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特許7098165識別剤組成物およびその作製および使用のための方法
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  • 特許-識別剤組成物およびその作製および使用のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】識別剤組成物およびその作製および使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20220704BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20220704BHJP
   G01N 30/62 20060101ALI20220704BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20220704BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20220704BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
G01N30/88 M
G01N30/06 Z
G01N30/62 A
G01N30/72 A
G01N30/74 E
G01N30/86 J
G01N30/86 Z
G01N30/88 C
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019510890
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 US2017048320
(87)【国際公開番号】W WO2018039405
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】62/379,005
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519014040
【氏名又は名称】ユナイテッド カラー マニュファクチャリング,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ヒントン マイケル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】フレデリコ ジャスティン ジェイ.
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102396(JP,A)
【文献】特表2016-503446(JP,A)
【文献】特表2014-506613(JP,A)
【文献】特表2005-502760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0019939(US,A1)
【文献】米国特許第05358873(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液状炭化水素のサンプルをガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより前記サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;および
b)前記液状炭化水素中のピロリジノンの存在を前記ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認すること
を含
前記ピロリジノンが1-アルキル-2-ピロリジノンまたは1-アルケニル-2-ピロリジノンである、
ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤を含有している液状炭化水素を同定する方法。
【請求項2】
前記液状炭化水素が分光分析用識別剤をさらに含んでおり:
c)前記液状炭化水素の第2のサンプルを分光学的に分析し、それにより前記第2のサンプルの分光分析レポートを得ること;および
d)前記液状炭化水素中の前記分光分析用識別剤の存在を前記分光分析レポートを用いて確認すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤を、市場に流通している液状炭化水素のサブセットに添加すること;
b)前記市場に流通している前記液状炭化水素のうちの1種類のサンプルを選出すること;
c)前記市場に流通している前記液状炭化水素のうちの1種類の前記サンプルの少なくとも一部分をガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより前記サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;および
d)前記サンプル中の前記ピロリジノンの有無を前記ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認し、それにより前記サンプルが液状炭化水素の前記サブセットの範囲内であるのか前記サブセットの範囲外であるのかを確認すること
を含
前記ピロリジノンが1-アルキル-2-ピロリジノンまたは1-アルケニル-2-ピロリジノンである、
市場に流通している液状炭化水素のサブセットに識別剤を添加し、前記識別剤添加の存在を検出する方法。
【請求項4】
e)分光分析用識別剤を、前記市場に流通している前記液状炭化水素の前記サブセットに添加すること;
f)前記市場に流通している前記液状炭化水素のうちの1種類の前記サンプルの少なくとも第2の一部分を分光学的に分析し、それにより前記サンプルの分光分析レポートを得ること;および
g)前記サンプル中の前記分光分析用識別剤の有無を前記分光分析レポートを用いて確認し、それにより前記サンプルが液状炭化水素の前記サブセットの範囲内であるのか前記サブセットの範囲外であるのかを確認すること
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ロンダリングされた識別剤含有液状炭化水素を同定する方法であって、ロンダリングされていない識別剤含有液状炭化水素はガスクロマトグラフィー用識別剤と分光分析用識別剤を含有しており、前記ガスクロマトグラフィー用識別剤がピロリジノンを含むものであり:
a)ロンダリングされたことが疑われる液状炭化水素サンプルの第1の一部分をガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより前記液状炭化水素サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;
b)前記液状炭化水素サンプルの第2の一部分を分光学的に分析し、それにより前記液状炭化水素サンプルの分光分析レポートを得ること;
c)前記ガスクロマトグラフィー用識別剤の有無を前記ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認し、
前記分光分析用識別剤の有無を前記分光分析レポートを用いて確認すること
を含み;
d)工程c)の確認に基づいて:
前記ガスクロマトグラフィー用識別剤および前記分光分析用識別剤が存在していると確認されたならば、前記液状炭化水素サンプルが識別剤を含有しており、ロンダリングされていないことを示し;
前記ガスクロマトグラフィー用識別剤が存在していると確認され、前記分光分析用識別剤が存在しないと確認されたならば、前記液状炭化水素サンプルが識別剤を含有しており、ロンダリングされていることを示し;
前記ガスクロマトグラフィー用識別剤および前記分光分析用識別剤が存在しないと確認されたならば、前記液状炭化水素が識別剤無含有であることを示
前記ピロリジノンが1-アルキル-2-ピロリジノンまたは1-アルケニル-2-ピロリジノンである、方法。
【請求項6】
