(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/06 20060101AFI20220704BHJP
B43K 5/17 20060101ALI20220704BHJP
B43K 24/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B43K24/06
B43K5/17
B43K24/00 100
(21)【出願番号】P 2018100803
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100199255
【氏名又は名称】伊藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】大 池 英 郎
(72)【発明者】
【氏名】上 原 康 孝
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-007063(JP,Y1)
【文献】米国特許第01805348(US,A)
【文献】特開2006-103333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/06
B43K 5/17
B43K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端に軸筒開口部を有する軸筒と、
前記軸筒内にその軸線方向に相対移動可能に保持された筆記体と、
前記軸筒内に、その軸線周りに相対回転可能に配置され、前端に回転筒開口部が形成された、回転筒と、
前記軸筒に固定され、前記回転筒の内部において当該回転筒の後方から前記回転筒開口部を気密に閉鎖可能な閉鎖体と、を備え、
前記筆記体は、前記軸筒に対し前方に所定位置まで押し込まれると、前記軸筒によって相対的に前方の筆記状態と相対的に後方の非筆記状態とに交互に保持され、
前記閉鎖体は、前記軸線周りの位相が前記軸筒の前記軸筒開口部と揃えられた閉鎖体開口部と、この閉鎖体開口部とは異なる位相に設けられた閉鎖部と、を有し、
前記回転筒は、前記筆記体が前記筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体開口部の位相と揃えられ、前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体の前記閉鎖部の位相と揃えられて当該閉鎖部によって前記回転筒開口部が気密に閉鎖される、筆記具。
【請求項2】
前記筆記体を前記軸筒に対して前方から付勢する弾性体を更に備え、
前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記弾性体の弾発力によって前記閉鎖体の前記閉鎖部が前記回転筒開口部の周縁領域に後方から押し付けられることにより、前記回転筒開口部が気密に閉鎖される、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記筆記体は、側面に突出部を有し、
前記閉鎖体は、筒状であり、側壁に前記軸線方向に延びて前記突出部をガイドする、ガイド孔を有し、
前記回転筒は、側壁に設けられ前記突出部に係合される被係合部であって、前記軸線周りに延びる螺旋状の溝または切り欠き部と、この螺旋状の溝または切り欠き部の前端から前記軸線方向に延びる直線状の溝または切り欠き部と、を含む被係合部を有し、
前記筆記体の前記突出部は、前記閉鎖体の前記ガイド孔を貫いて前記回転筒の前記被係合部に係合している、請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記閉鎖体は、前記閉鎖部の外周を取り囲み、前記筆記体が前記非筆記状態であるときに前記回転筒開口部の周縁領域に押し当てられる、第1パッキンを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項5】
前端に軸筒開口部を有する軸筒と、
前記軸筒内にその軸線方向に相対移動可能
且つ前記軸線周りに相対回転不能に保持された筆記体と、
前記軸筒内に、その軸線周りに相対回転可能に配置され、前端に回転筒開口部が形成された、回転筒と、
前記軸筒内に配置され、前記回転筒の前方から前記回転筒開口部を気密に閉鎖可能な閉鎖体と、を備え、
前記筆記体は、前記軸筒に対し前方に所定位置まで押し込まれると、前記軸筒によって相対的に前方の筆記状態と相対的に後方の非筆記状態とに交互に保持され、
前記閉鎖体は、前記軸線周りの位相が前記軸筒の前記軸筒開口部と揃えられた閉鎖体開口部と、この閉鎖体開口部とは異なる位相に設けられた閉鎖部と、を有し、
前記回転筒は、前記筆記体が前記筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体開口部の位相と揃えられ、前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体の前記閉鎖部の位相と揃えられて当該閉鎖部によって前記回転筒開口部が気密に閉鎖される、筆記具。
【請求項6】
前記軸筒に対して前記閉鎖体を前方から付勢する付勢手段を更に備え、
