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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】CRT測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20220704BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20220704BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220704BHJP
   A61B 5/1172 20160101ALI20220704BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/026 120
A61B5/00 101A
A61B5/1172
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019535688
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2018029664
(87)【国際公開番号】W WO2019031527
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2017153201
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業、「早く正しい救急医療実現のためのスマートな患者情報収集・処理・共有システムの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】521340883
【氏名又は名称】中田 孝明
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中口 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】中田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】織田 成人
(72)【発明者】
【氏名】羽石 秀昭
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/137151(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0282182(US,A1)
【文献】特開2009-148626(JP,A)
【文献】特開2012-115640(JP,A)
【文献】特開2015-130520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0018241(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
A61B 5/026
A61B 5/00
A61B 5/1172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定者の手動動作により、被験者の体の一部である被験部を圧迫した後に前記被験部の毛細血管再充填時間を測定するCRT測定装置であって、
互いに対向し、互いに接近する閉止方向に予め付勢された一対の挟持面を有し、前記挟持面で前記被験部を挟持するクリップと、
前記クリップの一対の挟持面で前記被験部を挟持し、上記の測定者の手動動作を加えることにより、検出された前記被験部への圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方が上記の一対の挟持面に予め付勢された値よりも高い所定範囲内に入り、且つ、所定範囲内にある期間が所定時間維持される標準圧迫条件を満たすように、前記手動操作を誘導する誘導部と、
前記標準圧迫条件を満たした後、前記の所定範囲内の圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方が、前記の一対の挟持面に予め付勢されている圧力よりも大きい解放圧力以下になる場合に、検出された前記被験部の血色に基づいて前記被験部の血色が復帰するまでの復帰時間を計時し、前記復帰時間に基づいて前記毛細血管再充填時間を測定する測定部とを備えた
ことを特徴とする、CRT測定装置。
【請求項2】
前記被験部の前記血色を検出する第1センサと、
前記被験部への前記圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方を検出する第2センサとを備えた
ことを特徴とする、請求項1記載のCRT測定装置。
【請求項4】
前記測定者の指に、前記第1センサ及び前記第2センサを装着するための第一装着手段を備えた
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載のCRT測定装置。
【請求項5】
前記被験部に、前記第1センサ及び前記第2センサを装着するための第二装着手段を備えた
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載のCRT測定装置。
【請求項6】
測定者の手動動作により、被験者の体の一部である被験部を圧迫した後に前記被験部の毛細血管再充填時間を測定するCRT測定装置であって、
互いに対向する挟持面で前記被験部としての指先を挟持することにより検出された前記指先への圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方が所定範囲内に入り、且つ、所定範囲内にある期間が所定時間維持される標準圧迫条件を満たすように、前記手動操作を誘導する誘導部と、
前記標準圧迫条件を満たした後、前記の所定範囲内の圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方が解放圧力以下になる場合に、検出された前記被験部の血色に基づいて前記被験部の血色が復帰するまでの復帰時間を計時し、前記復帰時間に基づいて前記毛細血管再充填時間を測定する測定部とを備え、且つ、
前記被験部の前記血色を検出する第1センサと、
前記被験部への前記圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方を検出する第2センサとを備え、さらに、
離接可能に連結され、上記の互いに対向する挟持面の相互間に前記指先が挿入される、第一クリップ片及び第二クリップ片を備え、
前記第1センサは、前記第一クリップ片の前記挟持面に設けられ、
前記第2センサは、前記第一クリップ片又は前記第二クリップ片に設けられ、
前記第一クリップ片及び前記第二クリップ片は、前記所定範囲から低い側に外れた圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方により、互いに接近する閉止方向に付勢され、
前記解放圧力は、上記の互いに対向する挟持面に予め付勢されている圧力よりも大きい
ことを特徴とする、CRT測定装置。
【請求項7】
前記第1センサは、前記第一クリップ片の前記挟持面に突設されている
ことを特徴とする、請求項6に記載のCRT測定装置。
【請求項8】
前記第2センサは、前記第一クリップ片に設けられ、前記第1センサは、前記第2センサを介して前記第一クリップ片の前記挟持面に突設されている
ことを特徴とする、請求項7に記載のCRT測定装置。
【請求項9】
前記第2センサには、前記圧迫を行う際に前記被験部に向く面に、前記被験部を押圧する圧子が備えられた
ことを特徴とする、請求項2~8の何れか一項に記載のCRT測定装置。
【請求項10】
前記圧子は、前記圧迫を行う際に前記被験部に向く側に開放部が設けられ、
前記開放部に、前記第1センサが没入された
ことを特徴とする、請求項9に記載のCRT測定装置。
【請求項11】
前記誘導部は、
前記の圧迫圧力及び圧迫力のいずれか一方が前記所定範囲内にある期間は、前記圧迫圧力及び圧迫力のいずれか一方が前記所定範囲内にある旨の第一アナウンスを行い、前記期間が前記所定時間に到達すると前記手動操作による前記圧迫を終了させるための第二アナウンスを行う
ことを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載のCRT測定装置。
【請求項12】
前記被験部の温度を検出する第3センサを設け、
前記測定部は温度補償部を備え、
前記温度補償部は、前記復帰時間を、前記温度センサの検出情報に基づいて補償して前記毛細血管再充填時間とする
ことを特徴とする、請求項1~11の何れか一項に記載のCRT測定装置。
