(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】アレイマイクシステム、及びアレイマイクシステムの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20220704BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20220704BHJP
H04R 1/06 20060101ALI20220704BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R1/02 108
H04R1/06 320
H04R1/40 320A
(21)【出願番号】P 2017556522
(86)(22)【出願日】2016-04-28
(86)【国際出願番号】 US2016029751
(87)【国際公開番号】W WO2016176429
(87)【国際公開日】2016-11-03
【審査請求日】2019-04-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-01
(32)【優先日】2015-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504189151
【氏名又は名称】シュアー アクイジッション ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHURE ACQUISITION HOLDINGS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム マシュー ティー
(72)【発明者】
【氏名】ケイソン デイヴィッド グラント
(72)【発明者】
【氏名】ギブス ジョン ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】ランツ グレゴリー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マクガヴァン アルバート フランシス
(72)【発明者】
【氏名】シュマード ブレント ロバート
【合議体】
【審判長】清水 正一
【審判官】樫本 剛
【審判官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-260589(JP,A)
【文献】特開2012-165189(JP,A)
【文献】特表2005-521283(JP,A)
【文献】特開2013-93807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101141(US,A1)
【文献】米国特許第8213634(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイマイクシステムであって、
基板と、
前記基板上に様々なサイズの同心状のネスト化されたリングの形で配置された複数のマイクと、
を備え、各リングは、該リングの周辺部に沿って所定の間隔で位置する前記複数のマイクのサブセットを含
み、
前記リングは、調和的にネスト化され、前記基板の中心軸に対して互いに回転オフセットされる、ことを特徴とするアレイマイクシステム。
【請求項2】
前記リングは、前記基板の中心点からの異なる半径方向距離に位置してネスト化構成を形成する、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項3】
前記複数のマイクは、微小電気機械システム(MEMS)マイクである、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項4】
前記リングの各々は、異なる直径の円を形成する、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項5】
各リングの前記直径は、前記リングに含まれる前記マイクの前記サブセットに割り当てられる最も低い動作周波数に基づいて決定される、
請求項
4に記載のアレイマイクシステム。
【請求項6】
前記同心状のネスト化されたリングの数は7である、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項7】
前記複数のマイクは、少なくとも113個のマイクを含む、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項8】
前記複数のマイクは、最大120個のマイクを含む、
請求項
7に記載のアレイマイクシステム。
【請求項9】
前記マイクのリングは、予め設定された範囲の可聴周波数をカバーするように構成される、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項10】
各リングは、1よりも大きな整数の倍数である数字から成る群から選択される所定数のマイクを含む、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項11】
前記基板に電気的に結合され、前記複数のマイクの各々によって取り込まれたオーディオ信号を受け取り、該受け取ったオーディオ信号に基づいて出力を生成するように構成されたプロセッサをさらに備える、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記受け取ったオーディオ信号に基づいて複数のオーディオ出力を同時に生成するように構成される、
請求項
11に記載のアレイマイクシステム。
【請求項13】
前記基板に結合されて、前記アレイマイクシステムの動作モードを示すように構成された外部インジケータをさらに備える、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項14】
前記基板は、中央プリント基板(PCB)と、該中央PCBの周囲に半径方向に位置して前記中央PCBに電気的に接続された複数の周辺プリント基板(PCB)とを含み、前記複数の同心状のネスト化されたリングのうちの少なくとも1つのリングは、前記複数の周辺PCB上に位置する、
請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項15】
アレイマイクの組み立て方法であって、
基板上に、第1の構成を形成するように第1の複数のマイクを配置するステップと、
前記基板上に、前記第1の構成を同心状に取り囲む第2の構成を形成するように第2の複数のマイクを配置するステップと、
前記第1及び第2の構成の少なくとも一方を前記アレイマイクの中心軸に対して回転させ、前記構成が互いに回転オフセットされるようにするステップと、
前記第1及び第2の複数のマイクの各々を、前記マイクによって取り込まれたオーディオ信号を処理するオーディオプロセッサに電気的に結合するステップと、
を含
み、
前記第1及び第2の構成の各々は、調和的にネスト化された複数の同心リングを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の複数のマイクは、予め設定された異なる周波数範囲をカバーするように構成される、
請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の複数のマイクの各々は、前記基板の中心点からの異なる半径方向距離に位置してネスト化構成を形成する複数の同心リングを構成する、
請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の複数のマイクを配置するステップは、前記複数の同心リング毎に、前記第1の複数のマイクのサブセットを前記リングの周辺部に沿って所定の間隔で配置するステップを含む、
請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の構成は、前記基板の前記中心点をさらに含み、前記第1の複数のマイクを配置するステップは、前記第1の複数のマイクのうちの少なくとも1つのマイクを前記中心点に配置するステップを含む、
請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の構成は、前記第2の構成とは異なる数の同心リングを含む、
請求項
17に記載の方法。
【請求項21】
各同心リングの直径は、前記リングを形成する前記マイクに割り当てられる最も低い動作周波数によって定められる、
請求項
17に記載の方法。
【請求項22】
前記基板は、中央基板と、該中央基板に半径方向に結合された複数の周辺基板とを含み、前記第2の構成における前記同心リングのうちの少なくとも1つのリングは、前記複数の周辺基板上に含まれ、前記方法は、前記複数の周辺基板を前記中央基板に電気的に結合するステップをさらに含む、
請求項
17に記載の方法。
【請求項23】
前記基板上に、前記第2の構成を同心状に取り囲む第3の構成で第3の複数のマイクを配置するステップと、
