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特許7098202ブリスター容器の封緘方法および封緘構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ブリスター容器の封緘方法および封緘構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/32 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
B65D75/32
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021501960
(86)(22)【出願日】2020-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2020005929
(87)【国際公開番号】W WO2020170992
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2019029827
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019196610
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592256140
【氏名又は名称】兼子電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】兼子 敏
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-301717(JP,A)
【文献】登録実用新案第3035557(JP,U)
【文献】特開2005-145496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0283139(US,A1)
【文献】特開2017-222380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/32
B65D 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状樹脂からなる蓋(3)を被せるブリスター容器(10)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に一体的に形成される中空の第1突出部(2c)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3a,3b)と、
前記受け容器のフランジ部に重なる前記蓋本体部の所定位置に一体的に形成される中空の第2突出部(3c)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
1A.前記第1突出部と前記第2突出部とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
1B.前記封緘部における前記第1突出部および前記第2突出部のうち、内側の突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
1C.前記封緘部における前記第1突出部および前記第2突出部のうち、外側の突出部のシート外壁に沿って、前記封緘部よりも低い高さになるように外ガイド部材(17)を配置する工程と、
1D.前記封緘部に前記内ガイド部材および前記外ガイド部材を配置した状態で、前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記封緘部のシート壁のうち前記外ガイド部材の高さを超える部分を、同外ガイド部材の高さを超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とするブリスター容器の封緘方法。
【請求項2】
請求項1記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
しかも、前記第1突出部と前記第2突出部とが引き離されると、前記断面茸形の二重シート壁が塑性変形するように構成される、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項3】
請求項1記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記断面茸形の二重シート壁は、
前記断面茸形の脚部分を形成する下部壁(5A)と、
前記下部壁に連なって前記断面茸形の傘下部分を形成するとともに、前記断面茸形の先端側に向けて外径が拡大するように傾斜するテーパ状の中間壁(5B)と、
前記中間壁に連なって前記断面茸形の傘上部分を形成する上部壁(5C)と、
を備える、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項4】
請求項1記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁には、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項5】
請求項1記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる構成とした。
【請求項6】
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状樹脂からなる蓋(3)を被せるブリスター容器(10:図1参照)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に一体的に形成される中空の第1突出部(2c)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3a,3b)と、
前記受け容器のフランジ部に重なる前記蓋本体部の所定位置に一体的に形成される中空の第2突出部(3c)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
2A.前記第1突出部と前記第2突出部とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
2B.前記封緘部における前記第1突出部および前記第2突出部のうち、内側の突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
2C.前記内ガイド部材を上方から加圧可能なプレス型(12)を準備するとともに、このプレス型における凹形の加圧面(16)を、前記内ガイド部材の上方に配置する工程、
2D.前記封緘部に前記内ガイド部材を配置した状態で、前記プレス型により前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記凹形の加圧面に囲まれた空隙に前記封緘部の先端部分を収めることにより、前記封緘部のシート壁のうち前記受け容器と前記蓋とを重ね合わせた前記封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とする、ブリスター容器の封緘方法。
【請求項7】
請求項6記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う扁平な断面茸形の二重シート壁になっており、
しかも、前記第1突出部と前記第2突出部とが引き離されると、前記断面茸形の二重シート壁が塑性変形するように構成される、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項8】
請求項6記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う扁平な断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項9】
請求項6記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う扁平な断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項10】
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状樹脂からなる蓋(3)を被せるブリスター容器(60:図16参照)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に設けられる貫通孔(2f:図16~17参照)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3a,3b)と、
前記蓋本体部の前記受け容器のフランジ部に重なる所定位置に一体的に形成される中空の突出部(3f:図16~17参照)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
3A.前記突出部と前記貫通孔とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
3B.前記封緘部における前記突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
3C.前記内ガイド部材を上方から加圧可能なプレス型(12)を準備するとともに、このプレス型における凹形の加圧面(16)を、前記内ガイド部材の上方に配置する工程、
3D.前記封緘部に前記内ガイド部材を配置した状態で、前記プレス型により前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記凹形の加圧面に囲まれた空隙に前記突出部の先端部分を収めることにより、前記突出部のシート壁のうち前記受け容器と前記蓋とを重ね合わせた前記封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とする、ブリスター容器の封緘方法。
【請求項11】
請求項10記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
しかも、前記貫通孔と前記突出部とが引き離されると、前記断面茸形のシート壁が塑性変形するように構成される、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項12】
請求項10記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項13】
請求項10記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項14】
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状の蓋(3)を被せるブリスター容器(70:図18参照)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に一体的に形成される中空の突出部(2g:図18参照)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3)と、
