(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/54 20060101AFI20220704BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20220704BHJP
A47C 9/00 20060101ALN20220704BHJP
A47C 4/04 20060101ALN20220704BHJP
【FI】
A47C7/54 B
A61H33/00 310K
A47C9/00 Z
A47C4/04 B
(21)【出願番号】P 2017199518
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】土井 健史
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-017636(JP,A)
【文献】登録実用新案第3060526(JP,U)
【文献】特開2001-321404(JP,A)
【文献】米国特許第06176508(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0265548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/54
A61H 33/00
A47C 9/00
A47C 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに支持され、利用者が座る座部と、
それぞれ根元部および先端部を有し、前記座部の左方または右方に配置された肘掛けと、
前記肘掛けが前方に延びる前位置と上方に延びる上位置との間で移動可能なように、前記肘掛けの前記根元部を前記フレームに回転可能に連結した肘掛け回転機構と、
前記肘掛けの前記先端部に接続された接続アーム部と、前記接続アーム部から前記肘掛けと交差する方向に延びたグリップアーム部と、を有するグリップと、
前記接続アーム部を前記肘掛けの前記先端部に回転可能に連結するグリップ回転機構であって、少なくとも前記肘掛けが前記前位置にあるときに、前記グリップアーム部が前記接続アーム部から左右方向の中心側に延びる横位置と、前記グリップアーム部が前記接続アーム部から下方に延びる縦位置との間で前記グリップを回転させるグリップ回転機構と、
前記フレームに支持され、前記座部よりも後方に配置された背もたれと、
を備え、
前記フレームは、後脚滑り止めキャップが設けられた後脚を備え、
前記肘掛けが前記上位置にあり、かつ、前記グリップが前記横位置にあるときに、前記グリップアーム部は前記背もたれの前端よりも後方に位置
し、
前記肘掛けが前記上位置にあり、かつ、前記グリップが前記横位置にあるときに、前記グリップアーム部の先端部は、前記肘掛けの後端よりも後方に位置している、椅子。
【請求項2】
前記肘掛けが前記前位置にあるときに、前記グリップの前記接続アーム部の中心は、前記肘掛けの前記先端部の中心よりも下方に位置し、前記グリップの前記接続アーム部の上端は、前記肘掛けの前記先端部の上端よりも下方に配置されている、請求項1に記載された椅子。
【請求項3】
前記グリップを前記横位置にロックするロック機構を備えている、請求項1または2に記載された椅子。
【請求項4】
前記肘掛けが前記前位置にあり、かつ、前記グリップが前記横位置にあるときに、前記グリップアーム部は前記接続アーム部から上方に向かって傾斜している、請求項1から3までの何れか1つに記載された椅子。
【請求項5】
前記フレームは、前脚滑り止めキャップが設けられた前脚を備えた、請求項1から4までの何れか1つに記載された椅子。
【請求項6】
前記フレームは、前記座部よりも下方に配置され、前斜め下方に延びた前脚を備え、
前記肘掛けが前記前位置にあり、かつ、前記グリップが前記横位置または前記縦位置にあるときに、前記グリップの前端は前記前脚の前端よりも前方に位置している、請求項1から4までの何れか1つに記載された椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に、左右一対の肘掛けと、肘掛けに設けられたグリップとを備えた浴室用の椅子が開示されている。グリップは、肘掛けの先端部に設けられ、前後方向に延びる肘掛けに対して垂直な方向に延びている。グリップは、前後方向に延びる回動中心線周りに回動可能に構成されている。グリップを下向きに延びる垂直位置に移動させることにより、利用者は椅子の前方から椅子に座ることができる。利用者が座った後、グリップを左右方向の中心側に延びる水平位置に移動させることにより、グリップを利用者の手前に配置することができる。このグリップにより、利用者は前方にずり落ちることが防止される。また、利用者は、グリップを握ることで、前傾姿勢の状態で姿勢を安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記椅子では、横移乗ができない。すなわち、利用者は、椅子に側方から着座することができず、また、椅子から側方に立ち上がることができない。一方、横移乗が可能な椅子として、肘掛けを跳ね上げ式に構成した椅子が知られている。ところが、肘掛けの先端部にグリップが設けられた椅子では、肘掛けを跳ね上げたときに、肘掛けと一緒にグリップも移動する。そのため、肘掛けを跳ね上げるときに、グリップが利用者の邪魔になるおそれがある。また、肘掛けを跳ね上げた後に、グリップが横移乗の邪魔になるおそれがある。そのため、従来、跳ね上げ式の肘掛けにグリップを設けることは困難と考えられていた。