IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IDDKの特許一覧

特許7098146顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法
<>
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図1
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図2A
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図2B
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図2C
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図3
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図4A
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図4B
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図5
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図6
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図7
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図8
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図9
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図10
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図11
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図12
  • 特許-顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20220704BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
G02B21/06
G01N21/64 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018128249
(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公開番号】P2020008667
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】518240369
【氏名又は名称】株式会社IDDK
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】上野 宗一郎
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-526993(JP,A)
【文献】特開平11-166893(JP,A)
【文献】特開2012-150253(JP,A)
【文献】特開2014-095594(JP,A)
【文献】特表2006-504989(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088109(WO,A1)
【文献】特開2016-045412(JP,A)
【文献】特開2006-195390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G01N 21/62-21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置であって、
前記観察対象に励起光を照射する光源と、
前記励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光束を複数に分けて制御するように複数の光学部材が設けられている第1の光学系と、
前記第1の光学系によって光制御された複数の光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、
前記フィルタを通過した複数の並進光を光制御する複数の光制御部材と、
複数の視野角制御層であって、当該視野角制御層それぞれは対応する前記光制御部材によって光制御された光が入射し且つ所定の視野角に収まるように当該入射した光の進行角度を制御する複数の視野角制御層と、
前記視野角制御層によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、
を備える
顕微観察装置。
【請求項2】
前記フィルタは、光学特性に入射角度依存性を有し、
前記フィルタへの入射光の入射角が少なくとも励起光の透過率が規定の上限以下になる入射角度の許容範囲に収まるように、前記第1の光学系の光学特性が設定されている
請求項1に記載の顕微観察装置。
【請求項3】
前記第1の光学系は、前記第1の光学系の前記観察対象側の端部と前記観察対象との間の距離が設定距離以上離れるように、前記第1の光学系の前記観察対象側の焦点距離が設定されている
請求項1または2に記載の顕微観察装置。
【請求項4】
前記第1の光学系、前記フィルタ、及び前記光電変換素子を、それぞれの相対位置関係を保ったまま、前記光電変換素子の入射面に対して略垂直方向に移動させる駆動部を更に備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の顕微観察装置。
【請求項5】
前記光電変換素子に入射する光の角度が当該光電変換素子の感度が規定の下限以上になる設定範囲内に収まるように、前記視野角制御層の光学特性が設定されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の顕微観察装置。
【請求項6】
前記フィルタは、電気的または機械的に透過、吸収、反射のうち少なくとも一つの波長特性が制御可能である
請求項1からのいずれか一項に記載の顕微観察装置。
【請求項7】
前記第1の光学系は、前記フィルタへ向かって光が狭まっていくように光の進行角度を制御し、
前記第1の光学系は、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光の前記フィルタへの入射角が入射角度の許容範囲に収まるように光学特性が設定されている
請求項1からのいずれか一項に記載の顕微観察装置。
【請求項8】
観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置に用いことが可能な蛍光検出器であって、
前記励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む複数の光束を複数に分けて制御するように複数の光学部材が設けられている第1の光学系と、
前記第1の光学系によって光制御された複数の光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、