前記蓋本体部の前記受け容器のフランジ部に重なる所定位置に設けられる貫通孔(3g:図19参照)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
4A.前記突出部と前記貫通孔とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
4B.前記封緘部における前記突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
4C.前記内ガイド部材を上方から加圧可能なプレス型(12)を準備するとともに、このプレス型における凹形の加圧面(16)を、前記内ガイド部材の上方に配置する工程、
4D.前記封緘部に前記内ガイド部材を配置した状態で、前記プレス型により前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記凹形の加圧面に囲まれた空隙に前記突出部の先端部分を収めることにより、前記突出部のシート壁のうち前記受け容器と前記蓋とを重ね合わせた前記封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とする、ブリスター容器の封緘方法。
【請求項15】
請求項14記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
しかも、前記貫通孔と前記突出部とが引き離されると、前記断面茸形のシート壁が塑性変形するように構成される、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項16】
請求項14記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁に、前記受け容器および前記蓋から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項17】
請求項14記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【請求項18】
請求項14記載の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
シート状樹脂からなる前記受け容器(2:図18参照)と、
前記シート状樹脂とは異なる材質の台紙からなる前記シート状の蓋(3:図19参照)とを備え、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と、前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器のシート壁における前記封緘部の根元から僅かに離れた位置に、同シート壁から前記封緘部を部分的に切り離すための環状のカット部(L:図20参照)が設けられる、ブリスター容器の封緘構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート状樹脂からなるブリスター容器に適した封緘方法および封緘構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にシート状樹脂からなるブリスター容器は、真空成形もしくは圧空成形技術で加工されている。その成形品は、物品を収納する受け容器と、別に成形された蓋とを組み合わせるか、受け容器と蓋とが一体成形されたもの(通称シェルパック)を二枚折りする形態となる。そして、これらの封緘部は、受け容器と蓋のシート壁にそれぞれ中空の突出部を一体的に形成しておき、一方の突出部に他方の突出部を重ね合わせる。つまり、一方の突出部の外側が雄側になり、他方の突出部の内側が雌側になって両者が嵌まり合うようになっている。
【0003】
このようなブリスター容器では、受け容器と蓋との封緘部に、真空成形もしくは圧空成形技術によるアンダーカットが採用される。例えば突出部の根元側を先端側より幅狭にすることで、雄雌の突出部の嵌合状態を安定させている。これにより、受け容器と蓋のそれぞれの突出部同士を嵌め合わせるだけでブリスター容器を簡易的に封緘することができる。
【0004】
一方、このようなブリスター容器により物品を包装する場合には、上記のような簡易的な封緘のみでは、衝撃、落下あるいは故意による開封が起こりうる可能性が大きい。また、ブリスター容器に入れた物品が改ざんされた場合に、開封されたか否かの痕跡が残らないため、物品包装の信頼性に欠けるものとなる。
【0005】
そこで、従来、ブリスター容器による封緘を行う場合には、雄雌の突出部を嵌め合わせる一次工程に加えて、各種の改ざん防止用の対策が二次工程により実施されている。
例えば卵パック等では簡易的な封緘の後で開封口を粘着テープで留めたり、開封口をヒートシールして受け容器の一部にミシン目等を施し、この部分を破断して開封するようにしている。弁当箱等では開封口全周をフィルムで包み込んだり、開封口にシールを貼ったり、ステープラ留めを行ったりして改ざん防止対策を施している。
なお、シート状樹脂からなるブリスター容器の従来技術としては特許文献1が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-122868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のブリスター容器の封緘方法によれば、雄雌の突出部を嵌め合わせる一次工程を手作業で行う場合が多く、その後の二次工程を専用機で行うにしても、専用機にブリスター容器と包装材とをセットする作業に手間がかかる。また、ブリスター容器の開封口をヒートシールする場合、シール部分の熱溶着(通常一回当たり10~15秒程度かかる。)に時間を要することから、封緘作業の効率が悪くなる。大量の容器を扱う場合には、このような問題がより顕著になる。
【0008】
さらに、従来のブリスター容器の封緘方法において、二次工程にテープやシールなどの包装材を使用する場合、開封時にこれらの包装材がゴミとなってしまう。近年、ブラスチックゴミの排出量低減などの要請が高まっており、包装材の使用を抑制することは環境対策としても有効である。
【0009】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、その目的は、上記で示されたような改ざん防止のための封緘作業(二次工程)の手間と時間を軽減し、しかもテープやシールなどの包装材が不要なブリスター容器の封緘方法および封緘構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため、ブリスター容器における封緘部の位置や形状について改良を試みた。各種の試作品による封緘を繰り返す中で、受け容器と蓋の突出部同士を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程とを融合させる点に着眼した。そして、受け容器と蓋の突出部同士を嵌め合わせて簡易封緘した後、この封緘部をプレス成形によって再加工することにより適度な抜け止め機能を実現できることを見出した。つまり、一次工程で得られる二重シート壁の突出部(封緘部)を、そのまま“茸形(若しくは碇形)”の断面に押圧成形して抜け止め構造とすることにより、本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
[封緘方法および封緘構造(1):第1~5発明]
(第1発明)
前記課題を解決するために本発明よるブリスター容器の封緘方法は、下記の工程を採用することとした。すなわち、
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状樹脂からなる蓋(3)を被せるブリスター容器(10)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に一体的に形成される中空の第1突出部(2c)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3a,3b)と、
前記受け容器のフランジ部に重なる前記蓋本体部の所定位置に一体的に形成される中空の第2突出部(3c)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
1A.前記第1突出部と前記第2突出部とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
1B.前記封緘部における前記第1突出部および前記第2突出部のうち、内側の突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
1C.前記封緘部における前記第1突出部および前記第2突出部のうち、外側の突出部のシート外壁に沿って、前記封緘部よりも低い高さになるように外ガイド部材(17)を配置する工程と、
1D.前記封緘部に前記内ガイド部材および前記外ガイド部材を配置した状態で、前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記封緘部のシート壁のうち前記外ガイド部材の高さを超える部分を、同外ガイド部材の高さを超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とする。
【0012】
(第1発明の効果)
第1発明のブリスター容器の封緘方法によれば、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせた封緘部をそのままプレス成形することにより、封緘部の外ガイド部材の高さを超える部分を、同外ガイド部材の高さを超えない部分よりも幅広の形状にする。つまり、封緘部のシート壁がプレス成形によって断面茸形(若しくは碇形)の形状に変形し、抜け止めとなる。これにより、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
【0013】
(第2発明)
前記課題を解決するために本発明よるブリスター容器の封緘構造は、下記の特徴を備えるものとした。すなわち、
第1発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
しかも、前記第1突出部と前記第2突出部とが引き離されると、前記断面茸形の二重シート壁が塑性変形する構成とした。
【0014】
(第2発明の効果)
第2発明のブリスター容器の封緘構造によれば、第1発明の封緘方法を採用することにより、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘部(第1突出部および第2突出部)を断面茸形の二重シート壁にすることにより、これらのシート壁同士が係止し合って互いに外れなくなる。これにより、封緘時にテープやシールといった包装材が不要になるため、ブリスター容器の開封時のゴミの発生を抑えることができる。
