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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】貨物自動車
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/04 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
B60P1/04 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018212219
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020078968
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 正博
(72)【発明者】
【氏名】長田 善彦
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/04
B60P 1/32
B60P 1/34
B60P 1/30
B60P 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向を長手方向とする左右一対の車両フレームと、
前記車両フレームに対して傾動可能に設けられた傾動フレームと、
前記傾動フレームに対してスライド可能に設けられた荷箱と、
前記傾動フレームと前記荷箱との間に設けられたスライドシリンダとを備えた貨物自動車であって、
前記傾動フレームに回転可能に設けられたフック部材と、前記車両フレームに設けられたフック係止部材とを有するロック装置を備え、
前記ロック装置は、前記傾動フレームに対する前記荷箱のスライド時には、弾性部材の弾性力によって前記フック部材が前記フック係止部材に係合することで、前記車両フレームに対する前記傾動フレームの傾動を規制するロック状態に切り換えられる一方、
前記ロック装置は、前記車両フレームに対する前記傾動フレームの傾動時には、前記弾性部材の弾性力に抗して前記フック部材が前記フック係止部材から離脱することで、前記車両フレームに対する前記傾動フレームの傾動を許容する解除状態に切り換えられ、
前記フック部材の下端部には、前記ロック装置の前記ロック状態で当該フック部材の下方の部分に接触面が設けられており、
前記接触面は、前記フック部材の前記下端部が前記フック係止部材に乗り上げた際に、傾斜する面として形成されており、乗り上げた状態から前記フック係止部材に対し前記フック部材の前記下端部を後方側に移動させることを特徴とする貨物自動車。
【請求項2】
請求項1に記載の貨物自動車において、
前記フック部材の上端部は、前記荷箱の下端部に設けられたストッパーに当接可能に設けられ、
前記フック部材の前記下端部には、前記フック係止部材を収容可能な凹部が形成されていることを特徴とする貨物自動車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の貨物自動車において、
前記接触面は、その前位置から斜め後下方に向けて延びていることを特徴とする貨物自動車。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の貨物自動車において、
前記接触面は、前記ロック装置の前記解除状態と前記ロック状態との間で、前記フック部材が回転しても水平な状態にならないように形成されていることを特徴とする貨物自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両フレーム、傾動フレーム、荷箱等を備え、傾動フレームに対する荷箱のスライド動作や、車両フレームに対する傾動フレームの傾動動作を行う貨物自動車が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、車両前後方向を長手方向とする左右一対の車両フレームと、車両フレームに対して傾動可能に設けられた傾動フレームと、傾動フレームに対してスライド可能に設けられた荷箱と、傾動フレームと荷箱との間に設けられたスライドシリンダとを備えた貨物自動車が記載されている。この特許文献1に記載された貨物自動車では、スライドシリンダによって荷箱を車両後方側にスライドさせ、その後、スライドとともに荷箱を傾斜させて接地状態にすることや、リフトシリンダによって荷箱をダンプさせることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-52296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の貨物自動車では、スライドシリンダによって荷箱を車両後方側にスライドさせる際、フック部材および丸棒部材を有するロック装置によって、傾動フレームが車両フレームに固縛されていた。一方、リフトシリンダによって荷箱をダンプさせる際や、車両走行時には、ロック装置による固縛は行われていなかった。このため、積み荷が左右どちらかに偏った場合や凹凸の大きい場所でのスライド操作時に、荷箱の片側がねじれ上方へ持ち上げられることによって、車両フレームと傾動フレームとの隙間が大きくなり、その状態でスライド操作を行うと本来自動で係合するフック部材が係合できず、荷箱が車両走行位置になった時点でフック部材が丸棒部材上に乗り上げる現象が発生する可能性があった。
