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特許7098412応答力発生装置および応答力発生装置を備えた車載用表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】応答力発生装置および応答力発生装置を備えた車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
G06F3/041 480
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018095258
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019200638
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】白嶋 仁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 市郎
【審査官】三吉 翔子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-511780(JP,A)
【文献】特表2013-513865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が操作部とされた操作対象部材と、前記操作対象部材を支持する支持基台と、前記操作対象部材に加速度を与える加速度発生部とが設けられている応答力発生装置において、
前記操作対象部材を前記支持基台に支持する一対の支持リンクが設けられ、それぞれの前記支持リンクは、固定側支持点で前記支持基台に回動自在に支持され、可動側支持点で前記操作対象部材に回動自在に支持されており
それぞれの前記支持リンクの前記固定側支持点を結ぶ仮想の固定支持線と、それぞれの前記支持リンクの前記可動側支持点を結ぶ仮想の可動支持線とが、互いに平行に配置されて、前記支持リンクは、前記固定側支持点と前記可動側支持点において、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向に延びる線を中心として回動し、
前記加速度発生部によって、前記操作対象部材に対し、前記可動支持線と平行な向きの加速度が与えられることを特徴とする応答力発生装置。
【請求項2】
それぞれの前記支持リンクは板状部材であって、その板面が、前記対向方向に延びる前記線と垂直な仮想平面と平行に配置されている請求項1記載の応答力発生装置。
【請求項3】
前記加速度発生部は、質量体と、前記質量体に加速度を与えるアクチュエータとを有しており、
前記アクチュエータの駆動中心線と、前記可動支持線とが、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向に重なっている請求項1または2記載の応答力発生装置。
【請求項4】
前記操作対象部材と前記支持基台との間には、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向の間隔を変化させることなく、前記操作対象部材を加速度が付与された方向へ移動自在とする可動スペーサと、前記操作対象部材と前記支持基台とを接近させる方向に付勢する対向ばね部材と、が設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の応答力発生装置。
【請求項5】
前記支持リンクが、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向に撓むことができ、前記操作対象部材が、前記支持基台に向けて押されたときに、前記支持基台に向けて接近可能である請求項1ないし3のいずれかに記載の応答力発生装置。
【請求項6】
前記操作対象部材が前記支持基台に接近したときに動作するセンサが設けられている請求項5記載の応答力発生装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された応力発生装置を備え、
前記操作対象部材が、表示画面を有していることを特徴とする車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作対象部材に設けられた操作部が手または指で操作されたときに、操作対象部材に対して直線方向への加速度が与えられる応答力発生装置および応答力発生装置を備えた車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、操作パネルの支持構造に関する発明が記載されている。
