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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック素子ユニット
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/15 20190101AFI20220704BHJP
   G02F 1/163 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
G02F1/15 502
G02F1/163
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2017113621
(22)【出願日】2017-06-08
(65)【公開番号】P2018041062
(43)【公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2016173143
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】木矢村 公介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太郎
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529488(JP,A)
【文献】実開平06-060540(JP,U)
【文献】特開2015-143826(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02848669(EP,A1)
【文献】特開2015-132809(JP,A)
【文献】米国特許第06055089(US,A)
【文献】特開平10-203244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/19
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と前記一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層とを有するエレクトロクロミック素子、前記エレクトロクロミック素子に接続されている操作部を備えたエレクトロクロミック素子ユニットであって、
前記操作部は、1つの操作部に対して、第一種操作と、第二種操作とが可能である操作部であり
前記第一種操作及び前記第二種操作は、いずれも前記エレクトロクロミック素子の透過率を増加させる操作、または、いずれも前記エレクトロクロミック素子の透過率を減少させる操作であり、
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化は、前記第一種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化と異なり、
前記第二種操作の操作時間は、前記第一種操作の操作時間よりも長い時間であることを特徴とするエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項2】
前記第二種操作の操作時間のうち、終了時の一部の時間をキャンセルする制御をすることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項3】
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化量を変更する変更手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項4】
前記変更手段は、第三種操作により行われることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項5】
一対の電極と前記一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層とを有するエレクトロクロミック素子、前記エレクトロクロミック素子に接続されている操作部を備えたエレクトロクロミック素子ユニットであって、
前記操作部は、第一種操作と、第二種操作とが可能であり、
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化は、前記第一種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化と異なり、
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化量を変更する変更手段をさらに有することを特徴とするエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項6】
前記変更手段は、第三種操作により行われることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項7】
前記第二種操作の操作時間は、前記第一種操作の操作時間よりも長い時間であることを特徴とする請求項5または6に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項8】
前記第二種操作の操作時間のうち、終了時の一部の時間をキャンセルする制御をすることを特徴とする請求項7に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項9】
一対の電極と前記一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層とを有するエレクトロクロミック素子、前記エレクトロクロミック素子に接続されている操作部を備えたエレクトロクロミック素子ユニットであって、
前記操作部は、第一種操作と、第二種操作とが可能であり、
