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特許7098377再使用可能な位置センサを有する医療装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】再使用可能な位置センサを有する医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20220704BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20220704BHJP
   A61B 1/233 20060101ALI20220704BHJP
   A61B 5/06 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A61B1/00 552
A61B34/20
A61B1/233
A61B1/00 711
A61B5/06
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018059458
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2018164736
(43)【公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】15/471,766
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イェフダ・アルガウィ
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・シットニツキー
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06332891(US,B1)
【文献】特表2008-526360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0200926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
A61B13/00-18/18
A61B34/00-90/98
A61F2/01、A61N7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
患者の耳鼻咽喉(ENT)器官内で医療処置を実行するように構成されている使い捨て可能なENTツールと、
前記使い捨て可能なENTツールを保持して制御するように構成されている再使用可能ハンドルであって、前記再使用可能ハンドルの第1の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号を生成するように構成された位置センサを含み、前記再使用可能ハンドルは前記使い捨て可能なENTツールを前記再使用可能ハンドルに接続するように構成された機械的コネクタを備え、前記使い捨て可能なENTツールは、前記使い捨て可能なENTツールの前記機械的コネクタへの接続点の座標と前記使い捨て可能なENTツールの遠位先端の座標との間のベクトルを示すツールオフセット値を記憶するように構成された、遠隔的可読メモリを備える、再使用可能ハンドルと、
プロセッサであって、
前記機械的コネクタの座標と前記位置センサの座標との間のベクトルを示すハンドルオフセット値を記憶し、
前記遠隔的可読メモリに記憶された前記ツールオフセット値を読み取り、
前記位置センサからの前記位置信号を受信し、
前記ハンドルオフセット値、前記ツールオフセット値、および、前記位置信号の組み合わせに基づき、前記患者のENT器官内の前記使い捨て可能なENTツールの前記遠位先端の位置を推定するように構成されているプロセッサと、
を備える、医療装置。
【請求項2】
前記再使用可能ハンドルは、前記患者のENT器官内の所定の創面切除部位において前記ENTツールの位置決めを制御するように構成されており、前記使い捨て可能なENTツールは、前記創面切除部位に位置決めされた場合に組織を創面切除するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記使い捨て可能なENTツールは、前記患者のENT器官の1つ又は2つ以上の解剖学的画像を取得するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記遠隔的可読メモリは無線周波数識別(RFID)タグを含む、請求項に記載の医療装置。
【請求項5】
前記再使用可能ハンドルを収容し、外部放射線が前記位置信号を歪ませるのを阻止するように構成されているハウジングを備える、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記ハウジングはチタンを含む、請求項に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療装置に関し、特に患者の体内の耳鼻咽喉(ENT)ツールの位置を追跡するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