【0005】
そして、荷箱が車両走行位置になる際に、フック部材が丸棒部材上に乗り上げた状態から移動できずに他部材を変形させたり、荷箱の自重が大きい場合などは丸棒部材を下方に押し曲げるなどの現象も発生する恐れがある。仮にこうした事態が起きると、荷箱のスライドの際に、ロック装置をロック状態に切り換えようとしても、ロック状態を実現できず、傾動フレームを車両フレームに固縛できなくなってしまう。さらには、荷箱をスライドさせた後、荷箱を傾斜させる際、荷箱とともに傾動フレームが傾斜するといった作動不良が発生する恐れもある。
【0006】
本発明は、上述したような実情を考慮してなされたものであって、荷箱をスライドさせる際に、ロック装置による傾動フレームの車両フレームへの固縛を確実に行うことが可能な貨物自動車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、車両前後方向を長手方向とする左右一対の車両フレームと、前記車両フレームに対して傾動可能に設けられた傾動フレームと、前記傾動フレームに対してスライド可能に設けられた荷箱と、前記傾動フレームと前記荷箱との間に設けられたスライドシリンダとを備えた貨物自動車であって、前記傾動フレームに回転可能に設けられたフック部材と、前記車両フレームに設けられたフック係止部材とを有するロック装置を備え、前記ロック装置は、前記傾動フレームに対する前記荷箱のスライド時には、弾性部材の弾性力によって前記フック部材が前記フック係止部材に係合することで、前記車両フレームに対する前記傾動フレームの傾動を規制するロック状態に切り換えられる一方、前記ロック装置は、前記車両フレームに対する前記傾動フレームの傾動時には、前記弾性部材の弾性力に抗して前記フック部材が前記フック係止部材から離脱することで、前記車両フレームに対する前記傾動フレームの傾動を許容する解除状態に切り換えられ、前記フック部材の下端部には、前記ロック装置の前記ロック状態で当該フック部材の下方の部分に接触面が設けられており、前記接触面は、前記フック部材の前記下端部が前記フック係止部材に乗り上げた際に、傾斜する面として形成されており、乗り上げた状態から前記フック係止部材に対し前記フック部材の前記下端部を後方側に移動させることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、荷箱や傾動フレームがねじられることによってフック部材がフック係止部材上に乗り上げた際に、フック部材の接触面がフック係止部材に当接する。このため、荷箱や傾動フレームのねじれが解消したときに、フック部材の接触面がフック係止部材上を滑るように移動して、フック部材をロック装置の解除状態の解除位置に容易に復帰させることができる。これにより、荷箱のスライドの際に、ロック装置をロック状態に確実に切り換えることができ、ロック装置による傾動フレームの車両フレームへの固縛を確実に行うことができる。その結果、荷箱をスライドさせた後、荷箱を傾斜させる際、荷箱とともに傾動フレームが傾斜するといった作動不良の発生を防止することができる。
【0009】
本発明において、前記接触面は、その前位置から斜め後下方に向けて延びていることが好ましい。この構成によれば、荷箱や傾動フレームのねじりにより生じた車体との隙間が解消したときに、フック係止部材よりも後方側にフック部材が確実に位置するように、フック部材を回転させることができる。つまり、隙間が解消したときに、フック係止部材よりも前方側にフック部材が位置することを確実に回避することができる。これにより、荷箱のスライドの際に、ロック装置をロック状態に確実に切り換えることができ、ロック装置による傾動フレームの車両フレームへの固縛を確実に行うことができる。
【0010】