前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記付勢手段の付勢力によって前記閉鎖体の前記閉鎖部が前記回転筒開口部の周縁領域に前方から押し付けられることにより、前記回転筒開口部が気密に閉鎖される、請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
前記筆記体は、側面に突出部を有し、
前記軸筒は、内面に前記軸線方向に延びて前記突出部をガイドする、ガイド部を有し、
前記回転筒は、側壁に設けられ前記突出部に係合される被係合部であって、前記軸線周りに延びる螺旋状の切り欠き部と、この螺旋状の切り欠き部の前端から前記軸線方向に延びる直線状の切り欠き部と、を含む被係合部を有し、
前記筆記体の前記突出部は、前記回転筒の前記被係合部を貫いて前記軸筒の前記ガイド部に係合している、請求項5または6に記載の筆記具。
【請求項8】
前記軸筒に固定され、前記回転筒の内部に前記筆記体を取り囲んだ状態で配置された内筒を更に備え、
前記筆記体は、側面に突出部を有し、
前記内筒は、側壁に前記軸線方向に延びて前記突出部をガイドする、ガイド孔を有し、
前記回転筒は、側壁に設けられ前記突出部に係合される被係合部であって、前記軸線周りに延びる螺旋状の溝または切り欠き部と、この螺旋状の溝または切り欠き部の前端から前記軸線方向に延びる直線状の溝または切り欠き部と、を含む被係合部を有し、
前記筆記体の前記突出部は、前記内筒の前記ガイド孔を貫いて前記回転筒の前記被係合部に係合している、請求項5または6に記載の筆記具。
【請求項9】
前記筆記体が前記筆記状態にあるとき、前記回転筒の前記回転筒開口部と前記閉鎖体の前記閉鎖部とは、前記軸線周りの位相が互いに180度ずれている、請求項1~8のいずれか一項に記載の筆記具。
【請求項10】
前記回転筒の外面と前記軸筒の内面との間隙を気密に封止する第2パッキンを更に備えた、請求項1~9のいずれか一項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック操作等によりワンタッチで筆記体を軸筒の前端から出没させることが可能な筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、万年筆等の筆記具は、軸筒と、軸筒に保持された筆記体と、軸筒または筆記体に取り外し可能に係合されて筆記体の前端(ペン先)を気密に取り囲むキャップと、を有している。筆記時には、このキャップが外されてペン先が外部に露出され、筆記が行われる。そして、筆記が終了すると、キャップが軸筒または筆記体に再び取り付けられ、インキの乾燥やペン先の損傷が防止される。
【0003】
これに対し、本件出願人は、例えば非特許文献1に示されるように、軸筒の前端に、ペン先が収容される軸筒内の空間を気密に保持可能なシャッター機構を設けた筆記具を創案した。これにより、キャップを用いることなくインキの乾燥やペン先の損傷を防止し得ることとなった。更に、非特許文献1の筆記具には、このシャッター機構に加え、筆記体を軸筒の軸線方向に押し込むことにより軸筒が当該筆記体を相対的に前方の筆記状態と相対的に後方の非筆記状態とに交互に保持させる、出没機構が搭載されている。このような構成により、ワンタッチ(ノック操作あるいは回転操作)で筆記状態と非筆記状態とを切替可能な、利便性の高い筆記具が提供され得る。
【0004】
非特許文献1の筆記具において、シャッター機構の開閉動作は、筆記具の前端部(例えば万年筆のペン先)が直接シャッター機構を押し開くようにして行われていた。この場合、比較的大型のペン先を有する筆記具の場合、ペン先がシャッター機構に引っ掛かってしまい、スムーズな開閉動作が行えない可能性があった。この問題に対しては、シャッター機構を大型化することが有効であると考えられるが、この場合、シャッター機構による気密性を十分に確保することが困難になることが懸念される。更に、軟質の材料で構成されたペン先を有する筆記具の場合、シャッター機構に当接した際にペン先に傷が付いたり、ペン先が変形したりする可能性があった。また、デザイン上の制約が大きくなるという問題もある。
【0005】
比較的大型のペン先に対応可能なシャッター方式としては、特許文献1に示すような回転式のシャッター機構が有効と考えられる。回転式のシャッター機構は、軸筒の中心軸線と非平行な、好ましくは直交する、板状のシャッターと、このシャッターを軸筒の中心軸線周りに回転させる回転機構とを、有している。とりわけ、特許文献1のシャッター機構は、筆記体を軸筒から出没させる出没機構に連動して、シャッターが中心軸線周りに回転されることにより、筆記体の出没の許否を交互に切り替えるようになっている。
【0006】
