(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】気液溶解装置
(51)【国際特許分類】
B01F 21/00 20220101AFI20220704BHJP
B01F 23/232 20220101ALI20220704BHJP
B01F 25/312 20220101ALI20220704BHJP
【FI】
B01F21/00
B01F23/232
B01F25/312
(21)【出願番号】P 2020083376
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】江頭 竜
(72)【発明者】
【氏名】平松 義彦
(72)【発明者】
【氏名】村山 智紀
(72)【発明者】
【氏名】大澤 功平
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018938(JP,A)
【文献】実開昭54-129078(JP,U)
【文献】特開2009-082903(JP,A)
【文献】特開2011-240267(JP,A)
【文献】特開2005-000878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に気体を溶解させる溶解タンクと、
液体供給口から供給される液体を前記溶解タンクへ供給する液体供給路と、
前記液体供給路に設けられたベンチュリ機構と、
前記溶解タンクから気体溶解液を排出する気液排出路と、
前記ベンチュリ機構の絞り部または前記液体供給路の途中のいずれかを選択して気体を供給可能な気体供給路と、
前記気液排出路に設けられ、前記気体溶解液の排出速度を調節するスピードコントローラと
を含む気液溶解装置。
【請求項2】
前記液体供給口と前記気液排出路とを接続する分岐路であり、開閉弁を有する分岐路を含む請求項1記載の気液溶解装置。
【請求項3】
前記溶解タンクは、エアーストーンを通じて前記気液排出路へ前記気体溶解液を排出するものである請求項1または2に記載の気液溶解装置。
【請求項4】
前記気体供給路へ空気を供給するコンプレッサを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の気液溶解装置。
【請求項5】
前記コンプレッサへ酸素ガスを供給する酸素ガス供給路であり、流量調節弁を備えた酸素ガス供給路を含む請求項
4記載の気液溶解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中にマイクロバブルを含むマイクロバブル液または液中に飽和率100%以上の高濃度溶存気体を含む高濃度溶存気体液のいずれかを選択的に生成する気液溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水にマイクロバブルを発生させる装置として、例えば特許文献1には、吸込管からポンプにより吸い上げられた水が、自吸ケースおよびこの自吸ケースに接続された送水管を経て加圧タンクに送られ、加圧タンクから吐出管により排水されるポンプにおいて、吸込管および送水管のそれぞれに水中にマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生ノズルを設け、送水管に設けられたマイクロバブル発生ノズルには、マイクロバブルを溶解する加圧タンク内に通じる通気管が接続されているマイクロバブル発生装置が開示されている。
【0003】
このマイクロバブル発生装置では、圧力調整弁を開けて吐出管から水を出し、加圧タンク内の圧力が下がると、ポンプ付属の圧力スイッチによりポンプが作動し、ポンプ作動により吸込管から水を吸い込むと同時に、マイクロバブル発生ノズルにより、通気管を通して空気がマイクロバブル発生ノズルに導入され、自動的にマイクロバブルとして装置内に供給される。また、加圧タンク上部に空気が溜まり、水位が低下すると定水位弁が作動し、余剰分は加圧タンク外へ排出され、水位が一定に保たれる。圧力調整弁は、吐出管の最大解放時の圧力が2.0~3.0kg/cm2程度となるよう調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、農作物を効率的に栽培するための次世代農業が注目されている。農作物収量に水中酸素濃度が影響することは知られており、上記のようなマイクロバブル発生装置の応用が検討されている。
【0006】
