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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 5/00 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
B08B5/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020164828
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056857
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2022-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511254284
【氏名又は名称】ヒューグル開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 義彦
(72)【発明者】
【氏名】白根 智博
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009047(JP,A)
【文献】特開2011-200830(JP,A)
【文献】特開2015-213860(JP,A)
【文献】国際公開第2008/069525(WO,A1)
【文献】特開平03-276480(JP,A)
【文献】特開2017-150808(JP,A)
【文献】特開2014-100622(JP,A)
【文献】特開2004-041851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/00,5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する除塵対象物の表面に対向し、該除塵対象物の相対移動の方向に所定の間隔をもって配列された吐出口と吸引口とを備え、
前記吐出口から前記除塵対象物の表面に対して気体を吐出しつつ、前記吸引口を通して前記除塵対象物の表面上の気体を吸引する、除塵装置であって、
前記吐出口は、前記除塵対象物の相対移動の方向を横切る方向に配列され、それぞれがその配列方向を横切る方向に延びる複数のスリットを含み、
更に、前記複数のスリットのそれぞれに対して設けられ、前記除塵対象物に対向する開口からスリットまで延びる気体吐出路を有し、
前記気体吐出路の前記スリットに垂直な断面は、前記開口から前記スリットの両端部に向って徐々に広がる形状を有する除塵装置。
【請求項2】
前記断面の形状は、円弧状に徐々に広がる形状である、請求項記載の除塵装置。
【請求項3】
前記複数のスリットのそれぞれは、前記除塵対象物の相対移動の方向に対して斜めに傾くように形成された、請求項または記載の除塵装置。
【請求項4】
前記複数のスリットは、平行に配列された、請求項乃至のいずれかに記載の除塵装置。
【請求項5】
前記吐出口は、前記複数のスリットを横切って延びる長手方向スリットを含む、請求項乃至のいずれかに記載の除塵装置。
【請求項6】
前記複数のスリットのそれぞれは、前記除塵対象物の相対移動の方向と平行に延びる、請求項記載の除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動する除塵対象物の表面に対して気体を吐出しつつ、その除塵対象物の表面上の気体を吸引することにより前記除塵対象物表面の塵埃を除去する除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された除塵装置が知られている。この除塵装置は、ガイドロール(支持部)に巻きかけられ、そのガイドロールの回転により搬送されるシート状物(除塵対象物)の前記ガイドロールに当接した部分に対向して配置される。この除塵装置には、シート状物の搬送方向(相対移動方向)に直交する方向(シート状物の幅方向)に延びるスリット状の吐出口と吸引口(サクションボックスの開口部)とが、所定の間隔をもって、前記吐出口が前記吸引口より搬送方向の上流側に位置するように形成されている。そして、シート状物が搬送される過程で、前記除塵装置は、前記吐出口からシート状物の表面に対してエアを吐出しつつ、前記吸引口を通して前記シート状物の表面上のエアを吸引する。シート状物の表面に付着した塵埃が吐出口から吐出されるエアによってその表面から離れて浮遊し、その浮遊する塵埃が吸引口からエアとともに吸引される。