本発明において、前記接触面は、前記ロック装置の前記解除状態と前記ロック状態との間で、前記フック部材が回転しても水平な状態にならないように形成されていることが好ましい。この構成によれば、荷箱や傾動フレームのねじりにより生じた車体との隙間が解消したときに、フック係止部材よりも後方側にフック部材が確実に位置するように、フック部材を回転させることができる。つまり、隙間が解消したときに、フック部材がフック係止部材上に乗り上げた状態から移動できなくなることを確実に回避することができる。これにより、荷箱のスライドの際に、ロック装置をロック状態に確実に切り換えることができ、ロック装置による傾動フレームの車両フレームへの固縛を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷箱や傾動フレームがねじられることによってフック部材がフック係止部材上に乗り上げた際に、フック部材の接触面がフック係止部材に当接する。このため、荷箱や傾動フレームのねじれが解消したときに、フック部材の接触面がフック係止部材上を滑るように移動して、フック部材をロック装置の解除状態の解除位置に容易に復帰させることができる。これにより、荷箱のスライドの際に、ロック装置をロック状態に確実に切り換えることができ、ロック装置による傾動フレームの車両フレームへの固縛を確実に行うことができる。その結果、荷箱をスライドさせた後、荷箱を傾斜させる際、荷箱とともに傾動フレームが傾斜するといった作動不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る貨物自動車の概略構成を示す側面図である。
図2図1の貨物自動車の荷箱を車両後方側にスライドさせた後に傾斜して接地した状態を示す側面図である。
図3図1の貨物自動車に備えられた傾動フレームを示す斜視図である。
図4図1の貨物自動車に備えられたロック装置を示す側面図である。
図5図4のロック装置のロック状態を示す図である。
図6図4のX1-X1線断面図である。
図7図1の貨物自動車において、車両フレームと傾動フレームとの間の隙間が大きくなったときのロック装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る貨物自動車100の概略構成を示す側面図である。図2は、図1の貨物自動車100の荷箱2を車両後方側(図中の右側)にスライドさせた後に傾斜して接地した状態を示す側面図である。図3は、図1の貨物自動車100に備えられた傾動フレーム3を示す斜視図である。図4は、図1の貨物自動車100に備えられたロック装置6を示す側面図である。図5は、図4のロック装置6のロック状態を示す図である。図6は、図4のX1-X1線断面図である。図7は、図1の貨物自動車100において、車両フレーム1と傾動フレーム3との間の隙間C1が大きくなったときのロック装置6の動作を説明するための図である。
【0014】
まず、貨物自動車100の概略構成について説明する。図1図3に示すように、貨物自動車100は、車両前後方向を長手方向とする車両フレーム1の上に搭載された荷箱2を備えている。図1では、貨物自動車100が走行可能な状態を実線で示し、荷箱2を後方傾斜(ダンプ)した状態を2点鎖線で示している。図2では、荷箱2を車両後方側(図中の右側)にスライドさせた後に傾斜して接地した状態を示している。図2の荷箱2が接地した状態において、建設機械200の荷箱2に対する乗り入れが可能になっている。
【0015】
車両フレーム1と荷箱2との間には、車両フレーム1に対して傾動可能な傾動フレーム3が設けられている。この傾動フレーム3は、車両フレーム1と同じく車両前後方向を長手方向とし、車両フレーム1の後部に対して第1傾動軸となるダンプヒンジ1aを介して傾動可能に設けられている。荷箱2に土砂等を積んだ状態の貨物自動車100が、その土砂等を車両後方に排出する際には、車両フレーム1に連結されたリフトシリンダ(不図示)の伸長を利用してダンプヒンジ1aを中心に荷箱2を車両後方側に傾動させる。荷箱2の傾動に伴って、テールゲート2aが上部ヒンジ21aを中心にして下開き(図中で反時計回り)して土砂等が排出される。荷箱2の傾動の際には、傾動フレーム3は荷箱2と一体的に傾動する。
【0016】
また、図2に示すように、荷箱2が接地状態にされる際には、荷箱2は、傾動フレーム3と荷箱2との間に設けられたスライドシリンダ4の伸長に伴ってスライドする。荷箱2のスライドの際には、傾動フレーム3は左右一対のロック装置6によって車両フレーム1に固縛され、車両フレーム1に対する傾動フレーム3の傾動が規制されている。ロック装置6の詳細については後述する。
【0017】
傾動フレーム3は、図3に示すような構造になっており、傾動フレーム3の後部には、スライドシリンダ4が固定されている。詳細には、傾動フレーム3は、車両前後方向を長手方向とする左右方向(X軸方向)に一対のベースフレーム31と、左右のベースフレーム31間でそれぞれ車両前方側(Y軸正方向側)および車両後方側(Y軸負方向側)に架設されたクロスフレーム321,322と、これらクロスフレーム321,322に固定されて車両前後方向を長手方向とするガイドフレーム33とを備えている。車両後方側のクロスフレーム322は、ベースフレーム31よりも車両左右方向(X軸方向)の外側に延出しており、その延出した先端部は、ダンプヒンジ1aを介して車両フレーム1に回転自在に連結されている。ベースフレーム31はそれぞれ車両フレーム1に積載された状態となっている。また、スライドシリンダ4の後端部に設けられたロッド41が、荷箱2の後端部の裏面側に回転自在に連結されている。