前記第3の複数のマイクを前記オーディオプロセッサに電気的に結合するステップと、をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項24】
前記マイクは、微小電気機械システム(MEMS)マイクである、
請求項
15に記載の方法。
【請求項25】
前記第1及び第2の構成の各々に含めるべきマイクの総数を選択するステップをさらに含む、
請求項
15に記載の方法。
【請求項26】
各リングは、所定の数のマイクを含み、前記所定の数は、複数の1より大きい整数である数からなるグループから選択されるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
各リングは、異なる度数だけ前記中心軸から回転オフセットされる、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記中心軸の中心点に配置された少なくとも1つのマイクをさらに含む、請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【請求項29】
各リングは、異なる度数だけ前記中心軸から回転オフセットされる、請求項1に記載のアレイマイクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2015年4月30日に出願された米国特許出願第14/701,376号の優先権を主張するものであり、この文献の内容はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般にアレイマイクシステム、及びアレイマイクシステムの組み立て方法に関する。具体的には、本出願は、吊り天井の天井タイル内に収まるとともに、音声周波数範囲にわたって最適化された全指向係数を用いて360度の収音を行うことが可能なアレイマイクに関する。
【背景技術】
【0003】
重役会議室及びビデオ会議環境などの会議環境では、音源からの音を取り込むマイクが使用されることがある。音源は、例えば人間の話者を含むことができる。取り込んだ音は、環境内のスピーカ、テレビ放送及び/又はウェブ放送を通じて聴衆に広めることができる。
【0004】
環境によっては、音を取り込むために音源付近の演卓又は演説台上にマイクが配置されることもある。しかしながら、このようなマイクは、そのサイズ、及び/又はマイクを使用している環境の美観によって目障りであったり、或いは望ましくなかったりする場合がある。また、卓上に配置されたマイクは、ペンをたたく音又は紙を整理する音などの望ましくないノイズを検出してしまうこともある。また、卓上に配置されたマイクが紙、布又はナプキンなどによって覆われ、又は遮断されることによって、音が正しく又は最適に取り込まれなくなることもある。
【0005】
他の環境では、マイクが、主に一方向の音を感知するショットガンマイクを含むことができる。ショットガンマイクは、音源から遠くに離して配置し、音源が占める領域にマイクを向けることによって、特定の音源からの音を検出するように方向付けることができる。しかしながら、音源からの音を最適に検出するようにショットガンマイクを向ける方向を決定するのは困難で面倒な場合もある。音源からの音を最適に検出できるようにショットガンマイクの位置を調整するには試行錯誤が必要になる場合もある。従って、マイクの位置が正しく調整されるまでは、音源からの音が理想的に検出されないことがある。また、正しく調整されたとしても、音源がマイクの収音範囲の内外に移動した場合には(例えば、人間の話者が話しながら自分の席に移動した場合には)、音声検出が最適以下になってしまうこともある。
【0006】
環境によっては、会議室の天井又は壁にマイクを取り付けて卓上空間を確保し、人間の話者に室内を動き回る自由を与えることによって、卓上マイク及びショットガンマイクに関する上記の懸念の少なくとも一部を解決することもできる。既存の天井取り付けマイクは、ほとんどが直接天井に固定され、又は天井に取り付けられた吊り下げケーブルから垂下するように構成される。この結果、これらの製品は複雑な設置を必要とし、恒久的な備品になってしまう傾向にある。さらに、天井マイクは、その演卓からの距離を考えると、卓上のノイズを拾わない場合もあるが、このようなマイクは、スピーカ及びHVACシステムに近いこと、音源からの距離が遠いこと、及び空気の動き又はホワイトノイズの影響を受けやすいことに起因する独自の収音課題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、これらの問題に対処するシステムに可能性がある。具体的には、目立ち過ぎず、既存の環境内への設置が容易であり、例えば人間の話者などの音源からの音を最適に検出して望ましくないノイズ及び反射を排除するようなマイクアレイの調整を可能にするアレイマイクを含むシステムに可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、とりわけ、(1)天井タイルの代わりに吊り天井内に取り付けることができるようなサイズ及び形状のアレイマイクアセンブリを提供し、(2)音声周波数範囲にわたる改善された指向性感度と、規定のステアリング角にわたる最適なメインローブ対サイドローブ比とを達成する同心構成のマイクを含むアレイマイクシステムを提供する、ように設計されたシステム及び方法を提供することによって上述の問題を解決することを目的とする。
【0009】
ある実施形態では、アレイマイクシステムが、基板と、様々なサイズの複数の同心状のネスト化されたリングの形で基板上に配置された複数のマイクとを含む。この実施形態では、各リングが、リングの周辺部に沿って所定の間隔で位置する複数のマイクのサブセットを含む。
【0010】
別の実施形態では、マイクアセンブリが、複数のマイクを含むアレイマイクと、アレイマイクを支持するように構成されたハウジングとを含む。この実施形態では、ハウジングが、吊り天井に含まれる複数の天井タイルのうちの少なくとも1つの代わりに吊り天井内に取り付けることができるようなサイズ及び形状を有する。さらに、ハウジングの前面は、複数の天井タイルのうちの少なくとも1つと実質的に同様のサイズ及び形状を有する通音スクリーンを含む。
【0011】
別の実施形態では、アレイマイクの組み立て方法が、基板上に第1の構成を形成するように第1の複数のマイクを配置するステップと、基板上に第1の構成を同心状に取り囲む第2の構成を形成するように第2の複数のマイクを配置するステップとを含む。この方法は、第1及び第2の複数のマイクの各々を、マイクによって取り込まれたオーディオ信号を処理するオーディオプロセッサに電気的に結合するステップをさらに含む。
【0012】
本発明の原理を使用できる様々な方法を示す例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明及び添付図面からは、これらの及びその他の実施形態、並びに様々な置換及び態様が明らかになり、さらに十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】いくつかの実施形態による例示的なアレイマイクアセンブリの正面斜視図である。
【
図2】いくつかの実施形態による
図1のアレイマイクアセンブリの後面斜視図である。
【
図3】いくつかの実施形態による
図1のアレイマイクアセンブリの分解図である。
【
図4】いくつかの実施形態による
図3のアレイマイクアセンブリの側面断面図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、
図3のアレイマイクアセンブリに含まれるアレイマイクの上面図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、
図1のアレイマイクアセンブリを含む例示的な環境である。
【
図7】いくつかの実施形態による、
図2のアレイマイクアセンブリを含む別の例示的な環境である。
【
図8】いくつかの実施形態による、
図2のアレイマイクアセンブリを含む別の例示的な環境である。
【
図9】いくつかの実施形態による、別のアレイマイク例におけるマイクの配置を示すグラフである。
【
図10】いくつかの実施形態によるアレイマイクシステム例を示すブロック図である。
【
図11】いくつかの実施形態による、
図9のアレイマイクの選択的極性応答を示す極座標プロットである。
【
図12】いくつかの実施形態による、アレイマイクの組み立て工程例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、本発明の原理に従う本発明の1又は2以上の特定の実施形態を説明し、図示し、例示するものである。この説明は、本明細書で説明する実施形態に本発明を限定するためではなく、むしろ当業者が本発明の原理を理解した上でこれらの原理を応用し、本明細書で説明する実施形態のみならず、これらの原理に基づいて想起される他の実施形態も実施できるように、本発明の原理の説明及び教示のために行うものである。本発明の範囲は、文言上、又は均等論の下で添付の特許請求の範囲に含まれる可能性のある全ての実施形態を対象とすることが意図されている。
