(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ケイ酸リチウムガラスセラミック製の有形物体の強度を増大させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 6/831 20200101AFI20220704BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20220704BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20220704BHJP
C03C 3/112 20060101ALI20220704BHJP
C03C 3/115 20060101ALI20220704BHJP
C03C 3/118 20060101ALI20220704BHJP
C03C 17/22 20060101ALI20220704BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A61K6/831
C03B32/02
C03C3/097
C03C3/112
C03C3/115
C03C3/118
C03C17/22
C03C21/00 101
(21)【出願番号】P 2017560970
(86)(22)【出願日】2016-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2016061414
(87)【国際公開番号】W WO2016188897
(87)【国際公開日】2016-12-01
【審査請求日】2018-07-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】102015108169.5
(32)【優先日】2015-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】504013395
【氏名又は名称】デグデント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フォルクル、ローター
(72)【発明者】
【氏名】フェチャー、ステファン
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】前田 佳与子
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0104655(US,A1)
【文献】Journal of Biomedical Materials Research.Part A.,2008年,Vol.87,No.3,p.582-587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K6/00-6/90
CA(STN)、Biosis(STN)、Medline(STN)、Embase(STN)
JSTplus(JDream III)、JMEDplus(JDream III)、JST7580(JDream III)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用物
品の形状を有するケイ酸リチウムガラスセラミック製の歯科用物品のための有形物体
(20)の強度を増大させる方法であり、ここで、前記歯科用物品のための有形物体
(20)は所望の最終的な幾何形状を有し、前記歯科用物品のための有形物体
(20)の表面(22)の美観に影響する材料を施用された後、前記歯科用物品のための有形物体
(20)に熱処理を施して、コーティングを形成し、
前記材料を、前記歯科用物品のための有形物体
(20)の前記表面(22)にある少なくとも1つの領域(32、33、34)を除いた表面に施用し、前記熱処理を実施して、この後、直径のより大きなアルカリイオンによるリチウムイオンの置きかえによって表面圧縮応力を発生させ、前記コーティングによって被覆されていない少なくとも前記領域を、直径のより大きなイオンを伴う1種以上のアルカリ金属の塩の溶融物もしくはペーストまたはこの塩を含有する溶融物もしくはペーストによって被覆し、前記歯科用物品のための有形物体
(20)を、t≧5分の時間tにわたってT≧300℃の温度Tで前記溶融物またはペーストと接触させておき、次いで、前記溶融物またはペーストを前記歯科用物品のための有形物体
(20)から除去することを特徴とする、方法であって、
引張応力にさらされる少なくともいくつかの領域(32、33、34)において、前記歯科用物品のための有形物体(20)が、前記材料の施用および後続する熱処理によって形成されるコーティングが存在せず、
前記歯科用物品のための有形物体(20)または前記歯科用物品のための有形物体
(20)が製造されるブランクを、重量百分率で以下の成分:
・ SiO
2 50~80、
・核形成剤 0.5~11、
・ Al
2O
3 0~10、
・ Li
2O 10~25、
・ K
2O 0~13、
・ Na
2O 0~1、
・ ZrO
2 0~20、
・ CeO
2 0~10、
・ Tb
4O
7 0~8、
を含有するガラス溶融物から調製することを特徴とする、
方法。
【請求項2】
イオン交換中の前記歯科用物品のための有形物体(20)が、前記溶融物またはペーストによって完全に被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
小分けにした量の塩を前記溶融物のために使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペーストを、前記材料によって被覆されていない、前記歯科用物品のための有形物体(20)の少なくとも前記領域(32、33、34)に施用することを特徴とする、請求項1~3何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上のアルカリ金属からの前記小分けにした量としての前記塩から、プレス加工または圧縮によって塩物体を調製すること、および、前記塩物体を前記歯科用物品のための有形物体
(20)上に設置するか、または前記歯科用物品のための有形物体
(20)を前記塩物体上に直接もしくは間接的に設置し、次いで前記塩物体を溶融させることを特徴とする、請求項1~4何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記歯科用物品のための有形物体(20)を、複数の孔を有する入れ物の中に設置すること、および、その後に、
・ 前記歯科用物品のための有形物体
(20)が入った前記入れ物を、前記溶融物中に浸するか、または
・ 前記歯科用物品のための有形物体
(20)が入った前記入れ物を、前記塩中に導入し、次いで前記塩を溶融させるか、または
・ 前記歯科用物品のための有形物体
(20)が入った前記入れ物を、前記塩または前記塩物体上に配置し、前記塩を溶融させ、同時に、形成しつつある前記溶融物中に前記歯科用物品のための有形物体
(20)が浸漬されることを特徴とする、請求項1~5何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記歯科用物品のための有形物体(20)を、前記小分けにした量の塩を収容した耐熱性ホイルによって包み込むこと、および、次いで前記塩を溶融させることを特徴とする、請求項1~6何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記小分けにした塩が、除去可能な入れ物の中に入れた状態で利用可能にされていることを特徴とする、請求項1~7何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
イオン交換を可能にする前記アルカリ金属塩に、リン酸塩を添加して、リチウムイオンを結合させることを特徴とする、請求項1~8何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
Na、K、Csおよび/またはRbイオンをアルカリ金属イオンとして使用して、前記表面圧縮応力を発生させることを特徴とする、請求項1~9何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記歯科用物品のための有形物体(20)を、カリウムイオンを含有する溶融物またはナトリウムイオンを含有する溶融物または、カリウムイオンとナトリウムイオンとの混合物を含有する溶融物中でアニーリングすることを特徴とする、請求項1~10何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