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、利用者が前方にずり落ち難く、また、安定した前傾姿勢を容易にとることができ、横移乗が可能な椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る椅子は、フレームと、座部と、肘掛けと、肘掛け回転機構と、グリップと、グリップ回転機構と、背もたれと、を備えている。前記座部は、前記フレームに支持され、利用者が座る。前記肘掛けは、それぞれ根元部および先端部を有し、前記座部の左方または右方に配置されている。前記肘掛け回転機構は、前記肘掛けが前方に延びる前位置と上方に延びる上位置との間で移動可能なように、前記肘掛けの前記根元部を前記フレームに回転可能に連結した。前記グリップは、前記肘掛けの前記先端部に接続された接続アーム部と、前記接続アーム部から前記肘掛けと交差する方向に延びたグリップアーム部と、を有する。前記グリップ回転機構は、前記接続アーム部を前記肘掛けの前記先端部に回転可能に連結するグリップ回転機構であって、少なくとも前記肘掛けが前記前位置にあるときに、前記グリップアーム部が前記接続アーム部から左右方向の中心側に延びる横位置と、前記グリップアーム部が前記接続アーム部から下方に延びる縦位置との間で前記グリップを回転させる。前記背もたれは、前記フレームに支持され、前記座部よりも後方に配置されている。前記肘掛けが前記上位置にあり、かつ、前記グリップが前記横位置にあるときに、前記グリップアーム部は前記背もたれの前端よりも後方に位置する。
【0007】
上記椅子によれば、例えば肘掛けが前位置にあるときに、グリップを横位置から縦位置に回転させることにより、利用者は前移乗が可能となる。利用者が座部に座った後、グリップを縦位置から横位置に回転させることにより、グリップを利用者の手前に配置することができる。これにより、利用者は前方にずり落ちにくくなる。また、グリップを握ることにより、安定した前傾姿勢を容易にとることができる。横移乗の際には肘掛けを前位置から上位置に回転させるが、予めグリップを横位置から縦位置に回転させておくことにより、グリップが利用者に当たることを防止することができる。よって、グリップが邪魔になることを防ぐことができる。ところが、肘掛けを上位置に回転させた状態では、グリップが利用者の横移乗の邪魔になるおそれがある。しかし、上記椅子によれば、肘掛けを上位置に回転させた後、グリップを縦位置から横位置に移動させることができる。そのときに、グリップアーム部は背もたれの前端よりも後方に位置する。よって、グリップが横移乗の邪魔にならない。したがって、上記椅子によれば、利用者は座ったときに前方にずり落ち難く、また、安定した前傾姿勢を容易にとることができ、更に、横移乗が可能となる。
【0008】
本発明の好ましい一態様によれば、前記肘掛けが前記前位置にあるときに、前記グリップの前記接続アーム部の中心は、前記肘掛けの前記先端部の中心よりも下方に位置し、前記グリップの前記接続アーム部の上端は、前記肘掛けの前記先端部の上端よりも下方に配置されている。
【0009】
肘掛けが前位置にあるときに、利用者が肘掛けでなくグリップに手を置いて立ち上がろうとすることがあり得る。特に、グリップが縦位置にある場合は、肘掛けとグリップとが区別しにくくなる傾向があり、利用者はグリップに手を置いて立上りやすい。ところが、グリップは椅子の前方部分に配置されているので、利用者がグリップに手を置いて立ち上がろうとした場合、椅子が前方に転倒するおそれがある。しかしながら、上記態様によれば、肘掛けが前位置にあるときに、接続アーム部の中心は肘掛けの先端部の中心よりも下方に位置する。接続アーム部は、肘掛けよりも一段下がった位置に配置される。そして、接続アーム部の上端は、肘掛けの上端よりも下方に配置される。そのため、利用者は、肘掛けとグリップとを区別しやすくなり、グリップよりも肘掛けの方に手を置き易い。よって、利用者が立ち上がる際、椅子が前方に転倒し難くすることができる。
【0010】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記グリップを前記横位置にロックするロック機構を備えている。
【0011】
上記態様によれば、グリップを縦位置から横位置に回転させた後、横位置に固定することができる。よって、グリップが横位置にある場合において、利用者がグリップを握るときに、グリップが回転してしまうことを確実に防止することができる。また、肘掛けを前位置と上位置との間で移動させる際(例えば、跳ね上げる際)、および、肘掛けを跳ね上げてから横移乗する際などに、グリップが回転して邪魔になってしまうことを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記肘掛けが前記前位置にあり、かつ、前記グリップが前記横位置にあるときに、前記グリップアーム部は前記接続アーム部から上方に向かって傾斜している。
【0013】
上記態様によれば、肘掛けが前位置に配置され、かつ、グリップが横位置に配置されている状態において、座部に座った利用者は、前傾姿勢の状態でグリップアーム部を手で握ると共に、グリップアーム部に腕を置くことができる。前傾姿勢の状態でグリップアーム部を手で握る際、腕は左右方向の中心側に向かうに従って上方に延びた状態となる。よって、上記態様によれば、グリップアーム部の向きと、腕の向きとが同じになり、利用者がグリップアーム部に腕を置き易くすることができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記フレームは、前記座部よりも下方に配置され、前斜め下方に延びた前脚を備えている。前記肘掛けが前記前位置にあり、かつ、前記グリップが前記横位置または前記縦位置にあるときに、前記グリップの前端は前記前脚の前端よりも前方に位置している。