前記フィルタを通過した複数の並進光を光制御する複数の光制御部材と、
複数の視野角制御層であって、当該視野角制御層それぞれは対応する前記光制御部材によって光制御された光が入射し且つ所定の視野角に収まるように当該入射した光の進行角度を制御する複数の視野角制御層と、
前記視野角制御層によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、
を備える蛍光検出器。
【請求項9】
観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察方法であって、
光源から励起光を前記観察対象に照射することと、
第1の光学系が、前記励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光束を複数に分けて制御することと、
フィルタが、前記第1の光学系によって光制御された複数の光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減することと、
複数の光制御部材が、前記フィルタを通過した複数の並進光を光制御することと、
複数の視野角制御層が、複数の視野角制御層であって、当該視野角制御層それぞれは対応する前記光制御部材によって光制御された光が入射し且つ所定の視野角に収まるように当該入射した光の進行角度を制御することと、
複数の光電変換素子が、前記視野角制御層によって光制御された複数の光を電気に変換することと、
を有する顕微観察方法。
【請求項10】
観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置であって、
前記観察対象に励起光を照射する光源と、
前記励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、
前記フィルタを通過した複数の並進光を光制御する複数の光制御部材と、
複数の視野角制御層であって、当該視野角制御層それぞれは対応する前記光制御部材によって光制御された光が入射し且つ所定の視野角に収まるように当該入射した光の進行角度を制御する複数の視野角制御層と、
前記視野角制御層によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と
を備える顕微観察装置。
【請求項11】
観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置に用いられる蛍光検出器であって、
光源から励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、
前記フィルタを通過した複数の並進光を光制御する複数の光制御部材と、
複数の視野角制御層であって、当該視野角制御層それぞれは対応する前記光制御部材によって光制御された光が入射し且つ所定の視野角に収まるように当該入射した光の進行角度を制御する複数の視野角制御層と、
前記視野角制御層によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、
を備える蛍光検出器。
【請求項12】
観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察方法であって、
光源から励起光を前記観察対象に照射することと、
フィルタが、光源から励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減することと、
複数の光制御部材が、前記フィルタを通過した複数の並進光を光制御することと、
複数の視野角制御層それぞれは対応する前記光制御部材によって光制御された光が入射し且つ所定の視野角に収まるように当該入射した光の進行角度を制御することと、
複数の光電変換素子が、前記第2の光学系によって光制御された前記視野角制御層によって光制御された複数の光を電気に変換することと、
を有す
微観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微観察装置、蛍光検出器及び顕微観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学顕微鏡とは異なり、結像や拡大縮小といった光学系の調整および観察対象の走査を要することなく、観察対象の全体を簡易に観察できる観察方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-42283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の観察方法は、観察対象に励起光を照射し、観察対象からの蛍光を観察することまでは想定していない。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、励起光が照射された観察対象からの蛍光を利用して観察対象の全体を簡易に観察できる顕微観察装置、蛍光検出器および顕微観察方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る顕微観察装置は、観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置であって、前記観察対象に励起光を照射する光源と、前記励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光を複数、光制御する第1の光学系と、前記第1の光学系によって光制御された複数の光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、前記フィルタを通過した後の複数の光を光制御する第2の光学系と、前記第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、を備える。
【0007】
この構成によれば、第1の光学系と第2の光学系とで光制御することによって、観察対象と光電変換素子と間の距離を離すことができる。これにより、観察対象が垂直方向に厚みがあったとしても、手動または機械的に第1の光学系、フィルタ、第2の光学系、光電変換素子を一体的に光電変換素子9の入射面に対して略垂直方向に移動させるだけの空間があるので、移動させて観察することにより、観察対象の厚み方向の蛍光の強度分布を観察することができる。またフィルタが、第1の光学系によって光制御された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。また、光電変換素子で第2の光学系によって光制御された光を電気に変換するため、従来の光学顕微鏡のように視野と倍率のトレードオフという関係が存在せず、複数の光電変換素子を密に配置すれば広い視野を高倍率で観察することができる。このため、励起光が照射された観察対象からの蛍光を利用して、観察対象の全体を簡易に観察できる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る顕微観察装置は、前記フィルタは、入射光の入射角度の増加に伴い透過帯が短波長側に移動する特性を有し、前記フィルタへの入射光の入射角が少なくとも励起光の透過率が規定の上限以下になる入射角度の許容範囲に収まるように、前記第1の光学系の光学特性が設定されている。
【0009】