【請求項13】
前記毛細血管再充填時間を報知する報知部を備えた
ことを特徴とする、請求項1~12の何れか一項に記載のCRT測定装置。
【請求項14】
前記被験部が指先であり、前記指先の指紋を検出する指紋検出センサを備えた
ことを特徴とする、請求項2,4~13の何れか一項に記載のCRT測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の体の一部における毛細血管再充填時間を測定する、CRT測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
毛細血管再充填時間(CRT:Capillary Refilling Time。以下「CRT」という。)は、ショックの有無を評価するための簡便な指標とされ、輸液の要否の判断やトリアージ(多数傷病者発生時の優先度評価)など、救急医療領域において汎用されている手法である。具体的には、医療従事者が被測定者の指先を圧迫し、当該圧迫を解除した後の爪や皮膚の色の変化を目視で確認する。概ね所定時間(2~3秒程度)内に元の色に戻れば、正常な状態と判断される。しかしながら、手で生体組織の圧迫を行ない、目視で皮膚色の変化を確認する手法であるため定量性に欠け、測定者による誤差も生じやすい。
そこで、プローブに指先を差し込んで指先を圧迫した後に解放してCRTを検出する装置が種々提案されている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、被測定者の生体組織(被測定者の指先)を圧迫すると毛細血管の血流量が低下して被測定者の生体組織の透過光量が急激に増加することを利用した生体信号測定装置が開示されている(特許文献1の段落[0041],[0050]及び図1など参照)。この生体信号測定装置では、プローブを装着された生体組織の透過光量に基づいて、生体組織の圧迫状態が安定してから所定時間(5秒程度)経過後、圧迫の解除タイミングを指示するようにしている。
【0004】
非特許文献1には、スプリングを含む押圧用具(force applicator)を備えた装置(device)が開示されている。この装置では、この押圧用具を押し込むことでスプリングを圧縮し、この圧縮状態のスプリングの付勢力により、装置に装着された指先を圧迫するようにしている(非特許文献1の「5.1 Mechanical Features」及びFig.13など参照)。また、この装置では、スプリングの圧縮量を規制するリミッターを押圧用具に設けることで、指先に対する圧迫力を一定としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-115640号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Anat Bordoley, ‘D1GIT: AUTOMATED, TEMPERATURECALIBRATED MEASUREMENT OF CAPILLARY REFILL TIME’ ,[online], April 26, 2012, <URL:http://www.me.upenn.edu/senior-design/2012/papers/team06.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した各実施形態では、以下のような課題がある。
(1)特許文献1に開示された装置では、被測定者の生体組織の圧迫状態を、生体組織の透過光量に基づいて判定しているが、生体組織に対する圧迫圧力が、生体組織を圧迫状態とするのに適切な圧迫圧力であるのか否かが測定者にはわからない。
このため、圧迫圧力が適切な圧迫圧力に満たない場合には、生体組織の透過光量が速やかに増加せず、測定者が圧迫圧力の不足に気が付くまで測定が停滞してしまうおそれがある。逆に圧迫圧力が適切な圧迫圧力を越えている場合には、毛細血管の血流量は低下して生体組織の透過光量が増加するので測定を行うことはできるものの、測定者や測定回によって、圧迫圧力に差異が生じ、測定されたCRTにも差異が生じるおそれがある。
【0008】
(2)トリアージが行われる場面では、多数の傷病者に対して、多くの医療従事者により迅速に測定を行う必要がある。このため、多くの医療従事者が測定装置を保有できるよう装置は安価であることが好ましく、装置を容易に取り扱えるよう且つ携帯性が良好となるように装置のサイズはコンパクトであることが好ましい。
しかしながら、非特許文献1に開示された技術では、圧迫圧力を一定とするためのリミッターを押圧用具に設けているため機構が複雑となり、その分、装置はサイズが大きくなると共に高価となるおそれがある。
【0009】
また、非特許文献1に開示された装置では、圧迫時間はCRTの測定結果に影響が少ないとして、圧迫時間について何ら制御していない。しかしながら、CRTの測定は、一旦、爪床毛細血管床を白化するまで圧迫することが前提であり、白化しないまま測定を行ってしまうと測定の信頼性・一貫性が損なわれてしまうおそれがある。このため、確実な白化が得られるように圧迫時間を一定時間(例えば7秒程度)保持するのが好ましい。
さらに、CRTの測定では、指先を解放状態から圧迫状態とした後、解放状態に戻すが、CRTの測定を精度良く行うためには、これらの指先の解放状態,圧迫状態及び解放状態の一連の状態の切り替えを迅速に行う必要がある。しかしながら、非特許文献1に開示された技術では、この切り替えが適切に(迅速に)行われたのかを検知できないことから、CRTを精度良く測定できないおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑み創案されたもので、手動操作においても一定した条件下でCRTを測定することができると共に製造コストの抑制や装置サイズの小型化を可能としたCRT測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために、本発明のCRT測定装置は、測定者の手動動作により、被験者の体の一部である被験部を圧迫した後に前記被験部の毛細血管再充填時間を測定するCRT測定装置であって、検出された前記被験部への圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方が所定範囲内に所定時間維持される標準圧迫条件を満たすように、前記手動操作を誘導する誘導部と、前記圧迫を解放した後に、検出された前記被験部の血色に基づいて前記被験部の血色が復帰するまでの復帰時間を計時し、前記復帰時間に基づいて前記毛細血管再充填時間を測定する測定部とを備えたことを特徴としている。
(2)前記被験部の前記血色を検出する第1センサと、前記被験部への前記圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方を検出する第2センサとを備えることが好ましい。
【0012】
(3)前記被験部が指先であることが好ましい。
(4)前記測定者の指に、前記第1センサ及び前記第2センサを装着するための第一装着手段を備えることが好ましい。
(5)前記被験部に、前記第1センサ及び前記第2センサを装着するための第二装着手段を備えることが好ましい。
【0013】
(6)離接可能に連結され、互いに対向する挟持面の相互間に前記指先が挿入される、第一クリップ片及び第二クリップ片を備え、前記第1センサは、前記第一クリップ片の前記挟持面に設けられ、前記第2センサは、前記第一クリップ片又は前記第二クリップ片に設けられ、前記第一クリップ片及び前記第二クリップ片は、前記所定範囲から低い側に外れた圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方により、互いに接近する閉止方向に付勢されることが好ましい。
【0014】
(7)前記第1センサは、前記第一クリップ片の前記挟持面に突設されていることが好ましい。
(8)前記第2センサは、前記第一クリップ片に設けられ、前記第1センサは、前記第2センサを介して前記第一クリップ片の前記挟持面に突設されていることが好ましい。
(9)前記第2センサには、前記圧迫を行う際に前記被験部に向く面に、前記被験部を押圧する圧子が備えられることが好ましい。
【0015】
(10)前記圧子は、前記圧迫を行う際に前記被験部に向く側に開放部が設けられ、前記開放部に、前記第1センサが没入されることが好ましい。
(11)前記誘導部は、前記圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方が前記所定範囲内にある期間は、前記圧迫圧力が前記所定範囲内にある旨の第一アナウンスを行い、前記期間が前記所定時間に到達すると前記手動操作による前記圧迫を終了させるための第二アナウンスを行うことが好ましい。
