(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】キャリパー及びキャリパー支持構造
(51)【国際特許分類】
F16D 65/02 20060101AFI20220704BHJP
F16D 55/225 20060101ALI20220704BHJP
F16D 55/228 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
F16D65/02 A
F16D65/02 E
F16D55/225 102Z
F16D55/228
F16D65/02 F
(21)【出願番号】P 2018002208
(22)【出願日】2018-01-10
【審査請求日】2020-12-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391005189
【氏名又は名称】株式会社エンドレスプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(72)【発明者】
【氏名】花里 功
(72)【発明者】
【氏名】小林 朗雅
(72)【発明者】
【氏名】森澤 広文
(72)【発明者】
【氏名】島谷 篤史
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-025837(JP,A)
【文献】特表2014-510237(JP,A)
【文献】実開昭49-119689(JP,U)
【文献】実開昭49-089584(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/02
F16D 55/225
F16D 55/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキ(1)のキャリパー(3)であって、
ディスクローター(50)を跨ぐ形状をもつキャリパー本体(3a)と、
前記キャリパー(3)を支持するために前記キャリパー本体(3a)に設けられた第1の支持部(3d)及び第2の支持部(3e)と、を有し、
前記第1の支持部(3d)は、前記キャリパー本体(3a)におけるディスクローター(50)の回転方向に向いた
一方の先端にて該回転方向と直交する第1の端面に位置してディスクローター(50)を跨ぐ方向に延在し、かつ、ディスクローター(50)を跨ぐ方向に垂直に前記キャリパー本体(3a)の略中央を通る略中央面(C)の一方の側に第1のボルト取付部(3d1)を具備すると共に他方の側に第2のボルト取付部(3d2)を具備し、
前記第2の支持部(3e)は、前記キャリパー本体(3a)におけるディスクローター(50)の回転方向とは反対方向に向いた
他方の先端にて該反対方向と直交する第2の端面に位置してディスクローター(50)を跨ぐ方向に延在し、かつ、前記略中央面(C)の一方の側に第3のボルト取付部(3e1)を具備すると共に他方の側に第4のボルト取付部(3e2)を具備し、かつ、
前記第1及び第2の支持部(3d、3e)を介して前記キャリパー本体(3a)が車体に取り付けられることを特徴とするキャリパー。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリパー(3)と、前記キャリパー(3)を支持するキャリパー支持ステー(4)と、を備えたキャリパー支持構造であって、
前記キャリパー支持ステー(4)が、
車体に固定されかつディスクローター(50)の面に平行に延在するアーム部(4c)と、
前記アーム部(4c)の両端からそれぞれ延びる部分の先端に形成されかつ前記キャリパー(3)の前記第1の支持部(3d)及び前記第2の支持部(3e)にそれぞれ取り付け可能である第1のヘッド部(4a)及び第2のヘッド部(4b)と、を有し、
前記第1のヘッド部(4a)は、前記第1の支持部(3d)の前記第1及び第2のボルト取付部(3d1、3d2)にそれぞれ対応する第5及び第6のボルト取付部(4d1、4d2)を具備し、かつ、
前記第2のヘッド部(4b)は、前記第2の支持部(3e)の前記第1及び第2のボルト取付部(3e1、3e2)にそれぞれ対応する第7及び第8のボルト取付部(4e1、4e2)を具備することを特徴とするキャリパー支持構造。
【請求項3】
前記キャリパー(3)における前記第1の支持部(3d)及び第2の支持部(3e)の各々が、
制動時に、前記キャリパー支持ステー(4)における前記第1のヘッド部(4a)及び第2のヘッド部(4b)の各々に対して、前記ディスクローター(50)を跨ぐ方向において所定の範囲でそれぞれスライド可能であることを特徴とする請求項2に記載のキャリパー支持構造。
【請求項4】
前記キャリパー(3)における前記第1の支持部(3d)及び第2の支持部(3e)の各々が、
