IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 大分大学の特許一覧

<>
  • 特許-MR流体装置 図1
  • 特許-MR流体装置 図2
  • 特許-MR流体装置 図3
  • 特許-MR流体装置 図4
  • 特許-MR流体装置 図5
  • 特許-MR流体装置 図6
  • 特許-MR流体装置 図7
  • 特許-MR流体装置 図8
  • 特許-MR流体装置 図9
  • 特許-MR流体装置 図10
  • 特許-MR流体装置 図11
  • 特許-MR流体装置 図12
  • 特許-MR流体装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】MR流体装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 63/00 20060101AFI20220704BHJP
   F16D 37/02 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
F16D63/00 P
F16D37/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018103923
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019207021
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 功
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183846(JP,A)
【文献】特開2018-017378(JP,A)
【文献】特開2017-089731(JP,A)
【文献】特開平11-201193(JP,A)
【文献】国際公開第2004/018889(WO,A1)
【文献】米国特許第02685947(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00- 39/00
F16D 48/00- 48/12
F16D 49/00- 71/04
F16H 3/00- 3/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基部、及び前記基部の外縁から起立する側壁部により形成される収納部、並びに前記基部の中心から前記基部に直交する方向に延伸する軸部を有する回転子と、
前記側壁部に対向する側面に凹部が形成された鉄心、及び前記鉄心に巻回され、且つ、電流が流されたときに少なくとも前記凹部を通る磁束を発生するコイルを有し、少なくとも一部が前記収納部に収納された固定子と、
前記軸部を回転可能に支持する軸受と、
前記回転子に固定され、前記側壁部から前記凹部の内部に延伸するリング状の複数の回転板と、
前記固定子に固定され、前記凹部の内部において前記複数の回転板のそれぞれと交互に配置されるリング状の複数の固定板と、
前記収納部及び前記固定子とが内部に配置され、少なくとも前記凹部にMR流体を充填可能な筐体と、を有し、
前記基部の厚さは、前記基部と前記鉄心との間の離隔距離よりも薄い、ことを特徴とするMR流体装置。
【請求項2】
前記固定子は、中央部に前記基部と対向する第1面から前記第1面と反対の第2面に貫通する貫通孔が形成され、
前記軸部は、前記貫通孔を貫通するように配置され、
前記軸受は、前記固定子の内部に配置される、請求項1に記載のMR流体装置。
【請求項3】
前記基部は、円形状の形状を有し、
前記側壁部は、前記基部の外縁から高さが低くなるに従って前記基部の中心から離隔するように起立する円錐台状の形状、又は前記基部の外縁から高さが高くなるに従って前記基部の中心から離隔するように起立する逆円錐台状の形状を有する第1側壁部と、前記第1側壁部の端面から前記基部の延伸方向に直交する方向に起立する円筒状の形状を有する第2側壁部とを有し、
前記複数の回転板は、前記第2側壁部の内壁に固定され
前記第1側壁部が円錐台状の形状を有するとき、前記軸部は、前記基部から前記収容部と反対方向に延伸し、