位置追跡システムの位置センサは、患者の体内の医療装置の位置を追跡するために様々な医療装置に装着され得る。
【0003】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,803,089号は、患者の身体に対する医療器具の位置をモニタし、当該医療器具の位置に応答して当該身体の複数の予備記録された画像のうちの少なくとも1つを表示するためのシステムを記載する。磁場発生器は、標的外科術部位を含むエリアに位置特性磁場を生成するためのユニットのうちの1つと関連付けられてもよい。1つ又は2つ以上の磁場センサは、検知された当該磁場を表す1つ又は2つ以上のセンサ出力信号を生成するため、位置特性磁場の存在に応答していずれかのユニットに関連付けられてもよい。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,434,507号は、ツール本体及び放射体が固定的に装着されるツールアタッチメントを含む機器を記載している。少なくとも1つのツール先端は、取り外し可能な方法でツール本体に結合される。電気センサは、ツール先端がツール本体に結合すること、又はツール本体から取り外されることにより変更される場合に動作するように位置付けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、使い捨て可能な耳鼻咽喉(ENT)ツール、再使用可能ハンドル及びプロセッサを含む医療装置を提供する。ENTツールは、患者のENT器官内で医療処置を実行するように構成されている。再使用可能ハンドルは、使い捨て可能なENTツールを保持して制御するように構成されており、再使用可能ハンドルの第1の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号を生成するように構成された位置センサを含む。プロセッサは、位置センサからの位置信号を受信し、位置信号に基づき、患者のENT器官内の使い捨て可能なENTツールの第2の位置を推定するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、再使用可能ハンドルは、患者のENT器官内の所定の創面切除部位においてENTツールの位置決めを制御するように構成されており、使い捨て可能なENTツールは、創面切除部位に位置決めされた場合に組織を創面切除するように構成されている。別の実施形態では、使い捨て可能なENTツールは、患者のENT器官内の1つ又は2つ以上の解剖学的画像を取得するように構成されている。更に別の実施形態では、医療装置は、遠隔的可読メモリを含み、この遠隔的可読メモリは、使い捨て可能なENTツールに結合されており、第1の位置と第2の位置との間のオフセットベクトルを示す値を記憶するように構成されている。
【0007】
一実施形態では、プロセッサは、遠隔的可読メモリに記憶された値を読み取り、この値と第1の位置に基づき第2の位置を推定するように構成されている。別の実施形態では、遠隔的可読メモリは、無線周波数識別(RFID)タグを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、医療装置はハウジングを備え、ハウジングは再使用可能ハンドルを収容し、外部放射線が位置信号を歪ませるのを阻止するように構成されている。別の実施形態では、ハウジングはチタンを含む。
【0009】
更に、本発明の一実施形態により、患者の耳鼻咽喉(ENT)器官内で医療処置を適用する使い捨て可能なENTツールを患者の体内に挿入することを含む方法を提供する。再使用可能ハンドルの第1の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号は、位置センサから受信されており、位置センサは、患者のENT器官の外部にあり、ENTツールを保持して制御する再使用可能ハンドルに結合されている。第1の位置信号に基づき、患者のENT器官内の使い捨て可能なENTツールの第2の位置は推定される。使い捨て可能なENTツールは、患者のENT器官内の標的位置へ、その標的位置に第2の位置を設定することによりナビゲートされる。医療処置はこの標的位置に適用される。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、耳鼻咽喉(ENT)治療システムを用いた副鼻腔手術処置の概略絵図である。
図2】本発明の一実施形態による、ENT治療システムのENT装置の概略絵図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
位置追跡システムは、患者の体内における医療装置のナビゲーションを補助するための様々な医療用途に使用され得る。例えば、そのような追跡システムは、副鼻腔手術において、患者の耳鼻咽喉(ENT)器官内で適切な外科用装置をナビゲートするために用いられ得る。
【0013】