【0015】
グリップの位置が前方にあるほど、グリップに腕を置いて体重を掛けた際に、椅子は前方に倒れやすくなる。上記態様によれば、グリップは比較的前方に配置されている。そのため、グリップに体重を掛けた場合であっても椅子が前方に倒れ難くいという前述の効果が、より顕著に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、利用者が前方にずり落ち難く、安定した前傾姿勢を容易にとることができ、横移乗が可能な椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図7】グリップの位置が縦位置の状態の椅子の斜視図である。
【
図8】グリップの位置が縦位置の状態の椅子の右側面図である。
【
図9】グリップの位置が縦位置の状態の椅子の平面図である。
【
図10】第2実施形態に係る椅子の斜視図であり、グリップの位置が横位置である状態を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る椅子の斜視図であり、グリップの位置が縦位置である状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る椅子について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る椅子100の斜視図である。以下の説明では、前、後、左、右、上、下とは、椅子100を利用する利用者から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。各図面中における符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。ただし、これらの方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、椅子100の態様を何ら限定するものではない。
【0020】
本実施形態に係る椅子100は、浴室用の椅子である。例えば、椅子100は、主に浴室内において、高齢者や要介護者などがシャワーを浴びるときなどに利用される。ただし、本実施形態に係る椅子100の利用対象者は、高齢者または要介護者に限定されない。
【0021】
図2は、椅子100の正面図である。
図3は椅子100の右側面図であり、
図4は椅子100の左側面図である。
図5は、椅子100の平面図である。
図1~
図5に示すように、椅子100は、フレーム10Aと、座部30と、背もたれ40と、左右一対の肘掛け50と、左右一対のグリップ60とを備えている。フレーム10Aは、左右一対の第1フレーム10と、横フレーム15と、左右一対の第2フレーム20と、を含んでいる。
【0022】
左の第1フレーム10と、右の第1フレーム10とは、左右対称の形状を有している。
図3に示すように、第1フレーム10は、前斜め下向きに延びる下部11と、下部11から後斜め上向きに延びる中途部12と、中途部12から後斜め上向きに延びる上部13とを有している。第1フレーム10の下部11は、本発明の前脚の一例である。
図5に示すように、左の第1フレーム10と右の第1フレーム10のそれぞれの上部13には、横フレーム15が架け渡されている。ここでは、左右一対の第1フレーム10と横フレーム15とは一体的に形成されている。
【0023】
図3に示すように、第1フレーム10の下部11は、伸縮可能であり、長さ調整が可能である。第1フレーム10の下部11は、上パイプ部11aと、上パイプ部11aがスライド可能に挿入された下パイプ部11bと、下パイプ部11bの下端部に設けられた滑り止めキャップ11cとを有している。上パイプ部11aの下パイプ部11bに対する挿入長さを調整することで、第1フレーム10の下部11の長さを調整することができる。
【0024】
左の第2フレーム20と、右の第2フレーム20とは、左右対称の形状を有している。第2フレーム20は、後斜め下向きに延びている。第2フレーム20の下部は後脚を構成している。第2フレーム20は、上パイプ部20aと、上パイプ部20aがスライド可能に挿入された下パイプ部20bと、下パイプ部20bの下端部に設けられた滑り止めキャップ20cとを有している。第2フレーム20は、第1フレーム10の下部11と同様に、伸縮可能であり、長さ調整が可能である。ここでは、上パイプ部20aの下パイプ部20bに対する挿入長さを調整することで、第2フレーム20の長さを調整することができる。本実施形態では、第1フレーム10の下部11の長さ、および、第2フレーム20の長さを調整することで、座部30の高さを調整することができる。
【0025】
図2に示すように、左の第1フレーム10の下部11と右の第1フレーム10の下部11との間には、第1連結バー16が架け渡されている。第1連結バー16は、左右方向に延びている。第1連結バー16は、左の第1フレーム10と右の第1フレーム10とを連結している。また、左右一対の第1フレーム10には、左右一対の第1支持バー17が設けられている。左右一対の第1支持バー17は、椅子100が開脚しているとき、座部30を支持するものである。左の第1支持バー17は、左の第1フレーム10の中途部12から右方に延びている。右の第1支持バー17は、右の第1フレーム10の中途部12から左方に延びている。左右一対の第1支持バー17は、互いに離間している。