前記分光分析用識別剤が赤色色素または黄色色素である、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分光分析用識別剤がSolvent Red 164またはSolvent Yellow 124である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分光分析用識別剤がフタレインである、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ピロリジノンが前記1-アルキル-2-ピロリジノンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ピロリジノンが、1-メチル-2-ピロリジノン、1-エチル-2-ピロリジノン、1-シクロヘキシル-2-ピロリジノン、1-オクチル-2-ピロリジノン、1-ドデシル-2-ピロリジノンおよびその組合せからなる群より選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ピロリジノンが1-メチル-2-ピロリジノンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ピロリジノンが1-エチル-2-ピロリジノンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ピロリジノンが1-シクロヘキシル-2-ピロリジノンである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ピロリジノンが1-オクチル-2-ピロリジノンである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ピロリジノンが1-ドデシル-2-ピロリジノンである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ピロリジノンが前記1-アルケニル-2-ピロリジノンである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ピロリジノンが1-ビニル-2-ピロリジノンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤;および
溶媒
を含む識別剤組成物であって、
前記ピロリジノンが1-アルキル-2-ピロリジノンまたは1-アルケニル-2-ピロリジノンであり、前記1-アルキル-2-ピロリジノンが、3~7個の炭素原子、9~11個の炭素原子もしくは13~24個の炭素原子を有する非環状アルキル基または4~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含むものであり、前記1-アルケニル-2-ピロリジノンが、2~24個の炭素原子を有するアルケニル基を含むものである識別剤組成物。
【請求項19】
分光分析用識別剤をさらに含む、請求項18に記載の識別剤組成物。
【請求項20】
ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤;および
分光分析用識別剤
を含む識別剤組成物であって、
前記ピロリジノンが1-アルキル-2-ピロリジノンまたは1-アルケニル-2-ピロリジノンであり、前記1-アルキル-2-ピロリジノンが、3~7個の炭素原子、9~11個の炭素原子もしくは13~24個の炭素原子を有する非環状アルキル基または4~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含むものであり、前記1-アルケニル-2-ピロリジノンが、2~24個の炭素原子を有するアルケニル基を含むものである識別剤組成物。
【請求項21】
前記ピロリジノンが1-アルキル-2-ピロリジノンである、請求項1820のいずれか1項に記載の識別剤組成物。
【請求項22】
前記ピロリジノンが1-オクタデシル-2-ピロリジノンである、請求項21に記載の識別剤組成物。
【請求項23】
前記1-アルキル-2-ピロリジノンが1-シクロヘキシル-2-ピロリジノンである、請求項21に記載の識別剤組成物。
【請求項24】
前記ピロリジノンが1-アルケニル-2-ピロリジノンである、請求項1820のいずれか1項に記載の識別剤組成物。
【請求項25】
前記ピロリジノンが1-ビニル-2-ピロリジノンである、請求項24に記載の識別剤組成物。
【請求項26】
前記分光分析用識別剤が赤色色素または黄色色素である、請求項1925のいずれか1項に記載の識別剤組成物。
【請求項27】
前記分光分析用識別剤がSolvent Red 164またはSolvent Yellow 124である、請求項26に記載の識別剤組成物。
【請求項28】
前記分光分析用識別剤がフタレインである、請求項1925のいずれか1項に記載の識別剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年8月24日に出願された発明の名称が「識別剤組成物およびその作製および使用のための方法」である米国特許仮出願第62/379,005号の恩典を主張するものであり、この仮出願の全内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究の記載]
該当なし
【0003】
本発明の分野は流動体用の識別剤組成物である。より詳しくは、本発明は、多層(multi-layered)識別剤組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
識別剤(marker)は、製品、典型的には石油製品ならびにアルコールおよびいくつかの他の適当な流動体を、その後の検出のためにタグ化するために使用され得る物質である。識別剤は通常、同定対象の流動体に溶解させ、次いで、その後、タグ化された流動体に対して物理的または化学的試験を行なうことにより検出される。例えば、識別剤は、場合によっては政府当局が、具体的な等級の燃料に対して適切な税が支払われたことを保証するために使用する。また、石油会社は、自社の製品を希釈または改変した者を特定するのに役立てるために自社の製品に識別剤を添加する。石油会社は多くの場合、自社ブランドの石油製品が、例えば揮発度およびオクタン価に関する一定の規格を満たすことを確実にするため、ならびに自社の石油製品にデタージェントおよび他の成分を含有する有効な添加剤パッケージを供給するために多額のコストを費やす。消費者は、購入する製品が所望の品質であることを確信するのに製品名および品質表示に頼る。
【0005】
不心得者が、粗悪品を消費者が高品質ブランドまたは高品質表示の製品に対して出費を惜しまない価格で販売することにより収益を増やすということがあり得る。また、高収益は、単にブランド品を粗悪品で希釈することによっても得られ得る。例えば、ある製品を別のもので代用したり、ブランド品を粗悪品とブレンドしたりする小売業者/卸売業者を取り締まることは、ガソリンの場合、ブレンド品がその各成分の存在を定性的に示すため困難である。ブランド品のカギとなる成分は一般的に、粗悪品での希釈を検出するための定量分析が非常に困難であり、時間がかかり、費用がかかるというような低レベルで存在している。
【0006】
石油製品、例えば限定されないが、燃料、潤滑油、グリースなどの識別剤系が提案されているが、その有効性を障害している種々の欠点が存在している。現在利用可能な識別剤の多くは、法科学的識別剤(限定されないが、ガスクロマトグラフィー(GC)による分析によって検出される)および単なる実地試験用識別剤(限定されないが、識別剤の顕色または抽出によって検出される)の両方として使用することができない。既知の識別剤の多くは、これを添加した流動体から容易に除去され、識別剤系の完全性が破壊される。現在利用可能な識別剤の多くは、燃料からロンダリング(launder)され得ない成分を有する識別剤含有製品を検出するために容易に組み合わせることができない。また、このような識別剤を実験室で分析するのに現在使用されている方法は非常に費用がかかる結果となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のことに鑑みると、識別剤として有用であり、現場だけでなく実験室でも検出することができ得る組成物が提供されることが望ましいだろう。実地試験技術を既存のクロマトグラフィー手法と併用し、一般的な実験室手法、例えば限定されないがGCによる分析を用いて、識別剤の存在の実地試験の結果だけでなく実験室レベルでの確認も得られることが望ましいだろう。さらに、識別剤は、上記のことが達成され得るが依然として、不心得者による所望されない抽出または除去(ロンダリング)に対して抵抗できるものであるのがよい。さらに、多種多様な流動体、例えば限定されないが、石油製品、アルコールなどにおいて使用することができ得る識別剤組成物が提供されることが望ましいだろう。石油製品としては、限定されないが、燃料、潤滑油、グリースなどが挙げられ得る。また、作業者の高度な訓練を必要としない経済的な検出方法が提供されることが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本開示により、ロンダリングされた識別剤含有液状炭化水素を同定する方法であって、ロンダリングされていない識別剤含有液状炭化水素はガスクロマトグラフィー用識別剤と分光分析用識別剤を含有している方法を提供する。該ガスクロマトグラフィー用識別剤はピロリジノンを含むものである。該方法は:a)ロンダリングされたことが疑われる液状炭化水素サンプルの第1の一部分をガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより該液状炭化水素サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;b)該液状炭化水素サンプルの第2の一部分を分光学的に分析し、それにより該液状炭化水素サンプルの分光分析レポートを得ること;c)該ガスクロマトグラフィー用識別剤の有無を該ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認し、該分光分析用識別剤の有無を該分光分析レポートを用いて確認することを含み;d)工程c)の確認に基づいて:該ガスクロマトグラフィー用識別剤および該分光分析用識別剤が存在していると確認されたならば、該液状炭化水素サンプルが識別剤を含有しており、ロンダリングされていないことを示し;該ガスクロマトグラフィー用識別剤が存在していると確認され、該分光分析用識別剤が存在しないと確認されたならば、該液状炭化水素サンプルが識別剤を含有しており、ロンダリングされていることを示し;該ガスクロマトグラフィー用識別剤および該分光分析用識別剤が存在しないと確認されたならば、該液状炭化水素が識別剤無含有であることを示す。