350℃≦T≦600℃の温度Tにおいて、0.5時間≦t≦10時間tにわたって、前記歯科用物品のための有形物体(20)をアニーリングすることを特徴とする、請求項1~11何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記歯科用物品のための有形物体(20)を、出発成分として少なくとも、SiO
2、Al
2O
3、Li
2O、K
2O、少なくとも1種の核形成剤および少なくとも1種の安定剤を含有するガラス溶融物から調製することを特徴とする、請求項1~12何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ガラス溶融物が、重量百分率で出発成分として以下:
SiO
2 58.1±2.0
P
2O
5 5.0±1.5
Al
2O
3 4.0±2.5
Li
2O 16.5±4.0
K
2O 2.0±0.2
ZrO
2 10.0±0.5
CeO
2 0~3、
Tb
4O
7 0~3、
Na
2O 0~0.5、
を含有することを特徴とする、少なくとも請求項13に記載の方法。
【請求項15】
冷却の途中または室温への冷却後に前記ガラス溶融物から前記ブランクを形成し、次いで前記ブランクに、温度T
W1において時間t
W1にわたって少なくとも1回の第1の熱処理W1を施し、このとき、620℃≦T
W1≦800℃であり、および/または1分≦t
W1≦200分であることを特徴とする、少なくとも請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の熱処理W1を2つの工程で実施し、このとき、第1の工程において、温度T
St1が、630℃≦T
St1≦690℃に設定されており、および第2の工程において、温度T
ST2が、720℃≦T
St2≦780℃に設定されており、および前記温度T
St1に至るまでの加熱速度A
St1が、1.5K/分≦A
St1≦2.5K/分であり、および前記温度T
St2に至るまでの加熱速度A
St2が、8K/分≦T
St2≦12K/分であることを特徴とする、少なくとも請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前
記ブランクに、前記第1の熱処理W1後に温度T
W2において時間t
W2にわたって第2の熱処理W2を施し、このとき、800℃≦T
W2≦1040℃であり、および/または2分≦t
W2≦200分であることを特徴とする、少なくとも請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1または第2の熱処理の工程の後、前記歯科用物品のための有形物体(20)を、研削および/もしくはミリングまたはプレス加工によって前記ブランクから調製し、このとき、1回以上の前記熱処理の工程を、プレス加工の最中または後に実施することを特徴とする少なくとも請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記歯科用物品のための有形物体(20)、または、前記コーティングによって被覆されていない少なくとも前記領域(32、33、34)を、前記ペーストとして、粘性の高い前記塩の溶液または分散物によってコーティングすることを特徴とする、少なくとも請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ペーストを、前記歯科用物品のための有形物体(20)に施用するか、または前記歯科用物品のための有形物体(20)上へのスプレー塗りによる前記コーティングによって被覆されていない少なくとも前記領域(32、33、34)に施用することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ペーストを調製するために、前記塩を、不燃性物質、一価または多価アルコール、ハロゲン化炭化水素化合物、水の群からの少なくとも1種の物質または1種以上の混合物と混合すること特徴とする、請求項1~20何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
0.5mm以上の厚さDにおいて、前記ペーストを施用することを特徴とする、請求項1~21何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
1mm<D<3mmの厚さDにおいて、前記ペーストを施用することを特徴とする、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
歯科用物品の形状を有する歯科用物品のための有形物体(20)または歯科用物品の一部の形状を有する歯科用物品のための有形物体(20)であり、前記歯科用物品のための有形物体(20)の表面(22)が、少なくとも複数の領域にわたって、材料を前記歯科用物品のための有形物体
(20)に施用し、続いて熱処理することによる焼成済みコーティングを有する、歯科用物品のための有形物体
(20)であって、
前記コーティングが、前記歯科用物品のための有形物体(20)の前記表面(22)の複数の領域のみに限定されていること、および、前記コーティングによって被覆されていない前記歯科用物品のための有形物体
(20)の少なくとも領域(32、33、34)において、直径のより大きなアルカリ金属イオンによるリチウムイオンの置きかえによって表面圧縮応力を発生させることを特徴とする、歯科用物品のための有形物体
(20)であって、
引張応力にさらされる少なくともいくつかの領域(32、33、34)において、前記歯科用物品のための有形物体(20)が、前記材料の施用および後続する熱処理によって形成されるコーティングが存在せず、
前記歯科用物品のための有形物体(20)または前記歯科用物品のための有形物体
(20)が製造されるブランクを、重量百分率で以下の成分:
・ SiO
2 50~80、
・核形成剤 0.5~11、
・ Al
2O
3 0~10、
・ Li
2O 10~25、
・ K
2O 0~13、
・ Na
2O 0~1、
・ ZrO
2 0~20、
・ CeO
2 0~10、
・ Tb
4O
7 0~8、
を含有するガラス溶融物から調製することを特徴とする、
歯科用物品のための有形物体
(20)。
【請求項25】
前記アルカリ金属イオンが、Na、K、Csおよび/またはRbイオンであることを特徴とする、請求項
24に記載の歯科用物品のための有形物体
(20)。
【請求項26】
前記歯科用物品のための有形物体(20)または前記歯科用物品のための有形物体
(20)が調製されるブランクのガラス相が、前記歯科用物品のための有形物体
(20)の強度を増大させる少なくとも1種の安定剤を含有し、前記歯科用物品のための有形物体
(20)の出発組成における前記安定剤の濃度が、8~12重量%であることを特徴とする、請求項
24に記載の歯科用物品のための有形物体
(20)。
【請求項27】
前記歯科用物品のための有形物体(20)を、重量百分率で以下の成分:
SiO
2 58.1±2.0
P
2O
5 5.0±1.5
Al
2O
3 4.0±2.5
Li
2O 16.5±4.0
K
2O 2.0±0.2
ZrO
2 10.0±0.5
CeO
2 0~3、
Tb
4O
7 0~3、
Na
2O 0~0.5、
を含有するガラス溶融物から調製することを特徴とする
、請求項
24~
26何れか1項に記載の歯科用物品のための有形物体
(20)。
【請求項28】
前記歯科用物品のための有形物体
(20)が、20~65体積%までの範囲のガラス相を有することを特徴とする
、請求項
24~
27何れか1項に記載の歯科用物品のための有形物体
(20)。
【請求項29】
前記歯科用物品のための有形物体
(20)が、前記歯科用物品のための
有形物体(20)に対して35体積%乃至80体積%のケイ酸リチウム結晶を含有することを特徴とする
、請求項
24~
28何れか1項に記載の歯科用物品のための有形物体
(20))。
【請求項30】
前記リチウムイオンを置きかえるアルカリイオンの百分率が、コーティングによって被覆されていない前記領域(32、33、34)の表面を起点として10μmの深さに至るまでで、5~20重量%までの範囲であり、および/または、前記表面から8乃至12μmの深さにおいて、アルカリイオンの百分率が、5~10重量%までの範囲であり、および/または、前記表面から12乃至14μmの層深さにおいて、アルカリイオンの百分率が、4~8重量%までの範囲であり、および/または、前記表面から14乃至18μmの深さにおいて、アルカリイオンの百分率が、1~3重量%までの範囲であり、前記アルカリイオンの重量百分率が、層を経るごとに低下していくことを特徴とする、請求項
24~
