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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/16 20060101AFI20220704BHJP
   H04M 1/11 20060101ALI20220704BHJP
   A45C 11/00 20060101ALI20220704BHJP
   H05K 5/02 20060101ALN20220704BHJP
【FI】
B65D43/16 100
H04M1/11 Z
A45C11/00 E
H05K5/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018121817
(22)【出願日】2018-06-27
(62)【分割の表示】P 2018516218の分割
【原出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2019041373
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2016237988
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017008966
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017025418
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017166695
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516369273
【氏名又は名称】畑中 聰
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100210619
【弁理士】
【氏名又は名称】井津 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】畑中 聰
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-141273(JP,A)
【文献】特開平05-165784(JP,A)
【文献】登録実用新案第3065399(JP,U)
【文献】特開2015-115999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/16
H04M 1/11
A45C 11/00
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、第2部材と、
前記第1部材及び前記第2部材を線状に連結し、前記連結の線方向を軸方向として前記第1部材及び/又は前記第2部材が回動する折曲部と、を備えたヒンジであって、
前記折曲部は、シリコーンゴムを含み、
前記シリコーンゴムは、前記第1部材及び前記第2部材が開いた開状態においてひずみを生じ、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢するものであり、
前記第1部材及び/又は前記第2部材の質量は、前記第1部材と前記第2部材を180°開いた開状態における、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢する応力よりも小さく、手を離すと自動的に第1部材及び/又は第2部材が閉じることを特徴とする、衛生的な汚染を防止したい物品の蓋に用いるヒンジ。
【請求項2】
前記第1部材又は前記第2部材の少なくともいずれか一方の部材の質量は、前記応力より大きいことを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記応力は、1~100gであることを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記シリコーンゴムは、断面略円弧状のシリコーンゴム製チューブからなることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のヒンジ。
【請求項5】
前記シリコーンゴム製チューブは、外径が6~20mmであり、厚みが0.5~5mmであることを特徴とする、請求項4に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記断面略円弧状の開口角度は、0~90°であることを特徴とする、請求項4に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構造物により構成され、自動的に閉じる機能を有するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の携帯電話には、落下した場合等における破損を防止するために、衝撃吸収性の保護ケースや画面保護カバーを装着することがある(特許文献1参照。)。
