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特許7098213ねじ構造体およびねじ構造体を有する座部構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ねじ構造体およびねじ構造体を有する座部構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20220704BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H02K7/06 A
A47C7/02 Z
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016090353
(22)【出願日】2016-04-28
(65)【公開番号】P2017017978
(43)【公開日】2017-01-19
【審査請求日】2019-01-17
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】10 2015 208 217.2
(32)【優先日】2015-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーケン、ラルス
(72)【発明者】
【氏名】プロプスト、ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ピロス、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、マルクス
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】関口 哲生
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6100609(US,A)
【文献】特表平6-508419(JP,A)
【文献】特開2011-38644(JP,A)
【文献】特開2001-330068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K7/06
A47C7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ構造体(10)であって、
トルクを発生させる駆動ユニット(16)と、
外周面側おねじ部(30)を有し、前記駆動ユニット(16)によって主軸(A)を中心として回転駆動される駆動部材(24)と、
前記駆動ユニット(16)と前記駆動部材(24)の間に軸方向に配置された制御部材(34)と、
前記駆動部材(24)の前記外周面側おねじ部(30)と螺合する内周面側めねじ部(32)を有する被駆動部材(12)と、を有し、
前記被駆動部材(12)の前記内周面側めねじ部(32)の軸方向長さ(b)は、前記駆動部材(24)の前記外周面側おねじ部(30)の軸方向長さ(a)よりも大きく、
前記駆動ユニット(16)はそのトルクを駆動シャフト(22)に与え、トルクを伝達し、軸方向に変位可能なように前記駆動部材(24)が長手方向歯部(26)によって前記駆動シャフト(22)と結合し、前記軸方向における減衰効果および懸架効果を有する減衰/懸架部材(28)が前記駆動部材(24)と前記制御部材(34)の間に配置されているねじ構造体(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のねじ構造体(10)であって、前記ねじ構造体(10)が短縮した状態のとき、前記駆動ユニット(16)が前記被駆動部材(12)の中に収納されて、少なくとも一部が前記被駆動部材(12)の前記内周面側めねじ部(32)によって、囲まれているねじ構造体(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のねじ構造体(10)であって、前記制御部材(34)の中の貫通孔(36)を貫通する前記駆動シャフト(22)に前記駆動ユニット(16)がそのトルクを与えるねじ構造体(10)。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のねじ構造体(10)であって、前記駆動ユニット(16)は、電気モータ(18)を含み、さらにギアユニット(20)および/または前記電気モータおよび/または前記電気モータ用の制御ユニットを駆動するための電気エネルギを供給する電池を含むねじ構造体(10)。
【請求項5】
請求項4に記載のねじ構造体(10)であって、前記駆動ユニット(16)のすべての部材が互いに結合して、一つのユニットとして扱える自己支持型モジュールを形成しているねじ構造体(10)。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のねじ構造体(10)であって、前記駆動ユニット(16)は防塵仕様で閉塞された駆動側筒体(14)の中に収納されているねじ構造体(10)。