【0016】
(12)前記被験部の温度を検出する第3センサを設け、前記測定部は温度補償部を備え、前記温度補償部は、前記復帰時間を、前記第3センサの検出情報に基づいて補償して前記毛細血管再充填時間とすることが好ましい。
(13)前記毛細血管再充填時間を報知する報知部を備えることが好ましい。
(14)前記被験者の指先の指紋を検出する指紋検出センサを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のCRT測定装置によれば、被験者の体の一部である被験部(例えば指先)が、測定者の手動操作により圧迫されて圧迫状態とされ、この際、圧迫圧力及び圧迫力のうちの少なくとも一方が所定範囲内に所定時間維持される標準圧迫条件を満たすように、測定者の手動操作が誘導される。
したがって、手動操作においても一定した標準圧迫条件下で測定によるばらつきが少なくCRTを正確に測定することができる。
さらに、測定者の手動操作によって被験部が圧迫されると共に、この測定者の手動操作を、標準圧迫条件が満たされるよう誘導するので、標準圧迫条件を成立させるための複雑な圧迫機構が不要となる。
したがって、CRT測定装置の製造コストの抑制や装置サイズの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態のCRT測定装置の構成を示す模式図であって、(a)は全体構成を示す模式的な斜視図、(b)はセンサシートを被験者の指先に押圧して測定している最中の様子を示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態のセンサシートの縦断面である。
図3】本発明の第一実施形態のCRT測定装置の制御構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第一実施形態のCRT測定装置による測定の制御フローの一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第一実施形態のセンサシートの変形例の構成を示すセンサシートの模式的な縦断面である。
図6】本発明の第一実施形態のCRT測定装置の変形例の全体構成を示す模式的な斜視図である。
図7】本発明の第一実施形態のCRT測定装置の変形例の全体構成を示す模式的な斜視図である。
図8】本発明の第一実施形態のCRT測定装置の変形例の全体構成を示す模式的な斜視図である。
図9】本発明の第二実施形態のセンサシートの構成を示す模式的な縦断面である。
図10】本発明の第三実施形態のCRT測定装置の構成を示す模式図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図11】本発明の第三実施形態のCRT測定装置の制御構成を示すブロック図である。
図12】本発明の第四実施形態のCRT測定装置の要部の構成を示す模式図であって、(a)は被験者の指先を押圧して測定している最中の様子を示す斜視図、(b)は正面図である。
図13】各圧迫条件におけるCRT比の平均値を示す図である。
図14】阻血期と安定期の概念を説明する図である。
図15】阻血時間の度数分布を説明する図である。
図16】本発明と従来例とについて操作者間の測定値の変動を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
以下のCRT測定装置の説明では、測定時において、被験者の指先に向く側を前方、測定者(操作者も測定者と同義。以下同じ。)に向く側を後方とし、前後方向に直交する水平方向を幅方向とする。また、特段の説明のない限り、上下方向についても測定時の姿勢を基準として述べる。CRT測定装置の構成要素についてもこれに準じて各方向を規定する。
また、「A~B」とは、「A以上B以下」であることを意味する。
【0020】
[1.第一実施形態]
本発明の第一実施形態のCRT測定装置1について、図1図4を参照して説明する。
[1-1.CRT測定装置の構成]
CRT測定装置1の構成について図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態のCRT測定装置1は、図1(a),(b)に示すようにウェアラブル型の測定装置として構成される。具体的には、CRT測定装置1は、測定者の指200a(図1(a),(b)に示す例では右手の親指、以下「親指」ともいう)の腹に装着されるセンサシート1aと、測定者の手首201に装着される腕時計に似た表示装置1bとを備える。センサシート1aと表示装置1bとは、それぞれ図示しない通信機を備えて、無線通信又は有線通信により双方向の通信を行う。本実施形態では、センサシート1aと表示装置1bとは無線通信により通信を行う。
CRTを測定する際、測定者は、親指200aに装着したセンサシート1aと人差指200bとで、被験者の指先(被験部)100を挟持して圧迫し、表示装置1bにはこの圧迫を誘導するための表示を行う。
【0021】
表示装置1bは、手首201に巻き付けられるベルト1cと、ベルト1cに取り付けられた表示装置本体1dとを備える。
表示装置本体1dには、装着時にベルト1cの外周側に向くディスプレー4と、内蔵される後述の制御装置10(図3参照)と、これらのディスプレー4,制御装置10のための図示しない電源と、図示しない電源スイッチと、前記通信機とを備える。電源スイッチがオンされると、ディスプレー4は表示を開始し、制御装置10及び通信機は作動を開始する。通信機は、作動を開始すると、電源スイッチがオンされた旨の情報(オン情報)をセンサシート1aの通信機へ送信し、センサシート1aは作動を開始する。センサシート1aの通信機は、前記電源スイッチがオフのときにも、表示装置本体1dの通信機からオン情報を受信できるよう、最低限の電力が供給されている。
なお、電源としては、例えば、電池,太陽電池、給電線からの給電取込部が考えられる。携帯性及び安定性から電池が好ましい。
【0022】
ディスプレー4には、種々の表示装置を使用できるが、本実施形態では白黒の液晶表示装置が使用されている。ディスプレー4には、それぞれ周期的に検出される圧迫圧力Pが検出の都度に更新して表示されると共に、CRTの測定後には測定結果(CRT)が表示される。測定者は、ディスプレー4に表示される圧迫圧力Pを監視しながら、標準圧迫条件を満足するように、被験者の指先100の圧迫を行う。換言すれば、ディスプレー4の表示が、測定者の圧迫操作を、標準圧迫条件を満たすように誘導する。標準圧迫条件及び標準圧迫条件を満たすための誘導手法については詳しく後述する。
【0023】
センサシート1aは、図1(b)及び図2に示すよう、矩形シート状(薄板状)の挟持片1eと、センサ部1gと、粘着ゲル層1f(第一装着手段)と、センサ部1gのための電源と、前記通信機とを備える(電源及び通信機は図示省略)。なお、図2では、便宜上、センサ部1g及び粘着ゲル層1fの厚さ寸法(図2における上下寸法)を実際よりも厚く示している。
電源としては、表示装置1bの電源と同様に、例えば、電池,太陽電池、給電線からの給電取込部が考えられ、携帯性及び安定性から電池が好ましい。
【0024】
センサ部1gは、挟持片1eの下面の前寄りに設けられている。
粘着ゲル層1fは、挟持片1eの上面を、前側の一部領域を残して被覆している。測定者は、例えば指200aを粘着ゲル層1fに押し付けて粘着ゲル層1fを指200aに粘着させることで、センサシート1aを指200aに装着することができる。
なお、粘着ゲル層1fを、挟持片1eの上面を全体的に被覆させてもよい。或いは、粘着ゲル層1fに替えて両面テープ(第一装着手段)を使用してもよい。さらには、粘着ゲル層1fに替えて、センサシート1aを、測定者の指200aに巻き付けるバンド(第一装着手段)に設けるようにしてもよい。
【0025】
センサ部1gは、第1センサとしてのカラーセンサ(血色センサ)11と、第2センサとしての感圧センサ12と、圧子15とを備える。なお、カラーセンサ11及び感圧センサ12はそれぞれ基盤を備えているが、検出端だけを図示し、基盤は図示省略する。なお、挟持片1eや基盤の素材には、被験者の指先100を狭圧する際に多少の変形が許容されるように、また、測定者の指200aや被験者の指先100の形状にフィットするようにフレキシブル(柔軟な)素材を使用してもよい。
感圧センサ12は、測定時に被験者の指先100の爪101に対する圧迫圧力Pを検出するものである。感圧センサ12は、その上面が、挟持片1eの下面に固定され、その下面には圧子15が固定されている。