近年、多種多様なスマートフォンケースが販売されており、いわゆる手帳型のスマートフォンケースも様々な形のものが販売されている。手帳型のスマートフォンケースは、スマートフォンを操作するときに表のカバーを開け、使用後に手動で表のカバーを閉じることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-082689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスマートフォンケースでは、操作中に落としてしまうと、操作画面を露出した状態で地面と衝突するため操作画面が割れやすい。そこで、本発明は、簡易的な構造で自動的に“閉じる”機能を有するヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ヒンジに特定のシリコーンゴムを使用することによって、簡易的に“閉じる”機能を付与できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0006】
上記課題を解決するための本発明のヒンジは、第1部材と、第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を線状に連結し、前記連結の線方向を軸方向として前記第1部材及び/又は前記第2部材が回動する折曲部と、を備えたヒンジであって、前記折曲部は、シリコーンゴムを含み、前記シリコーンゴムは、前記第1部材及び前記第2部材が開いた開状態においてひずみを生じ、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢するものであり、前記第1部材及び/又は前記第2部材の質量は、前記第1部材と前記第2部材を180°開いた開状態における、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢する応力よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明のヒンジによれば、手動で第1部材と第2部材を開いた状態とすると、折曲部に組み込まれたシリコーンゴムにひずみが生じて、第1部材と第2部材を閉じる方向に付勢される。また、第1部材及び/又は第2部材の質量は、第1部材及び第2部材を閉じる方向に付勢する応力よりも小さい。これにより、手を離すと自動的に第1部材及び/又は第2部材が閉じるという効果を奏する。
【0008】
また、シリコーンゴムは変形に対する耐久性や紫外線等の光に対する耐光性に優れているため、開閉を繰り返したり、屋外で使用したりしても、劣化しにくく、長期間にわたって使用することができる。
【0009】
更に本発明のヒンジの一実施態様としては、第1部材又は第2部材の少なくともいずれか一方の部材の質量は、前記応力より大きいことを特徴とする。
この特徴によれば、第1部材又は第2部材の少なくともいずれか一方の部材の質量が、第1部材及び第2部材を閉じる方向に付勢する応力よりも大きいため、例えば、第1部材と第2部材を360°開いた開状態とした際に、質量が該応力より大きい部材の自重で押さえつけることにより、手を離した状態でも開状態を維持することができる。
【0010】
更に本発明のヒンジの一実施態様としては、前記応力は、1~100gであることを特徴とする。
第1部材及び第2部材を閉じる方向に付勢する応力が大きすぎると、手動で簡単に開くことができないため、応力を1~100gとすることにより、指先等の弱い力で簡単に開き、使用感に優れたヒンジを提供することができる。
【0011】
更に本発明のヒンジの一実施態様としては、前記シリコーンゴムは、断面略円弧状のシリコーンゴム製チューブからなることを特徴とする。
断面略円弧状のシリコーンゴム製チューブを使用することにより、第1部材と第2部材を開いてシリコーンゴムが変形した際に、ひずみによる負荷がシリコーンゴムの全体にわたって加わる。そのため、例えば、断面多角形状のシリコーンゴム製チューブ等のように、ひずみの負荷が局所的に加わる形状より耐久性に優れる。
【0012】
更に本発明のヒンジの一実施態様としては、前記シリコーンゴム製チューブは、外径が6~20mmであり、厚みが0.5~5mmであることを特徴とする。
この特徴によれば、適度な応力を有するため、弱い力で簡単に開き、使用感に優れるというヒンジを具現化することができる。
【0013】
更に本発明のヒンジの一実施態様としては、前記断面略円弧状の開口角度は、0~90°であることを特徴とする。
この特徴によれば、第1部材と第2部材が当接するまで閉じることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、簡易的な構造で自動的に“閉じる”機能を有するヒンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例のヒンジの構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の実施例のシリコーンゴムの形状例を表した斜視図である。