本発明者らは土壌栽培実験を行ったところ、農作物の種類や成長段階によって最適な溶存酸素が異なることを発見した。ところが、上記の一般的な加圧溶解式のマイクロバブル発生装置では、より小さな泡を大量に生成することに主眼が置かれているため、水中の溶存酸素濃度を細かくコントロールしようとすることができず、最適な栽培条件を見つけ出すことができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、気体を液体に溶解させて液中にマイクロバブルを含むマイクロバブル液を得ることができるだけでなく、液中にバブルを含まずに高濃度溶存気体を含む高濃度溶存気体液を選択的に得ることが可能な気液溶解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の気液溶解装置は、液体中に気体を溶解させる溶解タンクと、液体供給口から供給される液体を溶解タンクへ供給する液体供給路と、液体供給路に設けられたベンチュリ機構と、溶解タンクから気体溶解液を排出する気液排出路と、ベンチュリ機構の絞り部または液体供給路の途中のいずれかを選択して気体を供給可能な気体供給路と、気液排出路に設けられ、気体溶解液の排出速度を調節するスピードコントローラとを含むものである。
【0009】
本発明の気液溶解装置によれば、液体供給口から供給される液体に対し、ベンチュリ機構の絞り部または液体供給路の途中に気体を供給することで液体への気体の溶解度を変えて溶解タンクへ供給し、溶解タンク内で液体に気体を溶解させつつ、溶解タンクからの気体溶解液の排出速度を絞ることで、液中にマイクロバブルを含むマイクロバブル液を得ることができる。一方、溶解タンクからの気体溶解液の排出速度を絞らないようにすると、液中にバブルを含まずに高濃度溶存気体を含む高濃度溶存気体液を得ることができる。
【0010】
なお、マイクロバブル液とは、液中にマイクロバブル(気泡径1~100μm)が含まれるものをいう。また、高濃度溶存気体液とは、液中に微細な気泡はないが、通常の液に比べて溶存気体濃度が高い液をいう。
【0011】
本発明の気液溶解装置は、液体供給口と気液排出路とを接続する分岐路であり、開閉弁を有する分岐路を含むものであることが望ましい。これにより、気液排出路から排出される気体溶解液を液体により希釈して、溶存気体濃度を調節することが可能となる。
【0012】
溶解タンクは、エアーストーンを通じて気液排出路へ気体溶解液を排出するものであることが望ましい。これにより、溶解タンク内の大きなバブルが気体溶解液に混入することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
(1)液体中に気体を溶解させる溶解タンクと、液体供給口から供給される液体を溶解タンクへ供給する液体供給路と、液体供給路に設けられたベンチュリ機構と、溶解タンクから気体溶解液を排出する気液排出路と、ベンチュリ機構の絞り部または液体供給路の途中のいずれかを選択して気体を供給可能な気体供給路と、気液排出路に設けられ、気体溶解液の排出速度を調節するスピードコントローラとを含む構成により、気体を液体に溶解させて液中にマイクロバブルを含むマイクロバブル液を得ることができるだけでなく、液中にバブルを含まずに高濃度溶存気体を含む高濃度溶存気体液を選択的に得ることが可能となる。
【0014】
(2)液体供給口と気液排出路とを接続する分岐路であり、開閉弁を有する分岐路を含む構成により、気液排出路から排出される気体溶解液を液体により希釈して、溶存気体濃度を調節することで、任意の飽和率の高濃度溶存気体を含む高濃度溶存気体液を得ることが可能となる。
【0015】
(3)溶解タンクがエアーストーンを通じて気液排出路へ気体溶解液を排出する構成により、大きなバブルの混入がない気体溶解液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態における気液混合装置の概略構成図である。
【
図2】中程度の溶存酸素濃度のマイクロバブル水を生成する場合の動作説明図である。
【
図3】高い溶存酸素濃度のマイクロバブル水を生成する場合の動作説明図である。
【
図4】低い溶存酸素濃度のマイクロバブル水を生成する場合の動作説明図である。
【
図5】バブルを含まない高い溶存酸素濃度の高溶存酸素水を生成する場合の動作説明図である。
【
図6】バブルを含まない低い溶存酸素濃度の高溶存酸素水を生成する場合の動作説明図である。
【
図7】出口圧力とDO値の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態における気液混合装置の概略構成図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態における気液溶解装置1は、液体としての水中に気体としての空気を溶解させる溶解タンク2と、水を溶解タンク2へ供給する液体供給路3と、液体供給路3に設けられたベンチュリ機構4と、溶解タンク2から気体溶解液を排出する気液排出路5と、気液排出路5に設けられたスピードコントローラ6と、液体供給路3へ空気を供給する気体供給路7とを有する。
【0018】