【0026】
左の第2フレーム20の中央部分と、右の第2フレーム20の中央部分との間には、第2連結バー26が架け渡されている。第2連結バー26は左右方向に延びている。また、図示は省略するが、左右一対の第2フレーム20の上部には、左右方向に延びた左右一対の第2支持バーが設けられている。左右一対の上記第2支持バーは、第1支持バー17と同様に、椅子100が開脚しているとき、座部30を支持するものである。
【0027】
本実施形態では、椅子100は、折り畳み機構を有する。
図3に示すように、第1フレーム10の中途部12と第2フレーム20とは、左右方向に延びた連結軸28によって相対回転自在に連結されている。ここでは、第2フレーム20には、第2フレーム20の上部から第1フレーム10の中途部12に向かって延びたリンク部材29が設けられている。リンク部材29は、連結軸28に接続されており、第1フレーム10の中途部12に対して回転自在である。
図6は、折り畳まれた状態の椅子100の左側面図である。
図6に示すように、第1フレーム10の下部11と、第2フレーム20の下部とが接近するように第1フレーム10および第2フレーム20を相対回転させることにより、椅子100を折り畳むことができる。逆に、
図4に示すように、第1フレーム10の下部11と第2フレーム20の下部とが遠ざかるように第1フレーム10および第2フレーム20を相対回転させることにより、椅子100を開脚させることができる。
【0028】
図1に示すように、座部30は、上面に形成され、利用者が座る座面31を有している。座面31の左右方向の中央部分には、下方に凹んだ凹部32が形成されている。
図5に示すように、凹部32は、前方および後方に開口している。そのため、凹部32に手を挿入することで、座面31に座った利用者の陰部を洗浄することができる。
【0029】
図1に示すように、背もたれ40は、フレーム10Aに支持され、横フレーム15に取り付けられている。背もたれ40は、座部30よりも後方に配置されている。本実施形態では、背もたれ40は、横フレーム15と別体である。しかしながら、背もたれ40は、横フレーム15と一体であってもよい。背もたれ40には、孔41が形成されている。利用者は、この孔41に指を挿入して背もたれ40を把持する。このことによって、利用者は、椅子100を片手で持ち上げたり、片手で移動させたりすることができる。
図2に示すように、背もたれ40の下端部には、上方に凹んだ凹部42が形成されている。本実施形態では、背もたれ40は合成樹脂製である。しかしながら、背もたれ40の材料は特に限定されない。
【0030】
図1に示すように、左の肘掛け50と、右の肘掛け50とは、左右対称の形状を有している。左右一対の肘掛け50は、座部30の左方または右方に配置されている。肘掛け50は、左右一対の第1フレーム10の上部13に取り付けられている。肘掛け50は、根元部50aと、先端部50bとを有する。肘掛け50は、いわゆる跳ね上げ式の肘掛けである。肘掛け50には、肘掛け回転機構55が設けられている。肘掛け回転機構55は、肘掛け50の根元部50aを軸に、肘掛け50を上方に回転させる機構である。肘掛け回転機構55は、肘掛け50の根元部50aをフレーム10に回転可能に連結している。なお、肘掛け回転機構55の構成は特に限定されない。ここでは、肘掛け回転機構55は、左右方向に延びた回転軸56を備えている。本実施形態では、第1フレーム10の上部13には、前方に突出したブラケット14が設けられている。ブラケット14には、回転軸56が設けられている。肘掛け50は、回転軸56に回転可能に取り付けられている。よって、肘掛け50は、回転軸56およびブラケット14を介して、第1フレーム10の上部13に回転可能に取り付けられている。
【0031】
肘掛け回転機構55は、肘掛け50が前方に延びる前位置P11(
図3参照)と、肘掛け50が上方に延びる上位置P12(
図4参照)との間で、肘掛け50を回転させるように構成されている。
図6を除く図面において、右の肘掛け50は、前位置P11に配置されている状態であり、左の肘掛け50は、上位置P12に配置されている状態である。ここで、前位置P11とは、
図3に示すように、肘掛け50を使用する位置である。すなわち、前位置P11は使用位置である。前位置P11とは、肘掛け50の先端部50bが肘掛け50の根元部50aよりも前方に配置されたときの肘掛け50の位置である。前位置P11のとき、肘掛け50の先端部50bは、回転軸56よりも前方に位置する。前位置P11のとき、肘掛け50は略水平方向に延びた状態である。上位置P12とは、
図4に示すように、肘掛け50を使用しない位置である。すなわち、上位置P12は、非使用位置である。上位置P12とは、肘掛け50の先端部50bが肘掛け50の根元部50aよりも上方に配置されたときの肘掛け50の位置である。上位置P12のとき、肘掛け50の先端部50bは、回転軸56よりも上方に位置する。上位置P12のとき、肘掛け50は、略垂直方向に延びた状態である。本実施形態では、前位置P11には、水平方向の位置だけでなく、例えば、水平方向の向きの位置から±45度以内の範囲で傾いた位置も含むものとする。上位置P12には、鉛直方向の位置だけでなく、例えば、鉛直方向の向きの位置から±45度以内の範囲で傾いた位置も含むものとする。なお、肘掛け回転機構55が回転させる肘掛け50の回転範囲は、特に限定されない。
【0032】