上記の被検部100への圧迫圧力を検出する感圧センサ12の代わりに、被検部100への圧迫力(単位ニュートン)を検出する圧迫力センサを第2センサとして用いることも可能である。
以下の実施形態において、感圧センサ12を用いているものについては、全て圧迫力センサで代用することができる。
【0026】
圧子15は、爪101を効果的に圧迫するために感圧センサ12に突設されるものであると共に、圧迫圧力Pを感圧センサ12へと伝達するものである。また、圧子15は、その下面(すなわち測定時に爪101に向く面)に開放部15aを備えた箱形状のものであり、この開放部15a(箱形状内方)にカラーセンサ11が没入されている。
圧子15は、カラーセンサ11の周囲を覆っており、カラーセンサ11へ入射する光量を制限する遮光用の部材としても機能する。カラーセンサ11へ入射する光量を制限することで、カラーセンサ11により爪11の色を鮮明に検出することが可能となる。
【0027】
[1-2.制御構成]
制御装置10の構成について図3を参照して説明する。
制御装置10は、通常のコンピュータ(電子制御装置)であり、内部には周知のCPU,ROM,RAM,I/O及びこれらの構成を接続するためのバスラインを備える。ROMには、CRTの測定を実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。
制御装置10は、ディスプレー制御部10aと、測定部10bとを備える。
【0028】
ディスプレー制御部10aは、ディスプレー4の作動(表示)を制御する。ディスプレー制御部10aは、報知機能と誘導機能とを有している。
報知機能は、測定部10bにより測定されたCRTと、感圧センサ12により検出された圧迫圧力Pとをディスプレー4にそれぞれ表示させる機能である。したがって、ディスプレー制御部10aは、ディスプレー4と共に本発明の「毛細血管再充填時間を報知する報知部」を構成する。
【0029】
誘導機能は、測定者の手動操作(以下「圧迫操作」ともいう)により被験者の指先100を圧迫する際に、この圧迫が標準圧迫条件を満たすように、ディスプレー4の表示によって測定者の圧迫操作を誘導する機能である。したがって、ディスプレー制御部10aは、ディスプレー4と共に本発明の「手動操作を、標準圧迫条件を満たすように誘導する誘導部」を構成する。
【0030】
ここで、標準圧迫条件とは、感圧センサ12により検出された圧迫圧力Pが、所定範囲R内で所定時間T(例えば3[秒]以上)維持されることをいう。所定範囲Rは、爪床毛細血管床を白化するのに必要な圧力範囲であり、血流を止めるのに適した基準圧力P0に対してプラス側及びマイナス側にそれぞれ余裕ΔPを見込んで設定される範囲である〔R:(P0-ΔP)~(P0+ΔP)、ΔP≧0(零)〕。圧力P0は、拡張期の血圧に基づいて設定され、例えば17[kPa]である。
上記設定範囲Rを、爪床毛細血管床を白化するのに必要な圧迫力範囲で示すと、3N以上7N以下が適切である。ここでNは圧迫力の単位ニュートンである。
なお、圧力と力は直接比較できないものの、いずれも十分な色の変化を確認しているので、3Nの応力でも、血管には、17kPa以上の圧力がかかっている。
次に、標準圧力条件(圧迫圧力又は圧迫力,時間)について、圧迫力条件は3N以上7N以下が適切であり、所定範囲R内で所定時間維持される時間は3秒以上であることが適切である点について、実験例を用いて説明する。
今回の実験においては、基礎実験装置を用いてCRT特性調査に関する次の実験を実施した。基礎実験装置は電動式の爪床圧迫機構と、圧迫力センサ(第2センサ),爪床色センサ(カラーセンサ;第1センサ)を有しており、圧迫開始から解放後までの圧迫力と爪床色(爪の色)を時系列データとして取得した。23名の被験者に対して、圧迫力を1,3,5,7[N]の4段階に変化させ、圧迫時間は1,2,3,4,5,6[秒]の6段階に変化させて、同じ条件において5回ずつ繰り返してCRT計測を実施した。合計2760(=23x4x6x5)個の圧迫力、爪床色時系列データを取得した。CRTは圧迫時の爪床色を100%、解放後安定時の爪床色を0%としたとき、解放直後の色変化が90%から10%に変化する時間を算出した。またCRT値は健常者でも個人差が大きい。そこで、計測の中央値をその被験者のCRT代表値と設定し、圧迫力や圧迫時間を変化させたときの、CRT代表値に対するCRT値の変動の大きさ(割合)をCRT比として算出した。全被験者のCRT比の平均値を、図13に示す。圧迫力3N以上はCRT比がほぼ1.0に近いのに対し、圧迫力1Nの時だけCRT比が1.27~1.49と上昇していることがわかる。2元配置分散分析の結果、圧迫力に関して統計的有意に変化していることが示された。一方、圧迫時間に関してCRT比は有意な変化がないことが示された。さらに、圧迫力3Nから7Nの範囲においては、CRT比に変化がないことが示され、圧迫力は3N以上で安定してCRTを計測できることが判明した。経験上圧迫力が7Nを超えると被験者は痛みを感じることから、CRT計測の圧迫力条件としては3N以上、7N以下が適切であると結論づけた。
次に、爪床圧迫中の爪床色変化について検討した。基礎実験装置を用いて爪床を一定の加圧力を維持して加圧したところ、爪床色は時間と共に変化しており、前半の急激な色変化と、後半の緩やかな色変化という2段階で構成されていることが計測から判明した。ここでは、前半の急激な色変化を阻血期とし、後半の緩やかな色変化を安定期と定める。概念図を図14に示す。この阻血期と安定期の境界は爪床色の時系列変化において変曲点として算出できる。変曲点は爪床色の2次微分の極小値として算出する。圧迫完了した瞬間から変曲点が現れるまでの時間を阻血時間と定義し、各計測の阻血時間を算出した。圧迫力が3Nから7Nまで、圧迫時間1秒から6秒までの爪床色変化から阻血時間を算出して、度数分布(ヒストグラム)をプロットしたものが図15である。この結果から阻血時間は圧迫力や圧迫時間に関係なく、おおむね1.5秒以下であることが判明した。ただし被験者によっては阻血時間が長い事例も存在しており、最大では2.708秒であった。阻血が急速に進行する阻血期ではなく、安定期に爪床圧迫を解放することが、生理的にも適切であると考えられる。そこで、阻血が十分に完了するための時間として、圧迫時間は3秒以上が好ましいと結論づけた。
ここまでのCRT計測の圧迫条件をまとめると、圧迫力は3N以上7N以下で、圧迫時間は3秒以上が適切である。
なお、上記の実験装置は電動式を用いたものであるが、この装置によって得られた追加データは、「標準圧迫条件」を検討するためのもので、手動操作によって得られるものと本質的に差異はない。
【0031】
ディスプレー制御部10aの誘導機能についてさらに説明する。ディスプレー制御部10aは、感圧センサ12により検出された圧迫圧力Pが所定範囲Rに近づいていること、圧迫圧力Pが所定範囲Rに入っていること、及び、圧迫圧力Pが所定範囲Rに入っている期間が所定時間Tとなり測定者による圧迫を終了するタイミングとなったことを、それぞれ、ディスプレー4の表示により視覚的にアナウンスする。
【0032】
例えば、圧迫圧力Pの表示を、圧迫圧力Pが所定範囲Rから一定範囲内に近づくと、点灯表示から点滅表示に切り替え且つ圧迫圧力Pが所定範囲Rに近づくほど点滅間隔を短くすることにより、圧迫圧力Pが所定範囲Rに近づいていることをアナウンスする。そして、圧迫圧力Pが所定範囲R内にある場合には、圧迫圧力Pを白黒反転させて(圧迫圧力Pを白抜き文字で)点灯表示することで、圧迫圧力Pが所定範囲Rに入っていることをアナウンスする(第一アナウンス)。そして、圧迫圧力Pが所定範囲R内にある期間が所定時間Tに到達した場合には、圧迫圧力Pを白黒反転表示のまま点灯表示から点滅表示に切り替えることで、圧迫を終了するタイミングであることアナウンスする。換言すれば圧迫の終了を要求する(第二アナウンス)。
【0033】
測定部10bは、圧迫を解放するタイミング(圧迫解放タイミング)であることがディスプレー4の表示によりアナウンスされた後、CRTの測定を行う。具体的には、測定者が圧迫を止めたことにより圧迫圧力Pが開放圧力Pr以下になってから、カラーセンサ11の検出結果に基づいて被験者の爪101が血色(赤み)を帯びた通常状態に復帰したと判定されるまでの時間を、復帰時間tとして測定してディスプレー制御部10aへ出力する。
【0034】
なお、圧迫の開放は、カラーセンサ11と爪101との距離が、カラーセンサ11により爪101の血色を検出し得る距離(以下「検出可能距離」ともいう)を越えてしまわないように行われるのが望ましく、例えば、測定者の人差指200bを被験者の指先100の腹から軽く離すことにより行うことが考えられる。これにより、カラーセンサ11と爪101との相互間距離が検出可能距離を越えてしまわないように、被験者の指先100の位置を測定者の人差指200bで規制することが可能となる。