この支持構造では、操作面を有する操作パネルが、支持板部材を介して、ベース部材上に支持されている。支持板部材は、操作パネルの両側辺部に沿って一対設けられ、一対の支持板部材が平行に配置されている。それぞれの支持板部材は、弾性変形可能な湾曲部を有している。操作パネルの裏面では、圧電素子を有して振動を発生するアクチュエータが、一方の支持板部材に接近した位置に固定されている。この支持構造は、支持板部材が操作パネルの振動の節部となる両側辺部に設けられているために、アクチュエータが動作したときに支持板部が操作パネルの振動を阻害することがなく、振動エネルギーの損失が防止される、というものである。
【0003】
特許文献2にタッチスクリーンを支持するサスペンションシステムに関する発明が記載されている。
【0004】
特許文献2の図10に記載されているサスペンションシステムは、タッチスクリーンが、ハウジング構成部材に、タッチスクリーンの面に沿うX軸方向へのみ動けるように案内されているとともに、第1の部材と第2の部材の剛性によってX軸方向に支持されている。タッチスクリーンにアクチュエータが固定されており、アクチュエータからX軸に沿って生成される力に反応して、タッチスクリーンがX軸に沿って運動できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-91109号公報
【文献】特開2015-103255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された支持構造は、操作パネルの両側辺部が、この側辺部に沿う長い寸法の支持板部材で支持されているため、操作パネルの動きの自由度が小さい。特許文献1では、アクチュエータによって操作パネルに対してどの方向への振動が与えられるのか記載されていないが、操作パネルの自由度が小さいため、アクチュエータで発生する振動の向きがどの方向であっても、操作者に大きな応答力を感じさせることが難しい。
【0007】
特許文献2に記載されたサスペンションシステムは、タッチスクリーンがX軸方向へのみ移動できるように軸支持構造で案内されている。そのため、アクチュエータからタッチスクリーンに与えられる力がX軸方向に対して少しでも傾いていると、軸支持構造の摩擦力が大きくなって、タッチスクリーンを円滑に動かすのが難しくなる。そのため、きわめて高い組み立て精度が要求されることになる。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、操作対象部材が一方向への大きな応力を発生することができ、しかも低負荷にて動作させることができる応答力発生装置および応答力発生装置を備えた車載用表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも一部が操作部とされた操作対象部材と、前記操作対象部材を支持する支持基台と、前記操作対象部材に加速度を与える加速度発生部とが設けられている応答力発生装置において、
前記操作対象部材を前記支持基台に支持する一対の支持リンクが設けられ、それぞれの前記支持リンクは、固定側支持点で前記支持基台に回動自在に支持され、可動側支持点で前記操作対象部材に回動自在に支持されており
それぞれの前記支持リンクの前記固定側支持点を結ぶ仮想の固定支持線と、それぞれの前記支持リンクの前記可動側支持点を結ぶ仮想の可動支持線とが、互いに平行に配置されて、前記支持リンクは、前記固定側支持点と前記可動側支持点において、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向に延びる線を中心として回動し、
前記加速度発生部によって、前記操作対象部材に対し、前記可動支持線と平行な向きの加速度が与えられることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の応答力発生装置は、前記加速度発生部が、質量体と、前記質量体に加速度を与えるアクチュエータとを有しており、
前記アクチュエータの駆動中心線と、前記可動支持線とが、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向に重なっていることが好ましい。
