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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/027 20060101AFI20220704BHJP
   B43K 21/22 20060101ALI20220704BHJP
   B43K 21/16 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B43K21/027 A
B43K21/22 E
B43K21/16 P
B43K21/16 Q
B43K21/16 W
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017195658
(22)【出願日】2017-10-06
(65)【公開番号】P2019069528
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】月岡 之博
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 敬吾
(72)【発明者】
【氏名】副島 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成雄
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007209(JP,A)
【文献】特開2010-201813(JP,A)
【文献】特開2015-123689(JP,A)
【文献】特開昭58-201696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒前端側で鉛芯を挿通するホルダーを、径方向の力成分により前進させ前記力成分が除去された際に後退させるようにしたシャープペンシルにおいて、
前記ホルダーには、鉛芯の外周面に緩圧接される弾圧接部材が一体的に設けられ、
前記軸筒内には、前記弾圧接部材へ挿通される鉛芯を筆圧に対抗して後退不能に挟持した締付状態と、この締付状態の挟持力を鉛芯に加わる前方への力により弱めて該鉛芯を前方へ引き出し可能にした弛緩状態とを有するチャック機構が設けられ、
前記弾圧接部材の圧接力は、前記チャック機構の弛緩状態の挟持力よりも強いことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
軸筒前端側で鉛芯を挿通するホルダーを、径方向の力成分により前進させ前記力成分が除去された際に後退させるようにしたシャープペンシルにおいて、
前記ホルダーには、鉛芯の外周面に緩圧接される弾圧接部材が一体的に設けられ、
前記軸筒内には、前記弾圧接部材へ挿通される鉛芯を筆圧に対抗して後退不能に挟持した締付状態と、この締付状態の挟持力を鉛芯に加わる前方への力により弱めた弛緩状態とを有するチャック機構が設けられ、
前記弾圧接部材の圧接力は、前記チャック機構の弛緩状態の挟持力よりも強く、
前記チャック機構は、所定量後退すると前記締付状態から前記弛緩状態になり、この弛緩状態から前進すると前記締付状態に戻るように構成され、
前記軸筒内には、前記チャック機構を、筆圧を超える付勢力によって前方へ付勢する機構付勢部材が設けられていることを特徴とするシャープペンシル。
【請求項3】
前記チャック機構の後方側には、チャックガイドが設けられ、
前記チャック機構は、鉛芯を挿通するチャック部材を備え、
前記チャック部材は、前記機構付勢部材の付勢力に抗して所定量後退し前記チャックガイドに当接して前記弛緩状態になり、前記機構付勢部材の付勢力により前進し前記チャックガイドから引き離れて前記締付状態になることを特徴とする請求項2記載のシャープペンシル。
【請求項4】
軸筒の前端側のホルダーから鉛芯を突出させるようにしたシャープペンシルにおいて、