溶解タンク2は、給液口2A、排液口2Bおよび排気口2C-1,2C-2を有する。給液口2Aには液体供給路3の一端の液体排出口3Bが接続される。液体供給路3の他端は液体供給口3Aであり、液体供給源としての水道の蛇口10に接続される。なお、液体供給路3の途中に図示しているポンプは必須ではないが、水道圧は最大でも0.4MPa程度であるため、この水道圧を補助して溶存気体濃度を高めるために設けている。排液口2Bには気液排出路5が接続される。また、排液口2Bには、溶解タンク2内にエアーストーン8が配設される。エアーストーン8は、孔径25~50μmの多孔質体である。エアーストーン8は、連続空隙構造を有する。
【0019】
排気口2C-1には、排気弁11が接続される。排気弁11は、溶解タンク2内の空気を排出する弁である。排気口2C-2には、圧力計12およびリリーフ弁13が接続される。圧力計12は、溶解タンク2内の圧力を表示する計器である。リリーフ弁13は、溶解タンク2を保護するための弁である。リリーフ弁13は、通常は閉じた状態であり、溶解タンク2内の圧力が所定の設定圧力を超えた場合に自動的に開く。
【0020】
液体供給路3は、液体供給口3Aから供給される水を溶解タンク2へ供給する流路である。ベンチュリ機構4は、液体供給路3の途中に設けられている。気体供給路7は、三方弁7Aにより、ベンチュリ機構4の絞り部4Aと、液体供給路3の途中(図示例では液体供給口3Aとベンチュリ機構4との間の液体供給口3Aの後方(下流側))に分岐して接続されている。気体供給路7は、三方弁7Aの方向を切り替えることにより、ベンチュリ機構4の絞り部または液体供給路3の途中のいずれかを選択して空気を供給する。なお、三方弁7Aと絞り部4Aとの間には、ベンチュリ機構4から気体供給路7への逆流を防止するための逆止弁7Bが設けられている。
【0021】
スピードコントローラ6は、気液排出路5から排出される気体溶解液の排出速度を調整するものである。スピードコントローラ6は、気液排出路5の端部に設けられている。スピードコントローラ6の手前(上流側)には、気液排出路5を開閉する排出弁14が設けられている。また、気液排出路5の排出弁14と溶解タンク2の排液口2Bとの間には、液体供給口3Aと気液排出路5とを接続する分岐路9が設けられている。分岐路9の入口には、開閉弁9Aが設けられている。
【0022】
また、本実施形態における気液溶解装置1は、気体供給路7へ空気を供給するコンプレッサ15を備える。コンプレッサ15により圧縮された空気は、流量調節弁16および開閉弁17を通じて気体供給路7へ供給される。また、本実施形態における気液溶解装置1では、コンプレッサ15へ酸素ガスをガスボンベ18より供給するガス供給路19を備える。ガスボンベ18よりガス供給路19へ供給される酸素ガスは、流量調節弁20および開閉弁21を通じてコンプレッサ15へ供給される。
【0023】
次に、上記構成の気液溶解装置1の動作について、
図2~
図6を参照して説明する。
図2は中程度の溶存酸素濃度のマイクロバブル水を生成する場合の動作説明図、
図3は高い溶存酸素濃度のマイクロバブル水を生成する場合の動作説明図、
図4は低い溶存酸素濃度のマイクロバブル水を生成する場合の動作説明図、
図5はバブルを含まない高い溶存酸素濃度の高溶存酸素水を生成する場合の動作説明図、
図6はバブルを含まない低い溶存酸素濃度の高溶存酸素水を生成する場合の動作説明図である。
【0024】
<A-1>中程度の溶存酸素濃度のマイクロバブル水の生成
本実施形態における気液溶解装置1により中程度の溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率150~250%)のマイクロバブル水を生成する場合、
図2に示すように、気体供給路7からの空気がベンチュリ機構4の絞り部4Aへ供給されるように三方弁7Aを切り替え、分岐管9の開閉弁9Aおよびガス供給路19の開閉弁21を閉じ、気体供給路7の開閉弁17を開く。
【0025】
これにより、コンプレッサ15から流量調節弁16および開閉弁17を通じて気体供給路7へ供給される空気は、三方弁7Aからベンチュリ機構4の絞り部4Aへ供給され、ベンチュリ効果により蛇口10から送水される水(水道水)と効率的に混合される。この水と空気が混合された混合水はベンチュリ機構4を通過して給液口2Aから溶解タンク2内へ押し込まれ、溶解タンク2内で空気が水に溶解される。
【0026】
溶解タンク2内で溶解された空気溶解水は、気液排出路5の排出弁14が開かれることで、圧力が開放され、中程度の溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率150~250%)のマイクロバブル水となって排出されるが、このとき、スピードコントローラ6を絞ることで、圧力を急激に開放するか、緩やかに開放することによって、マイクロバブル水中のマイクロバブルの量をコントロールすることができる。また、流量調節弁16により気体供給路7へ供給する空気の量を調節することにより、マイクロバブル水中の溶存酸素濃度をコントロールすることができる。