これにより、シート状物の表面に付着した塵埃が除去される(除塵される)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-138136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような除塵装置においては、図1に示すように、吐出口O(開口)から吐出するエアの高速な流れ(図1における太矢線参照)によってその流れに沿う領域の静圧が低下して負圧BAが生じ得る(ベルヌーイ効果)。このように吐出するエアの流れに沿う領域に負圧BAが生ずると、搬送されるシート状物100がその吐出口Oに対向する領域に進入する際、及び吐出口Oから退出する際のそれぞれにおいて、その負圧BAによってシート状物100の搬送姿勢が乱れ得る。このようにシート状物100の搬送姿勢が乱れると、吸引口を通したエアの吸引により、シート状物100が吸引口に引き込まれたり、更に姿勢の乱れが助長されたりする可能性がある。このような現象は、除塵の対象物がシート状の物に限られず、板状の物であっても、同様にベルヌーイ効果に起因した負圧BAによって生じ得る。
【0005】
このため、この種の除塵装置は、ガイドロールの回転とともに搬送されるシート状物の除塵を行う場合には、特許文献1にも記載されるように、ガイドロールにある張力をもって巻きかけられた部分に対向して配置される。また、ガラス基板、半導体基板等の板状の物の表面を除塵する場合には、その除塵装置を吸着テーブル上に吸着固定された板状の物の表面に対向させた状態で移動させつつ、エアの吐出及び吸引により、その板状の物の表面の除塵を行う。また、板状の物をローラコンベアで搬送する場合、片面の除塵であっても、対向して配置される2つの除塵装置の間をその除塵の対象となる板状の物を移動させる。これにより、対向する除塵装置から吐出するエアの影響が相殺されて、搬送される板状の物の安定した姿勢が維持される。
【0006】
このように、従来の除塵装置では、除塵対象の物に対する配置の自由度が小さく、また、除塵対象の物の姿勢安定のために特別の機構(例えば、吸着テーブル、追加的な除塵装置)が必要となり、その使い勝手が必ずしも良いものではなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、使い勝手の良い除塵装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明に係る除塵装置は、相対移動する除塵対象物の表面に対向し、該除塵対象物の相対移動の方向に所定の間隔をもって配列された吐出口と吸引口とを備え、前記吐出口から前記除塵対象物の表面に対して気体を吐出しつつ、前記吸引口を通して前記除塵対象物の表面上の気体を吸引する、除塵装置であって、前記吐出口は、前記除塵対象物の相対移動の方向を横切る方向に配列され、それぞれがその配列方向を横切る方向に延びる複数のスリットを含み、更に、前記複数のスリットのそれぞれに対して設けられ、前記除塵対象物に対向する開口からスリットまで延びる気体吐出路を有し、前記気体吐出路の前記スリットに垂直な断面は、前記開口から前記スリットの両端部に向って徐々に広がる形状を有する構成となる。
【0013】
このような構成により、除塵対象物が相対移動する際に、気体が、それぞれ開口から徐々に広がる気体吐出路を通って複数のスリットから吐出する。前記開口から気体吐出路の内周壁に沿ってスリットの前記除塵対象物の相対移動方向における両端部から吐出する気体の吐出圧力は、前記気体吐出路の内周壁に沿うことなくスリットの前記開口に対向する部分から直接吐出する気体の吐出圧力より小さくなる。これにより、各スリットの前記開口に対向する部分から吐出する気体の吐出圧力を所望の圧力に維持しつつ、各スリットの両端部から吐出する気体の吐出圧力を低くすることができる。各スリットの両端部から吐出する気体の吐出圧力が低くなることにより、各スリットの両端部の対向領域においてベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難くなる。よって、吐出口を構成する複数のスリットのそれぞれから吐出する気体が吹き付けられる除塵対象物がベルヌーイ効果に起因した負圧状態の影響を受け難くなり、その気体が吹き付けられる除塵対象物が安定的に相対移動できる。その安定的に相対移動する除塵対象物の表面に前記複数のスリット(吐出口)から吐出する気体が吹きかけられつつ、吸引口を通して除塵対象物の表面上の気体が吸引され、その除塵対象物の表面の塵埃が除去(除塵)される。
【0014】
本発明に係る除塵装置において、前記断面の形状は、円弧状に徐々に広がる形状である、構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、気体は、開口から気体吐出路の断面円弧状の徐々に広がる内周壁に沿って各スリットの両端部から吐出するとともに、前記気体吐出路の内周壁に沿うことなく各スリットの前記開口に対向する部分から直接吐出する。これにより、前述したように、各スリットの前記開口に対向する部分から吐出する気体の吐出圧力を所望の圧力に維持しつつ、各スリットの両端部から吐出する気体の吐出圧力を低くすることができる。