さらに、ブリスター容器の開封時に受け容器と蓋の封緘部(第1突出部および第2突出部)を引き離すと、これらのシート壁に塑性変形による破断や潰れが生じるため、その開封の痕跡を確実に残すことができる。これにより、改ざん防止効果を良好にしてブリスター容器による物品包装の信頼性を高めることができる。
【0015】
(第3発明)
第1発明によるブリスター容器の封緘方法を採用する場合、シート状樹脂の材質や厚みによっては、断面茸形の封緘部の強度が大きすぎて開封作業に支障を来すことが起こりうる。
そこで、第3発明よるブリスター容器の封緘構造は、以下の特徴を備えるものとした。すなわち、
第1発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記断面茸形の二重シート壁は、
前記断面茸形の脚部分を形成する下部壁(5A)と、
前記下部壁に連なって前記断面茸形の傘下部分を形成するとともに、前記断面茸形の先端側に向けて外径が拡大するように傾斜するテーパ状の中間壁(5B)と、
前記中間壁に連なって前記断面茸形の傘上部分を形成する上部壁(5C)と、
を備える構成とした。
【0016】
(第3発明の効果)
本発明のブリスター容器の封緘構造によれば、受け容器と蓋の封緘する断面茸形の二重シート壁に、先端側に向けて外径が拡大するテーパ状の中間壁を備えているため、受け容器と蓋の封緘部(第1突出部および第2突出部)を引き離すときに、このテーパ状の中間壁に剪断力が生じやすくなる。これにより、受け容器と蓋の封緘部(第1突出部および第2突出部)を比較的簡単に引き剥がすことが可能になり、開封時の作業性を向上させることができる。
【0017】
(第4発明)
また、第4発明よるブリスター容器の封緘構造は、第1発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁には、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる構成とした。
【0018】
(第4発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器および蓋のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(第1突出部および第2突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0019】
(第5発明)
第5発明よるブリスター容器の封緘構造は、第1発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる構成とした。
【0020】
(第5発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器または蓋のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(第1突出部および第2突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0021】
[封緘方法および封緘構造(2):第6~9発明]
(第6発明)
第1発明のブリスター容器の封緘方法では、ブリスター容器の封緘部を内ガイド部材と外ガイド部材とを用いてプレス成形するが、下記の第6発明に示すように、内ガイド部材のみを用いてプレス成形してもよい。
【0022】
すなわち、第6発明よるブリスター容器の封緘方法は、
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状樹脂からなる蓋(3)を被せるブリスター容器(10:図1参照)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に一体的に形成される中空の第1突出部(2c)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3a,3b)と、
前記受け容器のフランジ部に重なる前記蓋本体部の所定位置に一体的に形成される中空の第2突出部(3c)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
2A.前記第1突出部と前記第2突出部とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
2B.前記封緘部における前記第1突出部および前記第2突出部のうち、内側の突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
2C.前記内ガイド部材を上方から加圧可能なプレス型(12)を準備するとともに、このプレス型における凹形の加圧面(16)を、前記内ガイド部材の上方に配置する工程、
2D.前記封緘部に前記内ガイド部材を配置した状態で、前記プレス型により前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記凹形の加圧面に囲まれた空隙に前記封緘部の先端部分を収めることにより、前記封緘部のシート壁のうち前記受け容器と前記蓋とを重ね合わせた前記封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とする。
【0023】
(第6発明の効果)
本発明のブリスター容器の封緘方法によれば、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせた封緘部をそのままプレス成形することにより、この封緘部のシート壁のうち受け容器と蓋とを重ね合わせた封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広の形状にする。つまり、封緘部の先端部分のシート壁がプレス成形によって扁平な断面茸形(若しくは碇形)の形状に変形し、抜け止めとなる。これにより、第1発明と同様に、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
【0024】
(第7発明)
第7発明よるブリスター容器の封緘構造は、下記の特徴を備えるものとした。
すなわち、第6発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う扁平な断面茸形の二重シート壁になっており、
しかも、前記第1突出部と前記第2突出部とが引き離されると、前記断面茸形の二重シート壁が塑性変形する構成とした。
【0025】
(第7発明の効果)
第7発明のブリスター容器の封緘構造によっても、前述と同様な効果が得られる。つまり、第5発明の封緘方法を採用することにより、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘にテープやシールといった包装材が不要になるため、ブリスター容器の開封時のゴミの発生を抑えることができる。
さらに、ブリスター容器の開封時に受け容器と蓋の封緘部(第1突出部および第2突出部)を引き離すと、これらのシート壁に塑性変形による破断や潰れが生じるため、その開封の痕跡を確実に残すことができる。これにより、改ざん防止効果を良好にしてブリスター容器による物品包装の信頼性を高めることができる。
【0026】
(第8発明)
第8発明によるブリスター容器の封緘方法を採用する場合、シート状樹脂の材質や厚みによっては、断面茸形の封緘部の強度が大きすぎて開封作業に支障を来すことが起こりうる。
そこで、第8発明よるブリスター容器の封緘構造は、第6発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う扁平な断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる構成とした。
【0027】
(第8発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器および蓋のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(第1突出部および第2突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0028】
(第9発明)
第9発明よるブリスター容器の封緘構造は、第6発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記第1突出部および前記第2突出部のシート壁が互いに重なり合う扁平な断面茸形の二重シート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる構成とした。
【0029】
(第9発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器または蓋のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(第1突出部および第2突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0030】
[封緘方法および封緘構造(3):第10~18発明]
第1発明および第6発明の封緘方法は、受け容器と蓋にそれぞれ突出部(第1突出部および第2突出部)を形成し、これらを嵌め合わせて封緘部とするものである。
これに対し、第10発明の封緘方法は、受け容器に貫通孔を設けるとともに、蓋に突出部を形成して、これらを嵌め合わせて封緘部とするものである。
【0031】
すなわち、第10発明よるブリスター容器の封緘方法は、
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状樹脂からなる蓋(3)を被せるブリスター容器(60:図16参照)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に設けられる貫通孔(2f:図16~17参照)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3a,3b)と、
前記蓋本体部の前記受け容器のフランジ部に重なる所定位置に一体的に形成される中空の突出部(3f:図16~17参照)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
3A.前記突出部と前記貫通孔とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
3B.前記封緘部における前記突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
3C.前記内ガイド部材を上方から加圧可能なプレス型(12)を準備するとともに、このプレス型における凹形の加圧面(16)を、前記内ガイド部材の上方に配置する工程、