図3】本発明のシリコーンゴムの断面の形状例を表した図である。
図4】実験に用いた“反力”の測定装置の概略図である。
図5】実験によって得られた“反力”の測定結果のグラフである((a)反力と弾性体の断面積の関係、(b)(c)反力と弾性体の開口角度の関係)。
図6】本発明のヒンジの応用例1(スマートフォンケース)の斜視図である。
図7】本発明のヒンジの応用例1(スマートフォンケース)の折曲部部分の断面図である。
図8】本発明のヒンジの応用例2(手鏡)の斜視図である。
図9】本発明のヒンジの応用例3(名刺入れ)の斜視図である。
図10】本発明のヒンジの応用例4(小銭入れ)の斜視図である。
図11】本発明のヒンジの応用例5(携帯灰皿)の斜視図である。
図12】本発明のヒンジの応用例6(水筒)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一態様であるヒンジについて、添付図面を参照し、具体的な実施形態を挙げて説明するが、以下の形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明のヒンジは、第1部材と、第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を線状に連結し、前記連結の線方向を軸方向として前記第1部材及び/又は前記第2部材が回動する折曲部と、を備えたヒンジであって、前記折曲部は、シリコーンゴムを含み、前記シリコーンゴムは、前記第1部材及び前記第2部材が開いた開状態においてひずみを生じ、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢するものであり、前記第1部材及び/又は前記第2部材の質量は、前記第1部材と前記第2部材を180°開いた開状態における、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢する応力(以下、単に「応力」という場合がある。)よりも小さいことを特徴とするものである。
【0018】
図1は、本発明のヒンジ10を示す概略説明図である。図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。本発明のヒンジ10は、第1部材1と、第2部材2と、第1部材1と第2部材2を線状に連結する折曲部3を具備する。折曲部3は、図1(a)に示す連結の線方向を軸方向として第1部材1と第2部材2が回動するように取り付けられている。図1に示すヒンジ10は、第1部材1と第2部材2が180°開いた状態を示す図であり、第1部材1と第2部材2を閉じる方向(図1(b)に示す矢印方向)に付勢されている。
【0019】
折曲部3は、断面略円弧状のシリコーンゴム製チューブを使用しており、第1部材と第2部材は、該シリコーンゴム製チューブの長手方向に沿って固定されている。なお、第1部材と第2部材は、該シリコーンゴム製チューブの外周面側に、難接着材用接着剤を用いて固定されている。
【0020】
図2に、折曲部3に使用したシリコーンゴム製チューブの概略説明図を示す。このシリコーンゴム製チューブは、チューブの一部を切り出したものであり、断面が略円弧状となる。チューブを切り出した領域からなる断面円弧状の開口角度は、特に制限されないが、0~90°又は180°であることが好ましい。なお、開口角度が0°とは、チューブに切込みを入れただけであり、一部を切り出していないものである。90°以下とすることにより、第1部材と第2部材をより閉じることができる。より確実に閉じるという観点から、好ましくは60°以下であり、より好ましくは30°以下であり、特に好ましくは0°である。また、180°の場合には、チューブを半分に裁断したものを使用することができるため、一つのチューブから二つの折曲部を作製することができ、歩留まりが高くなる。
【0021】
シリコーンゴムの形状は、変形によりひずみが生じて、第1部材と第2部材を閉じる方向に付勢するものであれば、特に制限されない。例えば、図3の(a)のように、第1部材と第2部材の内側の面をつなぐ柱状のもの、図3の(b)~(f)のように、第1部材と第2部材の外側の面を挟み込む鋏(はさみ)状のものが挙げられる。鋏状には、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状(図3の(b)~(e)参照。);円弧状(図3の(f)参照。)が挙げられる。ひずみが生じた際に局所的に負荷がかからず、耐久性に優れるという観点から、断面略円弧状のシリコーンゴム製チューブが好ましい。
【0022】
シリコーンゴム製チューブのサイズは、特に制限されないが、例えば、外径が6~20mm、厚みが0.5~5mmのものを使用する。このサイズのシリコーンゴム製チューブを用いると、折曲部3が適度な応力を有するため、弱い力で簡単に開き、使用感に優れるヒンジを具現化することができる。外径の下限値としては、好ましくは7mm以上であり、より好ましくは8mm以上である。外径の上限値としては、好ましくは15mm以下であり、より好ましくは13mm以下であり、特に好ましくは11mm以下である。厚みの下限値としては、好ましくは1mm以上である。厚みの上限値としては、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下である。