前記第1側壁部が逆円錐台状の形状を有するとき、前記軸部は、前記基部から前記収容部の方向に延伸する、請求項1又は2に記載のMR流体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MR流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一方又は双方が回転可能な一対の板材の間に配置されたMR流体(Magnetorheological fluid, Magnetic Fluid)に印加する磁界の磁束密度を調整することで、一対の板材の間の粘性を制御するMR流体装置が知られている。MR流体は、磁気粘性流体とも称され、粒子径が1~20μmである鉄系粒子等の磁性体粒子を絶縁性オイルに含有させた材料である。MR流体は、磁界が印加されないときは磁性体粒子が自由に流動するため粘性が小さい。一方、MR流体は、磁界が印加されたときは磁性体粒子が磁力線に沿って配列して粘性が大きくなる。MR流体装置は、MR流体に印加する磁界の磁束密度を調整することで、一対の板材の間の粘性を制御可能なので、ブレーキ及びクラッチ等の可制御型のアクチュエータへの応用が望まれている。
【0003】
MR流体装置の性能を向上させるための種々の技術が知られている。例えば、特許文献1には、永久磁石及びコイルによりMR流体の粘性を制御する技術が記載されている。特許文献1に記載される技術では、永久磁石による磁界を相殺するようにコイルに電流を流すことでMR流体の粘性を低減させると共に、永久磁石による磁界を増強するようにコイルに電流を流すことでMR流体の粘性を増加させる。特許文献1に記載される技術は、永久磁石による磁界を利用することでコイルに流す電流を低減できるので消費電力が小さくすることができる。また、特許文献1に記載される技術は、コイルに電流が流れていないときに永久磁石による磁界がMR流体に印加されるので、コイルに電流が流れていないときにMR流体が沈殿することを防止できる。
【0004】
また、特許文献2には、MR流体よりも粘性が大きい半固体状のMRグリースをMR流体の代わりに使用する技術が記載されている。特許文献2に記載される技術は、MR流体よりも粘性が大きいMRグリースを使用することで、高速回転中に鉄系粒子が遠心分離すること、及び長期静置中に鉄系粒子が沈殿することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-183846号公報
【文献】特開2016-148437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MR流体装置の性能を更に向上させるため、MR流体装置の低消費電力化が可能な技術が望まれている。
【0007】
そこで、本発明では、MR流体装置の性能を更に向上させるため、MR流体装置の低消費電力化が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るMR流体装置は、平板状の基部、及び基部の外縁から起立する側壁部により形成される収納部、並びに基部の中心から基部に直交する方向に延伸する軸部を有する回転子と、側壁部に対向する側面に凹部が形成された鉄心、及び鉄心に巻回され、且つ、電流が流されたときに少なくとも前記凹部を通る磁束を発生するコイルを有し、少なくとも一部が収納部に収納された固定子と、軸部を回転可能に支持する軸受と、回転子に固定され、側壁部から凹部の内部に延伸するリング状の複数の回転板と、固定子に固定され、凹部の内部において複数の回転板のそれぞれと交互に配置されるリング状の複数の固定板と、収納部及び固定子とが内部に配置され、少なくとも凹部にMR流体を充填可能な筐体とを有する。
【0009】
また、本発明に係るMR流体装置では、固定子は、中央部に基部と対向する第1面から第1面と反対の第2面に貫通する貫通孔が形成され、軸部は、貫通孔を貫通するように配置され、軸受は、固定子の内部に配置されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るMR流体装置では、基部は、円形状の形状を有し、側壁部は、基部の外縁から高さが低くなるに従って基部の中心から離隔するように起立する円錐台状の形状を有する第1側壁部と、第1側壁部の端面から基部の延伸方向に直交する方向に起立する円筒状の形状を有する第2側壁部とを有し、複数の回転板は、第2側壁部の内壁に固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、MR流体装置の性能を更に向上させるため、MR流体装置の低消費電力化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るMR流体装置の正面斜視図である。