以下に本明細書で記載される本発明の実施形態は、位置追跡を要する使い捨て可能な医療装置のコスト及び複雑性を低減し、そのような装置を用いる医療処置のサイクル時間を短縮するための改良された技法を提供する。これらの技法は、例えば、医師が患者のENT器官内の剛性ツールの位置を追跡する必要がある副鼻腔手術処置で用いられ得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、ENT装置は、使い捨て可能な診断用及び/又は外科用ツール(ENTツールとしても称される)と、医師により保持され、かつENTツールを保持し制御するように構成される再使用可能ハンドルとを含む。原理的には、ENT器官内のENTツールの位置を追跡するため、使い捨て可能なツールの遠位先端に位置センサを適合し、位置追跡システムの座標系に対して位置センサを較正することができる。しかしながら、ENTツールは使い捨て可能であるため、センサは副鼻腔手術処置を実行した後にENTツールと一緒に廃棄され、別のセンサは後続する副鼻腔手術処置を実行する前に位置追跡システムの座標系に対して較正する必要がある。
【0015】
いくつかの実施形態では、位置センサはENT装置の再使用可能ハンドルに(使い捨て可能なENTツールの代わりに)結合され、したがって、同じセンサは後続する副鼻腔手術処置において再使用され得る。このアプローチを用いることにより、センサはハンドルの位置を測定し、ENTツールの先端の位置を測定せず、したがって、測定はそれに応じて修正されるべきであることに留意する。いくつかの実施形態では、位置追跡システムのプロセッサは、位置センサとENTツールの遠位先端との間の位置の差を特化するオフセットベクトルを記憶して適用するように構成される。
【0016】
場合によっては、オフセットベクトルは、例えば、同じタイプのENTツール間の長さと形状の差のために(例えば、生産変動のために)ENTツール毎に異なることがあり、場合によっては、同じハンドルは異なるタイプのENTツールを制御するのに使用される。いくつかの実施形態では、無線周波数識別(RFID)タグなどの遠隔的可読メモリ装置は、ツールに装着され得る。RFIDタグは、それが装着されるENTツールに特化するオフセットベクトル値を記憶するように構成される。一実施形態において、位置追跡システムのプロセッサは、RFIDタグからオフセットベクトルを読み取り、センサとオフセットベクトルによって供給される位置信号に基づきENT器官内のENTツールの遠位先端の実際の位置を推定するように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、ハンドルは、チタン製のハウジングを備え、チタンは、更に位置センサにより測定された位置信号が外部放射線により歪められるのを阻止する軽量の生体適合性材料である。
【0018】
開示された技法では、軽量材料を用いることにより、かつ複数の腹腔鏡手術処置において位置センサを再使用することにより、ENT装置の物理的重量とコストを低減する。更に、単一ハンドルは、各ENTツールのオフセットベクトルをRFIDタグに記憶することにより、異なるタイプのENTツールを保持して制御することができる。開示された技法は、特に、剛性のENTツールが通常使用される副鼻腔手術処置において適用可能である。
【0019】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、耳鼻咽喉(ENT)治療システム20を用いる副鼻腔手術処置の概略絵図である。システム20は、診断用及び/又は外科術用途である、使い捨て可能な耳鼻咽喉(ENT)ツール28を含むENT治療装置50を備え、使い捨て可能なENTツール28は装置50の遠位端部に嵌合される。副鼻腔手術処置の間、医師24は、患者22の鼻26に中にツール28を挿入し、ENT疾患を治療又は診断する。例えば、治療は、患者22の1つ又は2つ以上の副鼻腔の組織を薄層切除することを含んでもよい。用語「薄層切除(shaving)」及び「創面切除(debriding)」、並びに「シェーバ」及び「デブリッダー」は、本開示では交換可能に用いられ、患者22の器官から組織を切開するのに用いるプロセス又はツールを指す。
【0020】
いくつかの実施形態では、ツール28は、組織を薄層切除するように構成されるシェーバ(図示せず)、及び少なくとも一方の副鼻腔から薄層切除した組織を引き出すように構成される1つ又は2つ以上のパイプ(図2に示す)を含んでもよい。別の実施形態では、ツール28は、患者28のENT器官の画像を取得するように構成される、撮像装置などの任意の適切な装置を更に含んでもよい。装置50は、ハンドル30を更に備え、ハンドル30はENTツール28の近位端部に結合され、ツール28の遠位先端38を保持して制御するように構成される。装置50は、以下で図2に詳細に説明される。
【0021】
一実施形態では、システム20は、磁気位置追跡システムを更に備え、磁気位置追跡システムは患者22の頭部の、又は患者22のENT器官に近接する、1つ又は2つ以上の位置センサの位置を追跡するように構成される。磁気位置追跡システムは、磁気磁場発生器44と1つ又は2つ以上の(図2に示される)位置センサとを備える。位置センサは、磁場発生器44によって生成された、検知された外部磁気磁場に応答して位置信号を生成し、したがって、以下に説明するように、プロセッサ34が各センサの位置をマップすることを可能にする。
