を調整するための装置であり、レーザ発振器1から出力されたレーザ2の外径を変更することによりレーザ2のエネルギ密度を調整する。すなわち、ビーム径調整装置100の前後におけるレーザ2のエネルギは変化しない。したがって、ビーム径調整装置100から出射されたレーザ2はレーザ発振器1から出力されたレーザ2と見なすことができるので、以下、ビーム径調整装置100とレーザ発振器1を併せてレーザ出力装置110という。なお、ビーム径調整装置100は使用されない場合もある。
レーザ出力装置110とガルバノミラー5aとの間に配置されたプレート3はレーザ2を透過させない材質(例えば、銅)で形成されており、所定の位置にアパーチャ(窓であり、この場合は円形の貫通穴)4が複数個かつ選択可能に形成されている。プレート3は図示を省略する駆動装置により駆動され、選択されたアパーチャ4の軸線をレーザ2の軸線と同軸に位置決めする。ガルバノ装置5は一対のガルバノミラー5a、5bで構成され、図中矢印で示すように回転軸の回りに回転自在であり、反射面を任意の角度に位置決めすることができる。なお、ガルバノミラー5a、5bが位置決めに要する時間は平均0.4ms(2.5kHz)程度である。fθレンズ(集光レンズ)6は、図示を省略する加工ヘッドに保持されている。ガルバノミラー5a、5bとfθレンズ6とでレーザ2の光軸をプリント基板7の所望の位置に位置決めする光軸位置決め装置を構成しており、ガルバノミラー5a、5bの回転角度とfθレンズ6の直径とで定まるスキャン領域(すなわち、加工領域)8は、50mm×50mm程度の大きさである。ワークである銅層7cと絶縁層7zとからなるプリント基板7は、X-Yテーブル9に固定されている。制御装置10は入力された制御プログラムに従い、レーザ発振器1、ビーム径調整装置100、プレート3の駆動装置、ガルバノミラー5a、5bおよびX-Yテーブル9を制御する。
【0004】
次に、従来のレーザ加工機の加工手順を説明する。
図10は従来のレーザ加工機の加工手順を示すフローチャートである。
制御装置10は加工プログラムを読み込み、X-Yテーブル9を移動させて、最初のスキャン領域8をfθレンズ6に対向させる(手順S10)。そして、スキャン領域8内で最初に加工する穴径に対応するアパーチャ4を選択し、選択したアパーチャ4の軸線をレーザ2の軸線と同軸に位置決めすると共に、必要に応じてビーム径調整装置100によりレーザ2のエネルギ密度を変更する(手順S20)。そして、先ず、当該スキャン領域8内において指定された位置の総ての銅層7cに穴(以下、ウインドウという)を開ける(手順S50、手順S60)。すなわち、レーザ出力装置110から出力されたレーザ2の外径をアパーチャ4により整形し、ガルバノミラー5a、5bとfθレンズ6とで構成される光軸位置決め装置により集光したレーザ2の軸線を位置決めしてプリント基板7に入射させる。入射したレーザ2により銅層7cが蒸発してウインドウが形成される。この場合、ウインドウに対応する絶縁層7z、すなわち、ウインドウが形成されることにより表面に露出する絶縁層7z(以下、「ウインドウ部絶縁層7z」という。)の劣化を防ぐため、ウインドウをレーザ2の1回の照射(すなわち、1パルスの照射)で形成する。また、ウインドウ形成直後のウインドウ部絶縁層7zは温度が高くなっているため、銅層7cの加工に続けて絶縁層7zを加工すると、後述するように、ウインドウ外縁の銅層7c下部の絶縁層7zにえぐれ(ウインドウ部絶縁層7zの外縁がウインドウ外縁の銅層7cの下部にまで拡大し、ウインドウ外縁の銅層7cが絶縁層7zに対してオーバーハングの状態になること。以下、単にえぐれと呼ぶ)が発生がしたり、穴の内部がビヤ樽状になったりする可能性が高くなる。そこで、スキャン領域8内の銅層7cに残っている未加工の穴を先に加工する。
【0005】
ウインドウの加工が終了したら、当該スキャン領域8内において指定された位置の総ての絶縁層7z、すなわち、ウインドウ部絶縁層7zを加工して穴を完成させる。ここで、絶縁層7zを過大なエネルギで加工すると、えぐれが発生がしたり、穴の内部がビヤ樽状になったりする可能性が高くなる。そこで、1個の穴をパルス幅Pwzの複数のパルスで加工することとし、かつ、1つの穴にレーザ2を1パルス照射したら次の穴を加工することを繰り返すことにより絶縁層7zを加工してそれぞれの穴を完成させる。すなわち、先ず、絶縁層7zにレーザ2を照射する指定回数Nを記憶し、照射回数iをi=1とする(手順S80、手順S90)。そして、当該スキャン領域8内における総てのウインドウ部絶縁層7zにレーザ2を1パルスずつ照射する(手順S100、手順S110)。そして、当該スキャン領域8内における総てのウインドウ部絶縁層7zにレーザ2を照射したら、照射回数iをi=i+1とした後、指定回数Nと照射回数iとを比較し(手順S120、手順S130)、i≦Nの場合は手順S100の処理を行い、i>Nの場合は手順S500の処理を行う。手順S500では当該スキャン領域8内に径の異なる未加工の穴があるかどうかを確認し、未加工の穴がある場合は手順S20の作業を行う。また、未加工の穴がない場合は未加工のスキャン領域8があるかどうかを確認し(手順S510)、未加工のスキャン領域8がある場合は手順S10の作業を行い、未加工のスキャン領域8がない場合は加工を終了する。
【0006】
ここで、レーザ2が炭酸ガスレーザである場合についてその特性を説明する。
図11はレーザ発振器1の出力を説明する図であり、上段はレーザ発振器1の制御信号によって起動される高周波パルスRF出力である。また、下段はレーザ2の1パルスの出力波形であり、縦軸は出力レベルを、横軸は時間を、それぞれ表している。レーザ発振器1を起動すると(時刻T0)、レーザ発振器1内部のレーザ媒体に高周波パルスRFが印可されエネルギのチャージが開始される。そして、エネルギが飽和するとレーザ2が発振される(時刻T1)。レーザ2は発振直後に出力が急上昇した後(時刻Tj)、一旦下がり(時刻Td)、以降、エネルギチャージと出力放出とがバランスし、出力が増大する。レーザ発振器1を停止、すなわち高周波パルスRFの印可を停止しても(時刻T2)引き続きエネルギは減衰しながら出力され、時刻T3で0になる。同図に斜線を付して示す1パルスのパルスエネルギEpは、1パルスの持続期間である時刻T1から出力レベルが0となる時刻T3までの期間の総エネルギ量であるが、実用上、パルス幅Pwを時刻T1~時刻T2の期間として制御している。すなわち、例えば、パルス幅Pwが2μsの場合、時刻T2は時刻T0から5μs経過した時刻である。ここで、時刻T0から時刻T1までの期間は、パルス周波数(パルス周期)によって変わり3μs±0.3μs程度である。なお、レーザ発振器1のレーザ発振周波数は最大5kHz(パルス周期200μs)程度である。
