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  • 特許-油性固形化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20220704BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220704BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/87
A61K8/891
A61K8/73
A61Q1/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018069167
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178112
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】宗像 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雅樹
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119622(JP,A)
【文献】国際公開第2016/090081(WO,A1)
【文献】特開2015-101555(JP,A)
【文献】特表2017-537930(JP,A)
【文献】特開昭53-031797(JP,A)
【文献】特開2003-034618(JP,A)
【文献】特開2017-039672(JP,A)
【文献】特開2002-370924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~成分(C);
成分(A)ポリウレタンゲル組成物、
成分(B)油性ゲル化剤、
成分(C)球状粉体
を含有する油性固形化粧料であり、
前記成分(A)は、成分(A-1)以下の(i)又は(ii)のポリウレタン及び成分(A-2)油剤を含むゲル組成物である、油性固形化粧料。
(i)(a)末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンと(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタン、又は、
(ii)(c)末端に水酸基を持つ水添ポリブタジエンと(d)ジイソシアネート化合物と(b)HO-R-OH(式中Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタン。
【請求項2】
前記(A-1)ポリウレタンが、油溶性ポリウレタンである、請求項1に記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
前記成分(A-1)ポリウレタンが、平均分子量(Mw)10000~100000である、請求項1又は2に記載の油性固形化粧料。
【請求項4】
前記成分(A-2)油剤が、25℃で液状の油剤である、請求項1~3の何れか1項に記載の油性固形化粧料。
【請求項5】
前記成分(C)が有機球状粉体である請求項1~4のいずれか1項に記載の油性固形化粧料。
【請求項6】
前記成分(C)がポリメチルシルセスキオキサン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマーからなる群より選ばれる1種または2種以上である請求項1~5いずれか1項に記載の油性固形化粧料。
【請求項7】
前記成分(B)の油性ゲル化剤がワックス及び/またはデキストリン脂肪酸エステルである請求項1~6いずれか1項に記載の油性固形化粧料。
【請求項8】
さらに、成分(D)フェニル変性シリコーンを含有する請求項1~7いずれか1項に記載の油性固形化粧料。
【請求項9】
前記成分(A)及び成分(C)の質量含有割合が(A)/(C)=0.1~15である請求項1~8いずれか1項に記載の油性固形化粧料。
【請求項10】
前記成分(A-1)及び成分(C)の質量含有割合が(A-1)/(C)=0.01~5である請求項1~9いずれか1項に記載の油性固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリウレタンゲル組成物、油性ゲル化剤及び球状粉体を含有する油性固形化粧料に関し、より詳細には、伸び広がり、ソフトフォーカス効果に優れ、化粧膜が均一であり、化粧持ちに優れる油性固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性固形化粧料は油分を主成分として構成され、油性ゲル化剤等の油分をゲル化する成分を用いることで種々の形状とできることが一つの特徴である。その特性から外観の審美性や特徴的な形状から使用感を楽しむだけでなく、見た目を楽しむことができ、アイカラーやチーク、口紅などに幅広く利用されている。また、油性固形化粧料は、油分をゲル化させて作られるため、滑らかな伸び広がりやべたつきのなさ等の品質を求められてきた。
【0003】
一方、近年メイクアップトレンドや使用シーンの多様化により、従来の油性固形化粧料の特性に加えてソフトフォーカス効果や均一で持続性の高い化粧膜を作ることが求められている。しかし、油性固形化粧料は油剤が主成分であることから、粉体を含有する際の化粧膜の均一性や化粧持ちが固形粉末化粧料には劣る場合があり、ソフトフォーカス効果のある油性固形化粧料に関し、これまで種々の検討がなされてきた。例えば、3質量%~15質量%の少なくとも1種の親油性ゲル化剤と、少なくとも5質量%の第1の充填剤及び少なくとも5質量%の第1の充填剤とは異なる第2の充填剤を含む、10質量%~50質量%の充填剤と、40質量%~85質量%の少なくとも1つの脂肪相とを含む無水組成物であって、ここで質量の量は組成物の総質量に対して示され、第1の充填剤及び第2の充填剤が、球形セルロース粒子、C8~C22アシル基を有するN-アシルアミノ酸の粉末、ポリアミド粒子及び球形多孔質シリカ粒子から選択される、組成物により、ソフトフォーカス効果に優れる組成物がある。(特許文献1参照)
【0004】
さらに、油性固形化粧料において、化粧持ちに関する技術も検討されている。例えば、(A)(a1)酸化チタンを含む粉体を、化粧料総量を基準として40質量%以上60質量%以下、(B)皮膜形成剤、(C)揮発性油剤、(D)25℃で液状である分子量500~1000のエステル油を、化粧料総量を基準として2質量%以上12質量%以下を含有する油性固形化粧料が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-519831号公報
【文献】特開2014-129294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ソフトフォーカス効果を得るために特許文献1の技術を用いると、化粧膜の均一性や化粧持ちに満足のいく品質が得られない場合があり、優れた化粧持ちを得るために特許文献2の技術を用いると塗布時に重さを感じる場合があり、伸び広がりに満足のいく品質が得られない場合があった。さらに、伸び広がりに満足できない場合に、均一な化粧膜を得ることも困難であった。また、特許文献1及び2の技術を組み合わせて用いることで、ソフトフォーカス効果と化粧持ちに優れる化粧料は得られるものの、塗布時に重さを感じる塗布のしやすさを十分に得られず、なめらかな伸び広がりについて満足する品質を得ることは困難であった。そこで本発明は、ソフトフォーカス効果、および均一で持続性の高い化粧膜であることに加え、なめらかに伸び広がる品質を実現する油性固形化粧料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、油性ゲル化剤、及び球状粉体を含有する油性固形化粧料において、なめらかな伸び広がりや化粧膜の均一性、ソフトフォーカス効果は得られるが、その効果は十分満足できるものではなく、さらには化粧持ちの向上を求められていた。そこで、種々の成分を検討する中で、親水部と疎水部を有し、油性ゲル化剤と組み合わせる場合に、化粧持ち等が向上したポリウレタンに着目した。特に油剤と特定の構造のポリウレタンを含むゲル組成物として油性固形化粧料に含有することで、ソフトフォーカス効果、化粧持ちに特に優れることを見出した。さらに、フェニル変性シリコーンを含有することで、なめらかな伸び広がりや化粧膜の均一性をより高めることができ、フェニル変性シリコーンの中でもジフェニルシロキシフェニルトリメチコンを用いると、より高い効果が得られることを見出した。さらに、ポリウレタンゲル組成物と球状粉体を特定の比率とすることで、本願効果をより向上させることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、 次の成分(A)~成分(C);
