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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
H05K1/14 C
H05K1/14 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018044256
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019160959
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝昌
(72)【発明者】
【氏名】入江 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】村山 之二
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-165084(JP,A)
【文献】特開2016-072514(JP,A)
【文献】特開平06-181385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換する光サブアセンブリと、
前記光サブアセンブリと電気的に接続される回路が設けられた回路基板と、
前記光サブアセンブリと前記回路基板とを接続するフレキシブル基板と、を備え、
前記回路基板は、その一方の主面に段差を有し、
前記フレキシブル基板と前記回路基板との接続部にて、当該両基板の主面は互いに交差する向きに配置され、前記フレキシブル基板の先端部の前記主面は前記段差の側面に当接され
前記フレキシブル基板の前記先端部の端面は前記段差の底面に当接すること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、
前記段差として前記回路基板の主面に、前記フレキシブル基板の前記先端部を挿入される溝が設けられていること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光モジュールにおいて、
前記回路基板の他方の主面のうち前記接続部の背面位置に電子部品を配置されていること、を特徴とする光モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
それぞれ前記電気信号を伝達するプリント配線であって、前記フレキシブル基板に設けられた第1信号線路と前記回路基板に設けられた第2信号線路とを有し、
前記接続部にて互いに接合される前記第1信号線路と前記第2信号線路とは同一の線幅を有すること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、
前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、
前記第1信号線路の前記回路基板側の末端は、前記段差の前記上端の高さに位置すること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板は、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面を凸にして、前記光サブアセンブリから前記回路基板に向かう方向に沿って単一の向きに湾曲していること、を特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、
前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、
前記第1信号線路は、前記光サブアセンブリ側から前記回路基板側まで連続して、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面に設けられること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項8】
光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換する光サブアセンブリと、
前記光サブアセンブリと電気的に接続される回路が設けられた回路基板と、
前記光サブアセンブリと前記回路基板とを接続するフレキシブル基板と、を備え、
前記回路基板は、その一方の主面に段差を有し、
前記フレキシブル基板と前記回路基板との接続部にて、当該両基板の主面は互いに交差する向きに配置され、前記フレキシブル基板の先端部の前記主面は前記段差の側面に当接され、
前記回路基板の他方の主面のうち前記接続部の背面位置に電子部品を配置されていること、
を特徴とする光モジュール
【請求項9】
請求項8に記載の光モジュールにおいて、
前記段差として前記回路基板の主面に、前記フレキシブル基板の前記先端部を挿入される溝が設けられていること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の光モジュールにおいて、
それぞれ前記電気信号を伝達するプリント配線であって、前記フレキシブル基板に設けられた第1信号線路と前記回路基板に設けられた第2信号線路とを有し、
前記接続部にて互いに接合される前記第1信号線路と前記第2信号線路とは同一の線幅を有すること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、
前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、
