(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ドレーン排液管理支援システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20220704BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
A61M1/00 170
(21)【出願番号】P 2017227773
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】中村 美鈴
(72)【発明者】
【氏名】佐田 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】古島 幸江
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彩加
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0149776(US,A1)
【文献】国際公開第2017/112913(WO,A1)
【文献】松本祥一、外4名,看護師と医師の色調認識の差 : 閉鎖式ドレーン廃液に注目して,山口大学医学部附属病院看護部研究論文集,2009年03月,第84巻,第97頁-第101頁,http://www.lib.yamaguchi-u.ac.jp/yunoca/handle/D510084000019
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
A61M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレーン排液が呈する可能性のある色の色度および濁りの度合いと、その色および濁りを呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度との対応関係を示すデータを蓄積しているデータベース、
あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度および濁りの度合いを決定する手段、
決定された色の色度および濁りの度合いから、前記データベースに蓄積されたデータに基づいて、対象ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度を推定する手段を有
し、
前記成分が、赤血球、ヘモグロビン、アルブミン、総タンパク、アミラーゼ、ピリルビン、トリプシンおよびトリグリセリドである、
術後合併症を早期に発見するためのドレーン排液管理支援システム。
【請求項2】
推定された成分の濃度と、対象ドレーン排液の量、対象ドレーン排液の粘性、対象ドレーン排液の臭い、前記患者へのドレーン据付状態、前記患者のバイタルサインおよび前記患者の身体所見から選ばれる少なくとも一つとから、前記患者に生じている可能性のある術後合併症を推定する手段、ならびに
推定された術後合併症を提示する手段
をさらに有する、
請求項1に記載の術後合併症を早期に発見するためのドレーン排液管理支援システム。
【請求項3】
推定された術後合併症に対する処置法を提示する手段をさらに含む、請求項1~2のいずれかひとつに記載のドレーン排液管理支援システム。
【請求項4】
ドレーン排液が呈する可能性のある色および濁りと、
その色の色度およびその濁りの度合いと、
その色および濁りを呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度と、
を対応させて示して
おり、
前記成分が、赤血球、ヘモグロビン、アルブミン、総タンパク、アミラーゼ、ピリルビン、トリプシン、およびトリグリセリドである、
あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度および濁りの度合いを決定し、且つ対象ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度を推定するためのドレーン排液管理支援用のチャート。
【請求項5】
患者に生じている可能性のある術後合併症および/または術後合併症に対する処置法を、さらに対応させて示している、請求項4に記載のチャート。
【請求項6】
請求項4または5に記載のチャートに示されているドレーン排液が呈する可能性のある色および濁りと、あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色および濁りとを対比し、前記チャートに基づいて、対象ドレーン排液が呈する色の色度および濁りの度合いを決定し、
決定された色の色度および濁りの度合いから、前記チャートに基づいて、対象ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度、を推定することを有
し、
前記成分が、赤血球、ヘモグロビン、アルブミン、総タンパク、アミラーゼ、ピリルビン、トリプシンおよびトリグリセリドである、
術後合併症の早期発見を支援するためのドレーン排液管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレーン排液管理支援システムに関する。より詳細に、本発明は、術後出血、縫合不全、胆汁漏、膵液瘻、リンパ漏などの術後合併症を早期に発見するためのドレーン排液管理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
