(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】襠付きポケット
(51)【国際特許分類】
A45C 13/00 20060101AFI20220704BHJP
A45C 1/02 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A45C13/00 C
A45C1/02 Z
(21)【出願番号】P 2017136268
(22)【出願日】2017-07-12
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520257898
【氏名又は名称】株式会社フラットヘッド・ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌良
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3161692(JP,U)
【文献】特開2005-178286(JP,A)
【文献】特開2013-005890(JP,A)
【文献】実開昭54-162513(JP,U)
【文献】特開2001-061528(JP,A)
【文献】特開2015-002968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0241011(US,A1)
【文献】実開昭57-157223(JP,U)
【文献】実開平06-059422(JP,U)
【文献】登録実用新案第3088215(JP,U)
【文献】登録実用新案第3053616(JP,U)
【文献】特開2003-054563(JP,A)
【文献】特開2007-229436(JP,A)
【文献】特開昭60-176602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 13/00
A45C 1/02
A45F 3/04
A41D 27/20
B42F 5/00
B42F 7/00
B42F 17/00
A43B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基シート部材に重ねられて取り付けられるポケット形成片と、前記ポケット形成片の両側に配置される襠片とからなる襠付きポケットであって、
前記ポケット形成片と襠片
は皮革または合成樹脂製の弾性素材からなり、前記ポケット形成片は、ポケット底形成縁部が前記基シート部材に固定され、
左右側縁部は前記基シート部材との間で未固定状態となっており、
前記襠片は、前記基シート部材と前記ポケット形成片に跨がって、前記襠片の一側縁部を残して前記ポケット形成片の左右側表面部分に重な
り、前記襠片の残された一側縁部が前記基シート部材に重なるように配置され、
前記基シート部材に、前記襠片の一側縁部が前記基シート部材に重ねられた状態で固定されていることを特徴とする襠付きポケット。
【請求項2】
基シート部材に重ねられて取り付けられるポケット形成片と、前記ポケット形成片の両側に配置される襠片とからなる襠付きポケットであって、
前記ポケット形成片と襠片
は皮革または合成樹脂製の弾性素材からなり、前記ポケット形成片は、ポケット底形成縁部が前記基シート部材に固定され、左右側縁部はポケット底形成縁部からポケット口形成縁部に至らない任意の位置まで
前記基シート部材に固定され、ポケット口縁部側が前記基シート部材との間で未固定状態となっており、
前記襠片は、前記基シート部材と前記ポケット形成片に跨がって、前記襠片の一側縁部を残して前記ポケット形成片の左右側表面部分に重な
り、前記襠片の残された一側縁部が前記基シート部材に重なるように配置され、
前記基シート部材に、前記襠片の一側縁部が前記基シート部材に重ねられた状態で固定されていることを特徴とする襠付きポケット。
【請求項3】
前記襠片は、ポケット底側縁部が前記基シート部材に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の襠付きポケット。
【請求項4】
前記ポケット形成片の左右側表面部分に配置された前記襠片は、ポケット底側縁部が連結片で連結されて一体に形成され、前記連結片は前記ポケット形成片のポケット底形成縁部側表面部分に重ねられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の襠付きポケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、財布、カードケース、鞄等に設けられ、紙幣、カード、小銭、鍵等を収容する襠付きポケットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの財布、カードケース、カバン等(以下、単に製品という。)に紙幣、カード、小銭、鍵等を収納することができるポケットが設けられている。このようなポケットとして、一般的に製品の本体等を形成する基シート部材に、例えば矩形状に形成されたシート状のポケット形成片を重ね、ポケット形成片の三辺を基シート部材に縫着等により固定して、開放されている一辺をポケット口部とし、基シート部材とポケット形成片の間に形成される空間を収納部とした構造のものがある。
