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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】フィルタ容器保持装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/00 20060101AFI20220704BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20220704BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B01D35/00
B01D46/00 C
C02F1/28 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018054887
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019166444
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000232885
【氏名又は名称】株式会社ロキテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】金城 隆司
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-080694(JP,A)
【文献】登録実用新案第3076243(JP,U)
【文献】実開昭52-086066(JP,U)
【文献】実開昭61-190007(JP,U)
【文献】特開2016-061365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0312665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04;35/08-37/08;46/00-46/54
F16B 2/00-2/26
C02F 1/28-1/28
F16B 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ容器を摺動面上で、一の摺動方向に移動可能な可動状態と、前記フィルタ容器を前記摺動面に対して固定する固定状態と、を有するように前記フィルタ容器を保持するフィルタ容器保持装置であって、そのフィルタ容器保持装置は、
前記一の摺動方向に垂直な固定方向に第一の幅を持って、前記摺動面に対して垂直に延在する2つの面を有するベースユニットと、
間隔を持って対向して配置される2つの爪と、前記フィルタ容器を挟持するアームとを、有する保持アダプタと、を備え、
前記2つの爪は、前記2つの面の間に挿入可能となるように前記第一の幅より小さく狭めることが可能な弾性を有し
前記2つの爪が前記第一の幅より小さく狭められているときに前記保持アダプタは前記可動状態にあって、
前記2つの爪のそれぞれは、前記固定状態において前記固定方向に広がって前記2つの面に接することで前記2つの爪のそれぞれと前記2つの面との摩擦により前記保持アダプタが前記摺動面に対して固定されるフィルタ容器保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載したフィルタ容器保持装置であって、
前記ベースユニットは前記一の摺動方向に延在するように前記第一の幅を有する前記摺動面切り欠きとして形成される溝を有し、前記ベースユニットの前記2つの面のそれぞれは前記切り欠きの対向する縁壁の端面であるフィルタ容器保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載したフィルタ容器保持装置であって、
前記ベースユニットの前記2つの面は、前記摺動面に対して垂直な2つの縁壁の内面であるフィルタ容器保持装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載したフィルタ容器保持装置であって、
前記保持アダプタの前記2つの爪のそれぞれは、円弧形状の弾力生成部に取り付けられていて、その円弧形状の曲率が変化することで前記2つの爪の前記幅が変化するフィルタ容器保持装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載したフィルタ容器保持装置であって、
前記保持アダプタは、前記2つの爪と前記アームとの間に前記摺動面と対向するように延在する押さえ板を有し、