【0018】
ガイドフレーム33は、車両前方側のクロスフレーム321に連結されて略水平に延伸した形状を有する前方フレーム部331と、前方フレーム部331から後方に向かって斜め上方に延伸した形状を有する傾斜フレーム部332と、傾斜フレーム部332から後方に向かって略水平に延伸した形状を有する後方フレーム部333とを有する。左右のガイドフレーム33は、互いに対向する内方側が開口した略コ字状断面を有しており、前方フレーム部331、傾斜フレーム部332および後方フレーム部333の内方空間はいずれも連通している。傾斜フレーム部332は、長手方向(Y軸方向)の途中部からベースフレーム31よりも高位置(Z軸方向)となっている。
【0019】
車両前後方向(Y軸方向)において、途中で屈曲した形状となるガイドフレーム33のうち、その一部となる傾斜フレーム部332と後方フレーム部333は、一枚の金属板がY軸方向において折り曲げ加工されている。また、屈曲した形状の他の部分となる前方フレーム部331は、傾斜フレーム部332に対して溶接によって連結されている。このガイドフレーム33の内方空間(略コ字状断面の内方空間)をガイドローラ(不図示)が転動可能に設けられている。このガイドローラは、車両走行状態、つまり荷箱2が水平状態のときには前方フレーム部311内に位置する。また、荷箱2がスライドシリンダ4の伸縮で姿勢変更する際には、ガイドローラは傾斜フレーム部332内および後方フレーム部333内を転動する。スライドシリンダ4が伸長すると、ガイドローラがガイドフレーム33内を転動する。荷箱2はガイドローラの転動に合わせて車両後方側(Y軸負方向側)にスライドした後、荷箱2は傾斜しながらスライドし、その後、荷箱2は傾斜した状態でスライドし、荷箱2の後端下部が接地する(図2参照)。一方、接地された荷箱2を貨物自動車100が走行可能な状態(図1参照)にするには、スライドシリンダ4を収縮させて荷箱2を車両前方側に持ち上げてスライドする。
【0020】
次に、ロック装置6について説明する。ロック装置6は、貨物自動車100の左右両側にそれぞれ設けられており、各ロック装置6は同一の構成になっている。以下では、一方側(左方側)のロック装置6について代表して説明する。図4図6に示すように、ロック装置6は、フック部材61、丸棒部材(フック係止部材)62、スプリング63、ストッパー64等を備えている。
【0021】
フック部材61は、傾動フレーム3のベースフレーム31に設けられた回転軸65に回転自在に支持されている。回転軸65は、左右方向(図3のX軸方向)に沿って延びており、ベースフレーム31に一体的に固定されている。フック部材61の下端部は、丸棒部材62に係合可能なフック部61aになっており、フック部材61の上端部は、ストッパー64に当接可能な当接部61bになっている。フック部61aの前方側の部分には、丸棒部材62を収容可能な凹部61cが形成されている。
【0022】
丸棒部材62は、左右方向(図3のX軸方向)に沿って延びており、車両フレーム1に一体的に固定されている。具体的には、車両フレーム1に固定されたブラケット66に、丸棒部材62の外周に設けられたフランジ部62aが溶接等の手段によって固定されている。なお、丸棒部材62は、中空の円筒状の部材であってもよいし、あるいは、中実の円柱状の部材であってもよい。
【0023】
スプリング63の一端は、フック部材61の当接部61bに連結されており、スプリング63の他端は、傾動フレーム3のベースフレーム31に連結されている。スプリング63は、フック部材61の当接部61bとベースフレーム31との間に伸張された状態で配置されており、スプリング63の弾性力によって、フック部材61が回転軸65を中心として一方向側(図中で時計回り)へ回転するように付勢されている。フック部材61の一方向側への回転は、フック部材61の前方側に設けられたフックストッパー67によって規制されるようになっている。
【0024】
ストッパー64は、荷箱2の下端部に溶接等の手段によって固定されている。ストッパー64にフック部材61の当接部61bが当接することによって、スプリング63の弾性力によるフック部材61の回転が規制されている。このようにストッパー64によってフック部材61の回転が規制された状態では、図4に示すように、フック部材61が丸棒部材62から離脱し、ロック装置6が解除状態に切り換えられる。ロック装置6は、荷箱2の傾動の際や、車両走行時に、解除状態に切り換えられる。
【0025】