【0003】
また、このようなポケットには、ポケット形成片の基シート部材への固定を、所定幅を有する襠片を介して行う襠付きポケットが知られている。襠片を介してポケット形成片を基シート部材に固定したポケットは、襠片の幅の分だけポケットに奥行きが出るので、ポケットの容量が増加する。また、収納物の視認がしやすく且つ収納部に指を差し込みやすいので、収納物の出し入れが容易になる。
【0004】
このような、ポケット形成片を襠片を介して固定する襠付きポケットでは、襠片をポケットの収納部の内側に屈曲させた蛇腹状に形成するといったことが多く採用されている(例えば、特許文献1,2)。このような蛇腹状の襠片によれば、ポケット形成片を外側から基シート部材の方向にポケットを押圧すると、襠片が折り畳まれて、ポケットの奥行きを縮めることができる。そのため、ポケットの不使用時や収納物が少ない場合などには襠片を折り畳むことにより、ポケットの奥行きを抑えて製品のデザインをすっきりとしたものにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-94462号公報
【文献】特開2001-101933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2に記載されたような、ポケット形成片を蛇腹状の襠片を介して本体に取り付けた襠付きポケットは、繰り返しの折り畳みにより襠片が傷み破れてしまうおそれがあるといった問題がある。
【0007】
また、特許文献1又は2に記載されたような襠付きポケットは、ポケットに何ら収容していない場合でも、襠片を有さないポケットに比べて、折り畳まれた襠片により厚みが生じる。この襠片の厚みが製品全体の厚みに影響し、デザインに制約が生じるといった問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ポケット口部を広げ且つ収納容量を大きくすることができ、また、繰り返しの使用によっても襠片に損傷が生じることなく、さらには、未収納時の厚さを薄くすることができ、製品デザインに与える制約が少ない襠付きポケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基シート部材に重ねられて取り付けられるポケット形成片と、前記ポケット形成片の両側に配置される襠片とからなる襠付きポケットであって、前記ポケット形成片と襠片は皮革または合成樹脂製の弾性素材からなり、前記ポケット形成片は、ポケット底形成縁部が前記基シート部材に固定され、左右側縁部は前記基シート部材との間で未固定状態となっており、前記襠片は、前記基シート部材と前記ポケット形成片に跨がって、前記襠片の一側縁部を残して前記ポケット形成片の左右側表面部分に重なり、前記襠片の残された一側縁部が前記基シート部材に重なるように配置され、前記基シート部材に、前記襠片の一側縁部が前記基シート部材に重ねられた状態で固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の襠付きポケットによれば、前記ポケット形成片の中央部位を外側へ引き出すことにより、前記ポケット形成片及び前記襠片が弾性変形して、前記襠片に重なっている前記ポケット形成片の左右側表面部分が前記襠片の内面をスライドして前記襠片から引き出され、これによりポケット口部が広げられるとともに、前記基シート部材と前記ポケット形成片と前記襠片で形成されるポケット収納部の収納容量が大きくなる。
このポケット収納部は、未収納の状態では薄く扁平の状態にあり製品全体の厚みに与える影響が小さく、厚みによる製品のデザイン制約が少ない。また、収納後は、ポケット収納部に収納した収納物は弾性変形したポケット形成片と襠片の復元力により押さえられるので、安定した収納状態を得ることができる。さらに、従来の襠付きポケットのように、その使用にあたり襠片を折り畳む必要が無いため、襠片が傷み破れるといったことを防ぐことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、基シート部材に重ねられて取り付けられるポケット形成片と、前記ポケット形成片の両側に配置される襠片とからなる襠付きポケットであって、前記ポケット形成片と襠片は皮革または合成樹脂製の弾性素材からなり、前記ポケット形成片は、ポケット底形成縁部が前記基シート部材に固定され、左右側縁部はポケット底形成縁部からポケット口形成縁部に至らない任意の位置まで前記基シート部材に固定され、ポケット口縁部側が前記基シート部材との間で未固定状態となっており、前記襠片は、前記基シート部材と前記ポケット形成片に跨がって、前記襠片の一側縁部を残して前記ポケット形成片の左