【0016】
本発明に係る除塵装置において、前記複数のスリットのそれぞれは、前記除塵対象物の相対移動の方向に対して斜めに傾くように形成された、構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、除塵対象物の相対移動中に、離散的に配列される複数のスリットから、単に複数の筋状ではなく、その除塵対象物の表面のより広い領域に気体を吹き付けることができる。
【0018】
本発明に係る除塵装置において、前記複数のスリットは、平行に配列された、構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、平行に配置された複数のスリットのそれぞれから吐出する気体が相対移動中の除塵対象物の表面に吹き付けられる。
【0020】
本発明に係る除塵装置において、前記吐出口は、前記複数のスリットを横切って延びる長手方向スリットを含む構成とすることができる。
【0021】
このような構成により、相対移動する除塵対象物の表面に、長手方向スリットから吐出する気体とともに、前記開口に対向する部分から吐出する気体の吐出圧力を所望の圧力に維持しつつ、両端部から吐出する気体の吐出圧力を低くした状態で、複数のスリットのそれぞれから吐出する気体を吹き付けることができる。このように、長手方向スリットから吐出する気体と、複数のスリットのそれぞれから吐出する気体とが相まって、相対移動中の除塵対象物の表面から塵埃を効果的に除去することができる。
【0022】
本発明に係る除塵装置において、前記複数のスリットのそれぞれは、前記除塵対象物の相対移動の方向と平行に延びる、構成とすることができる。
【0023】
このような構成により、長手方向スリットから吐出する気体とともに、複数のスリットから吐出する気体が、相対移動中の除塵対象物の表面にその相対移動の方向に延びる複数の筋状に吹き付けられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る除塵装置によれば、吐出口から高速に吐出する気体によってベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難く、吐出口から吐出する気体が吹き付けられる除塵対象物が安定的に相対移動することができるようになる。その結果、吐出口から吐出する気体を受ける除塵対象物を安定的に相対移動させるための仕組みを簡素化することができ、より使い勝手の良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、吐出口から吐出されるエア(気体)により搬送されるシート状物が不安定になる原理を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る除塵装置の適用例を示す図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る除塵装置を示す正面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る除塵装置を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る除塵装置を示す側面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係る除塵装置を示す底面図である。
図7図7は、除塵装置の図6におけるA-A線断面を示す断面図である。
図8図8は、吐出口(スリット)に至る気体吐出路を拡大して示す断面図である。
図9図9は、吐出口(スリット)から吐出するエアの吐出圧力を示す線図である。
図10図10は、本発明の第2の実施の形態に係る除塵装置を示す底面図である。
図11図11は、除塵装置の図10におけるA-A線断面を示す断面図である。
図12図12は、除塵装置の図10におけるB-B線断面を示す断面図である。
図13図13は、吐出口の変形例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施の形態に係る除塵装置の他の適用例を示す図である。
図15図15は、本発明の実施の形態に係る除塵装置の更に他の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