一方、ロック装置6は、荷箱2のスライドの際には、ロック状態に切り換えられる。具体的には、図4の状態から、荷箱2を車両後方側にスライドさせる際、傾動フレーム3から離れるように荷箱2が移動し、これに伴ってストッパー64も後方へ移動する。このため、ストッパー64がフック部材61の当接部61bから離れるので、ストッパー64によるフック部材61の回転規制が解除される。これにより、スプリング63の弾性力によってフック部材61が一方向側(図中で時計回り)へ回転し、図5に示すように、フック部材61の凹部61c内に丸棒部材62が収容される。このようにストッパー64によるフック部材61の回転規制が解除された状態では、図5に示すように、フック部材61が丸棒部材62に係合し、ロック装置6がロック状態に切り換えられる。
【0026】
また、図5の状態から、荷箱2を車両前方側に持ち上げてスライドさせる際、傾動フレーム3に近づくように荷箱2が移動し、これに伴ってストッパー64も前方へ移動する。このため、ストッパー64がフック部材61の当接部61bに当接し、図4の状態になると、スプリング63の弾性力に抗してストッパー64によるフック部材61の回転規制が行われるようになる。
【0027】
上記構成の貨物自動車100においては、上述したように、ロック装置6が、傾動フレーム3に対する荷箱2のスライドの際には、スプリング63の弾性力によってフック部材61が丸棒部材62に係合することで、車両フレーム1に対する傾動フレーム3の傾動を規制するロック状態に切り換えられる。一方、ロック装置6が、車両フレーム1に対する傾動フレームの傾動の際、スプリング63の弾性力に抗してフック部材61が丸棒部材62から離脱することで、車両フレーム1に対する傾動フレーム3の傾動を許容する解除状態に切り換えられる。また、車両走行時にも、ロック装置6が解除状態に切り換えられる。そして、このようなロック装置6を備えた貨物自動車100において、フック部材61のフック部(下端部)61aには、ロック装置6のロック状態のロック位置(図5に示す位置)で回転軸65の鉛直下方の部分に傾斜面(接触面)61dが設けられており、この傾斜面61dは、フック部材61のフック部61aが丸棒部材62に乗り上げた際に、丸棒部材62に対しフック部材61のフック部61aを後方側に移動させるように形成されている。
【0028】
傾斜面61dは、例えば図7(a)に示すように、ロック装置6の解除状態でフック部材61が丸棒部材62上に乗り上げた際に、丸棒部材62に当接可能な位置に設けられている。本実施形態では、傾斜面61dは、フック部材61のフック部61aの外縁側であって前方側の部分に設けられている。傾斜面61dは、平坦面に形成されており、その前位置61e(本実施形態では前端位置)から斜め後下方に向けて延びている。また、傾斜面61dは、ロック装置6の解除状態の解除位置(図4に示す位置)とロック状態のロック位置(図5に示す位置)との間で、フック部材61が回転しても水平な状態にならないように形成されている。なお、傾斜面61を、その前寄りの前位置であれば、前端位置以外から形成してもよい。
【0029】
このような傾斜面61dをフック部材61に設けることによって、ロック装置6の解除状態でフック部材61が丸棒部材62上に乗り上げた際に、フック部材61をロック装置6の解除状態の解除位置(図4に示す位置)に容易に復帰させることができる。この点について、図7を参照して説明する。
【0030】
例えば積み荷が左右どちらかに偏った場合や凹凸の大きい場所でのスライド操作時に、荷箱2の片側がねじれ上方へ持ち上げられることによって、車両フレーム1と傾動フレーム3との隙間C1が大きくなる可能性がある。車両走行時には、ロック装置6が解除状態に切り換えられるため、例えば図7(a)に示すように、フック部材61が丸棒部材62上に乗り上げる現象が発生する可能性がある。
【0031】
しかし、従来の貨物自動車では、フック部材61の下端部が略水平に形成されていたため、荷箱2や傾動フレーム3のねじれが解消したときに、フック部材61が丸棒部材62上に乗り上げた状態から移動できずに他部材を変形させたり、荷箱2の自重が大きい場合などは丸棒部材62を下方に押し曲げるなどの現象も発生する恐れがある。つまり、これらの場合、フック部材61をロック装置6の解除状態の解除位置(図4に示す位置)に復帰させることができなかった。このため、荷箱2のスライドの際に、ロック装置6をロック状態に切り換えようとしても、フック部材61の凹部61c内に丸棒部材62を収容することができないので、ロック状態を実現できず、傾動フレーム3を車両フレーム1に固縛できなくなってしまう。さらには、荷箱2をスライドさせた後、荷箱2を傾斜させる際、荷箱2とともに傾動フレーム3が傾斜するといった作動不良が発生する恐れもある。
【0032】