【0007】
次に、アパーチャ4の径を選定する手順を説明する。レーザ2はfθレンズ6によりアパーチャ径を縮小投影(集光)されるので、レーザ2の出力分布はレーザ2の軸線を対称軸とするガウス分布曲線に似た釣鐘状の曲線になる。そして、上記したように、レーザ2の照射により銅層7cが蒸発してウインドウが形成される。そこで、アパーチャ4の径として、所望の穴径すなわちウインドウ部が銅の蒸発閾値となるような大きさの径が選定される。このため、加工する穴径が異なる場合は、径の異なるアパーチャを選定する。このように、加工しようとする穴径に応じてレーザ2の径を設定すると、光軸位置決め装置を構成するfθレンズ6の高さを上下方向に移動させる必要がなくなり、加工精度が向上するだけでなく、作業性も向上する。アパーチャ4の交換装置としてはいくつかの装置が提案されている。(特許文献1)
【0008】
図12はレーザ加工した穴形状の断面図である。
絶縁層のガラス繊維の密度が小さく、下層の銅層7cに反射された最終パルスのレーザ2のほとんどが穴の内部を照射した場合、あるいは形成する穴が深い場合、穴内に生じた分解飛散物により、穴側面の樹脂が抉られ、穴の深さ方向の中間部の直径が上下の直径よりも広がり、同図(a)に示すように穴側面がビヤ樽状の穴になることがある。穴がビヤ樽状になると、同図(b)に示すように後工程のめっき時に穴内にボイド(めっき加工中に穴入口が塞がり,めっき液が穴内に閉じ込められた状態になる)が生じ易くなり、プリント基板不良の主要因になる。
【0009】
また、同図(c)に示すように、スルーホールを形成する場合、表裏の穴形状が均一な対称形状でない場合や穴中間部の径がばらつく(±10μm程度)と,めっき仕上がり面の一方の面が凹み、他方の面が凸になり易い。このため、めっき厚を増やして、専用の研磨工程で表面を平らに仕上げる必要がある。
【0010】
また、同図(d)に示すようにウインドウ部絶縁層7zだけでなくウインドウ外縁の銅層7c下部の絶縁物7zも熱により抉られ、くぼみ11が形成されることが多い。くぼみ11の直径Dkがウインドウの直径Dよりも15μm以上大きいと、絶縁物7zに形成された穴に対して銅層7cがオーバーハングが7.5um以上となる結果、後工程のめっき時に穴内にボイドが生じ易くなる。さらに、くぼみ11の直径Dkがウインドウの直径Dよりも15μm以上大きい場合、銅層7cと絶縁層7zとの間に剥離(銅層7cと絶縁層7zとの間に空気層がある状態)が発生したり、絶縁層7zの厚さ方向に微小なクラック(以下、単にクラックという。)が発生することがある。隣り合う穴の片方あるいは両方にこのようなクラックが発生していると、後工程のめっき時に剥離部やクラックがめっきされることにより隣接する他の銅層7cとの間で短絡が発生する。したがって、このようなクラックの発生も防止する必要がある。そこで、指定回数Nは大きくなるが、1回のパルスのエネルギを小さくして、加工した穴内面の品質を優れたものにする場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2000-84692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
プリント基板7に実装する高密度半導体に対応するため、プリント基板のレーザ加工には、めっきが確実に行える形状の穴を加工することが要求されている。すなわち、
(1)ウインドウおよび絶縁層7zに形成する穴径のばらつきを±5%以下にすること
(2)絶縁層7zに形成する穴は、底面の径が上面の径の80%以上の円錐台であること
(3)ガラス繊維が穴内面に突き出さないようにして穴内面の平滑化をはかること
に加えて、
(4)ウインドウ部絶縁層7z外縁のえぐれ(銅層7cのオーバーハング)を7.5μm(径では、ウインドウ径+15μm)以下にすること
(5)ウインドウ周辺の銅層7cと絶縁層7zとの間に剥離やクラックが無いこと
(6)穴径をさらに小径にすること
(7)隣接する穴との距離を穴径の2倍程度にする(現在は穴径の3~4倍)こと
(8)穴底に損傷が無いこと
(9)スルーホールを形成する場合は、穴中間部の径のばらつきを小さくすること
が要求されている。
上記したように、一度に過大なエネルギで絶縁層7zを加工すると、えぐれが発生したり、穴内部がビヤ樽状になる。そこで、パルス幅Pwzを小さく、すなわちパルスエネルギを小さくしたレーザ2を複数回照射して加工することにより、上記(1)~(3)に関してはある程度解決されていた。しかし、パルス幅Pwzを例えば1.5μsとする場合、時刻T1が±0.3μs程度ばらつくため、エネルギが不足して穴底の径が小さくなる場合があった。このような状態を回避するためにパルス幅Pwzを大きくすると、えぐれが発生したり、穴内部がビヤ樽状になる可能性が大きくなった。また、パルス幅Pwzを変えずに、照射数を増すと、上記したようにガルバノミラー5a、5bが位置決めに要する時間は平均0.4ms(周波数2.5kHz)程度であるため、照射数を1回増す毎に1つの穴の加工時間が0.4ms増加した。このため、さらなる穴品質の向上および加工時間の短縮が求められていた。また、上記の(4)~(9)に関しても改善が要求されていた。
【0013】
本発明の目的は、プリント基板7の実装密度をさらに向上させると共に、品質に優れる穴を能率良く加工することができるプリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、プリント基板のレーザ加工方法として、 レーザ出力装置から出力されたレーザの外形をアパーチャにより整形し、ガルバノ装置とFθレンズにより前記レーザを位置決めして、銅層と絶縁層とからなるプリント基板の所望の位置に穴を形成するようにしたプリント基板のレーザ加工方法において、第1のアパーチャで整形した前記レーザにより前記銅層に貫通穴を形成し、その後、前記第1のアパーチャよりも小径の第2のアパーチャを用いると共に、パルス幅を調整することにより、前記絶縁層の加工に寄与する前記レーザの径を前記第1のアパーチャで加工された前記貫通穴の径に整形して、前記絶縁層を加工することを特徴とする。