手術後、体腔内に貯まる血液、滲出液などを排出するためにドレナージが行われる。ドレナージによって得られるドレーン排液の色、量、粘性、臭いなどを、看護師または医師が、観察することによって、縫合不全、胆汁漏、膵液瘻などの術後合併症を早期に発見できることがある。
【0003】
術後早期のドレーン排液は、手術操作に伴う出血からの血液成分と手術中に洗浄に使用した生理食塩水などを含んでいるので、薄い血液の色をしており、淡血性と呼ばれる。ドレーンの留置部位にもよるが、術後経過に問題がなければ、術後数日にて、「淡血性→淡々血性→淡黄色→淡々黄色」と変化していくのが普通である。これは、しだいに出血が減ってドレーン排液中の血液成分の含有量が減少し、一方で、手術による炎症が原因で滲出液が増えてくるためである。滲出液にはさまざまな種類のタンパク質や細胞成分が含まれている。これを、漿液性と呼び、淡黄色を呈している。また、ドレーン排液の量は100~300mLから漸減するのが一般経過である。
【0004】
手術の内容やドレーンの留置部位にもよるが、術後経過に問題がある場合、ドレーン排液の色、量および性状が上記のような経過を辿らないことがある。ドレーン排液の色または性状が、例えば、濃血性である場合は術後出血が疑われ、濃黄色や黄土色である場合は胆汁漏が疑われ、赤ワイン色である場合は膵液漏が疑われ、褐色である場合は縫合不全が疑われ、乳白色である場合はリンパ漏が疑われ、便臭を伴う黄土色の便汁様である場合は下部消化管の損傷・縫合不全が疑われる。また、ドレーン排液が急激に減少した場合は、ドレーンの「屈曲・閉塞」「逸脱」「刺入部・接続部からの脇漏れ」などが疑われるので、ドレーンの固定がずれていないか、刺入部のずれがないかを確認する。
【0005】
ところで、ドレーン排液の色などの認識は、看護師または医師の主観的判断で行われるので、個人差が生じやすい。例えば、看護師または医師が、淡血性、淡々血性、淡黄色および淡々黄色と判断したときの、実際のドレーン排液の色には差異がある。そこで、ドレーン排液の色の認識を統一するために、カラースケールなどを用いることが提案されている(非特許文献1、2など)。さらに非特許文献3は、ドレーン排液の色を色彩学の観点から考察した結果を開示している。
【0006】
また、色を客観的に判断するために、例えば、特許文献1は、手術後の流体監視及び警報システムであって、外科用ドレーン管によって少なくとも部分的に画定されている吸引経路と連通して配置されるよう構成されている真空溜めを有する流体収集容器と、前記吸引経路からデータを獲得するように構成されている少なくとも1つの液体収集センサと、前記センサから最新のデータを受容し、そのデータを保存して過去のデータを生成し、最新のデータを前記過去のデータと比較し、前記データに所定の動向が検知された場合に警報を起動するように構成されている、前記センサに接続されている制御器とからなるシステムを開示している。非特許文献4は、赤外LEDとフォトダイオードを用いてヘモグロビンによる赤外線吸収量を測定する方式によって、ドレーン排液中のヘモグロビン濃度を非接触で測定する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】榎本ら「ドレーン排液色のスケール表作成」第30回東京医科大学病院看護研究集録
【文献】松本ら「看護師と医師の色調認識の差 : 閉鎖式ドレーン廃液に注目して」山口大学医学部附属病院看護部研究論文集第84巻97-101(2009)
【文献】齋藤、小池「色彩学的にみた看護職者の色表現方法の実態」群馬大学医学部保健学科、Kitakanto Med.J. 51 (1) : 35・`41, 2001
【文献】高野、地域連携による医工連携プロジェクト「ドレーン排液モニタリング装置の開発」KIT Progress No.23, P237-241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、出血、縫合不全、胆汁漏、膵液瘻などの術後合併症を早期に発見するためのドレーン排液管理支援システムおよびドレーン排液管理支援用のチャートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0011】
〔1〕 ドレーン排液が呈する可能性のある色の色度と、その色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度との対応関係を示すデータを蓄積しているデータベース、 あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度を決定する手段、 決定された色度から、前記データベースに蓄積されたデータに基づいて、対象ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度を推定する手段を有する、術後合併症を早期に発見するためのドレーン排液管理支援システム。
【0012】
〔2〕 推定された成分の濃度と、対象ドレーン排液の量、対象ドレーン排液の粘性、対象ドレーン排液の臭い、前記患者へのドレーン据付状態、前記患者のバイタルサインおよび前記患者の身体所見から選ばれる少なくとも一つとから、前記患者に生じている可能性のある術後合併症を推定する手段、ならびに 推定された術後合併症を提示する手段をさらに有する、〔1〕に記載の術後合併症を早期に発見するためのドレーン排液管理支援システム。
【0013】
〔3〕 前記成分が、赤血球、ヘモグロビン、アルブミン、総タンパク、アミラーゼ、ピリルビン、トリプシン、およびトリグリセリドからなる群から選ばれる少なくともひとつである、〔1〕または〔2〕に記載のドレーン排液管理支援システム。