本発明の実施の形態に係る除塵装置10は、例えば、シート状物100の除塵を行うシステムに適用される。このシステムでは、図2に示すように、繰出しローラ51から繰り出される除塵対象物としてのシート状物100が、テンションローラ52、53を介して巻取りローラ54に延びている。巻取りローラ54と繰出しローラ51の同期した回転によりシート状物100が、ある張力(テンション)を受けつつ、繰出しローラ51から巻取りローラ54に向けて(搬送方向Dcv)搬送される。除塵装置10は、シート状物100のテンションローラ52に巻き掛けられた部分に対向するように配置することができる。また、除塵装置10は、背後にローラ等の支持部が存在しない、例えば、シート状物100の繰出しローラ51とテンションローラ52との間の部分に対向するように配置することもできる。
【0028】
シート状物100の除塵を行うシステムにおいて上述したように配置される(図2参照)、本発明の第1の実施の形態に係る除塵装置10は、例えば、図3図6に示すように構成される。なお、図3は、除塵装置を示す正面図であり、図4は、除塵装置を示す平面図であり、図5は、除塵装置を示す側面図であり、図6は、除塵装置を示す底面図である。
【0029】
図2とともに図3乃至図5において、この除塵装置10は、シート状物100の搬送方向Dcv(相対移動方向)に直交する方向(図2における紙面に直交する方向)に延びる長尺ブロック状の除塵ヘッド11と、除塵ヘッド11の上面に沿って延びる排気ダクトユニット13とを備えている。排気ダクトユニット13は、底部が開口しており、その開口縁部分にフランジ13aが形成されている(図3図4及び後述する図7参照)。排気ダクトユニット13のフランジ13aが除塵ヘッド11の上面に複数のボルトによって固定されることにより、除塵ユニット11と排気ダクトユニット13が一体となり、排気ダクトユニット13の内部に排気経路としての空間が形成される。排気ダクトユニット13の側面に排気ポート14が設けられている。排気ポート14は、吸引機構(例えば、真空ポンプ:図示略)に接続され、その吸引機構の動作により、排気ダクトユニット13の排気経路を通るエア(気体)が排気ポート14を通って外部に排出される。
【0030】
除塵ヘッド11の側面には給気ポート12が設けられている。給気ポート12は、加圧エアを供給する給気機構(例えば、加圧ポンプ:図示略)に接続され、その給気機構の動作により、給気ポート12を通して加圧エアが除塵ヘッド11(後述するエア噴射室15)内に取り入られる。除塵ヘッド11は、ヘッドブロック11aと吸引調整プレート11bとが重ねられた構造となっている(図3とともに後述する図7参照)。
【0031】
除塵ヘッド11(ヘッドブロック11a)のシート状物100に対向する面(底面)には、図6に示すように、前側縁(シート状物100の搬送方向Dcvの上流側の縁)に沿って延びる細長矩形状の前側第1吸引口21aと前側第2吸引口21bとが並んで形成されている。また、その面には、後側縁(シート状物100の搬送方向Dcvの下流側の縁)に沿って延びる細長矩形状の後側第1吸引口22aと後側第2吸引口22bとが並んで形成されている。更に、除塵ヘッド11(ヘッドブロック11a)のシート状物100に対向する面(底面)には、並んで配列される2つの前側吸引口21a、21bと、並んで配列される2つの後側吸引口22a、22bとに挟まれるように、複数のスリット30aで構成される吐出口30が形成されている。
【0032】
吐出口30を構成する複数のスリット30aは、除塵ヘッド11(ヘッドブロック11a)の長手方向(シート状物100の搬送方向Dcvを横切る(例えば、直交する)方向)に配列されている。そして、複数のスリット30aのそれぞれは、その配列方向を横切る方向(シート状物100の幅方向となる除塵ヘッド11長手方向を横切る方向)に延び、シート状物100の搬送方向Dcvに対して斜めに傾いている。
【0033】
図7図6におけるA-A線断面を示す断面図)に示すように、ヘッドブロック11aには、それぞれ吸引調整プレート11bとの接合面で開口する空間として、エア噴射室15、前側エア吸引室16a及び後側エア吸引室16bが形成されている。エア噴射室15は、ヘッドブロック11aの幅方向の中央部において長手方向(図7の紙面に垂直な方向)に延びる。前側エア吸引室16aは、ヘッドブロック11aの前側縁(シート状物100の搬送方向Dcvの上流側に対応)に沿って形成され、後側エア吸引室16bは、ヘッドブロック11aの後側縁(シート状物100の搬送方向Dcvの下流側に対応)に沿って形成される。
【0034】