【0015】
また、請求項2の発明は、請求項に記載のプリント基板のレーザ加工方法において、レーザ出力装置から出力されたレーザの外形をアパーチャにより整形し、ガルバノ装置とfθレンズにより前記レーザを位置決めし、銅層と絶縁層とからなる両面プリント基板の一方の面から基板の厚さ方向の略中間地点までの穴を形成し、前記一方の面の反対側である他方の面から基板の厚さ方向の略中間地点までの穴を形成することにより中間部の穴径が小さいX形状の貫通穴(スルーホール)を形成するようにしたプリント基板のレーザ加工方法において、形成された前記貫通穴の内面を、前記貫通穴を形成したアパーチャの穴径よりも小径のアパーチャにより外形を整形したレ-ザで仕上げ加工することを特徴とする。
【0016】
また、請求項3の発明は、レーザ出力装置と、アパーチャを備えるプレートと、ガルバノ装置と、fθレンズと、を備え、前記レーザ出力装置から出力されたレーザの外径を前記アパーチャにより整形し、整形した前記レーザを前記ガルバノ装置と前記fθレンズにより位置決めして、銅層と絶縁層とからなるプリント基板の所望の位置に穴を形成するようにしたプリント基板のレーザ加工機において、径の異なる複数のアパーチャを備える第1のプレートと、前記第1のプレートに設けた各アパーチャの軸線を前記レーザの軸線と同軸に位置決めする前記第1のプレート位置決め装置と、それぞれの軸線が前記レーザの軸線と平行なアパーチャをn個(ただし、nは正の整数)備えるm個(ただし、mは正の整数)のプレ-トと、前記m個の各プレ-トの移動方向を前記レーザの軸心と垂直な方向、かつ、それぞれに設けたアパーチャの軸線を前記レーザの軸線と同軸に位置決めする加工位置と、当該プレートが前記レーザと干渉しない待避位置とに位置決めするm個のプレート位置決め手段と、前記第1のプレートの位置決め装置と前記m個のプレート位置決め手段を制御する制御装置と、を設け、前記第1のプレートを前記レーザの軸線方向の前記レーザ出力装置と前記ガルバノ装置との間の前記レーザ出力装置に最も近い側に配置すると共に、前記m個のプレートを前記レーザの軸線方向の前記第1のプレートと前記ガルバノ装置との間に配置し、前記制御装置は、前記銅層を加工する場合には、前記第1のプレートの指定されたアパーチャの軸線を前記レーザの軸線と同軸に位置決めすると共に、他のm個のプレートを総て待避位置に位置決めし、前記絶縁層を加工する場合は、前記銅層を加工するために用いた前記アパーチャ(以下、「第1のアパーチャ」という。)は当該軸線を前記レーザの軸線と同軸にしたままの状態でn×m個の内の1個の前記銅層を加工するために用いたアパーチャよりも小径のアパーチャ(以下、「第2のアパーチャ」という。)を加工位置に位置決めし、前記第1のアパーチャにより外径を整形された前記レ-ザを前記第2のアパーチャに供給して加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
絶縁層7zを加工するレーザ2の径を銅層7cを加工するレーザ2の径以下の径にするが、1つの穴を開ける場合の絶縁層7zの量を従来よりも多くできるので、1つの穴を開ける場合のレーザの照射回数を減らすことができる。また、後述するように、同一のエネルギレベルであってもパルス幅Pwを大きくすることができるので、安定した加工結果が得られるだけでなく、1つの穴を開ける場合のレーザの照射回数を減らすことができる。この結果、ウインドウおよび絶縁層7zに形成する穴径のばらつきを±5%以下にすること、絶縁層7zに形成する穴の底面の径を表面の穴径の80%以上にすること、ガラス繊維が穴内面に突き出さないようにして穴内面の平滑化をはかること、が可能になり、加工時間を短くすることができると共に、プリント基板の熱変形が小さくなるので加工精度が向上する。
【0021】
また、絶縁層7zのえぐれを7.5μm以下にすること、ウインドウ周辺の銅層7cと絶縁層7zとの間の剥離や絶縁層7zのクラックを低減すること、穴径をさらに小径にすること、隣接する穴との距離を穴径の2倍程度にすること、が可能になるので、プリント基板の実装密度を高くすることができる。
【0022】
また、スルーホールを形成する場合において、表裏の穴形状が均一な対称形状でない場合の穴中間部の径のばらつきだけでなく、表裏の穴形状が均一な対称形状の場合においても穴中間部の径のばらつきを小さくすることができるので、プリント基板の品質が向上する。
【0023】
さらに、底付き穴の底面を仕上げ加工する工程を設けることにより、穴径が均一になるので、穴径をさらに小径化することができる。
【0024】
また、加工する穴径が小径の場合でも、絶縁層7zに加工する穴の径をウインドウ径に一致させることにより品質に優れる穴を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を実施するための第1のレーザ加工機の全体図である。
図2】本発明に係る第1のレーザ加工機の加工手順を示すフローチャートである。
図3加工の経過をパルスエネルギEpを用いて説明する図である。
図4】パルスエネルギEpの空間分布を示す図である。
図5レーザ加工した穴形状の断面図である。
図6】本発明を実施するための第2のレーザ加工機の全体図である。
図7】本発明に係る第2のレーザ加工機の加工手順を示すフローチャートである。
図8】本発明に係る第2の穴底処理の加工手順を示すフローチャートである。
図9】従来のレーザ加工機の構成図である。
図10】従来のレーザ加工機の加工手順を示すフローチャートである。
図11】レーザ発振器の出力を説明する図である。
図12】レーザ加工した穴形状の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明を実施するための第1のレーザ加工機の全体図であり、従来と同じ物あるいは同一機能の物は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