前記押さえ板を前記固定方向に押すことで、前記2つの爪の間隔を変化するフィルタ容器保持装置。
【請求項6】
請求項5に記載したフィルタ容器保持装置であって、
前記固定状態において、前記保持アダプタは、前記押さえ板が前記摺動面を押さえつけるフィルタ容器保持装置。
【請求項7】
請求項6に記載したフィルタ容器保持装置であって、
前記押さえ板は弾性部材を有し、前記固定状態において、前記弾性部材は前記押さえ板と前記摺動面との間に位置するフィルタ容器保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、フィルタ容器保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の濾過を目的とした管路では、その管路の一部に、フィルタ等が内蔵され、脱着して交換が可能な交換ユニットとしてのフィルタ容器が配置される。このような管路では、上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間に、管路の一部を欠いていて、フィルタ容器は、この上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間に、脱着可能に取り付けることが可能な構造を有している。たとえば、所定量の濾過が終了した際などに、寿命が経過したフィルタ容器は取り外されて、新しいフィルタ容器に交換される。
【0003】
フィルタ容器は、流路入口と流路出口を有し、フィルタ容器内部において、その流路入口と流路出口との間に流路が形成される。その流路の途中にフィルタが配置され、そのフィルタで流路内の流体に含まれる粒子を捕捉する。従来、一般には、上流側の管路の端部と下流側の管路の端部は、マニホールドの一部として構成されていて、交換ユニットがマニホールドに取り付けられると、交換ユニットの流路入口が上流側管路の端部と接合し、流路出口が下流側管路の端部と接合する。これで、一部を欠いている管路に交換ユニットの流路が結合され、流れ回路システムの管路が完成する。
【0004】
特許文献1には、既設管路の一部として、脱着して交換が可能なフィルタ容器の一例が開示されている。特許文献1では、マニホールドの上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間に、フィルタ容器の管路接合部を中心にフィルタ容器を回転動作で嵌め込むように取り付けられる。特許文献1では、フィルタ容器が取り付けるための上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間の距離が不変であるため、上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間の距離より長いフィルタ容器を嵌め込んで固定している。
【0005】
これに対し、特許文献2には、流し台で使用される浄水器カートリッジが開示されている。ここでは、上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間にフィルタ容器を入れて、流路軸に沿ってスライド可能な剛性の高いスリーブ管を浄水器カートリッジに伸ばして固定する装置が開示されている。すなわち、特許文献2では、フィルタ容器が取り付けるための管路の上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間の距離が可変の例である。特許文献2では、剛性の高い上流側の管路の端部を流路軸に沿ってスライドさせて、上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間の距離を縮めるとともに、フィルタ容器の流路入口と流路出口とを挟持して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許4723531号公報
【文献】特開平3-123689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィルタ容器の種類型式の違いのため、または同形式内でのフィルタ容器の製造公差のために、フィルタ容器の流路入口と流路出口の長さはばらついている。したがって、特許文献2のように、フィルタ容器の取り付けるための管路の上流側の管路の端部と下流側の管路の端部との間の距離が可変とできれば便利である。そして、さらに、上流側の管路の端部と下流側の管路の端部とを剛性が低く柔軟なフレキシブルチューブとすることができれば、非常に便利である。しかし、上流側の管路の端部と下流側の管路の端部とを剛性が低く柔軟なフレキシブルチューブとするためには、フィルタ容器を適切に支持した上で、位置の調整がしやすいフィルタ容器の可動保持装置が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