次に、左右一対のグリップ60について説明する。以下のグリップ60の説明において、肘掛け50の位置を特に記載していない場合、肘掛け50は、前位置P11に配置されているものとする。左のグリップ60と、右のグリップ60とは、左右対称の形状を有している。グリップ60は、利用者が座部30に座っている状態において、利用者が前傾姿勢で、手で握られるものである。また、グリップ60は、利用者が座部30に座っている状態において、利用者が前方に転倒することを抑制するものである。グリップ60は、肘掛け50に設けられている。グリップ60の少なくとも一部は、肘掛け50の先端部50bよりも前方に配置されている。
【0033】
本実施形態では、
図5に示すように、グリップ60は、接続アーム部61と、グリップアーム部62とを有している。接続アーム部61は、肘掛け50の先端部50bに接続されている。接続アーム部61は、肘掛け50から前方に延びている。ここでは、
図3に示すように、接続アーム部61の上下方向の中心C1は、肘掛け50の先端部50bの上下方向の中心C2よりも下方に位置している。接続アーム部61の上端は、肘掛け50の先端部50bの上端よりも下方に配置されている。ここでは、肘掛け50の先端部50bと接続アーム部61との間には、段差が設けられている。本実施形態では、肘掛け50の先端部50bの下部には、ブラケット51が設けられている。
図2に示すように、ブラケット51には、前部から後方に凹んだ挿入穴52が形成されている。接続アーム部61は、ブラケット51の挿入穴52に挿入されている。
図5に示すように、グリップアーム部62は、接続アーム部61の先端部と連続している。グリップアーム部62は、接続アーム部61から肘掛け50と交差する方向に延びている。グリップアーム部62は、接続アーム部61から前後方向と直交する方向に延びている。ここで、肘掛け50と交差する方向、および、前後方向と直交する方向とは、例えば上下方向、または、左右方向である。本実施形態では、接続アーム部61とグリップアーム部62は、一体に形成されている。しかしながら、接続アーム部61とグリップアーム部62とは、別体に形成されていてもよい。
【0034】
接続アーム部61とグリップアーム部62との接続部分63は、接続アーム部61からグリップアーム部62に向かって湾曲している。言い換えると、平面視において、接続部分63の輪郭線は曲線である。
【0035】
本実施形態では、
図3に示すように、グリップ60には、グリップ回転機構65が設けられている。
図7、
図8、
図9は、それぞれグリップ60の位置が後述の縦位置P22の状態の椅子100の斜視図、右側面図、平面図である。グリップ回転機構65は、横位置P21(
図3および
図5参照)と、縦位置P22(
図8および
図9参照)との間でグリップ60を肘掛け50に対して回転させる機構である。グリップ回転機構65は、接続アーム部61を肘掛け50の先端部50bに回転可能に連結する機構である。ここで、
図1~
図5では、グリップ60の位置は横位置P21である。
図5に示すように、横位置P21とは、少なくとも肘掛け50が前位置P11にあるときに、グリップアーム部62が接続アーム部61から左右方向の中心側に延びた状態のグリップ60の位置である。横位置P21とは、グリップアーム部62が接続アーム部61から座部30側に延びた状態のグリップ60の位置のことである。肘掛け50の位置が前位置P11であり、横位置P21にグリップ60が配置されているとき、図示は省略するが、左のグリップ60において、グリップアーム部62は、接続アーム部61の先端部から右斜め上方に向かって延びている。肘掛け50の位置が前位置P11であり、横位置P21にグリップ60が配置されているとき、右のグリップ60において、グリップアーム部62は、接続アーム部61の先端部から左斜め上方に向かって延びている。ここでは、
図3に示すように、横位置P21にグリップ60が配置されているとき、グリップアーム部62の先端は、肘掛け50よりも上方に配置されている。なお、肘掛け50の位置が前位置P11であり、横位置P21にグリップ60が配置されているとき、グリップアーム部62は、水平方向に延びていてもよいし、下方に向かって斜めに延びていてもよい。図示は省略するが、横位置P21に左右一対のグリップ60が配置されているとき、左右一対のグリップ60のグリップアーム部62の間には、隙間が形成されている。
【0036】
図8に示すように、縦位置P22とは、グリップアーム部62が接続アーム部61から下方に延びている状態のグリップ60の位置のことである。縦位置P22にグリップ60が配置されているとき、グリップアーム部62は、接続アーム部61よりも下方に位置する。縦位置P22にグリップ60が配置されているとき、グリップ60全体は、肘掛け50の先端部50bの上端よりも下方に配置されている。本実施形態では、横位置P21には、水平方向の位置だけでなく、例えば、水平方向の向きの位置から±45度以内の範囲で傾いた位置も含むものとする。縦位置P22には、鉛直方向の位置だけでなく、例えば、鉛直方向の向きの位置から±45度以内の範囲で傾いた位置も含むものとする。
【0037】
グリップ回転機構65の構成は特に限定されない。ここでは、グリップ回転機構65は、肘掛け50の先端部50bに設けられたブラケット51であって、挿入穴52が形成されたブラケット51を有している。グリップ回転機構65は、グリップ60の接続アーム部61が挿入穴52に回転可能に挿入されるように構成されている。
【0038】