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化は、前記第一種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化と異なり、
前記第二種操作の操作時間は、前記第一種操作の操作時間よりも長い時間であり、
前記第二種操作の操作時間のうち、終了時の一部の時間をキャンセルする制御をすることを特徴とするエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項10】
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化量を変更する変更手段をさらに有することを特徴とする請求項9に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項11】
前記変更手段は、第三種操作により行われることを特徴とする請求項10に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項12】
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化量は、前記第一種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化量よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項13】
前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化率は、前記第一種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化率よりも大きいことを特徴とする請求項12に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項14】
前記第一種操作および前記第二種操作は、単一の操作部に対する操作であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項15】
前記単一の操作部がボタンまたはダイヤルであることを特徴とする請求項14に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項16】
前記第二種操作による操作部の変化量が、前記第一種操作の操作部の変化量よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項17】
前記第二種操作が、透過率のアナログ制御であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項18】
前記第二種操作により、前記エレクトロクロミック素子の透過率を最大透過率または最小透過率に変化させることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項19】
前記エレクトロクロミック素子の透過率変化の駆動がパルス幅変調法であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項20】
前記操作部に接続されている制御部を有し、前記制御部は前記操作部からの信号を受信し、前記信号に基づいて、前記エレクトロクロミックの透過率を制御することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項21】
前記エレクトロクロミック素子は、複数種類のエレクトロクロミック材料を有することを特徴とする請求項1乃至20のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項22】
前記複数種類のエレクトロクロミック材料は、複数種類のアノード材料、複数種類のカソード材料であり、
前記複数種類のアノード材料は、酸化還元電位の差が60mV以内であり、複数種類のカソード材料は、酸化還元電位の差が60mV以内であることを特徴とする請求項21に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項23】
前記複数種類のエレクトロクロミック材料は、400nm以上500nm以下に吸収ピークを有する材料と、500nm以上650nm以下に吸収ピークを有する材料と、650nm以上に吸収ピークを有する材料と、を含むことを特徴とする請求項21または22に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項24】
前記エレクトロクロミック層が、ポリマーまたはゲル化剤を含有することを特徴とする請求項1乃至23のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニット。
【請求項25】
一対の透明基板と、前記一対の透明基板の間に配置されているエレクトロクロミック素子ユニットを有する調光窓であって、前記エレクトロクロミック素子ユニットは、請求項1乃至24のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニットであることを特徴とする調光窓。
【請求項26】
複数のレンズを有する光学部と、請求項1乃至24のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子ユニットと、前記エレクトロクロミック素子ユニットを通過した光を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調光に用いられるエレクトロクロミック素子ユニット、特に透過光量を調節する操作部を備えたエレクトロクロミック素子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミック(以下「EC」と省略する場合がある)素子は、電気化学的な酸化還元反応により、物質の光学吸収の性質(呈色状態や光透過度)が変化する素子である。近年、EC素子は、自動車の調光ミラーや、建築および輸送用の調光窓、電子ペーパーなどの表示デバイスに用いられている。特に調光窓はビルや車両の窓の透過する光量を制御できることに加えて、熱の出入りも制御できるため、省エネルギーな窓として注目されている。これら調光窓の透過光量の調節手段としては、EC方式の他にも液晶方式も知られている。