また、吸引調整プレート11bには、それぞれ貫通するように、前側吸引調整孔17a及び後側吸引調整孔17bが形成されている。前側吸引調整孔17aは、吸引調整プレート11bの前側縁(シート状物100の搬送方向Dcvの上流側の縁)に沿って形成され、後側吸引調整孔17bは、吸引調整プレート11bの後側縁(シート状物100の搬送方向Dcvの下流側の縁)に沿って形成される。ヘッドブロック11aと吸引調整プレート11bとは、重ねられた状態で、前述した排気ダクトユニット13(フランジ13a)とともに複数のボルトによって固定される。このようにヘッドブロック11aと吸引調整プレート11bとが重ねられた状態で、ヘッドブロック11aのエア噴射室15は吸引調整プレート11bによって閉鎖される。また、ヘッドブロック11aと吸引調整プレート11bとが重ねられた状態で、ヘッドブロック11aの前側エア吸引室16a及び後側エア吸引室16bのそれぞれは、吸引調整プレート11bの前側吸引調整孔17a及び後側吸引調整孔17bに対向する。
【0035】
ヘッドブロック11aの底面に形成される前側第1吸引口21a(前側第2吸引口21bも同様)は、前側エア吸引室16a及び吸引調整プレート11bに形成された前側吸引調整孔17aを通して排気ダクトユニット13内の空間(排気経路)に連通している。ヘッドブロック11aの底面に形成される後側第1吸引口22a(後側第2吸引口22bも同様)は、後側エア吸引室16b及び吸引調整プレート11bに形成された後側吸引調整孔17bを通して排気ダクトユニット13内の空間(排気経路)に連通している。これにより、排気ダクトユニット13の排気経路(空間)を通るエアが排気ポート14を通って外部に排出されることに伴って、排気ダクトユニット13内の空間に連通する前側第1吸引口21a(前側第2吸引口21bも同様)及び後側第1吸引口22a(後側第2吸引口22bも同様)を通してエアが吸引される。
【0036】
ヘッドブロック11aの底面に形成された吐出口30を構成する複数のスリット30aのそれぞれは、エア噴射室15の底にヘッドブロック11aの長尺方向(図7の紙面に垂直な方向)に延びるように形成された溝31に連通しており、給気ポート12からエア噴射室15に導入される加圧エアが複数のスリット30aのそれぞれから吐出するようになっている。詳細には、図8に示すように、溝31から延びる連結路32aが、開口33を通して、スリット30aに至る気体吐出路32bにつながっている。気体吐出路32bのスリット30aに垂直な断面(図8に示される図6におけるA-A線断面)は、開口33からスリット30aまで徐々に広がる形状、具体的には、円弧状に徐々に広がる形状となる。
【0037】
上述したような構造の除塵装置10の動作について説明する。
【0038】
シート状物100は、繰出しローラ51及び巻取りローラ54の同期した回転により、ある張力(テンション)を受けつつ、繰出しローラ51から巻取りローラ54に向けて(搬送方向Dcv)搬送される(図2参照)。その過程で、例えば、繰出しローラ51とテンションローラ52との間に配置された除塵装置10は、次のようにしてシート状物100表面の塵埃を除去する。
【0039】
シート状物100の移動の過程において、除塵装置10の吐出口30を構成する複数のスリット30aから吐出されるエアがシート状物100の表面に吹き付けられつつ、前側第1吸引口21a、前側第2吸引口21b、後側第1吸引口22a、及び後側第2吸引口22bのそれぞれを通してシート状物100表面上のエアが吸引される。複数のスリット30a(吐出口30)から吐出するエアによってシート状物100の表面から浮き上がった塵埃が前側第1吸引口21a、前側第2吸引口21b、後側第1吸引口22a、及び後側第2吸引口22bを通してエアとともに吸引される。これにより、シート状物100の表面が除塵される。
【0040】
ここで、気体吐出路32bを通って吐出口30を構成する複数のスリット30のそれぞれから吐出するエアについて着目する。
【0041】
エア噴射室15から溝31及び連結部32aを通る高圧エアは、図8に示すように、開口33から徐々に広がる気体吐出路32bを通ってスリット30aから吐出する。スリット30aから吐出するエアの吐出圧力は、図9に示すように分布する。即ち、開口33から気体吐出路32bの内周壁に沿ってスリット30aの上流側端部及び下流側端部のそれぞれから吐出するエアの吐出圧力Pe1、Pe2は、気体吐出路32bの内周壁に沿うことなく、スリット30bの開口33に対向する部分から直接吐出するエアの吐出圧力Pcより小さくなる。
【0042】
これにより、各スリット30aの開口33に対向する部分から吐出するエアの吐出圧力を所望の圧力に維持しつつ、各スリット30aの両端部から吐出するエアの吐出圧力Pe1、Pe2を低くすることができる。各スリット30aの両端部から吐出するエアの吐出圧力が低くなることにより、各スリット30aの両端部の対向領域にEb1、Eb2(図8参照)においてベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難くなる。よって、吐出口30を構成する複数のスリット30aのそれぞれから吐出するエアが吹き付けられるシート状物100がベルヌーイ効果に起因した負圧状態の影響を受け難くなり、そのエアが吹き付けられるシート状物100が安定的に移動し得る(搬送され得る)。そして、その安定的に搬送されるシート状物100の表面に、前述したように複数のスリット30aから吐出するエアが吹き付けられつつ、前側第1吸引口21a、前側第2吸引口21b、後側第1吸引口22a及び後側第2吸引口22bを通してシート状物100の表面上のエアが吸引され、そのシート状物100の表面の塵埃が除去(除塵)される。