【0009】
別の態様では、本開示により、市場に流通している液状炭化水素のサブセットに識別剤を添加し、該識別剤添加の存在を検出する方法を提供する。該方法は:a)ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤を、市場に流通している液状炭化水素のサブセットに添加すること;b)市場に流通している該液状炭化水素のうちの1種類のサンプルを選出すること;c)市場に流通している該液状炭化水素のうちの1種類の該サンプルの少なくとも一部分をガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより該サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;およびd)該サンプル中の該ピロリジノンの有無を該ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認し、それにより該サンプルが液状炭化水素の該サブセットの範囲内であるのか該サブセットの範囲外であるのかを確認することを含むものである。
【0010】
さらなる一態様では、本開示により、ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤を含有している液状炭化水素を同定する方法を提供する。該方法は:a)液状炭化水素のサンプルをガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより該サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;およびb)該液状炭化水素中のピロリジノンの存在を該ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認することを含むものである。
【0011】
また別の態様では、本開示により識別剤組成物を提供する。該識別剤組成物は:ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤;および溶媒を含むものである。該ピロリジノンは1-アルキル-2-ピロリジノンまたは1-アルケニル-2-ピロリジノンであり、該1-アルキル-2-ピロリジノンは、3~7個の炭素原子、9~11個の炭素原子もしくは13~24個の炭素原子を有する非環状アルキル基または4~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含むものであり、該1-アルケニル-2-ピロリジノンは、2~24個の炭素原子を有するアルケニル基を含むものである。
【0012】
またさらなる一態様でも、本開示により識別剤組成物を提供する。該識別剤組成物は:ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤;および分光分析用識別剤を含むものである。該ピロリジノンは1-アルキル-2-ピロリジノンまたは1-アルケニル-2-ピロリジノンであり、該1-アルキル-2-ピロリジノンは、3~7個の炭素原子、9~11個の炭素原子もしくは13~24個の炭素原子を有する非環状アルキル基または4~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含むものであり、該1-アルケニル-2-ピロリジノンは、2~24個の炭素原子を有するアルケニル基を含むものである。
【0013】
さらなる一態様では、本開示により識別剤含有液状炭化水素を提供する。識別剤含有液状炭化水素は液状炭化水素と本明細書に記載の識別剤組成物を含むものである。該識別剤組成物は、該識別剤含有液状炭化水素中の該ピロリジノンが0.1ppm~500ppmの濃度となるのに充分な量で、該識別剤含有液状炭化水素中の該分光分析用識別剤が0.1ppm~500ppmの濃度となるのに充分な量で、またはその組合せとなるのに充分な量で存在させる。
【0014】
また別の態様では、本開示によりキットを提供する。該キットは、本明細書に記載の識別剤組成物および該識別剤組成物のピロリジノンに関する参照ガスクロマトグラフィーレポートを含むものである。
【0015】
またさらなる一態様では、本開示により、ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤を識別剤添加された液状炭化水素を同定するためのシステムを提供する。該システムは窒素リン検出器付きガスクロマトグラフィー(GC-NPD)システム;およびコンピュータを含むものである。該コンピュータはプロセッサとメモリを有する。該メモリには、ピロリジノンに関する参照ガスクロマトグラフィーレポートと命令が保存されており、該命令は、該プロセッサによって実行されると、該プロセッサがガスクロマトグラフィーレポートを該GC-NPDシステムから受信し、該参照ガスクロマトグラフィーレポートとの比較に基づいてガスクロマトグラフィー用識別剤の有無を確認するようにするものである。
【0016】
本発明の前述の、および他の態様および利点は以下の説明から明らかとなろう。本説明では添付の図面について言及しているが、この図面は、本説明の一部を構成しており、一例として本発明の好ましい一実施形態を示している。かかる実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって、本発明の範囲の解釈には特許請求の範囲および本明細書を参照されたい。
【0017】
本発明の理解を補助するため、次に、添付の図面について言及する。本図面において同様の参照文字は同様の要素を示す。本図面は例示にすぎず、本発明を限定するものであると解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示の種々の態様によるシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の材料および方法を説明する前に、本開示は、記載の具体的な方法論、プロトコル、材料および試薬に限定されないこと(これらはさまざまであり得るため)を理解されたい。また、本明細書で用いている専門用語は、具体的な実施形態を説明する目的のためにすぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形“a”、“an”および“the”は、本文中にそうでないことを明白に記載していない限り、複数の指示対象物を包含している。その上、用語“a”(または“an”)、“one or more(1以上)”および“at least one(少なくとも1)”は本明細書において互換的に用いている場合があり得る。また、用語“comprising(~を含む)”、“including(~を含む)”および“having(~を有する)”も互換的に用いている場合があり得ることに注意されたい。
【0021】
既に記載のものに加えて多くのさらなる修正例が、本発明思想から逸脱することなく可能であることは当業者に明らかであろう。本開示の解釈において、すべての用語は、文脈と整合する可能な限り最も広い様式で解釈されたい。用語“comprising”、“including”または“having”のバリエーション(variations)は、要素、成分または工程について非排他的様式で言及しており、そのため、言及された要素、成分または工程は、明記されていない他の要素、成分または工程と組み合わせてもよいと解釈されたい。ある特定の要素を“comprising”、“including”または“having”と示されている実施形態はまた、本文中にそうでないことを明白に記載していない限り、該要素“consisting essentially of(から本質的になる)”および“consisting of(からなる)”ことも想定される。本文中にそうでないことを明白に記載していない限り、システムに関して記載した開示内容の態様は方法に適用可能であり、逆も同様であることは認識されよう。