【0003】
特許文献1には、可変透過率窓と、当該窓の透過率状態を制御するシステムが記載されている。システムは、ユーザーの入力情報により透過率を制御する他にマスター回路からの情報により複数の窓の透過率を制御することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ガラス基板の表と裏にそれぞれEC素子を備えた調光ミラーが記載されている。これら2つのEC素子の透過率を制御することで、調光ミラーの透過率を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-98934号公報
【文献】実開平5-11131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の可変透過率窓は、個々のユーザーによる一度の操作で誘起される透過率の変化量は、予め設定されている。このため、透過率の変化量を大きく変更する場合には、複数回の操作を行う等煩雑な操作が必要であった。
【0007】
特許文献2に記載の調光ミラーは、2つのEC素子をそれぞれ操作することで所望の透過率を得る構成である。このため、一度の操作で所望の透過率に制御することができず、煩雑な操作が必要であった。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、本開示は、第一種操作と第一種操作とは透過率変化が異なる第二種操作とを有することで、簡便な操作で透過率を変化させることができるエレクトロクロミック素子ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、一対の電極と前記一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層とを有するエレクトロクロミック素子、前記エレクトロクロミック素子に接続されている操作部を備えたエレクトロクロミック素子ユニットであって、前記操作部は、1つの操作部に対して、第一種操作と、第二種操作とが可能である操作部であり前記第一種操作及び前記第二種操作は、いずれも前記エレクトロクロミック素子の透過率を増加させる操作、または、いずれも前記エレクトロクロミック素子の透過率を減少させる操作であり、前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化は、前記第一種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化と異なり、前記第二種操作の操作時間は、前記第一種操作の操作時間よりも長い時間であることを特徴とするエレクトロクロミック素子ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、第一種操作と第一種操作とは異なる透過率変化を誘起する第二種操作とを有することで、簡便な操作で透過率を変化させることができるエレクトロクロミック素子ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るエレクトロクロミック素子ユニットの一例を示す図である。
図2】(a)実施形態に係るエレクトロクロミック素子ユニットの制御を示すフローチャートの一例である。(b)第一種操作および第二種操作の判別を表わす図である。
図3】(a)実施形態に係るエレクトロクロミック素子ユニットの制御を示すフローチャートの一例である。(b)第一種操作および第二種操作の判別を表わす図である。
図4】(a)ボタン式の操作部の一例である。(b)ダイヤル式の操作部の一例である。
図5】駆動部の一例を表わす模式図である。
図6】本発明に係るエレクトロクロミック素子の一例の断面模式図である。
図7】実施形態の調光窓の一例を表わす模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態に係るエレクトロクロミック素子ユニットは、エレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されている操作部と、を備えたエレクトロクロミック素子ユニットである。エレクトロクロミック素子は、一対の電極と前記一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層とを有する素子である。前記操作部は、第一種操作と、第二種操作とが可能であり、前記第二種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化は、前記第一種操作による前記エレクトロクロミック素子の透過率の変化と異なる。第一種操作と第二種操作とを設けることでより簡便に所望の透過率に設定することができる。
【0013】
第一種操作と第二種操作とは、単位時間当たりの透過率の変化量が異なることを指す。
【0014】
第一種種操作または第二種操作による透過率変化は、単位時間当たりのそれぞれの操作による変化量は異なるが、操作の時間の違いにより、それぞれの変化量が同じであってよい。
【0015】
第二種操作によるエレクトロクロミック素子の透過率の変化は、第一種操作の変化量よりも変化量が大きくてよい。この場合、第二種操作による変化量は、第一種操作によるエレクトロクロミック素子の透過率の変化量よりも大きいので、簡便に所望の透過率に操作することができる。EC素子の透過率を変化させることは、EC素子の透過光量を変化させると言い換えることもできる。
【0016】
図1は、実施形態に係るエレクトロクロミック素子ユニットの一例を示す模式図である。図1のEC素子ユニット1は、EC素子2、駆動部3、操作部4から構成される。EC素子2は駆動部3からの電圧の変化により透過率を変化する。駆動部3は、操作部4からの情報を受けて、EC素子2の透過率を制御する。操作部4は、ユーザーからの入力情報を受けて、駆動部3に信号を伝達する。