制動時に、前記キャリパー支持ステー(4)における前記第1のヘッド部(4a)及び第2のヘッド部(4b)の各々に対して、所定の旋回軸の周りで所定の角度範囲でそれぞれ旋回可能であることを特徴とする請求項2又は3に記載のキャリパー支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキに関し、特にキャリパーを支持するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキ装置として、ディスクブレーキが周知である。ディスクブレーキは、車軸とともに回転する円盤であるディスクローターと、ディスクローターを跨ぐように配置されるキャリパーと、キャリパーに取り付けられディスクローターを両側から挟むブレーキパッドとを有する。キャリパーには、片側のみにピストンを有する浮動型(例えば特許文献1)と、両側にピストンを有する対向ピストン型(例えば特許文献2)がある。
【0003】
図9(a)~(d)は、従来のディスクブレーキの一例を説明するための図であり、(a)は外側面図、(b)は内側面図、(c)は正面図、(d)は平面図である。
図9(c)の左右方向がディスクローターの回転軸(図示せず)の方向である。
【0004】
ディスクブレーキ100は、ディスクローター50と、ディスクローター50を跨ぐように配置されたキャリパー103とを備えている。キャリパー103は、キャリパー支持ステー104を介して車体に固定される。
図9(c)に示すように、キャリパー103の幅方向の略中央面に対して片側にキャリパー支持ステー104が取り付けられている。ここでは、
図9(c)の左右方向を、キャリパーの幅方向と称することとする。
【0005】
図9(b)に示すように、キャリパー支持ステー104は、車体に固定するためのボルト通し孔がプレート状部分の下端に2箇所形成されている。さらに、キャリパー103に取り付けるためのボルト通し孔(又はボルト螺子穴)が、プレート状部分の上端に2箇所形成されている。
【0006】
図9(c)(d)に示すように、キャリパー103の幅方向片側において前後2箇所に1つずつ形成されたボルト通し孔103a、103bにボルト106をそれぞれ貫通させ、キャリパー支持ステー104のボルト通し孔を通してナットで締結するか、又は、キャリパー支持ステー104に形成されたボルト螺子穴にねじ込むことにより、キャリパー103とキャリパー支持ステー104が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-88014号公報
【文献】特開2007-139186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キャリパーとキャリパー支持ステーの固定が、キャリパーの片側のみで行われる構成では、制動時に負荷がかかると、キャリパーにおける固定されていない片側が著しく変形し易いという問題がある。特に、キャリパーの非固定側が鉛直面内で大きく変形することから、固定側と非固定側でディスクローターを掴む力が異なることになり、ブレーキディスクの負荷が固定側と非固定側で異なり、両側のブレーキパッドの摩耗量に差を生じることとなる。さらに、キャリパーの変形が大きくなるため、ペダルストロークが増大する。
【0009】
上記の問題に鑑み、本発明は、ディスクブレーキのキャリパーを支持する構造において制動時のキャリパーの変形を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を提供する。なお、括弧内の符号は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
・ 本発明の一態様は、ディスクブレーキ(1)のキャリパー(3)であって、
ディスクローター(50)を跨ぐ形状をもつキャリパー本体(3a)と、
前記キャリパー(3)を支持するために前記キャリパー本体(3a)に設けられた第1の支持部(3d)及び第2の支持部(3e)と、を有し、
前記第1の支持部(3d)は、前記キャリパー本体(3a)におけるディスクローター(50)の回転方向に向いた一方の先端にて該回転方向と直交する第1の端面に位置してディスクローター(50)を跨ぐ方向に延在し、かつ、ディスクローター(50)を跨ぐ方向に垂直に前記キャリパー本体(3a)の略中央を通る略中央面(C)の一方の側に第1のボルト取付部(3d1)を具備すると共に他方の側に第2のボルト取付部(3d2)を具備し、
前記第2の支持部(3e)は、前記キャリパー本体(3a)におけるディスクローター(50)の回転方向とは反対方向に向いた他方の先端にて該反対方向と直交する第2の端面に位置してディスクローター(50)を跨ぐ方向に延在し、かつ、前記略中央面(C)の一方の側に第3のボルト取付部(3e1)を具備すると共に他方の側に第4のボルト取付部(3e2)を具備し、かつ、
前記第1及び第2の支持部(3d、3e)を介して前記キャリパー本体(3a)が車体に取り付けられることを特徴とする。
・ 本発明の別の態様は、上記態様のキャリパー(3)と、前記キャリパー(3)を支持するキャリパー支持ステー(4)と、を備えたキャリパー支持構造であって、
前記キャリパー支持ステー(4)が、