【0022】
この位置検知方法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムなどの様々な医療用途において実施されており、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに、米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に説明されており、これらの開示内容をいずれも参照によって本明細書に援用するものである。
【0023】
システム20は、位置特定パッド40を更に備え、位置特定パッド40は、フレーム46上に固定された磁場発生器44を備える。図1に示す例示的な構成では、パッド40は、5つの磁場発生器44を備えるが、任意の他の好適な数の発生器44を備えることができる。パッド40は、発生器44が患者の外部の固定された既知の位置に位置するように、患者22の頭部41の下に配置された枕42を更に備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、ハンドル30は磁気位置センサ(以下に図2で示す)を備える。システム20は、プロセッサ34を含むコンソール33を更に備えるが、このプロセッサ34は典型的には、信号を、ケーブル32を通して磁気位置センサから受信するため及び本明細書に説明されるシステム20の他の構成要素を制御するために好適なフロントエンド及びインターフェイス回路を有する汎用コンピュータである。
【0025】
一実施形態では、コンソール33は、駆動回路(図示せず)を備え、駆動回路は、磁場を頭部41の周りに、予め定義された使用容量で生成するように好適な信号で磁場発生器44を駆動させるように構成されている。
【0026】
簡単かつ明瞭なものとするため、図1は、開示されている技法に関連する要素のみを示す。システム20は典型的には、開示されている技法に直接には関連せず、したがって図1及び対応する説明から意図的に省略されている付加的なモジュール及び要素を備える。
【0027】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行し、処理又はその他の方法でソフトウェアにより使用されるデータをメモリ(不図示)に記憶させるようにプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードするか、又は光学的、磁気的若しくは電子的記録媒体など、持続性の有形媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ34の機能のうちの一部又は全てが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0028】
図2は、本発明の実施形態による、ENT装置50の概略絵図である。いくつかの実施形態では、ENTツール28は、ステンレススチールSS316及びSS316L、並びにチタンなどの剛性の生体適合性材料で作製される。いくつかの実施形態では、ENTツール28は、遠位先端38に置かれる、シェーバなど、副鼻腔手術の診断用及び/又は、外科用ツールを含む。副鼻腔手術処置の間、医師24は、通常、ENTツール28を鼻26の中に挿入し、ENTツール28は患者22のENT器官(及び血液の場合もある)と直接接触し、これにより、ツール28は通常、副鼻腔手術処置の後、廃棄される。
【0029】
いくつかの実施形態では、ハンドル30は1つ又は2つ以上のパイプ60を含み、パイプ60は消毒液及び/又は冷却液を灌注するため、かつ患者22のENT器官から薄層切除された組織を引き出すために用いられ得る。
【0030】
使い捨て可能な要素の数を最小限にすることによる副鼻腔手術コストの低減
いくつかの実施形態では、ハンドル30は副鼻腔手術処置の間、患者22の体外に残り、したがって複数の処置において用いるために使用可能である。副鼻腔手術処置の全体のコストを低減するために、使い捨て可能である、ツール28内の要素の数とコストを最小限にすることが重要である。
【0031】
ここで図2の底部のインサート52を参照する。いくつかの実施形態では、ハンドル30は、組織を薄層切除するため副鼻腔手術シェーバを駆動(例えば、回転)するように、及び/又はパイプ60を介して治療される副鼻腔との間で流体を移送するように構成される、機械的組立体56を含む。
【0032】
原理的には、遠位先端38に位置センサ(図示せず)を嵌合し、ENT器官内のシェーバの位置を測定することができる。しかしながら、この構成では、位置センサは典型的には完全なユニットとして使い捨て可能であるツール28内に収容されるため、廃棄される。更に、この構成は、位置センサとプロセッサ34との間に位置信号を送信するように、ツール28内に電気リードを統合することを要する。リードは、ツール28内の狭い空間に嵌合する必要があり、シェーバと共に回転することができず、ツール28とハンドル30との間のインターフェイスにコネクタを要し、最終的にツール28と共に廃棄される。