右側表面部分に重なり、前記襠片の残された一側縁部が前記基シート部材に重なるように配置され、前記基シート部材に、前記襠片の一側縁部が前記基シート部材に重ねられた状態で固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の襠付きポケットによれば、前記ポケット形成片の中央部位を外側へ引き出すことにより、前記ポケット形成片及び前記襠片が弾性変形して、前記襠片に重なっている前記ポケット形成片の前記基シート部材との間で未固定状態となっている前記左右側表面部分が、前記襠片の内面をスライドして襠片から引き出され、これによりポケット口部が広げられるとともに、前記基シート部材と前記ポケット形成片と前記襠片で形成されるポケット収納部の収納容量が大きくなる。
そして、前記ポケット形成片は、ポケット底形成縁部が前記基シート部材に固定され、両側縁部はポケット底形成縁部からポケット口形成縁部に至らない任意の位置まで固定されているので、前記ポケット形成片の前記基シート部材との間で未固定状態となっている前記左右側表面部分を前記襠片から完全に引き出してしまった場合でも、ポケット収納部の底側は確保されることになり、収納物がポケット収納部から脱落してしまうといった事態を防ぐことができる。
このポケット収納部は、未収納の状態では薄く扁平の状態にあり製品全体の厚みに与える影響が小さく、厚みによる製品のデザイン制約が少ない。また、収納後は、ポケット収納部に収納した収納物は弾性変形したポケット形成片と襠片の復元力により押さえられるので、安定した収納状態を得ることができる。さらに、従来の襠付きポケットのように、その使用にあたり襠片を折り畳む必要が無いため、襠片が傷み破れるといったことを防ぐことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の襠付きポケットであって、前記襠片は、ポケット底側縁部が前記基シート部材に固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の襠付きポケットによれば、前記襠片は、ポケット底側縁部が前記基シート部材に固定されているので、前記一側縁部と前記ポケット底側縁部の2箇所で前記基シート部材に固定された前記襠片は、前記ポケット形成片を引き出したときの前記襠片の弾性変形が抑えられ、前記ポケット形成片の前記左右側表面部分を押さえる力が大きくなる。
これにより、前記ポケット形成片の前記左右側表面部分が前記襠片から安易に抜け出してしまうといった事態を防ぐことができる。また、前記襠片による前記ポケット形成片の前記左右側表面部分を押さえる力が、物品収納時に引き出されて弾性変形した前記ポケット形成片の復元をアシストすることになり、ポケット収納部に収納した収納物は安定した収納状態を得ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3までのいずれか1項に記載の襠付きポケットであって、前記ポケット形成片の左右側表面部分に配置された前記襠片は、ポケット底側縁部が連結片で連結されて一体に形成され、前記連結片は前記ポケット形成片のポケット底形成縁部側表面部分に重ねられていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の襠付きポケットによれば、前記ポケット形成片の左右側表面部位に配置された前記襠片は、ポケット底側縁部が連結片で連結されて一体に形成されているので、前記ポケット形成片を引き出したときの弾性変形が前記連結片により抑えられ、前記ポケット形成片の前記左右側表面部分を押さえる力が大きくなり、前記ポケット形成片の前記左右側表面部位が前記襠片から安易に抜け出してしまうといった事態を防ぐことができる。また、前記襠片による前記ポケット形成片の前記左右側表面部分を押さえる力が、物品収納時に引き出されて弾性変形した前記ポケット形成片の復元をアシストすることになり、ポケット収納部に収納した収納物は安定した収納状態を得ることができる。
また、前記連結片は前記ポケット形成片のポケット底形成縁部側表面部分に重ねられているので、前記ポケット形成片を引き出し過ぎたとしても、前記ポケット形成片の引き出しは前記連結片の位置で阻止される。これにより、ポケット収納部の底側は確保されることになり、収納物がポケット収納部から脱落してしまうといった事態を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の襠付きポケットによれば、ポケット口部を広げ且つ収納容量を大きくすることができるので容量を広げることができ且つ収納物の収納や取り出しを容易に行うことができ、また、収納物を多く収納できる。また、繰り返しの使用によっても襠片に損傷が生じない襠付きポケットを得ることができる。