この構成によれば、励起光の透過率が規定の上限以下になるように、励起光をフィルタで低減することができるので、蛍光を観察することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る顕微観察装置は、第1または2の態様に係る顕微観察装置であって、前記第1の光学系は、前記第1の光学系の前記観察対象側の端部と前記観察対象との間の距離が設定距離以上離れるように、前記第1の光学系の前記観察対象側の焦点距離が設定されている。
【0011】
この構成によれば、観察対象Tが垂直方向に厚みがあったとしても、手動または機械的に、第1の光学系、フィルタ、第2の光学系、光電変換素子を一体的に設定距離(例えば、1mm)の範囲で光電変換素子の入射面に対して略垂直方向に移動させることができるので、観察対象Tの厚み方向の蛍光の強度分布を観察することができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る顕微観察装置は、第1から3のいずれかの態様に係る顕微観察装置であって、前記第1の光学系、前記フィルタ、前記第2の光学系及び前記光電変換素子を、それぞれの相対位置関係を保ったまま、前記光電変換素子の入射面に対して略垂直方向に移動させる駆動部を更に備える。
【0013】
この構成によれば、観察対象が垂直方向に厚みがあったとしても、駆動部により設定距離(例えば、1mm)の範囲で光電変換素子の入射面に対して略垂直方向に移動させることにより、観察対象の厚み方向の蛍光の強度分布を観察することができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る顕微観察装置は、第1から4のいずれかの態様に係る顕微観察装置であって、前記フィルタを通過した後の複数の光を光制御する第2の光学系を更に備え、前記複数の光電変換素子は、前記第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換し、前記光電変換素子に入射する光の角度が当該光電変換素子の感度が規定の下限以上になる設定範囲内に収まるように、前記第2の光学系の光学特性が設定されている。
【0015】
この構成によれば、光電変換素子の感度が規定の下限以上になるので、高感度で観察することができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る顕微観察装置は、第5の態様に係る顕微観察装置であって、前記第2の光学系は、前記フィルタを通過した光を光制御する光制御部材と、前記光制御部材によって光制御された光が入射し且つ当該入射した光を光制御する視野角制御層と、を含み、前記光電変換素子は、前記視野角制御層によって光制御された光を光電変換し、前記光電変換素子に入射する光の角度が前記設定範囲内に収まるように、前記視野角制御層の光学特性が設定されている。
【0017】
この構成によれば、光電変換素子の感度が規定の下限以上になるので、高感度で観察することができる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る顕微観察装置は、第1から6のいずれかの態様に係る顕微観察装置であって、前記フィルタは、電気的または機械的に透過波長が制御可能である。
【0019】
この構成によれば、フィルタを透過する波長を変更することができるので、観察したい蛍光波長を変更することができる。
【0020】
本発明の第8の態様に係る顕微観察装置は、第1から7のいずれかの態様に係る顕微観察装置であって、前記第1の光学系は、前記フィルタへ向かって光が狭まっていくように光の進行角度を制御し、前記第1の光学系は、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まり、且つ観察対象のうち対象とする焦点深度範囲以外の蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まらないように光学特性が設定されている。
【0021】
この構成によれば、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光のみを観察することができる。
【0022】
本発明の第9の態様に係る蛍光検出器は、観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置に用いられる蛍光検出器であって、前記励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む複数の光を光制御する第1の光学系と、前記第1の光学系によって光制御された複数の光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、前記フィルタを通過した後の複数の光を光制御する第2の光学系と、前記第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、を備える。
【0023】
本発明の第10の態様に係る顕微観察方法は、観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察方法であって、光源から励起光を前記観察対象に照射することと、第1の光学系が、前記励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む複数の光を光制御することと、フィルタが、前記第1の光学系によって光制御された複数の光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減することと、第2の光学系が、前記フィルタを通過した後の複数の光を光制御することと、複数の光電変換素子が、前記第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換することと、を有する。
【0024】
本発明の第11の態様に係る顕微観察装置は、観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置であって、前記観察対象に励起光を照射する光源と、前記励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、前記フィルタを通過した後の複数の光を光制御する第2の光学系と、前記第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、前記光電変換素子に入射する光の角度が当該光電変換素子の感度が規定の下限以上になる設定範囲内に収まるように、前記第2の光学系の光学特性が設定されている。
【0025】
この構成によれば、フィルタが励起光を低減させて、蛍光を透過させることができ、光電変換素子の感度が規定の下限以上になるので、高感度で観察することができる。また、光電変換素子で第2の光学系によって光制御された光を電気に変換するため、従来の光学顕微鏡のように視野と倍率のトレードオフという関係が存在せず、複数の光電変換素子を密に配置すれば広い視野を高倍率で観察することができる。このため、励起光が照射された観察対象からの蛍光を利用して、観察対象の全体を簡易に高感度で観察できる。
【0026】