本実施形態では、グリップ60には、ロック機構66Aが設けられている。ロック機構66Aは、グリップ60を横位置P21にロックする機構である。なお、ロック機構66Aの構成は特に限定されない。ここでは、ロック機構66Aは、可動ピン66を有している。本実施形態では、グリップ60は、肘掛け50に設けられたブラケット51に対して回転可能である。可動ピン66は、グリップ60の接続アーム部61の径方向の外向きに突出している。可動ピン66は、接続アーム部61の内部から径方向の外向きに付勢されている。肘掛け50に設けられたブラケット51には、横位置P21にグリップ60が配置されている状態において、可動ピン66に挿通される挿通孔(図示せず)が形成されている。上記挿通孔は、ブラケット51の挿入穴52(
図2参照)と連通している。上記挿通孔に可動ピン66が挿通されていることで、横位置P21におけるグリップ60の回転が規制される。
【0039】
一方、可動ピン66を接続アーム部61の径方向の内向きに押し込むことで、可動ピン66が上記挿通孔から外れる。このことによって、グリップ60は、肘掛け50に対して回転可能となる。そして、グリップアーム部62が接続アーム部61から下方に延びている状態となるように、肘掛け50に対してグリップ60を回転させることで、グリップ60を縦位置P22に配置することができる。なお、肘掛け50のブラケット51には、縦位置P22にグリップ60が配置されている状態において、可動ピン66に挿通される他の挿通孔(図示せず)が形成されていてもよい。上記他の挿通孔に可動ピン66が挿通されていることで、縦位置P22におけるグリップ60の回転が規制される。この場合、ロック機構66Aは、グリップ60を縦位置P22にロックする機能を有する。
【0040】
次に、肘掛け50の位置が前位置P11のときのグリップ60と他の部位との位置関係と、肘掛け50の位置が上位置P12のときのグリップ60と他の部位との位置関係について説明する。
図5に示すように、肘掛け50が前位置P11に配置され、かつ、グリップ60が横位置P21に配置されているとき、グリップアーム部62は、座部30よりも前方に配置される。本実施形態では、
図3の点線で示すように、第1フレーム10の下部11および第2フレーム20の長さを長くして、座部30の高さを高くするほど、第1フレーム10の下部11の位置は前方に移動する。一方、第1フレーム10の下部11および第2フレーム20を短くして、座部30の高さを低くするほど、第1フレーム10の下部11の位置は後方に移動する。ここでは、肘掛け50が前位置P11に配置され、かつ、グリップ60が横位置P21に配置されているとき、座部30の高さによっては、グリップアーム部62の前端は、第1フレーム10の前端よりも後方に位置したり、第1フレーム10の前端よりも前方に位置したりする。例えば、第1フレーム10の下部11の長さを最も短くしたとき、グリップアーム部62の前端は、第1フレーム10の下部11の前端よりも前方に位置する。逆に、
図3の点線で示すように、第1フレーム10の下部11の長さを最も長くしたとき、グリップアーム部62の前端は、第1フレーム10の下部11の前端よりも後方に位置する。
【0041】
図9に示すように、肘掛け50が前位置P11に配置され、かつ、グリップ60が縦位置P22に配置されているとき、グリップアーム部62は、座部30よりも前方に配置される。
図8に示すように、肘掛け50が前位置P11に配置され、かつ、グリップ60が縦位置P22に配置されているとき、座部30の高さによっては、グリップアーム部62の前端は、第1フレーム10の前端よりも後方に位置したり、第1フレーム10の前端よりも前方に位置したりする。また、肘掛け50が前位置P11に配置され、かつ、グリップ60が縦位置P22に配置されているとき、グリップアーム部62は、座面31よりも上方に配置される。ただし、このとき、グリップアーム部62の一部は、座面31よりも下方に配置されてもよい。
【0042】
図4に示すように、肘掛け50が上位置P12に配置されているとき、グリップアーム部62は、背もたれ40よりも上方に配置されている。
図5に示すように、肘掛け50が上位置P12に配置され、かつ、グリップ60が横位置P21に配置されているとき、グリップアーム部62は、接続アーム部61から後斜めであって、左右両側の中心側に向かって延びている。ここでは、肘掛け50の位置が上位置P12であり、グリップ60が横位置P21に配置されているとき、グリップ60は、背もたれ40の最前端よりも後方に位置している。
図8に示すように、肘掛け50の位置が上位置P12であり、グリップ60の位置が縦位置P22のとき、グリップアーム部62は、接続アーム部61から前方に向かって延びている。肘掛け50の位置が上位置P12であり、グリップ60の位置が縦位置P22のとき、グリップ60の少なくとも一部は、背もたれ40よりも前方に配置されている。
【0043】
以上、本実施形態に係る椅子100について説明した。次に、椅子100の使用例について説明する。
【0044】
まず、利用者が座部30に座っている状態において、肘掛け50を使用する場合、
図1に示すように、肘掛け50が前位置P11に配置されるように、肘掛け回転機構55によって肘掛け50を回転させる。このとき、肘掛け50の先端部50bは、肘掛け50の根元部50aよりも前方に位置している。この状態において、グリップ60を使用する場合には、グリップ60の位置が横位置P21となるようにグリップ60を肘掛け50に対して回転させる。グリップ60が横位置P21に配置されたとき、
図2に示すように、左右一対のグリップ60のグリップアーム部62は、接続アーム部61から左右方向の中心側に向かって上方に延びるように配置されている。このような状態において、座部30に座った利用者は、グリップアーム部62を手で握ると共に、グリップアーム部62に腕を置く。このことによって、利用者は、前傾姿勢の状態で安定する。また、座部30に座った利用者は、グリップアーム部62で体が支持されているため、前方に倒れ難い。