また、未収納時の厚さを従来の蛇腹状の襠片を有するポケットよりもさらに薄くすることができ、製品デザインに与える制約が少ない襠付きポケットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る襠付きポケットの第1例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す襠付きポケットのポケット形成片を引き出してポケットのポケット口部を広げ、且つ収納容量を大きくした状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明にかかる襠付きポケットの第2例を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図4】本発明にかかる襠付きポケットの第3例を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図5】本発明にかかる襠付きポケットの第4例を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図6】本発明にかかる襠付きポケットの第5例を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図7】本発明にかかる襠付きポケットの第6例を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図8】本発明にかかる襠付きポケットの第7例を示す一部切り欠き斜視図である。
【
図9】本発明にかかる襠付きポケットを長財布に実施した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態の第1例を
図1、
図2を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る襠付きポケットの第1例を示す斜視図、
図2は
図1に示す襠付きポケットのポケット形成片を引き出してポケットのポケット口部を広げ、且つ収納容量を大きくした状態を示す斜視図である。
【0020】
第1例の襠付きポケットは、財布、カードケース、カバンなどの製品の本体等を形成する基シート部材1に重ねられて取り付けられたポケット形成片2と、ポケット形成片2の両側に配置される襠片3とで構成されている。そして、ポケット形成片2の上縁部側がポケットのポケット口部16となり、基シート部材1とポケット形成片2との間に形成される空間がポケット収納部15となっている。ポケット形成片2と襠片3は、いずれも容易に変形しない剛性を有する弾性素材で形成されている。
【0021】
基シート部材1にあっては、財布、カードケース、カバンなどの製品の本体等を構成するものであり、製品に応じた形状に形成され、材質にあっては特に限定されない。
ポケット形成片2にあっては、矩形状に形成されたシート材であり、下縁部をポケット底形成縁部5とし、上縁部をポケット口形成縁部6としている。ポケット形成片2は基シート部材1に重ねられ、ポケット底形成縁部5が基シート部材1に固定されている。9Aはポケット底形成縁部5と基シート部材1を固定している固定部である。
【0022】
基シート部材1へのポケット底形成縁部5の固定は、第1例では縫着により行っているがこれに限定されるものではない。例えば、接着剤又は熱融着によって固定してもよい。
ポケット形成片2の左右の側縁部7は基シート部材1に固定されず、未固定状態になっている。
【0023】
なお、図示しないが、ポケット形成片2の形状は矩形に限られるものではなく、例えばポケット底形成縁部5を底部方向に突出するU字型にしても良い。このようにすれば、ポケットを深くすることができ、ポケット収納部15の収納容量を大きくすることができる。
【0024】
襠片3にあっては、矩形状に形成されたシート材であり、下縁部をポケット底側縁部13とし、上縁部をポケット口側縁部12としている。
襠片3は、一側縁部11を残してポケット形成片2の左・右側表面部分8に重なるように配置され、一側縁部11が基シート部材1に固定されている。9Bは襠片3の一側縁部11と基シート部材1を固定している固定部である。基シート部材1への襠片3の固定は、第1例と同様に縫着により行っているがこれに限定されるものではない。例えば、接着剤又は熱融着によって固定してもよい。
【0025】
また、襠片3の一側縁部11を基シート部材1へ固定するにあたり、襠片3の一側縁部11をポケット形成片2の両側縁部7の端縁7aに接近した位置で行うことが好ましい。襠片3の一側縁部11とポケット形成片2の左右の側縁部7の端縁7aとの隙間を空けるとポケット収納部15の底部の両側に隙間ができ、収納物が脱落してしまうおそれがある。
【0026】
また、襠片3におけるポケット形成片2との重なり部分17の横幅の長さLは、ポケットの使用の際に、後述するようにポケット形成片2を引き出したときにポケット形成片2の左・右側表面部分8が襠片3内面をスライド移動する長さにあたる。