【請求項7】
請求項6に記載のねじ構造体(10)であって、前記駆動側筒体(14)は前記駆動ユニット(16)を起動し、および/または前記駆動ユニット(16)に電力を付与するのに用いる外部から接続可能な電気接続端子を有するねじ構造体(10)。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のねじ構造体(10)を有するシート高さ調整手段を有する座部構造(74)。
【請求項9】
請求項8に記載の座部構造(74)であって、前記座部構造(74)は前記ねじ構造体(10)によって形成された単一の垂直中心柱を有するタイプであり、前記座部構造(74)を有するシート(76)を介して導入される全重力は概ね前記中心柱にかかる座部構造(74)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、駆動ユニットと、駆動部材と、被駆動部材とを有するねじ構造体に関するものであり、前記駆動ユニットは前記ねじ構造体にトルクを発生させ、前記駆動部材は、その外周面側にねじ部を有し、前記駆動ユニットによって駆動されて主軸の周りを回転し、前記被駆動部材は、その内側にねじ部を有し、前記駆動部材と螺合している。本願発明は、さらに上記の型のねじ構造体を有する座部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のねじ構造体は、駆動ユニットとなる電気モータと駆動部材となるねじ部を有するスピンドルとを有し、前記スピンドルは前記電気モータによって駆動されて回転する。被駆動部材の一部であるねじ部を有するナットは、ねじ締めされて前記スピンドルに取り付けられる。前記ねじ部を有するスピンドルが前記電気モータによって駆動されて回転すると、前記被駆動部材が前記駆動ユニットに対して軸方向に移動し、長さ調整可能な制御要素が形成される。
【0003】
公知の型のねじ構造体の場合、前記スピンドルと前記駆動ユニットとの二つが軸方向に連なるように配置されているので、前記ねじ部を有するスピンドルの軸方向の構造部が比較的長くなるという欠点がある。前記したような構造のため、前記ねじ部を有するスピンドルの長さは、少なくとも所望のストローク長と一致する必要がある。しかしながら、前記ねじ部を有するスピンドルの長さは、前記駆動ユニットの軸方向長さによってさらに増大する。大抵の場合、前記駆動ユニットは、電気モータと、ギアユニットと、モータ制御システムと、さらに充電可能なまたは充電不可能な電池とを有するので、必然的に構造部スペースが軸方向に必要になる。
【発明の概要】
【0004】
前記した背景に鑑み、本願発明は軸方向の構造部長さが短いとともに、十分に長い、または十分以上に長い最大ストローク長を有するねじ構造体を提供することが本願発明の目的である。
【0005】
本願発明の第一の態様では、前記した目的を達成するため、被駆動部材の内周面側めねじ部の軸方向長さが駆動部材の外周面側おねじ部の軸方向長さより大きい前記したタイプのねじ構造体が提供される。このねじ構造体によれば、ねじ構造体のストロークは前記駆動部材の軸方向長さによって決まるのではなく、前記被駆動部材の内周面側めねじ部の軸方向長さによって決まる。その結果、前記駆動部材の軸方向長さを短くすることができ、ねじ構造体のストロークを短くすることなく、前記駆動ユニットと前記駆動部材とからなる構造ユニットの軸方向長さを短くすることができるようになっている。
【0006】
本明細書中において、「ねじ部」という語は駆動部材の回転動作を少なくとも一つの軸方向部材を有する被駆動部材の軸方向移動に強制的に変換するのに適した任意の制御カーブ機構を意味する。したがって、主軸の周りを完全に巻いていないらせん経路であっても本明細書が意味する「ねじ部」と考える。例えば、らせん状に延設された単一の溝に係合する単一の突出部によってもねじ部が形成されるものでもよい。さらに、本明細書が意味するねじ部は様々なリードを有していてよい。例えば、駆動部材の回転角度あたりの軸方向変位は第一動作部分のほうが第二動作部分よりも大きい。このように、被駆動部材に対する駆動部材の軸方向位置によって、ねじ構造体の軸方向長さが短くなるまたは長くなる速度を変化させることができる。
【0007】
ねじ構造体が短縮した状態のときは、前記駆動ユニットは少なくともその一部が前記被駆動部材の内部に入っていて、少なくともその一部が前記被駆動部材の内周面側めねじ部に囲まれているようになることが好ましい。前記駆動ユニットが前記被駆動部材の内部に完全に入って、完全に前記被駆動部材の内周面側めねじ部に囲まれているのも好ましい状態である。このように、短縮した状態のねじ構造体の軸方向長さが短くなるように前記被駆動部材と前記駆動ユニットが軸方向で互いに重なり合うことができる。