レーザ出力装置110とガルバノミラー5aとの間には反射率が高い銅製で円盤状の大プレート20が配置されている。大プレート20の回転の軸線Oから半径rの円周上には、直径40~250μmの穴を加工することができるように、径の異なるn個のアパーチャ41~4nが配置されている。アパーチャ41~4nは円周方向等間隔に配置されている。アパーチャ41~4nの各軸線と大プレート20の回転の軸線Oは平行である。大プレート20の回転の軸線Oはレーザ2の軸線と平行かつ距離rの位置に位置決めされている。大プレート20は大プレート位置決め装置21により回転および回転方向位置決め自在に保持されている。大プレート位置決め装置21は制御装置10に接続されている。
大プレート20とガルバノミラー5aとの間には大プレート20に設けられたアパーチャ41~4nと同数のアパーチャ4A1~4Anを備えるプレート22Aがレーザ2の軸線と垂直な方向に配置されている。アパーチャ4A1~4Anのそれぞれの穴径は対応するアパーチャ41~4nのそれぞれの穴径よりも小径である。プレート22Aは直線方向に移動する第1の直動装置23Aに支持されている。プレート22Aは第1の直動装置23Aの一方の移動端においてアパーチャ4A1~4Anのいずれかの軸線がレーザ2の軸線と同軸になる位置(動作位置)に位置決めされる。また、第1の直動装置23Aの他方の移動端において、プレート22Aはレーザ2と干渉しない位置(待避位置)に位置決めされる。第1の直動装置23Aは移動方向が第1の直動装置23Aの移動方向と直角である第2の直動装置24Aに支持されている。第2の直動装置24Aは動作位置にあるアパーチャ4A1~4Anの内のいずれかの軸線をレーザ2の軸線と同軸に位置決めする。この結果、加工に使用されるアパーチャ4A1~4Anの内のいずれかの軸線が加工位置に位置決めされる。すなわち、第1の直動装置23Aと第2の直動装置24Aとでアパーチャ4A1~4Anの位置決め装置を構成している。第1の直動装置23Aと第2の直動装置24Aはそれぞれ制御装置10に接続されている。ここで、直動装置23Aの動作速度は大プレート位置決め装置21の動作速度よりも遥かに高速である。
【0027】
次に、動作を説明する。
図2は本発明に係る第1のレーザ加工機の加工手順を示すフローチャートである。
制御装置10は加工プログラムを読み込み、X-Yテーブル9を移動させて、最初のスキャン領域8をfθレンズ6に対向させる(手順S10)。また、最初のスキャン領域8内で最初に加工する穴径に対応する大プレート20のアパーチャ(アパーチャ41~4nの内のいずれか1個。以下、選択されたアパーチャをアパーチャ4sと言う。)を選択し、当該アパーチャの軸線をレーザ2の軸線と同軸に位置決めすると共に、必要に応じてビーム径調整装置100によりビーム2のエネルギ密度を変更する(手順S20)。また、プレート22Aを動作位置に位置決めした時に、アパーチャ4A1~4Anの内の絶縁物加工時に使用するアパーチャ(以下、選択されたアパーチャをアパーチャ4Asと言う)の軸線がレーザ2の軸線と一致するように第2の直動装置24Aを動作させると共に、プレート22Aを待避位置に位置決めする(手順S30)。そして、当該スキャン領域8内において指定された位置の総ての銅層7cにウインドウを加工する(手順S50、手順S60)。すなわち、レーザ出力装置110から出力されたレーザ2の外径をアパーチャ4sにより整形し、ガルバノミラー5a、5bとfθレンズ6とで構成される光軸位置決め装置によりレーザ2の軸線を位置決めしてプリント基板7に入射させる。ここで、従来技術と同様、ウインドウをレーザ2の1回の照射(すなわち、1パルスの照射)で形成すると共に、スキャン領域8内の残りの穴の銅層7cを加工する。銅層7cの加工が終了したら、プレート22Aを動作位置に位置決めし、すなわち、絶縁物加工時に使用するアパーチャ4Asの軸線をレーザ2の軸線と一致させ(手順S70)、当該スキャン領域8内におけるウインドウ部絶縁層7zを加工して穴を完成させる。すなわち、絶縁層7zにレーザ2を照射する指定回数Nを記憶し、照射回数iをi=1とする(手順S80、手順S90)。そして、当該スキャン領域8内における総てのウインドウ部絶縁層7zにレーザ2を1パルスずつ照射する(手順S100、手順S110)。そして、当該スキャン領域8内における総てのウインドウ部絶縁層7zにレーザ2を照射したら、照射回数iをi=i+1とした後、指定回数Nと照射回数iとを比較し(手順S120、手順S130)、i≦Nの場合は手順S100の処理を行い、i>Nの場合は手順S500の処理を行う。手順S500では当該スキャン領域8内に径の異なる未加工の穴があるかどうかを確認し、未加工の穴がある場合は手順S20の作業を行う。また、未加工の穴がない場合は未加工のスキャン領域8があるかどうかを確認し(手順S510)、未加工のスキャン領域8がある場合は手順S10の作業を行い、未加工のスキャン領域8がない場合は加工を終了する。
【0028】
次に、従来技術で説明したと同じ径のウインドウを加工する場合において、本願を適用した加工を具体的に説明する。
本願ではウインドウの径がDである場合、絶縁物に開ける穴の径をDより小さい、例えば0.7Dとして加工する。このようにすると、除去する絶縁物の量が従来の49%すなわち約1/2であるから、例えば、従来6パルスで加工していた場合、本願では同じエネルギの3パルスで加工することができる。この場合、従来の6パルスの場合と同じエネルギで加工するので、加工した穴内面の品質が低下することはない。
【0029】
また、絶縁層7zを加工する際、加工する穴径はウインドウの径より小さいから、くぼみ11の径が拡大することもほとんどないし、えぐれも発生しない。
【0030】