車体に固定されかつディスクローター(50)の面に平行に延在するアーム部(4c)と、
前記アーム部(4c)の両端からそれぞれ延びる部分の先端に形成されかつ前記キャリパー(3)の前記第1の支持部(3d)及び前記第2の支持部(3e)にそれぞれ取り付け可能である第1のヘッド部(4a)及び第2のヘッド部(4b)と、を有し、
前記第1のヘッド部(4a)は、前記第1の支持部(3d)の前記第1及び第2のボルト取付部(3d1、3d2)にそれぞれ対応する第5及び第6のボルト取付部(4d1、4d2)を具備し、かつ、
前記第2のヘッド部(4b)は、前記第2の支持部(3e)の前記第1及び第2のボルト取付部(3e1、3e2)にそれぞれ対応する第7及び第8のボルト取付部(4e1、4e2)を具備することを特徴とする。
・ 上記態様において、前記キャリパー(3)における前記第1の支持部(3d)及び第2の支持部(3e)の各々が、制動時に、前記キャリパー支持ステー(4)における前記第1のヘッド部(4a)及び第2のヘッド部(4b)の各々に対して、前記ディスクローター(50)を跨ぐ方向において所定の範囲でそれぞれスライド可能であることを特徴とする。
・ 上記態様において、前記キャリパー(3)における前記第1の支持部(3d)及び第2の支持部(3e)の各々が、制動時に、前記キャリパー支持ステー(4)における前記第1のヘッド部(4a)及び第2のヘッド部(4b)の各々に対して、所定の旋回軸の周りで所定の角度範囲でそれぞれ旋回可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のディスクブレーキのキャリパーは、その支持部をキャリパー本体の幅方向の略中央面と交差する領域に設けている。従って、キャリパーが左右均等に支持されるため、制動時の負荷がかかっても偏った変形を生じない。また、キャリパー本体の片側のみでキャリパーが支持される従来の構成に比べて、本発明のキャリパーは全体の変形も少なく、全体の剛性が向上する。さらに、従来の構成に比べてブレーキパッドの偏摩耗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のキャリパー及びキャリパー支持ステーを備えたディスクブレーキの一例の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な外側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な内側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な正面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な平面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示したディスクブレーキのキャリパーの正面視における変形解析コンター図である。
【
図7】
図7は、
図1に示したディスクブレーキのキャリパーの平面視における変形解析コンター図である。
【
図8】
図8は、本発明の概念を模式的に示した正面図であり、(a)は対向ピストン型キャリパー、(b)は浮動型キャリパーである。
【
図9】
図9(a)~(d)は、従来のキャリパー及びキャリパー支持ステーを備えたディスクブレーキの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明によるキャリパー、キャリパー支持ステー、ディスクブレーキ、及び、キャリパー支持ステーによるキャリパーの支持構造の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明のキャリパー及びキャリパー支持ステーを備えたディスクブレーキの一例の外観斜視図である。
図2は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な外側面図である。
図3は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な内側面図である。
図4は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な正面図である。
図5は、
図1に示したディスクブレーキの概略的な平面図である。
【0015】
なお「外側面図」は、車体の外側から視た側面図であり、「内側面図」は、車体の内側から視た側面図である。また本明細書における「前後方向」は、キャリパーが跨いでいる部分におけるディスクローターの回転方向を「前」としその反対方向を「後」とする。「左右方向」は、前後方向に垂直な方向すなわちディスクローターの回転軸の方向である。
【0016】