この重なり部分17の横幅の長さLは、ポケット形成片2を引き出すことによりポケット形成片2との間に形成されるポケット収納部15の奥行きの深さに相当する。重なり部分17の横幅の長さLを長くすることにより、ポケット収納部15の奥行きを深くすることができ、ポケット収納部15の収納容量を大きくすることができるものであり、重なり部分17の横幅の長さLは、ポケトの容量や、ポケットを設ける製品の用途に応じて設定される。
【0027】
また、ポケット形成片2と襠片3を形成する弾性素材にあっては、いずれも容易に変形しない剛性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば皮革材や合成樹脂材等が用いられる。ここでいう容易に変形しない剛性とは、製品の通常の使用状態ではポケット形成片2と襠片3の形状が容易に変化せず、ポケット形成片2を引き出すことにより形状が変化したとき、変化した形状の復元力によりポケット収納部15に収納されている収納物を保持することができる剛性をいう。また、ポケット形成片2の弾性素材と襠片3の弾性素材は異なる素材であってもよく、また弾性率や剛性の強さが異なるものであってもよい。
【0028】
このように構成された第1例の襠付きポケットの使用及び効果について説明する。
まず、収納物の収納に際しては、ポケット形成片2のポケット口形成縁部6の中央部位を外側へ引っ張る。ポケット口形成縁部6の中央部位が外側へ引っ張られたポケット形成片2は、基シート部材1に固定されているポケット底形成縁部5を軸として外側へ折り曲げられ、これにより、ポケット形成片2及び襠片3が弾性変形して、襠片3に重なっているポケット形成片2の左・右側表面部分8が、襠片3の内面をスライドして襠片3から引き出される。
このようにして、ポケット形成片2を引き出すことによりポケット口部16が広がるとともに、ポケット形成片2の左・右側表面部分8が引き出された後の襠片3の部分がポケットの襠となり、基シート部材1とポケット形成片2と襠片3で形成されるポケット収納部15の収納容量が大きくなる(
図2参照)。
ポケット形成片2の引き出しは、ポケット形成片2の両側縁部7の端縁7aが襠片3から外れない範囲とすることが望ましい。
【0029】
収納物の収納後、ポケット形成片2の引っ張りを解除すると、弾性変形しているポケット形成片2及び襠片3に復元方向に力が働き、ポケット形成片2の復元力によりポケット収納部15に収納した収納物が押さえられ、そして、襠片3の復元力によりポケット形成片2の左・右側表面部分8が押さえられる。
このように、収納後は、ポケット収納部15に収納した収納物は弾性変形したポケット形成片2と襠片3の復元力により押さえられるので、安定した収納状態を得ることができる。
【0030】
本発明に係る襠付きポケットの実施の形態の第2例を
図3を参照して詳細に説明する。第2例の襠付きポケットについて、第1例と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第1例と異なる構成についてのみ説明する。
【0031】
第2例の襠付きポケットは、
図3に示すように、ポケット形成片2は、ポケット底形成縁部5が基シート部材1に固定され、ポケット形成片2の左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置まで固定され、ポケット口縁部6側が基シート部材1との間で未固定状態となっている。
【0032】
9Cは左右の側縁部7と基シート部材1を固定している固定部である。ポケット形成片2の左右の側縁部7と基シート部材1の固定は縫着により行っているがこれに限定されるものではない。例えば、接着剤又は熱融着によって固定してもよい。
【0033】
左右の縁部7と基シート部材1を固定している固定部9Cの固定範囲は、特に限定されない。固定部9Cの固定範囲が長いと、その分未固定の範囲が短くなり、ポケット口部16を広げられる範囲が狭く、また、ポケット収納部15の収納容量も小さくなるが、ポケット収納部15の底側に形成される袋状部は大きくなり、収納物がポケット収納部15から脱落してしまうといった事態を効果的に防ぐことができるので、収納物が小さいものである場合に適している。
また、固定部9Cの固定範囲が短いと、その分未固定の範囲が長くなり、ポケット収納部15の底側に形成される袋状部はその分小さくなるが、ポケット口部16を広げられる範囲が広く、また、ポケット収納部15の収納容量も大きくなるので、収納物が大きいものである場合に適している。
したがって、ポケット形成片2の左右の側縁部7と基シート部材1を固定している固定部9Cの固定範囲は、予定する収納物に応じて定められる。
その他の構成は第1例と同一のため、その説明を援用し省略する。
【0034】
このように構成された第2例の襠付きポケットの使用及び効果について説明する。