特許文献1の筆記具では、出没機構として、回転操作式のものが採用されている。すなわち、出没機構に含まれる操作体が回転操作されて筆記体が非筆記状態から筆記状態に切り替えられるときには、シャッターの貫通孔と軸筒の前端に設けられた開口部との位相が軸筒の軸線周りにおいて揃えられ、これら貫通孔及び開口部を通過してペン先が外部に露出される。一方、筆記体が筆記状態から非筆記に切り替えられるときには、ペン先が軸筒の内部に格納された後で、シャッターが中心軸線周りに回動し、軸筒開口部がシャッターによって閉鎖される。しかしながら、特許文献1のシャッター機構では、非筆記状態において、シャッターと軸筒とによって画定されるペン先の収容空間を十分な気密性をもって密閉することが困難であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】パイロット「キャップレス」特設サイト(平成30年5月16日検索)URL:http://pilot-capless.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の問題に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、回転式のシャッター機構を採用しながら、非筆記時におけるペン先の収容空間の気密性が十分に高められた筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様による筆記具は、前端に軸筒開口部を有する軸筒と、
前記軸筒内にその軸線方向に相対移動可能に保持された筆記体と、
前記軸筒内に、その軸線周りに相対回転可能に配置され、前端に回転筒開口部が形成された、回転筒と、
前記軸筒に固定され、前記回転筒の内部において当該回転筒の後方から前記回転筒開口部を気密に閉鎖可能な閉鎖体と、を備え、
前記筆記体は、前記軸筒に対し前方に所定位置まで押し込まれると、前記軸筒によって相対的に前方の筆記状態と相対的に後方の非筆記状態とに交互に保持され、
前記閉鎖体は、前記軸線周りの位相が前記軸筒の前記軸筒開口部と揃えられた閉鎖体開口部と、この閉鎖体開口部とは異なる位相に設けられた閉鎖部と、を有し、
前記回転筒は、前記筆記体が前記筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体開口部の位相と揃えられ、前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体の前記閉鎖部の位相と揃えられて当該閉鎖部によって前記回転筒開口部が気密に閉鎖されるようになっている。
【0011】
以上の筆記具は、前記筆記体を前記軸筒に対して前方から付勢する弾性体を更に備え、
前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記弾性体の弾発力によって前記閉鎖体の前記閉鎖部が前記回転筒開口部の周縁領域に後方から押し付けられることにより、前記回転筒開口部が気密に閉鎖されて良い。
【0012】
前記筆記体は、側面に突出部を有し、
前記閉鎖体は、筒状であり、側壁に前記軸線方向に延びて前記突出部をガイドする、ガイド孔を有し、
前記回転筒は、側壁に設けられ前記突出部に係合される被係合部であって、前記軸線周りに延びる螺旋状の溝または切り欠き部と、この螺旋状の溝または切り欠き部の前端から前記軸線方向に延びる直線状の溝または切り欠き部と、を含む被係合部を有し、
前記筆記体の前記突出部は、前記閉鎖体の前記ガイド孔を貫いて前記回転筒の前記被係合部に係合していて良い。
【0013】
前記閉鎖体は、前記閉鎖部の外周を取り囲み、前記筆記体が前記非筆記状態であるときに前記回転筒開口部の周縁領域に押し当てられる、第1パッキンを有していて良い。
【0014】
また、本発明の第2の態様による筆記具は、前端に軸筒開口部を有する軸筒と、
前記軸筒内にその軸線方向に相対移動可能に保持された筆記体と、
前記軸筒内に、その軸線周りに相対回転可能に配置され、前端に回転筒開口部が形成された、回転筒と、
前記軸筒内に配置され、前記回転筒の前方から前記回転筒開口部を気密に閉鎖可能な閉鎖体と、を備え、
前記筆記体は、前記軸筒に対し前方に所定位置まで押し込まれると、前記軸筒によって相対的に前方の筆記状態と相対的に後方の非筆記状態とに交互に保持され、
前記閉鎖体は、前記軸線周りの位相が前記軸筒の前記軸筒開口部と揃えられた閉鎖体開口部と、この閉鎖体開口部とは異なる位相に設けられた閉鎖部と、を有し、
前記回転筒は、前記筆記体が前記筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体開口部の位相と揃えられ、前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記回転筒開口部の前記軸線周りの位相が前記閉鎖体の前記閉鎖部の位相と揃えられて当該閉鎖部によって前記回転筒開口部が気密に閉鎖されるようになっている。
【0015】
以上の筆記具は、前記軸筒に対して前記閉鎖体を前方から付勢する付勢手段を更に備え、
前記筆記体が前記非筆記状態にあるとき、前記付勢手段の付勢力によって前記閉鎖体の前記閉鎖部が前記回転筒開口部の周縁領域に前方から押し付けられることにより、前記回転筒開口部が気密に閉鎖されるようになっていて良い。
【0016】
前記筆記体は、側面に突出部を有し、
前記軸筒は、内面に前記軸線方向に延びて前記突出部をガイドする、ガイド部を有し、
前記回転筒は、側壁に設けられ前記突出部に係合される被係合部であって、前記軸線周りに延びる螺旋状の切り欠き部と、この螺旋状の切り欠き部の前端から前記軸線方向に延びる直線状の切り欠き部と、を含む被係合部を有し、