【0008】
原則として、前記駆動部材が前記駆動ユニットによって直接駆動されるように前記駆動部材を前記駆動ユニットの駆動シャフトに対して固定する、または駆動ユニット上に直接取り付けることを考えつくことは可能である。しかし、前記駆動ユニットに軸方向の衝撃力と振動とが伝わらないようにして前記駆動ユニットが損傷するのを防ぐため、前記駆動部材を前記駆動ユニットがそのトルクを伝達するために該トルクを与える前記駆動シャフトに連結するが、駆動部材を軸方向に変位可能にし、少なくとも軸方向の減衰および/または懸架効果を有する減衰/サスペンション部材を駆動部材と駆動シャフトの間に設けることを提案する。このように本願発明にかかるねじ構造体はさらに減衰または懸架の機能も果たす。
【0009】
別の好ましい実施形態では、前記駆動部材を支持部分に対して軸方向に押しつけて動かないようにすることができる。ここで、前記支持部分は前記駆動ユニットの筺体に対して動かない、前記駆動ユニットの筺体によって形成されたものか、または前記駆動ユニットを収納する駆動側筒体上に形成されたものである。このタイプの構成によれば、軸方向に作用する外力、例えば短縮方向に作用する重力が前記駆動部材を介して、前記駆動ユニット内に伝達されて、前記駆動ユニットが損傷することがない。このタイプの力は前記支持部分によって前記駆動ユニットの筺体または前記駆動側筒体にかかる。無負荷の状態で駆動部材の回転が確実に問題ないものとするため、ころ軸受、例えばスライド軸受を、駆動部材と支持部材との間に、および/または支持部材と筺体もしくは駆動側筒体との間に入れる。
【0012】
ねじ構造体が前記した支持部と前記した少なくとも一つの突出部とを両方含む場合、部品を節約し、前記ねじ構造体の軸方向長さをさらに短くするため、前記支持部と前記突出部とを前記駆動ユニットと前記駆動部材の間に配置される共通の制御体上に形成することが特に有利である。この場合、このタイプの制御体は、前記駆動シャフトの近傍の組立スペースを特に効率的に用いることができるように、前記駆動ユニットがトルクを与える前記駆動シャフトが通る貫通孔を有してよい。
【0013】
さらに別の実施形態では、前記駆動ユニットは電気モータを含むものでよい。さらに駆動ユニットはギアユニット、例えば高速の電気モータの回転を低速の前記駆動部材の回転に変換する減速ギアユニットを有するのが好ましい。前記駆動ユニットはさらに、ねじ構造体に所定の動作をさせるように前記電気モータに電気エネルギを供給する充電可能な、または充電不能な電池を有してもよい。また、外部電源へつなぐ端子を備えてもよい。さらに、前記駆動ユニットは前記電気モータ用の制御ユニットを有するのが好ましい。
【0014】
操作と組立を容易にするため、前記駆動ユニットの前記したすべての部材は互いに接続されて一つのモジュール、とくに一つのユニットとして扱うことができる自己支持型ユニットを構成してもよい。
【0015】
前記駆動ユニットを前記駆動側筒体の中に収納して、前記駆動ユニットを機械的な影響および周囲の影響から保護し、外部から見えないようにすることが有利である。前記駆動側筒体は前記駆動ユニットの耐用年数を延ばすように防塵仕様となるように内部を閉塞することが好ましい。
【0016】
駆動側筒体は外部機器と電気的接続を可能にして、駆動ユニットを起動し、駆動ユニットに電力を与える端子を有するものでよい。これによって、本願発明にかかるねじ構造体を上位の装置に取り付けるのが容易になる。
【0017】
前記被駆動部材は、被駆動側筒体を有してもよいし、または前記被駆動側筒体のタイプの筒体で構成してもよい。この場合、特に前記駆動側筒体が前記被駆動側筒体の内部に入っている状態で、前記駆動側筒体と前記被駆動側筒体は互いに挿入されたものにできる。前記ねじ構造体が完全に伸長した状態のときも、これらの筒体同士が軸方向で重なり合っていることが好ましい。このような構造により、これら2つの筒体同士が確実に互いに十分に押し付け合うことにより傾かなくなり、また、実質的に完全に閉塞された筒体システムを形成することができ、該筒体システムの内部に可動部品、特に前記駆動ユニットが完全に収納され保護されている。
【0018】