【0045】
座部30に利用者が座っている状態において、利用者が立ち上がる場合には、まず、
図7に示すように、グリップ60の位置が縦位置P22になるように、グリップ60を回転させる。このことによって、グリップ60のグリップアーム部62は、接続アーム部61から下方に延びた状態となる。このようなグリップ60の状態において、利用者は、肘掛け50に手を置いて立ち上がることができる。
【0046】
ところで、椅子100の利用者の中には、座部30から左右両側の何れか一方にずれて移動することがあり得る。ここでは、座部30に座っている利用者が左側および右側の何れか一方にずれて移動することを「横移乗」という。横移乗する場合には、前位置P11に配置されている肘掛け50を上位置P12に移動させるとよい。しかしながら、肘掛け50の根元部50aを軸に肘掛け50を回転させるとき、
図1に示すように、グリップ60の位置が横位置P21の場合、グリップアーム部62が座部30に座る利用者にぶつかるおそれがある。そこで、肘掛け50が前位置P11から上位置P12に移動されるとき、
図7に示すように、グリップ60の位置が縦位置P22となるように、肘掛け50に対してグリップ60を回転させる。このことによって、グリップアーム部62は、肘掛け50の前方において、上下方向に延びた状態となる。よって、肘掛け50が前位置P11から上位置P12に移動されるとき、座部30に座っている利用者に、グリップアーム部62がぶつかり難い。
【0047】
なお、
図8に示すように、肘掛け50の位置が上位置P12であり、かつ、グリップ60の位置が縦位置P22のとき、グリップ60のグリップアーム部62は、前後方向に延びた状態となる。このような状態で、利用者が横移乗しようとした場合、利用者にグリップアーム部62がぶつかるおそれがある。そのため、肘掛け50の位置が上位置P12のとき、
図4に示すように、グリップ60が横位置P21に配置されるように、グリップ60を回転させる。このことによって、
図5に示すように、グリップアーム部62は、接続アーム部61から後斜めであって、左右両側の中心側に向かって延びた状態となる。また、肘掛け50の位置が上位置P12であり、グリップ60が横位置P21に配置されているとき、グリップ60は、背もたれ40の最前端よりも後方に位置している。よって、座部30に座っている利用者が横移乗する際、グリップ60に接触され難くすることができる。
【0048】
本実施形態では、肘掛け50が前位置P11にあるとき、グリップ60を横位置P21から縦位置P22に回転させることにより、利用者は前移乗が可能となる。利用者が座部30に座った後、グリップ60を縦位置P22から横位置P21に回転させることにより、グリップ60を利用者の手前に配置することができる。これにより、利用者は前方にずり落ちにくくなる。また、グリップ60を握ることにより、安定した前傾姿勢を容易にとることができる。したがって、本実施形態に係る椅子100によれば、利用者は座ったときに前方にずり落ち難く、また、安定した前傾姿勢を容易にとることができ、更に、横移乗が可能となる。
【0049】
肘掛け50が前位置P11にあるときに、利用者が肘掛け50でなくグリップ60に手を置いて立ち上がろうとすることがあり得る。特に、グリップ60が縦位置P22にある場合は、肘掛け50とグリップ60とが区別しにくくなる傾向があり、利用者はグリップ60に手を置いて立上りやすい。ところが、グリップ60は椅子100の前方部分に配置されているので、利用者がグリップ60に手を置いて立ち上がろうとした場合、椅子100が前方に転倒するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、
図3に示すように、肘掛け50が前位置P11にあるときに、接続アーム部61の中心C1は肘掛け50の先端部50bの中心C2よりも下方に位置する。接続アーム部61は、肘掛け50よりも一段下がった位置に配置される。そして、接続アーム部61の上端は、肘掛け50の先端部50bの上端よりも下方に配置される。そのため、利用者は、肘掛け50とグリップ60とを区別しやすくなり、グリップ60よりも肘掛け50の方に手を置き易い。よって、利用者が立ち上がる際、椅子100が前方に転倒し難くすることができる。
【0050】
本実施形態では、ロック機構66Aは、グリップ60を横位置P21にロックする。このことによって、グリップ60を縦位置P22から横位置P21に回転させた後、横位置P21に固定することができる。よって、グリップ60が横位置P21にある場合において、利用者がグリップ60を握るときに、グリップ60が回転してしまうことを確実に防止することができる。また、肘掛け50を前位置P11と上位置P12との間で移動させる際(例えば、跳ね上げる際)、および、肘掛け50を跳ね上げてから横移乗する際などに、グリップ60が回転して邪魔になってしまうことを確実に防止することができる。
【0051】
本実施形態では、
図2に示すように、肘掛け50が前位置P11にあり、かつ、グリップ60が横位置P21にあるときに、グリップアーム部62は接続アーム部61から上方に向かって傾斜している。このことによって、肘掛け50が前位置P11に配置され、かつ、グリップ60が横位置P21に配置されている状態において、座部30に座った利用者は、前傾姿勢の状態でグリップアーム部62を手で握ると共に、グリップアーム部62に腕を置くことができる。前傾姿勢の状態でグリップアーム部62を手で握る際、腕は左右方向の中心側に向かうに従って上方に延びた状態となる。よって、本実施形態では、グリップアーム部62の向きと、腕の向きとが同じになり、利用者がグリップアーム部62に腕を置き易くすることができる。