フィルタ容器を摺動面に対して、一の摺動方向に移動可能な可動状態と、フィルタ容器を前記摺動面に対して固定する固定状態と、を有するフィルタ容器の保持装置であって、その保持装置は、前記摺動方向に垂直な固定方向に第一の幅を持って、前記摺動面に対して垂直に延在する2つの面を有するベースユニットと、間隔を持って対向して配置される2つの爪と、前記フィルタ容器を挟持するアームと有する保持アダプタと、を備え、前記2つの爪は、前記2つの面の間に挿入可能となるように前記第一の幅より小さく狭めることが可能な弾性を有し、前記第一の幅より小さく狭められているときに前記保持アダプタは前記可動状態にあって、前記2つの爪のそれぞれは、前記固定状態において前記固定方向に広がって前記2つの面に接することで前記2つの爪のそれぞれと前記2つの面との摩擦により前記保持アダプタが前記摺動面に対して固定されるフィルタ容器保持装置により解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、移動可能、かつフィルタ容器を強固に保持することが可能なフィルタ保持装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用される実施の形態1のフィルタ保持装置を示している。
図2A】本発明が適用される実施の形態1のフィルタ保持装置の固定状態の保持アダプタの断面を示した図である。
図2B】本発明が適用される実施の形態1のフィルタ保持装置の装着状態の保持アダプタの断面を示した図である。
図2C】本発明が適用される実施の形態1のフィルタ保持装置の可動状態の保持アダプタの断面を示した図である。
図3】本発明が適用される実施の形態2のフィルタ保持装置を示している。
図4A】本発明が適用される実施の形態2のフィルタ保持装置の固定状態の保持アダプタの断面を示した図である。
図4B】本発明が適用される実施の形態2のフィルタ保持装置の装着状態の保持アダプタの断面を示した図である。
図4C】本発明が適用される実施の形態2のフィルタ保持装置の可動状態の保持アダプタの断面を示した図である。
図4D】本発明が適用される実施の形態2のフィルタ保持装置の固定状態の保持アダプタであって、別の形態の弾力生成部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1および図2Aから図2Cを参照して、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明のフィルタ容器保持装置1を示している。フィルタ容器保持装置1は、ベースユニット2と保持アダプタ3とを備えている。フィルタ容器保持装置1は、保持アダプタ3でフィルタ容器4を保持するとともに、保持アダプタ3をベースユニット2に固定し、また一の方向に摺動するように移動が可能となるようにすることでフィルタ容器4をベースユニット2に保持する装置である。図2Aおよび図2Bは、図1の方向Aから示した図である。図2Aは、保持アダプタ3のベースユニット2への固定状態を示した図である。図2Bは、保持アダプタ3のベースユニット2への装着状態を示した図である。図2Cは、保持アダプタ3のベースユニット2への可動状態を示した図である。本明細書では、すべての実施の形態において、その移動方向を「摺動方向」とよぶ。摺動方向に垂直方向であって、保持アダプタ3をベースユニット2に押し込んで装着する方向を「装着方向」とよぶ。また、同様に、すべての実施の形態において、保持アダプタ3をベースユニット2に取り付けている最中の状態を「装着状態」と、保持アダプタ3がベースユニット2に固定されている状態を「固定状態」と、保持アダプタ3がベースユニット2の上を摺動する状態を「可動状態」と、よぶ。
【0012】