前記筆記体の前記突出部は、前記回転筒の前記被係合部を貫いて前記軸筒の前記ガイド部に係合していて良い。
【0017】
以上の筆記具は、前記軸筒に固定され、前記回転筒の内部に前記筆記体を取り囲んだ状態で配置された内筒を更に備え、
前記筆記体は、側面に突出部を有し、
前記内筒は、側壁に前記軸線方向に延びて前記突出部をガイドする、ガイド孔を有し、
前記回転筒は、側壁に設けられ前記突出部に係合される被係合部であって、前記軸線周りに延びる螺旋状の溝または切り欠き部と、この螺旋状の溝または切り欠き部の前端から前記軸線方向に延びる直線状の溝または切り欠き部と、を含む被係合部を有し、
前記筆記体の前記突出部は、前記内筒の前記ガイド孔を貫いて前記回転筒の前記被係合部に係合していて良い。
【0018】
以上の筆記具において、前記回転筒の前記回転筒開口部と前記閉鎖体の前記閉鎖部とは、前記軸線周りの位相が互いに180度ずれていて良い。
【0019】
また、以上の筆記具は、前記回転筒の外面と前記軸筒の内面との間隙を気密に封止する第2パッキンを更に備えていて良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回転式のシャッター機構を採用しながら、非筆記時におけるペン先の収容空間の気密性が十分に高められた筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による筆記具を非筆記状態にて示す概略縦断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態による筆記具を筆記状態にて示す概略縦断面図である。
【
図3】
図1の筆記具の閉鎖体を示す概略斜視図である。
【
図4】
図3の閉鎖体に取り付けられるパッキンを示す概略斜視図である。
【
図5】
図1の筆記具の回転筒を示す概略斜視図である。
【
図6】
図1の筆記具の保持体を示す概略斜視図である。
【
図7】
図1の筆記具の作用を説明するための図である。
図7(a)は、筆記体が僅かに前進したときの筆記具の前方部分を示す概略縦断面図であり、
図7(b)及び
図7(c)は、そのときの閉鎖体及び回転筒と筆記体の突出部との相対位置関係をそれぞれ示す図である。
【
図8】
図1の筆記具の作用を説明するための図である。
図8(a)は、筆記体が非筆記状態から筆記状態に切り替えられている途中の筆記具の前方部分を示す概略縦断面図であり、
図8(b)及び
図8(c)は、そのときの閉鎖体及び回転筒と筆記体の突出部との相対位置関係をそれぞれ示す図である。
【
図9】
図1の筆記具の作用を説明するための図である。
図9(a)は、筆記体が筆記状態にあるときの筆記具の前方部分を示す概略縦断面図であり、
図9(b)及び
図9(c)は、そのときの閉鎖体及び回転筒と筆記体の突出部との相対位置関係をそれぞれ示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態における筆記具の前方部分を示す概略縦断面図である。
【
図11】
図10の筆記具の閉鎖体を示す概略図である。
図11(a)は、閉鎖体の概略正面図であり、
図11(b)は、閉鎖体の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、添付の図面を参照して本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態による筆記具100を非筆記状態にて示す概略縦断面図であり、
図2は、筆記具100を筆記状態にて示す概略縦断面図である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、筆記具100は、前端(
図1及び
図2の左端)に軸筒開口部10aを有する軸筒10と、軸筒10内にその軸線方向daに相対移動可能に保持された筆記体20と、軸筒10内にその中心軸線L周りに相対回転可能に配置された回転筒30と、軸筒10に固定された閉鎖体40と、を備えている。閉鎖体40は、筒形であり、筆記体20の前端部を取り囲んだ状態で軸筒10に固定されている。更に、回転筒30は、閉鎖体40を取り囲んだ状態で、軸筒10内に配置されている。
【0025】
図3は、
図1の筆記具100の閉鎖体40を示す概略斜視図であり、
図4は、
図3の閉鎖体40に取り付けられる第1パッキン45を示す概略斜視図である。また、
図5は、
図1の筆記具100の回転筒30を示す概略斜視図である。
【0026】
図3に示すように、閉鎖体40は、軸筒10に接続される円筒状の閉鎖体本体41と、閉鎖体本体41の前方(
図3における左方)に接続され当該閉鎖体本体41より小径の円筒状の閉鎖体小径部42と、を有している。閉鎖体本体41は、後端(
図3における右端)に雄ネジ部43を有し、この雄ネジ部43と軸筒10に設けられた雌ネジ部13とが螺着されることにより、閉鎖体40が軸筒10に固定されるようになっている。更に、閉鎖体本体41は、側壁に、軸線方向daと平行な方向に延びる2つの長孔を有している。これらの長孔は、後述する筆記体20の突出部24をガイドするガイド孔41gとして設けられている。