まず、収納物の収納に際しては、第1例と同様に、ポケット形成片2のポケット口形成縁部6の中央部位を外側へ引っ張る。ポケット口形成縁部6の中央部位が外側へ引っ張られたポケット形成片2は、ポケット形成片2の左右の側縁部7と基シート部材1を固定している固定部9Cの上端を結んだ仮想軸Cとして左右の側縁部7の未固定の範囲にあるポケット形成片2が外側へ折り曲げられる。これにより、左右の側縁部7の未固定の範囲にあるポケット形成片2及び襠片3が弾性変形して、襠片3に重なっているポケット形成片2の左・右側表面部分8が、襠片3の内面をスライドして襠片から引き出される。
【0035】
このようにして、ポケット形成片2を引き出すことによりポケット口部16が広がるとともに、ポケット形成片2の左・右側表面部分8が引き出された後の襠片3の部分がポケットの襠となり、基シート部材1とポケット形成片2と襠片3で形成されるポケット収納部15の収納容量が大きくなる(第1例の
図2参照)。ポケット形成片2の引き出しは、ポケット形成片2の左右の側縁部7の端縁7aが襠片3から外れない範囲とすることが望ましい。
【0036】
そして、収納物の収納後、ポケット形成片2の引っ張りを解除すると、弾性変形しているポケット形成片2及び襠片3に復元方向に力が働き、ポケット形成片2の復元力によりポケット収納部15に収納した収納物が押さえられ、そして、襠片3の復元力によりポケット形成片2の左・右側表面部分8が押さえられる。
【0037】
このように、収納後は、ポケット収納部15に収納した収納物は弾性変形したポケット形成片2と襠片3の復元力により押さえられるので、安定した収納状態を得ることができる。
また、第2例では、ポケット形成片2は、ポケット底形成縁部5が基シート部材1に固定され、左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置まで固定されているので、左右の側縁部7が基シート部材1との間で未固定状態となっているポケット形成片2の左・右側表面部分8を襠片3から完全に引き出してしまった場合でも、ポケット収納部15の底側は袋状部として確保されることになり、収納物がポケット収納部15から脱落してしまうといった事態を防ぐことができる。
【0038】
本発明にかかる襠付きポケットの実施の形態の第3例を
図4を参照して詳細に説明する。第3例の襠付きポケットについて、第1例と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第1例と異なる構成についてのみ説明する。
【0039】
第3例の襠付きポケットは、
図4に示すように、ポケット形成片2の両側に配置されている襠片3は、ポケット底側縁部13が基シート部材1に固定されている。9Dは襠片3のポケット底側縁部13と基シート部材1を固定している固定部である。襠片3のポケット底側縁部13と基シート部材1の固定は縫着により行っているがこれに限定されるものではない。例えば、接着剤又は熱融着によって固定してもよい。
【0040】
襠片3のポケット底側縁部13と基シート部材1を固定している固定部9Dの位置は、ポケット形成片2のポケット底形成縁部5と基シート部材1を固定している固定部9Aの位置からの上下のズレが少ないことが好ましい。
本例では、固定部9Dと固定部9Aを同一ライン上に位置させている。
その他の構成は第1例と同一のため、その説明を援用し省略する。
【0041】
第3例の襠付きポケットによれば、襠片3は、ポケット底側縁部13が基シート部材1に固定されているので、一側縁部11とポケット底側縁部13の2箇所で基シート部材1に固定された襠片3は、ポケット形成片2を引き出したときの襠片3の弾性変形が抑えられ、ポケット形成片2の左・右側表面部分8を押さえる力が大きくなる。
【0042】
これにより、ポケット形成片2の左・右側表面部分8が襠片2から安易に抜け出してしまうといった事態を防ぐことができる。また、襠片3によるポケット形成片2の左・右側表面部分8を押さえる力が、物品収納時に引き出されて弾性変形したポケット形成片2の復元をアシストすることになり、ポケット収納部15に収納した収納物は安定した収納状態を得ることができる。
【0043】
さらには、そして、ポケット形成片2の左・右側表面部分8に重ねた襠片3のポケット底側縁部13の端縁13aをポケット形成片2のポケット底形成縁部5の端縁5aに揃えて縫着することにより、ポケット形成片のポケット底形成縁部5と基シート部材1とを、そして襠片3のポケット底側縁部13と基シート部材1とを一度の作業で同時に固定することができるので、作業効率が向上する。
その他の効果は第1例と同一なので、その説明を援用し省略する。
【0044】
本発明にかかる襠付きポケットの実施の形態の第4例を
図5を参照して詳細に説明する。第4例の襠付きポケットについて、第2例、第3例と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第2例、第3例と異なる構成についてのみ説明する。
【0045】