3D.前記封緘部に前記内ガイド部材を配置した状態で、前記プレス型により前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記凹形の加圧面に囲まれた空隙に前記突出部の先端部分を収めることにより、前記突出部のシート壁のうち前記受け容器と前記蓋とを重ね合わせた前記封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とする。
【0032】
(第10発明の効果)
本発明のブリスター容器の封緘方法によれば、突出部と貫通孔とを嵌め合わせた封緘部をそのままプレス成形することにより、突出部のシート壁のうち受け容器と蓋とを重ね合わせた封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広の形状にする。つまり、突出部のシート壁がプレス成形によって断面が扁平な茸形(若しくは碇形)の形状に変形し、抜け止めとなる。これにより、受け容器および蓋における貫通孔と突出部とを嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
【0033】
(第11発明)
第11発明よるブリスター容器の封緘構造は、第10発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
しかも、前記貫通孔と前記突出部とが引き離されると、前記断面茸形のシート壁が塑性変形する構成とした。
【0034】
(第11発明の効果)
第11発明のブリスター容器の封緘構造によれば、第10発明の封緘方法を採用することにより、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘にテープやシールといった包装材が不要になるため、ブリスター容器の開封時のゴミの発生を抑えることができる。
さらに、ブリスター容器の開封時に受け容器と蓋の封緘部(貫通孔および突出部)を引き離すと、これらのシート壁に塑性変形による破断や潰れが生じるため、その開封の痕跡を確実に残すことができる。これにより、改ざん防止効果を良好にしてブリスター容器による物品包装の信頼性を高めることができる。
【0035】
(第12発明)
第10発明によるブリスター容器の封緘方法を採用する場合、シート状樹脂の材質や厚みによっては、断面茸形の封緘部の強度が大きすぎて開封作業に支障を来すことが起こりうる。
そこで、第12発明よるブリスター容器の封緘構造は、第10発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる構成とした。
【0036】
(第12発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器および蓋のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(貫通孔および突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0037】
(第13発明)
さらに、第13発明よるブリスター容器の封緘構造は、第10発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる構成とした。
【0038】
(第13発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器または蓋のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(貫通孔および突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0039】
[封緘方法および封緘構造(4):第14~18発明]
第10発明の封緘方法では、受け容器に貫通孔を設けるとともに、蓋に突出部を形成するが、第14発明の封緘方法では、貫通孔と突出部の位置関係を逆にした。つまり、第14発明の封緘方法は、受け容器に突出部を設けるとともに、蓋に貫通孔を形成して、これらを嵌め合わせて封緘部とするものである。この場合、蓋には加圧成形をする必要がなく、孔加工をすれば足りるため、蓋の材料はシート状樹脂でなくても構わない。
【0040】
すなわち、第14発明よるブリスター容器の封緘方法は、
シート状樹脂からなる受け容器(2)に物品(M)を収納し、この受け容器にシート状の蓋(3)を被せるブリスター容器(70:図18参照)の封緘方法であって、
前記受け容器は、
前記物品の収納空間を仕切るように形成される収容部(2a)と、
この収容部の周囲に沿って連なるフランジ部(2b)と、
前記フランジ部の所定位置に一体的に形成される中空の突出部(2g:図18参照)とを備え、
前記蓋は、
前記受け容器の収容部の収容口を封鎖するともに、前記受け容器のフランジ部に重なる蓋本体部(3)と、
前記蓋本体部の前記受け容器のフランジ部に重なる所定位置に設けられる貫通孔(3g:図19参照)と、
を備えており、
前記受け容器に前記蓋を被せる際、
4A.前記突出部と前記貫通孔とを嵌め合わせることにより封緘部(5)を形成する工程と、
4B.前記封緘部における前記突出部の中空空間に、同突出部のシート内壁に沿って高さ方向に移動可能な内ガイド部材(14)を配置する工程と、
4C.前記内ガイド部材を上方から加圧可能なプレス型(12)を準備するとともに、このプレス型における凹形の加圧面(16)を、前記内ガイド部材の上方に配置する工程、
4D.前記封緘部に前記内ガイド部材を配置した状態で、前記プレス型により前記封緘部を前記内ガイド部材と共に上方からプレスし、前記凹形の加圧面に囲まれた空隙に前記突出部の先端部分を収めることにより、前記突出部のシート壁のうち前記受け容器と前記蓋とを重ね合わせた前記封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広になるように成形する工程と、を行うことを特徴とする。
【0041】
(第14発明の効果)
本発明のブリスター容器の封緘方法によれば、突出部と貫通孔とを嵌め合わせた封緘部をそのままプレス成形することにより、突出部のシート壁のうち受け容器と前記蓋とを重ね合わせた封緘部周囲のシート厚を超える部分を、同シート厚を超えない部分よりも幅広の形状にする。つまり、突出部のシート壁がプレス成形によって断面が扁平な茸形(若しくは碇形)の形状に変形し、抜け止めとなる。これにより、受け容器および蓋における突出部と貫通孔とを嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
【0042】
(第15発明)
第15発明よるブリスター容器の封緘構造は、第14発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
しかも、前記貫通孔と前記突出部とが引き離されると、前記断面茸形のシート壁が塑性変形する構成とした。
【0043】
(第15発明の効果)
第15発明のブリスター容器の封緘構造によれば、第14発明の封緘方法を採用することにより、受け容器と蓋の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器と蓋との封緘にテープやシールといった包装材が不要になるため、ブリスター容器の開封時のゴミの発生を抑えることができる。
さらに、ブリスター容器の開封時に受け容器と蓋の封緘部(貫通孔および突出部)を引き離すと、これらのシート壁に塑性変形による破断や潰れが生じるため、その開封の痕跡を確実に残すことができる。これにより、改ざん防止効果を良好にしてブリスター容器による物品包装の信頼性を高めることができる。
【0044】
(第16発明)
第14発明によるブリスター容器の封緘方法を採用する場合、シート状樹脂の材質や厚みによっては、断面茸形の封緘部の強度が大きすぎて開封作業に支障を来すことが起こりうる。
そこで、第16発明よるブリスター容器の封緘構造は、第14発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器および前記蓋におけるシート壁に、前記受け容器および前記蓋から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図15参照)が設けられる構成とした。
【0045】
(第16発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器および蓋からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(貫通孔および突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0046】
(第17発明)
さらに、第17発明よるブリスター容器の封緘構造は、第14発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器または前記蓋のうちいずれか一方のシート壁に、同シート壁から前記封緘部を切り離すためのカット部(L:図16参照)が設けられる構成とした。
【0047】
(第17発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器または蓋のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(貫通孔および突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0048】
(第18発明)
さらに、第18発明よるブリスター容器の封緘構造は、第14発明の封緘方法により封緘されるブリスター容器の封緘構造であって、
シート状樹脂からなる前記受け容器(2:図18参照)と、
前記シート状樹脂とは異なる材質の台紙からなる前記シート状の蓋(3:図19参照)とを備え、
前記封緘部は、前記貫通孔の周縁のシート壁と、前記突出部のシート壁とが互いに重なり合う扁平な断面茸形のシート壁になっており、
加えて、前記受け容器のシート壁における前記封緘部の根元から僅かに離れた位置に、同シート壁から前記封緘部を部分的に切り離すための環状のカット部(L:図20参照)が設けられる構成とした。
【0049】
(第18発明の効果)
このようなブリスター容器の封緘構造によれば、ブリスター容器から収納物品を取り出す際に、受け容器のシート壁からカット部に沿って封緘部を切り離すことで、受け容器と蓋とが開封する。これにより、封緘部(貫通孔および突出部)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
また、受け容器のシート壁における封緘部の根元から僅かに離れた位置にカット部が設けられるため、受け容器と蓋との開封時に、受け容器から封緘部が部分的に分離される。これにより、受け容器と蓋との材料を効率よく分別回収することができる。
さらに、受け容器から分離される封緘部は蓋の貫通孔にそのまま残るため、開封時に、封緘部を形成するシート状樹脂の分離片が周りに飛散するの防ぐことができる。