図3に示すように、2つのガイド孔41gは、互いに同一の形状を有しており、閉鎖体40の中心軸線Lに関して位相が180°ずれて形成されている。なお、閉鎖体40は、軸筒10に螺着された際に、その中心軸線が軸筒10の中心軸線L(
図1参照)と一致する。このため、閉鎖体40の中心軸線を示す符号として、軸筒10の中心軸線と同じ符号Lを用いている。このことは、後述する回転筒30及び保持体23の中心軸線についても同様である。
【0027】
図3に示すように、閉鎖体40の閉鎖体小径部42は、前端に閉鎖部44と閉鎖体開口部40aとを有している。閉鎖部44は、略半月状の形状にて前方に突出しており、後述する回転筒30の回転筒開口部30a(
図5参照)を後方から閉鎖するようになっている。閉鎖部44の外周には、
図4に示す第1パッキン45が取り付けられることにより、閉鎖部44によって回転筒開口部30aが気密に閉鎖されるようになっている。また、閉鎖体開口部40aは、筆記体20の前端、図示される例では万年筆のペン先21、が通過可能な寸法を有する貫通孔であり、中心軸線Lに関して閉鎖部44と位相が180°ずれている。
【0028】
次に、
図5を参照して回転筒30について説明する。
図5に示すように、回転筒30は、回転筒本体31と、回転筒本体31の前方(
図5における左方)に接続され当該回転筒本体31よりも小径の回転筒小径部32と、を有している。回転筒本体31は、後述する筆記体20の突出部24に係合される被係合部31eを有している。被係合部31eは、回転筒本体31の側壁に中心軸線L周りに延びる螺旋状の切り欠き部31e1と、螺旋状の切り欠き部31e1の前端から軸線方向daと平行な方向に後方へと延びる直線状の切り欠き部31e2と、を含んでいる。
【0029】
更に、回転筒30は、回転筒本体31の外周面のうち被係合部31eの前端より前方に、環状の溝31gが形成されている。環状の溝31gには、第2パッキン51(
図1及び
図2参照)が組み付けられるようになっている。この第2パッキン51は、回転筒30の環状の溝31g及び軸筒10の内面に密着することにより、回転筒30の外面と軸筒10の内面との間隙を気密に封止するようになっている。この第2パッキン51及び前述した第1パッキン45や、軸筒10の後方内部に配設されたパッキン(不図示)の存在によって、非筆記状態において、閉鎖体40の内部空間が気密に保持されることになる。第1パッキン45及び第2パッキン51は、一例として、ニトリルゴムやシリコンゴムなど弾力性を有した材質や、フッ素樹脂やポリアセタール樹脂など肉厚を薄くすることで弾性が得られる材質が用いられ、その断面形状や外形形状は限定されない。
【0030】
図1及び
図2に戻って、軸筒10は、回転筒本体31より前方の位置、すなわち回転筒小径部32に対面する位置に、回転筒本体31の外径より小さい内径を有する第1縮径部11を有している。更に、軸筒10は、回転筒本体31より後方に、当該回転筒本体31の外径より小さい内径を有する第2縮径部12を有している。第1縮径部11と第2縮径部12との離間距離は、回転筒本体31の長さ(軸線方向daに沿った寸法)よりも僅かに大きくなっている。このような構成により、回転筒30は、軸筒10に対する軸線L周りの相対回転に加え、軸筒10の軸線方向daに沿った僅かな相対移動が許容されている。
【0031】
次に、
図1及び
図2に示すように、筆記体20は、ペン先21を含む筆記体本体22と、筆記体本体22を保持して一体的に移動する保持体23と、を有している。前述したように、
図1及び
図2において、筆記体20は万年筆として図示されているが、これには限られず、ボールペン、サインペン、蛍光ペンなど、様々な筆記体であり得る。
【0032】
次に、
図6は、
図1の筆記具100の筆記体20の保持体23を示す概略斜視図である。
図6に示すように、保持体23は、内部に筆記体本体22を収容する収容空間を画定する筒形の形状を有している。保持体23は、直接的に、または間接的に、軸筒10の外部からの操作を受けて、筆記体本体22と共に軸筒10に対し軸線方向daと平行な方向に相対移動するようになっている。
【0033】
例えば、筆記具100がノック式の出没機構を有する場合、保持体23の後端は、軸筒10から後方に突出していて良い。そして、軸筒10の後方から保持体23の後端部が所定量押し込まれることにより、筆記体20は、軸筒10によって相対的に前方の筆記状態(
図1参照)と相対的に後方の非筆記状態(
図2参照)とに交互に保持されるようになっている。あるいは、筆記具100が回転式の出没機構を有する場合、軸筒10に相対回転可能に保持された回転操作体(不図示)が回転操作されることによって筆記体20が軸筒10に対し前方に所定量押し込まれる。この回転操作により、筆記体20は、軸筒10によって筆記状態と非筆記状態とに交互に保持されるようになっている。ノック式の出没機構及び回転操作式の出没機構に関しては、既知の機構が採用され得るため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、保持体23は、外面に突出部24を有している。本実施の形態の突出部24は、保持体23の前端(