前記第1信号線路の前記回路基板側の末端は、前記段差の前記上端の高さに位置すること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板は、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面を凸にして、前記光サブアセンブリから前記回路基板に向かう方向に沿って単一の向きに湾曲していること、を特徴とする光モジュール。
【請求項13】
請求項8から請求項12のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、
前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、
前記第1信号線路は、前記光サブアセンブリ側から前記回路基板側まで連続して、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面に設けられること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項14】
光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換する光サブアセンブリと、
前記光サブアセンブリと電気的に接続される回路が設けられた回路基板と、
前記光サブアセンブリと前記回路基板とを接続するフレキシブル基板と、を備え、
前記回路基板は、その一方の主面に段差を有し、
前記フレキシブル基板と前記回路基板との接続部にて、当該両基板の主面は互いに交差する向きに配置され、前記フレキシブル基板の先端部の前記主面は前記段差の側面に当接され、
前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、
前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、
前記第1信号線路の前記回路基板側の末端は、前記段差の前記上端の高さに位置すること、
を特徴とする光モジュール
【請求項15】
請求項14に記載の光モジュールにおいて、
前記段差として前記回路基板の主面に、前記フレキシブル基板の前記先端部を挿入される溝が設けられていること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載の光モジュールにおいて、
前記回路基板の他方の主面のうち前記接続部の背面位置に電子部品を配置されていること、を特徴とする光モジュール。
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
それぞれ前記電気信号を伝達するプリント配線であって、前記フレキシブル基板に設けられた第1信号線路と前記回路基板に設けられた第2信号線路とを有し、
前記接続部にて互いに接合される前記第1信号線路と前記第2信号線路とは同一の線幅を有すること、
を特徴とする光モジュール。
【請求項18】
請求項14から請求項17のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板は、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面を凸にして、前記光サブアセンブリから前記回路基板に向かう方向に沿って単一の向きに湾曲していること、を特徴とする光モジュール。
【請求項19】
請求項14から請求項18のいずれか1つに記載の光モジュールにおいて、
前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、
前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、
前記第1信号線路は、前記光サブアセンブリ側から前記回路基板側まで連続して、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面に設けられること、
を特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおいて、光信号及び電気信号の一方から他方に、又は双方向に変換する光モジュールが用いられている。光モジュールは1つの筐体内に、光サブアセンブリ(Optical SubAssembly:OSA)と、リジッド基板からなる回路基板と、それらOSAと回路基板とを接続するフレキシブル基板とを収める。
【0003】
OSAは、レーザダイオード(Laser Diode:LD)などの発光デバイスやフォトダイオード(Photodiode:PD)などの受光デバイスを含む。回路基板には配線などの導体パターンが形成され、レーザダイオードへ電気信号を出力する駆動回路やフォトダイオードから出力された電気信号をクロックとデータに分離するCDR(Clock Data Recovery)などを構成する電子部品が実装される。また、フレキシブル基板はいわゆるフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)であり、FPCにはOSAと回路基板との間で電気信号を伝達する信号線路が導体パターンで形成される。
【0004】
回路基板とFPCとは従来、下記特許文献1に示されるように、回路基板の主面上にFPCの端部の主面を重ねて接続される。また、回路基板上にFPCを接続するためのコネクタを搭載することも行われる。また、下記特許文献2には、回路基板に設けた貫通孔にFPCの先端を挿入して固定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-57567号公報