【0027】
<A-2>高い溶存酸素濃度のマイクロバブル水の生成
本実施形態における気液溶解装置1により高い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率250%以上)のマイクロバブル水を生成する場合、
図2に示す状態から
図3に示す状態へと切り替える。すなわち、ガス供給路19の開閉弁21を開き、コンプレッサ15から流量調節弁16および開閉弁17を通じて気体供給路7へ空気に加えて酸素ガスが供給されるようにする。これにより、高い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率250%以上)のマイクロバブル水が生成される。
【0028】
なお、このとき、スピードコントローラ6を絞ることで、圧力を急激に開放するか、緩やかに開放することによって、前述と同様に、マイクロバブル水中のマイクロバブルの量をコントロールすることができる。また、流量調節弁20によりコンプレッサ15へ供給する酸素ガスの量を調節することにより、マイクロバブル水中の溶存酸素濃度をコントロールすることができる。
【0029】
<A-3>低い溶存酸素濃度のマイクロバブル水の生成
本実施形態における気液溶解装置1により低い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率100~150%)のマイクロバブル水を生成する場合、
図2に示す状態から
図4に示す状態へと切り替える。すなわち、気体供給路7からの空気がベンチュリ機構4の絞り部4Aではなく、液体供給路3の途中へ供給されるように三方弁7Aを切り替える。
【0030】
これにより、コンプレッサ15から流量調節弁16および開閉弁17を通じて気体供給路7へ供給される空気は、三方弁7Aから液体供給路3の途中へ供給され、蛇口10から送水される水(水道水)と混合される。この水と空気が混合された混合水は、ベンチュリ機構4を通過して給液口2Aから溶解タンク2内へ押し込まれ、溶解タンク2内で空気が水に溶解される。
【0031】
すなわち、
図4に示す状態では、ベンチュリ機構4によるベンチュリ効果は得られないため、空気は蛇口10から送水される水(水道水)と効率的には混合されず、低い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率100~150%)のマイクロバブル水となって排出される。
【0032】
なお、このとき、スピードコントローラ6を絞ることで、圧力を急激に開放するか、緩やかに開放することによって、前述と同様に、マイクロバブル水中のマイクロバブルの量をコントロールすることができる。また、流量調節弁16により気体供給路7へ供給する空気の量を調節することにより、マイクロバブル水中の溶存酸素濃度をコントロールすることができる。
【0033】
なお、上記<A-1>~<A-3>のマイクロバブル水の生成において、より微細なマイクロバブルを大量に発生させるためには、スピードコントローラ6をある適切な開度に調節する必要があるが、微細なマイクロバブルが大量に発生するほど水中に溶けていた空気が析出することになり、溶存酸素濃度が下がることになる。この下がった溶存酸素濃度を補うように流量調節弁16あるいは流量調節弁20を開いて液体供給路3へ押し込む空気の量を調節する。すなわち、スピードコントローラ6の絞り量でマイクロバブルの量を、流量調節弁16あるいは流量調節弁20の開度で溶存酸素量を調節する。
【0034】
<B-1>バブルを含まない高い溶存酸素濃度の高溶存酸素水の生成
本実施形態における気液溶解装置1によりバブルを含まない高い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率300%以上)の高溶存酸素水を生成する場合、例えば、
図3に示す状態から
図5に示す状態へと切り替える。すなわち、スピードコントローラ6を開放するか、スピードコントローラ6を取り外す。このとき、ガス供給路19の開閉弁21は開であり、コンプレッサ15から流量調節弁16および開閉弁17を通じて気体供給路7へ空気に加えて酸素ガスが供給される。
【0035】
これにより、溶解タンク2内で溶解された空気溶解水は、気液排出路5の排出弁14が開かれることで、圧力解放によるバブルの発生がなく、溶解タンク2内の空気溶解水がそのまま排出されるので、バブルを含まない高い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率300%以上)の高溶存酸素水が得られる。このとき、流量調節弁20によりコンプレッサ15へ供給する酸素ガスの量を調節することにより、高溶存酸素水の溶存酸素濃度をコントロールすることができる。
【0036】
<B-2>バブルを含まない低い溶存酸素濃度の高溶存酸素水の生成