29何れか1項に記載の歯科用物品のための有形物体(20)。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、歯科用物品、特にブリッジまたは歯科用物品の一部の形状を有する、ケイ酸リチウムガラスセラミックを含む有形物体の強度を増大させる方法であり、前記有形物体は所望の最終的な幾何形状を有し、有形物体の表面に影響する材料、たとえば平滑化用および/または着色用の材料、たとえば上薬材料、ベニアリング材料および/または染色材料を施用されたら、有形物体に熱処理を施す、方法に関する。
【0002】
歯科技術において実績のある方法は、歯科用修復材の製作のためのブランクとしてケイ酸リチウムガラスセラミックを、その強度および生体適合性が理由となって使用することであった。メタケイ酸リチウムを主要結晶相として含有するケイ酸リチウムブランクの場合、大きな工具の摩耗なしで難なく機械加工できることは、利点であることが判明した。この製品は、後続する熱処理を行ったときに、二ケイ酸リチウムガラスセラミックに変換され、すると高い強度を有するようになる。この製品は、良好な光学特性および十分な化学的安定性も有する。対応する方法は、たとえば、DE19750794A1またはDE10336913B4において開示されている。
【0003】
高い強度と同時に良好な透光性も達成するために、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたはこれらの混合物の群からの少なくとも1種の安定剤、特に、酸化ジルコニウムが、炭酸リチウム、石英、酸化アルミニウム等、すなわち、通常の出発成分の形態で原材料に添加される。ここで、たとえば、DE102009060274A1、WO2012/175450A1、WO2012/175615A1、WO2013/053865A2またはEP2662342A1に注目が寄せられる。
【0004】
I.L.Denryら、Enhanced Chemical Strengthening of Feldspathic Dental Porcelain、J Dent Res、1993年10月、1429~1433頁およびR.R.Seghiら、Effects of Ion Exchange on Hardness and Fracture Toughness of Dental Ceramics、The International Journal of Prosthodontics、第5巻、No.4、1992、309~314頁の刊行物は、リューサイト沈殿物が存在していてもよい長石質ガラスの品種から構成される、複合セラミックについての調査を開示している。強度を増大させるために、二工程方式の方法により、リチウムイオンによってナトリウムイオンを置きかえ、次いで、カリウムイオンによってリチウムイオンを置きかえることが提案された。より小さなイオンは、ルビジウムイオンによって置きかえることもできる。これにより、酸化ルビジウムが使用された場合では、最大で80%に至るまでの強度の増大が可能になった。しかしながら、ルビジウムは、セラミックの熱膨張係数が増大するという欠点を有する。
【0005】
DE3015529A1は、歯科用磁器の機械的強度を改善するための方法を開示している。この方法において、エナメル中でアルカリイオンが交換されるように、修復材をエナメルによってコーティングする。この目的のために、200℃乃至エナメルの転移点の温度で修復材を溶融塩の浴中に浸漬する。
【0006】
US4784606Aは、ガラス製の歯列矯正具を開示しており、この歯列矯正具の強度は、イオン交換によって増大されている。
【0007】
ケイ酸塩ガラス物品、たとえばボトルの硬度を増大させるための方法が、DE2401275A1において開示されており、好ましくは、物品を少なくとも370℃に加熱し、アルカリ金属塩の微粉状混合物によってスプレー塗りする。これにより、強度を増大させるイオン交換が可能になる。
【0008】
本発明の目的は、簡便なプロセス技術手段を使用して、物体の強度の増大、特に、引張応力にさらされる領域における物体の強度を増大させるように、上記種類の方法をさらに発展させることである。
【0009】
さらなる側面において、強度を増大させるために必要な手段によって有形物体中の不純物を防止することがあり得るようにすべきである。
【0010】
本発明の目的は、材料、たとえば上薬材料、ベニアリング材料および/または染色材料を、少なくとも1つの領域を除いた表面に施用した後、熱処理を実施して、焼成済みコーティングを得、次いで、直径のより大きなアルカリイオンによるリチウムイオンの置きかえによって表面圧縮応力を発生させ、コーティングによって被覆されていない少なくともその領域を、直径のより大きなイオンを伴う1種以上のアルカリ金属の塩からなるまたはこの塩を含有する溶融物またはペーストによって被覆し、この結果、物体を、時間tにわたって温度Tで溶融物またはペーストと接触させておき、次いで、溶融物またはペーストを物体から除去することによって、実質的に達成される。
【0011】
有形物体、たとえばブリッジを製造し、コーティングを施用し、焼成した後に本発明の方法を適用することにより、歯科用有形物体の強度が、特に大きな引張応力が発生する領域において、すなわち、特に基礎領域において増大する。ブリッジの場合、この領域は、たとえば、接続具の基礎領域である。前述の歯科用有形物体の強度を増大させるという目的のために、コーティング材料は、対応する引張応力が発生する領域に施用されていない。引張応力は、基礎部分として延在する領域において基本的に見受けられるため、この領域にコーティングが存在しないことは、歯科用有形物体の美観に悪影響せず、結果として、通常の方法によって、咬合領域、口唇領域および口腔内頬側領域に焼成済みコーティング、たとえば上薬、ベニアリング材料または染色材料を設けることができる。
【0012】
本発明によれば、特に大きな引張応力にさらされる領域においては、歯科用有形物体の美観に特に影響するコーティング材料が施用されず、この結果、後続する焼成、すなわち、熱処理したときに、コーティング材料、たとえば上薬、ベニアリング用セラミックまたは染料からできた層が存在しないことになる。コーティングによって被覆されていない領域においては、イオン交換を実施することが可能であり、すなわち、リチウムイオンが、直径のより大きなアルカリ金属イオンによって置きかえられ、この結果、所望の表面圧縮応力およびこれに伴う強度の増大が発生する。
【0013】
溶融物であれペーストであれ、イオン交換を可能にする材料は、原則的に、焼成から生じたコーティングを有さない領域にのみ施用すれば十分であるとしても、しかしながら有形物体は、イオン交換プロセス中に溶融物またはペーストによって完全に被覆されていることが好ましい。
【0014】
不純物が有形物体を汚染する恐れなく、訓練を受けていない者が、強度を増大させるための相応の行為を実施できるようにするという目的で、小分けにした量の塩を溶融物のために使用すべきであることが、特に定められており、この溶融物は、強度を増大させようとする有形物体の外形寸法に適合させることができる。本発明のさらなる発展形態において、アルカリ金属またはアルカリ金属塩物体をプレス加工/圧縮によって得、塩物体を有形物体上に設置し、または有形物体を塩物体上に直接もしくは間接的に設置し、次いで塩物体を溶融させる。
【0015】
有形物体を、複数の孔を有する第1の入れ物、たとえばバスケットの中に配置し、これにより、
・ 有形物体を収容した第1の入れ物を、溶融物中に導入するか、または
・ 塩を、有形物体を収容した第1の入れ物内に導入し、溶融させるか、または
・ 有形物体が入った第1の入れ物を、塩上に配置し、次いでこの塩を溶融させる
ようにすることが、可能である。
【0016】
有形物体は、1種以上のアルカリ金属を含有する塩上に設置するか、またはこの塩によって取り囲むことができ、この結果、後で塩を溶融させると、これにより、次いで、有形物体が、イオン交換が起きることになる領域において溶融物によって被覆される。
【0017】
提案された一解決法として、小分けにした塩は、下記において第2の入れ物と呼ばれている入れ物、たとえば引裂きまたは回して外すことによって除去可能な封かん材が付いたカプセルの中に入れた状態で利用可能にされている。特に、有形物体を塩上に設置した後で、塩を溶融させるか、または塩を第2の入れ物内で溶融させ、次いで有形物体を溶融物中に浸漬する可能性がある。本発明は、下記において第3の入れ物と呼ばれている、複数の孔を有する入れ物が付いた有形物体を、第2の入れ物内に存在する溶融物中に浸漬する可能性も包含する。
【0018】
さらなる好ましい提案によれば、本発明は、物体を、下記において第4の入れ物と呼ばれている入れ物として、小分けにした量の塩が中に存在する耐熱性ホイルによって包み込むこと、および、次いで塩を溶融させることを教示している。