【0015】
なお、説明及び図面では、同じ又は実質的に同様の要素には同じ参照数字を与えることができる。しかしながら、例えば異なる数字を与えた方が説明が明確になるような場合には、これらの要素に異なる数字を与えることもある。また、本明細書に示す図面は必ずしも縮尺通りではなく、場合によっては、特定の特徴をより明確に示すために比率を誇張していることもある。このような表示及び作図手法は、必ずしも根底にある本質的な目的に関与するものではない。上述したように、本明細書は、本明細書で教示され当業者に理解される本発明の原理に従って全体として受け取られ解釈されるように意図されている。
【0016】
また、本明細書で説明し図示する例示的なシステム、コンポーネント及びアーキテクチャに関して、当業者であれば理解するように、実施形態は、1又は2以上のシステム、ハードウェア、ソフトウェア又はファームウェア構成又はコンポーネント、或いはこれらのいずれかの組み合わせを含む数多くの構成及びコンポーネントによって具体化し、又はこれらの構成及びコンポーネントに使用することができると理解されたい。従って、図面には、本明細書において検討する実施形態のうちの1つ又は2つ以上のコンポーネントを含む例示的なシステムを示しているが、各実施形態では、システム内に1又は2以上のコンポーネントが存在しないことも、或いは不要な場合もあると理解されたい。
【0017】
本明細書では、(1)既存の天井パネルの代わりに、例えば会議環境又は重役会議室環境の吊り天井内に取り付けることができるように構成され、(2)例えば最適な指向係数及び最大のメインローブ対サイドローブ比を有する高性能アレイを形成するように自己相似型又はフラクタル様の構成又は配置で選択的に位置付けられた複数のマイク変換器を含む、アレイマイクアセンブリのためのシステム及び方法を提供する。実施形態では、この物理的構成を、マイクを同心リング状に配置し、アレイマイクが3次元(例えば、X-Y-Z)空間内の所与のルック角(look angle)において同等のビーム幅性能を有するようにすることによって達成することができる。この結果、本明細書で説明するアレイマイクは、線形、長方形又は正方形配置のアレイマイクよりも整合性の高い出力を提供することができる。さらに、サイドローブの伸びを最小化して、共線的に位置する要素を含む既存のアレイよりも低いサイドローブをアレイマイクに与えるために、一連のマイク内の各同心リングは、1つ置きのリングからわずかに回転オフセットすることができる。このオフセット構成は、さらなるビームステアリングを許容することにより、アレイがより広い収音領域をカバーできるようにすることもできる。さらに、このマイクの配置を調和的にネスト化して、所与の一連の異なる周波数帯にわたってビーム幅を最適化することもできる。
【0018】
実施形態では、アレイマイクが、微小電気機械システム(MEMS)マイクの使用に少なくとも部分的に起因して、音声周波数範囲及び広い範囲のアレイ焦点(例えば、ルック)角にわたって最大のサイドローブ除去を達成することにより、既存のアレイに比べて高いマイク密度及び改善された振動ノイズの除去を可能にすることができる。既存のアレイが固定ビーム幅に制限されるのに対し、アレイ配置のマイク密度は様々なビーム幅制御を可能にすることができる。他の実施形態では、マイク密度が維持されることを条件に、別の変換スキーム(例えば、コンデンサ、バランスドアーマチャなど)を使用してマイクシステムを実装することもできる。
【0019】
図1~
図5に、実施形態による、ハウジング102とアレイマイク104とを含む例示的なマイクアレイアセンブリ100を示す。具体的に言えば、
図1には、マイクアレイアセンブリ100の正面斜視図を示し、
図2には、マイクアレイアセンブリ100の後面斜視図を示し、
図3には、ハウジング102及びマイクアレイ104の様々なコンポーネントを示すマイクアレイアセンブリ100の分解図を示し、
図4には、マイクアレイアセンブリ100の側面断面図を示し、
図5には、実施形態によるマイクアレイ104を示す。説明を単純にするために、例えば
図3~
図5などの選択図からは、ねじ、ワッシャ、後部取り付けプレート101、ケーブル取り付けフック103及びスタンドオフ105などの複数の構造的支持要素を少なくとも部分的に取り除いている。
【0020】
(本明細書ではマイクアレイとも呼ぶ)アレイマイク104は、例えば会議用テーブルの周囲の椅子に座った発話者が話す発言などの環境内の音を検出して取り込むように構成された(本明細書では「マイク」とも呼ぶ)複数のマイク変換器106を含む。これらの音は、音源(例えば、人間の話者)からマイク106に伝わる。いくつかの実施形態では、マイク106を、主に一方向に感知を行う単一指向性マイクとすることができる。他の実施形態では、マイク106が、カージオイド、サブカージオイド又は無指向性などの他の指向性又は極性パターンを望む通りに有することができる。
【0021】
マイク106は、音源からの音を検出して電気オーディオ信号に変換できるいずれかの好適なタイプの変換器とすることができる。好ましい実施形態では、マイク106が、微小電気機械システム(MEMS)マイクである。他の実施形態では、マイク106を、コンデンサマイク、バランスドアーマチャマイク、エレクトレットマイク、ダイナミックマイク、及び/又はその他のタイプのマイクとすることができる。
【0022】
マイク106は、基板107に結合し、又は基板上107上に含めることができる。MEMSマイクの場合、基板107は、(本明細書では「マイクPCB」とも呼ぶ)1又は2以上のプリント基板とすることができる。例えば、
図5では、マイク106がマイクPCB107に表面実装されて単一平面に含まれる。例えばマイク106がコンデンサマイクである他の実施形態では、基板107をカーボンファイバ又はその他の好適な材料で形成することができる。
【0023】
図1及び
図2に示すように、ハウジング102は、アレイ104を保護して構造的に支持するために、マイクアレイ104を完全に包み込むように構成される。具体的には、ハウジング102の第1の面又は前面が通音スクリーン又はグリル108を含み、ハウジング102の第2の面又は後面が背面パネル又は支持体110を含む。
図1に示すように、スクリーン108は、複数の小さな開口部を含む穿孔面を有することができ、アルミニウム、プラスチック、ワイヤメッシュ又はその他の好適な材料で形成することができる。他の実施形態では、スクリーン108が、通音フィルム又はファブリックで形成された実質的に中実な表面を有することができる。当業者であれば理解するように、ハウジング102は、
図3に示すようにスクリーン108とマイクアレイ104との間に位置してマイクアレイ104を外部要素から保護する、発泡体又はその他の好適な材料で形成された膜111も含む。やはり
図3に示すように、ハウジング102は、背面支持体110、発泡膜111及びスクリーン108の各側面を共に固定してハウジング102を形成する側部レール112をさらに含む。ハウジング102は、マイクアレイ104をハウジング102及び/又はアセンブリ100の他のコンポーネントから離して機械的に支持するスタンドオフ105及びスペーサ(図示せず)をさらに含むことができる。
【0024】
また、
図6には、マイクアレイアセンブリ100を取り付けた天井600の例を示す。天井600は、例えばマイクを利用して音源又は人間の話者からの音を取り込む重役会議室などの会議環境の一部とすることができる。
図6の例示的な環境では、天井600の下方、又は具体的にはマイクアレイアセンブリ100の下方のテーブルについた椅子に人間の話者(図示せず)が座ることができるが、音源及び/又はマイクアレイアセンブリ100他の物理的構成及び配置も検討され、可能である。実施形態では、マイクアレイ104を、例えば標準的な天井の高さ(例えば、8~10フィートの高さ)又は他のいずれかの適切な高さ範囲に従って、環境の床上の一定の高さ又は高さ範囲で性能が最適になるように構成することができる。
【0025】
図6に示すように、天井600は、吊り天井(別名、落し天井又は吊り下げ天井)、又は構造的主天井の下方に吊り下げられた二次天井とすることができる。従来通り、吊り天井600は、主天井からワイヤ(図示せず)で吊り下げられて規則的間隔のセルパターンを形成する金属チャネル格子602を含む。各セルは、例えば上方の領域を修理又は調査する際にアクセスできるように取り外すことができる軽量天井タイル又はパネル604で塞ぐことができる。好ましい実施形態では、天井タイル604が、グリッド又は他のタイル604を妨げることなく取り付け又は取り外しを容易に行えるドロップインタイルである。通常、各天井タイル604は、グリッドの「セルサイズ」に従うサイズ及び形状を有する。例えば、米国では、このセルサイズが、典型的には約2フィート×2フィートの正方形又は約2フィート×4フィートの長方形である。別の例として、ヨーロッパでは、このセルサイズが、典型的には約600ミリメートル(mm)×600mmの正方形である。さらに別の例として、アジアでは、このセルサイズが、典型的には約625ミリメートル(mm)×625mmの正方形である。