ベースユニット2はフィルタ容器4を保持する保持部材として、濾過を行う流体の管路回路の一部に配置される。管路回路は、第一管路端部11と第二管路端部12との間で欠損しており、そこにフィルタ容器4が配置される。フィルタ容器4は、流路入口4aと流路出口4bを有し、フィルタ容器4の内部において、流路入口4aと流路出口4bとの間に流路が形成される。流路入口4aが第一管路端部11と接続し、流路出口4bが第二管路端部12と接続して、流路の欠損部をフィルタ容器4の内部の流路が補って管路回路が完成する第一管路端部11と第二管路端部12はそれぞれフレキシブルチューブ等であって、位置が可変である。たとえば、ねじで螺嵌して結合される。フィルタ容器4は、保持アダプタ3に接続されて、ベースユニット2に取り付けられる。
【0013】
ベースユニット2は少なくとも一方向に長く延在する摺動面24を有する部材であって、たとえば柱状の部材である。ベースユニット2は壁状の部材であってもよい。ベースユニット2は、内部は壁面で画定される空洞状の空間22を形成している。ベースユニット2は代表的にはアルミなどの押し出しで形成された金属とすることができる。内部に壁面を支える支柱部があってもよい。空間22の位置、形状はさまざまな形態を選択することができる。その壁面のうちの一つの壁面である縁壁21には第一の幅dで直線的に長く延在するように穿設された開口たる溝23が形成されている。溝23の延在する方向が摺動方向であり、溝23を有する面が摺動面24となる。すなわち、溝23は、摺動方向に向かった断面において、装着方向に厚さtの縁壁21が第一の幅dをもって切り欠かかれていて、この切り欠きが、溝23を有する縁壁21の内部の空間22と連通していて、摺動方向に垂直な固定方向、すなわち縁壁21の厚さtの方向に第一の幅dを持って摺動面24に対して垂直に延在する対向する2つの面21a,21bを形成している。すなわち、2つの面21a,21bは、摺動面24である縁壁21の切り欠きであって、2つの面21a,21bのそれぞれは切り欠きの対向する縁壁21である。ベースユニット2の溝23が延在する方向(摺動方向)と垂直である第一の幅dの方向を「固定方向」とよぶ。保持アダプタ3は、フィルタ容器4を摺動面24上で、一の摺動方向に移動可能な可動状態と、フィルタ容器4を前記摺動面上で固定する固定状態と、になるようにベースユニット2に取り付けられる。前記ベースユニットは前記一の摺動方向に延在するように第一の幅dを有する摺動面24である縁壁21の切り欠きとして形成される溝23を有し、2つの面21a,21bのそれぞれは溝23を形成する切り欠きの対向する縁壁21の端面である。
【0014】
保持アダプタ3は、アーム31と、2つの爪32とを備えている。保持アダプタ3は、たとえば金属または樹脂でできていて、幾何形状的に、または材料的に、さらにはそれらの組み合わせによって、弾力性を生じるようになっている。幾何形状的に弾性力を有するとは、弾力を生じる形状を付加することで構造的に弾力性を有することである。材料的に弾性力を有するとは、フィルタ容器4の断面は少なくとも一部に少なくとも円弧などの曲面を有する形状であり、代表的には円形状である。アーム31の態様としては、たとえば、2つのアーム31a、31bを具備していて、アーム31aとアーム31bとで形成されるアーム31の内周の形状はフィルタ容器4の外周とほぼ同じ円を構成する円弧を有している。アーム31aとアーム31bとの間隔は、フィルタ容器4の直径より小さい。フィルタ容器4をアーム31aとアーム31bとの間に嵌め込む際には、保持アダプタ3の可塑性による弾性力でアーム31aとアーム31bとの間隔は、フィルタ容器4をその間隔に押し込むことで、フィルタ容器4の直径よりも大きくなるように変形可能である。フィルタ容器4がアーム31aとアーム31bとの間に収まった後には、アーム31aとアーム31bとで形成されるアーム31の内周の形状はフィルタ容器4の外周の形状に戻る。弾性変形で、アーム31aとアーム31bのそれぞれの円弧形状の曲率が弾性変化によって変化することで、フィルタ容器4がアーム31aとアーム31bとの間を通過可能となる上、アーム31aとアーム31bとによりフィルタ容器4を保持可能となる。たとえば、フィルタ容器4の断面が円の形状の場合には、アーム31aとアーム31bとの内面の形状を、それぞれ、フィルタ容器4の断面の円の一部である円弧の形状とすることが好ましい。これにより、アーム31aとアーム31bとがフィルタ容器4を保持する際に、アーム31aとアーム31bがフィルタ容器4の形状に合致するように狭まって、アーム31aとアーム31bでフィルタ容器4強固に保持することが可能となる。
【0015】