軸筒内に、突出状態の前記鉛芯を挟持した締付状態で所定量後退すると前記鉛芯を前記ホルダーに収納して弛緩状態になり、この弛緩状態から前進すると前記締付状態に戻って前記鉛芯の収納状態を保持するチャック機構と、筆圧を超える付勢力によって前記チャック機構を前方へ付勢する機構付勢部材とを備えたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項5】
ノック操作により前記チャック機構から鉛芯が繰り出されるようにしたことを特徴とする請求項1~4何れか1項記載のシャープペンシル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の前端から鉛芯を繰り出すようにしたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、軸筒と、軸筒内で鉛芯を前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構と、鉛芯繰出し機構の前方側で繰り出される鉛芯の外周面に緩圧接される芯ブレーカと、軸筒の前側開口部に挿通されて軸筒の前端から前方へ突出する略筒状のホルダーと、ホルダーに挿通されて前方へ突出する鉛芯とを備え、前記軸筒と前記ホルダーの間に、前記ホルダーに加わる径方向の力により前記ホルダーを前進させる運動方向変換手段を設けたシャープペンシルがある。
このシャープペンシルでは、後端側のノックキャップに対するノック操作を行えば、通常のシャープペンシルと同様に、鉛芯を所定量ずつ前進させることができる。
そして、突出した鉛芯の先端部分に、筆圧が加わった際には、この筆圧の径方向の力成分によりホルダーを前進させ、このホルダーによって鉛芯の前側を覆い、鉛芯の損傷等を防ぐ。
また、突出した鉛芯に対し軸方向に沿う後方への過剰な押圧力が加わった際には、鉛芯を後退させて損傷しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-123689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術によれば、鉛芯の突出量が小さすぎた場合には、ホルダーの前端部が被筆記面(紙面等)に擦れてしまう場合があるので、再度のノック操作により鉛芯を前進させる必要が生じる。また、一度突出させた鉛芯を収納する場合には、ノック操作しながら鉛芯を後方へ押し戻さなければならない。
そこで、従来のノック操作を要することなく、鉛芯を前進又は後退させる構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
軸筒前端側で鉛芯を挿通するホルダーを、径方向の力成分により前進させ前記力成分が除去された際に後退させるようにしたシャープペンシルにおいて、
前記ホルダーには、鉛芯の外周面に緩圧接される弾圧接部材が一体的に設けられ
前記軸筒内には、前記弾圧接部材へ挿通される鉛芯を筆圧に対抗して後退不能に挟持した締付状態と、この締付状態の挟持力を鉛芯に加わる前方への力により弱めて該鉛芯を前方へ引き出し可能にした弛緩状態とを有するチャック機構が設けられ、
前記弾圧接部材の圧接力は、前記チャック機構の弛緩状態の挟持力よりも強いことを特徴とするシャープペンシル。

【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、従来のノック操作を要することなく、鉛芯を前進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るシャープペンシルの一例を示す半断面図である。
図2】同シャープペンシルの使用状態を示す半断面図であり、鉛芯を被筆記面に押し付けて鉛芯突出量を一定量にする操作を、(a)~(c)に順次に示している。
図3】本発明に係るシャープペンシルの一例を示す全断面図であり、(a)は鉛芯が一定量突出した初期状態を示し、(b)は鉛芯前端に径方向の力成分を含む押圧力が加わってホルダーが前進した状態を示し、(c)は更に押圧力が加わってチャックが開放し鉛芯が没入した状態を示し、(d)はチェック機構が前進して鉛芯を挟持した状態を示し、(e)は押圧力が解除されてホルダーが後退するとともに鉛芯が所定量突出した状態を示す。