【0026】
実施形態では、ハウジング102を、天井タイル604のうちの少なくとも1つの代わりに吊り天井600内に取り付けられるサイズ及び形状とすることができる。例えば、ハウジング102は、吊り天井600を形成するグリッドのセルサイズと実質的に同等の長さ寸法及び幅寸法を有することができる。1つの実施形態では、ハウジング102が、標準的な米国の吊り天井の天井タイル604のうちのいずれか1つに取って代われるように、約2フィート×2フィートの寸法の(例えば、各側部レール112が約2フィートの長さの)実質的に正方形である。他の実施形態では、ハウジング102を、天井タイル604のうちのいずれか2つ又は3つ以上に取って代わるサイズ及び形状とすることができる。例えば、ハウジング102は、正方形を形成する4つの隣接するいずれかの天井タイル604群に取って代わるように、約4フィート×4フィートの正方形として成形することができる。他の実施形態では、ハウジング102を、標準的なヨーロッパの吊り天井(例えば、600mm×600mm)、又は標準的なアジアの吊り天井(例えば、625mm×625mm)に適合するサイズとすることができる。吊り天井600の天井タイル604の代わりにマイクアレイアセンブリ100を取り付けることにより、アセンブリ100は、(例えば、無限バッフリング(infinite baffling)などの)スピーカキャビネット内にスピーカを取り付けたものと同様の音響的利点を得ることができる。
【0027】
いくつかの例では、ハウジング102よりも大きなセルサイズを有する吊り天井に対応するようにハウジング102を改造し又は適合させるアダプタフレーム(図示せず)を提供することができる。例えば、このアダプタフレームは、所定のセルサイズに適合するようにハウジング102の寸法を拡張した幅を有する、ハウジング102の周辺部回りに結合できるアルミニウムフレームとすることができる。このような例では、標準的な米国の天井のサイズであるハウジング102を、例えば標準的なアジアの天井に一致するように適合させることができる。他の例では、ハウジング102を、最小セルサイズ(例えば、600mm×600mmの正方形など)に適合するように設計し、必要に応じて、様々な異なるセルサイズ(例えば、2フィート×2フィートの正方形、625mm×625mmの正方形など)に適合するようにハウジング102の寸法を拡張できる複数のサイズ又は幅のアダプタフレームを提供することもできる。
【0028】
実施形態では、ハウジング102の全部又は一部を、軽量で頑丈なアルミニウムで、或いは格子状の吊り天井600によってマイクアレイアセンブリ100を支持できるほど軽量であって、ハウジング102に取り付けられたマイクアレイ104をハウジング102が支持できるほど頑丈な他のいずれかの材料で形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも背面パネル110が、(例えば、Plascore(登録商標)社によって製造された)ハニカムコアを含む平坦な航空宇宙水準のアルミ板を含む。さらに、いくつかの実施形態によれば、ハウジング102のコンポーネント(例えば、側部レール112、背部110、スクリーン108、マイクアレイ104など)を、組み立ての際に互いに容易に適合し、分解の際に容易に解体されるように構成することができる。この特徴は、例えばスクリーン108を異なる材料(例えば、ファブリック)又は(例えば、天井タイル604の色に適合するように)異なる色に交換し、上述したようにアダプタフレームを追加又は除去してハウジング102全体のサイズを変更し、側部レール112を吊り天井600内の金属チャネル602の色又は材料に適合するように交換し、(例えば、より多くの又はより少ないマイク106を含むアレイを提供するために)アレイマイク104を交換又は調整することなどを含むエンドユーザの特定のニーズに従ってハウジング102のカスタマイズを可能にすることができる。
【0029】
また
図7及び
図8を参照すると、実施形態では、ハウジング102を、例えば吊り天井ではない天井700を有する環境に対応する別の取り付けオプションを提供するように構成することができる。いくつかの例では、マイクアレイアセンブリ100が、
図2に示すような後部取り付けプレート101を含むことができる。
図7に示すように、後部取り付けプレート101は、標準的なVESA取り付け穴パターンを用いて、天井700に取り付けられるように構成された取り付けポスト702に結合することができる。
図8に示すように、いくつかの例では、
図2に示すようなハウジング102の背面支持体110に取り付けられたケーブル取り付けフック103に吊り下げ天井ケーブル704を結合することによって、マイクアレイアセンブリ100を天井700に取り付けることができる。さらに他の実施形態では、ハウジング102を、壁取り付けオプションを提供するように、及び/又はステージなどのパフォーマンス領域の正面に配置されるように構成することもできる。
【0030】
次に
図2~
図4を参照すると、マイクアレイアセンブリ100は、背面支持体110に取り付けられた制御ボックス114を含む。
図3及び
図4に示すように、制御ボックス114は、マイクアレイ104に電気的に結合された(本明細書では「オーディオPCB」とも呼ぶ)プリント基板を収容する。例えば、
図3及び
図4に示すように、オーディオPCB116は、背面支持体110の開口部120を通じてマイクアレイ104から垂直に延びる基板対基板用コネクタ118を介してマイクアレイ104に、又は具体的には基板107に結合することができる。実施形態では、本明細書においてさらに詳細に説明するように、オーディオPCB116を、マイクアレイ104によって取り込まれてマイクアレイ104から受け取られたオーディオ信号を(例えば、ハードウェア要素及び/又はソフトウェア要素を介して)処理して対応するオーディオ出力を生成するオーディオプロセッサとして構成することができる。図示のように、制御ボックス114は、オーディオPCB116及び/又は制御ボックス114内の他のコンポーネントへのアクセスを可能にする取り外し式カバー122を含むことができる。
【0031】
実施形態では、マイクアレイアセンブリ100が、制御ボックス114に機械的に結合されて、オーディオPCB116にケーブル(図示せず)を電気的に結合するように構成された外部ポート124を含む。このケーブルは、ポート124を通じて伝えられる情報のタイプに応じて、データケーブル、オーディオケーブル及び/又は電源ケーブルとすることができる。例えば、外部ポート124は、ケーブルが結合されると、外部制御装置(例えば、オーディオミキサ、録音機/増幅器、会議プロセッサ、ブリッジなど)から制御信号を受け取ってオーディオPCB116に供給するように構成することができる。さらに、ポート124は、オーディオPCB116においてマイクアレイ104から受け取られたオーディオ信号を外部制御装置に送信又は出力するように構成することもできる。いくつかの例では、外部ポート124を、外部電源(例えば、バッテリ、壁コンセントなど)からオーディオPCB116及び/又はマイクアレイ104に電力を供給するように構成することができる。好ましい実施形態では、外部ポート124が、イーサネット(登録商標)ケーブル(例えば、CAT5、CAT6など)を受け取ってマイクアレイアセンブリ100に電力接続、オーディオ接続及び制御接続をもたらすように構成されたイーサネット(登録商標)ポートである。他の実施形態では、外部ポート124が複数のポートを含むことができ、及び/又は、例えばユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、mini-USBポート、PS/2ポート、HDMI(登録商標)ポート、シリアルポート、VGAポートなどを含む他のいずれかのタイプのデータポート、オーディオポート及び/又は電力ポートを含むことができる。
【0032】
次に
図1及び
図3を参照すると、マイクアレイアセンブリ100は、マイクアレイ104の動作モード又は動作状態(例えば、電源オン、電源オフ、消音、オーディオ検出など)を視覚的に示すインジケータ126をさらに含む。