成分(A)ポリウレタンゲル組成物、
成分(B)油性ゲル化剤、
成分(C)球状粉体
を含有する油性固形化粧料であり、
前記成分(A)は、成分(A-1)以下の(i)又は(ii)のポリウレタン及び成分(A-2)油剤を含むゲル組成物である、睫毛用化粧料に関する。
(i)(a)末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンと(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタン、又は、
(ii)(c)末端に水酸基を持つ水添ポリブタジエンと(d)ジイソシアネート化合物と(b)HO-R-OH(式中Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタン。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油性固形化粧料は、伸び広がり、ソフトフォーカス効果に優れ、化粧膜が均一であり、化粧持ちに優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明において自己復元力を測定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。なお、本明細書においては、~を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値を含むものとする。
【0012】
本発明における油性固形化粧料とは、25℃で固形を呈している油性化粧料を意味しており、25℃で固形とは、化粧料を容器に充填し静置した際に、流動性を帯びないものを意味するものである。また、本発明における油性固形化粧料は、25℃で固形を呈していれば、特に制限されず、棒状、球状、星形等いずれの形状であっても良い。また、本発明において、油性とは、油を連続相としており、実質的に水を含有しないか、含有したとしても1質量%(以下、単に「%」と記載する場合がある)以下のものを意味するものとする。
【0013】
本発明で用いる成分(A)ポリウレタンゲル組成物は、成分(A-1)ポリウレタンと成分(A-2)油剤とを含有するポリウレタンゲル組成物である。当該ポリウレタンゲル組成物は、成分(A-2)油剤の存在下で成分(A-1)ポリウレタンの原料を用いて製造することによって得ることができる。
【0014】
ここで、成分(A-1)ポリウレタンは、HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールを使用するポリウレタンである。
さらに、成分(A-1)ポリウレタンは、少なくとも以下の(i)又は(ii)のポリウレタンを含むものが好適である。
より好適には、前記成分(A-1)ポリウレタンは、(i)末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンと(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタンであるか、又は、(ii)(c)末端に水酸基を持つ水添ポリブタジエンと(d)ジイソシアネート化合物と(b)HO-R-OH(式中Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタンである。
【0015】
前記成分(A-1)における前記(b)HO-R-OHで表されるグリコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及びジエチレングルコール等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いる新規なポリウレタンゲル組成物は、発明者らが、ツヤが高く、弾力性、復元力がある油溶性ゲルの化粧膜を得るためにゲル素材に関して鋭意研究開発を重ねた結果、見出されたゲル組成物である。
【0017】
発明者らは、復元性素材として、シリコーンゴム、多糖類、水性のポリウレタンを用いて研究を重ねていた。しかし、これらの素材は利点とともに解決されるべき欠点を有していた。具体的には、シリコーンゴムは、ツヤが足りず復元力に欠けるという欠点;多糖類は復元性・復元力が弱いという欠点;水性のポリウレタンは水系のため色域に制限があり、ツヤが足りないという重大な欠点;を有していた。
しかしながら、鋭意検討を行った結果、発明者らは、油剤存在下で、HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールを使用してポリウレタン合成を行ったところ、新規なゲル素材を偶然にも得た。当該新規なゲル素材は、後記実施例に示すように、ツヤが高く、弾力性があり、復元力がある特殊な機能を有していた。このことは、発明者らにとって予測し得ない効果であった。
なお、ポリウレタンは、ジイソシアネートとポリオールとを反応させて得られることが知られている。しかしながら、ポリウレタンを油溶性ゲル化剤として用いている例はなく、本発明のポリウレタンゲル組成物は油剤存在下で製造するという新たな着想により見出されたものである。
【0018】
本発明に使用するポリウレタンゲル組成物の概念について、未だ鋭意検討中であるが、しかし現時点において発明者らは以下のように考えている。(1)ポリウレタン組成物中のポリウレタンは、分子内の親水部同士で会合することで複数のリング状のクラスター(房)を形成すると共に、分子内の疎水部で油剤に接触することで、親水基会合性増粘機構を有していると発明者らは考えている。(2)当該ポリウレタンは、当該分子内の疎水性部が低結晶性の炭化水素であるため柔軟性と油溶性を付与している;当該分子内の親水部の極性基が相互作用することでゲル化力・復元力を付与していると、発明者らは考えている。(3)親水基会合性増粘機構により、三次元立体構造体を微細に取ることで透明ゲル化されていると発明者らは考えている。なお、当該ポリウレタンは油溶性ポリウレタンであることが好ましく、当該油溶性ポリウレタンはより好適には30℃にて2-エチルヘキサン酸セチルに少なくとも1質量%以上溶解できるものである。
【0019】
本発明に用いる成分(A)ポリウレタンゲル組成物は、次の組成物1及び組成物2を包含する。このうち、組成物1及び2が好ましい。
【0020】
組成物1:成分(A-1)(i)ポリウレタン及び成分(A-2)油剤を含有するポリウレタンゲル組成物1;
成分(A-1)ポリウレタンとして、(i)(a)末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンと(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタン、及び成分(A-2)油剤を含有する組成物。
組成物2:成分(A-1)(ii)ポリウレタン及び成分(A-2)油剤を含有するポリウレタンゲル組成物2;
成分(A-1)ポリウレタンとして、(ii)(c)末端に水酸基を持つ水添ポリブタジエンと(d)ジイソシアネート化合物と(b)HO-R-OH(式中Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によって得られるポリウレタン。