【0017】
駆動部3がEC素子2の制御は、電圧変調法であっても、パルス幅変調法であってもよい。中でもパルス幅変調法が好ましい。パルス幅変調法は、印加電圧が一定であるからである。
【0018】
操作部4は、透過率をある一定量変化させる第一種操作と、第一種操作による透過率変化量より大きな量を透過率変化させる第二種操作が行うことができる。この第一種操作および第二種操作は、単一の操作部に対する操作であることが好ましい。
【0019】
単一の操作部は、透過率を上げる操作部と透過率を下げる操作部との一対の操作部であってもよい。操作部は、ボタン、スイッチ、ダイヤルなどがあげられる。
【0020】
第一種操作および第二種操作はそれぞれ独立に行うことができ、第一種操作を経なければ第二種操作ができないという従属の関係を有さなくてもよい。従属関係を有さない場合は、第一種操作と第二種操作とは明確に区別される。
【0021】
第二種操作と認識されるまでの操作を第一種操作として認識してもよい。この場合は、操作量に対するEC素子ユニットの透過率の変化量が大きい。
【0022】
透過率を複数の段階で制御しているEC素子ユニットにおいては、第一種操作は一段階変化であり、第二種操作は複数段階変化であるということができる。例えば、透過率を5段階で制御しているEC素子ユニットにおいて、第一種操作は透過率を一段階下げる操作であり、第二種操作は透過率を二段階下げる操作である。EC素子ユニットは、第二種操作により最小透過率となるよう設定されていてもよい。
【0023】
本発明に係るEC素子ユニットは、第二種操作の制御を変更する変更手段を有してもよい。変更手段は、例えば、第二種操作が二段階の変化に設定されていた設定を、第二種操作が三段階の変化という設定に変更することができる。変更手段は、上記の段階の変更に限られず、変化量を変更する手段であってよいし、第二種操作の形態を変更する手段であってよい。
【0024】
変更手段は、第一種操作および第二種操作を行う操作部と、同じであっても異なってもよい。変更手段を操作する操作部が前記操作部と同じである場合、第三種操作を行うことで変更手段の開始としてもよい。第三種操作としては、例えば、透過率を上げる操作部と、下げる操作部とを同時に押し下げること、ダイヤル式の操作部を押し下げること、等があげられる。
【0025】
[第一の実施形態]
本実施形態において、第一種操作と第二種操作との差異は操作時間である。ここでは、操作部の一例としてボタン式の操作部をあげる。操作部の形式は、ダイヤル式であっても、その他の形式であってもよい。
【0026】
本実施形態において、第二種操作は、ボタンを押し下げる時間が第一種操作よりも長い操作である。ボタンが押下されている時間に閾値を設け、第一種操作と第二種操作とを判別する。具体的には、ボタンが押下されている時間が閾値よりも短い場合、当該操作は第一種操作である。ボタンが押下されている時間が閾値よりも長い場合、当該操作は第二種操作である。
【0027】
操作部4は、入力情報に基づいた信号を駆動部3に伝える。駆動部3は、操作部からの信号に基づいて、EC素子2の制御を変更し、EC素子の透過光量の変化を制御する。第二種操作を行うことで、第一種操作よりもEC素子の透過率の変化量を大きくすることができる。
【0028】
図2(a)は本実施形態におけるエレクトロクロミック素子ユニットの処理を示すフローチャートである。S101は処理の開始を表わす。S102はユーザーの操作量zが閾値Zaを超えることを判別する工程である。操作部の操作量zが閾値Za以下である場合はS110へ進んで処理は終了し、操作量zが閾値Zaより大きい場合はS103に進む。
【0029】
S103は操作時間Tをリセットする工程である。操作時間をリセットすることは、操作時間の測定を開始することを意味する。操作時間TをリセットしてS104に進む。
【0030】
S104は、操作時間Tが閾値Ta未満であることを判別する工程である。S104において操作時間Tが閾値Taより大きいと判別された場合は第一種操作と判別される。この場合はS105に進み、変化量はA1に設定される。
【0031】
一方、S104において操作時間Tが閾値Ta以上と判別された場は第二種操作と判別される。この場合はS106に進み、変化量はA1より大きいB1に設定される。
【0032】
S107はS104の判別に基づいてEC素子の駆動制御する工程である。駆動部3はEC素子2の透過率を変化させる。
【0033】
S108は操作時間Tがカウントアップされる工程である。カウントアップを行うことで、S107までのカウント数に関わらず、S108以降の判別を行うことができる。
【0034】
S109はカウントアップ後のユーザーの操作量zが閾値Zaを超えることを判別する工程である。操作量zが閾値Zaより大きい場合はS104に戻り、操作量zが閾値Za以下である場合はS110で処理が終了する。
【0035】
図2(b)は本実施形態におけるエレクトロクロミック素子ユニットの操作を説明するグラフである。縦軸は操作量z、横軸は時間tである。2つの図形、Ma1およびMa2、がそれぞれ操作を表わしている。
【0036】
操作Ma1は、第一種操作である。操作量zは時刻t1で閾値Zaを超え、閾値Taより短い操作時間T1が経過後、時刻t2で閾値Zaを下回る。この場合、S107における駆動制御は変化量がA1となるよう駆動制御される。
【0037】
操作Ma2は、第二種操作である。操作量zは時刻t1で閾値Zaを超え、時刻t3で閾値Taが経過し、閾値Taより長い操作時間T2が経過後、時刻t4で閾値Zaを下回る。この場合、S107における駆動制御は変化量がB1となるよう駆動制御される。
【0038】
また、操作が第二種操作であると認識されるまでの間、すなわち、t1からt3までの間は、第一種操作として認識し、その後のt3からt4の間に第二種操作として認識されてもよい。この場合、t1からt3までは変化量A1で制御され、t3からt4では変化量B1で制御される。