図1に示すように、インジケータ126は、ハウジング102の前面の外側に見えて会議環境内の人間の話者又はその他にマイクアレイ104の動作モードを外部的に示すように、スクリーン108に組み込むことができる。実施形態では、(本明細書では「外部インジケータ」とも呼ぶ)インジケータ126が、アレイマイクアセンブリ100の動作モード(例えば、電源オン又は電源オフ)に従ってオン又はオフになる、例えば発光ダイオード(LED)などの少なくとも1つの光源(図示せず)を含む。いくつかの実施形態では、光インジケータ126が、第1の光源をオンにしてマイクアレイアセンブリ100の第1の動作モード(例えば、電源オン)を示し、第2の光源をオンにして第2の動作モード(例えば、オーディオ検出)を示し、場合によっては両光源を同時にオンにすることもできる。好ましい実施形態では、
図3に示すように、インジケータ126が、(本明細書では、「LED PCB」とも呼ぶ)PCB126aに取り付けられた少なくとも1つのLED(図示せず)と、LEDからの光をスクリーン108の外部に光学的に導くように構成された導光体126bとを含む。LEDは、
図3及び
図5に示すように、マイクPCB107上でLED PCB126aをコネクタ129に接続するケーブル128を介してマイクアレイ104に電気的に結合することができる。
【0033】
ここで
図3及び
図5を参照すると、実施形態では、マイクアレイアセンブリ100の基板107が、中央PCB107aと、マイク106を取り付けるための利用可能空間を増やすように中央基板の周囲に位置する1又は2以上の周辺PCB107bとを含むことができる。例えば、以下でさらに詳細に説明するように、マイク106の一部は中央PCB107aに取り付けることができ、マイク106の残りは周辺PCB107bに取り付けることができる。各周辺PCB107bは、1又は2以上の基板対基板用コネクタ130を用いて中央PCB107aに結合することができる。好ましい実施形態では、
図4に示すように、マイク106が全て基板107の片面に取り付けられる。
【0034】
1又は2以上の周辺PCB107bの数、サイズ及び形状は、例えば中央PCB107aの辺132の数、サイズ及び/又は形状、並びに基板107の全体的な形状に応じて様々とすることができる。例えば、図示の実施形態では、中央PCB107aが、7つの均一な辺132を有する多角形であり、基板107は、内端部134がそれぞれ各辺132に結合された7つの周辺PCB107bを含む。図示のように、内端部134は、7つの辺132のうちのいずれか1つに適合するような均一なサイズの平面である。各周辺PCB107bは、内端部134の反対側の外端部136をさらに含むことができる。図示の実施形態では、基板107が円形として成形され、従って各周辺PCB107bの外端部136は湾曲している。
【0035】
他の実施形態では、中央PCB107aが、例えば他のタイプの多角形(例えば、正方形、長方形、三角形、五角形など)、円形又は長円形を含む他の全体的形状を有することができる。このような場合、周辺PCB107bの内端部134は、中央PCB107aの辺132のサイズ及び形状に従うサイズ及び形状とすることができる。例えば、1つの実施形態では、中央PCB107aが円形を有することによって各辺132が湾曲し、従って周辺PCB107bの内端部134も湾曲することができる。同様に、他の実施形態では、基板107が、例えば長円形又は多角形を含む他の全体的形状を有することができ、周辺PCB107bの外端部136が、これに応じた形状を有することができる。さらに他の実施形態では、基板107が、円形の中央PCB107aを取り囲むドーナツ形の周辺PCB107b、又は全てのマイク変換器106を含む単一の連続基板107を含むことができる。
【0036】
図5に示すように、実施形態では、複数のマイク106が、中央PCB107aの中心点に位置する中心マイク106aと、中心マイク106aを取り囲むフラクタル構成又は自己相似構成で配置されて中央PCB107a又は周辺PCB107bのいずれかに位置する残りの一連のマイク106bとを含む。アレイマイク104は、少なくとも部分的にマイク106のフラクタル状の配置に起因して、音声周波数範囲にわたる改善された指向性感度、及び規定のステアリング角範囲にわたる最大のメインローブ対サイドローブ比を達成することができる。この結果、マイクアレイ104は、単一方向から到来する信号をより正確に「リスン」し、及び/又は望ましくないノイズ及び/又は干渉音を除去して、隣接する人間の話者をより効果的に区別することができる。また、マイク構成のフラクタル性により、さらなるマイクを追加し、及び/又は大型サイズのマイクアレイ104を形成することによって、アレイ104の指向性をさらに広い周波数範囲(例えば、さらに低い及び/又は高い周波数)に容易に拡張することができる。
【0037】
具体的に言えば、実施形態では、マイク106を、(例えば、グレーティングローブに起因する)望ましくない収音パターンを避けて広範囲の可聴周波数に対応するように、様々なサイズの同心状の円形リング状に配置することができる。本明細書で使用する「リング」という用語は、あらゆるタイプの円形構成(例えば、完全な円、完全に近い円、それほど完全でない円など)、及びあらゆるタイプの長円形構成又はその他の楕円ループを含むことができる。
図5に示すように、このリングは、中心マイク106a又は基板107の中心点からの様々な半径方向距離に位置して徐々に低くなる可聴周波数を処理できるネスト構成を形成することができ、最も外側のリングが、所定の動作範囲内の最も低い周波数で最適に動作するように構成される。調和的ネスト化技術を使用すると、同心リングを用いて動作周波数範囲内の特定の周波数帯をカバーすることができる。
【0038】
実施形態では、各リングが、残りのマイク106bの異なるサブセットを含み、マイク106bの各サブセットを、対応するリングの周辺部に沿って所定の間隔で位置付けることができる。所与のリング内の隣接するマイク106b間の所定の距離又は間隔は、リングのサイズ又は直径、そのリングに割り当てられたサブセットに含まれるマイク106bの数、及び/又はリング内のマイク106bの所望の感度又は全体的音圧に依存することができる。(例えば、リングのネスト化に起因して)マイク106の数及びリングのマイク密度が高まると、グレーティングローブの除去が促されることによって、予め設定した範囲内の全ての周波数にわたって周波数応答がほぼ一定の改善されたビーム幅をもたらすことができる。
【0039】
理解されるように、
図5にはアレイマイク104の例示的な実施形態しか示しておらず、本明細書に開示した原理によるマイク106の他の構成も検討される。例えば、いくつかの実施形態では、中心点の周囲に同心リング状に複数のマイク106を配置するが、中心点にマイクを配置しない(例えば、中心マイク106aが存在しない)こともできる。さらに他の実施形態では、マイク106の一部のみを同心リング状に配置し、マイク106の残り部分を離散的なリングの外側又は間の様々な地点に、基板107上のランダムな位置に、或いは他のいずれかの好適な配置で位置付けることができる。
【0040】
図9に、いくつかの実施形態による、アレイマイクにおいて見出すことができる例示的なマイク構成900を図形的に示す。マイク構成900は、アレイ104の最も内側のリングに含まれるマイク106bの数を除き、マイクアレイ104に含まれるマイク106の自己相似構成と実質的に同様とすることができる。図示のように、マイク構成900は、構成900の中心に位置する1つのマイク902(例えば、中心マイク106a)と、7つの同心リング910~922の形で配置された複数のマイク906(例えば、残りの一連のマイク106b)とを含む。説明及び図を簡単にするために、マイク構成900のリングを形成する各一群のマイク906を通る円を描いている。
【0041】
マイク構成900は、マイク906を収容するために、中央PCB107a及び複数の周辺PCB107bと同様の複数のプリント基板(図示せず)上に実装することができる。例えば、同時に
図5も参照すると、マイク906は、(i)中央PCB107aに実装されて中心マイク906を取り囲む第1のリング910を形成するマイク902の第1のサブセット、(ii)中央PCB107aに実装されて第1のリング910を取り囲む第2のリング910を形成するマイク906の第2のサブセット、(iii)中央PCB107aに実装されて第2のリング912を取り囲む第3のリング914を形成するマイク906の第3のサブセット、(iv)中央PCB107aに実装されて第3のリング914を取り囲む第4のリング916を形成するマイク906の第4のサブセット、(v)周辺PCB107bに実装されて第4のリング916を取り囲む第5のリング918を形成するマイク906の第5のサブセット、(vi)周辺PCB107bに実装されて第5のリング918を取り囲む第6のリング920を形成するマイク906の第6のサブセット、及び(vii)周辺PCB107bの縁端部付近に実装されて第6のリング920を取り囲む第7のリング922を形成するマイク906の第7のサブセットを含むことができる。