本発明において「末端」とは「両末端」を意味する。
【0021】
前記(a):成分(A)ポリウレタンゲル組成物(好適には前記組成物1)の成分(A-1)ポリウレタンにおいて用いられる(a)は、末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンであれば、特に限定されない。例えば、下記一般式(1)で示される化合物が示され、当該化合物を用いることは本発明の効果の観点から好適である。
【0022】
【化1】
【0023】
(式中、R、Rは各々独立してC1~C6アルキレン基、nは10~100の整数、n、nは各々独立して0又は1を表す)
【0024】
、Rは、各々独立して同一又は異なって、C1~C6アルキレン基を表し、当該アルキレンは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。当該C1~C6アルキレン基として、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン等が挙げられる。Rのアルキレン基は、好ましくはC1~C2アルキレン基である。Rのアルキレン基は、好ましくはC5~C6アルキレン基である。当該アルキレン基は、好ましくは直鎖である。
nは、10~100の整数を表し、さらにnのより好ましい範囲は15~55である。
、nは、各々独立して同一若しくは異なって、0又は1を表す。
【0025】
一般式(1)の水添ポリブタジエン部分(下記一般式(6))における繰り返し単位「C」の構造は、例えば、下記一般式(7a)~(7d)に示すように、様々な種類が存在する。当該化合物を用いることは本発明の効果の観点から好適である。
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
本発明において使用する末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンにおける水添ポリブタジエン部分は、上で例示したような繰り返し単位の1種のみからなるものであってもよい、又は、2種以上の繰り返し単位を規則的若しくはランダムに含むものであってもよい。
本発明において一般式(1)の水添ポリブタジエン部分(上記一般式(6))を構成する繰り返し単位「C」の立体構造が同一であっても異なっていてもよく、水添ポリブタジエン部分が一般式(6)で表される構造はすべて本発明に包含される。
一般式(1)で表される末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンとして、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が例示され、当該化合物を用いることは本発明の効果の観点から好適である。
【0029】
【化4】
【0030】
(ここで、当該式(2)中、nは10~100の整数を表す)
一般式(2)の化合物は、一般式(1)の末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンにおいて、Rがエチレン基、Rがヘキサメチレン基、n=n=1である場合に相当する。
【0031】
前記(b):成分(A)ポリウレタンゲル組成物(好適には組成物1及び2)の成分(A-1)ポリウレタンにおいて用いられる(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールの例として、例えば、エチレングリコール(HOCHCHOH)、プロピレングリコール(HOCHCH(OH)CH)、1,3-ブチレングリコール(HOCHCHCH(OH)CH)、及びジエチレングルコール(HOCHCHOCHCHOH)等が挙げられる。当該化合物を用いることは本発明の効果の観点から好適である。
前記(b)HO-R-OHは、下記一般式(5)で示される化合物が示され、当該化合物は本発明の効果の観点から好適である。
【0032】
【化5】
【0033】
前記(c):成分(A)ポリウレタンゲル組成物(好適には組成物2)の成分(A-1)ポリウレタンにおいて用いられる(c)末端に水酸基を持つ水添ポリブタジエンは、特に限定されない。例えば、下記一般式(3)で示される化合物が示され、当該化合物は本発明の効果の観点から好適である。
【0034】
【化6】
【0035】
(式中、nは10~100の整数を表す)
【0036】
一般式(3)において、水添ポリブタジエン部分(一般式(6))は、上記と同じ意味を有する。当該化合物を用いることは本発明の効果の観点から好適である。
【0037】
前記(d):成分(A-1)ポリウレタン(好適には組成物2)において用いられる(d)ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,4-トルエンジイソシアネート、及び2,6-トルエンジイソシアネート等を挙げることができる。これらのうち、下記一般式(4)で示されるヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0038】
【化7】
【0039】
成分(A)ポリウレタンゲル組成物(好適には組成物1)において、(i):(a)末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンと(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールを重付加してポリウレタンを製造する場合、モル比(a):(b)=1:4~4:1で行うことが好ましく、モル比(a):(b)=2:3~3:2で行うことがより好ましく、さらに好ましくは4:5~4:3、よりさらに好ましくは9:10~10:9である。この場合、(a)の重量平均分子量(Mw)は1000~3000であることが好ましい。当該範囲にすることにより、本発明の効果が顕著に得られる点からより好ましい。
【0040】
成分(A)ポリウレタンゲル組成物(好適には組成物2)において、(ii):(c)末端に水酸基を持つ水添ポリブタジエンと(d)ジイソシアネート化合物と(b)HO-R-OH(式中Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールとの反応によってポリウレタンを製造する場合、モル比(c):(b)=1:4~4:1で行うことが好ましく、モル比(c):(b)=2:3~3:2で行うことがより好ましく、さらに好ましくは4:5~4:3、よりさらに好ましくは9:10~10:9である。当該範囲にすることにより、本発明の効果が顕著に得られる点からより好ましい。
【0041】
また、前記(i)又は(ii)で得られるポリウレタンの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10000~100000、より好ましくは20000~80000、さらに好ましくは30000~70000である。当該範囲にすることにより、本発明の効果が顕著に得られる点からより好ましい。
【0042】
成分(A)ポリウレタンゲル組成物中の成分(A-1)ポリウレタンの含有量は、好ましくは1~35質量%であり、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
成分(A)ポリウレタンゲル組成物中の成分(A-2)油剤の含有量は、好ましくは65~99質量%であり、より好ましくは70~95質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。
当該範囲にすることにより、本発明の効果が顕著に得られる点からより好ましい。
【0043】
成分(A)ポリウレタンゲル組成物に用いられる成分(A-2)油剤は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されずに用いることができる。性状としては、特に限定されないが、25℃で液状の油剤であることが好ましい。また、本発明のポリウレタンゲル組成物を製造するときに溶剤として使用することが好ましい。