【0022】
本明細書に開示している数値範囲は両端を含む。例えば、1~10という数値範囲は1と10の値を含む。所与の値について一連の数値範囲を開示している場合、本開示は、該範囲の上限と下限のすべての組合せを含む範囲を明示的に想定している。例えば、1~10または2~9という数値範囲は、1~9および2~10という数値範囲を包含していることを意図している。
【0023】
特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語および略号はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施形態の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料を以下に説明する。本明細書において具体的に記載した刊行物および特許、例えば限定されないが、米国特許第5,498,808号、同第5,676,708号、同第5,672,182号、同第5,858,930号、同第6,002,056号、同第6,482,651号、同第7,157,563号、同第7,163,827号および同第7,825,159号はすべて、引用により、該刊行物に報告されている、本発明との関連で使用されるかもしれない化学薬品、機器、統計分析および方法論の説明および開示などのあらゆる目的のために組み込まれる。本明細書において挙げた参考文献はすべて、当該技術分野の水準を示すものと解釈されたい。本明細書におけるいずれのものも、先願発明という理由で、かかる開示より本発明が時間的に先行していないという是認と解釈されるべきでない。
【0024】
本明細書で用いる場合、「アルキル基」は、水素を1個除いたアルカンをいい、直鎖、分枝状および環状のアルキル基を包含している。明瞭性重視のため、本明細書で用いる場合、3個の炭素原子を有するアルキル基は、本文中にそうでないことを明白に記載していない限りイソプロピル基を包含しており、同じことが他のアルキル基についてもあてはまる。同様に、6個の炭素原子を有するアルキル基は、本文中にそうでないことを明白に記載していない限りシクロヘキシル基を包含している。アルキル基内の炭素原子の数を規定する場合、あらゆる分枝を考慮している。そのため、イソプロピル基は3個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0025】
本明細書で用いる場合、「アルケニル基」は、水素を1個除いたアルケンをいい、直鎖、分枝状および環状のアルケニル基を包含している。
【0026】
本明細書で用いる場合、“comprising”は包含的用語であり、記載の成分または方法工程および記載されていない他の成分または方法工程を含む。
【0027】
本明細書で用いる場合、“consisting essentially of”は、本出願の出願日の時点で米国特許商標局前の特許審査で使用されている定義を有しているものとする。本質的にある特定の成分または方法工程からなると記載されている説明または請求項は、記載の成分または方法工程および該説明または請求項に記載の発明の基本的特徴および新規な特徴(1つまたは複数)に実質的に影響しないものに対する範囲に限定されるものとする。
【0028】
本明細書で用いる場合、“consisting of”は排他的用語であり、記載の成分または方法工程のみを含み、記載されていない他の成分または方法工程は除外される。
【0029】
本明細書で用いる場合、「シクロアルキル基」は、水素を1個除いたシクロアルカンをいい、非置換のシクロアルキル基および1つ以上のアルキル基置換を有するシクロアルキル基を包含している。1つのシクロアルキル基に複数の環が存在していてもよい(例えば、縮合環)。
【0030】
本明細書で用いる場合、「ガスクロマトグラフィー用識別剤」は、ガスクロマトグラフィー手段、例えば限定されないが、窒素リン検出器付きガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー-質量分析、および当業者に知られた他の同様のガスクロマトグラフィー法によって検出され得る化学的実体をいう。
【0031】
本明細書で用いる場合、「窒素リン検出器付きガスクロマトグラフィー用識別剤」は、窒素リン検出器付きガスクロマトグラフィーによって検出され得る化学的実体をいう。
【0032】
本明細書で用いる場合、「非環状アルキル基」は、環式の環を含んでいないアルキル基をいう。
【0033】
本明細書で用いる場合、「非ピロリジノン」は、ピロリジノン基(場合によっては、ピロリドン基とも称される)を含んでいない化合物をいう。
【0034】
本明細書で用いる場合、「フタレイン」は、無水フタル酸とフェノールの反応によって形成される化合物をいう。
【0035】
本明細書で用いる場合、「ピロリジノン」は、ピロリジノン基(場合によっては、ピロリドン基とも称される)を含んでいる化合物をいう。
【0036】
本明細書で用いる場合、「非水性」組成物は、存在している水分量が1重量%未満である組成物をいう。
【0037】
本明細書で用いる場合、用語「赤色色素」は、500nm~580nmの可視域電磁放射線吸収極大を有する色素をいう。
【0038】
本明細書で用いる場合、「分光分析用識別剤」は、分光分析手段、例えば限定されないが、蛍光分光法、吸収分光法、ラマン分光法、近赤外分光法、および分光分析の技術分野の当業者に知られた他の分光分析法によって検出され得る化学的実体をいう。分光分析用識別剤は分光分析手段によって検出され得る化学的実体をいうが、本開示は、分光分析用識別剤がかかる手段によって実際に検出することに限定されないことは認識されよう。例えば、分光分析用識別剤は、クロマトグラフィー手段により、分析化学の技術分野の当業者にわかる様式で検出されるものであってもよい。
【0039】
本明細書で用いる場合、用語「黄色色素」は、400nm~475nmの可視域電磁放射線吸収極大を有する色素をいう。
【0040】
略号:
【0041】
AFID-アルカリ炎イオン化検出器
【0042】
ECD-電子捕獲型検出器
【0043】
FID-水素炎イオン化検出器
【0044】
GC-ガスクロマトグラフィー
【0045】
GC-MS-ガスクロマトグラフィー-質量分析
【0046】
GC-NPD-窒素リン検出器付きガスクロマトグラフィー
【0047】
GLP-ゲル液体浸透
【0048】
HECD-Hall型電気伝導度検出器
【0049】
LC-液体クロマトグラフィー
【0050】
LC-MS-液体クロマトグラフィー-質量分析
【0051】
MS-質量分析
【0052】
NIR-近赤外
【0053】
PID-光イオン化検出器
【0054】
UV-Vis-紫外可視
【0055】
本開示は、識別剤含有流動体から実質的に除去またはロンダリングされる能力を低減させた多層識別剤組成物を導入することにより、有機溶媒、例えば限定されないが、石油製品、潤滑油または任意の他の液状炭化水素からの分光分析用識別剤のロンダリング可能性(launderability)または除去の問題を容易に、または経済的な様式で実質的に解決する多層識別剤組成物に関するものである。本明細書に開示しているこの新規で非自明の多層識別剤組成物は、単純な実地試験を実施して識別剤含有流動体中の該組成物の存在を調べられる能力だけでなく、より精巧な実験室レベルでの分析で識別剤含有流動体中の該組成物を検出することを可能にする能力も兼ね備えている。
【0056】
本開示により、液状炭化水素に識別剤を添加するための識別剤組成物を提供する。該識別剤組成物にはさまざまな形態が採用され得、当業者によって理解されるとおりに組み合わせてもよい。
【0057】
一部の場合では、識別剤組成物がガスクロマトグラフィー(GC)用識別剤を含むものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物が本質的にGC用識別剤からなるものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物がGC用識別剤からなるものであり得る。
【0058】
一部の場合では、識別剤組成物がGC用識別剤と溶媒を含むものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物が本質的にGC用識別剤と溶媒からなるものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物がGC用識別剤と溶媒からなるものであり得る。このような組成物の各々において、GC用識別剤は重量基準で1%~99%、25%~75%または40%~60%の量で存在させ得る。このような組成物の各々において、溶媒は重量基準で1%~99%、25%~75%または40%~60%の量で存在させ得る。