【0019】
驚くべきことに、ケイ酸リチウムガラスセラミック製の有形物体中に存在するリチウムイオンをより大きなアルカリ金属イオンによって置きかえると、元応力およびこの結果としての表面圧縮応力が発生し、強度の実質的な増大につながることが判明した。
【0020】
驚くべきことに、同時に、耐腐食性も増大したことが判明した。イオン交換によって強度が増大すると、DIN EN ISO6872-2009-01において指定されている3点曲げ測定法によって測定して500MPa超、好ましくは800MPa超の曲げ強さ値が得られたことに加えて、耐薬品性も改善され、この改善により、DIN EN ISO6872-2009-1において定められている方法によってやはり測定して95μg×cm-2未満の化学的溶解度がもたらされたことが判明した。
【0021】
表面圧縮応力を発生させるために使用されるアルカリ金属イオンは、好ましくは、Na、K、Csおよび/またはRbイオンである。
【0022】
本発明によれば、利用可能にしようとする歯科用物品の幾何形状、特にブリッジ、クラウン、キャップ、インレー、アンレー、ベニアの幾何形状、好ましくはブリッジの幾何形状を結果として有する有形物体を、時間tにわたって溶融物中でアニーリングして、または、時間tにわたって、溶融物と同様に所望の濃度のカリウム金属イオンを含有するペーストによって包み込んで、直径のより大きなアルカリ金属イオンによるリチウムイオンの所望の置きかえを可能にし、この結果、所望の表面圧縮応力が発生し、その結果、強度が増大する。
【0023】
概して必要な量のみが利用可能になるように溶融物を小分けにし、この結果、有形物体を溶融物中に完全に浸漬することができ、この結果、アニーリング後、すなわち、イオン交換後に溶融物が処分され、この結果、強度を増大させるプロセスごとに、新たな塩およびこの塩による新たな溶融物が使用され、この結果、溶融物を1回より多く使用する方法に比較して汚染がないことが、特に定められている。しかしながら、対応する溶融物が1回より多く使用される場合でも、本発明からの逸脱ではないが、これは、好ましくない。
【0024】
有形物体を、カリウムイオンを含有する溶融物中でアニーリングすることが、特に定められており、好ましい塩溶融物は、KNO3、KClまたはK2CO3塩溶融物である。
【0025】
対応する塩をペーストのために使用することもできる。
【0026】
好ましくは、本発明は、有形物体を、カリウムイオンを含有する溶融物、特にKNO3、KClもしくはK2CO3を含有する溶融物またはナトリウムイオンを含有する溶融物、特にNaNO3、酢酸ナトリウムもしくは有機酸のナトリウム塩を含有する溶融物、または、カリウムイオンとナトリウムイオンとの混合物を特に50:50mol%の比で含有する溶融物、好ましくはNaNO3およびKNO3を含有する溶融物中でアニーリングすることを特徴とする。
【0027】
上記の事柄と独立に、有形物体は、ペーストとして、粘性の高い塩の溶液または分散物によって被覆されていてもよい。
【0028】
イオン交換中に一定のイオン交換能力が確実に存在するようにするために、本発明は、塩に進入しているリチウムイオンを結合させておくことをさらに提案している。特に、イオン交換を可能にするアルカリ金属塩に、塩、たとえばアルカリ金属リン酸塩、たとえばK2HPO4を添加することによって、リチウムイオンを結合させておくことが提案されている。リチウムを含有する塩、たとえばリン酸塩が、溶融物中に沈殿する。
【0029】
上記の事柄と独立に、表面領域において必要なイオン交換は、T≧300℃、特に350℃≦T≦600℃、好ましくは430℃≦T≦530℃の温度Tにおいて、t≧5分、特に0.5時間≦t≦10時間、特に好ましくは3時間≦t≦8時間の時間tにわたって、有形物体を溶融物中でアニーリングするかまたは対応するペーストと接触させておく場合に、特に良好であることが判明している。
【0030】
上記領域におけるアニーリングまたは接触時間をより短くして、30分以下にしても、原則的に、表面領域において所望の表面圧縮応力を発生させるのに十分である。20μm以上の深さまで有形物体の強度を増大させることが所望される限り、アニーリング温度に応じて、たとえば6または10時間というより長い接触またはアニーリング時間が、必要となる。
【0031】
イオン交換を可能にするように、有形物体を被覆しているペーストは、好ましくは、カリウム金属イオンに関して上記溶融物と同じ組成を有する。
【0032】
省エネルギーの且つ必要な温度に制御された様式で塩を確実に溶融させ、並びに、所望の長さの時間にわたって有形物体を確実にアニーリングするために、本発明は、下記において第5の入れ物と呼ばれている入れ物が入った加熱デバイスを特徴としており、この第5の入れ物は、第2の入れ物の外形寸法の幾何形状に、少なくとも第2の入れ物の領域の一部にわたって適合させる。第5の入れ物は、加熱デバイスの加熱プレート内に収納することが可能である。
【0033】
有形物体または有形物体が得られるブランクは、ガラス溶融物から製作することが好ましく、このガラス溶融物は、出発成分として少なくとも、SiO2、Al2O3、Li2O、K2O、少なくとも1種の核形成剤、たとえばP2O5および少なくとも1種の安定剤、たとえばZrO2を含有する。
【0034】
特定の様式において、本発明は、リチウムイオンが、より大きなアルカリイオン、特にカリウムおよび/またはナトリウムイオンによって置きかえられるだけでなく、出発物質の強度を増大させ、この結果として、有形物体または有形物体が得られるブランクのガラス相の強度を増大させるために、溶解された少なくとも1種の安定剤、特にZrO2の形態の少なくとも1種の安定剤が含有されており、この安定剤の濃度が、好ましくは、初期組成に対して8~12重量%までの範囲であることも特徴とする。
【0035】
特に、本発明は、合計が100重量%である重量百分率で以下の組成:
・ SiO2 50~80、好ましくは52~70、特に好ましくは56~61
・ 核形成剤、たとえばP2O5、0.5~11、好ましくは3~8、特に好ましくは4~7
・ Al2O3 0~10、好ましくは0.5~5、特に好ましくは1.5~3.2
・ Li2O 10~25、好ましくは13~22、特に好ましくは14~21
・ K2O 0~13、好ましくは0.5~8、特に好ましくは1.0~2.5
・ Na2O 0~1、好ましくは0~0.5、特に好ましくは0.2~0.5
・ ZrO2 0~20、好ましくは4~16、特に6~14、特に好ましくは8~12
・ CeO2 0~10、好ましくは0.5~8、特に好ましくは1.0~2.5
・ Tb4O7 0~8、好ましくは0.5~6、特に好ましくは1.0~2.0
・ オプションとして、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの群からの1種以上のアルカリ土類金属の1種以上の酸化物
0~20、好ましくは0~10、特に好ましくは0~5
・ オプションとして、B2O3、MnO2、Fe2O3、V2O5、TiO2、Sb2O3、ZnO、SnO2およびフルオリドの群からの1種以上の添加剤
0~6、好ましくは0~4
・ オプションとして、原子番号57、59~64、66~71の希土類金属、特にランタン、イットリウム、プラセオジム、エルビウムおよびユウロピウムの1種以上の酸化物
0~5、好ましくは0~3
を有するガラス溶融物から、有形物体またはブランクを製作することを特徴とする。
【0036】
「オプションとして1種以上の酸化物」は、1種以上の酸化物がガラス溶融物中に含有されることが、絶対に必要とは限らないことを意味する。
【0037】
特に、物体またはブランクは、合計が100重量%である重量百分率で以下の組成:
【0038】
【0039】
を有する。
【0040】
ある態様において、本発明は、冷却中または室温への冷却後にブランクをガラス溶融物から形成し、次いでブランクに、温度TW1において時間tW1にわたって、第1の熱処理W1を少なくとも施し、このとき、620℃≦TW1≦800℃、特に650℃≦TW1≦750℃であり、および/または1分≦tW1≦200分、好ましくは10分≦tW1≦60分であることを特徴とする。有形物体は、ブランク/熱処理済みブランクから製作される。
【0041】
核およびメタケイ酸リチウム結晶は、第1の熱処理工程中に形成される。対応するケイ酸リチウムガラスセラミックブランクは、有形物体、すなわち、歯科用物品への加工によって難なく形成することができ、工具の摩耗は、最小限である。
【0042】
有形物体は、上記組成のブランクまたはペレットからのプレス加工によって製作することもでき、1回以上の熱処理工程は、プレス加工手順の最中または後に実施することができる。
【0043】