【0052】
本実施形態では、
図3に示すように、肘掛け50が前位置P11にあり、かつ、グリップ60が横位置P21または縦位置P22(
図8参照)にあるときに、グリップ60の前端は前脚(第1フレーム10の下部11)の前端よりも前方に位置している。グリップ60の位置が前方にあるほど、グリップ60に腕を置いて体重を掛けた際に、椅子100は前方に倒れやすくなる。本実施形態では、グリップ60は比較的前方に配置されている。そのため、グリップ60に体重を掛けた場合であっても椅子100が前方に倒れ難くいという前述の効果が、より顕著に発揮される。
【0053】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る椅子について説明する。上記実施形態では、椅子100は、浴室内で利用される椅子であった。しかしながら、本発明に係る椅子は、浴室用の椅子に限定されない。
【0054】
図10は、第2実施形態に係る椅子200の斜視図であり、グリップ60の位置が横位置P21である状態を示す図である。
図11は、第2実施形態に係る椅子200の斜視図であり、グリップ60の位置が縦位置P22である状態を示す図である。
図10に示すように、本実施形態に係る椅子200は、ポータブルトイレである。ここで、ポータブルトイレとは、主に高齢者や要介護者に使用されるものであり、介護用に好適に使用されるトイレである。ポータブルトイレは、床に固定されるトイレではなく、移動可能式のトイレである。本実施形態に係る椅子200は、第1実施形態に係る椅子100において、座部30(
図1参照)を便座130および収容部135に変更したものである。本実施形態では、便座130は、本発明の座部の一例である。
【0055】
本実施形態では、椅子200は、左右一対の第1フレーム10および左右一対の第2フレーム20を有するフレーム10Aと、便座130と、収容部135と、背もたれ40と、左右一対の肘掛け50と、左右一対のグリップ60とを備えている。なお、左右一対の第1フレーム10、左右一対の第2フレーム20、背もたれ40、左右一対の肘掛け50、および、左右一対のグリップ60は、第1実施形態と同様の構成のため、ここでの説明は省略する。ただし、本実施形態において、第1実施形態の第1連結バー16(
図2参照)、および、第1支持バー17(
図2参照)は省略されている。
【0056】
図10に示すように、便座130は、左右一対の第1フレーム10の間、および、左右一対の第2フレーム20の間に配置されている。便座130は、利用者のお尻を受ける座面131を有する。本実施形態では、便座130は、後部の縁に設けられたヒンジ132を介して収容部135に取り付けられている。便座130の状態は、収容部135の上に配置された状態と、収容部135の上面から引き上げられた状態とで適宜に変更される。
【0057】
収容部135は、利用者の排便を収容するものである。本実施形態では、収容部135は、上部が開口した底が深い有底の容器である。収容部135の上には、便座130が配置される。本実施形態では、収容部135は、左右一対の第1フレーム10の間、および、左右一対の第2フレーム20の間に配置されており、第1フレーム10および第2フレーム20に取り付けられている。
【0058】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、肘掛け50は、根元部50aの回転軸56を軸にして、先端部50bが回転軸56よりも前方に配置された前位置P11と、先端部50bが根元部50aよりも上方に配置された上位置P12との間で回転可能に構成されている。
【0059】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、グリップ60は、横位置P21(
図10参照)と、縦位置P22(
図11参照)との間で、肘掛け50に対して回転可能に構成されている。ここで、横位置P21とは、
図10に示すように、グリップアーム部62が接続アーム部61から左右方向の中心側に延びた状態のグリップ60の位置のことである。縦位置P22とは、
図11に示すように、グリップアーム部62が接続アーム部61から下方に延びた状態のグリップ60の位置のことである。
【0060】
詳しい説明は省略するが、本実施形態であっても、肘掛け50を使用しない場合、肘掛け50が上位置P12に配置されるように、肘掛け50を回転させる。このとき、グリップアーム部62を縦位置P22に配置した状態で、肘掛け50を回転させることで、座部30に座った利用者にグリップ60がぶつかり難くすることができる。そして、
図10に示すように、肘掛け50が上位置P12に配置されている状態において、グリップアーム部62の位置を横位置P21に配置する。このことによって、グリップアーム部62は背もたれ40の前端よりも後方に位置している。そのため、利用者が移乗する際、グリップ60が接触され難くすることができる。よって、本実施形態であっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0061】
10A フレーム
30 座部
40 背もたれ
50 肘掛け
55 肘掛け回転機構
60 グリップ
61 接続アーム部
62 グリップアーム部
65 グリップ回転機構
100、200 椅子