【0035】
また、測定者の親指200aと人差指200bとに、相互に接近する方向に付勢する付勢部材、又は、相互間距離が検出可能距離よりも離れないように規制する規制部材を、センサシート1aと一体又は別体に設けてもよい。これにより、圧迫の開放後に、測定者の親指200aに装着されるカラーセンサ11と、測定者の人差指200bにより支持される被験者の指100の爪101との距離が、検出可能距離よりも離れることを抑制できる。
例えば、センサシート1aもしくはセンサ部1gに付された粘着性材料を規制部材として、圧迫の開放後も、センサ部1gと爪101との接触を維持させてもよい。
【0036】
もしくは、カラーセンサ11と爪101との相互間距離が検出可能距離よりも離れてしまった場合に、エラー通知したり再度の測定を促したりする報知機能を表示装置に持たせてもよい。
【0037】
また、爪101の血色(赤み)の通常状態か否かを判定するための閾値は、予め設定された一定の値としてもよい。あるいは、測定者による圧迫前の被験者の指先100の血色をカラーセンサ11により検出し、この検出結果に基づいて測定毎にかかる閾値を設定するようにしてもよい。
【0038】
[1-3.制御フロー]
以下、図4のフローチャートを参照して、本発明の第一実施形態としてのCRT測定装置1の制御フローの一例を説明する。このフローチャートは電源スイッチがオンされるとスタートされ、予め設定された所定の演算周期で繰り返し実施される。
先ず、ステップS10において、感圧センサ12により検出された圧迫圧力Pが所定範囲R内にあるか否かが判定される。圧迫圧力Pが所定範囲R外であれば、ステップS10に戻る。圧迫圧力Pが所定範囲R内であれば、ステップS20で圧迫圧力Pが所定範囲Rに入っている期間(圧迫時間)の計時が開始されると共にステップS30で圧迫圧力Pが所定範囲Rに入っている旨のアナウンスが、圧迫圧力Pの表示を白黒反転表示且つ点灯表示とすることにより行われる。
【0039】
次いで、ステップS40に進み、再び圧迫圧力Pが所定範囲R内にあるか否かが判定される。圧迫圧力Pが所定範囲R外であれば、ステップS130に進み、圧迫時間がリセットされリターンする。圧迫圧力Pが所定範囲R内であれば、ステップS50に進み、圧迫時間が所定時間Tになったか否かが判定される。圧迫時間が所定時間Tに到達していなければステップS30に戻る。圧迫時間が所定時間Tに到達していれば標準圧迫条件が満たされたとして、ステップS60に進み、圧迫圧力Pの白黒反転表示を点灯表示から点滅表示に切り替えることで、測定者に圧迫操作の終了を要求するためのアナウンスを行う。
【0040】
次いで、ステップS70に進み、測定者による圧迫操作が終了したか否かが、圧迫圧力Pが開放圧力Prよりも低いか否かに応じて判定される。圧迫圧力Pが開放圧力Prよりも高ければ圧迫操作は終了していないとしてステップS60に戻り、圧迫操作の終了を要求するためのアナウンスが引き続き行われる。圧迫圧力Pが開放圧力Pr以下になれば、圧迫操作は終了したとしてステップS80に進みCRTの計測が開始される。すなわち、爪101の血色が復帰するまでの復帰時間tの計時が開始される。
【0041】
なお、ステップS60で圧迫終了タイミングである旨のアナウンスが開始された後、圧迫圧力Pが開放圧力Pr以下にならないとステップS60,S70をループすることになる。このループが一定時間以上続いた場合には、圧迫時間が、許容される以上に所定時間Tを超えてしまい、標準圧迫条件から外れてしまったとして、強制的にこのフローを抜け出しディスプレー4に測定エラーが表示される。
【0042】
ステップS80で、血色が復帰するまでの復帰時間tの計時が開始された後、ステップS90に進み、カラーセンサ11の検出結果に応じて被験者の爪101の血色が通常の血色に復帰したか否かが判定される。爪101の血色が復帰していないと判定されれば、ステップS90に戻る。爪101の血色が復帰したと判定されれば、ステップS100に進み、復帰時間tの計時が完了し、ステップ110へ進み、この復帰時間t(CRT)がディスプレー4に表示され、測定が終了して、リターンする。
なお、リターン後、ステップS10において、感圧センサ12により検出された圧迫圧力Pが、所定範囲Rよりも低い値で設定された所定圧力を越えると、新たな測定が開始されたとして、CRTの表示は消去される。
【0043】
[1-4.作用・効果]
(1)本発明の第一実施形態としてのCRT測定装置1によれば、被験者の指先100が、測定者の手動操作により圧迫される際、感圧センサ12により検出された圧迫圧力Pが所定範囲R内に所定時間T維持される標準圧迫条件を満たすよう、測定者の手動操作が、ディスプレー4の表示により誘導される。したがって、手動操作においても測定者によるばらつきが少なく一定した標準圧迫条件下でCRTを正確に測定することができる。
上記のように、本実施形態によれば、測定者によるばらつきが少なく、正確にCRTを測定できるが、以下測定者間の測定結果について、本発明によるもの(事前に標準圧迫条件を満たしてからCRTを測定するもの)と、従来例(事前に標準圧迫条件を満たすという準備をすることなくCRTを測定するもの)とを比較して示すと図16のようになる。
なお、図16の比較結果は被験者6名で、操作者間の測定値の変動量を標準偏差で評価したものである。この図16から、本発明によるものは従来例に比べ圧迫力の測定者(操作者)間変動は1/5以下になり、圧迫時間の測定者(操作者)変動は1/8以下となり、更にCRT値の測定者(操作者)変動は約10%改善することがわかった。
また、このCRTが一定時間(例えば2秒~3秒)以上であれば、被験者は、脱水状態や低体温状態やショック状態など、緊急治療を必要とする状態にあると診断されるが、一定した標準圧迫条件下でCRTを測定することができるので、このような診断の信頼性を向上することができる。
【0044】
さらに、測定者の手動操作によって被験者の指先100が圧迫されると共に、CRT測定装置1が、標準圧迫条件が満たされるように測定者の手動操作を誘導するので、標準圧迫条件を成立させるための複雑な圧迫機構が不要となる。したがって、CRT測定装置1の製造コストの抑制や装置サイズの小型化が可能となる。
また、上記実施例では、被験者の体の一部である被験部として指先100(爪101)を圧迫した。しかし、CRT測定装置1によれば、測定者は自分の指200aに装着したセンサシート1aを被験部に押しつけるだけでCRT測定に必要な被験部の圧迫を行えるので、被験部を指先100に限定せずに(例えば胸を被験部として)CRT測定を行うことができる。
【0045】
(2)カラーセンサ11及び感圧センサ12を備えたセンサシート1aが測定者の指200aに装着されるので、測定者の指の感覚能を拡張できる(指の感覚拡張を実現できる)。つまり、測定者は自分の指200a,200bどうしで被験者の指100を直接圧迫するのと略同じようにその圧迫圧力Pを感覚的に把握することができる。したがって、測定者は、圧迫圧力Pの調整を直感的に容易に行うことができる。
(3)感圧センサ12には、圧迫(測定)を行う際に、被験者の指先100に向く面に、この指先100を押圧する圧子15が備えられているので、この圧子15により被験者の指先100を効果的に圧迫することができると共に、このときの圧迫圧力Pを感圧センサ12に伝達させて精度良く検出することができる。
【0046】
(4)感圧センサ12に設けられた圧子15の開放部15aにカラーセンサ11が没入されているので、圧子15による被験者の指先100の圧迫を阻害することなくカラーセンサ11による測定を行える。加えて、感圧センサ12,圧子15及びカラーセンサ11を積層状態として無駄のない効率的な配置とすることができる。
【0047】
(5)感圧センサ12により検出された圧迫圧力Pが所定範囲R内にあるときには、圧迫圧力Pが所定範囲R内にある旨のアナウンスが行われるので、測定者にこの圧迫状態を保持するよう注意を喚起できる。また、圧迫圧力Pが所定範囲内Rにある時間が所定時間継続すると、手動による圧迫を終了させるためのアナウンスが行われるので、圧迫を速やかに終了するよう測定者に注意を喚起できる。したがって、測定者の手動操作を、一層効果的に標準圧迫条件を満たすように誘導することができる。
(6)ディスプレー4及びディスプレー制御部10aを備えてCRTを報知することができるので、測定者がCRTを速やかに確認することができ、被験者に対して適切な対応を速やかに行うことができる。
【0048】
[1-5.その他]
