(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】カップ状容器及びそのインモールド成形方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/26 20060101AFI20220704BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220704BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20220704BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B65D1/26 110
B29C45/14
B65D1/02 221
B65D25/20 Q
(21)【出願番号】P 2018046959
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000157887
【氏名又は名称】KISCO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】大石 哲史
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0040068(US,A1)
【文献】特開2003-312678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/26
B29C 45/14
B65D 1/02
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容部の上面にシール蓋を被着するためのフランジを有するカップ状容器であって、
前記容部の両側面に上下方向に伸びる摘持用の浅い窪みが形成され
、前記窪みの上端部に、前記窪みの上縁から前記フランジに達する段部が形成され、前記段部は前記窪みの中心が最下位となる湾曲傾斜面にされ、前記湾曲傾斜面は、その上に乗った充填物が直ちに滑落し得る傾斜角度にされることを特徴とするカップ状容器。
【請求項2】
前記カップ状容器はインモールド成形されたものであり、前記容部の外周面に被着されたラベルは、段部外面対応部においてその上縁が少し段部外面に掛かっている、請求項
1に記載のカップ状容器。
【請求項3】
前記ラベルは透明である、請求項
2に記載のカップ状容器。
【請求項4】
請求項
1に記載のカップ状容器をインモールド成形するための方法であって、
前記容部の外周面に被着するラベルとして、段部外面対応部においてその上縁が少し段部外面に掛かる形状のラベルを用いることを特徴とするカップ状容器のインモールド成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ状容器及びそのインモールド成形方法に関するものであり、より詳細には、持ちやすい形状の食品等包装用樹脂製カップ状容器及びそのインモールド成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品包装等に用いられる樹脂製カップ状容器の多くは、周側面が全体的に凹凸のない曲面の円錐台形状である。そして、それにラベリングするための方法としては、通例、雌型の内側面に予め絵柄や文字を印刷したラベルを密着配置し、雌型内に雄型を挿入して型閉じし、射出成形を行うことで、カップ状容器の外周面にラベルを被着するインモールド成形法が用いられる(例えば、特開平8-132477号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記樹脂製カップ状容器の多くは、周側面が凹凸のない曲面の円錐台形状であり、それは、持ちやすさとか滑りにくさとかに配慮した形状ではない。また、インモールド成形法は、最終成形品が円錐台形状や円筒形状のような、周側面が凹凸のない曲面である場合には特に問題はないが、凹凸のある形状の場合は、ラベルが成形品の外周面に綺麗に密着しにくく、しわ寄り等が起きやすいという問題がある。また、言うまでもなく、容部上端のシール蓋を被着するためのフランジは、シール密着性の観点から、全体的に平坦であることが要請される。
【0005】
本発明はこのような背景の下になされたもので、持ちやすく且つ滑りにくい形状であり、また、容体上縁のフランジに対するシール蓋のシール密着性が良好なカップ状容器を提供することを課題とする。また、本発明は、そのようなカップ状容器を綺麗にインモールド成形するためのインモールド成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、容部の上面にシール蓋を被着するためのフランジを有するカップ状容器であって、
前記容部の両側面に上下方向に伸びる摘持用の浅い窪みが形成され、前記窪みの上端部に、前記窪みの上縁から前記フランジに達する段部が形成され、前記段部は前記窪みの中心が最下位となる湾曲傾斜面にされ、前記湾曲傾斜面は、その上に乗った充填物が直ちに滑落し得る傾斜角度にされることを特徴とするカップ状容器である。
【0008】
一実施形態においては、前記カップ状容器はインモールド成形されたものであり、前記容部の外周面に被着されたラベルは、段部外面対応部においてその上縁が少し段部外面に掛かっている。前記ラベルは透明の場合がある。
【0009】
上記課題を解決するための請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のカップ状容器をインモールド成形するための方法であって、
前記容部の外周面に被着するラベルとして、段部外面対応部においてその上縁が少し段部外面に掛かる形状のラベルを用いることを特徴とするカップ状容器のインモールド成形方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るカップ状容器は、容部側面に上下方向に伸びる浅い窪みが形成されたものであるので、その窪みに指を当てて持つことにより、持ちやすく且つ滑りにくいという効果がある。また、容部側面の窪みの上端部に湾曲傾斜面である段部が形成されることにより、フランジが異形になることが回避されるため、シール蓋のフランジに対するシール密着性とピール性が損なわれないという効果がある。
【0011】