本発明の第12の態様に係る蛍光検出器は、観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察装置に用いられる蛍光検出器であって、光源から励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、前記フィルタを通過した後の複数の光を光制御する第2の光学系と、前記第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、前記光電変換素子に入射する光の角度が当該光電変換素子の感度が規定の下限以上になる設定範囲内に収まるように、前記第2の光学系の光学特性が設定されている。
【0027】
本発明の第13の態様に係る顕微観察方法は、観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する顕微観察方法であって、光源から励起光を前記観察対象に照射することと、フィルタが、光源から励起光を照射することによって前記観察対象から生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光のうち、前記励起光の波長帯域の光の強度を低減することと、第2の光学系が、前記フィルタを通過した後の複数の光を光制御することと、複数の光電変換素子が、前記第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換することと、を有し、前記光電変換素子に入射する光の角度が当該光電変換素子の感度が規定の下限以上になる設定範囲内に収まるように、前記第2の光学系の光学特性が設定されている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、フィルタが励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。また、光電変換素子で光を電気に変換するため、従来の光学顕微鏡のように視野と倍率のトレードオフという関係が存在せず、複数の光電変換素子を密に配置すれば広い視野を高倍率で観察することができる。このため、励起光が照射された観察対象からの蛍光を利用して、観察対象の全体を簡易に観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施形態に係る顕微観察装置の概略断面図である。
図2A】フィルタ5の透過率と波長の関係の一例を示すグラフである。
図2B】励起光の波長λ1におけるフィルタ5の透過率と入射光の入射角度との関係の一例を示すグラフである。
図2C】蛍光の波長λ2におけるフィルタ5の透過率と入射光の入射角度との関係の一例を示すグラフである。
図3】光電変換素子9の特性の一例を示す図である。
図4A】光電変換素子9に入射する光束の第1の例である。
図4B】光電変換素子9に入射する光束の第2の例である。
図5】第1の実施形態に係る顕微観察装置を用いた顕微観察システムを模式的に示すブロック図である。
図6】第1の実施形態に係るロジック回路の構成の一例を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態に係る顕微観察装置の蛍光検出器10bの概略断面図である。
図8】第2の実施形態の変形例に係る顕微観察装置の蛍光検出器10b2の概略断面図である。
図9】第3の実施形態に係る顕微観察装置の第1の光学系4cの概略断面図である。
図10】第4の実施形態に係る顕微観察装置の第1の光学系4dの概略断面図である。
図11】第4の実施形態の変形例に係る顕微観察装置の第1の光学系4d2の概略断面図である。
図12】第5の実施形態に係る顕微観察装置の第1の光学系4eの概略断面図である。
図13】第5の実施形態の変形例に係る顕微観察装置の第1の光学系4e2の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0031】
図1は、第1の実施形態に係る顕微観察装置の概略断面図である。顕微観察装置100は、観察対象Tに光源1から励起光を照射して観察対象から生じる蛍光を観察するものである。図1に示すように、顕微観察装置100は、光源1と、蛍光検出器10とを備える。光源1は、観察対象Tに励起光を照射し、光源本体11とフィルタ12とを有する。光源本体11は、光を出射するものであり、例えばランプまたはレーザである。フィルタ12は、ほぼ励起光の波長帯域だけ透過させるものである。載置部材2は例えば細胞載置用の透明な容器(ディッシュ)であり、載置部材2には一例として略円状の空洞が設けられている。透明部材3は、載置部材2の空洞を覆うように載置部材2の裏面に固定されており、光を透過させるものであり、例えばガラスである。例えば透明部材3の上に観察対象Tが載置される。観察対象Tは、励起光を照射すると蛍光を発するものであり、例えば蛍光タンパクを発現させた細胞である。本実施形態では一例として、蛍光は励起光よりも長い波長であるものとして以下説明する。
【0032】
光源1は観察対象Tに対して励起光L1を照射する。観察対象Tは励起光L1によって励起され蛍光L2を発する。
【0033】
蛍光検出器10は、第1の光学系4と、フィルタ5と、第2の光学系6と、中間層7と、半導体基板8と、半導体基板8の上面に設けられた複数の光電変換素子9とを備える。第1の光学系4は、励起光L1を照射して観察対象から生じる蛍光L2と一部の励起光L3を含む複数の光を光制御する。ここで光制御には、光の進行角度の制御(集光を含む)、導光またはこれらの組み合わせである。本実施形態では導光の例について説明する。一部の励起光L3は、観察対象の周りを通過した光である。フィルタ5は、第1の光学系4によって光制御された複数の光のうち、励起光の波長帯域の光の強度を低減する。本実施形態に係るフィルタ5は一例として光学特性に入射角度依存性があり、例えば誘電体多層膜フィルタである。ここで光学特性の入射角度依存性は例えば、入射光の入射角度の増加に伴い透過帯が短波長側に移動する特性である。ここで入射光の入射角度は、入射光とフィルタ5の法線とがなす角度である。また誘電体多層膜フィルタは、基板表面にフィルタとして機能する誘電体多層膜を蒸着したタイプである。誘電体多層膜フィルタは、光の干渉効果により波長を選択的に取り出すことができる。分光透過特性のグラフにおいて、パス/カットの急激な立ち上がり(或いは立ち下がり)を示すのが誘電体多層膜フィルタの特長である。
【0034】
なおフィルタ5は、電気的または機械的に透過、吸収、反射のうち少なくとも一つの波長特性が制御可能であってもよい。例えばフィルタ5は液晶チューナブル、またはファブリペローである。液晶チューナブルは電気的に透過波長を変更することが可能であり、ファブリペローは機械的に透過波長を変更することが可能である。
【0035】
第2の光学系6は、フィルタ5を通過した後の複数の光を光制御する。なお、第
2の光学系6は、光の進行角度の制御(集光を含む)あるいは導光を組み合わせて実現してもよい。本実施形態では導光の例について説明する。
光電変換素子9は第2の光学系6によって光制御された複数の光を電気に変換するものであり、例えばフォトダイオードである。
【0036】
図2Aは、フィルタ5の透過率と波長の関係の一例を示すグラフである。図2Aの縦軸は透過率で横軸は波長である。図2Aでは、フィルタ5への入射光の入射角度が0のグラフと、フィルタ5への入射光の入射角度がθ1のグラフとが示されている。入射角度が0の場合において、励起光の波長λ1はフィルタ5の透過率がほぼ0%であるから、励起光はフィルタ5によってカットされるが、励起光の波長λ1より長い蛍光の波長λ2はフィルタ5の透過率がほぼ100%であり、蛍光はフィルタ5を通過する。
【0037】