【0050】
(第1~18発明)
第1~18発明において、ブリスター容器の受け容器と蓋は、別々に形成されたものであってよいし、一体的に繋がったシェル型のものであってよい。
ブリスター容器に収納する物品としては、例えば各種製品やその部品、食品、薬品等が挙げられる。特に、ネジ、フック、替え針、替え刃、電子部品等の包装に用いると効果的である。本発明の効果を得られるものであれば物品の種類や個数が限定されることはない。ブリスター容器のサイズや形状は、収納する物品に応じて適宜選定することができる。
ブリスター容器の封緘部(第1突出部および第2突出部)にはアンダーカットを採用してもよいし、採用しなくてもよい。
また、ブリスター容器の複数箇所に封緘部を設けるとともに、これらのうち、一部の封緘部に上記工程1A~1D、2A~2D、3A~3Dまたは4A~4Dを行い、残りの封緘部にはこれらの工程によるプレス成形を行わないようにしてもよい。このような封緘方法を採用することで、開封時に一部の封緘部が塑性変形により破断若しくは潰れたとしても、残りの封緘部によって同容器を再封緘(簡易封緘)することが可能になる。
ブリスター容器に封緘用の突出部を成形する工程と、この突出部を上記のようにプレス成形して封緘する工程とを同時に行うことも可能である。
ブリスター容器の封緘部を切り離すためのカット部は、受け容器と蓋とを引き離すときに、シート壁の破断を促すようなものであればよい。例えば、シート壁にハーフカットやミシン目カット、スリットなどによる加工を施したものをカット部とすることができる。また、シート壁の厚みを切り離し部分に沿って極端に小さく加工したもの(薄肉壁)をカット部としてもよい。
なお、第1~18発明には本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の構成要素との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の第1実施形態に係るブリスター容器を示す斜視図である。
図2】同ブリスター容器の封緘前の状態を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図3】同ブリスター容器の簡易封緘(一次工程)を説明するもので、(A)は封緘前の側面図、(B)は封緘後の側面図である。
図4】同ブリスター容器の封緘部をプレス成形した状態(二次工程)を示すもので、(A)はプレス成形後の側面図、(B)は[B]部分の拡大断面図である。
図5】同ブリスター容器の封緘部をプレス成形するための封緘装置を示す模式断面図である。
図6】同封緘装置を示すもので、プレス成形前のブリスター容器の状態を示す模式断面図である。
図7】同封緘装置を示すもので、プレス成形後のブリスター容器の状態を示す模式断面図である。
図8】第2実施形態によるブリスター容器を示すもので、(A)は同容器の封緘部をプレス成形した後の状態を示す側面図、(B)は[B]部分の拡大断面図である。
図9】第2実施形態によるブリスター容器の封緘部をプレス成形するための封緘装置を示す模式断面図である。
図10】第3実施形態によるブリスター容器の簡易封緘前の状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図11】第3実施形態によるブリスター容器を示すもので、(A)は簡易封緘後の状態を示す模式断面図、(B)は同容器の封緘部をプレス成形した後の状態を示す模式断面図である。
図12】第4実施形態によるブリスター容器の封緘部をプレス成形した状態(二次工程)を示すもので、(A)はプレス成形後の側面図、(B)は[B]部分の拡大断面図である。
図13】第4実施形態によるブリスター容器の封緘部をプレス成形するための封緘装置を示す模式断面図である。
図14】第5実施形態によるブリスター容器の簡易封緘前の状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図15】第5実施形態によるブリスター容器を示すもので、同容器の封緘部をプレス成形した後および開封後の状態を示す平面図である。
図16】第6実施形態によるブリスター容器の簡易封緘前の状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図17】第6実施形態によるブリスター容器の封緘部を示すもので、(A)はプレス成形前、(B)はプレス成形後、(C)は開封後の状態を示す拡大断面図である。
図18】第7実施形態によるブリスター容器の受け容器を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図19】第7実施形態によるブリスター容器の蓋を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
図20】第7実施形態による受け容器の突出部を示すもので、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図21】第7実施形態によるブリスター容器の封緘部を示すもので、(A)はプレス成形前、(B)はプレス成形後、(C)は開封後の状態を示す拡大断面図である。
図22】変形例1による封緘部を示す拡大断面図である。
図23】変形例2による突出部を示す拡大断面図である。
図24】変形例2による封緘部を示すもので、(A)はプレス成形前、(B)はプレス成形後、(C)は開封後の状態を示す拡大断面図である。
図25】変形例2による他の封緘部を示すもので、(A)はプレス成形前、(B)はプレス成形後、(C)は開封後の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は下記の実施形態の構成に限定されるものではない。
[第1実施形態]
第1実施形態のブリスター容器10を図1に示す。本実施形態はシェル型のブリスター容器10に本発明を適用したものである。
ブリスター容器10は、透明または半透明のシート状樹脂からなるもので、真空成形若しくは圧空成形により一体的に形成される。図2および図3に示すように、上容器2と下容器3とがヒンジ4を介して連結される。その一方が本発明の受け容器に相当し、他方が蓋に相当するものである。下容器3に上容器2が被せられると、両者の間に物品Mが収納される(図3(B)参照)。
【0053】
ブリスター容器10の材料は、収納する物品Mのサイズや用途に応じて選定される。例えば、ポリビニール系樹脂(PVC硬質、PVC軟質、PVDC、PVA)、ポリスチレン系樹脂(PS、AS、ABS、HDPE、LDPE、EVA)、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル系(PMMA、MS)、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン系)、ポリウレタン、フッ素系樹脂 (3フッ化塩化エチレン、4フッ化エチレン、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン)等を採用することができる。シート厚は0.3~1mm程度である。
【0054】
ブリスター容器10には、ヒンジ4と反対側の位置に平面方向から見て長円形の封緘部5が形成されている。この封緘部5は、上容器2と下容器3の突出部2c,3cがプレス成形により断面茸形に加工されてなる(図3および図4参照)。この封緘部5の形状により上容器2と下容器3とが簡単には開放しないように保たれ、物品Mを収納したブリスター容器10の衝撃や落下あるいは故意による改ざんが防止される。
【0055】
図2に示すように、封緘前のブリスター容器10は、シート状の上容器2と下容器3とが平面方向に連結される。上容器2と下容器3は、ヒンジ4を挟んで概ね上下対称の関係になっている。
上容器2は、平面矩形で断面コ字状の上収容部2aと、その外周に連なる上フランジ部2bとを備えている。上フランジ部2bの先端側には概ね台形にカットされた上タブ2dが設けられており、このタブと上収容部2aとの間に平面長円形で中空の上突出部2cが設けられる。
下容器3は、平面矩形で断面コ字状の下収容部3aと、その外周に連なる下フランジ部3bとを備えている。下フランジ部3bの先端側には概ね台形にカットされた下タブ3dが設けられており、この下タブ3dと下収容部3aとの間に平面長円形で中空の下突出部3cが設けられる。
ヒンジ4を折り曲げて上容器2と下容器3を合わせると、両者のフランジ部2b,3bがほぼぴったり重なり、これらの容器の収容口が封鎖される。
【0056】
上突出部2cと下突出部3cは、ヒンジ4から上下に等しい距離だけ離れた位置にあり、上突出部2cのサイズは下突出部3cと同一か、もしくは下突出部3cよりも大きい。上容器2と下容器3を合わせると、上突出部2cの内側に下突出部3cの外側が嵌まる(図3参照)。つまり、上突出部2cのシート内壁と、下突出部3cのシート外壁とが雄雌の関係になって、ブリスター容器10が簡易封緘されることになる。
【0057】
図4に示すように、プレス成形後の封緘部5は、両突出部2c,3cのシート壁が重なった断面茸形の二重シート壁になっている(図4(B)参照)。重なり合ったシート壁同士は、ほぼ密着した状態にあり、接着や溶着はされていない。上突出部2cと下突出部3cとが強制的に引き離されると、これらの二重シート壁が塑性変形を伴って破断するようになっている。
【0058】
封緘部5における二重シート壁は、その断面茸形の脚部分を形成する下部壁5Aと、下部壁5Aに連なって断面茸形の傘下部分を形成する中間壁5Bと、中間壁5Bに連なって断面茸形の傘上部分を形成する上部壁5Cとを備えている。
下部壁5Aは、封緘部5の周囲のフラットなシート壁から折れ曲がってそのまま中間壁5Bに連なる。これにより封緘部5の高さが抑えられてブリスター容器10の外観に封緘部5を目立ちにくくすることができる。また、封緘部5の高さを低くすることにより、ブリスター容器10に上突出部2cと下突出部3cを絞り加工(真空成形または圧空成形)する際の板厚減少(特に根元からの立ち上がり部分)を抑えることができ、封緘部5の二重シート壁の厚さをより均一に仕上げることが可能になる。さらには、上突出部2cと下突出部3cシート材料の節約にも役立つ。
中間壁5Bは、封緘部5の先端側に向けて外径が拡大するようにテーパ状に傾斜しており、その傾斜角は、根元側のフラットなシート面に対し適度な角度(40~60゜)を保つように設定されている。このように中間壁5Bが上向きに拡がるテーパ状の傾斜を有していることで、上突出部2cと下突出部3cとが引き離されるときに中間壁5Bの二重シート壁に剪断力が生じやすくなっている。
なお、中間壁5Bの傾斜角は、後述の封緘装置11におけるガイドプレート17によって設定されるが、封緘部5(上突出部2c,下突出部3c)が引き離される際に塑性変形が生じるようにシート材料や厚さに応じて適宜選定される。
【0059】