図6における左端)近傍に2箇所に設けられており、互いに、中心軸線Lに関して対称的に、すなわち中心軸線L周りに互いに位相が180°異なって、配置されている。これらの突出部24は、閉鎖体40のガイド孔41gを貫いて回転筒30の被係合部31eに係合するようになっている(
図1及び
図2参照)。更に、
図6に示すように、保持体23の外面には、径方向外方に突出した保持体側受け部25を有している。
【0035】
筆記具100は、筆記体20を軸筒10に対して前方から付勢する弾性体60を更に備えている。
図1及び
図2に示すように、軸筒10は、保持体23の保持体側受け部25より前方に、径方向内方に突出した軸筒側受け部14を有している。そして、軸筒側受け部14と保持体側受け部25との間に、弾性体60が圧縮状態で配置されている。弾性体60は、例えばコイルバネである。この弾性体60の作用により、筆記体20は、軸筒10に対して、常時、後方に付勢されている。
【0036】
次に、
図7~
図9を参照して、筆記具100の作用について説明する。
【0037】
図7(a)は、筆記体20が僅かに前進したときの筆記具100の前方部分を示す概略縦断面図であり、
図7(b)及び
図7(c)は、そのときの閉鎖体40及び回転筒30と筆記体20の突出部24との相対位置関係をそれぞれ示す図である。
図8(a)は、筆記体20が非筆記状態から筆記状態に切り替えられている途中の筆記具100の前方部分を示す概略縦断面図であり、
図8(b)及び
図8(c)は、そのときの閉鎖体40及び回転筒30と筆記体20の突出部24との相対位置関係をそれぞれ示す図である。
図9(a)は、筆記体20が筆記状態にあるときの筆記具100の前方部分を示す概略縦断面図であり、
図9(b)及び
図9(c)は、そのときの閉鎖体40及び回転筒30と筆記体20の突出部24との相対位置関係をそれぞれ示す図である。理解を容易にするため、各図において、回転筒30は展開図で示してある。
【0038】
以下、
図1に示す非筆記状態を初期状態として、説明を行う。
図1に示すように、初期状態において、保持体23の突出部24は、回転筒30の被係合部31eの後端(
図1における右端)に当接して、回転筒30を後方に付勢している。この付勢力により、回転筒30が閉鎖体40に前方から押し付けられ、回転筒開口部30aが、第1パッキン45を含む閉鎖部44によって気密に閉鎖されている。更に、回転筒30のシャッター部30sが、閉鎖体40の閉鎖体開口部40aを完全に覆っている。
【0039】
この状態で、使用者により筆記具100の出没機構に所定の操作が加えられ、筆記体20が弾性体60を圧縮させつつ軸筒10に対し僅かに前進させられる。保持体23の突出部24は、軸筒10に固定された閉鎖体40のガイド孔41gによってガイドされるため、筆記体20が軸筒10に対して相対回転することは無い。これにより、保持体23によって回転筒30が軸筒10に対し僅かに前進させられる。この前進は、回転筒30が軸筒10の第1縮径部11に後方から当接して更なる前進が禁止されることにより終了する。一方、閉鎖体40は軸筒10に固定されているため、軸筒10に対して相対移動しない。この結果、回転筒30が閉鎖体40に対して相対的に前進し、回転筒開口部30aが閉鎖部44によって気密に閉鎖された状態が解除される。
【0040】
ところで、突出部24は、螺旋状の切り欠き部31e1に係合している。このため、筆記体20が軸筒10に対して前進する際に、回転筒30には、突出部24により回転筒30を前進させる力と、中心軸線L周りに回転させる力と、の双方が作用する。しかしながら、初期状態において回転筒30の回転筒開口部30aは閉鎖体40の閉鎖部44に嵌合しているため、当該閉鎖部44との嵌合状態が解除されるまでは、軸筒10及び閉鎖体40に対し中心軸線L周りに相対回転することが規制される。
【0041】
図7に示す状態から更に筆記体20が前進させられると、回転筒30の更なる前進が規制されているため、筆記体20は、弾性体60を圧縮させ、且つ、回転筒30を軸筒10に対し中心軸線L周りに相対回転させながら、軸筒10に対し前方に相対移動する。回転筒30の相対回転は、突出部24が螺旋状の切り欠き部31e1の前端、すなわち、直線状の切り欠き部31e2の後端に到達するまで、継続する。
【0042】
保持体23の突出部24が螺旋状の切り欠き部31e1の前端まで到達すると、
図8に示すように、回転筒30は、初期状態から中心軸線L周りに180°回転させられる。このことにより、
図8(a)に示すように、中心軸線L周りの回転筒開口部30aの位相が閉鎖体40の閉鎖体開口部40a及び軸筒10の軸筒開口部10aの各位相と揃えられる。このとき、筆記体20は、ペン先21の前端の位置が閉鎖体40の前端と略同じ位置になるまで前進させられている。
【0043】
この状態から弾性体60の付勢力に対抗して筆記体20が更に前進させられると、突出部24は、閉鎖体40のガイド孔41gによってガイドされつつ、回転筒30の直線状の切り欠き部31e2を前進する。このため、筆記体20が軸筒10に対し前進する一方、回転筒30は、中心軸線Lまわりに同一の位相を維持する。突出部24が回転筒30の直線状の切り欠き部31e2を前進するにつれて、筆記体20のペン先21が閉鎖体40、回転筒30及び軸筒10の各開口部40a、30a、10aを順に貫いて、軸筒10から前方に露出される(