【0043】
上述したような除塵装置10によれば、吐出口30(複数のスリット30aのそれぞれ)から高速に吐出するエアによってベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難く、複数のスリット30a(吐出口30)から吐出するエアが吹き付けられる状況においてシート状物100を安定的に搬送できるようになる。その結果、除塵装置10を、背後にローラ等(例えば、図2におけるテンションローラ52)の支持部が存在しない、シート状物100の、例えば、繰出しローラ51とテンションローラ52との間の部分に対向するように配置(図2参照)したとしても、シート状物100を安定的に搬送しつつ、その表面の塵埃を除去することができる。このように、吐出口30から吐出するエアを受けるシート状物100を安定的に移動させるために除塵装置10の配置位置の制限が少なくなり(エアを受けるシート状物100を安定的に移動させるための仕組みの簡素化につながり得る)、この除塵装置10はより使い勝手の良いものとなる。
【0044】
また、吐出口30を構成する複数のスリット30aのそれぞれがシート状物100の搬送方向Dcvに対して斜めに傾いているので、そのシート状物100の搬送中に、離散的に配列される複数のスリット30aから、単に複数の筋状ではなく、そのシート状物100の表面のより広い領域にエアを吹き付けることができる。
【0045】
本発明の第2の実施の形態に係る除塵装置10について説明する。
【0046】
第2の実施の形態に係る除塵装置10は、第1の実施の形態に係る除塵装置と同様に、図3乃至図5に示すように構成される。そして、この除塵装置10は、図10に示すように吐出口が形成される点で、第1の実施の形態に係る除塵装置と異なる。
【0047】
図10において、ヘッドブロック11a(除塵ヘッド11)のシート状物100(除塵対象物)に対向する面(底面)には、2つの前側吸引口21a、21bと2つの後側吸引口22a、22bとに挟まれるように吐出口36が形成されている。この吐出口36は、除塵ヘッド11aの幅方向(シート状物100の搬送方向Dcv)の中央部でその長手方向(シート状物100の搬送方向Dcvを横切る方向)に延びる長手方向スリット36aと、複数のスリット36bとを含む。複数のスリット36bは、ヘッドブロック11aの長手方向(シート状物100の搬送方向Dcvを横切る(直交する)方向)に配列され、それぞれがその長手方向を横切る方向、具体的には、直交する方向(シート状物100の搬送方向Dcv)に延びている。即ち、長手方向スリット36aと複数のスリット36bとの関係は、長手方向スリット36aが複数のスリット36bを横切る、具体的には、直交する関係となっている。
【0048】
長手方向スリット36aは、図11図10におけるA-A線断面)に示すように、エア噴射室15の底に形成された溝31を通してエア噴射室15に連通している。これにより、給気ポート12からエア噴射室15に導入されるエアが長手方向スリット36aから吐出する。複数のスリット36bのそれぞれもまた、図12に示すように、エア噴射室15の底に形成された溝31を通してエア噴射室15に連通しており、給気ポート12からエア噴射室15に導入される加圧エアが複数のスリット36bのそれぞれから吐出するようになっている。各スリット36bについて更に詳細にみると、第1の実施の形態に係る除塵装置の場合と同様、図8に示すように、溝31から延びる連結路32aが、開口33を通して、スリット36bに至る気体吐出路32bにつながっている。気体吐出路32bのスリット36bに垂直な断面(図12に示される図10におけるB-B線断面)は、開口33からスリット36bまで徐々に広がる形状、具体的には、円弧状に徐々に広がる形状となる。
【0049】
上述したような除塵ヘッド11を有する除塵装置10では、長手方向スリット36a及び複数のスリット36bからエアが吐出するとともに、前側第1吸引口21a、前側第2吸引口21b、後側第1吸引口22a及び後側第2吸引口22bを通してエアが吸引される。これにより、第1の実施の形態に係る除塵装置の場合と同様に、除塵装置10(除塵ヘッド11)に対向して搬送されるシート状物100の表面から塵埃が除去(除塵)される。
【0050】