〔4〕 色度は、単位系が、CMYK、Hex、RGB、Lab、HSV、XYZ、またはHSLである、〔1〕、〔2〕または〔3〕に記載のドレーン排液管理支援システム。
〔5〕 推定された術後合併症に対する処置法を提示する手段をさらに含む、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載のドレーン排液管理支援システム。
【0014】
〔6〕 ドレーン排液が呈する可能性のある色と、その色の色度と、その色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度と、を対応させて示した、あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度を決定し、且つ対象ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度を推定するためのドレーン排液管理支援用のチャート。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドレーン排液管理支援システムは、術後出血、縫合不全、胆汁漏、膵液瘻などの術後合併症を早期に発見するための支援をすることができる。さらに、本発明のドレーン排液管理支援システムによると、色調の判断に個人差が生じにくく、術後合併症の見逃しを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のドレーン排液管理支援システムは、データベース、色度を決定する手段、成分の濃度を推定する手段、術後合併症を推定する手段、および推定された術後合併症を提示する手段を有する。
【0018】
データベースには、ドレーン排液が呈する可能性のある色の色度とその色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度との対応関係を示すデータが蓄積されている。色度は、色を表現する単位系によって制限されず、例えば、CMYK、Hex、RGB、Lab、HSV、XYZ、HSLなどを挙げることができる。
【0019】
データとして蓄積されるドレーン排液の成分としては、赤血球、ヘモグロビン、アルブミン、総タンパク、アミラーゼ、ピリルビン、トリプシン、およびトリグリセリドからなる群から選ばれる少なくともひとつが好ましい。赤血球の濃度は、排液中の赤血球が占める体積割合(ヘマトクリット)で表現することができる。アミラーゼの濃度は排液の体積あたりのユニット数として表現することができる。他の成分の濃度は、排液の体積あたりの重量として表現することができる。成分濃度は、生化学分析装置などによって測定することができる。より多くの患者からドレーン排液を採取し、それの色度と成分濃度との対応関係をデータとして蓄積することによって、データベースとしての精度がより高まると考えられる。色度と成分濃度との対応関係以外に、ドレーン排液の濁度、手術の内容、ドレーンの設置部位などの情報を色度または成分濃度と関連づけてデータとして蓄積しておくことが好ましい。
【0020】
色度を決定する手段は、あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色を、例えば、色見本に対比させて、その色の色度を決定する。色見本として、例えば、所定の色度の標準液をドレナージバックまたは比色管に入れたもの、色度図などを用いることもできる。また、色度図などのデータを内蔵する色度・濁度計によって色度を測定することもできる。さらに、ドレーン排液が呈する可能性のある色と、その色の色度と、その色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度と、を対応させて示した、ドレーン排液管理支援用のチャートを用いてもよい。ドレーン排液管理支援用のチャートは、あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度を決定し、且つ対象ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度を推定するために用いることができる。ドレーン排液管理支援用のチャートは、ドレーン排液が呈する可能性のある色と、その色の色度と、その色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度との対応関係を一覧できるように一まとめにして表示するものであってもよいし、ドレーン排液が呈する可能性のある色とその色の色度との対応関係を表示する図表、および色度とその色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度との対応関係を表示する図表からなるものであってもよい。チャートの表示は、板状・薄型のコンピューター(ノート型PC、タブレット型PCなど)、板状・薄型の情報端末(ペンタブレット(ストレート型端末)、スマートフォン、スマートブックなど)などで行うことができる。
【0021】
成分の濃度を推定する手段では、色度を決定する手段によって決定された色度から、前記データベースに蓄積されたデータに基づいて、対象ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度を推定する。対象ドレーン排液の成分の濃度を推定する際に、色度を決定する手段によって決定された色度以外に、対象ドレーン排液の濁度、前記患者に施した手術の内容、ドレーンの設置部位などの情報との関連を参照することによって、より高い精度で成分の濃度を推定することができる。推定において、前記のドレーン排液管理支援用のチャートを用いてもよい。