成分(A)ポリウレタンゲル組成物に用いられる成分(A-2)油剤としては、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、例えば、炭化水素油、エステル油(特に、水酸基の数が0又は1個であるエステル油)、脂肪酸類、シリコーン油、フッ素系油類等が挙げられる。
【0044】
これらのうち、極性が低い方がポリウレタンゲル組成物の強度が高くなる傾向にあることから、炭化水素油、水酸基の数が0又は1個であるエステル油、及びフェニル基を含有するシリコーン油から選ばれる1種以上を使用することが例示され、これら1種又は2種以上を、成分(A-2)油剤中に含ませることが好ましい。
これら炭化水素油、エステル油及びシリコーン油から選択された1種又は2種以上は、成分(A-2)油剤中に、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含ませることが好適である。
また製造する際に、成分(A-2)油剤を、溶剤として使用することが好ましい。製造する際に当該油剤を使用することで製造されたポリウレタンゲル組成物の特性が良好になる。また製造されたポリウレタンゲル組成物に適宜油剤を使用することで組成物硬度を調整することができる。
【0045】
成分(A)ポリウレタンゲル組成物に用いられる成分(A-2)油剤としては、より具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、ポリイソブチレン等の炭化水素類;オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;ホホバ油、イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類;メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等のシリコーン類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0046】
本発明に用いる成分(A)ポリウレタンゲル組成物は、透明性とツヤのみならず、弾力性・復元力が極めて高いという利点を有する。
針入荷重値測定の結果、このポリウレタンゲル組成物30部と流動パラフィン(ASTM D445測定方法による40℃における動粘度が8mm/s)70部とを、85℃にて加熱溶解し、30℃に冷却し得られたゲルは、2cmφ球状アダプタを2cm/minで10mm針入させた時の荷重値が0.2~10Nと優れた特性を示した。この硬度特性は、本発明に用いる成分(A)ポリウレタンゲル組成物がゲル復元力を有することを示す。
また、透明性に関しては、本発明に用いる成分(A)ポリウレタンゲル組成物は700nmの波長の透過率が90%以上である。この高い透過性は、本発明に用いる成分(A)ポリウレタンゲル組成物は極めて高い透明性を有することを示す。
【0047】
本発明の成分(A)ポリウレタンゲル組成物の製造方法は、前記(A-2)油剤の存在下でポリウレタンを製造することが好ましい。さらに、前記成分(A-1)で特定のポリオールをポリウレタン原料として使用すると共に前記(A-2)油剤の存在下でポリウレタンを製造することがより好適である。そして、本発明の成分(A)ポリウレタンゲル組成物は、公知のポリウレタン製造方法を参考して製造することができる。
【0048】
例えば、本発明に用いるポリウレタンゲル組成物1は、成分(A-2)油剤中において、Aの(a)末端にイソシアネート基を持つ水添ポリブタジエンと(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコールを加えて重付加反応を行うことによって得られる。
例えば、本発明のポリウレタンゲル組成物2は、(c)末端に水酸基を持つ水添ポリブタジエン、(b)HO-R-OH(式中、Rはエーテル結合を有していてもよい直鎖若しくは分岐のC2~C6アルキレン基を表す)で表されるグリコール、成分(A-2)油剤を仕込んで均一に混合し、(d)ジイソシアネート化合物を投入して反応させることによって製造することができる。
【0049】
なお、本発明のポリウレタンゲル組成物は、上記成分(A-1)及び成分(A-2)以外に本発明の効果を損なわない範囲で医薬分野に又は化粧分野で使用可能な任意成分を適宜含有させてもよい。任意成分として、例えば、揮発性成分、界面活性剤、油性成分、粉体、水溶性高分子、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等、各種の効果を付与するために通常化粧料に用いられる他の成分を適宜用いることができる。
【0050】
本発明における前記成分(A)ポリウレタンゲル組成物の含有量は、特に限定されないが、その下限値として好ましくは1質量%以上であり、その上限値として好ましくは30質量%以下であり、当該範囲として、より好ましくは1~30質量%であり、さらの好ましくは3~20質量%であり、さらにより好ましくは5~15質量%である。当該範囲にすることにより、油性固形化粧料の化粧持ち、化粧膜の均一性、およびソフトフォーカス効果等に優れる点でより好ましい。
【0051】
本発明における前記成分(A-1)ポリウレタンの含有量は、特に限定されないが、その下限値として好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、その上限値として好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、当該範囲として、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらの好ましくは0.5~8質量%である。
本発明における前記成分(A-2)油剤の含有量は、特に限定されないが、その下限値として好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、その上限値として好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、当該範囲として、より好ましくは0.5~30質量%であり、さらの好ましくは1~20質量%である。
【0052】
本発明の成分(B)油性ゲル化剤は、油剤をゲル化させるものであり、化粧料に一般的に用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、ワックス、デキストリン脂肪酸エステル、金属石鹸、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、シリコーンワックス、ヒマワリワックス、ミツロウ、モクロウ、ゲイロウ、ジロウ、モンタンワックス、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖パルミチン酸エステル、フラクトオリゴ糖ステアリン酸エステル、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、なめらかな伸び広がりや化粧膜の均一性の観点から、ワックス及び/またはデキストリン脂肪酸エステルが好ましく、さらに、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、シリコーンワックス、ヒマワリワックス、ミツロウ、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0053】
本発明における融点の測定は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-10℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される融点(Tm)とする。
【0054】
本発明の成分(B)の含有量は、特に限定されないが、油性固形化粧料の全量中1~20%が好ましく、3~15%がより好ましく、5~12%が更に好ましい。この範囲であれば、油性固形化粧料の使用時の伸び広がり、化粧持ち、化粧膜の均一性等がより優れる点でより好ましい。