更に、詳細にみると、前述した第1の実施の形態に係る除塵装置の場合(図8図9参照)と同様に、複数のスリット36bのそれぞれの開口33に対向する部分から吐出するエアの圧力が所望の圧力に維持されつつ、そのスリット36bの両端部(上流側端部、下流側端部)に向かってエアの吐出圧力が徐々に低下する(図9参照)。このように、各スリット36bの両端部から吐出するエアの吐出圧力が低くなることにより、各スリット36bの両端部の対向領域Eb1、Eb2(図8参照)においてベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難くなる。一方、長手方向スリット36aからはストレートに所望の圧力のエアが吐出する。
【0051】
シート状物100は、ベルヌーイ効果に起因した負圧状態の影響をうけることなく、複数のスリット36bから吐出するエア(対向領域Eb1:図8参照)に進入して、徐々に圧力が上がるエアを受けつつ移動する。これにより、シート状物100は、姿勢を乱されることなく移動し得る。そして、シート状物100は、長手方向スリット36aから所望の圧力で吐出するエアととともに、複数のスリット36bそれぞれの開口33に対向する部分から所望の圧力で吐出するエアを受けつつ移動する。このとき、長手方向スリット36aの2つのスリット36bの間の部分では、吐出するエアの高速な流れによってその流れに沿う領域の静圧が低下して負圧が生じ得る(ベルヌーイ効果:図1参照)。この領域では、負圧状態が生じたとしても、移動するシート状物100は、隣接する2つのスリット36bから吐出する徐々に上昇する圧力のエアによって押さえつけられている状態であるので、そのシート状物100の姿勢が乱れることが抑制され得る。
【0052】
そして、長手方向スリット36aから吐出するエアを通過したシート状物100は、複数のスリット36bから徐々に低下する圧力で吐出するエアを受けながらその下流側端部に対向する領域(対向領域Eb2:図8参照)から脱する。各スリット36bの下流側端部に対向する領域では、前述したようにベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難いことから、シート状物100は、その姿勢を乱されることなく複数のスリット36bの下流側端部に対向する領域(対向領域Eb2)を通過することができる。
【0053】
上述した本発明の第3の実施の形態に係る除塵装置10によれば、搬送されるシート状物100の表面に、長手方向スリット36aから吐出するエアとともに、開口33に対向する部分から吐出するエアの吐出圧力を所望の圧力に維持しつつ、両端部(上流側端部、下流側端部)から吐出するエアの吐出圧力を低くした状態で、複数のスリット36bのそれぞれから吐出するエアを吹き付けることができる。このように、長手方向スリット36aから吐出するエアと、複数のスリット36bのそれぞれから吐出するエアとが相まって、搬送中のシート状物100の姿勢を乱すことなく、その表面から塵埃を効果的に除去することができる。
【0054】
このようにシート状物100を安定的に搬送しつつ、その表面の塵埃を除去することができるので、吐出口36(長手方向スリット36a、複数のスリット36b)から吐出するエアを受けるシート状物100を安定的に移動させるために除塵装置10の配置位置の制限が少なくなる。そのため、第2の実施の形態に係る除塵装置10も、第1の実施の形態に係る除塵装置と同様に、より使い勝手の良いものとなる。
【0055】
なお、上述した除塵装置10(第2の実施の形態)では、複数のスリット36bは、ヘッドブロック11aの長手方向(シート状物100の搬送方向Dcvを横切る(直交する)方向)に直交する方向(シート状物100の搬送方向Dcv)に延びていたが、これに限定される、第1の実施の形態の場合と同様に、シート状物100の搬送方向Dcvに対して斜めに傾くものであってもよい。
【0056】
また、上述した各除塵装置10では、吐出口が複数のスリットを含むものであったが、これに限定されない。例えば、図13に示すように、シート状物100の搬送方向Dcvを横切る方向(例えば、直交する方向)、すなわち、除塵ヘッド11の幅方向に延びる細長孔45として吐出口を形成することができる。この場合、除塵ヘッド11(ヘッドブロック11a)においては、エア噴射室15に続く溝31から更に延びる連結路46aが、開口47を通して、細長孔45に至る気体吐出路46bにつながっている。気体吐出路46bの細長孔45に垂直な断面(図13で破線で示される)は、前述したもの(図8参照)と同様に、開口47から細長孔45まで徐々に広がる形状、具体的には、円弧状に徐々に広がる形状となる。
【0057】