特に、最終的な結晶化を得るために、特に二ケイ酸リチウム結晶を生成するまたはメタケイ酸塩結晶を二ケイ酸塩結晶に変換するために、第1の熱処理W1後のケイ酸リチウムガラスセラミックブランクに、温度TW2で時間tW2にわたって第2の熱処理W2を施し、このとき、800℃≦TW2≦1040℃、好ましくは800℃≦TW2≦900℃であり、および/または2分≦tW2≦200分、好ましくは3分≦tW2≦30分であることが、定められている。
【0044】
下記の温度値および加熱速度は、好ましくは、予備結晶化または最終的な結晶化につながる熱処理工程のために選択される。第1の熱処理W1の場合、第1の保持段階が、640℃~680℃までの範囲であり、第2の保持段階が、720℃~780℃までの範囲である、二工程方式の手法が、特に定められている。各段階において、加熱されているブランクは、時間にわたってある温度に保持されるが、第1の段階において、この時間は、好ましくは、35乃至45分であり、第2の段階において、好ましくは、15乃至25分である。
【0045】
第1の熱処理段階後または第2の熱処理段階後のいずれかにおいて、ただし、好ましくは第2の熱処理段階後において、研削またはミリングによってブランクを加工して、所望の幾何形状の有形物体を得る。
【0046】
技術水準によれば、歯科用物品、すなわち、有形物体は、プレス加工によって製作されてもよい。
【0047】
歯科用物品の最終的な幾何形状を原則的に有する有形物体は、特に、素手で研磨して、コーティング材料、たとえば染色材料、ベニアリング材料および/または上薬材料を所望の領域に施用し、焼成を実施するようにする。この手順は、1回または数回実施してもよく、650℃~800℃までの温度範囲で実施される。このプロセスにおいて、材料は、焼成済みコーティング層が、主に、口唇領域、口腔内頬側領域および咬合領域にのみ展開し、この結果、コーティングによって達成され得る所望の美観的効果が視認可能な状態のままであるように、施用される。特に、あご領域における歯科用物品の使用後に引張応力が見受けられる基礎領域には、材料が施用されない。技術水準の場合と同様に、対応する材料、たとえば上薬材料、ベニアリング材料および/または染色材料は、有形物体の内側領域に施用されず、この有形物体は、たとえば、残存歯またはブリッジの支台上に設置されている。ブリッジの場合、これは、内面であり、すなわち、ブリッジの支台を内包するブリッジ固定要素の内面である。
【0048】
次いで、焼成済みコーティング層が付いた領域を有する有形物体を、溶融物中でアニーリングするか、または有形物体を、必要なアルカリ金属イオンを含有するペーストによって被覆する。
【0049】
この目的のために、室温の有形物体を塩と接触させるか、または室温のペーストによって被覆し、塩/ペーストを溶融させる。特に、≧300℃、特に350℃≦T≦600℃、好ましくは430℃≦T≦530℃の温度Tにおいて、t≧5分、特に0.5時間≦t≦10時間、特に好ましくは3時間≦t≦8時間の時間tにわたって、溶融物中の有形物体をアニーリングするかまたは対応するペーストと接触させることが、定められている。
【0050】
塩溶融物から取り出し、冷却し、付着しているあらゆる塩溶融物またはペーストの残留物を除去した後で、このようにして利用可能にされた有形物体をある程度加工することが必要な場合、この有形物体は、特に、所望の度合いまで歯科用修復材として活用されてもよい。基礎領域の強度の増大を考慮すると、有形物体は、特に、多要素型ブリッジであってもよい。
【0051】
対応する有形物体の試料は、800MPa超の曲げ強さ値を達成できることを実証した。この値は、DIN EN ISO6872:2009-1において指定されている曲げ強さ用の3点法を使用して測定された。
【0052】
DIN EN ISO6872:2009-1において指定されている加水分解試験で得られた化学溶解度の値は、95μg×cm-2未満だった。したがって、本発明による方法は、有形物体の強度だけでなく、耐腐食性も増大させた。
【0053】
特に、1種以上のアルカリ金属塩を含む塩をプレス加工または圧縮して、塩物体に変え、この塩物体を有形物体上に設置し、または有形物体をこの塩物体上に設置し、次いで塩物体を溶融させ、この結果、塩溶融物が有形物体を完全に包み込み、所望のイオン交換を実施することができることが、定められている。このプロセスにおいて、有形物体は、複数の孔を有する入れ物内に収納されていてもよい。
【0054】
上記のように1種のアルカリ塩もしくは複数種のアルカリ塩であってもよいまたはこのアルカリ塩を含有してもよい溶融塩を使用した、イオン交換の実施を可能にするために、塩は、引裂きまたはねじることによって除去可能な封かん材が付いた下記において第2の入れ物と呼ばれている入れ物、たとえばカプセルの中に入ったアリコートの状態で利用可能にされていてもよい。同時に、第2の入れ物は、有形物体のための入れ物として使用されてもよく、この結果、有形物体が塩上に設置されている状態で塩を溶融させる。当然ながら、最初に塩を溶融させ、次いで溶融物中に有形物体を浸漬する可能性もある。上記の記載は、最初に塩によって有形物体を取り囲み、次いで塩を溶融させる可能性も包含する。複数の孔を有する入れ物、たとえばワイヤーバスケット内の溶融物中に有形物体を浸漬する可能性もある。
【0055】
有形物体の簡便な取扱いを可能にするために、すなわち、溶融物中への有形物体の浸漬または溶融物からの取出しを容易にして、難なく行えるものにするために、本発明のさらなる発展形態において、有形物体を第1の入れ物と一緒に、下記において第3の入れ物と呼ばれている塩を収容した入れ物の中に導入する。
【0056】
本発明は、有形物体を、ペーストとしての粘性の高いアルカリ金属塩の溶液または分散物によってコーティングすることも特徴とする。この目的のために、1種以上のアルカリ金属塩を、不燃性物質、一価または多価アルコール、ハロゲン化炭化水素化合物、水の群からの少なくとも1種の物質、特に1,4-ブタンジオール、ヘキサントリオール、アセトン、水または1種以上の物質の混合物の群の1種と混合することが、特に定められている。
【0057】
ペーストの場合、アルカリイオン、特にNaまたはKイオンを使用して、表面圧縮応力を発生させる。
【0058】
上記の事柄と独立に、ペーストは、すべての表面が被覆される程度に有形物体に施用してもよいが、0.5mm以上の厚さD、好ましくは1mm<D<3mmの厚さDを維持すべきである。当然ながら、ペーストは、やはり、コーティングが存在しないイオン交換の実施対象領域にのみ施用してもよい。
【0059】
本発明によれば、ガラス相が、20~65体積%、特に40~60体積%であることも、特に定められている。
【0060】
したがって、本発明は、ケイ酸リチウム結晶が、35~80体積%、特に40~60体積%までの範囲で存在する、有形物体を特徴とする。ここで、ケイ酸リチウム結晶は、P2O5が含有される場合、二ケイ酸リチウム結晶、メタケイ酸リチウム結晶およびリン酸リチウム結晶の合計を意味する。
【0061】
特に、有形物体は、リチウムイオンを置きかえるアルカリ金属イオンの濃度は、特にカリウムイオンが使用される場合、コーティングによって被覆されていない領域の表面から10μmの深さに至るまでで、5~20重量%までの範囲であることを特徴とする。表面から8乃至12μmの深さにおいて、アルカリイオンは、5~10重量%までの範囲で存在すべきである。表面から12乃至14μmの深さにおいて、アルカリイオンは、4~8重量%までの範囲で存在すべきである。表面から14乃至18μmの深さにおいて、対応するアルカリイオンの範囲は、1乃至3重量%である。アルカリイオンの重量百分率は、層を経るごとに低下していく。
【0062】
上記のように、重量百分率の値は、有形物体中にすでに存在するアルカリイオンを考慮に入れない。この数値は、特に、カリウムイオンに当てはまる。
【0063】
本発明のさらなる詳細、利点および特徴は、そこからこれらの特徴が単独でおよび/または組み合わさって派生することになる、特許請求の範囲から派生するだけでなく、以下に与えられている例からも派生する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図2】3点曲げ強さ測定のための試験装置機構の概略図である。
【0065】
ケイ酸リチウムガラスセラミック製の有形物体のガラス成分中に存在するリチウムイオンが、直径のより大きなアルカリ金属イオンによって置きかえられた結果として、表面圧縮応力が増大し、強度の増大につながることは、最初に例示すべきである。
【0066】