ディスクブレーキ1は、ディスクローター50と、キャリパー3とを備えている。キャリパー3は、ディスクローター50を跨ぐような形状をもつキャリパー本体3aを有する。キャリパー本体3aの内部には、ディスクローター50の左右両側にそれぞれ配置された1又は複数のシリンダ部3b、3cが設けられている。本例のキャリパー3は、対向ピストン型である。しかしながら、本発明は浮動型キャリパーにも適用可能である。また、キャリパー本体3aの全体形状は、図示の例に限られない。キャリパー本体3aは、基本的に略左右対称の形状が好適であるが、細部については厳密に対称でなくともよく、適宜設計することができる。
【0017】
キャリパー3は、キャリパー支持ステー4により支持され、これを介して車体(図示せず)に固定される。
図1の斜視図では、キャリパー支持ステー4の一対のヘッド部4a、4bのみが現れている。キャリパー支持ステー4のヘッド部4a、4bは、キャリパー本体3aの前端と後端にそれぞれ取り付けられている。このために、キャリパー本体3aの前端には支持部3dが設けられ、キャリパー本体3aの後端には支持部3eが設けられる。
【0018】
キャリパー本体3aにおける支持部3d及び3eは、
図4の正面図に示したキャリパー本体3aの幅方向の略中央面Cと交差する領域に設けられている。この領域は、幅方向の略中央面Cを挟んで左右方向の所定の範囲を含み、左右対称であることが好ましい。しかしながら、左右対称に限定するものではなく、この領域が左右対称でない場合も本発明の効果は得られる。この領域の大きさは、必要に応じて適宜設計される。支持部3d及び3eは、具体的には、例えばボルト螺子穴(又はボルト通し孔)3d1、3d2及び3e1、3e2(
図5、
図6参照)等を有する。これらのボルト螺子穴(又はボルト通し孔)の位置及び数は、図示の例に限定されず適宜設計される。
【0019】
キャリパー3をディスクローター50と組み合わせた状態においては、キャリパー本体3aの幅方向の略中央面Cは、ディスクローター50を厚さ方向において二等分する中央面と言い換えることもできる。従って、キャリパー3上の支持部3d及び3eの位置は、ディスクローター50を径方向に仮想的に延長した領域と重なっているともいえる。
【0020】
図3の内側面図に示すように、キャリパー支持ステー4は、図示の例ではディスクローター50の面に対し平行に延在するプレート状のアーム部4cを有する。アーム部4cの形状は、図示の例に限られない。アーム部4cの下端の前後2箇所に、車体に固定するためのボルト通し孔4f1、4f2が形成されている。ボルト通し孔4f1、4f2を用いる固定では、ボルトはディスクローター50の面に垂直な方向に配置される。アーム部4cと車体との固定構造は、これに限られず多様な形態があり得る。例えば、アーム部4cと車体とを固定するボルトが、ディスクローター50の面に平行な方向に配置される場合もある。
【0021】
さらに、アーム部4cの前後2箇所において斜め上方にそれぞれに枝状に延びる部分の先端には、ヘッド部4a、4bがそれぞれ形成されている。言い換えると、アーム部4cは、一対のヘッド部4a、4bの間に介在する部分である。図示の例では、ヘッド部4a、4bは、アーム部4cの2つの先端からそれぞれディスクローター50の方へ屈曲して水平に延在する。ヘッド部4a、4bの形状は図示の例に限定されず、キャリパー本体3aの支持部3d、3eに取り付け可能に形成されていればよい。
【0022】
キャリパー支持ステー4の前側のヘッド部4aは、キャリパー本体3aの前端の支持部3dに取り付けられる。一方、後側のヘッド部4bは、キャリパー本体3aの後端の支持部3eに取り付けられる。このために、前側のヘッド部4aにはボルト通し孔(又はボルト螺子穴)4d1、4d2が形成されており、これらのボルト通し孔4d1、4d2は、キャリパー本体3aの前端の支持部3dのボルト螺子穴(又はボルト通し孔)3d1、3d2に対応する。同様に、後側のヘッド部4bにはボルト通し孔(又はボルト螺子穴)4e1、4e2が形成されており、これらのボルト通し孔4e1、4e2は、キャリパー本体3aの後端の支持部3eのボルト螺子穴(又はボルト通し孔)3e1、3e2に対応する。
【0023】
キャリパー本体3aの支持部3dとキャリパー支持ステー4のヘッド部4aとの固定、及び、支持部3eとヘッド部4bとの固定は、適宜のボルト6とナット(図示せず)との螺合により、又は、ボルト6を螺子穴にねじ込むことにより行うことができる。
【0024】
このように、本発明のキャリパー3においては、キャリパー本体3aに対するキャリパー支持ステー4の取付部分である支持部3d、3eが、キャリパー本体3aの幅方向の略中央線と交差する領域に配置されている。これにより、キャリパー3が左右均等に支持されることになるので、制動時の負荷によるキャリパー3の変形においても左右の偏りを生じない。この結果、ブレーキパッドの偏摩耗が低減され、ブレーキペダルストロークが短くなる。キャリパー3の変形量も従来に比べて小さくなることから、ドライバーがペダル剛性の高さを実感できることによりブレーキ操作の安心感が向上する。
【0025】