このように吐出口が細長孔45で構成される除塵装10では、前述したのと同様に、開口47から気体吐出路46bの名周壁に沿って細長孔45の搬送されるシート状物100の搬送方向Dcvにおける上流側端部EG1から吐出するエアの吐出圧力は、気体吐出路46bの内周壁に沿うことなく細長孔45の開口47に対向する部分から直接吐出するエアの吐出圧力より小さくなる。これにより、細長孔45の開口47に対向する部分から吐出するエア圧力を所望の圧力に維持しつつ、細長孔45の上流側端部EG1及び下流側端部EG2から吐出するエアの吐出圧力を低くすることができる。
【0058】
このように細長孔45の上流側端部EG1及び下流側暗部EG1から吐出する気体の吐出圧力が低くなることにより、上述したのと同様に、細長孔45の上流側端部EG1及び下流側端部EG2それぞれの対向領域Ebにおいてベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難くなる。よって、細長孔45から吐出するエアが吹き付けられるシート状物100がベルヌーイ効果に起因した負圧状態を受け難くなり、そのエアが吹き付けられるシート状物100が安定的に移動し得る。そして、その安定的に搬送されるシート状物100の表面に、細長孔45(吐出口)から吐出するエアが吹き付けられつつ、前側第1吸引口21a、前側第2吸引口21b、後側第1吸引口22a及び後側第2吸引口22bを通してシート状物100の表面上のエアが吸引され、そのシート状物100の表面の塵埃が除去(除塵)される。
【0059】
この場合も、シート状物100を安定的に搬送しつつ、その表面の塵埃を除去することができるので、細長孔45(吐出口)から吐出するエアを受けるシート状物100を安定的に移動させるために除塵装置10の配置位置の制限が少なくなる。そのため、除塵装置がより使い勝手の良いものとなる。
【0060】
上述した各除塵装置10は、ガラス基板や半導体基板のような板状物の除塵を行うシステムに適用することができる。例えば、除塵対象物となる板状物150を、高価な吸着テーブルに吸着固定せずに、図14に示すように、簡易的な台座60に載置し、その状態で、板状物150の表面に対向する除塵装置10を移動させる。この場合、除塵装置10(除塵ヘッド)の吐出口30(36)からエアを吐出する際にベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難いので、簡易な台座60に載置された板状物150の姿勢を安定的に維持しつつ(浮き上がりを防止しつつ)、その板状物150の表面の塵埃を除去することができる。
【0061】
また、例えば、図15に示すように、ローラコンベア62で搬送される除塵対象の板状物150の両面のそれぞれに対向するように除塵装置10を配置するのではなく、板状物150の片面に対向するように除塵装置10が配置される。この場合も、除塵装置10(除塵ヘッド)の吐出口30(36)からエアを吐出する際にベルヌーイ効果に起因した負圧状態が発生し難いので、ローラコンベア62によって搬送される板状物150の姿勢を安定的に維持しつつ(浮き上がりを防止しつつ)、その板状物150の表面(片面)の塵埃を除去することができる。
【0062】
このように、上述した除塵装置10は、板状物150を除塵対象物とした場合も、吐出口30(36)から吐出するエアを受けるその除塵対象物(板状物150)を安定的に相対移動させるための仕組みを簡素化することができる(吸着テーブルではなく簡易的な台座60、ローラコンベア150と対向する2つの除塵装置ではなく、ローラコンベア150と1つの除塵装置10)。その結果、上述した除塵装置10は、より使い勝手の良いものとなる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る除塵装置は、使い勝手が良く、相対移動する除塵対象物の表面に対して気体を吐出しつつ、その除塵対象物の表面上の気体を吸引することにより前記除塵対象物表面の塵埃を除去する除塵装置として有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 除塵装置
11 除塵ヘッド
11a ヘッドブロック
11b 吸引調整プレート
12 給気ポート
13 排気ダクトユニット
13a フランジ
14 排気ポート
15 エア噴射室
16a 前側エア吸引室
16b 後側エア吸引室
17a 前側吸引調整孔
17b 後側吸引調整孔
21a 前側第1吸引口
21b 前側第2吸引口
22a 後側第1吸引口
22b 後側第2吸引口
30 吐出口
30a スリット
31 溝
32a 連結路
32b 気体吐出路
33 開口
36 吐出口
36a 長手方向スリット
36b スリット
45 細長孔
46a 連結路
46b 気体吐出路
47 開口
60 台座
62 ローラコンベア
100 シート状物
150 板状物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15