第4例の襠付きポケットは、第2例と同様に、ポケット形成片2は、ポケット底形成縁部5が基シート部材1に固定され、ポケット形成片2の左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置まで固定され、ポケット口縁部6側が基シート部材1との間で未固定状態となっている。そして、第3例と同様に、ポケット形成片2の両側に配置されている襠片3は、ポケット底側縁部13が基シート部材1に固定されている。
その他の構成は第2例、第3例と同一なので、その説明を援用し省略する。
【0046】
第4例の襠付きポケットによれば、ポケット形成片2は、ポケット底形成縁部5が基シート部材1に固定され、左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置まで固定されているので、左右の側縁部7が基シート部材1との間で未固定状態となっているポケット形成片2の左・右側表面部分8を襠片3から完全に引き出してしまった場合でも、ポケット収納部15の底側は袋状部として確保されることになり、収納物がポケット収納部15から脱落してしまうといった事態を防ぐことができる。
【0047】
そして、襠片3は、ポケット底側縁部13が基シート部材1に固定されているので、一側縁部11とポケット底側縁部13の2箇所で基シート部材1に固定された襠片3は、ポケット形成片2を引き出したときの襠片3の弾性変形が抑えられ、ポケット形成片2の左・右側表面部分8を押さえる力が大きくなる。これにより、ポケット形成片2の左・右側表面部分8が襠片3から安易に抜け出してしまうといった事態を防ぐことができる。また、襠片3によるポケット形成片2の左・右側表面部分8を押さえる力が、物品収納時に引き出されて弾性変形したポケット形成片2の復元をアシストし、安定した収納状態を得ることができる。
その他の効果は第2例、第3例と同一なので、その説明を援用し省略する。
【0048】
本発明に係る襠付きポケットの実施の形態の第5例を第6図を参照して詳細に説明する。第5例の襠付きポケットについて、第4例と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第4例と異なる構成についてのみ説明する。
【0049】
第5例の襠付きポケットは、ポケット形成片2の左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置までの範囲で左右の側縁部7の間の幅がポケット口縁部6側の幅よりも広幅となっており、広幅側縁部7Aが基シート部材1に固定され、狭幅側縁部7Bが基シート部材1との間で未固定状態となっている。
その他の構成は第4例と同一なので、その説明を援用し省略する。
【0050】
第5例の襠付きポケットによれば、ポケット形成片2の左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置までの範囲で左右の側縁部7の間の幅がポケット口縁部6側の幅よりも広幅となっているので、ポケット形成片2の左・右側表面部分8に重ねた襠片3の一側縁部11の端縁11aをポケット形成片2の広幅側縁部7Aの端縁7Aaに揃えて縫着することにより、ポケット形成片2の広幅側縁部7Aと基シート部材1とを、そして襠片3の一側縁部11と基シート部材1とを一度の作業で同時に固定することができるので、作業効率が向上する。
その他の効果は第4例と同一なので、その説明を援用し省略する。
【0051】
本発明に係る襠付きポケットの実施の形態の第6例を第7図を参照して詳細に説明する。第6例の襠付きポケットについて、第3例と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第3例と異なる構成についてのみ説明する。
【0052】
第6例の襠付きポケットは、ポケット形成片2の左・右側表面部分8に配置された襠片3は、ポケット底側縁部13が連結片4で連結されて一体に形成され、連結片4はポケット形成片2のポケット底側の表面部分に重ねられている。
【0053】
本例では連結片4のポケット底側縁部14が基シート部材1に固定されている。9Eは連結片4のポケット底側縁部14と基シート部材1を固定している固定部である。連結片4のポケット底側縁部14と基シート部材1の固定は縫着により行っているがこれに限定されるものではない。例えば、接着剤又は熱融着によって固定してもよい。連結片4のポケット底側縁部14と基シート部材1を固定している固定部9Eの位置は、ポケット形成片2のポケット底形成縁部5と基シート部材1を固定している固定部9Aの位置からの上下のズレが少ないことが好ましい。
【0054】
本例では、固定部9Eと固定部9Aを同一ライン上に位置させている。また、本例では、連結片4のポケット底側縁部14と基シート部材1を固定している固定部9Eの位置と襠片3のポケット底側縁部13と基シート部材1を固定している固定部9Dの位置を同一ライン上に位置させている。
その他の構成は第3例と同一のため、その説明を援用し省略する。
【0055】