図4】本発明に係るシャープペンシルの一例を示す全断面図であり、(a)は鉛芯が一定量突出した初期状態を示し、(b)は鉛芯前端に径方向の力成分を含む押圧力が加わってホルダーが前進した状態を示し、(c)は更に押圧力が加わってチャックが未開放のまま鉛芯が没入した状態を示し、(d)は押圧力が解除されてホルダーが後退するとともに鉛芯が所定量突出した状態を示す。
図5】同シャープペンシルの使用状態を示す半断面図であり、鉛芯を被筆記面に略垂直に押し付けて鉛芯を収納する操作を、(a)~(c)に順次に示している。
図6】同シャープペンシルの使用状態を示す半断面図であり、ホルダーを被筆記面に押し付けて鉛芯を一定量突出させる操作を、(a)~(c)に順次に示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
【0009】
第1の特徴は、軸筒前端側で鉛芯を挿通するホルダーを、径方向の力成分により前進させ前記力成分が除去された際に後退させるようにしたシャープペンシルにおいて、前記ホルダーには、鉛芯の外周面に緩圧接される弾圧接部材が一体的に設けられている。
この構成によれば、鉛芯が弾圧接部材に挿通されている状態(図6(a)参照)において、ホルダーが径方向の力成分を受けると、このホルダーは弾圧接部材と一体的に前進し、この前進に伴い、弾圧接部材に圧接されている鉛芯も前進する(図6(b)参照)。したがって、従来のノック操作を要することなく、鉛芯を前進させることができる。
【0010】
第2の特徴として、前記軸筒内には、前記弾圧接部材へ挿通される鉛芯を筆圧に対抗して後退不能に挟持した締付状態と、この締付状態の挟持力を鉛芯に加わる前方への力により弱めた弛緩状態とを有するチャック機構が設けられ、前記弾圧接部材の圧接力は、前記チャック機構の弛緩状態の挟持力よりも強い。
この構成によれば、径方向の力成分が除去されてホルダーが後退すると、鉛芯は、チャック機構により後退不能に挟持されているため、ホルダーの前端から突出する(図6(c)参照)。よって、ホルダーを被筆記面に押し付けて前進させた後に、このホルダーを被筆記面から離せば、鉛芯をホルダーから突出させることができる。
【0011】
第3の特徴として、前記チャック機構は、所定量後退すると前記締付状態から前記弛緩状態になり、この弛緩状態から前進すると前記締付状態に戻るように構成され、前記軸筒内には、前記チャック機構を、筆圧を超える付勢力によって前方へ付勢する機構付勢部材が設けられている。
【0012】
この構成によれば、例えば、ホルダーから鉛芯が長めに突出した状態(図3(a)参照)において、この鉛芯に対し筆圧による径方向の力成分が加わると、ホルダーが所定量前進する(図3(b)参照)。
この後、さらに鉛芯に対し筆圧を超える後方向きの力が加わると、鉛芯を挟持しているチャック機構が、機構付勢部材の付勢力に抗して後退する(図3(c)参照)。そして、チャック機構は、この際の後退量が所定量以上になると、締付状態から弛緩状態になる。したがって、前記開放の直後に、チャック機構が機構付勢部材の付勢力により鉛芯に相対して前進し、締付状態に戻る(図3(d)参照)。
そして、前記後方向きの力及び筆圧が除去されると、ホルダーが後退して初期位置に戻る。したがって、チャック機構に挟持された鉛芯が、ホルダーの後退量と略同じ一定量だけ突出した状態になる(図3(e)参照)。
【0013】
また、例えば、ホルダーから鉛芯が短めに突出した状態(図4(a)参照)において、この鉛芯に対し筆圧による径方向の力成分が加わると、ホルダーが所定量前進する(図4(b)参照)。
この後、さらに鉛芯に対し筆圧を超える後方向きの力が加わると、鉛芯を挟持しているチャック機構が、機構付勢部材の付勢力に抗して後退するが、この後退量が所定量未満であると、チャック機構は締付状態に保持される(図4(c)参照)。