以上、絶縁層に加工する穴の径をウインドウの径よりも小さくする場合について説明したが、加工する穴が例えば80μm以下の小径穴である場合、絶縁層7zに加工する穴の径をウインドウの径よりも小径にすると加工が難しくなる場合がある。このような場合、本発明者は、絶縁層7zに加工する穴の径をウインドウの径に合わせる、すなわち絶縁層7zに加工する穴の径をウインドウの径と同じにすれば解決できることに気がついた。また、従来は試行錯誤的に決定されていた絶縁層7zの加工条件を適切に定める手段を見つけることにより、品質に優れる穴を加工できると共に、短時間で加工条件を設定することが可能になると考えた。そこで、種々の条件を変えて加工実験を行い、何をパラメータとすれば実験で得られたデータをまとめられるかを検討した。その結果、絶縁物が蒸発するエネルギレベルk(以下、単にエルギレベルkという)と、絶縁層を構成するガラス繊維が蒸発するエネルギレベルg(以下、単にエルギレベルgという)と、銅が蒸発するエネルギレベルj(以下、単にエルギレベルjという)とに基づいて加工データを整理すると、加工結果をうまく説明できることを見いだした。そして、絶縁層7zの表面を絶縁層7zを構成するガラス繊維が蒸発するエネルギレベルgに一致させることにより、えぐれがほとんど発生せず、穴の内部がビヤ樽状になることもないことを確認した。
なお、絶縁層7zに加工する穴の径をウインドウの径よりも小径にしても良いことは言うまでも無い。
【0031】
以下、上記知見に基づく本願発明による加工方法を、従来技術の見直しを含めて説明する。
図3は加工の経過をパルスエネルギEpを用いて説明する図であり、(a)と(b)は従来技術の場合を、(c)は本願発明の場合を、それぞれ説明する図である。ここで、同図におけるDrは図1におけるプレート20のアパーチャすなわちアパーチャ4sの集光径、Drsは図1における選択されたプレート22Aのアパーチャすなわちアパーチャ4Asの集光径、Dはウインドウ径である。また、K面は導体層7c下面に接する絶縁層7zの上面であり、絶縁層7zの厚さはhであるとする。なお、理解を容易にするため、絶縁層7zはウインドウ形成による熱の影響を受けておらず、表面が平坦であるとする。
【0032】
A.従来技術における典型的な加工例
エネルギ分布曲線Ldrはアパーチャ4sにより外径を整形されたパルスエネルギEpの空間分布を示す曲線であり、高さ方向がエネルギの大きさである。E0はエネルギレベル0の位置である。
理想的な加工例の場合、エネルギ分布曲線Ldrのエネルギレベルgの直径がK面においてウインドウ径Dとなるようにパルス幅Pwが設定される。
ここで、エネルギ分布曲線Ldrにおいてレーザ2の軸線Oから半径Δrの位置におけるエネルギレベルgからのエネルギレベルをΔpとする。そして、軸線Oから半径0.4Dである半径Δrを「半径Δrm」、また半径ΔrmにおけるエネルギレベルΔpを「エネルギレベルΔpm」という。なお、仮定から、Δr=D/2におけるΔpは0である。
第1パルスにより、絶縁層7zの表層部はエネルギ分布曲線Ldrに沿って加工され、半径Δrの絶縁層7zの表層部はΔpだけ加工される。第2パルスのエネルギ分布曲線Ldrは第1パルスと同じであるが、半径Δrの位置の絶縁層7zの表層部はすでに第1パルスによってΔpだけ加工されているため、第1パルスで加工された絶縁層7zの表面がΔpだけ加工、すなわち、2Δp加工される。以下、同様に指定されたパルス数だけ加工が進み、加工が進むと共に、加工された穴の側面は底面に対して垂直に近づく。そして、穴底の直径が0.8D以上になるまで、すなわち、nパルス目のレーザによりn×Δpm≧hになるまでレーザ2を照射する。図示の場合、計算上6Δpmが厚さhよりも大きくなる(すなわち、下層の銅層7cの表面に達する)ので、6パルス目で加工を終了する。
このようにすると、穴側面はエネルギレベルgを超えることが無いので、えぐれは発生せず、品質に優れた穴を加工できるが、加工時間が長くなる。
【0033】
B.従来技術の加工時間を短縮しようとして失敗する加工例(ここでは、加工時間を短縮するために、Aで説明したと同じワークを3パルスで加工するようにした場合)
今、絶縁層7zをh/3だけ加工するエネルギレベルをpとする。3パルスで穴底の直径を0.8D以上とする穴を加工するため、エネルギ分布曲線Ldrのエネルギレベルが半径Δrmにおいてエネルギレベル(g+p)となるようにパルス幅を決める。この場合、ウインドウ径D外縁のエネルギレベルは半径Δrmにおけるエネルギレベル(g+p)よりもエネルギレベルΔq(加工量に換算するとδ)だけ小さくなる。
以上の設定であるから、半径Δrmにおいて、1パルス目のレーザにより表面からh/3の深さまで、2パルス目で2/3hの深さまで、3パルス目で所望の底面径に加工される。また、ウインドウ径D外縁において、1パルス目で表面から(h/3-δ)の深さまで、2パルス目で(2h/3-2δ)の深さまで、3パルス目で(h-3δ)まで加工される。そして、K面から(h-3δ)までの穴の側面は底面に垂直である。しかし、特に1パルス目のレーザにより、穴側面はエネルギレベルgよりはるかに大きいエネルギレベルにさらされる結果、絶縁層7zが過熱状態になって蒸発し、ウインドウの外縁にえぐれが発生する。また、2パルス目では穴底が深くなるため、過熱状態になった絶縁層の蒸発物が穴から逃げにくくなり、えぐれが拡大する、そして、3パルス目のレーザにより、えぐれはさらに大きくなるだけでなく、穴中間部がビヤ樽状になってしまう。
このように、単に加工エネルギを増加しても品質に優れる穴は加工できない。
【0034】
C.本願の場合の加工例
エネルギ分布曲線Ldrsはアパーチャ4Asにより外径を整形されたパルスエネルギEpの空間分布を示す曲線であり、高さ方向がエネルギの大きさである。本願では、エネルギ分布曲線Ldrsとして、K面のウインドウ端面におけるエネルギレベルがエネルギレベルg、半径Δrmにおけるエネルギレベルがエネルギレベル(p+g)となるようにパルス幅を定める。
1パルス目のレーザにより、半径Δrmにおいて、表面からh/3の深さまで、2パルス目で2/3hの深さま加工され、3パルス目で所望の底面径に加工される。また、穴の側面は徐々に垂直に近づくが、穴側面はエネルギレベルgを超えることが無いので、えぐれは発生せず、品質に優れた穴を加工でき、しかも、従来に比べて加工時間を短く(従来が6パルスの場合は50%減)することができる。なお、半径Δrmにおけるエネルギレベルをエネルギレベル(p+g)としたが、エネルギレベル(p+g)以上にすると、穴の側面をさらに垂直面に近づけることができる。
また、ここでは絶縁層7zに加工する穴の径をウインドウ径Dとしたが、絶縁層7zに加工する穴の径をウインドウ径Dよりも小径とすることができるのは言うまでも無い。
なお、上記A、B、Cの各例においては絶縁層7zはウインドウ形成による熱の影響を受けていないとしたが、実際には表面に凹みが発生しているので、照射パルス数が若干減る場合が多い。