【0039】
Zaは0であっても、0より大きいであってもよい。Zaが0である場合、操作の精度が高くなるという効果を奏する。一方、Zaが0より大きいである場合、操作部の誤操作を抑制することができる。
【0040】
EC素子の透過率が最大である場合、第一種操作または第二種操作が行われても駆動制御を変更しないこともできる。
【0041】
本実施形態によれば、操作部であるボタンを長く押すことにより第二種操作を行うことができる。すなわち、簡便な操作によりEC素子の透過率を制御することができる。
【0042】
他の実施形態において、操作時間により第二種操作が決定される場合には、本実施形態と同様の制御で実現することができる。
【0043】
[第二の実施形態]
本実施形態において、第一種操作と第二種操作との差異は、操作部の変化量である。ここでは、操作部の一例としてボタン式の操作部をあげる。操作部の形式は、ダイヤル式であっても、その他の形式であってもよい。
【0044】
本実施形態において、第二種操作は第一種操作よりも操作ボタンの押し下げ量が大きい操作である。操作量に閾値を設け、第一種操作と第二種操作とを判別する。具体的には、ボタンが押し下げられる量が閾値よりも小さい場合、当該操作は第一種操作である。ボタンが押し下げられる量が閾値よりも大きい場合、当該操作は第二種操作である。
【0045】
操作部4は、入力情報に基づいた信号を駆動部3に伝える。駆動部3は、操作部からの信号に基づいて、EC素子2の制御を変更し、EC素子の透過光量の変化を制御する。第二種操作を行うことで、第一種操作よりもEC素子の透過率の変化量を大きくすることができる。
【0046】
図3(a)は本実施形態におけるエレクトロクロミック素子ユニットの処理を示すフローチャートである。S201は処理の開始を表わす。S202は操作量zが閾値Zbを超えることを判別する工程である。操作部4の操作量zが閾値Zb1以下である場合はS208へ進んで処理は終了する。一方、操作量zが閾値Zb1より大きい場合はS203に進む。
【0047】
S203は、操作量zと、閾値Zb2とを比較する工程である。ここで、閾値Zb2は、閾値Zb1より大きい値である。操作量zが閾値Zb2以下である場合は、第一種操作と判別される。この場合はS204に進み、変化量はA1に設定される。
【0048】
一方、操作量zが閾値Zb2より大きい場合は第二種操作と判別される。この場合はS205に進み、変化量はA1より大きいB1に設定される。
【0049】
S206は、S203の判別に基づいてEC素子の駆動制御をする工程である。駆動部は、EC素子2の透過率を変化させる。
【0050】
S207は、EC素子の駆動変化後の操作量を判別する工程である。操作量zが閾値Zb1より大きい場合はS203に戻り、操作量zが閾値Zb1以下である場合はS208に進み、処理が終了する。
【0051】
図3(b)は本実施形態におけるエレクトロクロミック素子ユニットの操作を説明するグラフである。縦軸は操作量z、横軸は時間tである。2つの図形、Ma1およびMa2、がそれぞれ操作を表わしている。
【0052】
操作Mb1は、第一種操作である。操作量zは時刻t1で閾値Zb1を超え、閾値Zb2を超えることなく、時刻t3で閾値Zb1を下回る。この場合、S206における駆動制御は変化量がA1となるよう駆動制御される。
【0053】
操作Mb2は、第二種操作である。操作量zは時刻t1で閾値Zb1を超え、時刻t2で閾値Zb2を超え、時刻t4で閾値Zb2を下回り、時刻t5で閾値Zb1を下回る。この場合、S206における駆動制御は変化量がB1となるよう駆動制御される。
【0054】
上記の第二の実施形態の説明は、ボタン式の操作部であっても、ダイヤル式の操作部であっても同様である。すなわち、操作部がボタン式の操作部であれば、操作量zはボタン押し下げ量である。操作部がダイヤル式の操作部であれば、操作量zはダイヤルを回す量である。ダイヤルを回す量は、回転量、ダイヤル変化量ということもできる。
【0055】
本実施形態によれば、操作部であるボタンを強く押すことにより第二種操作を行うことができる。操作部がダイヤルである場合は、強く回すことにより第二種操作を行うことができる。すなわち、簡便な操作によりEC素子の透過率を制御することができる。
【0056】
他の実施形態において、操作部の変化量により第二種操作と決定される場合には、本実施形態と同様の制御で実現することができる。
【0057】
[第三の実施形態]
本実施形態において、第一種操作と第二種操作との差異は、操作部の変化速度である。
【0058】
ここでは、操作部の一例としてダイヤル式の操作部をあげる。
【0059】
本実施形態において、第二種操作は、第一種操作よりもダイヤルを回す速度が速い操作である。ダイヤルを回す速度は、操作の角速度、ダイヤル変化速度ということもできる。ダイヤル変化速度に閾値を設け、第一種操作と第二種操作とを判別する。具体的には、ダイヤル変化速度が閾値よりも小さい場合、当該操作は第一種操作である。ダイヤル変化速度が閾値よりも大きい場合、当該操作は第二種操作である。
【0060】
操作部4は、入力情報に基づいた信号を駆動部3に伝える。駆動部3は、操作部からの信号に基づいて、EC素子2の制御を変更し、EC素子の透過光量の変化を制御する。第二種操作を行うことで、第一種操作よりもEC素子の透過率の変化量を大きくすることができる。
【0061】
本実施形態におけるエレクトロクロミック素子ユニットの処理フローは、第二の実施形態と同様である。すなわち、操作量zは、ダイヤルを回す速度、ダイヤルの角速度である。
【0062】
本実施形態によれば、操作部であるダイヤルを早く回すことにより第二種操作を行うことができる。すなわち、簡便な操作によりEC素子の透過率を制御することができる。
【0063】
他の実施形態において、操作部の変化速度により第二種操作と決定される場合には、本実施形態と同様の制御で実現することができる。