次に、ブリスター容器10の封緘部5をプレス成形するための封緘装置11について説明する。この封緘装置11は、簡易封緘されたブリスター容器10の封緘部5を断面茸形に加工するものである。
図5に示すように、封緘装置11は、上向き成型用の上型12と下型13とを備えている。図5では下型13を固定側とし、上型12を移動側としているが、これらを逆の関係にしてもよいし、両方を移動させてもよい。
下型13には可動パンチ14(内ガイド部材)と、バネ材15とが内蔵されている。可動パンチ14は、バネ材15によって常時上向きに支持されており、その上端は下型13から所定の長さだけ突き出た状態に保たれる。可動パンチ14の下端は、バネ材15と共に下型13内に収納される。上型12が下降すると、可動パンチ14がバネ材15を押し込みながら下方に移動する。上型12が上昇する際には、バネ材15の反発力で可動パンチ14が元に位置に戻る。
【0060】
上型12には封緘部5の形状に合わせて逃し部16(キャビティ)が設けられている。この逃し部16は、封緘部5よりも若干大きいサイズで長円形に窪んだ凹形(凹面形状)の加圧面を有する。可動パンチ14の軸線上に逃し部16が来るように配置されている。
【0061】
上型12と下型13の間には、水平方向に移動可能な一対のガイドプレート17,17(外ガイド部材)が設けられている。このガイドプレート17,17は、平面方向(図5で上方)から見ると、C字状若しくはコ字状のプレートが互いに向き合うように配置される。ガイドプレート17,17の内向き端は、封緘部5の中間壁5Bを成形可能な傾斜面となっている。
【0062】
簡易封緘されたブリスター容器10の封緘部5が可動パンチ14にセットされると、これに続いてガイドプレート17,17が左右内向きに移動し、封緘部5を環状に囲む位置に保持される(図6参照)。この状態で、上型12が下がって可動パンチ14を下方に押し込むと、ガイドプレート17に当たる位置(下死点)で停止する(図7参照)。このとき、可動パンチ14、上型12の逃し部16、およびガイドプレート17の各加圧面の間に空隙が生じ、この空隙内で封緘部5が成形される。
【0063】
次に、本実施形態のブリスター容器10の封緘方法について説明する。
ブリスター容器10を封緘する場合、前述したように、上容器2と下容器3の間に物品Mを収納し、両者の突出部同士を嵌め合わせて封緘部5を形成する(簡易封緘)。このような一次工程と併せ、二次工程としてこの封緘部5のシート壁を封緘装置11により断面茸形の形状にプレス成形する。
【0064】
封緘装置11を使用する場合、まず、簡易封緘したブリスター容器10を下型13に位置決めする。ブリスター容器10の位置決めは、下型13の可動パンチ14の先端部に、同容器の封緘部5を嵌めることにより行う。本実施形態では、下容器3の下突出部3cの中空空間にそのシート内壁に沿って高さ方向に移動可能に可動パンチ14が嵌まることになる。
なお、ブリスター容器10を位置決めする手順については、前述の簡易封緘の前にあらかじめ下容器3(下突出部3c)を可動パンチ14の先端に嵌めておき、その後、下容器3(下突出部3c)に上容器2(上突出部2c)を嵌め合わせるようにしてもよい。
【0065】
このようにブリスター容器10を下型13に位置決めした後、ガイドプレート17を作動させ、可動パンチ14側に移動させる。ガイドプレート17が可動パンチ14側に移動すると、図6に示すように、ブリスター容器10のフランジ部分にガイドプレート17が載り上がり、その内向き端が封緘部5(上突出部2c)のシート外壁を囲む位置に来る。そして、このガイドプレート17が封緘部5(上突出部2cおよび下突出部3c)よりも低い高さに保たれる。
【0066】
このような状態で上型12を下降させると、上型12が封緘部5を可動パンチ14とともに下方に押圧し、ガイドプレート17の位置(下死点)で停止する(図7参照)。このとき、封緘部5のシート壁のうちガイドプレート17の高さを超える部分は、上型12の逃し部16により幅広形状にに圧縮され、ガイドプレート17の高さを超えない部分は2つのガイドプレート17と可動パンチ14との間の隙間に留まる。これにより、封緘部5が断面茸形の形状に成形されることになる。
プレス成形された封緘部5は、断面茸形の二重シート壁となっているため、これが抜け止めとなって簡単に外れることはない。
【0067】
その後、上型12およびガイドプレート17を元の位置に復帰させると、バネ材15によって可動パンチ14が上昇し、封緘後のブリスター容器10が下型13から若干浮き上がった状態となる。下型13からブリスター容器10を外すことにより封緘作業が完了する。
さらに別のブリスター容器10の封緘を行う場合には、簡易封緘したブリスター容器10を順に封緘装置11にセットして同様の手順によりその封緘部5をプレス成形する。
【0068】
プレス成形により封緘されたブリスター容器10から物品Mを取り出す場合には、上容器2と下容器3の両タブを掴んで適度な力で引き離すと、ブリスター容器10が開放する。このとき、封緘部5の二重シート壁が塑性変形して破断するため、ブリスター容器10が開放された痕跡が残ることになる。
【0069】
このように本実施形態のブリスター容器10の封緘方法によれば、上容器2と下容器3の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、上容器2と下容器3との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
【0070】
また、ブリスター容器10の封緘構造によれば、前述の封緘方法による効果に加えて、ブリスター容器10の開封時に封緘部5のシート壁に塑性変形による破断や潰れが生じるため、その開封の痕跡を確実に残すことができる。これにより、改ざん防止効果を良好にしてブリスター容器10による包装の信頼性を高めることができる。
【0071】
さらに、ブリスター容器10の封緘構造によれば、上容器2と下容器3における封緘部5の断面茸形の二重シート壁に、下部壁5A(脚部分)から連なるテーパ状の中間壁5B(傘下部分)を備えているため、この中間壁5Bに剪断力が生じやすくなる。これにより、上容器2と下容器3の封緘部5(上突出部2cおよび下突出部3c)を比較的簡単に引き剥がすことが可能になり、開封時の作業性を向上させることができる。
【0072】
[第2実施形態]
第2実施形態のブリスター容器20を図8および図9に示す。第2実施形態のブリスター容器20は、封緘部5による断面茸形の二重シート壁をフラットな形状にしたものである。この封緘部5には、第1実施形態の中間壁5Bのようなテーパ状の傾斜面はない。
図8に示すように、ブリスター容器20は、上容器2と下容器3のフランジ部に両者の突出部2c,3cが嵌まり合う封緘部5が形成される。この封緘部5における二重シート壁は、図8(B)に示すように、その根元部分からほぼ垂直に立ち上がって断面茸形の脚部分を形成する下部壁5Aと、下部壁5Aからほぼ直角に折れ曲がって断面茸形の傘下部分を形成する中間壁5Bと、中間壁5Bに連なって断面茸形の傘上部分を形成する上部壁5Cとを備えている。つまり、封緘部5の中間壁5Bには上方に向かって拡大するようなテーパ状の傾斜面が形成されない。
【0073】
第2実施形態の構成によれば、第1実施形態の効果に加えて、ブリスター容器20の封緘部5を引き離す際に、その二重シート壁に剪断力が作用しにくくなる。これにより、包装後の物品Mを簡単には取り出せない封緘性能が強力なブリスター容器20を実現することができる。
なお、このようにブリスター容器20の封緘部5を成形するための封緘装置11は、基本的には第1実施形態と同様な構成を採用すればよい。例えば図9に示すように、下型13の可動パンチ14、上型12の逃し部16およびガイドプレート17の各加圧面を水平若しくは垂直な面にすることによりテーパ状の傾斜のない封緘部5を成形することが可能となる。
【0074】
[第3実施形態]
第3実施形態のブリスター容器30を図10および図11に示す。第1および第2実施形態では、ブリスター容器にスポット的な封緘部5を設ける構成としたが、第3実施形態では、平面方向からみて環状に連なった封緘部5を採用する構成とした。
図10に示すように、ブリスター容器30は、上容器2と下容器3に平面矩形で環状に連なった中空の突出部2c,3cを有している。上突出部2cは、上容器2の上収容部2aを囲むように上フランジ部2bに一体的に形成される。下突出部3cは、下容器3の下収容部3aを囲むように下フランジ部3bに一体的に形成される。下容器3と上容器2をヒンジ4を介して折り曲げて重ねると、これらの上突出部2cと下突出部3cが嵌め合わされて環状の封緘部5が形成される(図11参照)。
【0075】
第3実施形態のブリスター容器30を封緘する場合、図11(A)に示すように、上容器2と下容器3の両突出部2c,3cを環状に嵌め合わせて簡易封緘する。続いて、図11(B)に示すように、環状の封緘部5をプレス成形してその二重シート壁を断面茸形にする。これにより、上容器2と下容器3とが環状に封緘されてその改ざんが防止される。
なお、環状の封緘部5をプレス成形するための封緘装置11についても、基本的には第1実施形態と同様な構成を採用すればよい。例えば環状の封緘部5に合わせて上型12、可動パンチ14、ガイドプレート17等を環状に配置すれば足りる。
【0076】
第3実施形態の構成によれば、第1実施形態の効果に加え、環状の封緘部5によって上容器2と下容器3の密閉効果を高めることができる。封緘後の上容器2と下容器3の間にほとんど隙間が生じないため、両容器の隙間から異物を入れるなどの不正行為を未然に防止することができる。
【0077】
[第4実施形態]
第4実施形態のブリスター容器40を図12および図13に示す。第4実施形態は、ブリスター容器40の封緘部5を扁平な断面茸形にしたものである。第4実施形態では、封緘部5をプレス成形する際に、可動パンチ(内ガイド部材)のみを使用し、ガイドプレート(外ガイド部材)を使用しない。
【0078】
図12に示すように、ブリスター容器40は、上容器2と下容器3のフランジ部に両者の突出部2c,3cが嵌まり合う封緘部5が形成される。この封緘部5における二重シート壁は、図12(B)に示すように、その根元から立ち上がって断面茸形の脚部分を形成する下部壁5Aと、下部壁5Aからほぼ直角に折れ曲がって断面茸形の傘下部分を形成する中間壁5Bと、中間壁5Bに連なって断面茸形の傘上部分を形成する上部壁5Cとを備えている。これらのシート壁は、ほぼ180゜で2回折り返された格好になっており、互いに密着して重なり合っている。
【0079】
ブリスター容器40の封緘部5をプレス成形するための封緘装置41は、図13に示すように、前述の第2実施形態の封緘装置からガイドプレート17が省略された構成となっている。
封緘装置41は、上向き成型用の上型12と下型13とを備えており、下型13には可動パンチ14(内ガイド部材)と、バネ材15とが設けられる。上型12には封緘部5の形状に合わせた逃し部16(キャビティ)が設けられている。この逃し部16は、封緘部5よりも若干大きいサイズで凹形(凹面形状)の加圧面を有する。可動パンチ14の上方軸線上に逃し部16が来るように配置されている。