【0035】
次に、加工時におけるウインドウ付近の熱影響について説明する。
図4はパルスエネルギEpの空間分布を示す図であり、横軸は径、縦軸はエネルギの大きさである。図において、E0はエネルギ0のレベル、Ezで示すエネルギレベルは絶縁物が蒸発するエネルギレベルk、Egで示すエネルギレベルは絶縁層を構成するガラス繊維が蒸発するエネルギレベルg、A-Aで示すエネルギレベルは銅が蒸発するエネルギレベルjである。また、一点鎖線で示すエネルギ分布曲線LDはアパーチャ4sの集光径がDrの場合を、実線で示すエネルギ分布曲線Ldはアパーチャ4Asの集光径がDrsである場合を、それぞれ示している。ここで、エネルギ分布曲線LDは銅が蒸発するエネルギレベルjにおける径がD(すなわちウインドウ径)でありエネルギ分布曲線Ldは絶縁層のガラス繊維が蒸発するエネルギレベルgにおける径がDである。
ここで、エネルギ分布曲線LDがエネルギレベルEzで交わる点を点C、Cとし、エネルギ分布曲線LdがエネルギレベルEzで交わる点を点Q、Qとする。また、エネルギレベルEzにおいて直径Dに対応する位置をB-Bとする。すると、エネルギ分布曲線Ldの場合、絶縁物から見て断面が略三角形PBQで囲まれるエネルギがウインドウの外周に供給される。一方、銅層加工時に採用したパルス幅Pw(エネルギ分布曲線はエネルギ分布曲線LD)のパルス幅Pwを小さくし、エネルギ分布曲線がウインドウの外周においてエネルギレベルgとなるエネルギ分布曲線LDzにしたとすると、同図から明らかなように1パルスでの絶縁物の除去量が少ないため、パルス数を増す必要がある。また、エネルギ分布曲線LDzはエネルギレベルEzと点R、Rで交わり、絶縁物から見て断面が略三角形PBQよりも大きい略三角形PBRで囲まれるエネルギがウインドウの外周に供給されるため、熱影響が大きくなる。また、上記図3で説明したように、選択したエネルギレベルがエネルギレベルgよりも大きい場合、えぐれが発生しやすくなり、穴内部がバレル状になりやすい。
また、エネルギレベルkをウインドウの径Dに合わせた場合、くぼみ11の発生を抑えることはできるが、加工された穴の内部にガラス繊維が残りやすくなるので、実用できない。
【0036】
ここで、プリント基板として多用されている「ガラスエポキシ基板」のエネルギレベルk、エネルギレベルgの具体的な確認方法について説明する。
ガラスエポキシ基板は、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂をしみ込ませ熱硬化処理を施して板状にしたFR4を基材として、これに銅箔(銅層)を貼付けて一体にしたプリント基板であるが、ガラスエポキシ基板におけるガラス繊維とエポキシ樹脂の位置関係は厚さ方向に一様では無い。すなわち、ガラスエポキシ基板の位置によってガラス繊維が表面に近い(エポキシ樹脂の層が薄い)箇所と、ガラス繊維が奥にある(エポキシ樹脂の層が厚い)箇所とがある。そこで、表面の銅層をエッチングにより除去し、エポキシ樹脂の層が厚い箇所にレーザ2を照射して、穴径を測定する。測定された穴の径がこの場合のエネルギレベルkの直径に対応する。また、エポキシ樹脂の層が薄い箇所にレーザ2を照射して、穴径を測定する。測定された穴の径がこの場合のエネルギレベルgの直径に対応する。この場合、ガラス繊維が穴の外縁で円形に加工されている穴の径を測定するようにする。
なお、エネルギレベルjの直径はウインドウ径で得られることは言うまでも無い。
本発明者は、例えば、黒化処理した厚さ7μmの銅層と絶縁層60μmのビルドアップ層を持つプリント基板の場合、エネルギレベルgおよびエネルギレベルjはそれぞれ、g=5k、j=11k程度であることを確認した。また、表面処理がされていない厚さ1.5μmの銅層と絶縁層40μmのビルドアップ層を持つプリント基板の場合もエネルギレベルk、エネルギレベルg、エネルギレベルjとの間には上記の場合とほぼ同様の関係があることを確認した。
【0037】
図5は、レーザ加工した穴形状の断面図であり、(a)は従来技術のように銅層7cを加工したアパーチャ4sで絶縁層7zを加工した場合を、(b)は本願のようにエネルギ分布曲線の絶縁層7z入り口側における直径がウインドウ径に等しくなるアパーチャ4Asで絶縁層7zを加工した場合をそれぞれ示している。
ウインドウの外周に供給される1パルス目のエネルギによって銅層7c直下の絶縁物の高温の分解物が銅層7cに放散を阻まれる結果、従来技術の場合、同図(a)に示すように、銅層7c直下のくぼみ11が拡大して、くぼみ11に接続するえぐれが形成される場合があった。しかし、本願技術の場合、図4で説明したように略三角形PBQの面積は略三角形PBCよりもはるかに小さいので、同図(b)に示すように、銅層7cの下面にはえぐれがほとんど発生しない。さらに、えぐれがほとんど発生しないので、銅層7cと絶縁層7zとの間に剥離や微小なクラックが発生することも無い。したがって、絶縁層に加工する穴の径をウインドウの径と同じにしても、銅層7cの下側に発生するくぼみ11は大きくならない。また、P-P断面がガラス繊維が蒸発するエネルギレベルgであるから、絶縁物はもちろんガラス繊維が穴の中に残ることはない。
【0038】
以下、参考までに、表面を黒化処理した銅層の厚さが7μm、絶縁層の厚さが60μmのプリント基板7を実際に加工した結果を説明する。
先ず、径が3.4mmのアパーチャ4sを用いてパルス幅Pwが5μs(この場合のパルスエネルギは約6mJである)の1パルスにより銅層7cを加工し、直径が65μmのウインドウを形成した。次に、ウインドウ縁でエネルギレベルgの直径が65μmになる径が2.6mmのアパーチャ4Asを用いて、パルス幅Pwが3μs(この場合のパルスエネルギは約2.5mJである)の3パルスにより絶縁層7zを加工した。その結果、ガラス繊維密度の高低に係わらずくぼみ11のない、銅層下の絶縁層直径が約75μm(銅層7cのオーバーハング5μm)、穴底径60μm以上の均一な円錐台形状の穴を加工することができることを確認した。