原則として、本願発明にかかるねじ構造体は様々なリフト装置や制御装置の長さ可変制御素子としての応用範囲が広い。特に好ましい応用では、本願発明のねじ構造体は座部構造のシート高さを調整するのに用いられる。この目的の用途では、本願発明のねじ構造体は、駆動側部側および/または被駆動側部側に対象部分をシートまたは座部構造の基部に固定することを可能にする固定手段を有する。特に、前記被駆動部材を構成する前記被駆動側筒体および/または前記駆動ユニットが内部に収納される前記駆動側筒体は円錐テーパ部を有するものでよい。この円錐テーパ部により、前記ねじ構造体を作動させると前記座部構造のシートまたは基部の対応する凹部の中に挿入される効果が生じる。ここで、座部構造のシートまたは基部の対応する凹部の内径は、前記円錐テーパ部の最小径よりも大きく、前記円錐テーパ部の最大径よりも小さい。このようにして、前記ねじ構造体は前記座部構造の凹部の中に圧力ばめにより嵌合し、この結合は特に垂直方向に配置されるねじ構造体の場合、関係する部品にかかる重力のみによって維持される。
【0019】
前記したアイデアにしたがって、前記した本願発明によるねじ構造体をもつシート高さ調整手段を有する座部構造についての独立したクレームの保護を求める。前記駆動ユニットを起動することにより、前記ねじ構造体は短縮させたり、伸長させることができ、シート高さを調整できる。
【0020】
特に、単一の垂直中心柱を有するようにした前記座部構造が想到可能である。そのようなタイプの座部構造は、特に高さ調整可能な回転椅子およびオフィス椅子では知られている。このタイプの座部構造では、座部構造のシートを介してかかる全重力は、単一の垂直中心柱が受ける。本願発明の好ましい実施形態では、この単一の垂直中心柱が前記したねじ構造体で形成される。
【0021】
座部構造のシート高さ調整装置としての用途に加え、本願発明のねじ構造体は複数の他の装置および設備の制御部品として用いることができ、一般的に任意の所望の部品を位置決めするリニアモータの機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下に、添付図面を参照して本願発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1A図1Aは、本願発明の実施形態にかかるねじ構造体の断面図であり、同ねじ構造体の主軸も含む図である。
図1B図1Bは、図1Aの詳細部分に対応し、本願発明の変形例を表す図である。
図1C図1Cは、本願発明の変形例にかかるねじ構造体のその主軸を含む断面図である。
図2A図2Aは、本願発明の実施形態にかかるねじ構造体の内部スリーブの斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aで示す内部スリーブの主軸を含む断面図である。
図2C図2Aで示す内部スリーブを軸方向から見た図である。
図3A】実施形態にかかるねじ構造体の制御部材の斜視図である。
図3B図3Aで示す制御部材を軸方向から見た図である。
図4】実施形態にかかるねじ構造体の外側スリーブの主軸を含む断面図である。
図5】本願発明の一実施形態にかかる高さ調節可能な椅子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aには、一般的な手法によりねじ構造体が参照番号10で表わされている。同ねじ構造体は、被駆動側筒体12と、被駆動側筒体12の中に挿入され、被駆動側筒体12の一方の端部から突出している駆動側筒体14とを含む。駆動ユニット16は、駆動側筒体14の中に収容されている。駆動ユニット16は、モータ18を有するものとすることができる。さらに駆動ユニット16は、ギアユニット20および/または電池21を有し、トルクをねじ構造体の駆動シャフト22に与えることができる。駆動部材24は駆動シャフト22と結合し、トルクを伝達する。図1aの変形例では、駆動部材24は駆動シャフト22に固定され、トルクと軸力が駆動シャフト22と駆動部材24の間で伝達される。
【0024】
駆動部材24は被駆動側筒体12の内周面側めねじ部32と螺合している外周面側おねじ部30を有する。軸方向、すなわち前記ねじ構造体の主軸Aの方向において、駆動部材24の外周面側おねじ部30の長さaは被駆動側筒体12の内周面側めねじ部32よりも短い。特に本実施形態においては、被駆動側筒体12の内周面側めねじ部32は、駆動部材24の軸方向の全体長さの分延設されるだけでなく、駆動シャフト16を覆うことが望ましい。すなわち、駆動シャフト16は、図1Aで示される短縮した状態で、被駆動側筒体12に挿通されて実質的に被駆動側筒体12の中に完全に入っている。
【0025】