【文献】特開2015-19021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光モジュールは、近年のブロードバンドネットワークの普及とともに高速化、小型化が図られている。しかし、回路基板とFPCの端部と主面同士を向かい合わせて重ね接合する構造では、回路基板上にてFPCが重畳された部分の面積や、FPCと回路基板との配線同士を接合するはんだ付けに使用される面積が比較的に大きくなる。つまり、回路基板上にて電子部品を実装できないデッドスペースが大きくなる。一方、回路基板における電子部品の実装密度の向上には限界がある。そのため、回路基板の小型化が妨げられ、光モジュールの一層の小型化が難しくなっている。また、当該構造では回路基板とFPCとのはんだ接続用に接続パッドを設ける必要があるために、高周波特性上不利であるという問題もあった。回路基板上にコネクタを搭載する構造も、コネクタの占有面積に起因して電子部品の実装可能な面積が少なくなり、回路基板の小型化が難しいという問題を有する。また、回路基板にFPCの接続に用いる貫通孔を設けると、その部分の回路基板の両面にて電子部品の実装に関するデッドスペースが生じ、やはり回路基板の小型化が難しいという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、回路基板へのFPCの接続に伴う上記デッドスペースを低減し、回路基板の小型化、ひいては光モジュールの小型化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る光モジュールは、光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換する光サブアセンブリと、前記光サブアセンブリと電気的に接続される回路が設けられた回路基板と、前記光サブアセンブリと前記回路基板とを接続するフレキシブル基板と、を備え、前記回路基板は、その一方の主面に段差を有し、前記フレキシブル基板と前記回路基板との接続部にて、当該両基板の主面は互いに交差する向きに配置され、前記フレキシブル基板の先端部の前記主面は前記段差の側面に当接される。
【0009】
(2)上記(1)に記載の光モジュールにおいて、前記段差として前記回路基板の主面に、前記フレキシブル基板の前記先端部を挿入される溝が設けられている構成とすることができる。
【0010】
(3)上記(1)及び(2)に記載の光モジュールにおいて、前記回路基板の他方の主面のうち前記接続部の背面位置に電子部品を配置されている構成とすることができる。
【0011】
(4)上記(1)~(3)に記載の光モジュールにおいて、それぞれ前記電気信号を伝達するプリント配線であって、前記フレキシブル基板に設けられた第1信号線路と前記回路基板に設けられた第2信号線路とを有し、前記接続部にて互いに接合される前記第1信号線路と前記第2信号線路とは同一の線幅を有する構成とすることができる。
【0012】
(5)上記(1)~(4)に記載の光モジュールにおいて、前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、前記第1信号線路の前記回路基板側の末端は、前記段差の前記上端の高さに位置する構成とすることができる。
【0013】
(6)上記(1)~(5)に記載の光モジュールにおいて、前記フレキシブル基板は、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面を凸にして、前記光サブアセンブリから前記回路基板に向かう方向に沿って単一の向きに湾曲している構成とすることができる。
【0014】
(7)上記(1)~(6)に記載の光モジュールにおいて、前記フレキシブル基板に設けられ前記電気信号を伝達するプリント配線である第1信号線路と、前記回路基板の前記段差の上段面に設けられ前記段差の上端にて前記第1信号線路と接合される第2信号線路と、を有し、前記第1信号線路は、前記光サブアセンブリ側から前記回路基板側まで連続して、前記フレキシブル基板の主面のうち前記段差に当接される側の面に設けられる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば光モジュールの一層の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光モジュールの構成を示す模式的な上面図である。
図2図1のII-II線に沿った位置での光モジュールの主要部の模式的な垂直断面図である。
図3】FPCと回路基板との接続部を斜め上方から見た模式的な斜視図である。
図4】FPCと回路基板との接続部の模式的な垂直断面図である。
図5】FPCと回路基板との接続部の模式的な上面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る光モジュールにおけるFPCと回路基板との接続部の模式的な垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る光モジュール1の構成を示す模式的な上面図である。図2図1のII-II線に沿った位置での光モジュール1の主要部の模式的な垂直断面図である。なお、図1及び図2には説明の便宜のため、直交座標系であるXYZ座標系の座標軸を示している。当該XYZ座標系は右手系である。光モジュール1は例えば、細長い直方体の概略形状を有し、その長手方向をX軸に設定する。また、以下の説明では便宜上、X軸及びY軸を水平な2軸とし、Z軸を上下方向とする。