【0064】
[第四の実施形態]
本実施形態は、第二種操作による透過率の変化を除いて、第一の実施形態と同じである。本実施形態においては、第二種操作により透過率の段階が順次変化していく。より具体的には、複数回の第一種操作を第二種操作により代用することができる。
【0065】
第二種操作の停止が、透過率変化の停止指示である。第二種操作の停止によりただちに透過率変化が停止してもよいし、所定量の透過率変化を継続してもよいし、所定量の操作時間をキャンセルしてもよい。
【0066】
所定量の操作時間のキャンセルとは、第二種操作の時間のうちの終了時の一部を除くことである。透過率を目視で確認しながら、透過率変化を行う場合、終了の判断をする時間と、終了の動作を行う時間とが全く同一ではないことがある。つまり、透過率変化を停止しようと判断した時間から実際に透過率変化の操作を停止するまでの差異の時間がある。操作時間のキャンセルは、この時間の差異を考慮して設定することができる。操作時間のキャンセルにより、ユーザーの意図した透過率に近い透過率にすることができ、意図した透過率にするための再操作を抑制することができる。
【0067】
本実施形態によれば、透過率を確認しながら透過率変化を容易に行うことができるので、所望の透過率のEC素子を容易に得ることができる。
【0068】
本実施形態における操作部は、第一の実施形態のようにボタンであってもよいし、第三の実施形態のようにダイヤルであってもよい。
【0069】
[第五の実施形態]
本実施形態は、第二種操作が第一種操作と第一種操作との時間間隔が所定の時間以下の操作であることを除いて、第一の実施形態と同じである。本実施形態における第二種操作は、マウス操作におけるダブルクリックに類似する。
【0070】
第一種操作の連続と、第二種操作との区別は、第一種操作と第一種操作との間隔の閾値を超えるか否かで行うことができる。
【0071】
本実施形態における第二種操作は、EC素子を最大透過率あるいは最小透過率にする操作であってよい。
【0072】
本実施形態における操作部は、第一の実施形態のようにボタンであってもよいし、第三の実施形態のようにダイヤルであってもよい。
【0073】
本実施形態の第二種操作を行った後に、そのまま操作部の操作を続けてもよい。すなわち、第二種操作後、操作部の操作を停止せずに、操作を続けてもよい。その場合、透過率の段階が順次変化する形態であってよい。
【0074】
[第六の実施形態]
本実施形態は、第一種操作および第二操作の形態が第二の実施形態と同じであり、透過率の変化の形態が第四の実施形態と同じである。
【0075】
第二種操作は第一種操作よりも、例えば、ボタンの押し下げ量が大きい。第二種操作を行う場合は、透過率の段階が順次変化していく。複数回の第一種操作を第二種操作によって代用することができる。
【0076】
[第七の実施形態]
本実施形態は、第一種操作による透過率変化は段階的な透過率変化であり、第二種操作による透過率変化は連続的な透過率変化である形態である。第一種操作は透過率のデジタル制御、第二種操作は透過率のアナログ制御ということができる。
【0077】
第二種操作を行った場合、第二種操作の操作時間により透過率変化の変化量が決定されてもよい。また、第二種操作を行った場合のみ機能するレバーがあってもよい。レバーは機械式であっても、電気式であってもよい。
【0078】
[操作部]
図4は、操作部の一例を表わす模式図である。図4(a)はボタン式の操作部の一例である。図4(b)は、ダイヤル式の操作部の一例である。
【0079】
[駆動部]
図5は、駆動部3の一例を表わす模式図である。この例では、パルス幅変調方法を用いた駆動部を表わしている。駆動部は、駆動電源5、抵抗切替部6、制御部7、を有し、EC素子2と、操作部4と接続されている。
【0080】
駆動部はEC素子2へ連続した駆動パルスを印加し、駆動パルスのデューティ比でEC素子の透過率を変化させる。
【0081】
駆動電源5は、EC素子2に、EC材料の酸化反応と還元反応の少なくとも一方が生じる電圧(駆動電圧V1)を印加する。EC層が一種のEC材料を含有する場合は、正常な電気化学反応が生じる範囲でV1の値を変化させてもよい。
【0082】
駆動電源5の電圧印加開始あるいは印加状態の保持は制御部7の信号で行われる。制御部7は、抵抗切替部6の抵抗を切り替えることで、駆動パルスのデューティ比を制御する。デューティ比が変更されることで、EC素子の透過率が変化する。
【0083】
抵抗切替部6は、駆動電源5とEC素子2との間に電気的に接続されており、それらの間の抵抗を抵抗R1または抵抗R2とする。抵抗R2は、抵抗R1よりも大きな抵抗値を有する。
【0084】
抵抗R1の抵抗値としては、少なくとも素子中の最も大きなインピーダンスよりも小さいことが好ましく、好ましくは10Ω以下である。抵抗R2の抵抗値としては、素子中の最も大きなインピーダンスよりも大きいことが好ましく、好ましくは1MΩ以上である。抵抗R2は空気であってもよい。この場合、厳密には開回路となるが、空気を介して閉回路とみなすことができる。
【0085】
制御部7は、抵抗切替部6に切替信号を送り、抵抗R1または抵抗R2に接続されるよう制御する。駆動電源5は、EC層に含まれるEC材料が電気化学反応を生じるのに必要な電圧をEC素子に印加する。
【0086】
駆動電圧は一定電圧であることが好ましい。これは、印加電圧を大きい場合、EC材料に電気的な負荷が加わり劣化が促進されやすいこと、水や酸素などの不純物の電気特性の影響が顕在化しやすいこと、が考えられるからである。
【0087】
このため、駆動方法としてはパルス幅変調方法が好ましい。パルス幅変調方法では印加電圧を一定とし、パルスの一周期に占める電圧印加期間、即ち、電気化学反応が制御される期間を調整する。一定電圧下での駆動であるため、電圧変調方法の場合に懸念されるEC材料への過度の電気的負荷や、不純物の電気特性への影響が抑制される。
【0088】