第6例の襠付きポケットによれば、ポケット形成片2の左・右側表面部位8に配置された襠片3は、ポケット底側縁部13が連結片14で連結されて一体に形成されているので、ポケット形成片2を引き出したときの弾性変形が連結片4により抑えられ、ポケット形成片2の左・右側表面部分8を押さえる力が大きくなり、ポケット形成片2の左・右側表面部分8が襠片3から安易に抜け出してしまうといった事態を防ぐことができる。また、襠片3によるポケット形成片2の左・右側表面部分8を押さえる力が、物品収納時に引き出されて弾性変形したポケット形成片2の復元をアシストし、安定した収納状態を得ることができる。
【0056】
また、連結片4はポケット形成片2のポケット底側の表面部分に重ねられているので、ポケット形成片2を引き出し過ぎたとしても、ポケット形成片2の引き出しは連結片4の位置で阻止される。これにより、ポケット収納部15の底側は確保されることになり、収納物がポケット収納部15から脱落してしまうといった事態を防ぐことができる。
その他の効果は第3例と同一のため、その説明を援用し省略する。
【0057】
本発明に係る襠付きポケットの実施の形態の第7例を
図8を参照して詳細に説明する。第7例の襠付きポケットについて、第5例、第6例のいずれか一例と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、第5例、第6例と異なる構成についてのみ説明する。
【0058】
第7例の襠付きポケットは、第5例と同様に、ポケット形成片2の左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置までの範囲で左右の側縁部7の間の幅がポケット口縁部6側の幅よりも広幅となっており、広幅側縁部7Aが基シート部材1に固定され、狭幅側縁部7Bが基シート部材1との間で未固定状態となっている。
【0059】
そして、ポケット形成片2の左・右側表面部分8に配置された襠片3は、第6例と同様に、ポケット底側縁部13が連結片4で連結されて一体に形成され、連結片4はポケット形成片2のポケット底側の表面部分に重ねられている。
その他の構成は第5例、第6例と同一なので、その説明を援用し省略する。
【0060】
第7例の襠付きポケットによれば、ポケット形成片2の左右の側縁部7はポケット底形成縁部5からポケット口形成縁部6に至らない任意の位置までの範囲で左右の側縁部7の間の幅がポケット口縁部6側の幅よりも広幅となっているので、ポケット形成片2の左・右側表面部分8に重ねた襠片3の一側縁部11の端縁11aをポケット形成片2の広幅側縁部7Aの端縁7Aaに揃えて縫着することにより、ポケット形成片2の広幅側縁部7Aと基シート部材1とを、そして襠片3の一側縁部11と基シート部材1とを一度の作業で同時に固定することができるので、作業効率が向上する。
その他の効果は第5例、第6例と同一なので、その説明を援用し省略する。
【0061】
次に、本発明に係る襠付きポケットを二つ折りの財布に実施した実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図9は本発明にかかる襠付きポケットを長財布に実施した状態を示す斜視図である。
【0062】
長財布20について説明すると、財布20の本体は基シート部材1により形成されており、基シート部材1は矩形状に形成され、中央に設定された折り曲げ部21から内面側に向かって二つ折りされるように構成されている。
【0063】
基シート部材1における折り曲げ部21を挟んで有する一方の内面には、ポケット形成片2と、ポケット形成片2の両側に配置される襠片3とが重ねられて取り付けられ、前記実施例1~7に示す襠付きポケットが形成されている。本例では、実施例7に示す襠付きポケットが形成されている。
また、本例の財布20の基シート部材1における折り曲げ部21を挟んで有する他方の内面には、カード収容部が形成されている。このカード収容ポケットにあっては、公知のカード収容部となっている。
【0064】
このような襠付きポケットを有する財布20によれば、ポケット口形成縁部6の中央部位を外側へ引き出すことにより、ポケットのポケット口部16を広げて容量を大きくすることができる。また、未収納時にあっては、襠付きポケットの厚さを従来の蛇腹状の襠片を有するポケットよりもさらに薄い状態にすることができるので、財布20の全体の厚みを薄くすることができるので、財布20のデザインの制約を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 基シート部材
2 ポケット形成片
3 襠片
4 連結片
5 ポケット底形成縁部
5a 端縁
6 ポケット口形成縁部
7 左右の側縁部
7a 端縁
7A 広幅側縁部
7B 狭幅側縁部
7Aa 端縁
8 左・右側表面部分
9A、9B、9C、9D、9E 固定部
11 一側縁部
11a 端縁
12 ポケット口側縁部
13 ポケット底側縁部
13a 端縁
14 ポケット底側縁部
15 ポケット収納部
16 ポケット口部
17 重なり部分
20 財布
21 折り曲げ部