【0011】
本発明の応答力発生装置は、前記操作対象部材と前記支持基台との間に、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向の間隔を変化させることなく、前記操作対象部材を加速度が付与された方向へ移動自在とする可動スペーサと、前記操作対象部材と前記支持基台とを接近させる方向に付勢する対向ばね部材と、が設けられているものとして構成できる。
【0012】
あるいは本発明の応答力発生装置は、前記支持リンクが、前記操作対象部材と前記支持基台との対向方向に撓むことができ、前記操作対象部材は、前記支持基台に向けて押されたときに、前記支持基台に向けて接近可能であるものとして構成できる。
【0013】
この構成では、例えば、前記操作対象部材が前記支持基台に接近したときに動作するセンサが設けられている。
【0014】
本発明の応答力発生装置は、それぞれの前記支持リンクは板状部材であって、その板面が、前記対向方向に延びる前記線と垂直な仮想平面と平行に配置されていることが好ましい。
【0015】
次に、本発明の車載用表示装置は、前記のいずれかに記載された応力発生装置を備え、前記操作対象部材が、表示画面を有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の応答力発生装置は、操作対象部材が一対の支持リンクを介して支持基台に支持され、支持リンクの回動動作によって、操作対象部材が、一対の可動側支持点を結ぶ可動支持線に沿って移動自在である。加速度発生部によって、操作対象部材に対して可動側支持線と平行な向きの加速度が与えられて、操作対象部材が可動側支持線と平行な向きでのみ動くため、操作者の指や手に応答力を感度よく与えることが可能である。
【0017】
操作対象部材は、支持リンクの回動動作で移動するため、加速度の向きと可動側支持線の向きとの平行度が少しずれたとしても、操作対象部材を動作させるのに必要な負荷が過大となることがなく、操作対象部材を円滑に動作させることができる。また、過剰な組み立て精度が要求されることもない。
【0018】
また、本発明の表車載用示装置では、車体振動が作用していても、前記応答力発生装置で発生する応答力を、操作部となる表示画面から操作者の指や手に感度良く与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の応答力発生装置を備えた車載用表示装置を後方から見た斜視図、
図2図1に示す車載用表示装置を、支持基台を外した状態で後方から見た分解斜視図、
図3図1に示す車載用表示装置を、支持基台を外した状態で後方から見た背面図、
図4図3に示す車載用表示装置の一部を拡大して示す拡大背面図、
図5図1に示す車載用表示装置をV矢視方向から見た部分側面図、
図6】本発明の第2実施形態の応答力発生装置を備えた車載用表示装置を示す、図3に相当する背面図、
図7】本発明の第3実施形態の応答力発生装置を備えた車載用表示装置を示す、図5に相当する部分側面図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の実施形態の応答力発生装置20を備えた車載用表示装置1が示されている。車載用表示装置1および応答力発生装置20は、Y1方向が前方でY2方向が後方である。Y1方向は車室内に向けられる表示方向であり、Y2方向は車両の進行方向の前方に向けられる。Y1-Y2方向が操作対象部材3と支持基台2との対向方向である。X1方向は後方から見たときの右方向で、X2方向が左方向である。Z1方向は上方でZ2方向が下方向である。
【0021】
車載用表示装置1は、支持基台2を有している。支持基台2は金属板や合成樹脂材料で形成されている。支持基台2は、車室内の前方のダッシュボードまたはインストルメントパネルの内部または表面に固定される。あるいは、ダッシュボードまたはインストルメントパネルに昇降装置や前後駆動装置が設けられ、これら装置の可動部分に支持基台2が固定されていてもよい。
【0022】
支持基台2の前方(Y1方向)に操作対象部材3が配置されている。操作対象部材3は図1図5に破線で示すケース4と、ケース4の背面を構成する可動板5を有している。ケース4には、表示パネルおよび表示パネルの駆動に必要な各種電子回路が内蔵されている。表示パネルは、カラー液晶表示セルやエレクトロルミネッセンス表示セルなどの表示セルを有している。表示パネルの表示画面は、前方(Y1方向)に向けられている。