図2図1に示すMR流体装置の背面斜視図である。
図3図1に示すMR流体装置の上部筐体を取りの図板状態の正面斜視図である。
図4図1に示すMR流体装置のA-A´線に沿う断面図である。
図5図4において破線Bで囲まれた部分の部分拡大図である。
図6】(a)は図3に示す回転子の正面斜視図であり、(b)は図3に示す回転子の背面斜視図である。
図7】(a)は図4に示す第1回転板の斜視図であり、(b)は図4に示す第1固定板の斜視図である。
図8】第2実施形態に係るMR流体装置の正面斜視図である。
図9図8に示すMR流体装置の背面斜視図である。
図10図8に示すMR流体装置の上部筐体を取りの図板状態の正面斜視図である。
図11図8に示すMR流体装置のA-A´線に沿う断面図である。
図12図11において破線Bで囲まれた部分の部分拡大図である。
図13】(a)は図10に示す回転子の正面斜視図であり、(b)は図10に示す回転子の背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る部品の製造方法について説明する。ただし、本発明は図面又は以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。本実施形態に係るMR流体装置は、固定子を収納する収納部を有する回転子の側壁から、固定子に形成される凹部に向けて延伸する複数の回転板と、凹部の内部において複数の回転板と交互に配置されるように凹部から延伸する複数の固定板とを有する。本実施形態に係るMR流体装置は、回転子が固定子を収納する収納部を有することで、回転子の慣性モーメントが小さくなり、回転している回転子の回転を制御するために固定子のコイルに流す電流が小さくなり低消費電力化が実現できる。
【0014】
(第1実施形態に係るMR流体装置の構造及び機能)
図1は第1実施形態に係るMR流体装置の正面斜視図であり、図2図1に示すMR流体装置の背面斜視図である。図3図1に示すMR流体装置の上部筐体を取りの図板状態の正面斜視図である。図4図1に示すMR流体装置のA-A´線に沿う断面図であり、図5図4において破線Bで囲まれた部分の部分拡大図である。
【0015】
MR流体装置1は、回転子10と、固定子20と、第1軸受31と、第2軸受32と、軸固定部材33と、3枚の回転板40と、2枚の固定板50と、筐体60とを有し、筐体60の内部にMR流体100が充填される。
【0016】
図6(a)は回転子10の正面斜視図であり、図6(b)は回転子10の背面斜視図である。
【0017】
回転子10は、例えばステンレス鋼及びアルミニウム等の非磁性体材料で形成され、平板状の基部11、第1側壁部12及び第2側壁部13を有する収納部14と、基部11の中心から基部11に直交する方向に延伸する軸部15と、突起部16とを有する。収納部14、軸部15及び突起部16は、一体成形されてもよく、別個に成形された後に接合されてもよい。収納部14は、固定子20の少なくとも一部を収納可能なように形成される。基部11は、円盤状であり、MR流体を循環させるための4つの第1循環孔111が90度ずつ離隔して形成される。第1側壁部12は、基部11の外縁から高さが低くなるに従って基部11の中心から離隔するように起立する円錐台状の形状を有し、MR流体を循環させるための4つの第2循環孔121が90度ずつ離隔して形成される。第1側壁部12に形成される4つの第2循環孔121は、基部11に形成される4つの第1循環孔111から45度ずつシフトして配置される。第2側壁部13は、第1側壁部12の端面から基部11の延伸方向に直交する方向に起立する円筒状の形状を有し、第1側壁部12と反対の端部には、回転板固定部131を有する。回転板固定部131は、3枚の回転板40を固定するための締結部材45が螺合するための螺合孔132が形成される。
【0018】