一方、入射角度が0より大きいθ1の場合において、励起光の波長λ1はフィルタ5の透過率が0%より大きいα1%であるから、励起光の多くはフィルタ5によってカットされるが、蛍光の波長λ2はフィルタ5の透過率が100%より低いβ1%であり、蛍光の多くはフィルタ5を通過する。
【0038】
また例えば、入射角度がθ1より大きいθ2の場合において、励起光の波長λ1はフィルタ5の透過率がα1%より大きいα2%であるから、励起光の半分程度しかフィルタ5によってカットされず、蛍光の波長λ2はフィルタ5の透過率がβ1%より低いβ2%であり、蛍光の強度はフィルタ5を通ると低減する。
【0039】
図2Bは、励起光の波長λ1におけるフィルタ5の透過率と入射光の入射角度との関係の一例を示すグラフである。図2Bの縦軸は透過率で横軸は入射光の入射角度である。フィルタ5への入射光の入射角度がθ1のときに、フィルタ5の透過率が0%より大きいα1%である。図2Bに示すように、入射光の入射角度が大きくなるほど、励起光の透過率が大きくなる。
【0040】
特許文献1に記載の観察方法を、そのまま蛍光観察に利用するとすると、光学特性に入射角度依存性があるフィルタ(例えば、誘電体多層膜フィルタ)の場合、入射光の入射角度増にともない透過帯が短波長側に移動するので、入射光の角度によってはフィルタ5が励起光を十分にカットできずにフォトダイオードに入射してしまう。この場合、通常、入射光が蛍光より光の強度が高いため、蛍光だけを取り出すことができず、観察対象からの蛍光を観察できないという問題がある。
【0041】
それに対して本実施形態では、α1%が励起光の透過率の上限であるとすると、フィルタ5への入射光の入射角度が、励起光の透過率の上限α1%以下になるように、入射角度の範囲-θ1~θ1が定められている。すなわち、フィルタ5への入射光の入射角が少なくとも励起光の透過率が規定の上限以下になる入射角度の許容範囲に収まるように、第1の光学系4の光学特性が設定されている。これにより、励起光の透過率が規定の上限以下になるように、励起光をフィルタ5で低減することができるので、蛍光を観察することができる。
【0042】
図2Cは、蛍光の波長λ2におけるフィルタ5の透過率と入射光の入射角度との関係の一例を示すグラフである。図2Cの縦軸は透過率で横軸は入射光の入射角度である。フィルタ5への入射光の入射角度がθ2のときに、フィルタ5の透過率がβ1%より低い低いβ2%である。図2Cに示すように、入射光の入射角度が大きくなるほど、蛍光の透過率が小さくなる。
【0043】
特許文献1に記載の観察方法を、そのまま蛍光観察に利用するとすると、光学特性に入射角度依存性があるフィルタ(例えば、誘電体多層膜フィルタ)の場合、入射光の入射角度増にともない透過帯が短波長側に移動するので、入射光の角度によってはフィルタが蛍光の強度を大きく低減してしまい、フォトダイオードに蛍光が十分に入射できない。このの場合、蛍光の強度が十分ではなく、観察対象からの蛍光を十分な明るさで観察できないという問題がある。
【0044】
それに対して本実施形態では、β2%が蛍光の透過率の下限であるとすると、フィルタ5への入射光の入射角度が、蛍光の透過率の下限β%以上になるように、入射角度の範囲-θ2~θ2が定められている。
【0045】
このように、本実施形態では一例として、フィルタ5への入射光の入射角度が、励起光の透過率が規定の上限α1%以下になり、且つ蛍光の透過率が規定の下限β2%以上になるように、入射角度の範囲-θ1~θ1と入射角度の範囲-θ2~θ2とが重なる範囲である-θ1~θ1が、入射角度の許容範囲として定められている。
【0046】
このように、フィルタ5は光学特性に入射角度依存性があるので、フィルタ5へ入射する光の入射角が、少なくとも励起光の透過率が規定の上限α1%以下になる入射角度の許容範囲に収まるように、第1の光学系4の光学特性が設定されている。入射角度の許容範囲は、好ましくは、励起光の透過率が規定の上限α1%以下になり、且つ蛍光の透過率が規定の下限β2%以上になる範囲であり、本実施形態ではこの好ましい態様であるものとして説明する。この構成により、フィルタ5が、第1の光学系4によって光制御された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。このため、励起光が照射された観察対象からの蛍光を利用して、観察対象の全体を簡易に観察できる。
【0047】
第1の光学系4は、複数のセルフォックレンズ41を有し、当該複数のセルフォックレンズ41により蛍光と一部の励起光を含む複数の光を導光する。この構成によれば、セルフォックレンズ41で導光することにより、球面レンズと異なりレンズの多層化が不要で、コンパクト化、低コスト化が可能となり、全幅にわたり均等な像と光量を得ることができる。
【0048】
第1の光学系4は、第1の光学系4の観察対象側の端部と観察対象Tとの間の距離が設定距離(例えば、1mm)以上離れるように、第1の光学系4の観察対象側の焦点距離が設定されている。ここでは、具体的にはセルフォックレンズ41の観察対象側の端部と観察対象Tとの間の距離が設定距離(例えば、1mm)以上離れるように、セルフォックレンズ41の観察対象側の焦点距離が設定されている。
【0049】
この構成によれば、観察対象Tが垂直方向に厚みがあったとしても、手動または機械的に蛍光検出器10全体を設定距離(例えば、1mm)の範囲で光電変換素子9の入射面に対して略垂直方向(図1のz方向)に移動させることができるので、観察対象Tの厚み方向の蛍光の強度分布を観察することができる。
【0050】
駆動部20は、蛍光検出器10全体を垂直方向(図1のz方向)に移動させるものである。すなわち、駆動部20は、第1の光学系4、フィルタ5、第2の光学系6及び光電変換素子9を、それぞれの相対位置関係を保ったまま、光電変換素子9の入射面に対して略垂直方向に移動させる。駆動部20は例えばカメラフォーカス用に用いられているアクチュエータであってもよいし、ボイスコイル方式であってもよいし、ピエゾ方式であってもよいし、人工筋肉方式であってもよい。
【0051】
この構成によれば、観察対象Tが垂直方向に厚みがあったとしても、駆動部20により蛍光検出器10全体を設定距離(例えば、1mm)の範囲で、光電変換素子9の入射面に対して略垂直方向(図1のz方向)に移動させることにより、観察対象Tの厚み方向の蛍光の強度分布を観察することができる。
【0052】
図3は、光電変換素子9の特性の一例を示す図である。図3において縦軸は感度で、横軸は光電変換素子9に入射する光の入射角である。ここで光電変換素子9に入射する光の入射角は、入射光と光電変換素子9の法線とがなす角度である。光電変換素子9に入射する光の入射角が設定範囲内(ここでは例えば-X1~X1[deg])であれば、光電変換素子9の感度の規定の下限γ(例えば、ピークの感度から3dB低下した水準)以上になる。すなわち、光電変換素子に入射する光の角度が当該光電変換素子の感度が規定の下限γ以上になる設定範囲内に収まるように、第2の光学系6の光学特性が設定されている。
【0053】