下記の試験において、目視により均一な混合物が得られるまで、少なくとも原材料、たとえば炭酸リチウム、石英、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムをドラムミキサー内で混合した。試験のために使用された製造業者のデータに従った組成が、以下に与えられている。
【0067】
下記は、原則的に、以下に与えられている試験に当てはまる。
【0068】
対象とする混合物を、高温に耐え切る白金合金るつぼ内において1500℃の温度で5時間の期間にわたって溶融させた。続いて、溶融物を型に注ぎ込んで、長方形の物体(ブロック)を得た。続いて、ブロックに、第1の熱処理工程と称されている二工程方式の熱処理を施して、メタケイ酸リチウム結晶を主要結晶相として精製した(第1の処理工程)。これにより、ブロックを、第1の熱処理工程W1において2K/分の加熱速度で660℃に加熱し、この温度に40分保持した。次いで、ブロックを10K/分の加熱速度で750℃にさらに加熱した。供試材をこの温度に20分保持した。この熱処理が核形成に影響し、メタケイ酸リチウム結晶が形成される。
【0069】
次いで、ブロックに第2の熱処理工程W2(第2の処理工程)を施して、二ケイ酸リチウム結晶を主要結晶相として形成する。この熱処理工程において、ブロックを、時間t2にわたって温度T2に維持した。対応する値が、以下に与えられている。次いで、ブロックを室温に冷却した。
【0070】
次いで、冷却されたブロックを機械加工して、ブロックの研削により、長方形形状の曲げ操作対象のロッド(供試材)を得た(第3の処理工程)。曲げ操作対象のロッドは、長さ15mm、幅4.1mmおよび高さ1.2mmという寸法を有していた。次いで、供試材を研磨した(処理工程4)。次いで、模擬的な上薬の焼成を実施し(第5の処理工程)、すなわち、いかなる材料も曲げ操作対象のロッド(供試材)に施用することなく温度処理を実施した。一部の供試材に関しては、第5の処理工程の完了後に上薬材料を施用し、焼成を実施して(第6の処理工程)、コーティング層を生成した。温度処理(焼成)は、650℃乃至800℃の温度で実施した。
【0071】
この手順において、
図2から概略的に分かるように、上薬は、荷重を与えるピストンおよびこの結果としての力Fが作用して、曲げ強さの3点測定が、DIN EN ISO6872:2009-01において指定されているように実施されるようになっている、供試材(第6の処理工程)の面にのみ施用してもよい。
図2によりさらに明瞭になっているように、焼成したときにコーティングが生じ得ないように、反対側の面50には材料が施用されていない。上薬または上薬層は、
図2において、番号16によって示されている。長方形の供試材自体は、番号10によって示されている。
図2は、供試材10の側面および前面がコーティングされていないことも示している。
【0072】
DIN EN ISO6872:2009-01において指定されているように、3点曲げ強さ測定を実施した。この目的のために、供試材(小さなロッド)10を、
図2において示されているように10mmの距離を空けて2個の支持体12、14に取り付けた。荷重を与えるピストンは、ロッド10間にある供試材に作用するが、このとき、ロッド10の先端が、0.8mmの半径を有する供試材と接触している。
【0073】
ブロックの製作のために、製造業者のデータに従って(重量百分率での)次の初期組成を採用して、ケイ酸リチウムガラスを得、このガラスからケイ酸リチウムガラスセラミック材料を得た。
【0074】
【0075】
ガラス相は、40~60体積%までの範囲だった。
【0076】
二ケイ酸リチウム結晶を形成するための最終的な結晶化(第2の熱処理工程)を、温度T2=830℃において、5分の時間t2にわたって実施した。
【0077】
合計70本のロッドを調製し、これらのロッドに処理工程1~5を実施した。これらのロッドを用いて、下記の試験を実施した。
試験系列第1番
次いで、材料の施用なしで処理工程1~5を実施したこれらの10本のロッドを試験して、強度を測定した。上記3点曲げ強さ試験において得られた平均値は、358MPaだった。
試験系列第2番
次いで、さらなる10本のロッドを、工業用純品KNO
3の塩浴中において、480℃の温度で10時間アニーリングした。次いで、ロッドを溶融物から取り出し、温水を使用して溶融物残留物を除去した。次いで、3点曲げ強さ測定を、上記のように実施した。3点曲げ強さの平均値は、870MPaだった。
試験系列第3番
70本のロッドのうちの10本を、工業用純品KNO
3塩浴中において480℃の温度で10時間アニーリングした。次いで、上薬材料を、
図2において示されているように、力Fが作用するロッドの一面に部分的に施用し、供試材を660℃の温度T
3で焼成し、60秒の期間t
3にわたって維持した。407MPaの3点曲げ強さの平均値が、得られた。
試験系列第4番
最初に、試験系列第3番の場合と同様の10本のロッドを、工業用純品KNO
3塩浴中において480℃の温度で10時間アニーリングした。次いで、上薬材料を、力Fが作用するロッド面に部分的に施用し、供試材を680℃の温度T
3で焼成し、60秒の期間t
3にわたって維持した。381MPaの3点曲げ強さの平均値が、得られた。
試験系列第5番
試験系列第3番および第4番の場合と同様に、最初に、さらなる10本のロッドを、工業用純品KNO
3塩浴中において480℃の温度で10時間アニーリングした。前述のように、次いで上薬材料を、力Fが作用する面に部分的に施用し、供試材を750℃の温度T
3で焼成し、90秒の期間t
3にわたって維持した。326MPaの3点曲げ強さ値が、得られた。
試験系列第6番
さらなる10本のロッドは、3点曲げ強さ測定試験においてスタンプが作用する面、すなわち、
図2において示されているように、力Fが作用する面上を上薬材料によって部分的にコーティングした。したがって、引張応力にさらされる領域50は、被覆されていない状態のままである。同じ事柄が、側面にも当てはまる。焼成を、750℃の温度T
3で90秒の期間t
3にわたって実施した。次いで、試験系列第2番に関して記述したのと同様にして、供試材を、工業用純品KNO
3塩浴中において480℃の温度で10時間アニーリングした。供試材を溶融物から取り出し、溶融物残留物を除去し、3点曲げ強さ測定を実施し、上記のように、コーティング層16(上薬)を担持したロッドの面に力を加えた。874MPaの3点曲げ強さの平均値が、得られた。
試験系列第7番
残りの10本のロッドの全体を、上薬材料によってコーティングした。次いで、上薬の焼成を750℃の温度T
3で90秒の期間t
3にわたって実施した。次いで、試験系列第2番に関して記述したのと同様にして、供試材を、工業用純品KNO
3塩浴中において480℃の温度で10時間アニーリングした。供試材を溶融物から取り出し、溶融物残留物を除去し、3点曲げ強さ測定を、上記のように実施した。3点曲げ強さの値は、353MPaだった。
【0078】
これらの試験においては、イオン交換を実施して、さらなる熱処理の前に表面の硬度を増大させると、この場合、上薬を焼成すると、イオン交換によってあらかじめ達成された表面圧縮応力が、再度低下することが判明した。この理由として可能性が高いのは、さらなる熱処理中に、カリウムイオンが、表面圧縮応力が失われるほどに供試材中にさらに拡散することであった。
【0079】
コーティング(上薬)が供試材用物体のすべての部分に施用された場合、上薬は、表面の硬度が原則的に増大し得ないように、拡散ブロックを形成する。
【0080】
対照的に、コーティングのために必要な材料の部分的な施用は、引張応力にさらされる区域が、被覆されていない状態のままである限り、すなわち、この区域に施用されたコーティングがない限りは少なくとも、直径のより大きなアルカリ金属イオンによるリチウムイオンの置きかえによって、表面圧縮応力の所望の発生に影響することがない。
【0081】
図1は、二ケイ酸リチウムセラミック材料から製作された3要素型ブリッジ20の形態である歯科用有形物体を示しており、外面22は、口唇領域、口腔内頬側領域および咬合領域において上薬を備え付けられており、基礎領域24において、まさに最大で部分的となるように上薬を備え付けられている。基礎領域24は、接続具30、31の領域32、33および中間部材36の基礎領域34において、上薬を無含有である。このようになすために、ブリッジ20は、上薬材料または焼成によってコーティングを形成する他の材料、たとえば染色材料または複合セラミック材料によって部分的にのみ被覆されている。
【0082】
上記態様例において、上薬によって被覆されていない基礎領域24は、ブリッジ固定要素の縁部35、37までのある距離にわたっている。これにより、美観的に好適な効果を引き出す層を、対応するブリッジ固定要素縁部35と37との間および基礎領域32、33、34の領域に施用することが可能になる。