したがって、前記後方向きの力及び筆圧が除去されると、ホルダーが後退して初期位置に戻るとともに、チャック機構が締付状態のままで機構付勢部材の付勢力により前進し、鉛芯が一定量突出した状態になる(図4(d)参照)。
【0014】
また、ホルダーの前端側から突出する鉛芯に対し、筆圧を超える後方への押圧力が加わると、チャック機構が機構付勢部材の付勢力に抗して後退する(図5(b)参照)。そして、この後退量が所定量になると、チャック機構は、弛緩状態になり、機構付勢部材の付勢力により前進して、締付状態に戻る(図5(c)参照)。よって、例えば、長めに突出した鉛芯を被筆記面に押圧する操作によって後退させ収納することができる。
【0015】
第4の特徴として、前記チャック機構の後方側には、チャックガイドが設けられ、
前記チャック機構は、鉛芯を挿通するチャック部材を備え、前記チャック部材は、前記機構付勢部材の付勢力に抗して所定量後退し前記チャックガイドに当接して前記弛緩状態になり、前記機構付勢部材の付勢力により前進し前記チャックガイドから引き離れて前記締付状態になる(図2及び図3参照)。
【0016】
第5の特徴は、前端側から鉛芯を突出させるようにしたシャープペンシルにおいて、軸筒内に、所定量後退すると締付状態から弛緩状態になり、この弛緩状態から前進すると前記締付状態に戻るチャック機構と、筆圧を超える付勢力によって前記チャック機構を前方へ付勢する機構付勢部材とを備えた(図5参照)。
この第5の特徴を具備していれば、例えば前記ホルダーを有しないシャープペンシルであっても、長めに突出した鉛芯を被筆記面に押圧する操作によって後退させ収納することができる。
【0017】
第5の特徴は、ノック操作により前記チャック機構から鉛芯が繰り出されるようにした(図1参照)。
【0018】
<具体的実施態様>
以下、図面を参照しながら本発明の具体的実施態様について説明する。
以下、異なる図における同一符号は略同一の構成を示しており、重複する説明は適宜省略する。
【0019】
このシャープペンシル1は、軸筒10と、軸筒10の前端側開口部に所定量進退するように挿通支持されるとともに後方側から挿入される鉛芯xを前方へ導くホルダー20と、ホルダー20に加わる径方向の力成分によりホルダー20を鉛芯x及び軸筒10に対し前進させて所定の前進位置にする運動方向変換機構M1と、前記径方向の力成分が除去された際にホルダー20を付勢力により後退させて初期位置に戻すホルダー付勢部材25と、ホルダー20よりも後側で軸筒10内に進退可能に支持され、挟持している鉛芯xを所定の操作により繰り出すチャック機構M2と、ホルダー20と一体的に設けられ、チャック機構M2の前方側の鉛芯xに弾圧接される弾圧接部材30と、内在する鉛芯xをチャック機構M2へ導く芯タンク41と、筆圧を超える付勢力によってチャック機構M2を芯タンク41に相対し前方へ付勢する機構付勢部材47とを具備している。
【0020】
軸筒10の内周面には、進退保持筒46の前方への移動を規制する段付き環状の係止部11や、芯タンク41の後方への移動を規制する突環状の係止部12が設けられる。
【0021】
ホルダー20は、軸筒10内に挿通されるとともに軸筒10の前側開口部から突出する部材であり、軸筒10の前端開口縁に摺接するカム斜面21を有する。
【0022】
カム斜面21は、前方へ向かって拡径する円錐面状に形成され、ホルダー20に加わる径方向の力成分によりホルダー20を軸筒10及び鉛芯xに相対し前進させる運動方向変換機構M1として機能する。
【0023】
ホルダー20の内周面には、その前端側で鉛芯xの外周面に摺接する円筒状の鉛芯摺接面23が形成される。そして、ホルダー20内には、弾圧接部材30が進退不能に設けられている。
【0024】
ホルダー付勢部材25は、コイルスプリングであり、軸筒10に対しホルダー20を後方へ付勢している。
このホルダー付勢部材25の付勢力は、運動方向変換機構M1の作用によって突出したホルダー20を初期位置に後退させるように適宜に設定されている。
【0025】