また、絶縁層7z加工時においてウインドウ周辺に照射されるエネルギが従来比で約60%低減されたことにより、銅層と絶縁層の剥離・クラックの発生はほとんどなかった。また、熱による加工中の基板の変形が小さくなるので、ウインドウと穴底との芯ずれのない穴を形成できた。また、絶縁層7zに均一な円錐台状の穴が得られる結果、穴径の2倍の穴径ピッチ化が可能になることを確認した。さらに、プリント基板にスルーホールを形成する場合、表裏の穴形状が均一な対称形状になり、穴中間部の径のばらつきも小さくなるので、めっき仕上がり面が均一になる。この結果、めっき工程に先立って行われるハーフエッチング(エッチングにより銅層7cを厚さの半分よりも少し多く除去する)によるウインドウ周辺の銅層7cのオーバーハングが約3μmに低減され、銅層7cのオーバーハングの専用の除去作業を省略することができるので、めっきの作業工程を簡略化できるという効果も確認できた。
【0039】
なお、従来技術の場合、径が3.4mmのアパーチャを用いて、パルス幅5μsのレーザ1パルスでウインドウを形成した後、パルス幅Pwが1.5μsのレーザ6パルスで直径がウインドウ径に等しい65μmの穴を絶縁層7zに形成したところ、ガラス繊維密度の高い部分ではくぼみ11の発生がなく、ガラス繊維密度の低い樹脂比率の高い部分で僅かなくぼみ11の発生があったが、その直径は80μm(銅層7cのオーバーハング7.5μm)前後であり、ほぼ本願に近いレベルであった。
一方、従来技術の場合、径が3.4mmのアパーチャを用いて、パルス幅5μsのレーザ1パルスでウインドウを形成した後、パルス幅Pwが3μsの3パルスで、直径がウインドウ径に等しい65μmの穴を絶縁層7zに形成したところ、ガラス繊維密度の高い部分と低い部分の両方でくぼみ11が発生し、ガラス繊維密度の低い場合は直径が95μm(銅層7cのオーバーハング15μm)前後となり、しかも形状のばらつきが大きくなった。ハーフエッチング後でも銅層7cのオーバーハングが約10μm以上になり、めっき工程でボイドの発生が多くなる可能性があることが分かった。
【0040】
次に、表面処理がされていない銅層の厚さが1.5μm、絶縁層の厚さが40μmのプリント基板を実際に加工した結果を説明する。
径が3.4mmのアパーチャを用いて、パルス幅5μsのレーザ1パルスで直径が65μmのウインドウを形成した。その後、径が2.6mmのアパーチャを用いて、パルス幅Pw3μsのレーザ1パルスによりガラス繊維密度の高低に係わらずくぼみ11のない、銅層下の絶縁層直径が約75μm(オーバーハング5μm)、穴底径60μm以上の均一な円錐台形状の穴を加工することができることを確認した。また、めっき工程のフラッシュエッチング(エッチングの量が1μm以下のエッチング)により、銅層7cのオーバーハングを除去できることが分かった。
【0041】
次に、加工時間の短縮効果について説明する。
上記したように、ガルバノミラー5a、5b位置決め時間は平均0.4ms(2.5kHz)程度である。したがって、絶縁層7zの加工を6パルスから3パルスに減らすと、ガルバノミラー5a、5b位置決め時間は半減するので、例えば、1枚のプリント基板の穴数が800,000個の場合、約40%程度加工時間を短縮できる。
【0042】
図6は本発明を実施するための第2のレーザ加工機の全体図であり、図1と同じ物あるいは同一機能の物は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
プレート22Aとガルバノミラー5aとの間には、アパーチャ41~4nと同数のアパーチャ4B1~4Bnを備えるプレート22Bがレーザ2の軸線方向に配置されている。アパーチャ4B1~4Bnのそれぞれの穴径は対応するアパーチャ4A1~4Anのそれぞれの穴径よりも小径である。プレート22Bは構造が第1の直動装置23Aと同じである第1の直動装置23Bに支持されている。プレート22Bは第1の直動装置23Bの一方の移動端においてアパーチャ4B1~4Bnのいずれかの軸線がレーザ2の軸線と同軸になる位置(動作位置)に位置決めされる。また、第1の直動装置23Bの他方の移動端において、プレート22Bはレーザ2と干渉しない位置(待避位置)に位置決めされる。
第1の直動装置23Bは構造が第1の直動装置24Aと同じである第2の直動装置24Bに支持されている。第2の直動装置24Bは、動作位置にあるアパーチャ4B1~4Bnの内のいずれかの軸線をレーザ2の軸線と同軸に位置決めする。第1の直動装置23Bと第2の直動装置24Bとでアパーチャ4B1~4Bnの位置決め装置を構成している。第1の直動装置23Bと第2の直動装置24Bはそれぞれ制御装置10に接続されている。
【0043】
次に、本発明を実施するための第2のレーザ加工機の動作を説明する。
図7は本発明に係る第2のレーザ加工装置の加工手順を示すフローチャートである。なお、第1のレーザ加工装置の加工手順と同じ手順については説明を簡略化して説明する。
制御装置10は加工プログラムを読み込み、X-Yテーブル9を移動させて、最初のスキャン領域8をfθレンズ6に対向させる(手順S10)。また、最初のスキャン領域8内で最初に加工する穴径に対応する大プレート20のアパーチャ(アパーチャ41~4nのいずれか1個)を選択し、当該アパーチャの軸線をレーザ2の軸線と同軸に位置決めする(手順S20)。また、プレート22Aを動作位置に位置決めした時に、アパーチャ4A1~4Anの内の絶縁物加工時に使用するアパーチャの軸線がレーザ2の軸線と一致するように第2の直動装置24Aを動作させると共に、プレート22Aを待避位置に位置決めする(手順S30)。また、プレート22Bを動作位置に位置決めした時に、アパーチャ4B1~4Bnの内の絶縁物加工時に使用するアパーチャの軸線がレーザ2の軸線と一致するように第2の直動装置24Bを動作させると共に、プレート22Bを待避位置に位置決めする(手順S40)。なお、加工に使用するアパーチャ4B1~4Bnの径は、加工に使用するアパーチャ4A1~4Anの径よりも小径のものを選択しておく。そして、従来技術と同様、ウインドウを1パルスのレーザ2で形成すると共に、スキャン領域8内の残りの穴の銅層7cを加工する(手順S50、手順S60)。銅層7cの加工が終了したら、プレート22Aを動作位置に位置決めし、すなわち、絶縁物加工時に使用するアパーチャ4A1~4Anの内の一つのアパーチャの軸線をレーザ2の軸線と一致させ(手順S70)、当該スキャン領域8内におけるウインドウ部絶縁層7zを加工して穴を完成させる(手順S80~手順S130)。