制御部材34が駆動部材24と駆動ユニット16との間で軸方向に配置されている。制御部材34は中心貫通孔36を有し、駆動シャフト22はこの中心貫通孔36を通り、回転自在である。制御部材34は、その第一軸方向端38で駆動ユニット16に押しつけられており、例えば、駆動ユニット16の筺体の端上(図示する実施形態ではギアユニット20の上に)に配置されている。前記第一軸方向端38の反対側の第二軸方向端40に、制御部材34は支持部分42を有し、駆動部材24からの軸方向支持力を受けている。駆動部材24が制御部材34に対して必要以上に回転するのを防ぐために、ころ軸受特にスライド軸受43を支持部分42上に備えるか、または同等な潤滑剤を用いてもよい。駆動部材24を対照的に確実に把持するには、主軸Aの周りに同心円上に支持部42を延設させるか、または複数の支持部分を主軸Aの周りに分布させる。
【0026】
制御部材34は駆動部材24の外周面側おねじ部30のベース部分を越えて半径方向に突出する少なくとも一つの半径方向突出部44を有するものであってよく、この半径方向突出部44は被駆動側筒体12の内周面側めねじ部32を横切る軸方向溝部46の中に入って係合している(図2aおよび図2b参照)。この係合によって、被駆動側筒体12と駆動側筒体14とが互いに回転するのが妨げられている。一方、これらの筒体12、14は軸方向には変位可能になっている。
【0027】
前記したガイドにかかる荷重を対称的に分布させるため、複数の突出部(本実施形態では、120°の角度で互いに離隔する3個の突出部44a、44bおよび44c)を制御部材34上に設けることが好ましく、これらの突出部44a、44bおよび44cは対応する3つの軸方向溝部に係合している(例えば120°の角度で互いに離隔する3個の溝部(46a、46b、46c)。また、2個の溝部または3個より多い溝部および同数の突出部を用いることもできる。
【0028】
特に図1a、図1b、図2a乃至2cおよび図4に示すように、被駆動側筒体12は外側スリーブ50を保持しており、はめ合いにより外側スリーブ50の中に入っている。被駆動側筒体12の内部には内周面側めねじ部32がある。外側スリーブ50の駆動側筒体14から離れた端部には、円錐テーパ部52が形成されている。この円錐テーパ部52は言い換えれば大きい外径d1を有する部分から小さい外径d2に変化する部分である。このタイプの円錐テーパ部52は、外側スリーブ50を例えば椅子に固定する場合の単純なオプションである。
【0029】
外側スリーブ50は前記したテーパ部52を有していてもいなくてもよいが、軸受部54によって被駆動部筒体12に取り付けられており、被駆動部筒体12に対して、外側スリーブ50が軸方向に移動不能であるが主軸Aの周りに回転可能になっている。この目的のため、例えば軸受部54は、被駆動部筒体12の一端面に固定されたカバー形状の第一軸受部材56と、外側スリーブ50の一端面に固定されたカバー形状の第二軸受部材58と有し、第一および第二軸受部材は玉軸受またはころ軸受によって互いに回転可能に組み合わされて保持されている。このような構成により、例えば回転椅子において調整されたシートがどの高さに調整されていても、シートを自由に回転させることが可能になっている。
【0030】
さらに、本願発明のねじ構造体は軸方向の懸架機能または減衰機能を有することが望ましい。この目的のため、図1bの変形例では、駆動シャフト22と駆動部材24とが長手方向歯部26によって結合され組み合わされて、駆動シャフト22から駆動部材24にトルクが伝達されるが、駆動シャフト22と駆動部材24とが互いに軸方向に変位できるようになっている。この軸方向変位は、駆動部材24と制御部材34の間に挿入される、例えばらせんばねである減衰部材28によって制御される。
【0031】
図1cのねじ構造体10aからなる別の変形例では、らせんばね形状の減衰部材28aが被駆動側筒体12aと外側スリーブ50aの間に軸方向の向きになるように配置される。この変形例では、被駆動側筒体12aと外側スリーブ50aの間の軸受部分54aは、外側スリーブ50aが被駆動側筒体12aに対して主軸周りに回転できるだけでなく、被駆動側筒体12aに対して軸方向に変位できる構造になっている。この構造は、例えば被駆動側筒体12aに固定されたカバー56aが減衰部材28aの第一ばね止めとなり、ボール軸受またはころ軸受62aに当たる減衰部材28aの反対側のばね止め60aが外側スリーブ50aに固定された第二軸受部材58a上で回転可能かつ軸方向変位可能になるように保持されることにより、実現される。
【0032】
図1cにかかる変形例では、例えば椅子の着座部が保持される外側スリーブ50aが、ねじ構造体10aの長手方向の長さによる軸方向位置にかかわらず、駆動側筒体14に対して回転自在であるとともに、減衰部材28aに拘束された状態で減衰するようにまたは吊り下げられるように軸方向に移動可能である。
【0033】