図1において、層が施用されたこの領域は、各ブリッジ固定要素縁部35/37と、近い地点40/42との間に延在する。断面図において、歯用ブリッジ20の基礎領域32、33および基礎領域34は、地点40、42の間に部分的に延在しており、被覆されていない状態のままであり、すなわち、美観的に好適な効果を引き出して、これらの領域におけるイオン交換を容易にする、これらの領域に施用された層がない。ブリッジ20の内面、すなわち、ブリッジ固定要素28の内側領域は、やはり、技術水準の場合と同様に、不正確に上薬を通り抜けてしまうことがないように、被覆されていない。
【0083】
特に二ケイ酸リチウム結晶を主要結晶相として有する、ケイ酸リチウムセラミック材料製の対応するブリッジ20の強度は、本発明による手順が実施されなかった場合の強度より著しく高い。技術水準によって製作されたブリッジの値より100%を超えて高い値を得ることが、可能である。必須条件は、本発明の教示に従って、大きな引張応力が見受けられる領域、すなわち、特に基礎領域において、すなわち、ブリッジの場合は特に、中間要素36の下側および外面の領域にある接続具30、31の下側において、リチウムイオンが、直径のより大きなアルカリ金属イオンによって置きかえられることである。
以下に、本願発明の態様を付記する。
[1] 歯科用物品(20)の形状を有するケイ酸リチウムガラスセラミック製の有形物体、特にブリッジまたは歯科用物品の一部の強度を増大させる方法であり、前記有形物体は所望の最終的な幾何形状を有し、前記有形物体の表面(22)に影響する材料、たとえば平滑化用および/または着色用の材料、たとえば上薬材料、ベニアリング材料および/または染色材料を施用されたら、前記有形物体に熱処理を施して、コーティングを形成する方法であって、
前記材料を、前記有形物体の前記表面(22)にある少なくとも1つの領域(32、33、34)を除いた表面に施用し、前記熱処理を実施して、この後、直径のより大きなアルカリイオンによるリチウムイオンの置きかえによって表面圧縮応力を発生させ、前記コーティングによって被覆されていない少なくとも前記領域を、直径のより大きなイオンを伴う1種以上のアルカリ金属の塩の溶融物もしくはペーストまたはこの塩を含有する溶融物もしくはペーストによって被覆し、前記有形物体を、時間tにわたって温度Tで前記溶融物またはペーストと接触させておき、次いで、前記溶融物またはペーストを前記有形物体から除去すること
を特徴とする、
方法。
[2] イオン交換中の前記有形物体(20)が、前記溶融物またはペーストによって完全に被覆されていること
を特徴とする、
[1]に記載の方法。
[3] 小分けにした量の塩を前記溶融物のために使用すること
を特徴とする、
[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記ペーストを、前記材料によって被覆されていない、前記有形物体(20)の少なくとも前記領域(32、33、34)に施用すること
を特徴とする、
先行する[1]から[3]の少なくとも1に記載の方法。
[5] 引張応力にさらされる、前記有形物体(20)の前記1つ以上の領域(32、33、34)が、前記材料によって被覆されていない状態のままであること
を特徴とする、
先行する[1]から[4]の少なくとも1に記載の方法。
[6] 引張応力にさらされる少なくともいくつかの領域(32、33、34)、特に前記有形物体(20)の基礎領域において、前記有形物体(20)が、前記材料の施用および後続する熱処理によって形成されるコーティングを有さないこと
を特徴とする、
先行する[1]から[5]の少なくとも1に記載の方法。
[7] 前記1種以上のアルカリ金属からの前記小分けにした量としての前記塩から、プレス加工または圧縮によって塩物体を調製すること、および、前記塩物体を前記有形物体上に設置するか、または前記有形物体を前記塩物体上に直接もしくは間接的に設置し、次いで前記塩物体を溶融させること
を特徴とする、
先行する[1]から[6]の少なくとも1に記載の方法。
[8] 前記有形物体(20)を、複数の孔を有する入れ物、たとえばワイヤーバスケットの中に設置すること、および、その後に、
・ 前記有形物体が入った前記入れ物を、前記溶融物中に浸するか、または
・ 前記有形物体が入った前記入れ物を、前記塩中に導入し、次いで前記塩を溶融させるか、または
・ 前記有形物体が入った前記入れ物を、前記塩または前記塩物体上に配置し、前記塩を溶融させ、同時に、形成しつつある前記溶融物中に前記有形物体が浸漬されること
を特徴とする、
先行する[1]から[7]の少なくとも1に記載の方法。
[9] 前記有形物体(20)を、前記小分けにした量の塩を収容した耐熱性ホイルによって包み込むこと、および、次いで前記塩を溶融させること
を特徴とする、
先行する[1]から[8]の少なくとも1に記載の方法。
[10] 前記小分けにした塩が、たとえば引裂きによって除去可能な封かん材が付いた入れ物、たとえばカプセルの中に入れた状態で利用可能にされていること
を特徴とする、
先行する[1]から[9]の少なくとも1に記載の方法。
[11] イオン交換を可能にする前記アルカリ金属塩に、リン酸塩、たとえばK
2
HPO
4
を添加して、リチウムイオンを結合させること
を特徴とする、
先行する[1]から[10]の少なくとも1に記載の方法。
[12] Na、K、Csおよび/またはRbイオンをアルカリ金属イオンとして使用して、前記表面圧縮応力を発生させること
を特徴とする、
先行する[1]から[11]の少なくとも1に記載の方法。
[13] 前記有形物体(20)を、カリウムイオンを含有する溶融物、特にKNO
3
、KClもしくはK
2
CO
3
を含有する溶融物またはナトリウムイオンを含有する溶融物、特にNaNO
3
、酢酸ナトリウムもしくは有機酸のナトリウム塩を含有する溶融物、または、カリウムイオンとナトリウムイオンとの混合物を特に50:50のモル百分率の比で含有する溶融物、好ましくはNaNO
3
およびKNO
3
を含有する溶融物中でアニーリングすること
を特徴とする、
先行する[1]から[12]の少なくとも1に記載の方法。
[14] T≧300℃、特に350℃≦T≦600℃、好ましくは430℃≦T≦530℃の温度Tにおいて、特に、t≧5分、好ましくは0.5時間≦t≦10時間、特に好ましくは3時間≦t≦8時間の時間tにわたって、前記有形物体(20)をアニーリングすること
を特徴とする、
先行する[1]から[13]の少なくとも1に記載の方法。
[15] 前記有形物体(20)を、出発成分として少なくとも、SiO
2
、Al
2
O
3
、Li
2
O、K
2
O、少なくとも1種の核形成剤、たとえばP
2
O
5
および少なくとも1種の安定剤、たとえばZrO
2
を含有するガラス溶融物から調製すること
を特徴とする、
先行する[1]から[14]の少なくとも1に記載の方法。
[16] 前記有形物体(20)または前記有形物体が製造されるブランクを、重量百分率で以下の成分:
・ SiO
2
50~80、好ましくは52~70、特に好ましくは56~61、
核形成剤、たとえばP
2
O
5
、0.5~11、好ましくは3~8、特に好ましくは4~7
・ Al
2
O
3
0~10、好ましくは0.5~5、特に好ましくは1.5~3.2
・ Li
2
O 10~25、好ましくは13~22、特に好ましくは14~21
・ K
2
O 0~13、好ましくは0.5~8、特に好ましくは1.0~2.5
・ Na
2
O 0~1、好ましくは0~0.5、特に好ましくは0.2~0.5
・ ZrO
2
0~20、好ましくは4~16、特に6~14、特に好ましくは8~12
・ CeO
2
0~10、好ましくは0.5~8、特に好ましくは1.0~2.5
・ Tb
4
O
7
0~8、好ましくは0.5~6、特に好ましくは1.0~2.0
・ オプションとして、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの群からの1種以上のアルカリ土類金属の1種以上の酸化物
0~20、好ましくは0~10、特に好ましくは0~5、
・ オプションとして、B
2
O
3
、MnO
2
、Fe
2
O
3
、V
2
O
5
、TiO
2
、Sb
2
O
3
、ZnO、SnO
2
およびフルオリドの群からの1種以上の添加剤
0~6、好ましくは0~4
・ オプションとして、原子番号57、59~64、66~71の希土類金属、特にランタン、イットリウム、プラセオジム、エルビウム、ユウロピウムの1種以上の酸化物
0~5、好ましくは0~3
を含有するガラス溶融物から調製すること
を特徴とする、
少なくとも[15]に記載の方法。
[17] 前記ガラス溶融物が、重量百分率で出発成分として以下:
SiO
2