【0055】
本発明の成分(C)球状粉体は、球状の粉体である。ここで、球状とは真球状だけでなく、略球状、楕円球状、偽球状などを包含し、長径/短径の比が好ましくは1.5/1~1/1、より好ましくは、1.2/1~1/1の範囲のものである。本発明に用いられる成分(C)球状粉体は、通常化粧料に使用される球状の粉体であれば、多孔質、無孔質、中空、多層等の粒子構造等により特に限定されず、有機粉体、無機粉体等いずれのものも使用できる。具体的には、ポリメチルシルセスキオキサン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ナイロン、(スチレン/DVB)コポリマー、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン等の有機粉体、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粉体が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。特に、なめらかな伸び広がりや、優れたソフトフォーカス効果の観点から有機球状粉体が好ましく用いられ、その中でも、ポリメチルシルセスキオキサン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ナイロン、(スチレン/DVB)コポリマー、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマーからなる群より選ばれる1種または2種以上が好ましく、より好ましくは、ポリメチルシルセスキオキサン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマーからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、ポリメチルシルセスキオキサンが更に好ましい。これらの球状粉体は1種で使用しても良いが、2種以上組み合わせて使用するとなめらかな伸び広がりとソフトフォーカス効果の観点でより好ましい。特に好ましい形態としては、ポリメチルシルセスキオキサン及び(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマーを用いることで、なめらかな伸び広がりとソフトフォーカス効果に顕著な効果が得られる等の点でより好ましい。
【0056】
市販品としては、TOSPEARL 3000、トスパール2000B*(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、トレフィルE505、E506、E701(何れも、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、KSP-100、101、102、105、300(何れも信越化学工業社製)、マツモトマイクロスフェアーM-101、305(何れも、松本油脂製薬社製)、ガンツパールGM-2800(アイカ工業社製)、PLASTIC POWDER-D400(根上工業社製)等が挙げられる。
【0057】
本発明の成分(C)の含有量は、特に限定されないが、油性固形化粧料の全量中0.1~30%が好ましく、3~25%がより好ましく、5~20%が更に好ましい。この範囲であれば、油性固形化粧料のなめらかな伸び広がり、ソフトフォーカス効果、化粧持ちおよび化粧膜の均一性等がより優れる点でより好ましい。
【0058】
本発明においては、上記した成分(A)と成分(C)を適宜含有することで得られるものではあるものの、含有する量比を特定することにより、より高い効果が期待できるため好ましい。このような量比は、特に限定されないが、成分(A)と成分(C)の含有質量割合が(A)/(C)=0.1~15であることが好ましく、0.5~10であることがより好ましい。この範囲であれば、ソフトフォーカス効果、なめらかな伸び広がりがより優れる等の点で、より好ましい。また、本発明においては、前記成分(A-1)ポリウレタン及び前記成分(C)球状粉体の含有質量割合が、好ましくは(A-1)/(C)=0.01~5、より好ましくは0.1~3、さらに好ましくは0.1~1である。この範囲であれば、ソフトフォーカス効果、なめらかな伸び広がりがより優れる等の点で、より好ましい。
【0059】
本発明には、成分(D)として、フェニル変性シリコーンをさらに含有することができる。本発明における成分(D)は、フェニル基を有するシリコーン油剤である。具体的には、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン等が挙げられる。この中でも、化粧膜の均一性の観点から、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコンが好ましく、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコンがより好ましく、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンが最も好ましい。本発明において、成分(D)を含有することでなめらかな伸び広がり、化粧膜の均一性等の効果を奏する。
【0060】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、1~20%が好ましく、3~10%がより好ましい。この範囲であれば、なめらかな伸び広がり、化粧膜の均一性がより優れる等の点で、より好ましい。
【0061】
本発明の油性固形化粧料は、上記の成分(A)~(D)の他に、通常化粧料に使用される成分、油性成分、粉体、界面活性剤、繊維、多価アルコール、水溶性高分子、水溶性皮膜形成性樹脂、保湿剤等の水性成分、糖類、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で含有することができる。
【0062】
油性成分としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源や固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、2-エチルヘキサン酸セチル、乳酸イソステアリル、乳酸オクチルドデシル、乳酸オレイル、乳酸ステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリメリト酸トリトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシ変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0063】
粉体としては、化粧料に通常使用される粉体であれば、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂等のコポリマー樹脂、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末、デキストリン粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等や、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエステル、レーヨン、セルロース等の維等が挙げられる。これらはフッ素化合物、シリコ-ン油、粉体、油剤、ゲル化剤、エマルションポリマー、界面活性剤等で表面処理されていてもよい。これらを1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0064】
界面活性剤としては、化粧料に通常使用される界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ水等の植物抽出液が挙げられる。