これに対し、本実施形態によれば、ロック装置6の解除状態でフック部材61が丸棒部材62上に乗り上げた際に、図7(a)に示すように、フック部材61の傾斜面61dが丸棒部材62に当接する。このため、荷箱2や傾動フレーム3のねじれが解消したときに、図7(b)に示すように、フック部材61の傾斜面61dが丸棒部材62上を滑るように移動して、フック部材61をロック装置6の解除状態の解除位置(図4に示す位置)に容易に復帰させることができる。つまり、丸棒部材62よりも後方側にフック部材61の凹部61cが位置するように、フック部材61を回転させることができる。これにより、荷箱2のスライドの際に、ロック装置6をロック状態に確実に切り換えることができ、ロック装置6による傾動フレーム3の車両フレーム1への固縛を確実に行うことができる。
【0033】
また、本実施形態では、傾斜面61dは、その前位置61eから斜め後下方に向けて延びているので、荷箱2や傾動フレーム3のねじりにより生じた車両フレーム1と傾動フレーム3との隙間C1が解消したときに(隙間C1が小さくなったときに)、丸棒部材62よりも後方側にフック部材61の凹部61cが確実に位置するように、フック部材61を回転させることができる。つまり、隙間C1が解消したときに、丸棒部材62よりも前方側にフック部材61の凹部61cが位置することを確実に回避することができる。これにより、荷箱2のスライドの際に、ロック装置6をロック状態に確実に切り換えることができ、ロック装置6による傾動フレーム3の車両フレーム1への固縛を確実に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態では、傾斜面61dは、ロック装置6の解除状態とロック状態との間で、フック部材61が回転しても水平な状態にならないように形成されているので、荷箱2や傾動フレーム3のねじりにより生じた車両フレーム1と傾動フレーム3との隙間C1が解消したときに、丸棒部材62よりも後方側にフック部材61の凹部61cが確実に位置するように、フック部材61を回転させることができる。つまり、隙間C1が解消したときに、フック部材61が丸棒部材62上に乗り上げた状態から移動できなくなることを確実に回避することができる。これにより、荷箱2のスライドの際に、ロック装置6をロック状態に確実に切り換えることができ、ロック装置6による傾動フレーム3の車両フレーム1への固縛を確実に行うことができる。
【0035】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0036】
上記実施形態で挙げたフック部材61は一例であって、さまざまに変形することが可能である。上記実施形態では、フック部材61の下方の部分に設けられた接触面の一例として、平坦面に形成された傾斜面61dを挙げたが、この接触面は、フック部材61のフック部61aが丸棒部材62に乗り上げた際に、丸棒部材62に対しフック部材61のフック部61aを後方側に移動させるように形成されていれば、さまざまに変形することが可能である。例えば接触面を湾曲面として形成してもよく、この場合、凸状の湾曲面であってもよいし、あるいは凹状の湾曲面であってもよい。また、上記実施形態では、傾斜面61d(接触面)を、ロック装置6のロック状態のロック位置(図5に示す位置)で回転軸65の鉛直下方の部分に設けたが、ロック装置6のロック位置でフック部材61の下方の部分であれば、上記以外の位置に傾斜面61dを設けてもよい。
【0037】
上記実施形態では、フック部材61に係合するフック係止部材の一例として、車両フレーム1に固定された丸棒部材62を挙げたが、フック係止部材として、例えばローラや、ベアリング等を用いてもよい。この場合、車両フレーム1に設けられた回転軸によって、ローラや、ベアリング等を支持すればよい。あるいは、フック係止部材として、例えば矩形状の部材や、板状の部材を用いてもよい。
【0038】
以上では、車両フレーム1に対して傾動フレーム3を機械的にロックするロック装置6を設けた場合について説明した。しかし、これに限らず、電動シリンダやソレノイドを用いて、車両走行時に、車両フレーム1に対して傾動フレーム3を電気的にロックする構成としてもよい。あるいは、油圧シリンダを用いて、車両走行時に、車両フレーム1に対して傾動フレーム3を油圧的にロックする構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、荷箱をスライドさせる際に、ロック装置による固縛を行う貨物自動車に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両フレーム
2 荷箱
3 傾動フレーム
4 スライドシリンダ
6 ロック装置
61 フック部材
61a フック部(下端部)
61d 傾斜面(接触面)
62 丸棒部材(フック係止部材)
63 スプリング
64 ストッパー
65 回転軸
100 貨物自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7