【0022】
術後合併症を推定する手段では、推定された成分の濃度と、対象ドレーン排液の量、対象ドレーン排液の粘性、対象ドレーン排液の臭い、前記患者へのドレーン据付状態、前記患者のバイタルサインおよび前記患者の身体所見から選ばれる少なくとも一つとから、前記患者に生じている可能性のある術後合併症を推定する。術後合併症を推定する手段では、さらに、対象ドレーン排液の濁度、前記患者に施した手術の内容、ドレーンの設置部位などの情報を推定に用いることができる。
【0023】
推定された術後合併症を提示する手段は、例えば、術後出血、縫合不全、胆汁漏、膵液瘻、リンパ漏などの術後合併症の疑いを提示する。
【0024】
本発明のドレーン排液管理支援システムは、推定された術後合併症に対する対処法を提示する手段をさらに含むことが好ましい。対処法を提示する手段は、例えば、術後合併症の疑いの確からしさを高めるために、看護師または医師がさらにどのような項目をチェックすべきか、どのような処置を講じるべきかを提示することができる。
【0025】
例えば、赤血球は赤色を呈し、オキシヘモグロビンは鮮赤色を呈し、デオキシヘモグロビンは暗赤色を呈する。ピリルビンは、胆汁色、黄色を呈するが、空気に触れると緑色を呈する。トリプシンは、赤ワイン色を呈する。
【0026】
術直後は血性と呼ばれる色調をなし、その後、淡血性→淡々血性→淡黄色→淡々黄色に変化する場合は、概ね正常である。例えば、
図1に示すxy色度図によれば、左下の赤の領域から黄またはオレンジの中心よりを経て中央部の無色へと向かうような経過をたどる。
術後も長く血性である場合は、術後出血が疑われる。鮮赤色の血性である場合は、オキシヘモグロビンの濃度が高く、動脈性出血が疑われる。暗赤色の血性である場合は、デオキシヘモグロビンの濃度が高く、静脈系の出血もしくは陳旧性の出血が疑われる。本発明に用いられる対応関係を示すデータベースまたはチャートによれば、例えば、WEBカラー(HEX): #990000に対応する色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分濃度は、ヘマトクリットHtが約39.7%、ヘモグロビン濃度Hbが約13.4g/dlである。あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度が、WEBカラー(HEX): #990000であると決定されたとき、ヘマトクリットHtが約39.7%、ヘモグロビン濃度Hbが約13.4g/dlであると推定できる。
【0027】
淡血性から、術後3日までに、黄色、薄黄色若しくは淡々黄色に変化した場合、正常な経過をたどっているのか、胆汁漏、腸管穿孔、リンパ漏などが生じているのかの見極めが必要である。患者に関する他の情報とを併せて、総合的に判断することが必要になる。
茶褐色、濃黄色、黄土色である場合は、ピリルピンの濃度が高いと考えられ、術後胆汁漏が疑われる。発熱、腹痛がある場合は、腹膜炎が疑われる。
赤ワイン色、褐色である場合は、トリプトシンの濃度が高いと考えられ、術後膵液漏が疑われる。
本発明に用いられる対応関係を示すデータベースまたはチャートによれば、例えば、WEBカラー(HEX):#805e40に対応する色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分濃度は、アミラーゼ濃度Amyが6835U/lである。あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度が、WEBカラー(HEX):#805e40であると決定されたとき、アミラーゼ濃度Amyが6835U/lであると推定できる。この成分濃度から膵液漏の疑いが推定される。
【0028】
乳白色、薄い黄色である場合は、脂肪、脂肪酸の濃度が高いと考えられ、リンパ漏が疑われる。便臭を伴う黄土色の便汁様である場合は、腸管の縫合不全や腸管損傷が疑われる。本発明に用いられる対応関係を示すデータベースまたはチャートによれば、例えば、WEBカラー(HEX):#d27477に対応する色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分濃度は、ヘマトクリットHtが約8.0%、ヘモグロビン濃度Hbが約3.1g/dl、トリグリセリド濃度TGが約321mg/dlである。あるひとりの患者から採取された対象ドレーン排液が呈する色の色度が、WEBカラー(HEX):#d27477であると決定されたとき、ヘマトクリットHtが約8.0%、ヘモグロビン濃度Hbが約3.1g/dl、トリグリセリド濃度TGが約321mg/dlであると推定できる。この成分濃度からリンパ漏の疑いが推定される。
【0029】
このようにして、対象ドレーン排液が呈する色から、色度を決定し、色度から排液の成分濃度を推定し、その推定された成分濃度と、患者に関する他の情報とに基づいて、患者に生じている可能性のある術後合併症を推定することができる。
【0030】
ドレーン排液が呈する可能性のある色の色度とその色を呈するドレーン排液に含まれる可能性のある成分の濃度との対応関係を示すデータに基づいて、色見本を作成することができる。例えば、ドレーン排液に含まれる可能性のある成分の色と同じ色の着色剤を用意し、それを水などの溶媒に成分濃度に従って添加することによって、該成分濃度を有するドレーン排液の疑似液体を得ることができる。疑似液体は、看護職者がドレーン排液管理の研修等において、利用することができる。