本実施形態における気液溶解装置1によりバブルを含まない低い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率100~300%)の高溶存酸素水を生成する場合、
図5に示す状態から
図6に示す状態へと切り替える。すなわち、分岐管9の開閉弁9Aを開き、蛇口10から送水される水を溶解タンク2の排液口2Bから出た高溶存酸素水に混合する。
【0037】
これにより、バブルを含まない低い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率100~300%)の高溶存酸素水が得られる。このとき、開閉弁9Aによって分岐管9へ流す水の量を調節したり、流量調節弁16により気体供給路7へ供給する空気の量を調節したりすることにより、高溶存酸素水の溶存酸素濃度をコントロールすることができる。
【0038】
なお、バブルを含まない低い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率100~300%)の高溶存酸素水を得る必要がなく、バブルを含まない高い溶存酸素濃度(溶存酸素の飽和率300%以上)の高溶存酸素水と、前述のマイクロバブル水とを生成する場合には、分岐路9を省略することも可能である。
【0039】
このように、本実施形態における気液溶解装置1によれば、空気を水に溶解させて水中にマイクロバブルを含むマイクロバブル水を得ることができるだけでなく、水中にバブルを含まずに高濃度溶存酸素を含む高濃度溶存酸素水を選択的に得ることが可能である。また、排液口2Bから排出される酸素溶解水を水により希釈して、溶存酸素濃度を調節することで、任意の飽和率の低い~高い濃度溶存酸素を含む高溶存酸素水を得ることも可能である。
【0040】
また、本実施形態における気液溶解装置1では、マイクロバブル水の溶存酸素濃度についてもスピードコントロ-ラ6の絞り量や、流量調節弁16あるいは流量調節弁20の開度等により任意に調節することが可能である。すなわち、本実施形態における気液溶解装置1では、マイクロバブル水と高溶存酸素水のそれぞれで溶存酸素濃度をコントロールすることができる。
【0041】
また、本実施形態における気液溶解装置1では、溶解タンク2がエアーストーン8を通じて気液排出路5へ酸素溶解水を排出するので、マイクロバブル水や高濃度溶存酸素水に大きなバブルの混入がない。
【0042】
上記実施形態においては、液体として水(水道水)を、気体として空気を使用する例について説明したが、他の液体および気体を使用することで、気体を液体に溶解させて液中にマイクロバブルを含むマイクロバブル液を得ることができるだけでなく、液中にバブルを含まずに高濃度溶存気体を含む高濃度溶存気体液を選択的に得ることが可能である。
【実施例】
【0043】
本実施形態における気液溶解装置1を用いて、水の種類とDO値の制御および気泡径の調査を行った。実験は、水圧と空気圧をレギュレータで同じ圧力に設定し、スピードコントローラ6を絞り、出口圧力を調整することにより行った。排水は目視で、DO値は蛍光式溶存酸素計で測定し、気泡径はストークスの式を用いて概算し、気泡径1~100μmの場合に排水がマイクロバブル水であると判定した。
【0044】
図7は水圧および空気圧を各値に設定し、スピードコントローラ6を絞って出口圧力を調整したときのDO値を示したグラフである。
図8は水圧および空気圧を各値に設定し、スピードコントローラ6を絞って出口圧力を調整したときの流量を示したグラフである。
【0045】
図7および
図8より、スピードコントローラ6を絞って出口圧力を0.3MPa以上とした場合には、マイクロバブル水が生成され、スピードコントローラ6を開放して出口圧力を0.2MPa以下とした場合には高濃度溶存酸素水が得られていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の気液溶解装置は、気体を液体に溶解させて液中にマイクロバブルを含むマイクロバブル液を得ることができるだけでなく、液中にバブルを含まずに高濃度溶存気体を含む高濃度溶存気体液を選択的に得ることが可能な装置として有用であり、特に、農業分野(農作物育成や園芸など)、食品分野(水産養殖、食品加工工程における殺菌や洗浄など)や環境分野(水質改善や排水処理など)に好適である。
【符号の説明】
【0047】
1 気液溶解装置
2 溶解タンク
2A 給液口
2B 排液口
2C 排気口
3 液体供給路
3A 液体供給口
3B 液体排出口
4 ベンチュリ機構
4A 絞り部
5 気液排出路
6 スピードコントローラ
7 気体供給路
7A 三方弁
7B 逆止弁
8 エアーストーン
9 分岐路
9A 開閉弁
10 蛇口
11 排気弁
12 圧力計
13 リリーフ弁
14 排出弁
15 コンプレッサ
16 流量調節弁
17 開閉弁
18 ガスボンベ
19 ガス供給路
20 流量調節弁
21 開閉弁