軸部15は、第1側壁部12及び第2側壁部13の延伸方向と反対方向に基部11の中心から延伸し、第1軸部151と、第2軸部152と、第3軸部153とを有する。第1軸部151、第2軸部152及び第3軸部153のそれぞれは、円柱形状であり、第2軸部152の径は第1軸部151よりも短く、第3軸部153の径は第2軸部152よりも短い。第1軸部151の一端は基部11に接し、第1軸部151の他端は第2軸部152の一端に接し、第2軸部152の他端は第3軸部153に接する。第3軸部153の他端には不図示の回転体が接合可能である。突起部16は、第1側壁部12及び第2側壁部13の延伸方向と同一方向に基部11の中心からと突起する。
【0019】
固定子20は、第1鉄心21と、第2鉄心22と、コイル23と、コイル封止部材24と、固定用部材25とを有する。第1鉄心21及び第2鉄心22は、電磁鋼等の磁性体材料で形成される。第1鉄心21は、電流が通電されることに応じて磁場を形成するコイル23が巻回される。コイル封止部材24は、ステンレス鋼等の非磁性体材料で形成され、第1鉄心21に巻回されたコイル23を、Oリング241を介して封止すると共に、コイル23に電流を流すことで発生する磁束が凹部27を通るようにする。コイル封止部材24の外側には、第1鉄心21と第2鉄心との間に凹部27が形成される。凹部27は、リング形状を有し、第2側壁部13に対向するように、第1鉄心21及び第2鉄心22により形成される鉄心の側面に形成される。固定用部材25は、例えばステンレス鋼及びアルミニウム等の非磁性体材料で形成され、裏面がOリング251を介して第1鉄心21の表面に接触するように、締結部材252によって締結される。固定用部材25の表面には、第2軸受32及び突起部16を収納する軸受収納部が形成される。
【0020】
第1軸受31は第2軸部152を回転可能に支持し、第2軸受32は突起部16を回転可能に支持する。第1軸受31及び第2軸受32の構造及び機能は、よく知られているのでここでは詳細な説明は省略する。軸固定部材33は、ステンレス鋼等の非磁性体材料で形成されたリング状の部材であり、螺合処理及び焼き嵌め処理の固定処理等により第2軸部152に固定される。軸固定部材33が第2軸部152に固定されることにより、第1軸受31及び第2軸受32が軸部15及び突起部16に対して軸の延伸方向にずれることが防止される。
【0021】
3枚の回転板40は第1回転板41と、第2回転板42と、第3回転板43とを有し、2枚の固定板50は第1固定板51と、第2固定板52とを有する。第1回転板41、第2回転板42及び第3回転板43は同一形状を有し、第1固定板51及び第2固定板52は同一形状を有する。
【0022】
第1回転板41、第2回転板42及び第3回転板43は、締結部材45によって回転板固定部131に締結されて固定される。回転子10の第1回転板41、第2回転板42及び第3回転板43の間には、スペーサ46が第1回転板41、第2回転板42及び第3回転板43の間を離隔する離隔部材として配置される。第1固定板51及び第2固定板52は、締結部材55によって固定子20の凹部27に締結されて固定される。第1固定板51及び第2固定板52の間には、スペーサ56が第1固定板51及び第2固定板52の間を離隔する離隔部材として配置される。
【0023】
図7(a)は第1回転板41の斜視図であり、図7(b)は第1固定板51の斜視図である。
【0024】
第1回転板41は、電磁鋼板等の磁性体材料により形成され、リング状の形状を有する平板であり、締結部材69が貫通する8つの締結孔411と、MR流体を循環させるための8つの第2循環孔112とが45度ずつ離隔して形成される。8つの締結孔411のそれぞれは円柱状を有し、8つの第2循環孔112のそれぞれは円周方向に延伸する細長状の形状を有する。
【0025】
第1固定板51は、電磁鋼板等の磁性体材料により形成され、リング状の形状を有する平板であり、締結部材55が貫通する8つの締結孔511が45度ずつ離隔して形成される。8つの締結孔511のそれぞれは円柱状を有する。
【0026】
筐体60は、第1筐体61と、第2筐体62と、第1圧力調整部材63と、第2圧力調整部材64と、第1流体充填蓋65と、第2流体充填蓋66とを有する。
【0027】
第1筐体61は、ポリエチレン等の合成樹脂及びステンレス鋼等の非磁性体材料で形成され、上板部611と、軸受収容部612と、傾斜板部613と、第1フランジ部614とを有する。
【0028】