【0042】
実施形態では、マイクアレイに含まれるリング910~922の数、各リングの直径、及び/又は隣接するリング間の半径方向距離が、アレイマイクが動作するように構成された所望の周波数範囲、及び各リングがこの範囲の何パーセントをカバーするかに応じて変化することができる。実施形態では、マイクアレイ内の各リングの直径が、そのリング内のマイクのサブセットが(例えば、グレーティングローブに起因する)望ましくない信号を拾わずに動作できる最低周波数を定める。従って、最も外側のリング922の直径がマイクアレイの動作周波数範囲の下端を決定することができ、残りのリングの直径は、残りの周波数範囲をさらに分割することによって決定することができる。例えば、限定するわけではないが、いくつかの実施形態では、マイクアレイを、少なくとも100ヘルツ(Hz)~少なくとも10キロヘルツ(KHz)の動作周波数範囲をカバーして、各リングが同じ範囲内の異なるオクターブ又は他の周波数帯をカバーし、又はそれに寄与するように構成することができる。さらなる例として、このような実施形態では、最も外側のリング922を、最も低い周波数帯(例えば、100Hz)をカバーするように構成し、残りのリング910~920が、単独で又は1又は2以上の他のリングとの組み合わせで、残りのオクターブ又は帯域(例えば、200Hz、400Hz、800Hz、1600Hz、3200Hz及び/又は6400Hzから開始する周波数帯)のカバーに寄与するようにすることもできる。
【0043】
理解されるように、マイクアレイの極性応答には、所望のビーム角以外の角度における望ましくない副次的収音感度の結果であるアレイビームのメインローブに加えてサイドローブが存在することができる。サイドローブは、アレイビームが誘導されると大きさ及び周波数感度が変化し得るので、一般にメインローブに比べてサイドローブが非常に小さなビームは、ビームが異なる方向に誘導されるとサイドローブ応答が非常に大きくなる可能性がある。場合によっては、一定周波数においてサイドローブ感度がメインローブ感度に匹敵し得ることもある。しかしながら、実施形態では、マイクアレイ内により多くのマイク906を含めることによって所与のビームのメインローブを強化し、これによってメインローブ感度に対するサイドローブ感度の比率を低下させることができる。
【0044】
実施形態では、マイクアレイの指向性を最適化するために、アレイの中心(例えば、中心マイク902)を通る中心軸930に対してリング910~922を少なくともわずかに回転させることができる。このような場合、マイクアレイは、メインローブに対するマイク感度を抑制することにより、メインローブ応答を最大化してサイドローブ応答を低減するように構成することができる。いくつかの実施形態では、いずれか2つのマイク906のみが軸方向に整列するように、例えば各リングを異なる度数だけ回転させることによってリング910~922を互いに回転オフセットさせることができる。例えば、マイクの数が少ないマイクアレイでは、この回転オフセットが、2つよりも多くのマイクが整列した時に生じることがある望ましくない音響信号を拾うのを抑えるために有益となり得る。例えばマイクの数が多いアレイなどの他の実施形態では、回転オフセットを行う場合でも任意性を高く実装することができ、及び/又は他の方法を利用してマイクアレイの全体的な指向性を最適化することもできる。
【0045】
再び
図5を参照すると、実施形態では、製造及び組み立てを合理化するように周辺PCB107bの各々を均一に設計することができる。例えば、
図5に示すように、各周辺PCB107bは均一な形状を有することができ、各基板107b上の同じ位置にマイク106bを配置することができる。このようにすると、周辺PCB107bを中央PCB107aに電気的に結合するために、周辺PCB107bのうちのいずれか1つをコネクタ130のうちのいずれか1つに結合することができる。例えば、図示の実施形態では、マイクPCB107が7つの周辺PCB107bを含み、周辺PCB107bの各々が、同様の位置に8つのマイクを含むことができる。残りの64個のマイクは中央PCB107aに含まれて、マイクアレイ104は、全部で120個のマイクアレイを含むようになる。
【0046】
実施形態では、マイク106の総数、及び/又は中央PCB107a及び/又は各周辺PCB107b上のマイク106bの数が、例えば調和的ネストの構成、予め設定されるアレイ104の動作周波数範囲、マイクアレイ104の全体的サイズ、及びその他の検討事項に応じて変化することができる。例えば、
図9では、リング910に含まれるマイク906の数が、
図5のマイクアレイ104における対応するリングよりも7つ少ないので、マイク構成900は、具体的には1つの中心マイクが112個のマイク906によって取り囲まれた113個のマイク906しか含まない。いくつかの実施形態では、周波数カバレッジ又はマイク感度の損失が皆無かそれに近い状態で、これらの7つのマイクを第1の又は最も内側のリング910から取り除くことができる。
【0047】
実施形態では、リング910~922の各々に含まれるマイク906の数を、マイク構成900内で自己相似パターン又は繰り返しパターンを形成するように選択することができる。これにより、より広い可聴周波数をカバーするために1又は2以上のリングを追加することによってマイク構成900を容易に拡張し、或いはより狭い周波数をカバーするために1又は2以上のリングを除去することによってマイク構成900を容易に縮小することができる。例えば、
図5及び
図9に示す実施形態では、7つのリング910~922の各々に7個、14個又は21個のマイク106b/906(例えば、7の倍数)を配置することによってフラクタル構成又は自己相似構成が形成される。他の実施形態は、例えば1よりも大きな別の整数の倍数、又はアレイマイク104の製造を単純化にすることができる他のいずれかのパターンなどの、他の繰り返し可能なマイク106b/906の配置を含むことができる。例えば、限定するわけではないが、1つの実施形態では、内側リング910~920の各々におけるマイク906の数を2つの数字(例えば、8と16)間で交互にできる一方で、最も外側のリング922は、あらゆる数(例えば、20)のマイク906を含むことができる。
【0048】
理解されるように、他の実施形態では、例えば各リング間の所望の距離、基板107の全体的サイズ、アレイ104におけるマイク106の総数、アレイ104がカバーする予め設定された可聴周波数、並びにその他の性能関連及び/又は製造関連の検討事項に応じて、マイク106/906を、例えば長円形、正方形、長方形、三角形、五角形又はその他の多角形などの他の構成形状で配置することも、マイク106/906のサブセット又はリング数をさらに多く又は少なくすることも、及び/又はリング910~922の各々に異なる数のマイク106/906を有することもできる。
【0049】
図10は、アレイマイクシステム1030及び制御装置1032を含む例示的なオーディオシステム1000のブロック図である。アレイマイクシステム1030は、
図1~
図5に示すアレイマイクアセンブリ100と同様の又はその他の構成で構成することができる。例えば、アレイマイクシステム1030は、アレイマイク104と同様のアレイマイク1034を含むことができる。アレイマイクシステム1030は、録音機、オーディオミキサ、増幅器、及び/又はマイクアレイ1034が取り込んだオーディオ信号を処理するその他のコンポーネントとして構成された、アレイマイク1034からのオーディオ信号を受け取るオーディオコンポーネント1036を含むこともできる。このような実施形態では、オーディオコンポーネント1036を、例えばオーディオPCB116などのプリント基板(図示せず)上に少なくとも部分的に含めることができる。他の実施形態では、オーディオコンポーネント1036が、アレイマイクシステム1030とは無関係にオーディオシステム1000内に位置し、(例えば、制御装置1032内の)アレイマイクシステム1030がオーディオコンポーネント1036と有線又は無線で通信することができる。アレイマイクシステム1030は、アレイマイクシステム1030の正面外部にマイクアレイ1034の動作モードを視覚的に示す、インジケータ126と同様のインジケータ1038をさらに含むことができる。
【0050】