【0023】
シリコーンゴム製チューブの長さは、特に制限されないが、例えば、10~300mmである。下限値としては、好ましくは20mm以上であり、より好ましくは50mm以上であり、特に好ましくは100mm以上である。上限値としては、好ましくは200mm以下であり、より好ましくは180mm以下である。
【0024】
シリコーンゴムの硬さは、特に制限されないが、例えば、硬さ10~90のものを使用する。下限値としては、好ましくは20以上であり、より好ましくは40以上であり、特に好ましくは50以上である。上限値としては、好ましくは80以下であり、より好ましくは60以下である。なお、シリコーンゴムの硬さは、デュロメータータイプAを用いて測定する。
【0025】
第1部材1及び/又は第2部材2の質量は、第1部材1と第2部材2を180°開いた開状態における、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢する応力よりも小さい。これにより、手を離すと自動的に第1部材及び/又は第2部材が閉じるという効果を奏する。第1部材1及び/又は第2部材2の質量が応力より小さい場合において、第1部材1及び/又は第2部材2の質量と応力の差は、好ましくは10g以上であり、より好ましくは20g以上であり、特に好ましくは30g以上である。第1部材1及び/又は第2部材2の質量と応力の差を10g以上とすると、素早く閉じるという効果を奏する。
【0026】
また、第1部材1又は第2部材2の少なくともいずれか一方の部材の質量は、第1部材1と第2部材2を180°開いた開状態における、前記第1部材及び前記第2部材を閉じる方向に付勢する応力より大きくしてもよい。例えば、第1部材1と第2部材2を360°開けた開状態とした際に、質量の大きい部材を上に置くと、手を離した状態でも部材の質量により押し付けられ、開状態を維持することができる。第1部材1又は第2部材2の少なくともいずれか一方の部材の質量が応力より大きい場合において、部材の質量と応力の差は、好ましくは10g以上であり、より好ましくは20g以上であり、更に好ましくは30g以上であり、特に好ましくは50g以上である。部材の質量と応力の差を10g以上とすると、開状態を安定的に維持することができる。
【0027】
本発明の折曲部3は、第1部材1と第2部材2を180°開いた開状態における、第1部材1及び第2部材2を閉じる方向に付勢する応力が、1~100gとなるように形成することが好ましい。これにより、弱い力でも簡単に開き、使用感に優れたヒンジを提供することができる。開閉動作がスムーズになり、使用感が特に優れるという観点から、この応力の下限値としては、好ましくは5g以上であり、より好ましくは10g以上であり、更に好ましくは20g以上であり、特に好ましくは25g以上である。一方、上限値としては、好ましくは70g以下であり、より好ましくは50g以下であり、更に好ましくは45g以下であり、特に好ましくは40g以下である。
【0028】
なお、応力の測定方法は、図4に記載の装置を用いる。図4に記載の装置は、天秤秤と秤皿と、同じ高さのスペーサを離間して配置した装置である。測定方法は、図4に示すように、ヒンジ10の第1部材1と第2部材2を180°開いた状態として、一方の部材(第2部材)をスペーサの上に押し付けて固定し、他方の部材(第1部材)を秤皿の上に置き、天秤秤の重量を測定する(これを「反力」という。)。第1部材1及び第2部材2を閉じる方向に付勢する応力は、測定された反力と秤皿に置いた部材の質量の差分を算出することにより得られる。
【0029】
また、第1部材1及び第2部材2を閉じる方向に付勢する応力の調整は、シリコーンゴムの断面積や体積等を変えることにより調整することができる(図2参照。)。例えば、図5(a)には、反力と断面積の関係を示し、図5(b)、図5(c)には、反力と体積の関係を示す。なお、いずれの試験例も第1部材及び第2部材の質量は統一している。図5(a)は、内径9mm、外径11mmのシリコーンゴム製チューブに切り込みを入れたものを使用し、長さを調整することにより断面積を変えたものの反力を測定した結果である。図5(b)は、内径8mm、外径11mm、長さ140mmのシリコーンゴム製チューブを使用し、切込みを入れたものと、円筒断面の1/4を切欠いたもの(開口角度が90°のもの)の反力を測定した結果である。図5(c)は、内径6mm、外径8mm、長さ140mmのシリコーンゴム製チューブを使用し、切込みを入れたものと、円筒断面の1/4を切欠いたもの(開口角度が90°のもの)の反力を測定した結果である。これらの結果から、断面積や体積等を調整することにより、第1部材1及び第2部材2を閉じる方向に付勢する応力を調整できることがわかる。