【0023】
表示画面は、透明なタッチセンサを有する操作部となっている。タッチセンサは、透明基板に複数の透明電極が設けられて構成された静電容量式センサである。表示画面に操作者の指が触れると、電極で検知される静電容量が変化し、このときの静電容量の分布の変化により、指が触れた座標位置が検知される。または、タッチセンサは、全面に透明電極が形成された透明基板に、同じく全面に透明電極が形成された透明フィルムが隙間を介して対向する抵抗式センサである。抵抗式センサは、透明フィルムのいずれかの箇所が押されると、透明フィルムに形成された透明電極と、透明基板に形成された透明電極とが短絡し、透明電極の縁部に設けられた電極部から短絡部までの抵抗値の変化が検知されて、指が触れた座標位置が判定される。
【0024】
操作対象部材3は、表示パネルの表示画面以外の領域に、操作部として、タッチセンサや機構式の押釦スイッチなどが設けられていてもよい。または、操作対象部材3が表示パネルを有することなく、Y1方向に向く操作面に操作部のみが配置されたものであってもよい。この場合、応答力発生装置20は、車載用操作装置の一部を構成することになる。
【0025】
図2図3に示すように、操作対象部材3は、一対の支持リンク10を介して支持基台2に支持されている。図2に示すように、それぞれの支持リンク10の上部に、固定側ブラケット11が設けられている。一対の固定側ブラケット11は金属板であり、支持基台2の前方(Y1方向)に向く前面2aに設置され、後方から支持基台2に挿入される固定ねじ12によって、固定側ブラケット11が前面2aに固定されている。それぞれの支持リンク10の上部と、それぞれの固定側ブラケット11とが、固定側支持軸13によって回動自在に連結されている。固定側支持軸13の軸中心が固定側支持点であり、支持リンク10と固定側ブラケット11は、固定側支持点を支点として回動自在に連結されている。
【0026】
図2図3に示すように、それぞれの支持リンク10の下部に、可動側ブラケット14が設けられている。一対の可動側ブラケット14は、操作対象部材3を構成している可動板5の後方(Y2方向)に向く背面5aに固定されている。それぞれの支持リンク10の下部と、それぞれの可動側ブラケット14とが、可動側支持軸15によって回動自在に連結されている。可動側支持軸15の軸中心が可動側支持点であり、支持リンク10と可動側ブラケット14は、可動側支持点を支点として回動自在に連結されている。
【0027】
それぞれの支持リンク10の上部を支持している固定側支持軸13は左右方向に離れて位置し、それぞれの支持リンク10の下部を支持している可動側支持軸15も左右に離れて位置している。図3には、左右の固定側支持軸13の軸中心である固定側支持点を結ぶ仮想線である固定支持線L1と、左右の可動側支持軸15の軸中心である可動側支持点を結ぶ仮想線である可動支持線L2が示されている。固定側支持点は、支持リンク10のY1側に向く表面またはY2側に向く表面と固定側支持軸13の軸中心との交点として定義でき、可動側支持点は、支持リンク10のY1側に向く表面またはY2側に向く表面と可動側支持軸15の軸中心との交点として定義できる。よって、固定支持線L1と可動支持線L2は共に、可動板5の背面5aと平行でX-Z平面と平行な仮想平面内に位置している。固定支持線L1と可動支持線L2は、互いに平行であり、設計上の重力方向であるZ1-Z2方向とは直交している。
【0028】
図3に示すように、同じ支持リンク10を支持している固定側支持点と可動側支持点とを結ぶ仮想線を回動基準線Laとすると、回動基準線Laが設計上の重力方向であるZ1-Z2方向に延びている。回動基準線Laは、支持リンク10のY1側に向く表面またはY2側に向く表面に沿って延びている。
【0029】
一対の支持リンク10は、可動板5の背面5aと平行な仮想平面(X-Z平面と平行な平面)に沿って上下方向(Z1-Z2方向)に向けられて固定側支持点と可動側支持点との間に延びている。支持リンク10は板状部材であり、その板面がX-Z面と平行な仮想面に沿って延びており、またX-Z面と垂直なY方向に延びる中心線を支点として回動する。そのため、支持リンク10の配置領域がY方向に向けて薄くなっており、装置全体の前後方向(Y1-Y2方向)の厚さ寸法を小さくすることが可能である。
【0030】