保持アダプタ3のアーム31と反対側には、アーム31と反対側に延出する互いに対向するように配置される2つの爪32a,32bを有している。2つの爪32a,32bの形状は装着状態を仮定したときに、次の外形形状を有している。2つの爪32a,32bは、保持アダプタ3の可塑性による弾性力で変形し、それぞれの間隔を狭めることが可能となっている。2つの爪32a,32bの固定方向の外側の面の間隔が2つの面21a,21bの間に挿入可能となるように第一の幅dより小さく狭めることが可能な弾性を有するような材料で形成されている。2つの爪32a,32bの固定方向の外側の面の間隔が第一の幅dより小さく狭められているときに保持アダプタ3は可動状態にある。固定状態では、2つの爪32a,32bが溝23の縁壁21の2つの面21a,21bを固定方向に押圧するように2つの爪32a,32bが第一の幅dよりも大きく広がるように作動する。すなわち、2つの爪32a,32bのそれぞれが、固定状態において、固定方向に広がって2つの面21a,21bに接することで、2つの爪32a,32bのそれぞれと2つの面21a,21bとの摩擦により保持アダプタ3が摺動面24上で固定される(図2A)。
【0016】
2つの爪32a,32bのそれぞれの先端には、それぞれに対向する側と反対側(外側)の方向、すなわち、固定方向に溝23から離れる方向に突出した突起33a,33bとを有している。通常の状態では、突起33a,33bの先端の間隔は固定方向に第一の幅dよりも大きな幅となっている。2つの爪32a,32bは、装着状態においては、突起33a,33bの先端の間隔が固定方向に第一の幅dよりも小さな幅となるように変形させることが可能である。そして、固定状態は、通常の状態と同じように、突起33a,33bの先端の間隔は固定方向に第一の幅dよりも大きな幅に戻るようになっている。これにより、通常の状態(ベースユニット2に保持アダプタ3を装着する前の状態)では2つの爪32aと32bは、溝23の第一の幅dよりも大きいため装着できないが、装着状態では2つの爪32aと32bを変形させることにより突起33a,33bの先端の間隔を溝23の第一の幅dより小さく変化させて溝23の中に2つの爪32a,32bを突起33a,33bとともに挿入することが可能となる(図2B)。固定状態では、2つの爪32a,32bのそれぞれと2つの面21a,21bとの摩擦により保持アダプタ3が摺動面24上で固定されるのに加えて、突起33a,33bの先端の間隔が固定方向に第一の幅dよりも大きな幅に戻るため、突起33a,33bの先端が溝23の縁壁21に抜けないようになっている。保持アダプタ3は、その弾力性を、2つの爪32a,32bの箇所において強く喚起するために、円弧形状の弾力生成部P有している。2つの爪32a,32bのそれぞれは、この弾力生成部Pの円弧形状の両端部付近に配置され円弧形状の曲率が変化することで弾性変形により、2つの爪32a,32bの間隔が変化するようになっている。
【0017】
保持アダプタ3の2つの爪32aと32bのそれぞれは、固定方向に溝23から離れる方向に延在する押さえ板34a,34bをそれぞれ有している。押さえ板34a,34bは、2つの爪32a,32bのそれぞれにおいて、保持アダプタ3の2つの爪32a,32bと、アーム31との間に摺動面24と対向するように延在する。押さえ板34a,34bが摺動面24に対して延在する方向は、保持アダプタ3の可塑性による弾性力に応じて変化する。押さえ板34a,34bを固定方向に押すことで、2つの爪32a,32bの間隔を変化させることが可能である。
【0018】
押さえ板34a,34bは、2つの爪32a,32bの変形を喚起するためのみでなく、固定状態において、押さえ板34a,34bがベースユニット2の外側から摺動面24を押圧するようになっている。これにより、2つの爪32a,32bと2つの面21a,21bとの間の摩擦力に加え、押さえ板34a,34bと摺動面24を押す保持アダプタ3がベースユニット2に強固に固定されるようになっている(図2A)。
【0019】
摺動状態では、押さえ板34a,34bのそれぞれを溝23の第一の幅dの方向に押して、押さえ板34a,34bを互いに近づけるように変形させることで2つの爪32a,32bとの間隔が縮まる。これにより、ベースユニット2の内側の空間22の中に2つの爪32a,32bが挿入されている状態であるが、2つの爪32a,32bが2つの面21a,21bから離れる(図2C)。これにより、摺動状態では、2つの爪32a,32bと2つの面21a,21bとの間の摩擦力が解除するとともに、押さえ板34a,34bのベースユニット2の外側から縁壁21への押圧も解除するようになっている。この状態では、保持アダプタ3はベースユニット2に対して、摺動方向に摺動可能となるものである。