制御装置1032は、アレイマイクシステム1030と有線又は無線で通信して、オーディオコンポーネント1036、マイクアレイ1034及び/又はインジケータ1038を制御することができる。例えば、制御装置1032は、マイクアレイ1034及び/又はインジケータ1038を作動又は停止させるコントロールを含むことができる。制御装置1032上のコントロールは、指向性、利得、ノイズ抑制、収音パターン、ミューティング、周波数応答などの、マイクアレイ1034のパラメータの調整をさらに可能にすることができる。実施形態では、制御装置1032を、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、専用装置、及び/又は他のタイプの電子装置とすることができる。他の実施形態では、制御装置1032が、1又は2以上のスイッチ、調光ノブ、及びボタンなどを含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、アレイマイクシステム1030が、(RF信号を送信及び/又は受信することによって)システム1030及び制御装置1032及び/又はその他のコンピュータ装置間の無線通信を容易にする無線通信装置1040(例えば、無線周波数(RF)送信機及び/又は受信機)を含む。例えば、この無線通信は、アナログ又はデジタル変調信号の形を取ることができ、マイクアレイ1034が取り込んだオーディオ信号、及び/又は制御装置1032から受け取られた制御信号を含むことができる。いくつかの実施形態では、無線通信装置1040が、リモートコンピュータ装置及び/又はサーバとの通信を介したウェブ会議及びその他の同様の機能を容易にする組み込みウェブサーバを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、アレイマイクシステム1030が、外部ポート124と同様の外部ポート(図示せず)を含み、システム1030が、ポート124に結合されたケーブル1042を介して制御装置1032と有線通信する。このような1つの実施形態では、オーディオシステム1000が、やはりケーブル1042を介してアレイマイクシステム1030に結合された電源1044をさらに含み、ケーブル1042が、オーディオシステム1000の様々なコンポーネント間に電力信号、制御信号及び/又はオーディオ信号を運ぶようになる。好ましい実施形態では、ケーブル1042がイーサネット(登録商標)ケーブル(例えば、CAT5、CAT6など)である。他の実施形態では、電源1044が、別個の電源ケーブルを介してアレイマイクシステム1030に結合される。
【0053】
図示のように、インジケータ1038は、第1の光源1046及び第2の光源1048を含むことができる。第1の光源1046は、光をオン又はオフにすることによってマイクアレイ1034の第1の動作モード又は動作状態を示すように構成することができ、同様に第2の光源1048は、マイクアレイ1034の第2の動作モードを示すように構成することができる。例えば、第1の光源1046は、アレイマイクシステム1030が電力を有しているか否かを示す(例えば、システム1030がオンになった場合に光1046がオンになる)ことができ、第2の光源1046は、マイクアレイ1034がミュートされたか否かを示す(例えば、システム1030がミュート設定に設定された場合に光1046がオンになる)ことができる。他の例では、光源1047、1048の少なくとも一方が、(例えば、ウェブ会議中に)外部音源から音声が受け取られているか否かを示すことができる。好ましい実施形態では、第1の光源1046が、第1の光の色を有する第1のLEDであり、第2の光源1048が、第1の光の色とは異なる第2の光の色(例えば、青色、緑色、赤色、白色など)を有する第2のLEDである。インジケータ1038は、制御装置1032及び/又はオーディオコンポーネント1036と電子通信を行い、制御装置1032及び/又はオーディオコンポーネント1036は、例えばインジケータ1038がどの動作モードを示すことができるか、及び各動作モードにどの色、LED又はその他の表示形態を割り当てるかを決定するようにインジケータ1038を制御ことができる。
【0054】
実施形態では、オーディオコンポーネント1036を、(例えば、コンピュータプログラミング命令を介して)指向性、利得、ノイズ抑制、収音パターン、ミューティング、周波数応答などのマイクアレイ1034のパラメータの調整を可能にするように構成することができる。さらに、オーディオコンポーネント1036は、マイクアレイ1034が取り込んだオーディオ信号の混合を可能にする(例えば、オーディオ信号を組み合わせ、ルーティングし、変更し、及び/又は別様に操作する)オーディオミキサ(図示せず)を含むことができる。オーディオミキサは、マイクアレイ1034内の各マイクから受け取られたオーディオ信号を継続的にモニタし、所与の人間の話者についてマイクアレイ1034が形成する適切な(例えば、最良の)ローブを自動的に選択し、選択されたローブを人間の話者に向けて直接自動的に位置付け又は誘導し、他の音源からの信号を抑制する一方で選択されたローブを強調したオーディオ信号を出力することができる。
【0055】
実施形態では、(例えば、会議室環境において)数人の人間の話者が同時に発話する可能性に対応するために、マイクアレイ1034を、例えばマイクアレイ1034の周囲に最大8つのいずれかの角度のローブを同時に形成して、テーブルにおける最大8つの着座位置をエミュレートするように構成することができる。マイクアレイ1034は、そのマイク構成(例えば、マイク構成900)に起因して、環境内の望ましくないオーディオ信号(例えば、ノイズ)をあまり拾わないように(例えば、
図11に示すような)比較的狭いローブを形成することができる。これらのローブは、アレイ1034の周囲360度のいずれかの地点に存在する人間の話者の収音カバレッジを提供するように誘導することができる。例えば、オーディオコンポーネント1036は、(例えば、コンピュータプログラム命令を用いて)方位角、仰角、及び距離又は半径をカバーする3次元空間内のいずれかの地点にローブを誘導又は調整できるように構成することができる。実施形態では、アレイ1034を物理的に動かすことなくマイクアレイ1034のビームパターンを電子的に誘導することができる。
【0056】
さらに、オーディオミキサは、それぞれがマイクアレイ1034の8つのローブのうちのそれぞれ1つに対応する、マイクアレイ1034内の全てのマイクから受け取った入力を組み合わせることによって生成される最大8つの個別にルーティングされる出力又はチャネル(図示せず)を同時に提供するように構成することができる。オーディオミキサは、他の全てのオーディオ信号を取り込む第9の自動混合出力を提供することもできる。理解されるように、マイクアレイ1034は、あらゆる数のローブを有するように構成することができる。
【0057】
実施形態によれば、マイクアレイ1034のローブは、環境内で人間の話者が移動した時にオーディオコンポーネント1036がこれらを効果的に追跡してその音声を取り込めるようにする調整可能なビーム幅を有するように構成することができる。いくつかの例では、マイクアレイシステム1030及び/又は制御装置1032が、手動ビーム幅調整を可能にするユーザコントロール(図示せず)を含むことができる。例えば、このユーザコントロールは、通常のビーム幅、広いビーム幅及び狭いビーム幅という3つの設定間で調整を行うことができるノブ、スライダ又はその他の手動コントロールとすることができる。他の例では、オーディオコンポーネント1036及び/又は制御装置1032上で動作するソフトウェアを用いてビーム幅コントロールを構成することができる。
【0058】
例えば、非常に広い会議室をカバーするように複数のマイクアレイシステム1030が含まれる環境では、オーディオシステム1030が、各マイクアレイシステム1030に含まれるオーディオコンポーネント1036からの出力を受け取り、受け取ったオーディオ信号に基づいて混合出力を出力するオーディオミキサを含むことができる。
【0059】
オーディオコンポーネント1036は、オーディオミキサと有線又は無線通信を行うオーディオ増幅器/レコーダ(図示せず)を含むこともできる。オーディオ増幅器/レコーダは、オーディオミキサから混合オーディオ信号を受け取り、この混合オーディオ信号を増幅してスピーカ、ヘッドホン、生放送ラジオ又はTVフィードなどに出力し、及び/又は受け取った信号をフラッシュメモリ、ハードドライブ、半導体ドライブ、テープ、光学媒体などの媒体に記録するコンポーネントとすることができる。例えば、オーディオ増幅器/レコーダは、環境600内に位置するスピーカを通じて聴衆に、又は有線又は無線接続を介して遠隔環境に音を広めることができる。
【0060】
図10に示すコンポーネント間の接続は、有線及び/又は無線通信リンクを介した制御信号、オーディオ信号及び/又は他の信号の潜在的フローを表すように意図される。このような信号は、デジタル及び/又はアナログ形式とすることができる。
【0061】