弾圧接部材30は、ゴムなどの弾性材料によって形成される。
この弾圧接部材30は、ホルダー20と一体的に後退する際に、チャック機構M2によって挟持された鉛芯xの外周面を滑って後退し、また、ホルダー20と一体的に前進する際に、チャック機構M2によって挟持された鉛芯xをチャック機構M2から前方へ引き出すように、鉛芯x外周面に対する圧接力が、チャック機構M2の弛緩状態の挟持力よりも強く、且つチャック機構M2の締付状態の挟持力よりも弱い。
【0026】
芯タンク41は、鉛芯xを蓄積可能な長尺円筒状の部材であり、軸筒10内に進退可能に設けられている。
この芯タンク41は、チャック部材42に対し後方側から当接可能なチャックガイド41cを備える。
なお、図示例の芯タンク41は一体筒状に形成されるが、他例としては、複数の筒状部材を接続した構成にしてもよい。
【0027】
チャックガイド41cは、前方を開口した筒状に形成され、その内側に、チャック機構M2(詳細にはチャック部材42)の後端部を遊挿している。このチャックガイド41cの内壁面の後端側には、後方へ向かって徐々に縮径される環状の傾斜面41c1が形成され、この傾斜面41c1は、後退した際のチャック部材42の後端部を受ける。
【0028】
チャック機構M2は、機構付勢部材47の付勢力に抗して所定量後退して芯タンク41(詳細には傾斜面41c1)に当接すると締付状態から弛緩状態になり、この弛緩状態から機構付勢部材47の付勢力により前進して芯タンク41から離れると締付状態に戻るように構成される。
さらに、このチャック機構M2は、挟持した鉛芯xを筆圧に対抗して後退不能に挟持した締付状態と、この締付状態の挟持力を鉛芯xに加わる前方への力により弱めた弛緩状態とを有するように構成される。
図中、「M2(開)」は、チャック機構M2が弛緩状態にあることを示し、「M2(閉)」は、チャック機構M2が締付状態にあることを示す。
【0029】
具体的に説明すれば、このチャック機構M2は、鉛芯xを挟持したり解放したりするチャック部材42と、チャック部材42(図示例によれば球体42b)に対し後方側から嵌り合ってチャック部材42を締付状態に保持するクラッチリング43と、チャック部材42を進退可能に内在するとともにクラッチリング43を一体的に有するチャック保持筒44と、チャック保持筒44に対しチャック部材42を後方へ付勢するチャック付勢部材45と、チャック保持筒44を所定量進退するように内在するとともに軸筒10内に所定量進退可能に支持された進退保持筒46とを備え、機構付勢部材47によって前方へ付勢されている。
【0030】
チャック部材42は、硬質材料(例えば、合成樹脂材料や金属材料等)から形成され、鉛芯xの周囲で同芯状に配置された複数の挟持部材42aと、この挟持部材42a外周に設けられた凹部に回転可能に嵌り合った球体42bとを有する。なお、このチャック部材42は、同様に機能するようにすれば、図示例以外の構成とすることが可能である。
【0031】
クラッチリング43は、金属材料等の硬質材料から略円筒状に形成され、その内周面に、前方へ向かって徐々に拡径する環状傾斜面を有し、この環状傾斜面を球体42bに接触させる。
なお、このチャック部材42には、ボールチャックと呼称される周知構造のものを適用可能である。
【0032】
これらの構成によれば、チャック部材42は、後方側のチャックガイド41cの傾斜面41c1から離れた際に、クラッチリング43に嵌り合って鉛芯xを後退不能に挟持した締付状態になり、同傾斜面41c1に当接した際にはクラッチリング43から解放されて鉛芯xに対する挟持力(把持力)を弱めた弛緩状態になる。
【0033】
チャック保持筒44は、チャック部材42の前端側から芯タンク41のチャックガイド41cまでを覆う筒状の部材であり、その前端側に、クラッチリング43を固定している。
【0034】
チャック付勢部材45は、コイルスプリングであり、チャック保持筒44に対し、チャック部材42を後方へ付勢している。
【0035】