【0059】
一部の場合では、識別剤組成物がGC用識別剤と分光分析用識別剤を含むものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物が本質的にGC用識別剤と分光分析用識別剤からなるものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物がGC用識別剤と分光分析用識別剤からなるものであり得る。このような組成物の各々において、GC用識別剤は重量基準で1%~99%、25%~75%または40%~60%の量で存在させ得る。このような組成物の各々において、分光分析用識別剤は重量基準で1%~99%、25%~75%または40%~60%の量で存在させ得る。
【0060】
一部の場合では、識別剤組成物がGC用識別剤、分光分析用識別剤および溶媒を含むものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物が本質的にGC用識別剤、分光分析用識別剤および溶媒からなるものであり得る。一部の場合では、識別剤組成物がGC用識別剤、分光分析用識別剤および溶媒からなるものであり得る。このような組成物の各々において、GC用識別剤は重量基準で10%~85%、20%~70%または25%~60%の量で存在させ得る。このような組成物の各々において、分光分析用識別剤は重量基準で5%~80%、10%~50%または15%~25%の量で存在させ得る。このような組成物の各々において、溶媒は重量基準で10%~85%、20%~70%または25%~60%の量で存在させ得る。
【0061】
前述の任意の識別剤組成物は非水性であってもよい。
【0062】
前述の任意の識別剤組成物におけるGC用識別剤は窒素リン検出器付きガスクロマトグラフィー(GC-NPD)用識別剤であってもよい。
【0063】
前述の任意の識別剤組成物におけるガスクロマトグラフィー用識別剤はピロリジノンを含むものであり得る。前述の任意の識別剤組成物におけるガスクロマトグラフィー用識別剤は本質的にピロリジノンからなるものであり得る。前述の任意の識別剤組成物におけるガスクロマトグラフィー用識別剤はピロリジノンからなるものであり得る。
【0064】
一部の場合では、該ピロリジノンが、液状炭化水素中に0.01ppm~500ppmのレベルで可溶性である任意のピロリジノンであり得る。
【0065】
一部の特定の用途では、1-アルキル-2-ピロリジノン(ここで、該アルキル基は任意の鎖長のものである)が、ガスクロマトグラフィー用識別剤、例えばGC-NPD用識別剤として有用であり得る。
【0066】
一部の特定の用途では、高分子量を有する、および/または大型アルキル置換を有するピロリジノンを使用することが有益であり得る。このような用途では、ピロリジノンが1-アルキル-2-ピロリジノンであり得、この場合、該アルキル基は、3個以上の炭素原子を有するアルキル基、例えば限定されないが、3~40個の炭素原子を有するアルキル基、4~30個の炭素原子を有するアルキル基、5~20個の炭素原子を有するアルキル基、6~18個の炭素原子を有するアルキル基、8~16個の炭素原子を有するアルキル基、または6~12個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0067】
一部の特定の用途では、ピロリジノンが、そのアルキル基が、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子、6個の炭素原子または7個の炭素原子を有するアルキル基である1-アルキル-2-ピロリジノンであることが有益であり得る。
【0068】
一部の特定の用途では、ピロリジノンが、そのアルキル基が、9個の炭素原子、10個の炭素原子、11個の炭素原子、12個の炭素原子、13個の炭素原子、14個の炭素原子、15個の炭素原子、16個の炭素原子、17個の炭素原子、18個の炭素原子、19個の炭素原子、20個の炭素原子、21個の炭素原子、22個の炭素原子、23個の炭素原子または24個の炭素原子を有するアルキル基である1-アルキル-2-ピロリジノンであることが有益であり得る。
【0069】
一部の特定の用途では、1-シクロアルキル-2-ピロリジノン(ここで、該シクロアルキル基は任意の鎖長のものである)が、ガスクロマトグラフィー用識別剤、例えばGC-NPD用識別剤として有用であり得る。
【0070】
一部の特定の用途では、1-アルケニル-2-ピロリジノン(ここで、該アルケニル基は任意の鎖長のものである)が、GC用識別剤、例えばGC-NPD用識別剤として有用であり得る。
【0071】
一部の特定の用途では、1-メチル-2-ピロリジノン、1-エチル-2-ピロリジノン、1-シクロヘキシル-2-ピロリジノン、1-オクチル-2-ピロリジノン、1-ドデシル-2-ピロリジノン、1-オクタデシル-2-ピロリジノンおよび1-ビニル-2-ピロリジノンからなる群より選択されるピロリジノンを使用することが有益であり得る。
【0072】
一部の特定の用途では、1-シクロヘキシル-2-ピロリジノン、1-オクタデシル-2-ピロリジノンおよび1-ビニル-2-ピロリジノンからなる群より選択されるピロリジノンを使用することが有益であり得る。
【0073】
一部の場合では、ガスクロマトグラフィー用識別剤またはGC-NPD用識別剤が、非ピロリジノン化合物、例えばピロリン、ピペリドン、ピピリジン(pipirizine)、ピラジン、ピリダゾン、イミダゾリドン、オキサゾール、オキサゾリン、およびオキサゾリジンであり得る。
【0074】
前述の任意の組成物における分光分析用識別剤、例えば、識別剤が添加されている液状炭化水素に関連した固有の分光分析シグナルと区別可能な再現可能な分光分析シグナルを有することが知られている任意の分光分析用識別剤。例えば、分光分析用識別剤は、識別剤が添加されている液状炭化水素と区別可能な吸収スペクトルを有する色素であり得る。別の例として、分光分析用識別剤は、識別剤が添加されている液状炭化水素と区別可能な蛍光スペクトルを有する蛍光色素であり得る。
【0075】
一部の場合では、分光分析用識別剤が、液状炭化水素中に0.01ppm~500ppmのレベルで可溶性である任意の分光分析用識別剤であり得る。
【0076】
一部の特定の用途では、分光分析用識別剤が赤色色素または黄色色素であり得る。分光分析用識別剤はSolvent Red 164またはSolvent Yellow 124であり得る。
【0077】
一部の特定の用途では、分光分析用識別剤が:下記式(I)に示すものである。
【0078】
【化1】
【0079】
式中、Ar1およびAr2は各々、独立して、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換のナフチレン基を表し;R1は、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し;R2は、水素原子または式C(O)R4の基を表し、ここで、R4は水素原子または1~22個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であり;R3は、水素原子、1~12個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、1~12個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルコキシ基、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換のフェニル基または置換もしくは非置換のナフチル基を表し;Zは、水素原子またはAr2もしくはR3と結合してラクトン環を形成する原子の基を表す。
【0080】
一部の特定の用途では、分光分析用識別剤がフタレインであり得る。分光分析用識別剤はフタレインジブチレートであり得る。分光分析用識別剤は、フタレインエステルであり得る。分光分析用識別剤は、フルオロセイン(fluoroscein)ジブチレート、クレゾールフタレイン、o-クレゾールフタレインジブチレートおよびチモールフタレインからなる群より選択され得る。分光分析用識別剤は、クレゾールフタレインジブチレートエステル、クレゾールフタレインモノブチレートエステル、クレゾールフタレインジイソプロピレートエステル、クレゾールフタレインジ-n-プロピレートエステル、クレゾールフタレインジヘキサノエートエステル、クレゾールフタレインジペンタノエートエステルおよびクレゾールフタレインジラウレートエステルからなる群より選択され得る。分光分析用識別剤は、ナフトールフタレインジブチレートエステル、チモールフタレインジブチレートエステルおよびチモールフタレインジプロパノエートエステルからなる群より選択され得る。分光分析用識別剤は、sec-ブチルフェノールフタレインジブチレートエステルおよびジ-sec-ブチルフェノールフタレインジブチレートエステルからなる群より選択され得る。