【0030】
以下に、本発明のヒンジの応用例を挙げる。
<応用例1:スマートフォンケース>
図6に示す応用例1は、スマートフォンを保護するためのスマートフォンケース100である。スマートフォンケース100は、スマートフォンの液晶画面を覆うことになる第1平板部101(第1部材)と、スマートフォンを保持する保護対象保持部104が固定された第2平板部102(第2部材)の2つの平板部を有している。また、スマートフォンケース100は、第1平板部101と第2平板部102を線状に連結する折曲部103を有しており、折曲部103は、連結の線方向を軸方向として第1平板部101及び/又は第2平板部102が回動するように変形することができる。
【0031】
図7は、スマートフォンケース100の折曲部103部分の断面図であり、(c)は第1平板部101と第2平板部102が保護対象を挟むようにそれぞれ保護対象に当接した閉状態(以下、「閉状態(0°)」と略す場合がある。)を、(b)は閉状態(0°)から第1平板部101が90°回動した開状態(以下、「開状態(90°)」と略す場合がある。)を、(a)は閉状態(0°)から第1平板部101が180°回動した開状態(以下、「開状態(180°)」と略す場合がある。)を表している。折曲部103には、断面が円弧状のシリコーンゴム製チューブ105が含まれており、シリコーンゴム製チューブ105の一端は第1平板部を構成するプラスチック(ポリプロピレン(PP))製の芯材106と、もう一端は第2平板部を構成する同じくPP製の芯材106に難接着材用接着剤を利用して固定されている。そして、シリコーンゴム製チューブ105は、両面がそれぞれ柔軟な皮革製の表材107に覆われており、外側からは視認できないようになっている。シリコーンゴム製チューブ105は、シリコーンゴム製チューブを長手方向に切断して断面を円弧状にしたものであり、円弧が閉じた状態がひずみのない状態となっている。従って、開状態(90°)や開状態(180°)において、弾性体105は円弧が開かれてひずんでおり、閉状態(0°)にしようとする応力を発生している。なお、閉状態(0°)においても、シリコーンゴム製チューブ105のひずみは残っており、第1平板部101と第2平板部102を押し付け合う力が掛かっている。
【0032】
(実験と結果)
iPhone7(登録商標)用のスマートフォンケースを用いて、断面が円弧状のシリコーンゴム製チューブから得られる“反力”を測定した。
シリコーンゴム製チューブは、それぞれ下記の形状・物性のものを使用した。
厚さ:1~2mm
内径:6~8mm
外径:8~11mm
円弧の開口角度:0~90°
硬度:54~60
長さ:113~166mm
【0033】
反力の異なる種々のシリコーンゴム製チューブを使用してスマートフォンケースを試作した結果、反力が10~60gにおいて、自動的に速やかに閉状態(0°)となった。なお、本試作における第1平板部の質量は、3gのものを使用しており、応力は7~57gである。
【0034】
<応用例2:手鏡>
図8に示す応用例2は、折りたたみ式の手鏡200である。手鏡200は、それぞれ鏡面を備えた第1鏡部201(第1部材)と第2鏡部202(第2部材)を有している。また、手鏡200は、第1鏡部201と第2鏡部202を線状に連結する折曲部203を有しており、折曲部203は、連結の線方向を軸方向として第1鏡部201と第2鏡部202が回動するように変形することができる。折曲部203は、断面略円弧状(開口角度0°)のシリコーンゴム製チューブを使用した。第1鏡部201と第2鏡部202の質量は、第1鏡部201及び第2鏡部202を閉じる方向に付勢する応力より小さくなるように設計されている。
この折りたたみ式の手鏡200は、手動で開き、手を離すと自動的に閉じることができる。これにより、手鏡200を落とした際に、瞬時に閉じられ、鏡面の破損を抑制することができる。
【0035】
<応用例3:名刺入れ>
図9に示す応用例3は、名刺入れ300である。名刺入れ300は、名刺やカードを収納する収納部302(第2部材)と、収納部302を覆う蓋部301(第1部材)を有している。また、名刺入れ300は、蓋部301と収納部302を線状に連結する折曲部303を有しており、折曲部303は、連結の線方向を軸方向として蓋部301と収納部302が回動するように変形することができる。折曲部303は、断面略円弧状(開口角度0°)のシリコーンゴム製チューブを使用した。なお、第1応用例のスマートフォンケースと同様、シリコーンゴム製チューブは、第1部材及び第2部材を構成するプラスチック(ポリプロピレン(PP))製の芯材が固定され、柔軟な皮革製の表材で覆われている。蓋部301の質量は、蓋部301及び収納部302を閉じる方向に付勢する応力より小さくなるように設計されており、収納部302の質量は、該応力より大きくなるように設計されている。
この名刺入れ300は、蓋部301を手動で開き、手を離すと蓋部301が自動的に閉じるように作動する。これにより、名刺入れ300を落とした際に、蓋部301が瞬時に閉じられ、収納部302に収納された名刺等の飛び出しを抑制することができる。