【0066】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等、例えば、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等をあげることができる。
【0067】
酸化防止剤としては、例えばトコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2-ペンタジオール等が挙げられる。
【0068】
本発明の油性固形化粧料の製造方法は特に限定されるものではなく、一般的な製法で得ることができる。例えば成分(B)及びその他の油性成分等を加熱溶融したのち、成分(A)、(C)及び任意の粉体や水性成分などを均一に混合分散し、加熱溶解後、容器または型に流し込み充填し、冷却して得ることができる。形状としては、皿状容器に充填されたもの、ジャー容器に充填されたもの、スティック状に成形されたもの等いずれのものにも使用されるが、本発明の効果が特に発揮される点において皿状容器に充填されたもの及びジャー容器に充填されたものであることが好ましい。
【0069】
本発明の油性固形化粧料は、性状が油性固形状の化粧料であれば特に限定されず何れのものにも適用できるが、口紅、リップクリーム、ほほ紅、アイカラー、コンシーラー等のメークアップ化粧料が好ましい。
【実施例
【0070】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0071】
[成分(A)のポリウレタンゲル組成物の製造実施例1]
3Lの三口フラスコに末端水酸基水素化ポリブタジエン899部(分子量2200)と、2-エチルヘキサン酸セチル2450部、ヘキサメチレンジイソシアネート128部を仕込み、均一に混合した。
60℃に制御しながらジブチル錫ジラウレート0.9部を投入し、3時間攪拌後、エチレングリコールを24部投入した。
投入終了後、80℃で5時間攪拌後、エタノールを18部添加して反応を完結させた。
得られたポリウレタンゲル中のポリウレタンの重量平均分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)にて10000であった。また、得られたゲル30部を、流動パラフィン70部と、85℃にて加熱溶解、30℃に冷却したゲルの荷重値は、荷重測定機(FUDOH社製)による、2cmφ球状アダプター、2cm/min、10mm針入の条件の場合、2.5Nであった。
【0072】
[成分(A)のポリウレタンゲル組成物の製造実施例2]
3Lの三口フラスコに末端水酸基水素化ポリブタジエン899部(分子量2200)と、2-エチルヘキサン酸セチル2450部、ヘキサメチレンジイソシアネート128部を仕込み、均一に混合した。
60℃に制御しながらジブチル錫ジラウレート0.9部を投入し、3時間攪拌後、エチレングリコールを24部投入した。
投入終了後、80℃で10時間攪拌後、エタノールを18部添加して反応を完結させた。
得られたポリウレタンゲル中のポリウレタンの重量平均分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)にて50000であった。また、得られたゲル30部を、流動パラフィン70部と、85℃にて加熱溶解、30℃に冷却したゲルの荷重値は、荷重測定機(FUDOH社製)による、2cmφ球状アダプター、2cm/min、10mm針入の条件の場合、5Nであった。
【0073】
[成分(A)のポリウレタンゲル組成物の製造実施例3]
3Lの三口フラスコに末端水酸基水素化ポリブタジエン899部(分子量2200)と、2-エチルヘキサン酸セチル2450部、ヘキサメチレンジイソシアネート128部を仕込み、均一に混合した。
60℃に制御しながらジブチル錫ジラウレート0.9部を投入し、3時間攪拌後、2-エチルヘキサン酸セチルで希釈しながら、エチレングリコールを24部投入した。
投入終了後、80℃で15時間攪拌後、エタノールを18部添加して反応を完結させた。
得られたポリウレタンゲル中のポリウレタンの重量平均分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)にて100000であった。また、得られたゲル30部を、流動パラフィン70部と、85℃にて加熱溶解、30℃に冷却したゲルの荷重値は、荷重測定機(FUDOH社製)による、2cmφ球状アダプター、2cm/min、10mm針入の条件の場合、7.5Nであった。
【0074】
[成分(A)のポリウレタンゲル組成物の製造実施例4]
3Lの三口フラスコに末端水酸基水素化ポリブタジエン899部(分子量2200)、エチレングリコール24部、ジブチル錫ジラウレート0.9部、2-エチルヘキサン酸セチル2450部を仕込み、均一に混合した。
60℃に制御しながらヘキサエチレンジイソシアネート128部を投入し、投入終了後80℃で10時間攪拌し、その後、エタノールを18部添加して反応を完結させた。
得られたポリウレタンゲル中のポリウレタンの重量平均分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)にて50000であった。また、得られたゲル30部を、流動パラフィン70部と、85℃にて加熱溶解、30℃に冷却したゲルの荷重値は、荷重測定機(FUDOH社製)による、2cmφ球状アダプター、2cm/min、10mm針入の条件の場合、3Nであった。
【0075】
[成分(A)のポリウレタンゲル組成物の製造実施例5]
3Lの三口フラスコに末端水酸基水素化ポリブタジエン899部(分子量2200)、エチレングリコール24部、ジブチル錫ジラウレート0.9部、2-エチルヘキサン酸セチル2450部を仕込み、均一に混合した。
60℃に制御しながら、ヘキサエチレンジイソシアネート128部を投入し、投入終了後80℃で15時間攪拌し、その後、エタノールを18部添加して反応を完結させた。
得られたポリウレタンゲル中のポリウレタンの重量平均分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)にて100000であった。また、得られたゲル30部を、流動パラフィン70部と、85℃にて加熱溶解、30℃に冷却したゲルの荷重値は、荷重測定機(FUDOH社製)による、2cmφ球状アダプター、2cm/min、10mm針入の条件の場合、4.5Nであった。
【0076】
[製造比較例1]
架橋型シリコーンゲル(KSG-43 信越化学工業社製)100部を用いる。
[製造比較例2]
デキストリン脂肪酸エステル(レオパールISK 千葉製粉社製)35部と、2-エチルヘキサン酸セチル65部を、90℃にて加熱、冷却し、多糖類ゲルを調製した。
[製造比較例3]
結晶性ポリエチレンワックス(PERFORMALENE655 ニューフェーズテクノロジー社製)35部と、2-エチルヘキサン酸セチル65部を、90℃にて加熱、冷却し、ワックスオイルゲルを調製した。
なお、製造比較例1のシリコーンゲルは、ツヤが足りず復元力に欠けている。製造比較例2の多糖類ゲルは、復元性・復元力が弱い。製造比較例3のワックスオイルゲルは、ツヤが足りない。
【0077】
[ゲルの評価]
前記製法により得られたポリウレタンゲルの中から、製造実施例2のポリウレタンゲル組成物に対して、化粧料に汎用される各種油剤に対するゲル荷重値、並びにゲルの透明性に関して評価した(試験例1~6)。その結果を表1に示す。また、種々の評価方法は、以下となる。なお、製造実施例1~5の成分(A)ポリウレタンゲル組成物のゲル荷重値は2.5~7.5N、重量均分子量は10000~100000であった。
【0078】
【表1】
【0079】
[荷重値の測定及びゲル強度評価]
製造実施例2のポリウレタンゲル組成物と、表1に記載の各種油剤を85℃にて加熱溶解、30℃に冷却し、弾力性のあるゲルを調製した(試験例1~6)。ゲルの荷重値に関しては、荷重測定機(FUDOH社製)を用いて、2cmφ球状アダプター、2cm/min、10mm針入の条件にて測定した。これによりゲル強度を評価した。試験例1~4の結果、分子中の水酸基数が少ない油剤ほど、荷重値が高い傾向にあることを確認した。これは、ポリウレタンゲルの親水基会合性増粘機構における、親水基部分に、油剤中の水酸基が影響を与え、増粘低下をもたらしたと考えられる。