【0019】
光モジュール1は、その機能上の主要部としてOSA2、回路基板3、及びOSA2と回路基板3とを接続するFPC4を有し、また当該主要部を格納する筐体5を有する。なお、図1は筐体5の内部に配置された主要部が見えるように、筐体5の上板を外した状態を示している。
【0020】
回路基板3は筐体5内に水平に位置する。つまり、回路基板3の主面はXY面に沿い、当該主面に垂直な方向がZ軸方向となる。ここで、図1は光モジュール1を上から見た図であり、回路基板3の主面である上側表面及び下側表面のうち上側表面が手前に現れている。
【0021】
光モジュール1の長手方向の一方端(図1にて右側)は伝送装置等のホスト機器(不図示)に接続され、他方端(図1にて左側)は光ファイバ6に接続される。これに対応して、基本的にOSA2は光ファイバ6との接続端に近づけて配置され、回路基板3はホスト機器との接続端に近づけて配置される。また、光モジュール1は光ファイバ6を接続するためのコネクタとして例えば、光レセプタクル7をOSA2と光ファイバ6との間に備え、また、ホスト機器との接続のためのコネクタとして例えば、回路基板3のホスト機器側の端部にカードエッジコネクタ8が設けられる。
【0022】
本実施形態の光モジュール1は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバであり、OSA2として、送信用であるTOSA(Transmitter Optical Subassembly)2aと、受信用であるROSA(Receiver Optical Subassembly)2bとを有する。TOSAは例えば、レーザダイオードを備え、回路基板3から入力された電気信号を光信号に変換し、光ファイバ6aへ出力する。一方、ROSAは例えば、フォトダイオードを備え、光ファイバ6bから入力された光信号を電気信号に変換し回路基板3へ出力する。なお、本実施形態では、TOSA2aとROSA2bとはY軸方向に間隔を設けて並置されている。
【0023】
OSA2の回路基板3側にはFPC4を介して回路基板3に接続される端子が設けられる。本実施形態で図示する例では、当該端子は例えば、OSA2と一体のセラミック基板9の表面に導体パターンで形成される。また、OSA2をプリント基板上に実装する場合には、当該端子は当該プリント基板上に設けることができる。なお、単にプリント基板と記した場合、当該基板は基本的にはリジッド基板であるとする。
【0024】
回路基板3はプリント基板である。また回路基板3は例えば多層基板であり、特に本実施形態で示す例では両方の主面に電子部品を実装可能な両面基板である。回路基板3にはOSA2と電気的に接続される回路が設けられる。具体的には、回路基板3には配線などの導体パターンが形成され、回路基板3の主面、つまり上側表面3u及び下側表面3dには例えば、TOSAへ電気信号を出力する駆動回路やROSAから出力された電気信号からクロックとデータに分離するCDRなどを構成する電子部品10として集積回路(Integrated Circuit:IC)などが搭載される。また電子部品10は、TOSAとROSAの駆動を制御する制御IC(マイコン)や、電源回路、さらには抵抗やコンデンサなども含まれる。
【0025】
FPC4はOSA2と回路基板3とを電気的に接続する。具体的にはFPC4にはOSA2と回路基板3とを接続する信号線路11(第1の信号線路)がプリント配線で形成され、当該信号線路11を介して電気信号が例えば、回路基板3からTOSAへ伝達され、またROSAから回路基板3へ伝達される。なお、本実施形態では2つのOSA2(2a,2b)を別々のFPC4(4a,4b)で回路基板3に接続する例を示している。
【0026】
次に、FPC4を用いたOSA2と回路基板3との接続構造に関して説明する。
【0027】
図3はFPC4と回路基板3との接続部を斜め上方から見た模式的な斜視図である。また、図4はFPC4と回路基板3との接続部の模式的な垂直断面図である。図4には図1及び図2と共通のXYZ座標系の座標軸を示している。
【0028】
回路基板3は上側表面3uに、FPC4の先端部が挿入される溝12を有する。溝12は回路基板3の信号線路20(第2の信号線路)とFPC4の信号線路11(第1の信号線路)とを接続する目標位置にFPC4の先端部を係止する機能を有する。当該機能により、両信号線路をはんだ等で接合する際に、FPC4の先端部の信号線路を回路基板3上での接続目標位置に保つことが容易となる。
【0029】
溝12の形状は基本的に当該機能を果たすように設定される。具体的には、溝12の幅(X方向の寸法)はFPC4の厚みより大きく設定され、溝12の長さ(Y方向の寸法)はFPC4の幅より大きく設定される。なお、本実施形態にて図示した例では、FPC4aが挿入される溝12(溝12aとする。)とFPC4bが挿入される溝12(溝12bとする。)とは、連続した1本の溝として形成している。この点、溝12aと溝12bとは互いに分離した2つの溝として形成することもでき、その場合、溝12aと溝12bとはX方向の位置を互いにずらして形成することもできる。
【0030】