本発明に係るカップ状容器のインモールド成形方法の場合は、ラベルとして段部外面対応部においてその上縁が少し段部外面に掛かる形状のものが用いられ、インモールド成形に伴って段部外面対応部においてそのラベルの上縁が少し段部外面に掛かるために、成形収縮に伴うフランジの垂れ下がりが抑止されてフランジの平滑性が保たれ、以て、シール蓋のフランジに対する良好なシール密着性が確保される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るカップ状容器の外観例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るカップ状容器の外観例を示す正面図である。
【
図3】本発明に係るカップ状容器の外観例を示す平面図である。
【
図4】
図2におけるA-A線断面図及びその一部拡大図である。
【
図5】一般的インモールド成形方法によった場合の段部外面対応部におけるラベル貼付状態と成形状態を示すである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明に係るカップ状容器1は、容部2の上面にシール蓋9を被着するためのフランジ3を有していて、容部2の側面に、上下方向に伸びる摘持用の浅い窪み4が形成されていることを特徴とするものである。窪み4は、浅く曲面状に窪む凹陥部であり、通例、容部2の両側面に形成される。かかる形状のカップ状容器1は、側面の窪み4に指先を当てて持つことにより、持ちやすく、且つ、滑りにくいものとなる。
【0014】
本発明に係るカップ状容器1の場合、例えば、食品工場においてヨーグルトが容部2内に充填された後シール蓋9が被着され、飲食に際してシール蓋9が剥取される。従って、シール蓋9には、フランジ3に対するシール密着性とピール性が併せ要求される。しかるに、上記のように容部2の側面に窪み4を設けた形状の場合、その窪み4に合わせてフランジ3を異形に形成すると、シール蓋9のフランジ3に対するシール密着性及びピール性が低下するおそれがある。
【0015】
そこで、本発明に係るカップ状容器1においては、フランジ3は、窪み4に沿って凹ませることなく、円形、楕円形等に保つこととしている。そして、窪み4の上端部に、窪み4の上縁からフランジ3に達する段部5が形成される。段部5は、窪み4の中心が最下位となる、即ち、中心が最もフランジ3から離れ、端部に行くに従ってフランジ3に近づく形状の湾曲傾斜面とされる。この段部5は、外周面側から見ると外方膨出面ということになる。以下、この外方膨出面を、段部外面6と称する。
【0016】
このように段部5を湾曲傾斜面とするのは、段部5とフランジ3とが面一であると、フランジ3に接着されるシール蓋9の接着面が増えるために、シール蓋9の剥離性が悪くなるからであり、また、その段部5とフランジ3とが面一あるいはそれに近い傾斜状態であると、ヨーグルト等の充填物の充填時に、充填物が段部5の上に乗った状態でシール蓋9が被着されてしまうおそれがあるからである。その傾斜度合は、その上に乗った充填物が直ちに滑落し得る角度(例えば、45度前後)とされる。
【0017】
一実施形態におけるカップ状容器1は、インモールド成形によって製造される。その場合、容部2に被着されたラベル7は、段部外面6に被さる部分において、段部外面6を避けることなく、その上縁が少し段部外面6に掛かるようにされる(
図2参照)。換言すれば、ラベル7として、段部外面6に被さる部分において、その上縁8が少し段部外面6に掛かる輪郭にしたラベルを用いる。なお、ラベル7として、透明ラベルを用いることもある。
【0018】
本発明に係る方法は、インモールド成形法によって上記カップ状容器1を成形するための方法である。即ち、該方法は、容部2の上面にシール蓋9を被着するためのフランジ3を有すると共に、容部2の側面に上下方向に伸びる摘持用の浅い窪み4を有し、窪み4の上端部にフランジ3に達する段部5が形成されて成るカップ状容器をインモールド成形するための方法であって、容部2に被着するラベル7として、段部外面6に対応する部分において、上縁8が少し段部外面6に掛かる形状のラベル7を用いてインモールド成形することを特徴とするものである。
【0019】
上記段部5のような外方に膨出する凸部を有するカップ状容器をインモールド成形する場合、ラベルを凸部に被せて成形するとラベルにしわが発生するため、一般にラベルは凸部を逃がす形状、換言すれば、凸部に重ならない形状のものが用いられる(
図5参照)。
【0020】
本発明者も、段部5を設けたカップ状容器1のインモールド成形を、当初段部外面6に被さらない輪郭のラベルを用いて行ったところ、段部5形成部分のフランジ3が僅かに垂れ下がり、フランジ3全体の平滑性が損なわれる現象が起こることが判明した(
図5参照)。このフランジ3の垂れ下がりは、成形収縮に伴って発生するものと思われるが、言うまでもなく、このようにフランジ3の垂れ下がりが生じてその平坦性が損なわれると、シール蓋9のフランジ3に対するシール密着性が低下する。
【0021】
この問題を解決するために本発明者は、種々研究開発を進めた結果、容部2に被着するラベル7を、段部外面6対応部においてその上縁8が少し段部外面6に掛かる輪郭にすることによって(
図2参照)、フランジ3の垂れ下がりを抑えることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。ラベル7は、その上縁8が段部外面6に少し、即ち、数mm程度掛かっていればよく、それ以上とした場合には、しわ寄りが発生して見た目が悪くなるおそれがある。
【0022】
上記のとおり、本発明に係るカップ状容器1は、容部2の側面に上下方向に伸びる浅い窪み4が形成されたものであるので、その窪み4に指を当てて持つことにより、持ちやすく且つ滑りにくいものとなり、また、容部2の両側面の窪み4の上端部に湾曲傾斜面である段部5を形成することによりフランジ3が異形にならないようにしているので、シール蓋9のフランジ3に対するシール密着性とピール性が損なわれることはない。
【0023】
更に、本発明に係るカップ状容器のインモールド成形方法の場合は、ラベル7として段部外面6対応部においてその上縁8が少し段部外面6に掛かる輪郭のものが用いられ、インモールド成形に伴って段部外面6対応部においてそのラベル7の上縁8が少し段部外面6に掛かることにより成形収縮が抑制され、以て、フランジ3の平滑性が保たれてシール蓋9のフランジ3に対する良好なシール密着性が確保されるという効果のあるものであって、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0024】
1 カップ状容器
2 容部
3 フランジ
4 窪み
5 段部
6 段部外面
7 ラベル
8 上縁
9 シール蓋