本実施形態の変形例について、図5図8を参照して説明する。なお、前記実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
(1)図1(a),(b)に示すCRT測定装置1において、センサシート1aに替えて、図5に示すセンサシート1a′に構成してもよい。
このセンサシート1a′は、挟持片1eと、センサ部1g′と、粘着ゲル層1fとを備える。なお、図5では、便宜上、センサ部1g′及び粘着ゲル層1fの厚さ寸法(図5における上下寸法)を実際よりも厚く示している。
【0049】
センサ部1g′は、挟持片1eの下面に、前寄りに設けられている。センサ部1g′は、カラーセンサ11と、感圧センサ12と、圧子15′と、遮光用の筒体16と、センサ11,12のための電源(図示略)と、表示装置1b(図1(a)参照)と双方向の通信を行う通信機(図示略)とを備える。
感圧センサ12は、その一方の面が、挟持片1eの一方の面に固定され、その他方の面には圧子15′が固定されている。
【0050】
圧子15′は、圧子15と同様に、爪101を効果的に圧迫してその圧迫圧力Pを感圧センサ12へと伝達するためのものであるが、その形状が、圧子15と異なる。具体的には、圧子15′は、背の低い柱状体であり先端が半球状に形成され、半球状の先端を下方に向けた姿勢で基端(上端)を感圧センサ12に取り付けられている。
カラーセンサ11は、挟持片1eに固定され、感圧センサ12の後方に隣設されている。
【0051】
筒体16は、カラーセンサ11により爪11の色を鮮明に検出できるよう、カラーセンサ11へ入射する光量を制限するために設けられた遮光用の部材である。
筒体16は、上下が開口した円筒形状のものであり、開口を上下に向けた姿勢で挟持片1eに固定される。筒体16の内方には、センサ11,12及び圧子15′が配置されている。センサ11,12は筒体16の内方に没入され、圧子15′は、爪101を圧迫できるようにその先端が筒体16から下方に突出している。
なお、カラーセンサ11の仕様によっては筒体16を省略することもできる。
この他の構成は前記実施形態と同様なので説明を省略する。
【0052】
(2)前記実施形態では、センサシート1aと表示装置1bとが別々に測定者に装着される構成であったが、図6図8に示すようにセンサシート1aと表示装置1bとを一体に装着するようにしてもよい。
図6に示す例では、CRT測定装置1Aは、センサシート1aと、表示装置本体1dと、指サック1h(第一装着手段)とを備えて構成される。センサシート1aと表示装置本体1dとは、指サック1hの外側の互いに反対側の面に固定される。測定者は、センサシート1aが指200aの腹側に、表示装置本体1dが指200aの背側に位置するように、指サック1hを指200aに装着する。
この他の構成は前記実施形態と同様なので説明を省略する。
【0053】
図7に示す例では、CRT測定装置1Bは、センサシート1aと、表示装置本体1dと、手袋1i(第一装着手段)とを備えて構成される。センサシート1aと表示装置本体1dとは、手袋1iの外側の互いに反対側の面に固定される。測定者は、センサシート1aが掌側に、表示装置本体1dが手の甲側に位置するように、手袋1iを手にはめる。
この他の構成は前記実施形態と同様なので説明を省略する。
【0054】
図8に示すCRT測定装置1Cは、前記実施形態におけるセンサシート1aに表示装置本体1dを配置したような構成である。具体的には、CRT測定装置1Cは、挟持片1e′と、センサ部1g(図2参照)と、粘着ゲル層1fと、ディスプレー4とを備える。図8では、挟持片1e′に隠れているが、センサ部1gは、挟持片1e′に対し粘着ゲル層1fとは反対側の面(下面)に固定されている。挟持片1e′は、前記実施形態の挟持片1eに較べて、粘着ゲル層1fよりも前方の領域が広く設定されており、この領域に、表示装置本体1dがディスプレー4を上方に向けた姿勢で一体に設けられている。制御装置10(図3参照)と、ディスプレー4と制御装置10のための図示しない電源と、図示しない電源スイッチとは挟持片1e′内に内蔵されている。
この他の構成は前記実施形態と同様なので説明を省略する。
【0055】
図6図8に示すCRT測定装置1A~1Cにおいて、センサ部1gに替えてセンサ部1g′(図5参照)を使用してもよい。
【0056】
[2.第二実施形態]
本発明の第二実施形態のCRT測定装置1Dについて、図9を参照して説明する。なお、第一実施形態(変形例を含む)と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
[2-1.CRT測定装置の構成]
CRT測定装置1Dは、それぞれ被験者の指100に装着される一対の挟持片1e-1,1e-2と、挟持片1e-1に設けられるセンサ部1gと、測定者の手首に装着される表示装置1b(図1(a)参照)とを備える。
挟持片1e-1,1e-2は、それぞれ、矩形シート状(薄板状)であり、相互に対向する対向面の前側が粘着ゲル層1f(第二装着手段)により被覆されている。また、挟持片1e-1の前記対向面には、粘着ゲル層1fよりも後方にセンサ部1gが設けられている。
【0058】
挟持片1e-1は、さらに、センサ部1gのための電源と、表示装置1bとの双方向の通信を行える通信機とを備える(電源及び通信機は図示省略)。センサ部1gの検出結果はこの通信機を介して表示装置1bの制御装置100(図3参照)へと送信される。また、表示装置1bの電源がオンされると、この旨の信号が通信機を介してセンサ部1gへと出力され、センサ部1gが検出を開始する。
なお、挟持片1e-1,1e-2の素材には、被験者の指先100の狭圧時に多少の変形が許容されるよう、また、測定者の指200aや被験者の指先100の形状にフィットするよう、フレキシブル素材を使用してもよい。
この他の構成は前記実施形態と同様なので説明を省略する。
【0059】
[2-2.作用・効果]
測定する際には、挟持片1e-1を、センサ部1gが被験者の爪101の直ぐ上方に位置するように、その粘着ゲル層1fを被験者の指の背側に粘着させる。同様に、挟持片1e-2を、その後端側が指先100の腹の直ぐ下方に位置するように、その粘着ゲル層1fを被験者の指の腹側に粘着させる。すなわち、センサ部1gと挟持片1e-2の後端側とが指先100を挟んで対向するように、挟持片1e-1,1e-2を被験者の指に装着する。これにより図9に示す状態となる。この状態から、測定者は、親指200aと人差指200bとで挟持片1e-1,1e-2の後端側を黒塗りの矢印で示すように互いに近づくように力を掛ける。これにより、挟持片1e-1,1e-2の後端側に挟まれて被験者の指先10が圧迫され、CRTの測定を行うことが可能となる。
そして、圧迫終了後も、挟持片1e-1は、その粘着ゲル層1fの粘着により被験者の指先10への装着状態が維持されるので、爪101の直ぐ上方に位置するセンサ部1gによりCRTの測定を行うことができる。
【0060】
[2-3.その他]
(1)CRT測定装置1Dにおいて、センサ部1gに替えてセンサ部1g′(図5参照)を使用してもよい。
(2)CRT測定装置1Dにおいて、下方の挟持片1e-2を省略してもよい。この場合、測定者は、挟持片1e-1と人差指200bとで被験者の指先10を挟持して圧迫する。
【0061】
(3)上記実施例では、被験者の体の一部である被験部として指先100(爪101)に挟持片1e-1,1e-2を装着し、この挟持片1e-1,1e-2により指先100を圧迫したが、被験部は指先100に限定されない。例えば、被験者の胸を被験部としてもよい。具体的には、被験者の胸に、挟持片1e-1と同様の構成の(挟持片1e-1に対応する)センサシートを粘着させて装着し、測定者がこのセンサシートを被験者の胸に押圧するようにしてもよい。このように被験部が被験者の胸である場合、挟持片1e-2に対応するものは省略できる。
【0062】
[3.第三実施形態]
[3-1.CRT測定装置の構成]
本発明の第三実施形態のCRT測定装置1Eについて、図10(a),(b)及び図11を参照して説明する。なお、前記実施形態(変形例を含む)と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
CRT測定装置1Eの構成について図10(a),(b)を参照して説明する。
CRT測定装置1Eは、クリップ片2(第一クリップ片)と、クリップ片3(第二クリップ片)と、ディスプレー4′と、制御装置10と、各種センサ11~14と、これらのディスプレー4′,制御装置10及び各種センサ11~14のための図示しない電源と、図示しない電源スイッチとを備える。制御装置10はCRT測定装置1Eに内蔵されており、本実施形態ではクリップ片2に内蔵されている。電源スイッチがオンされると、ディスプレー4′は表示を開始し、制御装置10は作動を開始する。