【0080】
[透明性の測定及び評価]
表1に記載の各種ゲル(試験例1~6)に対する透明性は、透過度測定機(島津製作所社製)を用いて、700nmにおける透過率を測定した。その結果、試験例1~6全てのゲルにおいて、90%以上と、良好な透明性(◎)を示した。
【0081】
[自己復元力の測定及び評価]
製造実施例2のポリウレタンゲル組成物、及び製造比較例2のデキストリン脂肪酸エステルゲルを用いて、自己復元力の評価を実施した。測定サンプルは、各々、純分が10.5質量%になる様に2-エチルヘキサン酸セチルで希釈し、85℃にて加熱後、ジャー容器に流し込み、30℃に冷却することで弾力性のあるゲルを調製した。調製したサンプルに対し、テクスチュアアナライザー(英栄精機社製)を用いて、2cmφ球状アダプターにて5gの荷重をかけた時点から、1mm/minの速度、5mm針入する条件にて、7回、同じ動作を繰り返すことで、荷重によりゲル構造が破壊されず、復元力があるか確認した。測定の模式図を図1に示す。
その結果、製造比較例2のデキストリン脂肪酸エステルゲルは、繰り返しの荷重で、ゲル構造が破壊し、同じ曲線にならないのに対し、製造実施例2のポリウレタンゲル組成物は、繰り返しの荷重でゲルが崩壊することなく、同じ曲線を辿ることから、ゲルの復元性が高いことが分かった。また、荷重値自体の値も、製造比較例2のデキストリン脂肪酸エステルゲルと比較して高いことから、弾力性に優れることが分かった。
【0082】
前記検討により、本発明で用いられる成分(A)ポリウレタンゲル組成物は、透明性、高い弾力性に優れ、また、自己復元力に優れる新規性の高いゲルであることが分かった。
【0083】
実施例1~15、比較例1~5:アイカラー
下記表2及び表3に示す処方のアイカラーを調製し、イ.なめらかな伸び広がり、ロ.ソフトフォーカス効果、ハ.化粧持ち、ニ.化粧膜の均一性について下記の評価方法により判定した。その結果も併せて表2及び3に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
※1:レオパールKL-2 (千葉製粉社製)
※2:AEROSIL R976S (日本アエロジル社製)
※3:KSG-43 (信越化学工業社製)
【0087】
(製造方法)
A.成分(1)~(7)を110℃まで加熱し、均一溶解する。
B.成分(8)~(18)をAに加え、均一に混合する。
C.Bを100℃にて皿状容器に充填し、室温まで冷却固化してアイカラーを得た。
【0088】
〔評価方法1〕
イ.なめらかな伸び広がり、ロ.ソフトフォーカス効果、ハ.化粧持ち、ニ.化粧膜の均一性
各試料について、専門パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて5段階に評価し、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記判定基準により4段階で判定した。
【0089】
<評価基準>
イ.塗布直後からなめらかに伸び広がり、止まり際に急に止まらないかどうか
ロ.油性固形化粧料を塗布することで塗布箇所をぼかすことができるかどうか
ハ.塗布後4時間後も化粧膜が持続するかどうか
ニ.塗付後の化粧膜にむらがなく均一であるかどうか
<判定基準>
◎ :専門パネル8人以上が良好と回答
○ :専門パネル6人以上が良好と回答
△ :専門パネル4人以上が良好と回答
× :専門パネル4人未満が良好と回答
【0090】
表2及び3の結果より明らかな様に、実施例1~15は比較例に比べ、全ての評価項目において良好な結果が得られた。
一方、成分(A)を含有しない比較例1は、化粧膜の柔軟性に欠くことから時間の経過とともに肌の凹凸部でのヨレが生じ、塗付箇所を均一にぼかすことがかなわず、かえって凹凸が強調されてしまった。すなわちソフトフォーカス効果、化粧持ちおよび化粧膜の均一性に満足のいく品質が得られなかった。また、成分(A)の代わりに(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー重合物を用いた比較例2は、化粧持ちに満足のいく品質が得られなかった。また、成分(C)を含有しない比較例3は、球状粉体特有の肌上でのころがりを感じられず、なめらかな伸び広がりに満足のいく品質が得られなかった。成分(C)の代わりにタルクを用いた比較例4は、不定形粉体由来の化粧膜の指止まりがきつく、化粧膜がむらになり、なめらかな伸び広がりおよび化粧膜の均一性に満足のいく品質が得られなかった。さらに、成分(B)を含有しない比較例5は、本発明の油性ゲル化剤を含有していないため、本発明の油性固形状とすることができず、本願効果に満足のいく品質が得られなかった。
【0091】
実施例16:紫外線防御用口紅(スティック状)
成分 (%)
1.ポリエチレンワックス 7
2.マイクロクリスタリンワックス 1.5
3.12-ヒドロキシステアリン酸 1.5
4.トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 残量
5.t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 1
6.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 3
7.ジメチルポリシロキサン※4 2
8.オクチルドデカノール 20
9.製造実施例1のポリウレタンゲル組成物 8
10.フェニルトリメチコン 5
11.トリメチルシロキシフェニルジメチコン 5
12.イソノナン酸イソトリデシル 10
13.ジブチルヒドロキシトルエン 0.1
14.シリル化処理無水ケイ酸※5 1
15.多孔質無水ケイ酸(平均粒子径12μm) 1.5
16.球状メタクリル酸メチルクロスポリマー※6 5
17.赤色202号 0.3
18.パーフルオロオクチルトリエトキシシラン2%処理ガラス末 5
19.トコトリエノール 0.1
20.1,2-ペンタンジオール 0.1
21.香料 0.05
22.水添レシチン 0.1
23.セラミド3 0.01
24.アスタキサンチン 0.0001
25.オレイン酸フィトステリル 0.02
※4:KF-56-10CS(信越化学工業社製)
※5:AEROSIL R976S(日本アエロジル社製)
※6:平均粒子径30μm
【0092】
(製造方法)
A.成分(1)~(13)を100~110℃にて均一に溶解する。
B.Aに成分(14)~(25)を加え、均一に混合分散する。
C.Bを脱泡後、100℃に加熱してスティック状口紅容器に直接流し込む。
D.Cを室温に冷却後、口紅を得た。
【0093】
以上のようにして得られたスティック状口紅は、なめらかな伸び広がり、ソフトフォーカス効果、化粧持ち、化粧膜の均一性のすべて点で満足のいくものであった。
【0094】
実施例17:コンシーラー
(成分) (%)
1.カルナウバワックス(融点83℃) 1
2.キャンデリラワックス(融点73℃) 4
3.ワセリン(融点58℃) 2
4.リンゴ酸ジイソステアリル 残量
5.製造実施例3のポリウレタンゲル組成物 7
6.セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン 0.5
7.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 3
8.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 10
9.(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー 3
10.イソドデカン 10
11.ジフェニルジメチコン 2
12.球状ポリエチレン末(平均粒子径10μm) 2
13.球状ナイロン末(平均粒子径15μm) 8