【0036】
<応用例4:小銭入れ>
図10に示す応用例4は、小銭入れ400である。小銭入れ400は、小銭等を収納する収納部402(第2部材)と、収納部402を覆う蓋部401(第1部材)を有している。また、小銭入れ400は、蓋部401と収納部402を線状に連結する折曲部403を有しており、折曲部403は、連結の線方向を軸方向として蓋部401と収納部402が回動するように変形することができる。折曲部403は、断面略円弧状(開口角度0°)のシリコーンゴム製チューブを使用した。なお、第1応用例のスマートフォンケースと同様、シリコーンゴム製チューブは、第1部材及び第2部材を構成するプラスチック(ポリプロピレン(PP))製の芯材が固定され、柔軟な皮革製の表材で覆われている。蓋部401と収納部402の質量は、蓋部401及び収納部402を閉じる方向に付勢する応力より小さくなるように設計されている。
この小銭入れ400は、蓋部401を手動で開き、手を離すと蓋部401が自動的に閉じるように作動する。これにより、小銭入れ400を落とした際に、蓋部401が瞬時に閉じられ、収納部402に収納された小銭等の飛び出しを抑制することができる。
【0037】
<応用例5:携帯灰皿>
図11に示す応用例5は、携帯灰皿500である。携帯灰皿500は、灰やタバコの吸い殻等を収納する収納部502(第2部材)と、収納部502を覆う蓋部501(第1部材)を有している。また、携帯灰皿500は、蓋部501と収納部502を線状に連結する折曲部503を有しており、折曲部503は、連結の線方向を軸方向として蓋部501と収納部502が回動するように変形することができる。折曲部503は、断面略円弧状(開口角度0°)のシリコーンゴム製チューブを使用した。なお、第1応用例のスマートフォンケースと同様、シリコーンゴム製チューブは、第1部材及び第2部材を構成するプラスチック(ポリプロピレン(PP))製の芯材が固定され、柔軟な皮革製の表材で覆われている。蓋部501と収納部502の質量は、蓋部501及び収納部502を閉じる方向に付勢する応力より小さくなるように設計されている。
この携帯灰皿500は、蓋部501を手動で開き、手を離すと蓋部501が自動的に閉じるように作動する。これにより、携帯灰皿500を落とした際に、蓋部501が瞬時に閉じられ、収納部502に収納された灰やタバコの吸い殻等の飛び出しを抑制することができる。
【0038】
<応用例6:水筒>
図12に示す応用例6は、水筒600である。水筒600は、飲料等を収容する容器部602(第2部材)と、容器部602を覆う蓋部601(第1部材)を有している。また、水筒600は、蓋部601と容器部602を線状に連結する折曲部603を有しており、折曲部603は、連結の線方向を軸方向として蓋部601と容器部602が回動するように変形することができる。折曲部603は、断面略円弧状(開口角度0°)のシリコーンゴム製チューブを使用した。なお、シリコーンゴム製チューブは、プラスチック(ポリプロピレン(PP))製の固定板604に固定され、固定板604を介して蓋部601と容器部602に取り付けられている。蓋部601の質量は、蓋部601及び容器部602を閉じる方向に付勢する応力より小さくなるように設計されており、容器部602の質量は、該応力より大きくなるように設計されている。
この水筒600は、蓋部601を手動で開き、手を離すと蓋部601が自動的に閉じるように作動する。これにより、水筒600を落とした際に、蓋部601が瞬時に閉じられ、容器部602の上部に設けられた飲み口を覆うことができるため、汚染防止に優れた効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のヒンジは、落とした際に割れや破損等を生じやすい物品の保護具や、落とした際に内容物が飛び出すことを防止したい物品の蓋や、落とした際に衛生的な汚染を防止したい物品の蓋等に好適に利用することができる。例えば、スマートフォンケース、タブレット型コンピューターケース、手鏡、名刺入れ、カードケース、小銭入れ、携帯灰皿、水筒や哺乳瓶の飲み口の蓋、おしゃぶりを覆う蓋等として利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…第1部材、2…第2部材、3…折曲部、10…ヒンジ、100…スマートフォンケース、101…第1平板部、102…第2平板部、103…折曲部、104…保護対象保持部、105…シリコーンゴム製チューブ、106,107…芯材、200…手鏡、201…第1鏡部、202…第2鏡部、203…折曲部、300…名刺入れ、301…蓋部、302…収納部、303…折曲部、400…小銭入れ、401…蓋部、402…収納部、403…折曲部、500…携帯灰皿、501…蓋部、502…収納部、503…折曲部、600…水筒、601…蓋部、602…容器部、603…折曲部、604…固定板

図1
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図10
図11
図12