【0081】
一部の場合では、溶媒が極性溶媒であり得る。一部の場合では、溶媒が非プロトン性溶媒であり得る。一部の場合では、溶媒が、石油ナフサ(100°F~250°Fの沸点);アルコール、例えばメタノール、エタノール.プロパノール、ブタノールなど;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールフェニルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテルなど;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;キシレン;トルエン;アセトン;酢酸エチル;石油製品、例えばガソリン、ケロシン、ディーゼル燃料、ジェット燃料など;およびその組合せからなる群より選択され得る。
【0082】
また、本開示により識別剤含有液状炭化水素も提供する。一部の場合では、識別剤含有液状炭化水素が、液状炭化水素と本明細書の他の箇所に記載の1種類以上の識別剤組成物を含むものである。一部の場合では、識別剤含有液状炭化水素が、本質的に液状炭化水素と本明細書の他の箇所に記載の1種類以上の識別剤組成物からなるものである。一部の場合では、識別剤含有液状炭化水素が、液状炭化水素と本明細書の他の箇所に記載の1種類以上の識別剤組成物からなるものである。
【0083】
該識別剤含有液状炭化水素の各々において、識別剤組成物は、識別剤含有液状炭化水素中、0.1ppm~500ppmのピロリジノン濃度、例えば限定されないが0.5ppm~100ppm、1ppm~50ppmまたは5ppm~25ppmの濃度がもたらされるのに充分な量で存在させ得る。一部の場合では、分光分析用識別剤を存在させる場合、識別剤組成物は、識別剤含有液状炭化水素中、0.1ppm~500ppmの分光分析用識別剤濃度、例えば限定されないが0.5ppm~100ppm、1ppm~50ppmまたは5ppm~25ppmの濃度がもたらされるのに充分な量で存在させ得る。
【0084】
また、本開示によりキットも提供する。キットは、本明細書に記載の任意の識別剤組成物と、該識別剤組成物のGC特性および/または分光分析特性に関する情報を含むものであり得る。情報に該ピロリジノンに関する参照GCレポートを含めてもよい。分光分析用識別剤を存在させる場合、情報に該分光分析用識別剤に関する参照分光分析レポートを含めてもよい。
【0085】
識別剤は、石油製品、例えば液状炭化水素、ガソリン、ディーゼル燃料、溶媒、潤滑油、ブレーキ液、油圧作動液、ガソホール、ケロシン、ジェット燃料、暖房油、バンカー燃料および他の流動体において、混ぜ物によって粗悪になった製品を検出するための手段を設けることによって製品およびブランドの完全性を確保する手段として使用される。混ぜ物による粗悪化の典型的な状況としては、高級品を低品質のものの1つで代用すること、または高級品に低等級のものを混ぜることが挙げられる。他の状況としては、補助金があるか、または低税率の燃料の悪用が挙げられる。
【0086】
フタレインは、燃料および潤滑油のための識別剤として良好に機能を果たすことが報告されている。この識別剤は0.5~50ppmレベルで添加され、満足のいく定量試験を可能にする。フタレイン含有製品は、溶解度が限定的であるため濃縮液として調製することが困難であり、石油製品中に溶解し難い。このような問題は強い共溶媒を使用すると解決される。一例にすぎないが、これには、1-オクチルピロリジノン、別名n-オクチルピロリジノン(NOP)などの極性-非プロトン性溶媒がよく適しており、これはフタレインがNOP中に非常に可溶性であり、さらにはNOPが石油製品に可溶性であるためである。エンドユーザーに販売される市販品は、実際のフタレイン、NOPおよび溶媒の混合物として配合される。ピロリジノンは、フタレインの溶解度の改善(両成分の安定な配合物をもたらす)だけでなく、燃料または他の流動体中へのフタレインの分散性の改善ももたらす。
【0087】
したがって、例えば、このようなフタレイン組成物はNOP、フタレインおよび溶媒の混合物として調製される。得られる本開示の実施形態による組成物は、単独の分光分析用識別剤と比べて驚くべき予想外の結果を示すことがわかった。本明細書に開示の新規で非自明の組成物は、ロンダリングされにくいだけでなく、燃料/流動体が混ぜ物によって粗悪にされていないかどうかを調べるために現場および実験室で試験され得る組成物となる。
【0088】
フタレインベースの分光分析用識別剤の使用に加えて、多くの他の型の識別剤が本開示の組成物の実施形態において使用され得る。フタレインベースの(他の化学物質ベースの識別剤を含む)としては、限定されないが、フルオロセインジブチレート、クレゾールフタレイン、o-クレゾールフタレインジブチレート、チモールフタレインおよび任意の他の適当な識別剤が挙げられる。分光分析用識別剤としては、限定されないが、ナフトールフタレインジブチレートエステル、チモールフタレインジブチレートエステル、チモールフタレインジプロパノエートエステル、クレゾールフタレインジブチレートエステル、クレゾールフタレインモノブチレートエステル、クレゾールフタレインジイソプロピレートエステル、クレゾールフタレインジ-n-プロピレートエステル、クレゾールフタレインジヘキサノエートエステル、クレゾールフタレインジペンタノエートエステル、クレゾールフタレインジラウレートエステル、sec-ブチルフェノールフタレインジブチレートエステルおよびジ-sec-ブチルフェノールフタレインジブチレートエステルが挙げられ得る。例えば、
分光分析用識別剤は、下記式(I)による化合物で構成されたものであり得る。
【0089】
【化2】
【0090】
式中、Ar1およびAr2は各々、独立して、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換のナフチレン基を表し;R1は、1~22個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基を表し;R2は、水素原子または
式C(O)R4の基を表し、ここで、R4は水素原子または1~22個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基であり;R3は、水素原子、1~12個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、1~12個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖のアルコキシ基、ヒドロキシル基、置換もしくは非置換のフェニル基または置換もしくは非置換のナフチル基を表し;Zは、水素原子またはAr2もしくはR3と結合してラクトン環を形成する原子の基を表す。
【0091】
多くの非フタレイン分光分析用識別剤が本開示の組成物の実施形態において使用され得ることが想定される。また、米国特許第5,498,808号、同第5,676,708号、同第5,672,182号、同第5,858,930号、同第6,002,056号、同第6,482,651号、同第7,157,563号、同第7,163,827号および同第7,825,159号に記載の分光分析用識別剤が、引用により、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0092】
分光分析用識別剤を含有している燃料および他の流動体を混ぜ物によって粗悪にするためは、常套的に、第1工程は識別剤を除去する試みである。このプロセスは、一般的にロンダリングとして知られている。ロンダリングは、さまざまな手法、例えば:酸もしくは塩基での識別剤含有燃料の処理;脱色剤;および/またはクレイもしくは活性炭などの物質に通す濾過を用いて行なわれる。濾過は、他の場合では燃料もしくは他の流動体の性能を破壊するであろう、および/または燃料もしくは他の流動体の特性を変化させるであろう有害な化学薬品を使用しないため、特に一般的である。容易にロンダリングされる識別剤は燃料/流動体を保護できず、したがって、意図されない様式で使用されることになる。
【0093】
ピロリジノンは、最も精巧な手法によってでも完全に除去できないことが実証されている。したがって、分光分析用識別剤とピロリジノンの両方を、燃料、燃料添加剤または本開示の実施形態による他の流動体、したがって添加される流動体中において既知濃度となるように定量的に配合した場合、識別剤のフタレイン成分が除去された場合であっても、全部ではないが充分な量のピロリジノンが残存し、GC試験法を用いて検出され得る。このGC法では、低ppm濃度のNOPを調べるのに必要な感度と分解能をもたらす窒素検出器が使用され得る。通常のFIDおよびMS検出は、費用効果の高い試験手順で燃料/流動体成分からNOPを検出するために必要な結果を得るのに充分ではない。