【0020】
保持アダプタ3は、固定状態において、2つの爪32a,32bが2つの面21a,21bを押圧することによる摩擦力でベースユニット2の任意の位置に固定される。さらに、このとき、押さえ板34a,34bの形状を、2つの爪32a,32bが2つの面21a,21bを押圧する変形と同時に、押さえ板34a,34bが摺動面24に押さえつけられるような形にしておけば、2つの爪32a,32bが2つの面21a,21bを押圧することによる摩擦力に加えて、押さえ板34a,34bが摺動面24を押さえつける摩擦力で、さらに強固にベースユニット2の任意の位置に固定することが可能となる。また、押さえ板34a,34bのそれぞれには、装着状態において、押さえ板34a,34bのベースユニット2側となる面には、エラストマー材のような弾性部材35a,35bが配置させることができる。これにより、固定状態において、押さえ板34a,34bがベースユニット2の外側から縁壁21を押圧する際に、さらに摩擦力を高めて押圧力をさらに高めることができる。
【0021】
(実施の形態2)
図3および図4Aから図4Cを参照して、本発明の実施の形態2について説明する。図3は、本発明のフィルタ容器保持装置1を示している。フィルタ容器保持装置1は、ベースユニット2と保持アダプタ5とを備えている。フィルタ容器保持装置1は、保持アダプタ5でフィルタ容器4を保持するとともに、保持アダプタ5をベースユニット2に固定し、また一の方向に摺動するように移動が可能となるようにする点で実施の形態1と同様である。図4Aおよび図4Bは、図3の方向Bからみた断面図である。図4Aは、保持アダプタ5のベースユニット2への固定状態の断面を示した図である。図4Bは、保持アダプタ5のベースユニット2への装着状態の断面を示した図である。図4Cは保持アダプタ5のベースユニット2への装着状態の断面を示した図である。実施の形態2の以下の説明において、実施の形態1と異なる点について、特に説明を行い、実施の形態1と同じ点については割愛する。
【0022】
実施の形態2のベースユニット2は少なくとも一方向に長く延在する摺動面24を有する部材であって、たとえば柱状の部材である。ベースユニット2は壁状の部材であってもよい。ベースユニット2は、内部は壁面で画定される空洞状の空間22を形成している。ベースユニット2は代表的にはアルミなどの押し出しで形成された金属とすることができる。内部に壁面を支える支柱部があってもよい。空間22の位置、形状はさまざまな形態をとることができる。その壁面のうちの一つの壁面である縁壁21の表面を摺動面24とする。保持アダプタ5は、摺動面24の上を摺動する。実施の形態2では、摺動面24に対して垂直に延在する2つの縁壁25,26がある。2つの縁壁25,26は内部に摺動面24に対して垂直な2つの面25a,26aを有している。2つの面25a,26aの面間距離は実施の形態2において第一の幅dとなる。2つの縁壁25,26は、摺動面24から離れた位置にそれぞれ開口25b,26bを形成するような壁端部を有している。この開口25bを介して縁壁25の外側から面25aに到達可能となっている。同様に、開口26bを介して縁壁26の外側から面26aに到達可能となっている。開口25b,26bは一の方向に延在するような形状であって、この方向が摺動方向となる。
【0023】
保持アダプタ5は、アーム31と、2つの爪37a,37bとを備えている。保持アダプタ5は、実施の形態1と同様に、たとえば金属または樹脂でできていて、幾何形状的にまたは材料的に弾力性を有する。フィルタ容器4の断面は少なくとも一部に少なくとも円弧などの曲面を有する形状であり、代表的には円形状である。フィルタ容器4の断面は実施の形態1と同様である。アーム31は、実施の形態1と同様であり、たとえば2つのアーム31a、31bを具備している。アーム31a、31bは、フィルタ容器4を挟持する。アーム31aとアーム31bの構成および機能は実施の形態1と全く同じであるのでここでは説明を割愛する。アーム31は、2つの爪37a,37bと反対側に支持板38に配置されている。支持板38は、ベースユニット2に取り付けられた際に摺動面24とほぼ並行になるように配置される。
【0024】