また、溝12の深さ、垂直断面形状も上述の機能を果たすように定められる。この点、溝12は回路基板3の厚みの途中までの深さを有するものであり、回路基板3を貫通する孔ではない。つまり、溝12はFPC4の先端部の上下方向の位置を制限することで、上述の機能に資する。さらに孔とは異なる点として、溝12の裏側に位置する下側表面は回路基板3における回路形成にてデッドスペースとならず、例えば電子部品10の配置スペースや配線スペースとして利用できるので、回路基板3の小型化、ひいては光モジュール1の小型化を図ることができる。
【0031】
溝12の垂直断面形状に関しては、例えば、図4に示すように、垂直な側面と水平な底面とからなる矩形溝とすることができる。また、溝12の垂直断面形状はU字型など他の形状とすることもできる。なお、回路基板3の主面にて溝12はその底に下端が位置し上側表面の開口端を上端とする段差をなす。
【0032】
FPC4と回路基板3との接続部にて、FPC4の先端部はその主面を横に向けて溝12に挿入される。つまり、FPC4の先端部の主面と回路基板3の主面とは互いに交差する向きに配置される。基本的には、FPC4の先端部と回路基板3とは互いの主面が略垂直をなすように配置される。このようにFPC4を回路基板3に対して立てて接続することで、回路基板3上における接続部の占有面積を、例えば、FPC4の先端部の主面を回路基板3の主面に重畳したり、回路基板3上にコネクタを搭載したりしてFPC4を回路基板3に接続する構造よりも小さくすることができる。よって、この点でも回路基板3における回路形成に対するデッドスペースが抑制され、回路基板3の小型化、ひいては光モジュール1の小型化を図ることができる。
【0033】
FPC4の先端部の主面は溝12の段差の側面に当接される。具体的には、図2又は図4にてFPC4の先端部の主面は溝12の右側の側面に当接される。本実施形態では、OSA2は図2又は図4にて溝12の左側上方に位置し、FPC4のOSA2側の端部はその主面を水平にして、セラミック基板9等に設けられたOSA2の端子に接続される。FPC4は、その2つの主面のうち段差に当接される側の主面4uが凸になるように、OSA2から回路基板3に向かう方向に沿って単一の向きに湾曲される。つまり、OSA2側から回路基板3側に向けてFPC4は下向きに、かつ途中に変曲点を有さずに曲げられる。これにより、OSA2側の端部では上を向いていたFPC4の主面4uが回路基板3側の端部では右に向けられ、溝12の右側の側面に当接される。その際、撓みを伸ばそうとするFPC4の弾性によって回路基板3側におけるFPC4の先端部に右向きに働く力を利用して、当該先端部を溝12の側面に押し当てることができる。
【0034】
図5は1つのOSA2に接続されたFPC4と回路基板3との接続部の模式的な上面図であり、第1の信号線路としてFPC4に設けられる信号線路11、及び第2の信号線路として回路基板3に設けられる信号線路20それぞれのパターンの例を示している。なお、図5にてIV-IV線に沿った垂直断面図が図4に相当する。
【0035】
例えば、FPC4にはOSA2と回路基板3側の回路との間の信号線路11として、高周波信号を差動形式で伝送する一対の高周波信号線路11sと、接地電位を伝達する接地電極11gとが形成される。なお、図5に示す例では、接地電極11gは、一対の高周波信号線路11sの両側にそれぞれ配置され、これにより、高周波信号線路11sに対するシールドの効果を期待できる。
【0036】
一方、回路基板3の上側表面3uにはFPC4の各信号線路11に対応したプリント配線として信号線路20が形成される。すなわち、信号線路20として、高周波信号線路11sに接続される一対の高周波信号線路20sと、接地電極11gに接続される接地電極20gとが設けられる。なお、接地電極11gを高周波信号線路11sの両側に配置することに対応して、接地電極20gも高周波信号線路20sの両側に配置している。
【0037】
互いに接合される信号線路11と信号線路20とは、その接合部分でのインピーダンスマッチングを図るように構成される。特に、互いに接合される高周波信号線路11sと高周波信号線路20sとは同一の線幅として、接合部でのインピーダンスマッチングを図る。
【0038】
信号線路11と信号線路20とはFPC4と回路基板3との接続部にて例えば、はんだ21で接合される。具体的には、信号線路11はFPC4の2つの主面4u,4dのうち湾曲の外側の主面4u、つまり図4に示すように、凸に湾曲し、かつ先端部が溝12の段差側面に当接される側の主面に形成される。当該信号線路11は図4に示すように、回路基板3側において溝12の右側の段差の上端に達する。一方、信号線路20は溝12の右側の上側表面3uに配置され、信号線路20の末端は図4に示すように溝12の右側の段差の上端に位置する。よって、信号線路11と信号線路20とは溝12の右側の段差の上端にて接触又は接近し、当該箇所にてはんだ21で接合される。ちなみに、FPC4の先端部の主面4dを回路基板3の主面に重畳する従来の構造では、FPC4の上側の主面4uに形成された信号線路と回路基板3の上側表面3uに形成された信号線路とを接続するために、例えばビアや接続パッドを設ける。これに対して、上述した本実施形態の接続構造では、信号線路11と信号線路20との接触・接近箇所を直接に接合するので、高周波特性の劣化を抑制できる。なお、接合部材ははんだに限られず、例えば、導電性樹脂など他の材料を用いて信号線路11,20を電気的に接続することもできる。
【0039】