操作対象部材3に外力が作用していない状態では、図3に示すように、固定支持線L1と可動支持線L2および一対の回動基準線La,Laで、矩形状(長方形状)が形成されている。よって、操作対象部材3に左右方向(X1-X2方向)の力または加速度が作用すると、一対の支持リンク10が上部の固定側支持軸13を中心として回動し、支持リンク10の下方の可動側支持軸15が、図3図4に示すα方向へ回動して、操作対象部材3が左右方向(X-X2方向)へ移動する。応答力を発生させるために操作対象部材3をα方向へ回動させるときの回動角度は微小であるため、操作対象部材3の上下方向(Z1-Z2方向)の動きは無視できる程度である。
【0031】
図2に示すように、支持基台2の前面2aの上下2か所にストッパ部材21が設置されており、後方から支持基台2に挿入された固定ねじ22により、ストッパ部材21が支持基台2の前面2aに固定されている。図2図3に示すように、操作対象部材3を構成する可動板5の背面5aには、左側(X2側)の側部に段差部5bが形成されており、段差部5bが、ストッパ部材21の左端部のストッパ突部21aに当たることで、操作対象部材3の左方向(X2方向)への移動が規制されている。
【0032】
図2に示すように、支持基台2の後方(Y2方向)に向く背面2bにばね金具23が設置され、固定ねじ24によってばね金具23が背面2bに固定されている。ばね金具23には前方に折り曲げられたばね掛け片23aが形成されており、左側(X2側)に位置する可動側ブラケット14に形成されたばね掛け片14aと、支持基台2側のばね掛け片23aとの間に引っ張りコイルばね25が掛けられている。この引っ張りコイルばね25の弾性力により、可動板5の段差部5bがストッパ突部21aに押し付けられている。
【0033】
図2に示すように、支持基台2の前面2aにばね掛け部材26が設置され、支持基台2に後方から挿入された固定ねじ27によって、ばね掛け部材26が支持基台2の前面2aに固定されている。図3に示すように、操作対象部材3の可動板5の背面5aに中央ブラケット28が固定されており、中央ブラケット28にばね掛け部28aが形成されている。ばね掛け部材26とばね掛け部28aとの間に引っ張りコイルばね29が掛けられている。この引っ張りコイルばね29の弾性力によって、支持リンク10と可動側支持軸15とのがたつきと、支持リンク10と固定側支持軸13とのがたつきの発生が抑制されている。
【0034】
図2図3に示すように、操作対象部材3を構成する可動板5の背面5aの右側(X1側)の側辺に沿う3か所と、左側(X2側)の側辺に沿う3か所にスペーサブラケット31が固定されており、それぞれのスペーサブラケット31に可動スペーサとしてのスペーサローラ32が回転自在に支持されている。それぞれのスペーサローラ32の回転軸は上下方向(Z1-Z2方向)に向けられている。図5に示すように、それぞれのスペーサブラケット31と、支持基台2の右側辺および左側辺との間に対向ばね部材33が掛けられている。対向ばね部材33は引っ張りコイルばねであり、対向ばね部材33の弾性力により、支持基台2と操作対象部材3がその対向方向(Y1-Y2方向)へ引き付けられており、それぞれのスペーサローラ32が支持基台2の前面2aに圧接されている。
【0035】
支持基台2にスペーサローラ32が密着しているため、操作対象部材3の表示画面に設けられたタッチセンサや、表示画面以外の領域に設けられた操作部がX2方向へ押されたときに、操作対象部材3が後方(Y2方向)に動くことがない。しかも、全てのスペーサローラ32の回転軸が上下方向(Z1-Z2方向)に向けられているため、操作対象部材3が左右方向(X1-X2方向)に動くことができる。なお、可動スペーサとしては、ローラ方式ではなく、支持基台2と可動板5とが相対的に滑り動作できるように、低摩擦樹脂で形成されているものであってもよい。
【0036】
図2図3に示すように、可動板5の背面5aに固定された中央ブラケット28に加速度発生部40が搭載されている。図4に拡大して示すように、加速度発生部40では、中央ブラケット28の、左側(X2側)に第1機構ブラケット41aが、右側(X1側)に第2機構ブラケット41bが固定されている。第1機構ブラケット41aに第1ソレノイド42aが固定され、第2機構ブラケット41bに第2ソレノイド42bが固定されている。この加速度発生部40では、第1ソレノイド42aと第2ソレノイド42bとでアクチュエータが構成されている。第1ソレノイド42aと第2ソレノイド42bとの間に質量体44が配置されている。第1ソレノイド42aのプランジャ43aと第2ソレノイド42bのプランジャは、質量体44に固定されており、これらプランジャの動作により、質量体44はX1-X2方向へ移動できるように案内されている。