14.ポリメチルシルセスキオキサン(平均粒子径0.5μm) 3
15.酸化亜鉛(六角板状、平均粒子径1μm) 2
16.トリエトキシカプリリルシラン2%処理酸化チタン※7 7
17.メチルハイドロゲンジメチコン2%処理ベンガラ 0.5
18.ジメチルポリシロキサン3%処理黒色酸化鉄 0.1
19.N-ラウロイル-L-グルタミン酸Na2%処理黄色酸化鉄 2
20.板状タルク(平均粒子径13μm) 5
21.ベンガラ被覆雲母チタン 3
22.メドウフォーム油 2
23.レシチン処理扁平セルロース 0.01
24.カルボマー 0.01
25.ローズ水 0.05
※7:平均粒子径0.7μm
【0095】
(製造方法)
A. 成分(1)~(11)を90~100℃にて均一に溶解する。
B. Aに成分(12)~(25)を加え、均一に混合する。
C. Bを容器に90℃にて溶解して、金型に流し込む。
D. Cを室温に冷却後、金型を取り除き、容器に装填し、コンシーラーを得た。
【0096】
以上のようにして得られたコンシーラーは、なめらかな伸び広がり、ソフトフォーカス効果、化粧持ち、化粧膜の均一性のすべて点で満足のいくものであった。
【0097】
実施例18:アイブロウ(パレットタイプ)
成分 (%)
1.フィッシャートロプシュワックス 8
2.ステアリルジメチコン(融点40℃) 1
3.ミツロウ(融点65℃) 3
4.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 10
5.デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10 5
6.製造実施例5のポリウレタンゲル組成物 5
7.製造実施例2のポリウレタンゲル組成物 20
8.ミリスチン酸イソプロピル 3
9.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 残量
10.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル) 5
11.ラウロイルリジン 2
12.(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー 7
13.(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン
/シルセスキオキサン)クロスポリマー 1.5
14.ジプロピレングリコール 0.5
15.グリセリン 1
16.シア脂 0.03
17.ジメチルポリシロキサン2%処理黒色酸化鉄 0.3
18.トリイソステアリン酸イソプロピルチタン処理酸化チタン※8 1
19.レシチン3%処理黄色酸化鉄 2
20.ハイドロゲンジメチコン1%処理ベンガラ 0.5
21.窒化ホウ素 2
22.オキシ塩化ビスマス 0.5
23.パルミチン酸レチノール 0.005
24.ラベンダー油 0.02
25.アスコルビン酸 0.0002
※8:平均粒子径0.25μm、表面処理剤2%で処理したもの
【0098】
(製造方法)
A. 成分(1)~(10)を100℃~110℃にて加熱溶解する。
B. Aに成分(11)~(25)を加えて均一に混合する。
C. Bを脱泡後、100℃に加熱し金皿に流し込み充填する。
D. Cを室温に冷却してアイブロウを得た。
【0099】
以上のようにして得られたアイブロウは、なめらかな伸び広がり、ソフトフォーカス効果、化粧持ち、化粧膜の均一性のすべて点で満足のいくものであった。
【0100】
実施例19:頬紅
(成分) (%)
1.パルミチン酸デキストリン 7
2.(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン 3
3.ヒマワリワックス(融点76℃) 3
4.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 残量
5.イソステアリン酸デキストリン※9 2
6.(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマー 2
7.製造実施例4のポリウレタンゲル組成物 8
8.製造実施例2のポリウレタンゲル組成物 8
9.ホホバ油 0.1
10.トリベヘニン 0.5
11.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
12.ラウリルポリグリセリン-3
ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 0.4
13.(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー 4
14.ジメチルポリシロキサン※10 0.2
15.セスキオレイン酸ソルビタン 0.3
16.(スチレン/DVB)コポリマー※11 2
17.球状ポリメタクリル酸メチル(平均粒子径6.5μm) 3
18.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー 5
19.ポリメチルシルセスキオキサン 8
20.赤色226号 0.2
21.ハイドロゲンジメチコン8%処理黄色4号 0.1
22.ジメチルポリシロキサンン2%処理合成金雲母 3
23.PET(平均粒子径200μm) 1
24.(PET/AL)ラミネート 1
25.ピーチエキス 0.03
※9:ユニフェイルマHVY(千葉製粉社製)
※10:KF-96-2CS(信越化学工業社製)
※11:ガンツパールGS-0605(アイカ工業社製)
【0101】
(製造方法)
A. 成分(1)~(13)を均一に80~90℃にて溶解する。
B. Aに成分(14)~(25)を加え、均一に混合する。
C. Bを樹脂皿に90℃にて溶解充填する。
D. Cを室温に冷却固化し頬紅を得た。
【0102】
以上のようにして得られた頬紅は、なめらかな伸び広がり、ソフトフォーカス効果、化粧持ち、化粧膜の均一性のすべて点で満足のいくものであった。
【0103】
実施例20:ファンデーション
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス 3.5
2.キャンデリラワックス(融点73℃) 1
3.ワセリン(融点58℃) 10
4.ジカプリン酸プロピレングリコール 4
5.製造実施例3のポリウレタンゲル組成物 18
6.パラメトキシケイ皮酸2-エチルへキシル 2
7.トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 10
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.3
9.流動パラフィン 3
10.シリル化処理無水ケイ酸※5 0.05
11.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 残量
12.ポリメチルシルセスキオキサン(平均粒子径0.5μm) 10
13.球状ナイロン末(平均粒子径15μm) 3
14.トリエトキシカプリリルシラン2%処理酸化チタン※12 19
15.トリエトキシカプリリルシラン2%処理ベンガラ 0.5
16.トリエトキシカプリリルシラン2%処理黄色酸化鉄 2
17.トリエトキシカプリリルシラン2%処理黒色酸化鉄 0.2
18.トリエトキシカプリリルシラン2%処理セリサイト 3
19.香料 0.1
20.オリーブ油 0.1
21.ローズヒップ油 0.01
22.バラエキス 0.05
23.トリプロピレングリコール 0.2
※12:平均粒子径0.035μm
【0104】
(製造方法)
A. 成分(1)~(11)を均一に100~110℃にて溶解する。
B. Aに成分(12)~(23)を加え、均一に混合する。
C. Bを金皿に95℃にて溶解充填する。
D. Cを室温に冷却固化しファンデーションを得た。
【0105】
以上のようにして得られたファンデーションは、なめらかな伸び広がり、ソフトフォーカス効果、化粧持ち、化粧膜の均一性のすべて点で満足のいくものであった。
図1