進退保持筒46は、ホルダー20の後端側内周面に対し進退可能に接するホルダー挿入部46aと、ホルダー挿入部46aの後側にて後退した際のホルダー20を受けて弾性変形する緩衝部46b(図示例によればOリング)とを有する。
【0036】
機構付勢部材47は、コイルスプリングであり、芯タンク41に対し進退保持筒46を前方へ付勢している。
この機構付勢部材47の付勢力は、ホルダー付勢部材25及びチャック付勢部材45の付勢力よりも大きく、且つ、鉛芯xに加わる通常の筆圧よりも大きく設定される。
【0037】
なお、図中、軸方向の隙間s1は、鉛芯xを1ノック分突出させるためのチャック機構M2の進退量を確保している。
また、軸方向の隙間s2は、チャック部材42が相対的に後退して傾斜面41c1に接触するまでの距離である。
また、軸方向の隙間s3は、ノック操作のために芯タンク41を進退させるために設けられ、隙間s1よりも大きく設定される。
【0038】
次に、上記構成のシャープペンシル1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0039】
シャープペンシル1によれば、図2(a)~(c)に示すように、初期突出量L0の鉛芯xを被筆記面Fに押し付けて、一定の突出量L3にすることができる。
以下、この動作を、図3(a)~(e)に沿って詳細に説明する。
なお、図3図5中のハッチングは、前の状態から移動した部分を示す。また、図2(a)(b)(c)の状態は、それぞれ、図3(a)(c)(e)に対応している。
【0040】
図3(a)は、初期突出量L0の鉛芯xに負荷が加わっていない場合、または鉛芯xに通常範囲内の筆圧が加わった場合を示している。
ここで、初期突出量L0は、例えば、通常使用時のノック操作により突出する鉛芯xの突出量よりも大きい。
【0041】
図3(b)は、鉛芯xが通常の筆圧よりも若干大きい力で後方へ押圧され、この力の径方向成分によってホルダー20が最大可動量w前進して鉛芯xを覆い、初期突出量L0と最大可動量wとの差分L1、鉛芯xがホルダー20前端から突出した状態を示している。
なお、ホルダー20が前進するメカニズムは、特許文献1に示す発明のものと略同様である。
【0042】
図3(c)は、図3(b)の状態から、鉛芯xが軸方向に沿う後方向きの力成分によりさらに後方へ押圧された状態を示す。
詳細に説明すれば、後方へ押圧された鉛芯xと共に、鉛芯xを挟持しているチャック機構M2が後退し、チャック部材42の後端がチャックガイド41cの傾斜面41c1に略接触又は近接する。
この状態で、チャック部材42、クラッチリング43、チャック保持筒44及び進退保持筒46は、機構付勢部材47を弾性的に収縮させて後退し、チャックガイド41c後側端と進退保持筒46内の段部との間には、軸方向の隙間s4が形成される。この隙間s4は、図3(b)の鉛芯突出量L1と略同一寸法である。すなわち、鉛芯xのL1の後退により、この鉛芯xを挟持していた運動方向変換機構M1も略同寸法であるs4後退する。
【0043】
図3(d)は、図3(c)の状態の直後に、チャック機構M2が前進した状態を示す。
すなわち、チャック機構M2は、機構付勢部材47の付勢力に抗して所定量後退した際にチャック部材42の後端側をチャックガイド41c(詳細には傾斜面41c1)に当接させると(図3(c)参照)、チャック部材42がクラッチリング43から解放され弛緩状態になる。
したがって、この弛緩状態になった直後に、チャック機構M2は、機構付勢部材47の付勢力により、鉛芯xに相対し前進する。この際の前進量は、図3(c)に示す隙間s4分である。
そして、この前進により、チャック部材42の後端が傾斜面41c1から離れ、クラッチリング43がチャック部材42を締めるので、チャック部材42が締付状態に戻る。
【0044】
図3(e)は、図3(d)の状態の後、鉛芯xに加わる径方向及び後方向きの力が除去された状態を示す。
すなわち、前記力が除去されると、ホルダー20がホルダー付勢部材25の付勢力により後退する。この後退の際、チャック部材42が締付状態であるため、鉛芯xは、ホルダー20の前方へ突出する。この際の突出量L3は、ホルダー20の後退量wと略同一である。