【0037】
加速度発生部40では、質量体44が図示しないばね部材でX1方向へ引かれている。加速度を発生するときは、第1ソレノイド42aのコイルに通電されて質量体44がX2方向へ吸引され、その直後に第1ソレノイド42aのコイルへの通電が停止すると同時に第2ソレノイド42bのコイルに通電されて、質量体44が第2ソレノイド42bの吸引力と前記ばね部材の弾性力によってX1方向へ引かれる。X2方向へ急速に移動させられる質量体44が第2機構ブラケット41bに当たる衝撃により、操作対象部材3にX1方向への加速度が与えられ、これが表示画面に触れている指または手に応答力として感じさせられる。または、質量体44をばね部材でX2方向へ移動させておき、加速度を発生するときに、第1ソレノイド42aと第2ソレノイド42bを、同時にX1方向へ動作させ、2つのソレノイドの同じ向きの駆動力で質量体44をX1方向へ急激に移動させてもよい。
【0038】
加速度発生部40では、ソレノイド42a,42bの駆動力で、質量体44をX1方向へ1回だけ移動させて、操作対象部材3に加速度を発生させてもよいし、質量体44をX1-X2方向へ複数回往復させて、振動する加速度を操作対象部材3に与えてもよい。または加速度発生部40が振動発生装置であってもよい。例えば大きな質量がばねで中立位置に支持されており、コイルと磁石で構成されたアクチュエータにより、この質量がX1-X2方向へ振動させられるものであってもよい。
【0039】
図4に、アクチュエータであるソレノイド42a,42bの駆動中心線Obが示されている。駆動中心線Obはソレノイド42a,42bのプランジャの軸中心線である。また、質量体44の重心は駆動中心線Ob上に位置している。それぞれの支持リンク10の下部に設けられた可動側支持軸15の軸中心である可動側支持点は、支持基台2と操作対象部材3との対向方向(Y1-Y2方向)において、駆動中心線Obと重なっている。すなわち、駆動中心線Obと可動支持線L2が、Y1-Y2方向において重なっている。さらに、操作対象部材3の重心と、駆動中心線Obとが、Y1-Y2方向で重なっていることが好ましい。
【0040】
次に、応答力発生装置20の動作を説明する。
図1に示す車載用表示装置1では、操作対象部材3の表示画面に表示された画像を参照しながら、表示画面のいずれかの箇所に操作者の指または手を触れさせると、表示画面に設けられたタッチセンサからの検知出力が検出回路で検出されて、指が画像のどの部分に触れたかが判別されて、検出回路から図示しない制御部に検出信号が与えられる。制御部は、検知信号を受けると、表示画面に表示されている画像の画像信号から、どのような操作が行われたかを判別し、意図した操作に基づく処理動作が開始される。また、制御部が前記検知信号を受けると、制御部から加速度発生部40の駆動回路に対して、ソレノイド42a,42bを駆動するための駆動指令が出される。
【0041】
制御部から駆動指令により、第1ソレノイド42aと第2ソレノイド42bに通電されると、質量体44が駆動され、質量体44が第2機構ブラケット41bに当たる衝撃により、操作対象部材3にX1方向への加速度が与えられ、この加速度が表示画面から操作者の指または手に応答力として与えられる。
【0042】
加速度発生部40から操作対象部材3には、X1-X2方向に延びる駆動中心線Obに沿った加速度が与えられる。駆動中心線Obに沿った加速度が与えられた操作対象部材3は、支持リンク10のα方向の回動によって加速度付与方向へ移動する。操作対象部材3は、引っ張りコイルばね25によってX2側のストッパ部材21に押し付けられており、加速度が作用したときの操作対象部材3のX1方向への移動距離はわずかである。よって、操作対象部材3のX1-X2方向の移動振幅はきわめて小さく、α方向の回動角度も微小であるため、Z1-Z2方向への移動成分は無視できる程度である。
【0043】