上板部611は、円形状を有し、中央部に軸受収容部612が配置される。軸受収容部612は、軸部15が貫通する貫通孔が中心部に形成されると共に、第1軸受31を収納する凹部が形成される。傾斜板部613は、上板部611の外縁から高さが低くなるに従って上板部611の中心から離隔するように起立する円錐台状の形状を有し、第1圧力調整部材63と、第2圧力調整部材64とが180度離隔して配置される。第1フランジ部614は、傾斜板部613の外縁に配置され、リング状の形状を有し、第1筐体61と第2筐体62とを締結する締結部材69が螺合される締結孔615が45度ずつ離隔して形成される。上板部611の裏面には、MR流体が漏出することを防止するシール材616が抑え部材617によって固定される。
【0029】
第2筐体62は、第1筐体61と同様にポリエチレン等の合成樹脂及びステンレス鋼等の非磁性体材料で形成され、下板部621と、傾斜板部622と、第2フランジ部623とを有し、Oリング624を介して第1筐体61と締結部材69によって締結される。
【0030】
下板部621は、円形状を有し、第2鉄心22を固定するための締結部材67が挿入される6つの締結孔625が60度ずつ離隔して配置される。また、下板部621は、第1鉄心21と第2鉄心とを締結する不図示の締結部材と下板部621の干渉を防止するための干渉防止孔626が締結孔625の内側に形成される。傾斜板部622は、下板部621の外縁から高さが高くなるに従って下板部621の中心から離隔するように起立する逆円錐台状の形状を有し、第1流体充填蓋65と、第2流体充填蓋66とが180度離隔して配置される。第2フランジ部623は、傾斜板部622の外縁に配置され、リング状の形状を有し、第1フランジ部614に形成される締結孔615と共に第1筐体61と第2筐体62とを締結する締結部材69が螺合される締結孔627が45度ずつ離隔して形成される。
【0031】
第1圧力調整部材63及び第2圧力調整部材64は、例えばテフロン(登録商標)とも称されるポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂で形成されたチューブを内蔵する。第1圧力調整部材63及び第2圧力調整部材64は、筐体60の内部に充填されるMR流体の体積が温度変化に伴って膨張及び収縮したときにMR流体の圧力が一定になるようにMR流体の体積を調整する。第1圧力調整部材63及び第2圧力調整部材64の構成及び機能は、よく知られているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0032】
第1流体充填蓋65及び第2流体充填蓋66は、MR流体を筐体60の内部に充填するための充填口を閉鎖するための蓋材であり、例えば充填口に螺合される。
【0033】
(第1実施形態に係るMR流体装置の動作)
MR流体装置1は、コイル23に電流が流されていないときに、第3軸部153の他端に接合された不図示の回転体の回転に応じて回転子10が回転する。回転子10が回転しているときにコイル23に電流が流されると、図4において破線矢印Cで示される磁束がコイル23の周囲に発生する。コイル23に電流が流されることで発生する磁束は、回転板40及び固定板50が配置される凹部27を通る。磁束が凹部27を通ることで、回転板40と固定板50との間に位置するMR流体100の粘性が増大する。すなわち、コイル23に流される電流の大きさに応じて、回転板40と固定板50との間に位置するMR流体100の粘性が変化する。
【0034】
(第1実施形態に係るMR流体装置の作用効果)
MR流体装置1では、回転子10は、固定子20を収納する収納部14を有するので、全体に亘って材料が中実される一般的な回転子と比較して、固定子20を収納するために中空部が形成されて質量が小さくなり、慣性モーメントを小さくすることができる。MR流体装置1は、回転子10の慣性モーメントを小さくできるので、回転子10の回転を制御するためにコイル23に供給される電流が小さくなり、低消費電力化が可能である。
【0035】
また、MR流体装置1では、収納部14は、基部11の外縁から高さが低くなるに従って基部11の中心から離隔するように起立する円錐台状を有する第1側壁部12を有する。さらに、収納部14は、第1側壁部12の端面から基部11の延伸方向に直交する方向に起立する円筒状の形状を有し、回転板40を固定する第2側壁部13とを有する。回転板40は、基部11の外縁から高さが低くなるに従って基部11の中心から離隔するように起立する円錐台状を有する第1側壁部12の端部から直立する第2側壁部13に固定されるので、固定子20から十分に離隔して配置可能である。また、MR流体装置1は、第1側壁部12を円錐台状を有するように形成することで、高さを低くすることができる。