図示しないが別の例として、上述した実施形態において、キャリパー本体3aの支持部3d、3eとキャリパー支持ステー4のヘッド部4a、4bとをそれぞれ固定するボルト6が、そのまま車体とも固定される実施形態も可能である。この実施形態においては、キャリパー支持ステー4のアーム部4cは不要となり、一対のヘッド部4a、4bによりキャリパー支持ステー4が構成される。
【0026】
図示しないがさらに別の例として、上述した実施形態において、キャリパー支持ステー4を用いない実施形態も可能である。その場合、例えば、キャリパー本体3aの支持部3d、3eのボルト螺子穴(又はボルト通し孔)3d1、3d2、3e1、3e2に適用されるボルト6を直接、車体に固定する。
【0027】
図示しないがさらに別の例として、キャリパー3におけるキャリパー本体3aの支持部3d、3eが、車体との位置関係において全く不動に固定支持されるのではなく、車体に対して所定の範囲内で可動に支持される実施形態も可能である。例えば上述した実施形態で言えば、キャリパー本体3aの支持部3d、3eが、キャリパー支持ステー4のヘッド部4a、4bに対して左右方向に所定の範囲でそれぞれスライド可能であるように構成することができる。
【0028】
これに替えて又はこれに加えて、キャリパー本体3aの支持部3d、3eが、キャリパー支持ステー4のヘッド部4a、4bに対して旋回軸(例えば
図4のC線上)の周りで所定の角度範囲でそれぞれ旋回可能であるように構成することもできる。
【0029】
キャリパー本体3aの支持部3d、3eがスライド可能及び/又は旋回可能に支持される構成によれば、制動時にディスクローター50が変形して車体に対して傾斜した場合にも、キャリパー3がディスクローター50の変形に追随してその位置を変更することができる。よって、キャリパー3は、ディスクローター50を左右対称に跨いだ配置を維持することができ、これによってもブレーキパッドの偏摩耗を低減できる。
【0030】
図6及び
図7を参照して、本発明による制動時のキャリパーの変形解析の結果を示す。
図6は、
図1に示したディスクブレーキのキャリパーの正面視における変形解析コンター図である。
図7は、
図1に示したディスクブレーキのキャリパーの平面視における変形解析コンター図である。
図6及び
図7とも(a)が
図9の従来例、(b)が
図1の実施例についての結果である。
【0031】
正面視及び平面視とも、解析されたXY平面において、従来例のキャリパー103では、輪郭の変形が大きくかつ偏っているのに対し、実施例のキャリパー3では輪郭の変形が小さくかつ変形しても均等に変形することが確認された。また、
図6及び
図7はグレースケールであるため分かり難いが、元のカラーのコンター図では、内部の変形量についても従来例に比べて実施例では変形量が明らかに少ないことが確認された。このように、本発明により、制動時のキャリパーの変形の偏りと変形量が改善された。
【0032】
図8は、本発明の概念を模式的に示した正面図であり、(a)は対向ピストン型キャリパー、(b)は浮動型キャリパーである。
【0033】
図8(a)の対向ピストン型キャリパーの場合は、
図1の実施例と同じであるので上述した通りである。補足すると、キャリパー本体3aの内部には左右に対向して1又は複数のシリンダ部3b、3cが配置されている。シリンダ部3b、3cの内部にはそれぞれピストンが設けられ、ピストンの対向する端部にブレーキパッド3g、3fがそれぞれ取り付けられている。
【0034】
図8(b)の浮動型キャリパーの場合、キャリパー本体3aの片側にのみ1又は複数のシリンダ部3cを有し、制動時にキャリパー本体3aが移動する。例えば、キャリパー本体3aはこれと一体に移動するキャリパーピン3hを備えている。この場合、例えば、キャリパーピン3hを摺動させる適宜の部材上に支持部(図示せず)を形成することができる。
【0035】
浮動型キャリパーの場合、制動時にキャリパー本体3aが移動するが、例えば、非制動時のキャリパー本体3aの位置を基準として本発明を適用する。すなわち、非制動時のキャリパー本体3aの幅方向の略中央面と交差する領域に支持部を配置する。そして、キャリパー支持ステー4は、それらの支持部に取り付けられる。
【0036】
以上に述べた本発明の実施形態は一例を示したものであり、これら以外にも、設計的変更による多様な変形形態が可能であり、それらについても本発明に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0037】
1 ディスクブレーキ
3 キャリパー
3a キャリパー本体
3b、3c シリンダ部
3d、3e 支持部
3d1、3d2、3e1、3e2 ボルト螺子穴(ボルト通し孔)
3f、3g ブレーキパッド
3h キャリパーピン
4 キャリパー支持ステー
4a、4b ヘッド部
4c アーム部
4d1、4d2、4e1、4e2 ボルト通し孔(ボルト螺子穴)
4f1、4f2 ボルト通し孔
6、106 ボルト
100 ディスクブレーキ
103 キャリパー
103a、103b ステー取付部
104 キャリパー支持ステー
50 ディスクローター
C 幅方向の略中央面