加速度発生部40から操作対象部材3に駆動中心線Obに沿う加速度が与えられたときに、操作対象部材3がほぼX1-X2方向へ動くため、加速度が一方向へ集中することになって、操作対象部材3から操作者の指や手に応答力を効果的に感じさせることができる。また、車体振動によって表示画面が前後方向(Z1-Z2方向)へ常に揺れていても、表示画面がX1方向へ大きな加速度で動くため、操作者の指または手に応答力を効果的に感じさせることが可能になる。
【0044】
操作対象部材3は、一対の支持リンク10がα方向へ回動することで、駆動中心線Obに沿う方向へ移動する。この移動支持構造では、操作対象部材3がX1-X2方向に延びる軸の摺動によって移動するものに比べて、摺動摩擦負荷を低減させることができる。
【0045】
また、加速度発生部40の駆動中心線Obと、支持リンク10と操作対象部材3を連結している可動支持線L2とが、Y1-Y2方向において重なっている。さらに、好ましくは操作対象部材3の重心も、駆動中心線ObとY1-Y2方向で重なっている。この構成では、駆動中心線Obに沿う方向の加速度により、操作対象部材3にX-Z面内の回動動作を発生させにくくなっている。そのため、加速度発生部40で生成されるX1方向の運動エネルギーを操作対象部材3の駆動力として効果的に作用させることができる。
【0046】
図6に本発明の第2実施形態の応答力発生装置120が示されている。図3に示した第1実施形態では、固定支持線L1と可動支持線L2および左右の支持リンク10の回動基準線Laが矩形状の長方形の位置関係であり、操作対象部材3がX1-X2に動くと、前記各線が、平行四辺形の関係になる。これに対し、図6に示す第2実施形態では、左右の支持リンク10の下部に位置している可動側支持軸15どうしの左右方向(X1-X2方向)間隔が、上部に位置している固定側支持軸13の左右方向(X1-X2方向)の間隔よりもやや狭くなっており、固定支持線L1と可動支持線L2および左右の支持リンク10の回動基準線Laが台形の配置関係となっている。
【0047】
この場合も、例えば、可動側ブラケット14に可動側支持軸15を固定し、支持リンク10の下部に可動側支持軸15が挿通される長穴を形成し、あるいは、支持リンク10の下部に可動側支持軸15を固定し、可動側ブラケット14に長穴を形成することで、支持リンク10をα方向へ回動させて、操作対象部材3を左右方向(X1-X2方向)へ移動させることができる。この場合も、可動側支持軸15の回動角度が微小であるため、操作対象部材3の上下方向の動きや、X-Z面内での回動は無視できる程度となる。
【0048】
図7に本発明の第3実施形態の応答力発生装置220が示されている。この応答力発生装置220は、図5に示すスペーサローラ32のような可動スペーサが設けられていない。支持リンク10は金属の板ばね材料で形成されており、支持リンク10の剛性によって、支持基台2と操作対象部材3の可動板5との前後方向の対向間隔Wが維持されている。ただし、支持リンク10の剛性に加えて、例えば支持基台2と可動板5との間に圧縮コイルばねなどが設けられ、このばね部材によっても、前記対向間隔Wが維持されていてもよい。
【0049】
この構造では、操作対象部材3の表示画面が指や手で押されると、支持リンク10がβ方向へ撓んで、さらには前記圧縮コイルばねなどが変形して、操作対象部材3がX2方向へ動くようになる。操作対象部材3にはX2方向からストッパ部材51が対向しており、操作対象部材3を押したときの移動量が微小な距離δに制限されている。ストッパ部材51は複数箇所に設けられており、そのいずれかに押圧力を感知するセンサ(フォースセンサ)52が設けられている。このセンサはMEMSスイッチなどで構成されている。操作画面などが指や手で押されると、操作対象部材3がX2方向へ移動することで、指や手が押圧操作を行っている感触を得ることができる。また、センサ52を設けることにより、操作対象部材3が押されたときに押圧検知出力を得ることも可能になる。
【符号の説明】
【0050】
1 車載用表示装置
2 支持基台
3 操作対象部材
4 ケース
5 可動板
10 支持リンク
13 固定側支持軸
15 可動側支持軸
2,120,220 応答力発生装置
32 スペーサローラ(可動スペーサ)
33 対向ばね部材
40 加速度発生部
42a 第1ソレノイド
42b 第2ソレノイド
44 質量体
52 センサ
L1 固定支持線
L2 可動支持線
La 回動基準線
Ob 駆動中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7