保持アダプタ5には、2つの爪37a,37bが配置されている。保持アダプタ5の支持板38には、たとえば、側板36a,36bが、支持板38の面外方向に支持板38から延出するように配置される。2つの爪37a,37bは、たとえば、側板36a,36bの先端側(支持板38と反対側)に固定されている。支持板38aと支持板38bとの間には、弾力生成部Pを配置して、弾力生成部Pの変形により、側板36a,36bの向きが変化するように、側板36a,36bを変形させることができ、側板36a,36bの変形に応じて、2つの爪37a,37bの角度を以下のように変化させることができる。側板36a,36bの幅は大きくなる方向に付勢されていて、これに応じて2つの爪37a,37bの幅も大きくなるように付勢されている。
【0025】
保持アダプタ5のベースユニット2への固定状態において、2つの爪37a,37bは、ベースユニット2の開口25b,26bからベースユニット2の内部の空間22に挿入された状態となっている。2つの爪37a,37bの幅は、大きくなるように付勢されているので、2つの爪37a,37bは、2つの面25a,26aを、2つの面25a,26aの内側から押圧する(図4A)。すなわち、この固定状態において、2つの爪37a,37bのそれぞれが固定方向に広がって、2つの爪37a,37bのそれぞれの間隔が第一の幅dよりも大きくなって、2つの面25a,26aのそれぞれに圧接する。これによって、2つの爪37a,37bのそれぞれと2つの面25a,26aとの間に生じる摩擦力によりアーム31が摺動面24の面の法線方向に位置する状態で保持アダプタ5が固定される。
【0026】
側板36a,36bは、保持アダプタ5のベースユニット2への装着状態において、支持板38に固定されている箇所と反対側の側板36a,36bの端部がベースユニット2への2つの縁壁25,26の幅よりも大きくなるように、側板36a,36bは開くように変形可能である(図4B)。側板36a,36bの端部がベースユニット2への2つの縁壁25,26の幅よりも大きい状態では、側板36a,36bの端部が2つの縁壁25,26に沿って支持板38が摺動面24に近づく方向にベースユニット2に向かって進行可能となり、保持アダプタ5をベースユニット2に装着することができるようになる。側板36a,36bの端部が開口25b,26bに到達すると、それまで2つの縁壁25,26の外側にあった2つの爪37a,37bが開口25b,26bを介してベースユニット2の内部の空間22に挿入可能となる。ここで側板36a,36bの幅を縮めて2つの爪37a,37bを開口25b,26bの中に挿入して、2つの爪37a,37bの位置を2つの縁壁25,26の内面である2つの面25a,26aの位置に合わせると、2つの爪37a,37bの幅が大きくなる方向へ付勢されていることで、2つの爪37a,37bが2つの面25a,26aを押圧して前記の固定状態(図4A)になる。
【0027】
側板36a,36bは、固定状態から、または装着状態から、可動状態に移行するには以下のとおりとなる。保持アダプタ5のベースユニット2への可動状態において、側板36a,36bが支持板38に固定されている箇所と反対側の側板36a,36bの端部がベースユニット2への2つの縁壁25,26に対して狭まるように変形可能である。この状態では、2つの爪37a,37bが2つの面25a,26aを押圧する自然な付勢力に抗して、側板36a,36bの端部がベースユニット2への2つの縁壁25,26に対して狭まるように変形させるものである。すなわち、2つの爪37a,37bは、2つの面25a,26aの間に挿入可能となるように第一の幅dより小さく狭めることが可能な弾性を有していて、2つの爪37a,37bがその第一の幅dより小さく狭められているときに保持アダプタ5は摺動方向に可動状態となる(図4C)。
【0028】
図4Dは、別の形態の弾力生成部Qを示した図である。上記のとおり、支持板38aと支持板38bとの間に弾力生成部Pを配置して、弾力生成部Pの変形により、側板36a,36bの向きを変化させるように説明したが、実施の形態2では、弾力生成部Qを、支持板38aと側板36aとの固定部と、支持板38bと側板36bとの固定部とに配置しても同様の効果が生じる(図4D)。
【符号の説明】
【0029】
1 フィルタ保持装置
2 ベースユニット
3,5 保持アダプタ
4 フィルタ容器
21 縁壁
22 空間
23 溝
24 摺動面
25,26 縁壁
31 アーム
32a,32b 爪
33a,33b 突起
34a,34b 押さえ板
35a,35b 弾性部材
36a,36b 側板
37a,27b 爪
38a,38b 支持板
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D