【0064】
クリップ片2,3は、回動可能に連結され、測定者の手動操作(圧迫操作)により、互いに対向する挟持面2a,3aの相互間において被験者の指先100を挟み込んで圧迫する。
クリップ片2は、正面視で略矩形の本体部2bと、本体部2bの前後方向中央よりも僅か後方の幅方向両縁部から垂設される一対の脚部2cとを備える。同様に、クリップ片3は、正面視で略矩形の本体部3bと、本体部3bの前後方向中央よりも僅か後方の幅方向両縁部から垂設される一対の脚部3cとを備える。
【0065】
クリップ片2,3は、脚部2cと脚部3cとを対向させるようにして配置される。また、クリップ片2は、クリップ片3よりも僅かに幅狭であり、各脚部2cは、各脚部3cの内側(幅方向中心線CL側)に近接して配置される。脚部2c,3cは幅方向に延在する軸部材2dにそれぞれ挿通されており、これによりクリップ片2,3は軸部材2d廻りを上述したように回動可能に連結されている。
なお、挟持面2a,3aとは、クリップ片2,3の相互に対向する面の内、脚部2c,3cを境に、指先100が挟持される側の面を特にいい、挟持面2a,3a側を前側、その反対側を後側としている。
【0066】
また、クリップ片2,3は、それらの相互間に図示しない弾性部材(例えばバネ等)が設けられて、前側(挟持面2a,3a側)が閉止方向に付勢されている。この弾性部材による付勢力は、爪床毛細血管床を白化するのに必要な圧力範囲(所定範囲R)よりも低圧力で指先を圧迫するように設定されている。具体的には、かかる付勢力は、測定者の圧迫操作の終了後も、クリップ片2,3が、指先100から離れない程度の圧力Pa(以下「付勢圧力Pa」という)で指先100を軽く押さえるような強さに設定されている。これによりクリップ片2,3が指先100を離してしまうことを防止して、クリップ片2,3に取り付けられた各種センサ11~14により指先100に対して測定が行えるようにしている。
【0067】
CRT測定装置1Eは、クリップ片2を上方に向け、クリップ片3に下方に向けた姿勢(以下「測定姿勢」という)での使用を想定している。測定者に目に付き易いことから、このような測定姿勢においてクリップ片2の上面となる外側面2eの前側には、圧迫操作の際に測定者が指を乗せる位置であることを示す「Push」の表示が施されている。
なお、クリップ片2,3は、被験者の指先100の狭圧時に多少の変形が許容されるよう、また、被験者の指先100の形状にフィットするようフレキシブル素材を使用してもよい。
【0068】
各センサ11~14は、具体的には、カラーセンサ11,感圧センサ12,動脈血酸素飽和度(以下「SpO」と呼ぶ)を検出するSpOセンサ13(第4センサ)及び指先100の温度BTを計測する温度センサ(第3センサ)14である。なお、SpOは、CRTの測定に直接関連するものではないが、CRTと同様に被験者の容態を診断する上で有用なパラメータであるので、本実施形態ではSpOを測定するようにしている。
【0069】
CRT測定装置1Eは、クリップ片2を爪101に向け、クリップ片3を指先100の腹に向けて、指先100に装着されることを想定している。爪101の血色を検出するカラーセンサ11は、爪101と密着するのが好ましいため、爪101と密着しやすいようにクリップ片2の挟持面2aに、クリップ片3に向かって突出して設けられている。また、本実施形態では、感圧センサ12は、クリップ片2の挟持面2a側に埋設され、カラーセンサ11の上面(爪101との接触面とは反対側の面)に重合されている。換言すれば、カラーセンサ11は、感圧センサ12を介してクリップ片2の挟持面2aに取り付けられている。このような構成により、クリップ片2,3により爪101を圧迫した際には、爪101に対する圧迫圧力Pがカラーセンサ11を介して感圧センサ12に伝達され、感圧センサ12により圧迫圧力Pを検出することができる。
【0070】
SpOセンサ13と温度センサ14とは指先100の腹に対面しやすいようにクリップ片3の挟持面3aの前寄りに配置されている。SpOセンサ13と温度センサ14とは、クリップ片2,3の挟持面2a,3aに面一又は略面一に設置されている。
なお、各検出値を検出できれば、各センサ11~14は、図10(b)に示す配置に限定されず、例えば、カラーセンサ11及び感圧センサ12を、それぞれ、挟持面2aに面一に又は挟持面2aからクリップ片3に向けて突出してクリップ片2に設けてもよい。
【0071】
ディスプレー4′は、測定者が見やすいように、測定姿勢において上面に向くクリップ片2の外側面2eの後側に設けられている。
ディスプレー4′は、指先100の温度BTを表示する点で前記各実施形態のディスプレー4と異なる。具体的には、ディスプレー4′には、それぞれ周期的に検出される圧迫圧力Pや指先100の温度BTが検出の都度に更新して表示されると共に、CRTの測定後には測定結果(CRT)が表示される。測定者は、前記各実施形態と同様に、ディスプレー4′に表示される圧迫圧力Pを監視しながら、標準圧迫条件を満足するように、被験者の指先100の圧迫を行う。
【0072】
[3-2.制御構成]
制御装置10′の構成について図11を参照して説明する。
制御装置10′は、ディスプレー制御部10aと、測定部10b′とを備える。測定部10b′は、温度補償部10cを備えている点で前記実施形態の測定部10bと異なり、その他の点は測定部10bと同じである。
【0073】
温度補償部10cは、測定部10b′の機能により計測された復帰時間tを、温度センサ14により検出した被験者の指先100の温度BTが低くなるほど長くなるように補償して、CRTとしてディスプレー制御部10aへ出力する。
この他の構成は、前記実施形態の制御装置10と同様なので説明を省略する。
なお、制御装置10′は、制御装置10と同様に圧迫圧力Pが開放圧力Pr以下になったことで、測定者が圧迫を止めたと判定する。開放圧力Prは、例えばクリップ片2,3に作用する付勢圧力Paに余裕ΔPaを加えた値により設定される(Pr=Pa+ΔPa,ΔPa≧0)。
【0074】
[3-3.作用・効果]
(1)カラーセンサ11は、クリップ片2の挟持面2aに、クリップ片3に向けて突設されるので、クリップ片2,3により指先100を挟持したときにカラーセンサ11が爪101に確実に接触して爪101の血色を精度良く検出することができる。
(2)カラーセンサ11は、感圧センサ12を介してクリップ片2に設けられるので、カラーセンサ11と感圧センサ12との両方を直接に挟持面2aに設ける場合に較べて、設置スペースが少なくて済みセンサ11,12の配置の自由度を高くすることができる。
【0075】
(3)測定部10bが温度補償部10cを備え、この温度補償部10cが、温度センサ14により検出された被験者の体温に基づきCRTを温度補償するので、このCRTに基づいてより正確に被験者の容態を診断できる。
(4)クリップ片2,3が閉止方向に付勢されているので、測定者が圧迫操作を終了しても、クリップ片2,3による指先100の挟持が保持される。したがって、圧迫操作終了後、測定者がCRT装置1に力を掛けなくても、指先100に近接した各種センサ1~4により検出が正常に行うことができ、ひいてはCRTの測定を正常に行うことができる。
【0076】
[4.第四実施形態]
[4-1.CRT測定装置の構成]
本発明の第四実施形態のCRT測定装置1Fについて、図12(a),(b)を参照して説明する。なお、前記実施形態(変形例を含む)と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
CRT測定装置1Fは、センサシート1jと、センサシート1jを摺動可能に保持する保持体1kと、保持体1kから前方に向けて突設され測定者の指先100が載置される載置プレート1mと、測定者の手首201に装着される表示装置1b(図1(a)参照)とを備える。
センサシート1jは、保持体1kの後述のベース部1k-1に対向する面(下面)にセンサ部1g(図2参照)を備えている。また、センサシート1jは、水平姿勢で保持体1kに取り付けられ、幅方向両端にはそれぞれ幅方向に向く摺動部1j-1が突設されている。なお、センサ部1gに替えてセンサ部1g′(図5参照)をセンサシート1jに設けてもよい。
【0077】
保持体1kは、幅方向に延在するベース部1k-1と、ベース部1k-1の上面の幅方向両縁からそれぞれ上方に延在する柱部1k-2とを備える。両柱部1k-2の相互対向面には、ベース部1k-1との接続部から上面まで抜ける凹所1k-3が形成されている。これらの凹所1k-3に、上方からセンサシート1jの摺動部1j-1を挿入することで、センサシート1jが両柱部1k-2により摺動可能に保持される。