【0094】
したがって、顕色をもたらす標準的なアルカリ試薬を用いた定量化学試験と、このようなフタレイン識別剤についての抽出試験結果の両方を行なうことができる本開示による組成物が調製され得、また、GCによるピロリジノンの定量的測定が、流動体中の識別剤の法科学的コンホメーション(conformation)およびロンダリングがなされた証拠の両方として行なわれ得る。
【0095】
本開示により、ガスクロマトグラフィー用識別剤を含む液状炭化水素を同定する方法を提供する。該方法は:a)液状炭化水素のサンプルをガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより該サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;およびb)該液状炭化水素中のピロリジノンの存在を該ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認することを含むものである。一部の場合では、液状炭化水素が分光分析用識別剤をさらに含むものであり得る。このような場合、該方法は:c)該液状炭化水素の第2のサンプルを分光学的に分析し、それにより該第2のサンプルの分光分析レポートを得ること;およびd)該液状炭化水素中の該分光分析用識別剤の存在を該分光分析レポートを用いて確認することをさらに含むものであり得る。
【0096】
また、本開示により、市場に流通している液状炭化水素のサブセットに識別剤を添加し、識別剤添加の存在を検出する方法も提供する。該方法は:a)ピロリジノンを含むガスクロマトグラフィー用識別剤を、市場に流通している液状炭化水素のサブセットに添加すること;b)市場に流通している該液状炭化水素のうちの1種類のサンプルを選出すること;c)市場に流通している該液状炭化水素のうちの1種類の該サンプルをガスクロマトグラフィーシステムに導入し、それにより該サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;およびd)該サンプル中の該ピロリジノンの有無を該ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認し、それにより該サンプルが液状炭化水素の該サブセットの範囲内であるのか該サブセットの範囲外であるのかを確認することを含むものである。工程a)の添加としては、GC用識別剤を液状炭化水素の該サブセット中に0.1ppm~500ppmの量のピロリジノン(例えば限定されないが、本明細書に開示した任意の他のGC用識別剤濃度範囲またはピロリジノン濃度範囲)がもたらされるのに必要な量で添加することが挙げられ得る。この方法は、ガスクロマトグラフィー用識別剤を含有している液状炭化水素を同定する方法に関して上記の任意の特徴を含むものであり得る。一部の場合では、該方法は:e)分光分析用識別剤を、市場に流通している該液状炭化水素の該サブセットに添加すること;f)市場に流通している該液状炭化水素のうちの1種類の該サンプルの少なくとも第2の一部分を分光学的に分析し、それにより該サンプルの分光分析レポートを得ること;およびg)該サンプル中の該分光分析用識別剤の有無を該分光分析レポートを用いて確認し、それにより該サンプルが液状炭化水素の該サブセットの範囲内であるのか該サブセットの範囲外であるのかを確認することをさらに含むものであり得る。工程e)の添加としては、分光分析用識別剤識別剤を液状炭化水素の該サブセット中に0.1ppm~500ppmの量の分光分析用識別剤(例えば限定されないが、本明細書に開示した任意の他の分光分析用識別剤濃度範囲)がもたらされるのに必要な量で添加することが挙げられ得る。
【0097】
また、本開示により、ロンダリングされた識別剤含有液状炭化水素を同定する方法であって、ロンダリングされていない識別剤含有液状炭化水素はガスクロマトグラフィー用識別剤と分光分析用識別剤を含有している方法も提供する。該方法は:a)ロンダリングされたことが疑われる液状炭化水素サンプルの第1の一部分をガスクロマトグラフィーシステム内に導入し、それにより該液状炭化水素サンプルのガスクロマトグラフィーレポートを得ること;b)該液状炭化水素サンプルの第2の一部分を分光学的に分析し、それにより該液状炭化水素サンプルの分光分析レポートを得ること;c)該ガスクロマトグラフィー用識別剤の有無を該ガスクロマトグラフィーレポートを用いて確認し、該分光分析用識別剤の有無を該分光分析レポートを用いて確認することを含み;d)工程c)の確認に基づいて:該ガスクロマトグラフィー用識別剤および該分光分析用識別剤が存在していると確認されたならば、該液状炭化水素サンプルが識別剤を含有しており、ロンダリングされていないことを示し;該ガスクロマトグラフィー用識別剤が存在していると確認され、該分光分析用識別剤が存在しないと確認されたならば、該液状炭化水素サンプルが識別剤を含有しており、ロンダリングされていることを示し;該ガスクロマトグラフィー用識別剤および該分光分析用識別剤が存在しないと確認されたならば、該液状炭化水素が識別剤無含有であることを示す。
【0098】
このような方法の各々において、流動体のサンプルまたは一部分をGCシステム内に導入する工程は、流動体のサンプルまたは一部分をGC-NPDシステム内に導入、それによりGC-NPD レポートを得ることを含むものであり得る。GC-NPDシステムとしては、炎光熱検出器(flame thermionic detector)またはアルカリ炎イオン化検出器(alkali flame ionization detector)が挙げられ得る。このような場合、該導入工程で得られるGCレポートは、サンプルまたは流動体中の窒素またはリンの量に比例する強度値を含むものであり得る。この強度は、サンプルまたは流動体の種々の成分の溶出時間の関数としての時間変数であり得る。
【0099】
このような方法の各々において、一部の場合では、流動体のサンプルまたは一部分をGCシステム内に導入する工程は、流動体のサンプルまたは一部分をGC-MSシステム、GC-NPDシステム、例えば、炎光熱検出器(FTD)もしくはアルカリ炎イオン化検出器(AFID)付きGC-NPDシステム、GC-Hall型電気伝導度検出器(HECD)システム、GC-水素炎イオン化検出器(FID)システム、GC-電子捕獲型検出器(ECD)システム、GC-光イオン化検出器(PID)システムまたはその組合せ内に導入することを含むものであり得る。
【0100】
また、流動体のサンプルまたは一部分をGCシステム内に導入する工程は、溶融シリカカラム、ポリエチレングリコールカラム、シアノプロピルカラム、トリフルオロプロピルカラム、置換ポリシロキサンカラムなどの使用を含むものであってもよい。流動体のサンプルまたは一部分をGCシステム内に導入する工程は、窒素、ヘリウムおよびその組合せからなる群より選択されるキャリアガスの使用を含むものであってもよい。ガスクロマトグラフィーシステムの他の操作パラメータは、GC用識別剤と識別剤含有液状炭化水素の種々の成分との分離を改善する目的で、当業者にわかる様式で最適化され得る。
【0101】
このような方法の各々において、GCレポートを伴う該確認工程は、1つ以上の所定の溶出時間での強度値のモニタリングを含むものであり得る。
【0102】
このような方法の各々において、該分光学的分析工程は、蛍光分光法、UV-Vis分光法、ラマン分光法、近赤外分光法、クロマトグラフィー手法、例えば液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)、GLP(ゲル液体浸透)またはその組合せを実施することを含むものであり得る。
【0103】
このような方法の各々において、分光分析レポートを伴う該確認工程は、分光分析レポートを分光分析用識別剤に関する参照スペクトルと比較することを含むものであり得る。
【0104】
フタレインが不心得者によって除去され得ることが考えられ得るが、該ピロリジノンは、最も精密な条件下であっても一部しか除去されず、燃料/流動体のサンプル中の識別剤の存在の絶対的証拠を示す。
【0105】
実質的にあらゆる1-アルキルピロリジノンがこのような方法において充分に機能を果たし、フタレインとピロリジノンの多くの組合せをもたらし、エンドユーザーにとって組成物の選択の柔軟性をより大きくすることが可能になる。例えば、該ピロリジノンとしては、限定されないが、1-メチル-2-ピロリジノン、1-エチル-2-ピロリジノン、1-シクロヘキシル-2-ピロリジノン、1-オクチル-2-ピロリジノン、1-ドデシル-2-ピロリジノン、オシル(ocyl)デシル-2-ピロリジノンおよび1-ビニル-2-ピロリジノン、または任意の他の適当なピロリジノン、例えば、C1~C16のすべてのアルキルピロリジノンなどが挙げられ得る。