【0045】
よって、シャープペンシル1によれば、鉛芯xの初期突出量L0が大きすぎた場合(図3(a)参照)には、鉛芯xを被筆記面Fに強く押し付ける簡単な操作(図3(b)~(d)参照)により、鉛芯xの突出量を適正な量L3にすることができる(図3(e)参照)。
【0046】
次に図4に示す動作について説明する。
図4(a)は、初期突出量L0’の鉛芯xに力が加わっていない場合、または鉛芯xに通常範囲内の筆圧が加わった場合を示している。
ここで、初期突出量L0’は、例えば、通常使用時のノック操作により突出する鉛芯xの突出量とする。
【0047】
図4(b)は、鉛芯xが通常の筆圧よりも若干大きい力で後方へ押圧され、この力の径方向成分によってホルダー20が最大可動量w前進して鉛芯xを覆い、初期突出量L0’と最大可動量wとの差分L1’、鉛芯xがホルダー20前端から突出した状態を示している。
【0048】
図4(c)は、図4(b)の状態から、鉛芯xが軸方向に沿う後方向きの力成分によりさらに後方へ押圧された状態を示す。
詳細に説明すれば、チャック機構M2は、鉛芯xを挟持したまま、機構付勢部材47を弾性的に収縮させて後退し、チャック部材42の後端がチャックガイド41cの傾斜面41c1に対し微小な隙間s5を確保して静止する。
すなわち、鉛芯x及びチャック部材42の後退量は、図4(b)の鉛芯xの突出量L1’であり、チャック部材42が相対的に後退して傾斜面41c1に当接するまでの距離s2(図1参照)を超えない。
したがって、チャック機構M2は、クラッチリング43によってチャック部材42を締め付けた締付状態のまま後退し、この締付状態が保持される。
また、チャック機構M2の後退により、チャックガイド41c後端と進退保持筒46内の段部との間には、軸方向の隙間s6が形成される。
【0049】
図4(d)は、図4(c)の状態の後、鉛芯xに加わる径方向及び後方向きの力が除去された状態を示す。
すなわち、前記力が除去されると、ホルダー20がホルダー付勢部材25の付勢力により後退する。この後退の際、チャック部材42が締付状態であるため、鉛芯xは、ホルダー20の前方へ突出する。
このホルダー20の後退と略同時に、チャック機構M2は、隙間s6の分、前進する。
したがって、鉛芯xが、ホルダー20の後退量wと、隙間s6とを加算した突出量L3’だけ突出する。
【0050】
よって、シャープペンシル1によれば、鉛芯xの初期突出量L0’が所定値以下の場合(図4(a)参照)は、鉛芯xを被筆記面Fに強く押し付ける操作(図4(b)~(c)参照)の後も、鉛芯xを、元の突出量L0’と同じ突出量L0’に保持することができる(図4(d)参照)。
【0051】
次に図5に示す動作について説明する。
図5は、突出した鉛芯xを被筆記面Fに押し付けて収納する操作を示している。
図5(a)は、初期突出量L0”の鉛芯xに力が加わっていない場合、または鉛芯xに通常範囲内の筆圧が加わった場合を示している。
ここで、初期突出量L0”は、初期状態の隙間s2(図1参照)よりも若干大きい突出量とする。
【0052】
図5(b)は、鉛芯xを通常の筆圧以上の力で略垂直に被筆記面Fに押し付けて、チャック機構M2を後退させた状態を示す。
詳細に説明すれば、被筆記面Fから押圧力を受けた鉛芯xは、チャック機構M2が締付状態のまま、機構付勢部材47の付勢力に抗して相対的に後退する。
すると、チャック部材42が、初期状態の隙間s2寸法よりも後退して、傾斜面41c1に当接する。したがって、この当接の直後に、チャック部材42がクラッチリング43から外れて弛緩状態になり、鉛芯xは、ホルダー20前端と面一になるまで没入する。また、前述した後退により、チャックガイド41cと進退保持筒46内の段部との間には、初期突出量L0”と略同寸法の隙間s7が形成される。
【0053】
図5(c)は、前述した図5(b)の状態の直後に、チャック機構M2が締付状態に戻った状態を示す。