なお、逃し部16における凹形の加工面の深さは、ブリスター容器40の単体シート厚のほぼ4倍程度に設定される。
【0080】
ブリスター容器40を封緘する場合、上容器2と下容器3の間に物品Mを収納し、両者の突出部2c,3cを嵌め合わせて封緘部5を形成する(簡易封緘)。このような一次工程と併せ、二次工程としてこの封緘部5を封緘装置41により扁平な断面茸形にプレス成形する。
【0081】
封緘装置41によるプレス成形の手順としては、まず、簡易封緘したブリスター容器40を下型13に位置決めする。この位置決め方法は第1実施形態と同様である。
ブリスター容器40を下型13に位置決めした状態で上型12を下降させると、封緘部5が可動パンチ14とともに下方に押圧され、上型12が上容器2のシート面の位置(下死点)で停止する(図13参照)。このとき、可動パンチ14と、上型12の逃し部16の各加圧面の間に空隙が生じ、この空隙内に封緘部5の先端部分が収まって圧縮される。これにより、封緘部5のシート壁のうち上容器2と下容器3を重ね合わせた封緘部5周囲のシート厚を超える部分が、同シート厚を超えない部分よりも幅広に成形される。
プレス成形された封緘部は、扁平な断面茸形の二重シート壁になるため、これが抜け止めとなって簡単には外れることはない。
【0082】
第4実施形態の構成によれば、第1実施形態と同様に、上容器2と下容器3の両突出部を嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。第4実施形態では、ガイドプレート17を使用しないで封緘部5にプレス成形を行うため、封緘装置41の構成がシンプルになり、封緘作業の時間をさらに短縮することができる。
また、上容器2と下容器3との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
【0083】
さらに、ブリスター容器40の封緘構造によれば、ブリスター容器40の開封時に封緘部5のシート壁に塑性変形による破断や潰れを生じさせることで、その開封の痕跡を確実に残すことができる。これにより、改ざん防止効果を良好にしてブリスター容器10による包装の信頼性を高めることができる。
さらには、封緘部5の突出形状が小さくなるため、容器外観に突出部が目立ちにくくなり、かつシート材料の節約を図ることができる。加えて、封緘部5の高さを低くすることにより、ブリスター容器40に上突出部2cと下突出部3cを絞り加工(真空成形または圧空成形)する際の板厚減少(特に根元からの立ち上がり部分)をさらに抑えることができ、封緘部5の二重シート壁の厚さをより均一に仕上げることが可能になる。
【0084】
[第5実施形態]
第5実施形態のブリスター容器50を図14および図15に示す。第5実施形態は、ブリスター容器50の複数箇所に封緘部5,5,6を設け(図15参照)、これらのうち、一部の封緘部5,5のみに改ざん防止用のプレス成形を行うものである。
【0085】
図14に示すように、ブリスター容器50は、シート状の上容器2と下容器3とが平面方向に連結される。上容器2と下容器3は、ヒンジ4を挟んで概ね上下対称の関係になっている。
上容器2は、平面矩形で断面コ字状の上収容部2aと、その外周に連なる上フランジ部2bとを備えている。この上フランジ部2bの上タブ2d側に平面方向から見てホームベース形の上突出部2eが形成され、さらにその両側に平面円形の上突出部2c,2cが形成される。
下容器3は、平面矩形で断面コ字状の下収容部3aと、その外周に連なる下フランジ部3bとを備えている。この下フランジ部3bの下タブ3d側に平面方向から見てハート形の下突出部3eが形成され、さらにその両側に平面円形の下突出部3c,3cが形成されている。
【0086】
ブリスター容器50を簡易封緘する場合、上容器2と下容器3をヒンジ4により折り曲げると、図15に示すように、中央側の突出部2e,3eが嵌まり合って封緘部6となり、両側の突出部2c,3cが嵌まり合って封緘部5,5となる。本実施形態では、これらのうち、両側の封緘部5,5のみが断面茸形にプレス成形され、中央側の封緘部6はプレス成形されない。つまり両側の封緘部5,5のみに改ざん防止用の二次加工が施される。これにより、封緘部5,5は、突出部2c,3cのシート壁が互いに重なり合う断面茸形の二重シート壁になる。
ブリスター容器50の開封時には、両側の封緘部5,5のシート壁を引き離すことにより、上容器2と下容器3を開放する。このとき、両側の封緘部5,5は塑性変形して破断するため、再度嵌め合わせることができなくなる。一方、中央側の封緘部6は、弾性変形によってその形状を保つため、その突出部2e,3eを繰り返し嵌め合わせることで、上容器2と下容器3を再封緘(簡易封緘)することができる。なお、再封緘するための封緘部6にはあらかじめアンダーカットを採用しておくとよい。
【0087】
第5実施形態によれば、第1実施形態と同様に、上容器2と下容器3の両突出部2c,3cを嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、上容器2と下容器3との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
さらに、ブリスター容器50の封緘構造によれば、ブリスター容器50の開封時に封緘部5のシート壁に塑性変形による破断や潰れを生じさせることで、その開封の痕跡を確実に残すことができる。これにより、改ざん防止効果を良好にしてブリスター容器50による包装の信頼性を高めることができる。
さらに、プレス成形を行う両側の封緘部5,5とプレス成形を行わない中央側の封緘部6とを設けることで、ブリスター容器50の開封時に両側の封緘部5,5が破断しても、中央側の封緘部6によって同容器を再封緘(簡易封緘)してリサイクルすることが可能になる。
【0088】
ここで、第5実施形態のブリスター容器50において、上容器2および下容器3におけるシート壁には、同シート壁から封緘部5,5を切り離すためのカット部として切り取り線L,Lが設けられる。これらの切り取り線L,Lは、ブリスター容器50の封緘前にあらかじめ上容器2と下容器3の各フランジ部にハーフカットもしくはミシン目カットにより形成される。上容器2と下容器3をヒンジ4で折り曲げて重ねると、切り取り線L,Lがほぼ一致する(図15参照)。ブリスター容器50の開封時には、切り取り線Lによって上容器2と下容器3の各フランジ部2b,3bから封緘部5,5を含んだ部分が切り離される。
【0089】
ブリスター容器50の封緘構造によれば、収納物品を取り出す際に、上容器2および下容器3のシート壁から切り取り線Lに沿って封緘部5,5を切り離すことで、上容器2と下容器3とが開封する。これにより、封緘部5,5を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
また、ブリスター容器50を開封した後に残った容器をそのまま再利用することもできる。
なお、図14および図15に示す例では、切り取り線Lが二つの封緘部5,5を同時に切り離せる位置にあるが、封緘部5,5を囲む位置に切り取り線を設けて上容器2および下容器3のシート壁から封緘部5,5をそれぞれ切り離せるようにしてもよい。
このような切り取り線は、第5実施形態のブリスター容器50のみならず、前述の第1~第4実施形態のブリスター容器に適用してもよいし、後述の実施形態によるブリスター容器に適用することもできる。
【0090】
[第6実施形態]
第6実施形態のブリスター容器60を図16および図17に示す。第6実施形態は、上容器2に貫通孔2fを設けるとともに、下容器3に突出部3fを形成し、これらを嵌め合わせて封緘部5を形成するものである。
【0091】
図16に示すように、ブリスター容器60は、シート状樹脂からなる上容器2と下容器3とが平面方向に連結される。上容器2と下容器3は、ヒンジ4を挟んで概ね上下対称の関係になっている。
【0092】
上容器2は、平面矩形で断面コ字状の上収容部2aと、その外周に連なる上フランジ部2bとを備えており、この上フランジ部2bの上タブ2dの左右両側にシート面を貫通する円形の貫通孔2f,2fが形成されている。
下容器3は、平面矩形で断面コ字状の下収容部3aと、その外周に連なる下フランジ部3bとを備えている。この下フランジ部3bの下タブ3dの左右両側に平面円形の突出部3f,3fが形成されている。
貫通孔2f,2fと突出部3f,3fの位置関係は、ヒンジ4を境界線として上下対称になっている。上容器2と下容器3とをヒンジ4で折り曲げると、貫通孔2f,2fに突出部3f,3fが嵌まる(図17(A)参照)。
【0093】
上フランジ部2bの外縁から貫通孔2f,2fを含む位置には平面方向から見てU字形の切り取り線L,Lが設けられる(図16参照)。これらの切り取り線L,Lは、ブリスター容器60の封緘前にあらかじめ上容器2のフランジ部2bにハーフカットもしくはミシン目カットにより形成される。下容器3の下フランジ部3bには切り取り線は形成されない。ブリスター容器60の開封時に切り取り線L,Lによって上容器2のフランジ部2bから封緘部5,5を切り離せるようになっている。
【0094】
ブリスター容器60を封緘する場合、上容器2と下容器3の間に物品を収納し、図17(A)に示すように、貫通孔2fに突出部3fを嵌め合わせて封緘部5を形成する(簡易封緘)。このような一次工程と併せ、二次工程としてこの封緘部5を扁平な断面茸形にプレス成形する。このプレス成形には、図13に示すような外ガイドプレートのない封緘装置41を用いることができる。
【0095】
プレス成形後の封緘部5は、図17(B)に示すように、貫通孔2fの周縁のシート壁に突出部3fのシート壁が重なる扁平な断面茸形のシート壁になる。つまり、封緘部5(突出部3f)のシート壁が扁平な断面茸形になることにより貫通孔2fからの抜け止めになる。
【0096】
ブリスター容器60の開封時には、タブ2d,3dを持って上容器2と下容器3とを引き離すと、上容器2のフランジ部2bから封緘部5が切り取り線L,Lに沿って切り離される(図17(C)参照)。このとき、封緘部5は、貫通孔2fに突出部3fが嵌まったままの状態で下容器3のフランジ部3bに残る。
【0097】
第6実施形態の構成によっても、前述の実施形態と同様に、上容器2の貫通孔2fと下容器3の突出部3fとを嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、上容器2と下容器3との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
さらには、上容器2の突出部を省略することができるため、成形型の構造がシンプルになり製造コストを抑えることができる。