図9参照)。このとき、筆記体20は、図示されない出没機構によって、軸筒10に対し後退しないように保持され、筆記状態(
図2参照)が実現される。以上の作用により、筆記具100の筆記の準備が完了する。その後、使用者によって所望に筆記が行われる。
【0044】
そして、筆記が完了すると、使用者により筆記具100の出没機構に所定の操作が加えられ、筆記体20が軸筒10に対して後退を開始する。この後退により、上述した非筆記状態から筆記状態に切り替える際の過程を逆順にたどって、筆記具100が初期状態に復帰される。すなわち、突出部24が、閉鎖体40のガイド孔41gによってガイドされつつ、回転筒30の直線状の切り欠き部31e2をその後端まで移動し、筆記体20のペン先21が軸筒10内に格納される(
図8参照)。この状態から筆記体20が軸筒10に対し更に後退させられると、突出部24は、閉鎖体40のガイド孔41gによってガイドされつつ、回転筒30の螺旋状の切り欠き部31e1をその後端まで移動する。この過程で、回転筒30は中心軸線L周りに180°逆回転される。この結果、回転筒開口部30aの中心軸線L周りの位相が閉鎖体40の閉鎖体開口部40aの位相と揃えられ、且つ、シャッター部30sが閉鎖体40の閉鎖体開口部40aを完全に覆う(
図7参照)。
【0045】
なお、筆記具100が非筆記状態から筆記状態に切り替えられる際、回転筒30は、軸筒10の第1縮径部11に後方から押し当てられた状態で、軸筒10及び閉鎖体40に対して中心軸線L周りに相対回転する。また、筆記具100が筆記状態から非筆記状態に切り替えられる際、回転筒30は、シャッター部30sの後面が閉鎖体40の閉鎖部44に前方から押し当てられた状態で、軸筒10及び閉鎖体40に対して中心軸線周りに相対回転する。すなわち、これらのいずれの場合においても、回転筒30が軸筒10及び閉鎖体40に対して相対回転している際に、第1パッキン45と回転筒30とが当接することが無い。このことにより、第1パッキン45の摩耗が効果的に抑制される。
【0046】
この状態から筆記体20が更に軸筒10に対し後退させられると、回転筒30は、閉鎖体40に前方から押し付けられる。すなわち、回転筒30の回転筒開口部30aが閉鎖体40の閉鎖部44により気密に閉鎖される。これにより、
図1に示す初期状態が復元される。以上の、筆記体20が筆記状態から非筆記状態に切り替えられる過程では、使用者により初動操作が行われると、その後の一連の動作が弾性体60の弾発力によって自発的に実現される。すなわち、筆記具100は、ワンタッチの操作で初期状態に復帰され得る。
【0047】
図1に示す初期状態(非筆記状態)では、第1パッキン45が回転筒30の回転筒開口部30aの周縁領域に密着させられる。このため、回転筒開口部30aと閉鎖部44との隙間を通じて空気が通流することが禁止される。更に、第2パッキン51が、非筆記状態から筆記状態に切り替えられる過程において、回転筒30と軸筒10の内面とに常時密着している。このため、回転筒30と軸筒10との間隙を空気が通流することが禁止される。すなわち、非筆記状態において、回転筒30の被係合部31e及び閉鎖体40のガイド孔41gを介して、閉鎖体40の内部と軸筒10の外部との間で空気が通流することが禁止される。要するに、非筆記状態において、筆記体20のペン先21が収容されている閉鎖体40の内部空間の気密性が確保される。
【0048】
以上のような本実施の形態によれば、とりわけ、回転筒30の回転筒開口部30aが閉鎖体40により気密に閉鎖されることにより、回転式のシャッター機構を採用しながら、非筆記時におけるペン先21の収容空間の気密性が十分に高められた筆記具100を提供することができる。
【0049】
特に、筆記具100は、筆記体20を軸筒10に対して前方から付勢する弾性体60を備え、筆記体20が非筆記状態にあるとき、弾性体60の弾発力によって閉鎖体40の閉鎖部44が回転筒開口部30aの周縁領域に後方から押し付けられるようになっている。このことにより、回転筒開口部30aを高い気密性をもって閉鎖することができる。
【0050】
また、筆記体20の突出部24が閉鎖体40のガイド孔41gを貫いて回転筒30の被係合部31eに係合しているため、回転式のシャッター機構を確実に作動させることができる。
【0051】
閉鎖体40は、閉鎖部44の外周を取り囲み、筆記体20が非筆記状態であるときに回転筒開口部30aの周縁領域に押し当てられる、第1パッキン45を有している。このことにより、非筆記時において、閉鎖体40が回転筒開口部30aを一層良好な気密性をもって閉鎖することができる。
【0052】
更に、筆記具100が、回転筒30の外面と軸筒10の内面との間隙を気密に封止する第2パッキン51を有するため、非筆記時におけるペン先21の収容空間の気密性を確実に確保することができる。
【0053】
第1パッキン45及び第2パッキン51としては、一例として、ニトリルゴムやシリコンゴムなど弾力性を有した材質や、フッ素樹脂やポリアセタール樹脂など肉厚を薄くすることで弾性が得られる材質が用いられ、その断面形状や外形形状が限定されることが無い。このため、シール部材の選択の自由度が高い。
【0054】