【0033】
いくつかの実施形態では、位置センサをツール28に結合することの欠点は、代わりに位置センサ54をハンドル30に結合することにより克服される。センサ54は、任意の適切な位置でハンドルに結合されてもよく、位置追跡システムの座標系においてハンドル30の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号を生成する。
【0034】
一実施形態では、プロセッサ34は、本明細書では「Hベクトル」とされる、ハンドルのオフセットベクトル値を記憶するように構成され、オフセットベクトル値は機械的コネクタ64(ツール28をハンドル30に接続する)の座標と位置センサ54の座標との間の一定のオフセットである。
【0035】
原理的には、各ツール28はそれ自体の長さと形状を有する。ツール28の近位端部(コネクタ64への接続点)の座標とENTツール28の遠位先端38の座標との間のオフセットベクトル値は、ツールベクトル、又は「Tベクトル」として称される。ENTツール28は典型的に剛性であり、したがって各ツール28のTベクトルは一定であることに留意する。
【0036】
場合によっては、TベクトルはENTツール毎に異なってもよく、例えば、医師22が、ENT処置の間、同じハンドルを用いて異なるタイプのENTツール(異なるTベクトル値を有する)を制御する。更に、ENTツールの生産におけるプロセス変動は、同じタイプのENTツール間の長さと形状の差を生じさせる場合がある。
【0037】
いくつかの実施形態では、ツール28は、無線周波数識別(RFID)タグ62などの、Tベクトルを記憶するように構成される遠隔的可読メモリを含み得る。いくつかの実施形態では、各別個のツール28に対して、ツールの測定された特化したTベクトルがツールのRFIDタグ62に記憶される。これらの実施形態では、同じタイプのツール28は、異なるTベクトルを有する場合がある。別の実施形態では、同じタイプのツール28の全てのTベクトルは、同じ値に設定される。タグ62へのTベクトルの記憶は、典型的にツール28の生産中に実行されるが、代替的には任意の他の適切な時に実行されてもよい。
【0038】
図2の例では、コネクタ64と遠位先端38との間のTベクトルは、大きさ(例えば、ミリメータ)と方向(例えば、回転角度とハンドル30の長手方向軸に対する傾斜角度)により表されてもよい。代替的に、Tベクトルは、ハンドル30の所定の座標系における3つのデカルト座標により、又は任意の他の適切な表現を用いて表されてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、RFIDタグ62に記憶されたTベクトルを読み取り、HベクトルとTベクトルを合計するように構成される。ベクトル合計は、位置センサ54と遠位先端38との間の大きさと方向を表し、「STベクトル」(センサ対先端ベクトル)として称される。
【0040】
一実施形態では、プロセッサ34は、STベクトルの座標と位置センサ54により測定されたそれぞれ座標を合計するように構成され、位置追跡システムの座標系における遠位先端38のそれぞれの位置を推定する。
【0041】
実際上、ハンドル30に結合した後、位置センサ54は位置追跡システムの座標系に対して較正する必要がある。いくつかの実施形態では、センサ54をハンドル30に結合することで、センサ54を複数の副鼻腔手術処置で再使用することが可能となり、これにより、センサハードウェアのコストを削減し、後続する副鼻腔手術処置の前にセンサ54を(位置追跡システムに対して)較正する必要が排除される。
【0042】
Tベクトル値は、剛性ENTツールの形状に依存し(ハンドルの形状には依存せず)、Hベクトル値は、ハンドルの形状に依存する(ENTツールの形状には依存せず)ことに留意する。結果として、医師24は、Tベクトル又はHベクトルの調整なしに、様々な形状(及びそれぞれのHベクトル)のハンドルを有する異なる形状(及びそれぞれのTベクトル)のENTツールを使用する柔軟性を有する。
【0043】
典型的に、医師24は、副鼻腔手術処置の間、ハンドル30を保持する。したがって、装置50、特にハンドル30の全重量を減じることが重要である。いくつかの実施形態では、ハンドル30は、ハウジング58を備え、ハウジング58は機械的組立体56及び再使用可能ハンドルの別の構成要素を収容する。一実施形態では、ハウジング58は、チタンなどの軽量の生体適合性材料で作製され、ハンドル30の全重量を減少する。
【0044】
場合によっては、外部放射線はハンドル30の表面を流れる場合がある渦電流を誘発することがある。渦電流は、例えば、位置センサ54の位置信号と干渉し、これにより位置追跡システムの精度を低下させる場合がある。いくつかの実施形態では、チタンなどの、低導電率を有する適切な材料で作製されるハウジング58は、干渉する渦電流を防止する(又は少なくとも弱める)ように構成される。