図1に示すように、第2の光学系6は、フィルタ5を通過した光を光制御する複数の光制御部材61と、複数の光制御部材61によって光制御された光が入射し且つ所定の視野角に収まるように当該入射した光の進行角度を制御する複数の視野角制御層62と、を含む。視野角制御層は例えばマイクロレンズである。なお、視野角制御層は視野角制御が可能であればよく、マイクロレンズに限らず、メタマテリアルレンズ、フレネルレンズ、導波構造、またはピンホール等であってもよい。複数の光電変換素子9は、視野角制御層62を通った光を光電変換する。光電変換素子9に入射する光の角度が当該光電変換素子の感度が規定の下限γ以上になる設定範囲内(例えば図3の-X1~X1[deg])に収まるように、視野角制御層62の光学特性が設定されている。
【0054】
この構成により、光電変換素子9は、光電変換素子の感度が規定の下限以上になるので、高感度で観察することができる。
【0055】
本実施形態では光制御部材61は一例として、セルフォックレンズである。この構成により、光制御部材61がセルフォックレンズであることにより、球面レンズと異なりレンズの多層化や反転ミラーが不要で、コンパクト化、低コスト化が可能となり、全幅にわたり均等な像と光量を得ることができる。
【0056】
図4Aは、光電変換素子9に入射する光束の第1の例である。図4Bは、光電変換素子9に入射する光束の第2の例である。光電変換素子9は、光を電子に変換する素子であるので、光電変換素子9で結像させる必要はなく、光電変換素子9に入射する光の角度が設定範囲内(例えば図3の-X1~X1[deg])に収まるようにすれば足りる。よって、光電変換素子9に入射する光束は、図4Aのように結像せずに光電変換素子9に入射する光束L4であってもよいし、図4Bのように一度1点に集光してから広がって光電変換素子9に入射する光束L5であってもよい。
【0057】
図5は、第1の実施形態に係る顕微観察装置を用いた顕微観察システムの構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、顕微観察システムSは、顕微観察装置100、光源コントローラ81、駆動部コントローラ82、フィルタコントローラ83、デバイスコントローラ84、制御装置85、ロジック回路200、及び制御装置85に接続された表示装置300を備える。
【0058】
光源コントローラ81は、光源1の励起波長と励起強度を調整する。駆動部コントローラ82は、駆動部20を制御することにより、焦点面を移動させ撮影の位置を調整する。フィルタコントローラ83は、フィルタ5で透過する波長(すなわち観察したい蛍光波長)を設定する。デバイスコントローラ84は、ロジック回路200を制御して、撮影条件(ゲイン、露光、フレームレート等)を設定する。ここでロジック回路200は、信号処理回路であり、その詳細な説明は図6で後述する。
【0059】
制御装置85は、光源コントローラ81、駆動部コントローラ82、フィルタコントローラ83、及びデバイスコントローラ84を制御する。制御装置85は例えば、パーソナルコンピュータ(PC)またはマイコンである。上記、光源コントローラ81~デバイスコントローラ84の操作自体は順不同で行う事ができ、これらの設定を変える事により、所望の蛍光観察を行うことができる。
【0060】
図6は、第1の実施形態に係るロジック回路の構成の一例を示すブロック図である。ロジック回路200は、顕微観察装置100の光電変換素子9による光電変換により得られた電圧信号(raw data)に対して色補正(ホワイトバランス、カラーマトリクス)、ノイズ補正(ノイズリダクション、傷補正)、画質補正(エッジ強調、ガンマ補正)など所定の信号処理を施し、信号処理された電圧信号を画像信号として制御装置85へ出力する。制御装置85は、この画像信号を表示装置300へ出力する。これにより、操作者は、信号処理後の画像を観察することができる。なお、ロジック回路200の一部または全部の機能が、制御装置85で実行されてもよい。
【0061】
本実施形態においては、顕微観察装置100に結像用あるいは拡大縮小用のレンズ系が含まれないため、ロジック回路200には、このようなレンズ収差の補正やシェーディング補正するための補正回路はなくてよい。
【0062】
このようなロジック回路200は、例えば半導体基板8において、光電変換素子9(具体的にはフォトダイオード)が形成された領域の周囲に形成することによって蛍光検出器10に内蔵させてもよいし、蛍光検出器10とは別基板に設けられて、蛍光検出器10とは別部品あってもよい。
【0063】
また、表示装置300はロジック回路200から出力される画像信号に基づいて観察対象Tの画像を形成し、表示する。表示装置300は透明部材3の上に配置された観察対象Tの全体を一度にリアルタイム表示できる。
【0064】
以上、第1の実施形態に係る顕微観察装置100は、観察対象に励起光を照射して前記観察対象から生じる蛍光を観察する。この顕微観察装置100は、観察対象に励起光を照射する光源1と、励起光を照射することによって観察対象から生じる蛍光と一部の励起光を含む複数の光を光制御する第1の光学系4と、第1の光学系4によって光制御された複数の光のうち、励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタ5と、フィルタ5を通過した後の複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子9と、を備える。フィルタ5への蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるように、第1の光学系4の光学特性が設定されている。
【0065】
この構成によれば、フィルタ5が、第1の光学系4によって光制御された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。また、光電変換素子9で光を電気に変換するため、従来の光学顕微鏡のように視野と倍率のトレードオフという関係が存在せず、複数の光電変換素子9を密に配置すれば広い視野を高倍率で観察することができる。このため、励起光が照射された観察対象からの蛍光を利用して、観察対象の全体を簡易に観察できる。また、本実施形態の構成で、蛍光観察だけではなく透過光観察もできる。
【0066】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る顕微観察装置は、第1の実施形態に係る顕微観察装置とは、蛍光検出器の構成が異なっている。
図7は、第2の実施形態に係る顕微観察装置の蛍光検出器10bの概略断面図である。図7に示すように、第1の実施形態に係る顕微観察装置の蛍光検出器10に比べて、第2の実施形態に係る顕微観察装置の蛍光検出器10bは、第1の光学系4が第1の光学系4bに変更され、第2の光学系6が第2の光学系6bに変更されたものになっている。
【0067】
第1の光学系4b、複数のレンズ42と、複数のレンズ43とを有する。レンズ42は、観察対象Tから生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光を光制御する。本実施形態では光制御は一例として光の進行角度の制御である。レンズ42は、光の進行角度を制御して光を広げる。レンズ43は、レンズ42によって広がった光を再度、進行角度の制御をして光を狭める。フィルタ5への蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるように、レンズ43の光学特性が設定されている。これにより、フィルタ5が、レンズ43によって進行角度が制御された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。更に、上記のように、レンズ43によって光の進行角度の制御することにより、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるようにし、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲以外の蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まらないようにすることができる。これにより、フィルタ5は、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光のみを通すので、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光を観察することができる。