【0036】
(第2実施形態に係るMR流体装置の構造及び機能)
図8は第2実施形態に係るMR流体装置の正面斜視図であり、図9図2に示すMR流体装置の背面斜視図である。図10図8に示すMR流体装置の上部筐体を取りの図板状態の正面斜視図である。図11図8に示すMR流体装置のD-D´線に沿う断面図であり、図12図11において破線Eで囲まれた部分の部分拡大図である。
【0037】
MR流体装置2は、軸受36、軸固定部材37、回転子70、固定子80及び筐体90を第1軸受31、第2軸受32、軸固定部材33、回転子10、固定子20及び筐体60の代わりに有することがMR流体装置1と相違する。軸受36、軸固定部材37、回転子70、固定子80及び筐体90以外のMR流体装置1の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたMR流体装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0038】
図13(a)は回転子70の正面斜視図であり、図13(b)は回転子70の背面斜視図である。
【0039】
回転子70は、回転子10と同様に非磁性体材料で形成され、基部71、第1側壁部72及び第2側壁部73を有する収納部74と、軸部75と、突起部76とを有する。収納部74、軸部75及び突起部76は、一体成形されてもよく、別個に成形された後に接合されてもよい。基部71は、円盤状であり、MR流体を循環させるための4つの第1循環孔711が90度ずつ離隔して形成される。第1側壁部72は、基部71の外縁から高さが高くなるに従って基部11の中心から離隔するように起立する逆円錐台状の形状を有し、MR流体を循環させるための4つの第2循環孔721が90度ずつ離隔して形成される。第1側壁部72に形成される4つの第2循環孔721は、基部71に形成される4つの第1循環孔711から45度ずつシフトして配置される。第2側壁部73は、第1側壁部72の端面から基部71の延伸方向に直交する方向に起立する円筒状の形状を有し、第1側壁部72と反対の端部には、回転板固定部731を有する。回転板固定部731は、3枚の回転板40を固定するための締結部材99が螺合するための螺合孔732が形成される。
【0040】
軸部75は、第1側壁部72及び第2側壁部73の延伸方向と同一方向に基部11の中心に位置する突起部76から延伸し、第1軸部751と、第2軸部752と、第3軸部753とを有する。第1軸部751、第2軸部752及び第3軸部753のそれぞれは、略円柱形状であり、第2軸部752の径は第1軸部751よりも短く、第3軸部753の径は第2軸部752よりも短い。第1軸部751の一端は突起部76に接し、第1軸部751の他端は第2軸部752の一端に接し、第2軸部752の他端は第3軸部753に接する。第3軸部753の他端には不図示の回転体が接合可能である。突起部76は、第1側壁部12及び第2側壁部13の延伸方向と同一方向に基部11の中心からと突起する。
【0041】
固定子80は、第1鉄心81と、第2鉄心82と、コイル83と、コイル封止部材84と、固定用部材85と、軸受固定部材86を有する。第1鉄心81及び第2鉄心82は、第1鉄心21及び第2鉄心22と同様に磁性体材料で形成され、締結部材821によって締結される。第1鉄心81は、電流が通電されることに応じて磁場を形成するコイル83が巻回される。コイル封止部材84は、電磁鋼等の磁性体材料で形成され、第1鉄心81に巻回されたコイル83を、Oリング841を介して封止する。コイル封止部材84の外側には、第1鉄心81と第8鉄心との間に凹部87が形成される。凹部87は、リング形状を有し、第2側壁部73に対向するように、第1鉄心81及び第2鉄心82により形成される鉄心の側面に形成される。固定用部材85は、固定用部材25と同様に非磁性体材料で形成され、表面がOリング851を介して第1鉄心81の裏面に接触するように、締結部材852によって締結される。固定用部材858は、締結部材852によって第1鉄心81に締結される。