【0045】
装置50の構成は、例示的な構成であり、純粋に概念的な明瞭さのために選択される。代替的な実施形態では、開示された技法は、必要な変更を加えて、システム20と装置50の様々な他の構成において使用され得る。
【0046】
例えば、RFIDタグ62は、任意の適切な位置でENTツール28に結合され得る。代替的又は追加的に、医師24が同じタイプのツール28を用いる場合、ツール28の生産における高い均一性は、位置センサ54と遠位先端38との間の一定のオフセットを(例えば、プロセッサ34に)記憶することにより、RFIDタグ62の必要性を排除できる。
【0047】
本明細書に記載される実施形態は主にENT処置に対処するが、本明細書に記載される方法とシステムはまた、任意の診断用又は外科術用途などの他の用途に用いられ得る。
【0048】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に詳細に示し説明したものに限定されないことが認識されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、従来技術において開示されていない変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置であって、
患者の耳鼻咽喉(ENT)器官内で医療処置を実行するように構成されている使い捨て可能なENTツールと、
前記使い捨て可能なENTツールを保持して制御するように構成されている再使用可能ハンドルであって、前記再使用可能ハンドルの第1の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号を生成するように構成された位置センサを含む再使用可能ハンドルと、
前記位置センサからの前記位置信号を受信し、前記位置信号に基づき、前記患者のENT器官内の前記使い捨て可能なENTツールの第2の位置を推定するように構成されているプロセッサと、
を備える、医療装置。
(2) 前記再使用可能ハンドルは、前記患者のENT器官内の所定の創面切除部位において前記ENTツールの位置決めを制御するように構成されており、前記使い捨て可能なENTツールは、前記創面切除部位に位置決めされた場合に組織を創面切除するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(3) 前記使い捨て可能なENTツールは、前記患者のENT器官の1つ又は2つ以上の解剖学的画像を取得するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(4) 前記使い捨て可能なENTツールに結合されており、前記第1の位置と前記第2の位置との間のオフセットベクトルを示す値を記憶するように構成されている遠隔的可読メモリを備える、実施態様1に記載の医療装置。
(5) 前記プロセッサは、前記遠隔的可読メモリに記憶された前記値を読み取り、前記値と前記第1の位置に基づき前記第2の位置を推定するように構成されている、実施態様4に記載の医療装置。
【0050】
(6) 前記遠隔的可読メモリは無線周波数識別(RFID)タグを含む、実施態様4に記載の医療装置。
(7) 前記再使用可能ハンドルを収容し、外部放射線が前記位置信号を歪ませるのを阻止するように構成されているハウジングを備える、実施態様1に記載の医療装置。
(8) 前記ハウジングはチタンを含む、実施態様7に記載の医療装置。
(9) 方法であって、
患者の耳鼻咽喉(ENT)器官内で医療処置を適用する使い捨て可能なENTツールを患者の体内に挿入することと、
前記患者のENT器官の外部にあり、前記ENTツールを保持して制御する再使用可能ハンドルに結合されている位置センサから、前記再使用可能ハンドルの第1の位置を示す1つ又は2つ以上の位置信号を受信することと、
前記第1の位置信号に基づき、前記患者のENT器官内の前記使い捨て可能なENTツールの第2の位置を推定することと、
前記使い捨て可能なENTツールを前記患者のENT器官内の標的位置へ、前記標的位置に前記第2の位置を設定することによりナビゲートすることと、
前記医療処置を前記標的位置に適用することと、
を含む、方法。
(10) 前記標的位置は創面切除部位を含み、前記医療処置を適用することは、前記使い捨て可能なENTツールが前記創面切除部位に位置付けられている場合に組織を創面切除することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0051】
(11) 前記医療処置を適用することは、前記標的位置における1つ又は2つ以上の解剖学的画像を取得することを含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記第2の位置を推定することは、(i)前記使い捨て可能なENTツールに結合された遠隔的可読メモリから、前記第1の位置と前記第2の位置との間のオフセットベクトルを示す値を読み取ることと、(ii)前記値と前記第1の位置とに基づき前記第2の位置を推定することと、を含む、実施態様9に記載の方法。
図1
図2