そして、当該スキャン領域8内におけるウインドウ部絶縁層7zの加工が終了したら、穴底の処理をするかどうかを確認し(手順S200)、穴底の処理をしない場合は手順S500の処理を行い、穴底の処理をする場合は、プレート22Bを動作位置に位置決めし、すなわち、アパーチャ4B1~4Bnの内の予め選択されている一つのアパーチャの軸線をレーザ2の軸線と一致させ(手順S210)、当該スキャン領域8内の加工が終了した総ての穴底にレーザ2を1パルスずつ照射することにより、加工した穴の穴底を追加工する(手順S220、手順S230)。そして、当該スキャン領域8内の穴底の処理が終了したら、当該スキャン領域8内に径の異なる未加工の穴があるかどうかを確認し(手順S500)、未加工の穴がある場合は手順S20の作業を行う。また、未加工の穴がない場合は未加工のスキャン領域8があるかどうかを確認し(手順S510)、未加工のスキャン領域8がある場合は手順S10の作業を行い、未加工のスキャン領域8がない場合は加工を終了する。
このように、アパーチャ4Anよりも小径のアパーチャ4Bnにより穴底を加工するので、穴底径をより均一にできる。
【0044】
また、この加工法は中間部の穴径が小さいX形状のスルーホール加工においても有効である。すなわち、先ず、両面基板の一方から中間部まで穴を加工してから、両面基板を反転し、他方から中間部まで穴を加工する。そして、最後に穴の中間部を手順S210~手順S230により加工すると、中間部の穴径のばらつきを小さくすることができるだけでなく、中間部の穴壁面の品質を向上させることができる。
【0045】
この実施の形態ではプレート22A、22Bのそれぞれに大プレート20のアパーチャと同数のアパーチャを設けるようにしたので、アパーチャの管理が容易である。なお、この実施例ではプレート22Aのアパーチャ4A1~4Anおよびプレート22Bのアパーチャ4B1~4Bnを1列に配置したが、2列に配置する等、適宜に変更することができる。
【0046】
また、この実施形態では第1の直動装置23A、24Bをレーザ2の軸線方向に並べるようにしたが、レーザ2の軸線の周りに配置しても良い。
【0047】
また、上記第1および第2の実施形態ではアパーチャ4A1~4Anおよびアパーチャ4B1~4Bnをアパーチャ41~4nと同数としたが、加工する穴径が100μm以上の場合、めっきが絶縁物7zに形成された穴底まで到達しやすいので、例えば、200μmの用のアパーチャで210μmの穴あるいは190μmの穴を加工するようにして、アパーチャ4A1~4Anあるいはアパーチャ4B1~4Bnの数を減らしても良い。
【0048】
ところで、絶縁層の下部の銅層すなわち穴底に露出する銅層は絶縁層との密着強度(引き剥がし強度、ピール強度ともいう。)を高めるために表面が粗化されている。このため、レーザ2の吸収率が高く、軸線O付近のエネルギレベルが大きくなり(ただし、エネルギレベルjよりは遙かに小さい)、表面が溶融する場合がある。下層の銅層の表面が溶融すると、下層の銅層裏面の絶縁層が劣化する恐れがあるため、穴底銅層の表面の溶融を避ける必要がある。
図8は穴底の処理をする場合の第2の穴底処理手順であり、下層の銅層7cの厚さが薄い(特に7~9μm)場合に好適であり、図1および図6で示した本願のレーザ加工機のいずれにも適用することができる。なお、手順S10~手順S130の処理および手順S500、手順S510の処理の処理は図2および図7で説明したフローチャートと同じであるので、重複する説明を省略して説明する。
スキャン領域8内におけるウインドウ部絶縁層7zの加工が終了したら、穴底の処理をするかどうかを確認し(手順S200)、穴底の処理をしない場合は手順S500の処理を行い、穴底の処理をする場合は、プレート22Aおよびプレート22B(図1の場合はプレート22Aのみである)を待避位置に戻し(手順S300)、当該スキャン領域8内の加工が終了した総ての穴底にレーザ2を1パルスずつ照射することにより、加工した穴の穴底を追加工する(手順S310、手順S320)。そして、当該スキャン領域8内の穴底の処理が終了したら、当該スキャン領域8内に径の異なる未加工の穴があるかどうかを確認し(手順S500)、未加工の穴がある場合は手順S20の作業を行う。また、未加工の穴がない場合は未加工のスキャン領域8があるかどうかを確認し(手順S510)、未加工のスキャン領域8がある場合は手順S10の作業を行い、未加工のスキャン領域8がない場合は加工を終了する。この実施形態の場合、穴底を加工するアパーチャとして銅層を加工したアパーチャ4sを使用するので、エネルギ密度を小さくする作業が容易になるという利点がある。なお、手順S310においては、穴底がエネルギレベルgとなるようにエネルギ分布曲線を定めるようにすると効果的である。
【0049】
ここで、本発明と特許文献1の技術との違いについて説明する。
プリント基板7に加工する穴径としては40μm~250μmがほとんどである。そして、例えば、50μmの穴を加工する場合は穴径が2mmのアパーチャを、また、250μmの穴を加工する場合は穴径が8mmのアパーチャを、それぞれ採用する。特許文献1の技術の場合、50μmの穴を加工する場合であっても、最大径のアパーチャを通過した直径が8mmのレーザが50μmの穴を加工するアパーチャを備えたプレートに供給されるため、個々のプレートの冷却装置を大きくする必要がある。これに対して、本発明では、大プレート20で銅層7cを加工するレーザ2の外形を制限し、外形が制限されたレーザ2で絶縁層7zを加工するので、プレート22A、22Bに供給されるエネルギは小さくなる。この結果、プレート22A、22Bを冷却する冷却装置を小さくすることができる。
【0050】
また、この実施形態ではレーザ2が炭酸ガスレーザの場合について説明したが、他のレーザであっても良い。また、銅層を1パルスで加工する場合について説明したが、銅層をパルス幅Pwの小さい(例えばピコ秒、フェムト秒)の複数パルスで加工するようにしても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 レーザ発振器
2 レーザ2
4 アパーチャ
5 ガルバノ装置
6 fθレンズ
7 プリント基板
7c プリント基板7の銅層
7z プリント基板7の絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12