軸受固定部材86は、例えばステンレス鋼及びアルミニウム等の非磁性体材料で形成され、軸部75が貫通する貫通孔及び軸受36が配置される切り欠けが形成される。軸部75が貫通する貫通孔は、回転子70の基部71と対向する第1面から第1面と反対の第2面に貫通する。軸受36は、蓋部材862が締結部材861によって軸受固定部材86に締結されることで形成される空間に配置される。また、軸受固定部材86の裏面には、MR流体が漏出することを防止するシール材863が抑え部材864によって締結部材865を介して固定される。軸固定部材37は、軸固定部材33と同様に非磁性体材料で形成されたリング状の部材であり、螺合処理及び焼き嵌め処理の固定処理等により第2軸部752に固定される。
【0042】
筐体90は、第1筐体91及び第2筐体92を第1筐体61及び第2筐体62の代わりに有することが筐体60と相違する。第1筐体91及び第2筐体92以外の筐体90の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付された筐体60の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0043】
第1筐体91は、第1筐体61と同様に非磁性体材料で形成され、上板部911と、傾斜板部912と、第1フランジ部913とを有する。
【0044】
上板部911は、円形状を有し、軸部75が貫通する軸貫通孔914が中央部に形成される。また、上板部911は、第2鉄心82を固定するための締結部材97が挿入される6つの締結孔915が60度ずつ離隔して配置される。さらに、上板部911は、締結部材821と上板部911の干渉を防止するための干渉防止孔916が軸貫通孔914と締結孔915との間に形成される。傾斜板部912は、上板部911の外縁から高さが低くなるに従って上板部911の中心から離隔するように起立する円錐台状の形状を有し、第1流体充填蓋65と、第2流体充填蓋66とが180度離隔して配置される。第1フランジ部913は、傾斜板部912の外縁に配置され、リング状の形状を有し、第1筐体91と第2筐体92とを締結する締結部材99が螺合される締結孔915が45度ずつ離隔して形成される。
【0045】
第2筐体92は、第1筐体91と同様に非磁性体材料で形成され、下板部921と、傾斜板部922と、第2フランジ部923とを有し、Oリング924を介して第1筐体91と締結部材99によって締結される。
【0046】
下板部921は円形状を有し、傾斜板部922は下板部921の外縁から高さが高くなるに従って下板部921の中心から離隔するように起立する逆円錐台状の形状を有し、第1流体充填蓋65と、第2流体充填蓋66とが180度離隔して配置される。第2フランジ部923は、傾斜板部922の外縁に配置され、リング状の形状を有し、第1フランジ部913に形成される締結孔915と共に第1筐体91と第2筐体92とを締結する締結部材69が螺合される締結孔925が45度ずつ離隔して形成される。
【0047】
(第2実施形態に係るMR流体装置の動作)
MR流体装置2は、コイル83に電流が流されていないときに、第3軸部753の他端に接合された不図示の回転体の回転に応じて回転子70が回転する。回転子70が回転しているときにコイル83に電流が流されると、図11において破線矢印Fで示される磁束がコイル83の周囲に発生する。コイル83に電流が流されることで発生する磁束は、回転板40及び固定板50が配置される凹部87を貫通する。磁束が凹部87を貫通することで、回転板40と固定板50との間に位置するMR流体100の粘性が増大する。すなわち、コイル83に流される電流の大きさに応じて、回転板40と固定板50との間に位置するMR流体100の粘性が変化する。
【0048】
(第2実施形態に係るMR流体装置の作用効果)
MR流体装置2では、軸部75は、固定子80の中央に形成される貫通孔を貫通するように配置されると共に、軸受36を固定子80の内部に配置することで、MR流体装置1よりも高さを更に低くすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1、2 MR流体装置
10、70 回転子
20、80 固定子
31 第1軸受
32 第2軸受
36 軸受
40 回転板
50 固定板
60、90 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13