駆動電源の電圧印加開始あるいは印加状態の保持は制御部7の信号で行われ、EC素子の光透過率を一定に維持する場合は、デューティ比が一定に制御される。
【0089】
[EC素子]
図6は、EC素子2の一例を示す模式的断面図である。EC素子2は、一対の透明基板8および12、一対の透明電極9および11、シール材10、エレクトロクロミック層13を有する。一対の透明電極9および11は、シール材10により間隔が規定されている。シール材はスペーサーと呼ぶこともできる。一対の透明電極と、シール材とで形成された空間にEC材料を有するEC層が配置されている。EC層は蒸着法などで形成された固体層であっても、電解質溶液にEC材料を溶解させた溶液層であってもよい。EC層は溶液層であることが好ましい。
【0090】
EC層は、電解質を含む電解質層とエレクトロクロミック材料(EC材料)を含む層との積層構成であってもよい。EC層は、EC材料を1種類のみ有していても、複数種類のEC材料を有していてもよい。
【0091】
EC層が複数種のEC材料を含有する場合は、EC材料の酸化還元電位差やモル吸光係数の差に起因して吸収スペクトルが変化する場合があるため、駆動電圧は一定電圧であることが好ましい。複数種類のEC材料を有する場合は、アノード材料とカソード材料とを合わせて4種類以上のEC材料を有してよい。実施形態に係るEC素子は5種類以上のEC材料を有してもよい。
【0092】
複数種類のEC材料を有する場合、複数のアノード材料の酸化還元電位は60mV以内であってよく、複数のカソード材料の酸化還元電位は60mV以内であってよい。
【0093】
複数種類のEC材料を有する場合、複数種類のEC材料は、400nm以上500nm以下に吸収ピークを有する材料と、500nm以上650nm以下に吸収ピークを有する材料と、650nm以上に吸収ピークを有する材料と、を含んでよい。吸収ピークは半値幅が20nm以上のものを指す。すなわち、測定時のノイズ等は含まれない。また、光を吸収する場合の材料の状態は酸化状態であっても、還元状態であっても、中性状態であってもよい。
【0094】
EC材料は、有機化合物であっても、無機化合物であってもよい。有機EC材料は、ポリチオフェンやポリアニリンなどの導電性高分子、ビオロゲン系化合物、アントラキノン系化合物、オリゴチオフェン誘導体、フェナジン誘導体などの有機低分子化合物など挙げられる。無機EC材料としては、TiO、NiOx、WO等の金属酸化物材料が挙げられる。
【0095】
実施形態に係るEC素子は、アノード性EC化合物とカソード性EC化合物の両方を溶媒に溶解させたEC素子であっても、アノード性またはカソード性EC化合物のいずれか一方のみを溶媒に溶解させたEC素子であってもよい。本明細書においては、前者の素子を相補型EC素子と呼び、後者の素子を単極型EC素子と呼ぶ。アノード性EC化合物は、アノード材料、カソード性化合物はカソード材料とも呼ばれる。
【0096】
相補型EC素子を駆動させた場合、一方の電極では酸化反応によりEC材料から電子が引き抜かれ、他方の電極では還元によりEC材料が電子を受け取っている。酸化反応により、中性分子からラジカルカチオンが生成してよい。また還元反応により、中性分子からラジカルアニオンが生成しても、ジカチオン分子からラジカルカチオンが生成してもよい。両電極においてEC材料が着色するため、着色時に大きな光学濃度、低い透過率、を必要とする場合には相補型EC素子が好ましい。
【0097】
一方、単極型EC素子は、相補型EC素子に比べて消費電力が小さいので好ましい。これは、相補型EC素子は着色状態を保つためには大きな電流が必要であるためである。相補型EC素子は、アノード性EC化合物とカソード性EC化合物のラジカルカチオン同士が、溶液中を拡散し互いに衝突し、互いに酸化還元反応を起こすことで消色している。着色状態を保つためには、上記の消色反応を上回る着色反応を起こし続ける必要がある。
【0098】
次に、実施形態に係るEC素子を構成する部材について説明する。
【0099】
電解質としては、イオン解離性の塩であり、かつ溶媒に対して良好な溶解性、固体電解質においては高い相溶性を示すものであれば限定されない。中でも電子供与性を有する電解質が好ましい。これら電解質は、支持電解質と呼ぶこともできる。
【0100】
電解質としては、例えば、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機イオン塩や4級アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩などがあげられる。
【0101】
具体的にはLiClO、LiSCN、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiPF、LiI、NaI、NaSCN、NaClO、NaBF、NaAsF、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CHNBF、(CNBF、(n-CNBF、(n-CNPF、(CNBr、(CNClO、(n-CNClO等の4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0102】
EC材料および電解質を溶かす溶媒としては、EC材料や電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性を有するものが好ましい。EC材料および電解質を溶解させた媒体をエレクトロクロミック媒体と呼ぶ。エレクトロクロミック媒体の溶媒は、電解質を兼ねてもよい。
【0103】
具体的には水や、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、3-メトキシプロピオンニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン等の有機極性溶媒が挙げられる。
【0104】
上記EC媒体は、さらにポリマーやゲル化剤を含有させてもよい。この場合、EC媒体は粘稠性が高い液体となり、場合によってはゲル状となる。