【0068】
なお、ここではレンズ43によって光の進行角度を制御させる例について説明したが、光学構成はこれに限らず、第1の光学系4は他の光学構成によって、フィルタ5へ向かって光が狭まっていくように光の進行角度を制御してもよい。この場合、第1の光学系4は、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まり、且つ観察対象のうち対象とする焦点深度範囲以外の蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まらないように光学特性が設定されている。これにより、観察対象のうち対象とする焦点深度範囲の蛍光のみを観察することができる。
【0069】
第2の光学系6bは、複数のレンズ63と、複数のレンズ64と、複数の視野角制御層62とを有する。レンズ63は、フィルタ5を通過した後の光の進行角度を狭める方向に制御する。レンズ64は、レンズ63によって広がった光の進行角度を狭める方向に制御する。視野角制御層62は、所定の視野角に収まるようにレンズ64を通って入射した光の進行角度を制御する。ここで第1の実施形態と同様に、光電変換素子9に入射する光の角度が設定範囲内に収まるように、視野角制御層62の光学特性が設定されている。この構成によれば、光電変換素子9は、光電変換素子の感度が規定の下限以上になるので、高感度で観察することができる。
【0070】
<第2の実施形態の変形例>
上記第2の実施形態では、各レンズによって光の進行角度を狭める方向に制御する例について説明したが、これに限らず、図8に示すように、各レンズによって導光される構成にしてもよい。図8は、第2の実施形態の変形例に係る顕微観察装置の蛍光検出器10b2の概略断面図である。蛍光検出器10b2は、図7の第2の実施形態の蛍光検出器10bと比べて、第1の光学系4bが第1の光学系4b2に変更され、第2の光学系6bが第2の光学系6b2に変更されたものになっている。
【0071】
第1の光学系4bは、レンズ42b、レンズ421、レンズ43bを有する。レンズ42は、観察対象Tから生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光をレンズ421へ導光する。レンズ421は、レンズ42を通って入射した光を平行光として通す。レンズ43bは、レンズ421を通って入射した光を平行に通す。これにより、フィルタ5に入る光がフィルタ5に対して垂直になるため、透過帯が短波長側に移動することはないので、フィルタ5は、入射された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。
【0072】
第2の光学系6b2は、レンズ63b、レンズ631、レンズ64、視野角制御層62を有する。レンズ63bは、フィルタ5を通過した光をレンズ631へ導光する。レンズ631は、レンズ63を通って入射した光を平行光として通す。レンズ64bは、レンズ631を通って入射した光を視野角制御層62へ導光する。更に視野角制御層62はレンズ631を通って入射した光を絞る。ここで第1及び第2の実施形態と同様に、光電変換素子9に入射する光の角度が設定範囲内に収まるように、視野角制御層62の光学特性が設定されている。この構成によれば、光電変換素子9は、光電変換素子の感度が規定の下限以上になるので、高感度で観察することができる。
【0073】
<第3の実施形態>
続いて、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る顕微観察装置は、第1の実施形態に係る顕微観察装置とは、第1の光学系の構成が異なっている。
図9は、第3の実施形態に係る顕微観察装置の第1の光学系4cの概略断面図である。図9に示すように、第1の光学系4cは、平坦層45と、平坦層45の上に設けられた複数のレンズ44と、平坦層47と、平坦層47の上に設けられた複数の導波管46と、平坦層47の下面に設けられた複数のレンズ48とを有する。ここで導波管46は層内レンズともいう。
【0074】
レンズ44は、観察対象Tから生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光の進行角度を狭める方向に制御する。
導波管46は、レンズ44及び平坦層45を通った光を導波する。
レンズ48は、導波管46及び平坦層47を通った光の進行角度を狭める方向に制御する。これにより、レンズ48を通った光は、フィルタ5に入射する。フィルタ5への蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるように、レンズ48の光学特性が設定されている。これにより、フィルタ5が、レンズ48によって進行角度を狭める方向に制御された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。
【0075】
<第4の実施形態>
続いて、第4の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る顕微観察装置は、第1の実施形態に係る顕微観察装置とは、第1の光学系の構成が異なっている。
図10は、第4の実施形態に係る顕微観察装置の第1の光学系4dの概略断面図である。図10に示すように、第1の光学系4dは、平坦層50と、平坦層50の上に設けられた複数のレンズ49と、平坦層52と、平坦層52の上に設けられた複数の導波管51と、平坦層54と、平坦層54の上に設けられた複数のレンズ53とを有する。ここで導波管51は層内レンズともいう。
【0076】
レンズ49は、観察対象Tから生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光の進行角度を狭める方向に制御する。導波管51は、レンズ49及び平坦層50を通った光を導波する。レンズ53は、導波管51及び平坦層52を通った光の進行角度を狭める方向に制御する。これにより、レンズ53を通った光は、平坦層54を通ってフィルタ5に入射する。フィルタ5への蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるように、レンズ53の光学特性が設定されている。これにより、フィルタ5が、レンズ53によっての行角度を狭める方向に制御された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。
【0077】
<第4の実施形態の変形例>