【0106】
本開示の実施形態による組成物は、約1~約99%、より好ましくは約10~約60%、さらにより好ましくは約15~約50%の分光分析用識別剤;約1~約99%、より好ましくは約10~約80%、さらにより好ましくは約20~約70%のピロリジノン;約1~約99%、より好ましくは約10~約60%、さらにより好ましくは約20~約50%の溶媒を含むものであり得る。本開示の一部の実施形態では、該組成物が少なくとも1種類の分光分析用識別剤とピロリジノンを含むものであることが想定される。溶媒は任意の適当な型のものであり得、溶媒ナフサの使用に限定されない。
【0107】
図1を参照されたい。本開示によりシステム10を提供する。このシステムはGCシステム12とコンピュータ14を含むものであり得る。GC-NPDシステム12はGCカラム16とGC検出器18を含むものであり得る。GCシステム12はキャリアガス源20を含むものであり得る。
【0108】
一部の場合では、GCシステム12がGC-NPDシステムであり得る。一部の場合では、GCシステム12がGC-MSシステムであり得る。
【0109】
GCカラム16は、溶融シリカカラム、ポリエチレングリコールカラム、シアノプロピルカラム、トリフルオロプロピルカラム、置換ポリシロキサンカラム、またはクロマトグラフィー技術分野の当業者が本明細書に記載のGC用識別剤を液状炭化水素から分離するのに適しているとわかる他のカラムであり得る。一部の場合では、GC検出器18がNPDであり得る。一部の場合では、GC検出器18がMSであり得る。一部の場合では、GC検出器18が、NPD、例えばFTDもしくはAFID、MS、HECD、FID、ECD、PIDまたはその組合せであり得る。窒素リン検出器は、炎光熱検出器、アルカリ炎イオン化検出器、またはクロマトグラフィー技術分野の当業者に知られた他の窒素リン検出器であり得る。キャリアガス源20はヘリウム源、窒素源またはその組合せであり得る。
【0110】
コンピュータ14はプロセッサ22とメモリ24を含むものであり得る。また、コンピュータは、コンピュータ技術分野の当業者にわかる種々のディスプレイ、入力部なども含むものであってもよい。メモリは命令が保存されたものであり得、命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサがGCレポートおよび/または分光分析レポートを受信し、本明細書に記載の任意の方法の確認工程(1つまたは複数)を実行するようにするものである。
【0111】
メモリ24に、システム10によって解析されることが意図されたGC用識別剤またはピロリジノンに対応する1つ以上の参照用GCレポートが保存されていてもよい。
【0112】
システム10は分光分析システム26をさらに含むものであってもよい。分光分析システム26は光源28と光検出器30を含むものであり得る。
【0113】
メモリ24に、該システムによって解析されることが意図された分光分析用識別剤に対応する1つ以上の参照用分光分析レポートが保存されていてもよい。
【0114】
GCシステム12およびオプションの分光分析システム26は、当業者にわかるようなオンボードのプロセッサおよびメモリを有するものであってもよい。コンピュータとGCシステム12およびオプションの分光分析システム26間の通信は有線であっても無線であってもよく、通信技術分野の当業者に知られた任意の通信プロトコルが使用される。
【0115】
実施例1.実験1~24.
【0116】
実験1~24では、3種類の異なるフタレイン、4種類の異なる1-アルキルピロリジノンおよび2つの異なる濃度を用いて配合物を調製した。表1は、調製した配合物を示す。配合物はすべて、安定な溶液(分離または沈殿なしと定義する)を1ヶ月間、3ヶ月間および6ヶ月間にわたって示した。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例2.実験25~27.
【0119】
3種類のピロリジノンの検量線を作成した。実験25、26および27を、ピロリジノンの標準濃度1ppm、5ppmおよび10ppmで行なった。また、1-オクチル-2-ピロリジノンでは0.5ppmの点の溶液も調製した。直線の検量線を得た。表2は、この3つの実験で各測定濃度において測定されたエリアカウントおよび各検量線での「R2」すなわち「R二乗値」を示す。この3種類のアルキルピロリジノンの再現可能な保持時間は、1-シクロヘキシルピロリジノン、1-オクチルピロリジノンおよび1 ドデシルピロリジノンで、それぞれ9.1分、10.0分および15.1分であることがわかった。
【0120】
【表2】
【0121】
GC条件を以下に記載する(HP 6890 Series GC System)
【0122】
カラム:キャピラリーカラム,Restek Rxi-1ms,30m×0.5μm×250μl
【0123】
検出器:Agilent 6890窒素リン検出器
【0124】
カラムモード:定流量,スプリットレス
【0125】
初期温度:120℃
【0126】
初期ホールド温度:0分
【0127】
最終温度:250℃
【0128】
ランプレート:10℃/分
【0129】
ホールド時間:12分
【0130】
インジェクション容量 1μl
【0131】
実施例3.実験28~37.
【0132】
実験28~37では、表1に示した配合物のうちのいくつかをディーゼル燃料中20ppmの濃度で調製した。実験の結果を表3に表形式にする。アルキルピロリジノンでは本質的に同一の保持時間がみられた。これらのサンプルについて優れた濃度が得られた。調製した20ppmのサンプルには、配合物中に30%のピロリジノンを有する配合物では6ppmのピロリジノンが、60%のピロリジノンを有する配合物では12ppmが含まれているはずである。
【0133】
【表3】
【0134】
実施例4.実験38~53.
【0135】
ロンダリング試験を、ディーゼル燃料およびガソリンで調製したサンプルに対して行なった。実験38~47では、表1に記載の配合物をガソリンおよび/またはディーゼル燃料中10および20ppmで調製し、活性炭を含有させたカラムクロマトグラフィーに供した。使用した手法は、燃料用識別剤の除去が問題であることが知られているアジア市場で使用されているものと同様であった。これらの実験では、300mlの識別剤含有燃料を、7.5グラムの活性炭(Darco(登録商標),20~40メッシュ,Aldrichから購入,カタログ番号242268)を含有させたカラム(充填済み,内径11mm)に供する。燃料を、カラムからおよそ300mlの燃料が回収されるまでカラム内に約1.5ml/分で通した。得られた溶液を、先に記載のものと同じGC条件に供した。表4は、GC試験の結果である実験38~45の結果を示す。表には、活性炭での上記の処理後の燃料中に残存しているピロリジノンのパーセンテージを含めている。両方の場合で、ガソリンがディーゼル燃料より良好な保持を示し、両方の場合で、20ppm溶液が10ppm溶液より良好な保持示したことは注目に値する。
【0136】
実験48~55は、従来型の苛性(4部のディーゼル燃料溶液+1部の5%NaOH,激しく振る)および酸(5部のディーゼル燃料+1部の10%塩酸,激しく振る)洗浄をさまざまな配合物の20ppm溶液に対して行なうことにより実施した。表5(苛性)および6(酸)は、ロンダリング手順後に残存しているピロリジノンの量を示す。最後の列には、洗浄したサンプル中に検出されたフタレインの量も示す。すべての場合で、活性炭洗浄および苛性洗浄により多量またはすべてのフタレインが除去された。HCl洗浄では、予測どおり、本質的にすべてのフタレインジが残存した。HClは、燃料からフタレインを除去するのに不充分な方法であることが知られている。
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
実施例5.実験54
【0141】
配合物1~24に使用した3種類のピロリジノンに対する保持時間の帰属を検証するため、四重極GC/MSを使用した。実験25~27で記載のものと同じカラムおよび温度条件を使用し、検量線標準液をMS/GC検出器[HP 5973 Mass Selective Detector]に供した。1-シクロヘキシルピロリジノンでは、M+イオンは167μ(質量単位)にみられた。1-オクチルピロリジノンでは、M+イオンは197μにみられた。1-ドデシルピロリジノンでは、M+イオンは253μにみられた。これらのM+イオンは、ピロリジノンの分子量を示すと予測されるものである。
【0142】
本発明を1つ以上の好ましい実施形態に関して説明したが、明記したものの他に多くの均等物、択一例、変形例および修正例が可能であり、本発明の範囲に含まれることを認識されよう。
図1