【0105】
上記ポリマーとしては、例えばポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、プルラン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ナフィオン(登録商標)などが挙げられる。
【0106】
次に、透明基板および透明電極について説明する。透明基板2、6としては、例えば、無色あるいは有色ガラス、強化ガラス等が用いられる。これらガラス材としては、Corning#7059やBK-7等の光学ガラス基板を好適に使用することができる。また、プラスチックやセラミック等の材料であっても十分な透明性があれば適宜使用が可能である。
【0107】
透明基板は剛性で歪みを生じることが少ない材料が好ましい。なお、本実施形態において透明とは、可視光の透過率が50%以上の透過率であることを示す。
【0108】
プラスチックやセラミックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリノルボルネン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0109】
電極材料3,5としては、例えば、酸化インジウムスズ合金(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化銀、酸化バナジウム、酸化モリブデン、金、銀、白金、銅、インジウム、クロムなどの金属や金属酸化物、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系材料、カーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン等の炭素材料などを挙げることができる。
【0110】
また、ドーピング処理などで導電率を向上させた導電性ポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。
【0111】
実施形態に係るEC素子は、消色状態で高い透過率を有することが好ましいため、透明電極は、例えば、ITO、IZO、NESA、PEDOT:PSS、グラフェンなどが特に好ましい。これらはバルク状、微粒子状など様々な形態で使用できる。尚、これらの電極材料は、単独で使用してもよく、あるいは複数で使用してもよい。
【0112】
シール材10としては、化学的に安定で、気体及び液体を透過せず、EC材料の酸化還元反応を阻害しない材料であることが好ましい。シール材として、例えば、ガラスフリット等の無機材料、エポキシ樹脂等の有機材料、金属材料等が挙げられる。
【0113】
実施形態に係るEC素子は、スペーサーを有してもよい。スペーサーは電極間の距離を規定する機能を有する。スペーサーの機能は、シール材4が有してもよい。
【0114】
スペーサーは、シリカビーズ、ガラスファイバー等の無機材料や、ポリジビニルベンゼン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等の有機材料で構成されてよい。
【0115】
実施形態に係るEC素子は、撮像装置に用いられてもよい。撮像装置は、複数のレンズを有する光学部と、EC素子ユニットと、EC素子ユニットを通過した光を受光する撮像素子とを有する。EC素子ユニットは、レンズと撮像素子との間に配置されても、ECユニットと撮像素子との間にレンズが配置されるように配置してもよい。中でも撮像素子の直前に配置されているのが好ましい。直前とは、EC素子ユニットと撮像素子との間にレンズ等が配置されていないことを指す。
【0116】
本実施形態に係るEC素子の形成方法は、一対の電極基板の間に設けた間隙に、真空注入法、大気注入法、メニスカス法等によって予め調製したEC材料を含有する液体を注入する方法があげられる。
【0117】
実施形態に係るEC素子は、調光窓に用いられてもよい。図7(a)は本実施形態の調光窓の模式図であり、図7(b)は図7(a)のX-X’で切断した際の断面模式図である。
【0118】
調光窓14は、一対の透明板16と、その間に配置されているEC素子ユニット1と、全体を囲繞して一体化する枠体15と有する。EC素子ユニット中の駆動部および操作部は不示図である。
【0119】
透明板16は光透過率が高い材料であれば特に限定されず、窓としての利用を考慮すればガラス素材であることが好ましい。
【0120】
本実施形態に係る調光窓14は、日中の太陽光の室内への入射量を調整できる。太陽の光量の他、熱量の調整にも適用できるため、室内の明るさや温度の制御に使用することができる。調光窓は、例えば、建造物用のガラス窓、自動車、電車、飛行機、船など乗り物の窓に適用できる。また、室外から室内を見ることができないよう遮断する用途にも適用可能である。
【0121】
調光窓14が乗り物の窓に適用される場合は、枠体15は乗り物の車体であってもよい。
【0122】
本実施形態の調光窓14は、透明板16と、透明基板2および6と、が別に存在する構成である。実施形態に係る調光窓14は透明板16が存在せず、透明基板2、6が透明板の機能を兼ねていてもよい。
【0123】
以上のように実施形態に係るエレクトロクロミック素子ユニットは、調光窓の透過率変化量を小さく制御したい時でも大きく制御したい時でも、より簡便な操作で透過光量を調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
実施形態に係るエレクトロクロミック素子ユニットは、簡便な操作で透過光量を調節することが可能であるため、調光窓等に利用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 エレクトロクロミック素子ユニット
2 エレクトロクロミック素子
3 駆動部
4 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7