ここで、信号線路11の回路基板3側の末端の位置は段差の上端の高さ又はややその上とすることができる。つまり、FPC4の回路基板3側の先端部において、段差の上端より下に配置される部分には信号線路11は形成されない。これにより、図4に示すように信号線路11と信号線路20との接続部にて、回路基板3の上側表面3uに位置する信号線路20より下には信号線路11が伸びない構造となる。当該構造では、信号線路11と信号線路20との接続部にて不要な共振が発生しにくい。よって、特に高周波信号線路11sを当該構造とすることで、高周波信号線路11s,20sを伝送される信号の高周波特性の劣化を防ぐ効果が得られる。
【0040】
上述の例では、信号線路11はOSA2側から回路基板3側まで連続して、FPC4の2つの主面のうち段差に当接される側の主面4uに設けられ、当該信号線路11は段差の上端にて信号線路20と面する。これに対し、OSA2側から回路基板3側までの経路のうち少なくとも一部にて信号線路11をFPC4の反対側の主面4dに形成し、当該経路の途中でビアを介して信号線路11を段差に当接される側の主面4uに引き出して信号線路20に接続する構造が考えられる。例えば、当該構造は接地電極11gについて採用することができる。一方、高周波信号線路11sについては、ビアとその他の部分とでのインピーダンスのずれなどが、高周波信号線路11sを伝送される信号の高周波特性に影響し得る。そこで、本実施形態では、上述の例で示す構造とすることで、高周波信号線路11sを伝送される信号の特性劣化を抑制している。なお、OSA2のセラミック基板9とFPC4との接続部においては、FPC4の端部において高周波信号線路11sはビアを介して主面4dに引き出されたのちセラミック基板9の表面に設けられた導体パターンと電気的に接続されても良い。
【0041】
なお、図1及び図2に示すように、回路基板3内における溝12のX方向の位置は比較的にOSA2寄りとしている。ここで、OSA2と回路基板3とはZ方向にずれた位置にあるので、OSA2と回路基板3の上側表面3uとの間に電子部品10を配置し得る。よって、平面視にてOSA2と回路基板3とが重畳部分を有するように配置しつつ、当該重畳部分における回路基板3の上側表面3uを部品実装領域として利用することで、光モジュール1の一層の小型化を図ることができる。この場合には、溝12のX方向の位置は図に示す例よりも右側となり得る。
【0042】
[第2の実施形態]
図6は本発明の第2の実施形態に係る光モジュール1のFPC4と回路基板3との接続部の模式的な垂直断面図であり、第1の実施形態の図4と対比することができる。図4図2に示す光モジュール1のFPC4と回路基板3との接続部分を表していた。本実施形態の光モジュール1は図2の当該接続部分を図6で示す構造で置き換えたものであり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様である。
【0043】
具体的には、本実施形態の光モジュール1において第1の実施形態と相違する構成要素は回路基板であり、第1の実施形態の回路基板3に代えて回路基板3Bが用いられている。回路基板3Bが回路基板3と異なる点は、FPC4の先端部が当接される回路基板表面の段差30が溝によって形成されていないことである。つまり、回路基板3の溝12がその幅方向の両側にそれぞれ段差を有するのに対し、回路基板3Bの段差30は片側のみである。
【0044】
図6の部分断面に対応する本実施形態の光モジュール1の主要部の全体の垂直断面図は上述のようにFPC4と回路基板3との接続部分を除いて基本的に図2と同様であり、OSA2は回路基板3の左上に位置し、また、FPC4はその一方端を水平にしてOSA2に接続され、当該一方端にて上側にある主面4uがOSA2と回路基板3との間で凸になるように湾曲されて、他方端を回路基板3に対して垂直に接続される。
【0045】
図6に示すように、段差30により回路基板3Bの上側表面3uには高低差が設けられ、上段面31と、上段面31より低い下段面32と、上段面31と下段面32とを縦方向につなぐ側面33とが形成される。ちなみに、上段面31及び下段面32は水平面であり、側面は例えば垂直面である。図6では上段面31は段差30より右側、下段面32は段差30より左側に位置し、側面33はその表面を左側に向ける。FPC4の主面4uにおける回路基板3側の先端部は、この段差30の側面33に当接される。はんだ21等によるFPC4の信号線路11と回路基板3の信号線路20との接合は、第1の実施形態と同様に、FPC4の先端部が段差30に当接され係止された状態で行うことができる。
【0046】
例えば、段差30は、多層基板の層数を上段面31側と下段面32側とで異ならせることで形成できる。
【0047】
本実施形態においても第1の実施形態と同様、FPC4を回路基板3に接続する部分でのデッドスペースを抑制でき、回路基板3の小型化、ひいては光モジュール1の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 光モジュール、2 光サブアセンブリ(OSA)、3,3B 回路基板、4 フレキシブルプリント基板(FPC)、5 筐体、6 光ファイバ、7 光レセプタクル、8 カードエッジコネクタ、9 セラミック基板、10 電子部品、11 信号線路、11g 接地電極、11s 高周波信号線路、12 溝、20 信号線路、21 はんだ、30 段差、31 上段面、32 下段面、33 側面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6