実施例を通して、図1cはさらに位置検知器64aを表している。位置検知器64aは完全に短縮した位置(ねじ構造体10aの長さが最小)における被駆動側筒体12aまたは外側スリーブ50aの位置を検知する。特に、完全に短縮した位置に到達した時の位置検知器64aの検知信号に基づいて、制御ユニットは駆動ユニット16の電源を落とす、または駆動ユニット16の制御の自動較正を始めることができる。位置検知器64aは保護管66a内に設けるのが好ましい。ここで保護管66aは駆動側筒体14aよりも径が大きく、駆動側筒体14aの周りに同心円上に延設されたものであり、保護管66aと被駆動側筒体14aとの間には環状の間隙68aが存在する。駆動側筒体14aの一端部であって、被駆動側筒体12aから遠い側の端部上に、保護管66aが保持リング70aによって固定されている。保持リング70aの幅によって環状の間隙68aの幅が画定する。保持リング70aは駆動側筒体14aの外周壁にぴったりはまるように固定することができるとともに、保持リング70aは保護管66aの内周壁にも固定されている。さらに保持リング70aは位置検知器64aを担持するものでよい。
【0034】
外側スリーブ50a(または被駆動側筒体12a)の端面は環状間隙68aに入り、ねじ構造体10aが短縮する間に位置検知器64aに近づく。ねじ構造体10aのこの領域を確実に防塵仕様で閉塞するため、保護管66aと環状間隙68aの軸方向の長さは、ねじ構造体10aがどんなに伸長した場合でも、外側スリーブ50aが常に保護管66aの中に挿通される長さである。さらに、外側スリーブ50aの端部(または被駆動側筒体12aの端部)上に嵌合リング72aを備える。この嵌合リング72aのサイズは、嵌合リング72aが駆動側筒体14aの外周面と保護管66aの内周面との両方と摺動し、塵が前記環状間隙に入るのを防ぐサイズである。したがって位置検知器64aに対向する嵌合リング72aの端面73aは位置検知器64aに接触するようになっている停止部となる。
【0035】
符号64a乃至73aを有する、停止端の検知に関する前記した特徴部分は、同じまたは類似した方法で図1Aおよび図1Bの変形例または本願発明の他の変形例に適用することができるのは当然である。
【0036】
図5は本願発明の一実施形態による座部構造74を示す。座部構造74は、シート76と、基部78と、本願発明によるねじ構造体(例えば10または10a)と、を含む。当該ねじ構造体はシート76と基部78を接続し、シート76と基部78の間に単一の中心柱として垂直方向に延設されている。使用中にシート76にかかる全重力は、ねじ構造体10によって基部78に垂直方向に伝達される。
【0037】
座部構造74はさらにシート76の高さを調整するためにユーザが操作する操作部材80を有する。この目的のため、操作部材80はねじ構造体10の駆動ユニット16と信号伝達できるように接続され、例えば制御線82(図1A参照)を介して駆動ユニット16を起動して駆動部材24を回転させ、ねじ構造体10を伸長させたり、短縮させたりする。
【0038】
ねじ構造体10の機能、特に座部構造74と接続されたねじ構造体10の機能について以下説明する。
【0039】
図1Aは、ねじ構造体10が完全に短縮した状態、換言すればねじ構造体10の全体長さが最小の状態を示す。図1Aからわかるように、この状態での構造体の長さは、実質的に駆動ユニット16の軸方向長さによって決まる。一方、駆動部材24が占める追加的に必要となる軸方向長さは最小になっている。特に、駆動部材24の軸方向長さは、明らかに被駆動側筒体12の内周面側めねじ部32の可能なストローク距離、または軸方向長さよりも短い。
【0040】
例えばねじ構造体10を伸長させるため、換言すれば座部構造74を上方に動かすため、座部構造74の操作部材80を操作して、駆動ユニット16を駆動して現在の状態から変化させる場合、電気モータ18は駆動シャフト22を第一の回転方向に回転させ始める。駆動シャフト22の回転は駆動部材24に伝達される。突出部44が軸方向溝46の中に入って係合しているので、被駆動側筒体12が駆動部材24と連動して回転するのが妨げられ、駆動部材24の外周面側おねじ部30は被駆動側筒体12の内周面側めねじ部32と螺合した状態で内周面側めねじ部32に沿って動くため、被駆動側筒体12は強制的に軸方向に変位する。駆動部材24が第一の回転方向に回転するとき、被駆動側筒体12は軸方向に伸長する方向、換言すればねじ構造体10の全体長さが増大する方向に変位し、シート76は上方に動く。
【0041】
反対に、シート76の高さを調整して下方に動かすため操作部材80を操作した結果、座部構造74の操作部材駆動ユニット16が起動されて駆動シャフトを第一の回転方向とは逆の第二の回転方向に回転するとき、ねじ構造体10を短縮するように、換言すればねじ構造体10の全体長さを短くするように被駆動側筒体12は軸方向に変位する。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5