実施形態では、マイクアレイ1034が、中心マイク(例えば、マイク902)を取り囲む同心状のネスト化されたマイクのリング(例えば、リング910~922)を含む自己相似構成又は繰り返し構成で配置された複数のMEMSマイク(例えば、マイク906)を含む。MEMSマイクは、単一のマイクアレイ内に数多くのマイクを近接近させて配置できる非常に低コストかつ非常に小型サイズのものとすることができる。例えば、実施形態では、マイクアレイ1034が113個~120個のマイクを含み、(例えば、2フィート×2フィートの天井タイルの代わりに適合するように)2フィート未満の直径を有する。さらに、マイクアレイ1034内でMEMSマイクを使用することにより、オーディオコンポーネント1036が必要とするプログラミング構成及びその他のソフトウェアベース構成が少なくて済むようになる。具体的には、MEMSマイクがデジタル形式のオーディオ信号を生成するので、オーディオコンポーネント1036がアナログデジタル変換/変調技術を含まなくてもよく、これによってマイクが取り込んだオーディオ信号を混合するのに必要な処理の量が減少する。また、MEMSマイクは良好な圧力変換器ではあるが、機械式変換器としては不十分であるため、マイクアレイ1034は、本質的にさらに多くの振動ノイズを除去することができ、他のマイク技術に比べて良好な無線周波耐性を有する。
【0062】
図11は、実施形態によるマイク極性パターン例1100の図である。極性パターン1100は、所与のマイクアレイ(例えば、マイクアレイ1034/104、又はマイク構成900を有するマイクアレイ)の指向性を表し、或いは具体的には、マイクアレイの中心軸の周囲の異なる角度で到来する音をマイクアレイどれほど感知するかを示す。具体的に言えば、極性パターン1100は、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz及び8000Hzの各周波数においてアレイ面に対して60度の仰角に誘導されるローブ1102又は指向性ビームを形成するように構成されたマイクアレイの、これらの周波数の各々における極性応答を示す。理解されるように、極座標プロット1100は、選択された周波数における単一のローブ1102の極性応答を示しており、マイクアレイは、それぞれが同等の又は少なくとも実質的に同様の極性応答を有する複数の同時ローブを複数の方向に生成することができる。
【0063】
極性パターン1100によって示すように、1000Hzの周波数では、サイドローブ1104が、メインローブ1102を10デシベル(dB)下回る位置に形成されている。さらに、
図11に示すように、500Hzにおける低周波数応答は、低い指向性を表す広いビーム幅を有するのに対し、1000Hz、2000Hz、4000Hz及び8000Hzにおける各高周波数応答は、高い指向性を表す狭いビーム幅を有する。従って、実施形態では、このマイクアレイが、音声周波数範囲にわたり、所定のステアリング角にわたる高レベルのサイドローブ除去及び最適なメインローブ対サイドローブ比(例えば、10dB)を伴う高い全指向係数(例えば、19dB)をもたらすことができる。
【0064】
図12に、実施形態によるアレイマイクの組み立て方法例1200を示す。このアレイマイクは、
図5に示すアレイマイク104と実質的に類似することができ、及び/又は
図9に示すマイク構成900と実質的に同様の構成で配置された複数のマイクを含むことができる。アレイマイクは、例えばプリント基板、カーボンファイバ基板又は他のいずれかの好適な基板などの基板上に配置することができる。いくつかの実施形態では、基板が、中央基板(例えば、中央PCB107a)と、複数の周辺又は衛星基板(例えば、周辺PCB107b)とを含む。このような場合、方法1200は、例えば基板対基板用コネクタ(例えば、コネクタ130)を用いて周辺基板を中央基板に電気的に結合するステップ1204を含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、方法1200が、ステップ1206において、基板上に配置される各構成に含めるべきマイク(例えば、マイク106b/906)の総数を選択するステップを含む。この構成が複数の同心リングを含む場合、本明細書で説明したように、各リング内のマイクの数は、アレイの所望の周波数範囲、リングに割り当てられる周波数帯、アレイの所望のマイク密度、及びその他の検討事項に基づいて選択することができる。1つの実施形態では、この総数を、1よりも大きな整数の倍数である数字から成る群から選択することができる。例えば、
図5及び
図9に示すリングでは、この整数が7であり、各リングが7個、14個又は21個のマイクを含む。本明細書で説明したように、他のパターン又は配置が各構成のマイクの総数の選択を決定することもできる。
【0066】
図示のように、方法1200は、ステップ1208において、基板上に第1の複数のマイクを第1の構成で配置するステップを含む。方法1200は、ステップ1210において、第1の構成を同心状に取り囲む第2の構成で基板上に第2の複数のマイクを配置するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法1200が、ステップ1212において、第2の構成を同心状に取り囲む第3の構成で基板上に第3の複数のマイクを配置するステップをさらに含むことができる。
【0067】
実施形態では、第1の構成、第2の構成及び/又は第3の構成の各々が、基板の中心点からの異なる半径方向距離に位置する複数の同心リングを含んでネスト化構成を形成する。いくつかの例では、第1の構成が、第2の構成及び第3の構成の少なくとも一方とは異なる数の同心リングを含む。例えば、
図9に示す実施形態では、第1の構成が、少なくとも最も内側のリング910と、第2のリング912と、第3のリング914とを含み、第2の構成が、少なくとも第4のリング916と第5のリング918とを含み、第3の構成が、少なくとも第6のリング920と最も外側のリング922とを含む。これらの各構成では、マイクの配置が、同心リング毎に、そのリングの周辺部に沿って所定の間隔でマイクのサブセットを配置するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の構成が基板の中心点をさらに含み、第1の複数のマイクのうちの少なくとも1つのマイクがこの中心点に位置付けられる。さらに、いくつかの実施形態では、第2の構成に含まれるリングのうちの少なくとも1つのリングを周辺基板上に位置付けることができる。さらに、いくつかの実施形態では、第3の構成を全体的に周辺基板上に位置付けることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、方法1200が、ステップ1214において、第1の構成、第2の構成及び第3の構成のうちの少なくとも1つを、互いに少なくともわずかに回転オフセットしてアレイマイクの全体的な指向性を高めるようにアレイマイクの中心軸(例えば、中心軸930)に対して回転させるステップを含むことができる。方法1200は、ステップ1216において、マイクが取り込んだオーディオ信号を処理するオーディオプロセッサに各マイクを電気的に結合するステップを含むこともできる。
【0069】
実施形態では、第1、第2及び/又は第3の複数のマイクが、予め設定された異なる周波数範囲をカバーするように、又はいくつかの例では、アレイマイクの全体的動作範囲内のオクターブ(例えば、限定するわけではないが、100Hz~10KHz)をカバーするように構成される。実施形態によれば、リングを形成するマイクに割り当てられた最も低い動作周波数によって各同心リングの直径を定めることができる。いくつかの例では、第1、第2及び/又は第3の構成に含まれる同心リングが調和的にネスト化される。好ましい実施形態では、マイクアレイが複数のMEMSマイクを含む。
【0070】
図中のあらゆる処理説明又は処理ブロックは、処理における特定の論理関数又は論理ステップを実行するための1又は2以上の実行可能命令を含むモジュール、セグメント又はコード部分を表すものとして理解すべきであり、当業者であれば理解するように、関連する機能に応じて実質的に同時の又は逆順での実行を含む図示又は説明したものとは異なる順序で機能を実行できる別の実装も本発明の実施形態の範囲に含まれる。
【0071】
本開示は、様々な実施形態の構築方法及び使用方法を技術に従って説明するためのものであり、その真の意図する公正な範囲及び趣旨を限定するものではない。上述の説明は、包括的であることや、又は開示した正確な形に限定されることを意図するものではない。上記の教示に照らして修正例及び変形例が可能である。(単複の)実施形態は、説明する技術の原理及びその実施可能な応用を示すとともに、様々な実施形態の技術、及び想定される特定の用途に適した様々な修正例を当業者が利用できるように選択して説明したものである。このような全ての修正例及び変形例は、これらの権利を公正に、法的に、かつ公平に認める外延に従って解釈した場合、本出願の係属中に補正される可能性もある添付の特許請求の範囲によって定められる実施形態及びその全ての同等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
100 マイクアレイアセンブリ
102 ハウジング
108 通音スクリーン
126 インジケータ