上記第4の実施形態では、各レンズによって光の進行角度を狭める方向に制御される例について説明したが、これに限らず、図11に示すように、各レンズによって導光される構成にしてもよい。図11は、第4の実施形態の変形例に係る顕微観察装置の第1の光学系4d2の概略断面図である。第1の光学系4d2は、図10の第4の実施形態の第1の光学系4dと比べて、レンズ49がレンズ49bに、レンズ53がレンズ53bに変更されたものになっている。
【0078】
レンズ49bは、観察対象Tから生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光を導光する。導波管51は、レンズ49によって導光され且つ平坦層50を通った光を導波する。レンズ53bは、導波管51及び平坦層52を通った光を導光する。レンズ53によって導光された光は、平坦層54を通ってフィルタ5に入射する。フィルタ5への蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるように、レンズ53bの光学特性が設定されている。これにより、フィルタ5が、レンズ53bによって導光された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。
【0079】
<第5の実施形態>
続いて、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係る顕微観察装置は、第1の実施形態に係る顕微観察装置とは、第1の光学系の構成が異なっている。
図12は、第5の実施形態に係る顕微観察装置の第1の光学系4eの概略断面図である。図12に示すように、第1の光学系4eは、平坦層56と、平坦層56の上に設けられた複数のレンズ55と、平坦層58と、平坦層58の上に設けられた複数のレンズ57と、平坦層70と、平坦層70の上に設けられた複数のレンズ59と、平坦層72と、平坦層72の上に設けられた複数のレンズ71とを有する。
【0080】
レンズ55は、観察対象Tから生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光の進行角度を狭める方向に制御する。レンズ57は、レンズ55及び平坦層56を通った光の進行角度を狭める方向に制御する。レンズ59は、レンズ57及び平坦層58を通った光の進行角度を狭める方向に制御する。レンズ71は、レンズ59及び平坦層70を通った光の進行角度を狭める方向に制御する。これにより、レンズ71及び平坦層72を通ってフィルタ5に入射する。フィルタ5への蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるように、レンズ71の光学特性が設定されている。これにより、フィルタ5が、レンズ71によって進行角度を狭める方向に制御された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。
【0081】
<第5の実施形態の変形例>
上記第5の実施形態では、各レンズによって光の進行角度を狭める方向に制御される例について説明したが、これに限らず、図13に示すように、各レンズによって導光される構成にしてもよい。図13は、第5の実施形態の変形例に係る顕微観察装置の第1の光学系4e2の概略断面図である。第1の光学系4e2は、図12の第5の実施形態の第1の光学系4eと比べて、レンズ55がレンズ55bに、レンズ57がレンズ57bに、レンズ59がレンズ59bに、レンズ71がレンズ71bに変更されたものになっている。
【0082】
レンズ55bは、観察対象Tから生じる蛍光と一部の前記励起光を含む光を導光する。
レンズ57bは、レンズ55bによって導光され、平坦層56を通った光を導光する。
レンズ59bは、レンズ57bによって導光され、平坦層58を通った光を導光する。
レンズ71bは、レンズ59bによって導光され、平坦層70を通った光を導光する。
レンズ71bによって導光された光は、平坦層72を通ってフィルタ5に入射する。フィルタ5への蛍光の入射角が入射角度の許容範囲に収まるように、レンズ71bの光学特性が設定されている。これにより、フィルタ5が、レンズ71bによって導光された光のうち、励起光を低減させて、蛍光を透過させることができる。
【0083】
<変形例>
なお、各実施形態ではフィルタ5は一例として光学特性に入射角度依存性があるとして説明したが、これに限ったものではなく、光学特性に入射角度依存性がないものであってもよく、例えばフィルタガラスであってもよい。フィルタガラスは、光学特性に入射角依存性がないが、その反面、パス/カットの立ち上がり(あるいは立ち下がり)が緩やかな特長がある。
【0084】
フィルタが光学特性に入射角度依存性がない場合において、観察対象Tの厚み方向の蛍光分布を観察するときには、第1の光学系の観察対象側の端部と観察対象との間の距離が設定距離以上離れるように、第1の光学系の前記観察対象側の焦点距離が設定されている第1の光学系が必要である。これにより、観察対象Tの厚み方向の蛍光分布を観察することができる。
【0085】
一方、フィルタが光学特性に入射角依存性がない場合において、観察対象Tの厚み方向の蛍光分布を観察しないときには、第1の光学系はなくてもよい。すなわち、蛍光検出器は、光源から励起光を照射することによって観察対象Tから生じる蛍光と一部の励起光を含む光のうち、励起光の波長帯域の光の強度を低減するフィルタと、フィルタを通過した後の複数の光を光制御する第2の光学系と、第2の光学系によって光制御された複数の光を電気に変換する複数の光電変換素子と、を少なくとも備え、光電変換素子に入射する光の角度が設定範囲内に収まるように、第2の光学系の光学特性が設定されていてもよい。
【0086】
この構成によれば、フィルタが励起光を低減させて、蛍光を透過させることができ、光電変換素子の感度が規定の下限以上になるので、高感度で観察することができる。また、光電変換素子で第2の光学系によって光制御された光を電気に変換するため、従来の光学顕微鏡のように視野と倍率のトレードオフという関係が存在せず、複数の光電変換素子を密に配置すれば広い視野を高倍率で観察することができる。このため、励起光が照射された観察対象からの蛍光を利用して、観察対象の全体を簡易に高感度で観察できる。
【0087】
なお、載置部材2の底の少なくとも一部が透明部材(例えば、ボトル,プレパラート,流路など)から構成されている場合、透明部材3はなくてもよい。
【0088】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 光源
2 載置部材
3 透明部材
4、4b、4c、4d、4e 第1の光学系
41 セルフォックレンズ
42、42b、421、43、44 レンズ
45 平坦層
46 導波管
47 平坦層
48 レンズ
49、49b レンズ
5 フィルタ
50 平坦層
51 導波管
52 平坦層
53、53b レンズ
54 平坦層
55、55b レンズ
56 平坦層
57、57b レンズ
58 平坦層
59、59b レンズ
6、6b 第2の光学系
61 光制御部材
62 視野角制御層
63、63b、631、64、64b レンズ
7 中間層
71、71b レンズ
72 平坦層
8 半導体基板
9 光電変換素子
10、10b 蛍光検出器
20 駆動部
46 導波管
100 顕微観察装置
200 ロジック回路
300 表示装置
S 顕微観察システム
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13