すなわち、鉛芯xがホルダー20内に没入した直後、チャック機構M2は、機構付勢部材47の付勢力により前進し、鉛芯xを再挟持する。
したがって、この締付状態では、図5(d)に示すように、シャープペンシル1を被筆記面Fから離しても、鉛芯xをホルダー20内に没入させた鉛芯収納状態を保持することができる。
【0054】
よって、シャープペンシル1によれば、上述した簡単な鉛芯収納操作によって鉛芯xを収納することができ、不使用時に鉛芯xが物等に触れて折れてしまうようなことを防ぐことができる。
【0055】
次に図6に示す動作について説明する。
図6は、鉛芯収納状態において、ホルダー20を被筆記面Fに押し付ける操作により、鉛芯xを一定量突出させる操作を示している。
なお、このような操作を可能にするように、シャープペンシル1は、ホルダー20のカム斜面21の角度やホルダー付勢部材25の付勢力等が適宜に設定されている。
【0056】
図6(a)は、鉛芯x前端がホルダー20前端と略面一の鉛芯収納状態を示し、鉛芯xはチャック機構M2によって挟持されている。
【0057】
図6(b)は、ホルダー20の前端側を被筆記面Fに押し付け、ホルダー20に作用する径方向の力成分によって、ホルダー20を前進させた状態を示す。
この前進の際、弾圧接部材30が、鉛芯xを弾性的に把持して前方へ引き出す。
なお、チャック機構M2は、先に説明したように、鉛芯xに加わる前方への力により挟持力を弱めるように構成される。
【0058】
図6(c)は、ホルダー20を被筆記面Fから引き離して、ホルダー20に加わる径方向の力成分を除去した状態を示す。
ホルダー20は、ホルダー付勢部材25の付勢力により、初期位置まで後退し、チャック機構M2に挟持された状態の鉛芯xが、相対的に前進して、寸法L3突出した状態に保持される。
【0059】
よって、シャープペンシル1によれば、鉛芯xがホルダー20内に収納されている場合(図6(a)参照)に、ホルダー20を被筆記面Fに押し付ける操作(図6(b)参照)により、鉛芯xを一定量L3突出させることができる(図6(c)参照)。
また、図6に示す作用は、例えば進退保持筒46を軸筒10に進退不能に固定した構造等、チャック機構M2を図示例以外の構造にした場合でも得ることができる。
【0060】
また、ノック操作により鉛芯xを繰り出す際は、芯タンク41後端側に前方への押圧力が加わると、芯タンク41が機構付勢部材47の付勢力に抗して前進し、芯タンク41前端側のチャックガイド41cの外周部にチャック保持筒44が摺接して前進し、このチャック保持筒44と一体的にクラッチリング43及びチャック部材42も前進する。
この前進の途中で、チャック保持筒44が進退保持筒46に係止して前進しなくなると、チャック部材42の後端にチャックガイド41cの傾斜面41c1が当接し、チャック部材42がクラッチリング43から解放されて弛緩状態になる。
この後、芯タンク41に対する押圧力が除去されると、芯タンク41が機構付勢部材47の付勢力により初期位置まで後退し、チャック部材42が、チャック付勢部材45の付勢力により後退しクラッチリング43に嵌り合い、締付状態に戻る。
したがって、ノック操作による芯タンク41の進退が繰り返されることで、鉛芯xが前進することになる。1回のノック操作(芯タンク41の進退)で鉛芯xが前進する量は、上述した軸方向の隙間s1(図1参照)と略同じになる。
【0061】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:シャープペンシル
10:軸筒
20:ホルダー
25:ホルダー付勢部材
30:弾圧接部材
41:芯タンク
41c:チャックガイド
41c1:傾斜面
42:チャック部材
43:クラッチリング
44:チャック保持筒
45:チャック付勢部材
46:進退保持筒
47:機構付勢部材
x:鉛芯
M2:チャック機構
M1:運動方向変換機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6