載置プレート1mは、両柱部1k-2の相互間においてベース部1k-1の前面に取り付けられている。また、載置プレート1mは、その上面及び下面がベース部1k-1の上面及び下面とそれぞれ面一又は略面一となっている。
この他の構成は前記第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0078】
なお、表示装置本体1d(図1(a)参照)を保持体1kに一体に設けてもよい。
また、センサシート1jの素材には、被験者の指先100の狭圧時に変形が許容されるよう、また、測定者の指200aや被験者の指先100の形状にフィットするようフレキシブル素材を使用してもよい。
【0079】
[4-2.作用・効果]
測定する際には、センサシート1jが上方に引き上げられ、センサシート1jとベース部1k-1との間に被験者の指先100が挿入される。次いで、測定者は指200bによりセンサシート1jを押し下げて、センサシート1jのセンサ部1gで被験者の指先100を押圧する。これにより、センサ部1gと保持体1kのベース部1k-1との間で指先100の爪101を圧迫して測定が開始される。
その後、表示装置1bにより測定者の圧迫操作が誘導されるので前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
[5.その他]
(1)上記各実施形態では、ディスプレー4の表示を変更することで、標準圧迫条件が満たされるよう視覚的手法により誘導を行ったが、誘導の態様は何ら限定されず、視覚的手法による誘導に替えて、聴覚的手法(例えばブザーや音声)による誘導又は触覚的手法(例えば振動)による誘導を行ってもよいし、視覚的手法による誘導,聴覚的手法による誘導及び触覚的手法による誘導の内の二つ以上を組み合わせてもよい。
聴覚的手法により誘導を行う場合は、例えば音声出力装置と音声出力装置を制御する制御部とにより、本発明の誘導部が構成され、触覚的手法により誘導を行う場合は、例えば振動装置と振動装置を制御する制御部とにより、本発明の誘導部が構成される。
【0081】
(2)CRT測定装置1,1A~1Fに無線送信機を設けて、この無線送信機により、測定したCRTを救急センターなど外部に送信するようにしてもよい。この場合、CRTと共に個人識別情報を送信するのが好ましい。個人識別情報としては、例えば、CRT測定装置1Cのクリップ片3の挟持面3aのような指先100の腹と対面する箇所にイメージセンサ(指紋検出センサ)を設け、このイメージセンサにより、個人特定情報として指紋を検出することが考えられる。このような構成によれば、CRTの測定と指紋の検出とを同時に行える。
【0082】
(3)CRT測定装置1,1A~1Fに、CRTの測定回数を自動でカウントするカウンタを設けてもよい。CRTの測定回数は、原則、被験者数と一致するので、大規模災害の時には、被験者となる被災者の人数を把握するのに役立つ。この場合も、CRT測定装置1に無線送信機を設けて、この無線送信機により、この測定回数を救急センターなど外部に送信できるようにするのが好ましい。
【0083】
(4)挟持片1e-2(図9参照),CRT測定装置1Eのクリップ片3(図10(a),(b)参照)及び保持体1kのベース部1k-1の上面に、指先100の腹に対面するようにスタンプを設けてもよい。これにより、測定の際に被験者の指先100に印が付されるので、大規模災害等の時には、測定が済んだ被災者と測定が済んでいない被災者との区別が容易になる。
【0084】
(5)上記実施形態のCRT測定装置において、SpOセンサ13を設けたものについては、SpOセンサ13を省略してもよく、SpOセンサ13を設けていないものについてはSpOセンサ13を設けてもよい。
また、上記実施形態のCRT測定装置において、温度センサ14及び温度補償部10cを設けてCRTを温度補償したものについては、温度センサ14及び温度補償部10cを省略してもよく、温度センサ14及び温度補償部10cを設けていないものについては温度センサ14及び温度補償部10cを設けてもよい。
【0085】
第一実施形態においてSpOセンサ13や温度センサ14を使用する場合には、センサシート1aとは別に、被験者の指先100の腹に接触するように、測定者の人差指200bにSpOセンサ13や温度センサ14に装着させるような構成が考えられる。
【0086】
(6)上記各実施形態では、血色センサとしてカラーセンサを使用したが、血色センサはカラーセンサに限定されず、光センサのように明度を検出するセンサを使用してもよい。明度を検出する場合、明度が閾値以下であれば、指先100の血色が戻ったと判定できる。
【0087】
(7)CRT測定装置に測定したCRTを記憶する記憶装置を設けてもよい。この場合も、CRTと共に、イメージセンサにより検出した指紋情報を個人識別情報として記憶するのが好ましい。
【0088】
(8)上記各実施形態では、CRT測定装置はディスプレー4にCRTを表示したが、CRTに替えて又はCRTに加えて、緊急治療が必要か否かの判定結果をディスプレー4に表示させる又は音声により報知するようにしてもよい。具体的には、緊急治療が必要か否かを判定する判定部を制御装置10に設け、判定部により、CRTが一定時間(例えば2秒~3秒)以上の場合には緊急治療が必要と判定する構成が考えられる。
【0089】
この場合、判定部の判定に応じて異なるスタンプにより被験者の指先に印を付すようにしてもよい。具体的には、例えば、クリップ片3の挟持面3aのようなCRT測定装置の被験者の指先の腹に対面する部位(以下「対面部位」という)に、緊急治療が必要であることを示す第一スタンプと、緊急治療が不要であることを示す第二スタンプとを、前記対面部位から出没可能に設ける。そして、判定部が緊急治療を必要と判定した場合には、第一スタンプを前記対面部位よりも突出させ、第二スタンプを前記対面部位よりも没入させ、判定部が緊急治療を不要と判定した場合には、逆に、第一スタンプを前記対面部位よりも没入させ、第二スタンプを前記対面部位よりも突出させるように構成する。
【0090】
(9)上記第三実施形態では、第一クリップ片であるクリップ片2と、第二クリップ片であるクリップ片3とを別体として回動可能に連結したが、第一クリップ片と第二クリップ片とを一体にしてU字状に形成してもよい。具体的には、例えば、先端の相互間の距離が通常の指先の厚さよりも短くなるように第一クリップ片と第二クリップ片とを弾性体により一体成型する。第一クリップ片と第二クリップ片との相互間に指先100を挿入すると、係る相互間の距離が通常の指先の厚さよりも短いので第一クリップ片と第二クリップ片とが軽く指先100を挟持するようになる。また、第一クリップ片と第二クリップ片とが弾性体なので、測定者がこれらのクリップ片を介して被験の指先100を容易に圧迫することができる。
【0091】
(10)上記第二実施形態~第四実施形態では、感圧センサ12を、カラーセンサ11と同じく挟持片1e-1,クリップ片2及びシートセンサ1jに設けたが、挟持片1e-2,クリップ片3及び保持体1kのベース部1k-1に設けてもよい。
(11)上記第一実施形態~第四実施形態では、CRT測定装置にカラーセンサ11及び感圧センサ12を備えた構成を例示したが、本発明のCRT測定装置には、カラーセンサ11及び感圧センサ12は必須ではない。例えば、第一実施形態(図1参照)において、センサシート1aに別製品を使用してもよく、この場合、表示装置1bが、本発明のCRT測定装置に相当することとなる。
【符号の説明】
【0092】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F CRT測定装置
1a,1a′,1j センサシート
1f 粘着ゲル層(第一装着手段,第二装着手段)
1g,1g′ センサ部
1h 指サック(第一装着手段)
1i 袋1i(第一装着手段)
2 クリップ片(第一クリップ片)
2a クリップ片2の挟持面
3 クリップ片(第二クリップ片)
3a クリップ片3の挟持面
4,4′ ディスプレー
10,10′ 制御装置
10a ディスプレー制御部(アナウンス制御部,報知制御部)
10b 測定部
10c 温度補償部
11 カラーセンサ(血色センサ:第1センサ)
12 感圧センサ(第2センサ)
14 温度センサ(第3センサ)
15,15′ 圧子
15a 圧子15の解放部
16 遮光用の筒体
100 指先(被験部)
101 爪
200a 測定者の親指
BT 指先100の温度
P 圧迫圧力
P0 基準圧力
Pa 付勢圧力
R 所定範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16