さらに、ブリスター容器60の封緘構造によれば、収納物品を取り出す際に、上容器2(フランジ部2b)のシート壁から切り取り線L,Lに沿って封緘部5,5を切り離すことで、上容器2と下容器3とが開封する。これにより、封緘部5(貫通孔2f,突出部3f)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
【0098】
なお、第6実施形態では、上容器2に貫通孔2fを設けるとともに、下容器3に突出部3fを形成しているが、貫通孔と突出部の位置関係を逆にしてもよい。
また、第6実施形態では、切り取り線L,Lによってブリスター容器60を開封する構成としているが、このような切り取り線Lを省略することもできる。この場合、封緘部5(貫通孔2fおよび突出部3f)のシート壁を塑性変形させるか、破断することで開封作業を行う。
また、第6実施形態と同様に上容器2または下容器3のいずれか一方のみに切り取り線L,Lを設ける構造を、前述の第1~第5実施形態のブリスター容器に適用することも可能である。
【0099】
[第7実施形態]
第7実施形態のブリスター容器70を図18図21に示す。ブリスター容器70は、シート状樹脂からなる受け容器2(図18参照)と、紙製の台紙からなる蓋3(図19参照)とを備えている。受け容器2に形成した突出部2gと、蓋3に設けた貫通孔3gとを嵌め合わせて封緘部5(図21参照)を形成する。
【0100】
図18に示すように、受け容器2は、透明のシート状樹脂からなるもので、平面矩形で断面コ字状の収容部2aと、その外周に連なるフランジ部2bとを備えている。フランジ部2bの図18で上端中央には、開封時に使用するための平面台形のタブ2dが連なっている。
受け容器2の四隅付近には上下のフランジ部2bにそれぞれ2個、合計4個の中空な突出部2gが形成される。これらの突出部2gは、収容部2aとは反対側に向けて延びている。
【0101】
図19に示すように、蓋3は、平面方向から見て矩形の受け容器2の外形にほぼ一致する形状になっている。蓋3の紙面には必要応じて文字や図柄などが印刷される。蓋3の四隅付近には突出部2gより若干大きいサイズの貫通孔3gが設けられる。これらの貫通孔3gは、受け容器2に蓋3を重ねたときに突出部2gに一致するように配置されている。蓋3の上端中央には受け容器2のタブ2dに重なる位置にタブ3dが連なっている。
【0102】
図20に示すように、受け容器2のフランジ部2bには、突出部2gの根元から僅かに離れた位置に環状の切り取り線L(カット部)が設けられる。この切り取り線Lは、円弧状の4つのスリットL1と、これらのスリットを繋ぐ連結片L2とからなる。各スリットL1が連結片L2を介して円周方向に等間隔を保って配置される。
【0103】
ブリスター容器70を封緘する場合、受け容器2と蓋3の間に物品を収納した上で、図21(A)に示すように、蓋3の貫通孔3gに受け容器2の突出部2gを嵌め合わせて封緘部5を形成する(簡易封緘)。このような一次工程と併せ、二次工程としてこの封緘部5を扁平な断面茸形にプレス成形する。このプレス成形には、図13に示すような外ガイドプレートのない封緘装置41を用いることができる。
【0104】
プレス成形後の封緘部5は、図21(B)に示すように、貫通孔3gの周縁のシート壁に突出部2gのシート壁が重なる扁平な断面茸形のシート壁になる。つまり、封緘部5(突出部2g)のシート壁が扁平な断面茸形になることにより貫通孔3gからの抜け止めになる。
【0105】
ブリスター容器70の開封時には、タブ2d,3dを持って受け容器2と蓋3とを引き離すと、受け容器2のフランジ部2bでシート壁の切り取り線L部分に負荷がかかり、円弧状のスリットL1が拡がって連結片L2を破断する。これにより、フランジ部2bのシート壁から封緘部5が切り取り線Lに沿って環状に切り離される(図21(C)参照)。このとき、封緘部5は、貫通孔3gに突出部2gが嵌まったままの状態で蓋3に残る。
【0106】
第7実施形態によれば、前述の実施形態と同様に、受け容器2の突出部2gと蓋3の貫通孔3gとを嵌め合わせる一次工程と、改ざん防止のための二次工程を連続して瞬時に実施することができ、封緘作業の手間と時間を軽減することができる。
また、受け容器2と蓋3との封緘にテープやシールといった包装材を使用しないため、開封時のゴミの発生を抑えることができる。
さらに、台紙からなる蓋3を採用することで、樹脂材料の使用量を抑えて包装コストの低減を図ることができる。
【0107】
さらに、第7実施形態の封緘構造によれば、収納物品を取り出す際に、受け容器2(フランジ部2b)のシート壁から切り取り線Lに沿って封緘部5を切り離すことで、受け容器2と蓋3とが開封する。これにより、封緘部5(突出部2g,貫通孔3g)を引き離すことなく開封作業を行うことができる。
さらに、受け容器2のシート壁における封緘部5の根元から僅かに離れた位置に環状のカット部が設けられるため、受け容器と蓋との開封時に、受け容器から封緘部のみが部分的に分離される。これにより、受け容器2の樹脂材料と、蓋3の紙材料を効率よく分別回収することができる。
さらに、受け容器2から分離される封緘部5(突出部2g,貫通孔3g)は蓋3にそのまま残るため、開封時に、封緘部5を形成するシート状樹脂の分離片が周りに飛散するの防ぐことができる。
【0108】
なお、第7実施形態では、環状の切り取り線Lによってブリスター容器70を開封する構成としているが、このような切り取り線Lを省略することもできる。この場合、受け容器2(突出部2g)のシート壁を塑性変形させるか、蓋3の貫通孔3g周囲のシート壁を破断することで開封作業を行う。
第7実施形態のような環状の切り取り線Lは、前述の第1~6実施形態に適用することもできる。
【0109】
[変形例]
第1~7実施形態によるブリスター容器を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限定されることなく、種々の変形を伴ってもよい。
たとえば、第1~5実施形態において、上容器2と下容器3のうち、いずれかの収容部を省略して平板状にしてもよい。この場合、平板状の容器が他方の容器の蓋の役目をする。
封緘部5の形状は、前述の実施形態に限定されず、平面方向から見て矩形、楕円形、菱形、リボン形、多角形等の形状を採用してもよい。また、前述した第3実施形態では、封緘部5を平面方向からみて矩形の環状としたが、これを直線状または曲線状にすることも可能である。
【0110】
さらに図22に示すように、封緘部5の先端部分に下向きに突出する封緘部を追加してもよい(変形例1)。
図22(A)に示す下向き封緘部7,7は、上容器2と下容器3にあらかじめ設けた下向きの突出部を嵌め合わせるか、プレス成形時に封緘部5の先端シート壁を下向きに押し出すことで形成することが可能である。図22(B)に示す下向き封緘部8,8は、プレス成形時に封緘部5の上側に下向きの可動パンチを配置し、下側にガイドプレートを配置することにより形成することが可能である。
図22に示す変形例の構成は、第3実施形態のような環状の封緘部に適用することでブリスター容器の気密性をさらに向上させることができる。このようなブリスター容器は、ジェル状製品等の包装に使用すると効果的である。
【0111】
さらに第1~7実施形態において、図23に示す突出部3fのように、突出部根元付近にシート壁のカット部となる薄肉壁Sを採用してもよい(変形例2)。
薄肉壁Sは、突出部3fの根元付近の周面に沿ってに連なっており、そのシート壁の厚みが他の部分より小さい。薄肉壁Sの厚みは、後述するようにブリスター容器の開封時に適度な負荷(引っ張り力)でシート壁が破断するように設定される。
【0112】
図23(A)の例では、突出部3fのシート壁に段差を介して薄肉壁Sが設けられている。シート原板の厚みをX0、薄肉壁Sの厚みをX1、成形突起絞り深さY0、成形絞り深さY1としたとき、X0>X1およびY0>Y1となるように形成されている。
図23(B)の例では、突出部3fのシート壁の厚みが先端側から根元側にいくに従って次第に小さく小さくなるように形成される。突出部3fの根元の厚みが最も小さく、この例ではシート原板の1/2以下になっている。
【0113】
このような薄肉壁Sを突出部3fに形成する方法としては、たとえばシート状樹脂に絞り加工(真空成形または圧空成形)するための専用の金型を用いることができる。図23(B)の薄肉壁Sはシート壁に段差がないため、図23(A)の薄肉壁Sよりもシンプルな構成の金型で成形することができる。
【0114】
変形例2によるブリスター容器を封緘する場合、たとえば前述の第6実施形態と同様な手順による。
まず、図24(A)に示すように、上容器2の貫通孔2fに下容器3の突出部3fを嵌めて封緘部5を形成する(簡易封緘)。この封緘部5をプレス成形すると、図24(B)に示すように、封緘部5が扁平な断面茸形のシート壁になり、その根元付近の薄肉壁Sが貫通孔2fの内周に沿った位置に来る。
ブリスター容器を開封するときには、貫通孔2fと突出部3fとを引き離すと、断面茸形の下容器3のシート壁が上下に引っ張られて薄肉壁Sに沿って破断する(図24(C)参照)。
このように封緘部5のシート壁に薄肉壁Sを採用することで、ブリスター容器の開封作業を簡単にすることができる。第6実施形態の切り取り線Lを省略することで製造工程を簡略化することもできる。
【0115】
変形例2による薄肉壁Sを、第1~5実施形態のような二重シート壁の封緘部5に適用することもできる。この場合、図25に示すように、封緘部5を形成する上突出部2cと下突出部3cのうち、内側(雄側)となる下突出部3cに薄肉壁Sを設けるようにする。
ブリスター容器を封緘する場合、図25(A)に示すように、まず上突出部2cの内側に下突出部3cを嵌めて封緘部5を形成する(簡易封緘)。この封緘部5をプレス成形すると、図25(B)に示すように、封緘部5が断面茸形の二重シート壁になり、このうち内側のシート壁の根元付近が薄肉壁Sとなる。
ブリスター容器を開封するときには、上突出部2cと下突出部3cとを引き離すと、断面茸形の二重シート壁のうち内側のシート壁が上下に引っ張られて薄肉壁Sに沿って破断する(図25(C)参照)。
このように第1~5実施形態の封緘部5に薄肉壁Sを採用する場合も、ブリスター容器の開封作業を簡単にすることができる。
【符号の説明】
【0116】
2・・上容器(蓋) 2a・・上収容部 2b・・上フランジ部
2c・・上突出部(第1突出部) 2d・・上タブ
2f・・貫通孔 2g・・突出部
3・・下容器(受け容器) 3a・・下収容部 3b・・下フランジ部
3c・・下突出部(第2突出部) 3d・・下タブ
3f・・突出部 3g・・貫通孔 4・・ヒンジ
5・・封緘部 5A・・下部壁 5B・・中間壁 5C・・上部壁
10・・ブリスター容器 11・・封緘装置 12・・上型 13・・下型
14・・可動パンチ(内ガイド部材) 15・・バネ材 16・・逃し部
17・・ガイドプレート(外ガイド部材)
L・・切り取り線(カット部) M・・物品 S・・薄肉壁(カット部)
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