58.1±2.0
P
2
O
5
5.0±1.5
Al
2
O
3
4.0±2.5
Li
2
O 16.5±4.0
K
2
O 2.0±0.2
ZrO
2
10.0±0.5
CeO
2
0~3、好ましくは1.5±0.6
Tb
4
O
7
0~3、好ましくは1.2±0.4
Na
2
O 0~0.5、好ましくは0.2~0.5
を含有すること
を特徴とする、
少なくとも[15]に記載の方法。
[18] 冷却の途中または室温への冷却後に前記ガラス溶融物から前記ブランクを形成し、次いで前記ブランクに、温度T
W1
において時間t
W1
にわたって少なくとも1回の第1の熱処理W1を施し、このとき、620℃≦T
W1
≦800℃、特に650℃≦T
W1
≦750℃であり、および/または1分≦t
W1
≦200分、好ましくは10分≦t
W1
≦60分であること
を特徴とする、
少なくとも[15]に記載の方法。
[19] 前記第1の熱処理W1を2つの工程で実施し、このとき、特に第1の工程において、温度T
St1
が、630℃≦T
St1
≦690℃に設定されており、および/または第2の工程において、温度T
ST2
が、720℃≦T
St2
≦780℃に設定されており、および/または前記温度T
St1
に至るまでの加熱速度A
St1
が、1.5K/分≦A
St1
≦2.5K/分であり、および/または前記温度T
St2
に至るまでの加熱速度A
St2
が、8K/分≦T
St2
≦12K/分であること
を特徴とする、
少なくとも[18]に記載の方法。
[20] 前記ケイ酸リチウムガラスセラミックブランクに、前記第1の熱処理W1後に温度T
W2
において時間t
W2
にわたって第2の熱処理W2を施し、このとき、800℃≦T
W2
≦1040℃、好ましくは800℃≦T
W2
≦870℃であり、および/または2分≦t
W2
≦200分、好ましくは3分≦t
W2
≦30分であること
を特徴とする、
少なくとも[18]に記載の方法。
[21] 前記第1または第2の熱処理の工程の後、特に前記第1の熱処理の工程の後、前記有形物体(20)を、研削および/もしくはミリングまたはプレス加工によって前記ブランクから調製し、このとき、1回以上の前記熱処理の工程を、プレス加工の最中または後に実施すること
を特徴とする、
少なくとも[18]に記載の方法。
[22] 前記有形物体(20)、または、前記コーティングによって被覆されていない少なくとも前記領域(32、33、34)を、前記ペーストとして、粘性の高い前記塩の溶液または分散物によってコーティングすること
を特徴とする、
少なくとも[1]に記載の方法。
[23] 前記ペーストを、前記有形物体(20)に施用するか、または前記有形物体上へのスプレー塗りによる前記コーティングによって被覆されていない少なくとも前記領域(32、33、34)に施用すること
を特徴とする、
[22]に記載の方法。
[24] 前記ペーストを調製するために、前記塩を、不燃性物質、一価または多価アルコール、ハロゲン化炭化水素化合物、水の群からの、特に1,4-ブタンジオール、ヘキサントリオール、アセトン、水または1種以上の物質の混合物の群からの少なくとも1種の物質と混合すること
を特徴とする、
先行する[1]から[23]の少なくとも1に記載の方法。
[25] 特に少なくとも0.5mmの厚さD、特に1mm<D<3mmの厚さDにおいて、前記ペーストを、好ましくは、前記有形物体(20)のすべての表面に施用すること
を特徴とする、
先行する[1]から[24]の少なくとも1に記載の方法。
[26] 歯科用物品の形状を有する有形物体(20)、特にケイ酸リチウムガラスセラミック製のブリッジまたは歯科用物品の一部の形状を有する有形物体(20)であり、前記有形物体の表面(22)が、少なくとも複数の領域にわたって、材料、たとえば上薬材料、ベニアリング材料および/または染色材料を前記有形物体に施用し、続いて熱処理することによる焼成済みコーティングを有する、有形物体であって、
前記コーティングが、前記有形物体(20)の前記表面(22)の複数の領域のみに限定されていること、および、前記コーティングによって被覆されていない前記有形物体の少なくとも領域(32、33、34)において、直径のより大きなアルカリ金属イオンによるリチウムイオンの置きかえによって表面圧縮応力を発生させること
を特徴とする、
有形物体。
[27] 少なくとも、前記有形物体(20)の基礎領域(24)、特にブリッジの接続具の基礎領域において、コーティングが存在しないこと
を特徴とする、
[26]に記載の有形物体。
[28] 前記有形物体(20)の、引張応力にさらされる前記領域(32、33、34)の領域において、コーティングが存在しないこと
を特徴とする、
[26]に記載の有形物体。
[29] 前記アルカリ金属イオンが、Na、K、Csおよび/またはRbイオン、特にNaイオンもしくはKイオンまたはNaおよびKイオンであること
を特徴とする、
[26]に記載の有形物体。
[30] 前記有形物体(20)または前記有形物体が調製されるブランクのガラス相が、前記有形物体の強度を増大させる少なくとも1種の安定剤、特にZrO
2
の形態の少なくとも1種の安定剤を含有し、前記有形物体の出発組成における前記安定剤の濃度が、好ましくは8~12重量%であること
を特徴とする、
[26]に記載の有形物体。
[31] 前記有形物体(20)を、重量百分率で以下の成分:
・ SiO
2
50~80、好ましくは52~70、特に好ましくは56~61
・ 核形成剤、たとえばP
2
O
5
、
0.5~11、好ましくは3~8、特に好ましくは4~7
・ Al
2
O
3
0~10、好ましくは0.5~5、特に好ましくは1.5~3.2
・ Li
2
O 10~25、好ましくは13~22、特に好ましくは14~21
・ K
2
O 0~13、好ましくは0.5~8、特に好ましくは1.0~2.5
・ Na
2
O 0~1、好ましくは0~0.5、特に好ましくは0.2~0.5
・ ZrO
2
0~20、好ましくは4~16、特に6~14、特に好ましくは8~12
・ CeO
2
0~10、好ましくは0.5~8、特に好ましくは1.0~2.5
・ Tb
4
O
7
0~8、好ましくは0.5~6、特に好ましくは1.0~2.0
・ オプションとして、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの群からの1種以上のアルカリ土類金属の1種以上の酸化物
0~20、好ましくは0~10、特に好ましくは0~5、
・ オプションとして、B
2
O
3
、MnO
2
、Fe
2
O
3
、V
2
O
5
、TiO
2
、Sb
2
O
3
、ZnO、SnO
2
およびフルオリドの群からの1種以上の添加剤
0~6、好ましくは0~4
・ オプションとして、原子番号57、59~64、66~71の希土類金属の1種以上の酸化物、特にランタン、イットリウム、プラセオジム、エルビウム、ユウロピウムの1種以上の酸化物
0~5、好ましくは0~3
を含有するガラス溶融物から調製すること
を特徴とする、
少なくとも[26]に記載の有形物体。
[32] 前記有形物体(20)を、重量百分率で以下の成分:
SiO
2
58.1±2.0
P
2
O
5
5.0±1.5
Al
2
O
3
4.0±2.5
Li
2
O 16.5±4.0
K
2
O 2.0±0.2
ZrO
2
10.0±0.5
CeO
2
0~3、好ましくは1.5±0.6
Tb
4
O
7
0~3、好ましくは1.2±0.4
Na
2
O 0~0.5、好ましくは0.2~0.5
を含有するガラス溶融物から調製すること
を特徴とする、
少なくとも[26]に記載の有形物体。
[33] 前記有形物体が、20~65体積%までの範囲のガラス相を有すること
を特徴とする、
少なくとも[26]に記載の有形物体。
[34] 前記有形物体が、前記物体(20)に対して35体積%乃至80体積%のケイ酸リチウム結晶を含有すること
を特徴とする、
少なくとも[26]に記載の有形物体。
[35] 前記リチウムイオンを置きかえるアルカリイオンの百分率が、コーティングによって被覆されていない前記領域(32、33、34)の表面を起点として10μmの深さに至るまでで、5~20重量%までの範囲であり、および/または、前記表面から8乃至12μmの深さにおいて、アルカリイオンの百分率が、5~10重量%までの範囲であり、および/または、前記表面から12乃至14μmの層深さにおいて、アルカリイオンの百分率が、4~8重量%までの範囲であり、および/または、前記表面から14乃至18μmの深さにおいて、アルカリイオンの百分率が、1~3重量%までの範囲であり、前記アルカリイオンの重量百分率が、層を経るごとに低下していくこと
を特徴とする、
[26]から[34]の少なくとも1に記載の有形物体。