次に、本発明の第2の実施の形態による筆記具200について説明する。
【0055】
図10は、本発明の第2の実施の形態における筆記具200の前方部分を示す概略縦断面図である。但し、
図10において、筆記体20の図示を省略してあるが、その構成は第1の実施の形態と同じである。
図10に示すように、筆記具200は、閉鎖体240が回転筒230の前方に配置されている点で、第1の実施の形態による筆記具100とは異なっている。
【0056】
図11は、
図10の筆記具200の閉鎖体240を示す概略図である。
図11(a)は、閉鎖体240の概略正面図であり、
図11(b)は、閉鎖体240の概略縦断面図である。
図11に示すように、閉鎖体240は、有底筒形の形状を有している。閉鎖体240の底部には、閉鎖体開口部240aが形成されている。また、閉鎖体240の底部のうち、閉鎖体開口部240aが形成されていない領域は、後述する回転筒230の回転筒開口部230aを閉鎖するための閉鎖部244となっている。
図11に示すように、本実施の形態の閉鎖体開口部240aも、筆記体20の前端、例えば万年筆のペン先21、が通過可能な寸法を有する貫通孔であり、中心軸線Lに関して閉鎖部244と位相が180°ずれた位置に形成されている。
【0057】
図11(a)に示すように、閉鎖体240は、正面から見て(軸筒210の中心軸線Lの方向から見て)、輪郭線が非円形となっている。図示される例では、
図11(a)の上下左右の4箇所が平坦な輪郭線を有している。更に、詳細には図示されていないが、軸筒210の内面は、閉鎖体240の前記平坦な輪郭線を有する部位に対面する部位の横断面の輪郭線が、閉鎖体240の輪郭線に対応して平坦になっている。このような構成によって、閉鎖体240は、軸筒210内に配置された際に、軸筒210に対し中心軸線L周りに相対回転することが禁止されている。もちろん、軸筒210に対する閉鎖体240の中心軸線L周りの相対回転を規制することができれば、このような態様には限定されない。
【0058】
図10に戻って、閉鎖体240は、底部が回転筒230に面する向きで、且つ、閉鎖体開口部240aの中心軸線L周りの位相が軸筒開口部210aの位相と揃えられて、軸筒210内に配置されている。
図10に示すように、閉鎖体240と軸筒210の前端部との間には、付勢手段270が配置されている。付勢手段270は、圧縮状態で配置されたコイルバネである。この付勢手段270の付勢力により、閉鎖体240は、回転筒230に前方から押し当てられている。
【0059】
更に、本実施の形態では閉鎖体240が回転筒230の前方に設けられていることに伴って、第1の実施の形態におけるガイド孔41g(
図3参照)に相当する構成要素が、閉鎖体240ではなく軸筒210に設けられている。すなわち、軸筒210は、内面に、軸筒210の軸線方向Lと平行な方向に延びて、筆記体20の突出部24をガイドする、ガイド部を有している。具体的には、前記ガイド部は、軸筒210の内周面に軸線方向daに沿って形成された直線状のガイド溝210gである。
【0060】
次に、回転筒230は、前端に、回転筒開口部230aが形成されている。回転筒開口部230aは、閉鎖体240の閉鎖体開口部240aと略同じ寸法を有している。回転筒230の前端部のうち、回転筒開口部230aが形成されている領域以外の領域は、閉鎖されたシャッター部230sとなっている。シャッター部230sは、閉鎖体240の閉鎖体開口部240aを後方から完全に覆い得る寸法に構成されている。図示されていないが、閉鎖体240の閉鎖部244のうち回転筒230の側の面、及び、回転筒230の回転筒開口部230aの周縁領域のうち閉鎖体240の側の面、の少なくとも一方の面には、閉鎖部244が回転筒開口部230aを覆った際の気密性を確保するためのコーティング層(不図示)が設けられている。
【0061】
更に、軸筒210の内面には、軸筒210の内面と回転筒230の外面との間隙を気密に閉鎖摺るためのパッキン251が取り付けられている。また、閉鎖体240の存在によって回転筒230が軸筒210に対して一定以上前進することが禁止されていることから、軸筒210には第1の実施の形態の第1縮径部(
図1及び
図2の符号11参照)が設けられていない。この他の構成は、第1の実施の形態による筆記具100と略同様である。このため、
図10において、第1の実施の形態による筆記具100と共通する構成部分には同様の符号を付し、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0062】
以上のような筆記具200の作用は、概略的には、第1の実施の形態による筆記具100の作用において、筆記体20の突出部24がガイド孔(
図3における符号41g)ではなく、軸筒210のガイド溝210gによってガイドされると読み替えることにより、理解され得る。但し、本実施の形態では、非筆記状態において、閉鎖体240及び回転筒230のうち、互いに当接する各面領域の少なくとも一方に設けられたコーティング層によって、回転筒開口部230aが閉鎖される。そして、この閉鎖時に、付勢手段270の付勢力によって閉鎖体240が回転筒230に押し当てられることにより、閉鎖体240と回転筒230の回転筒開口部230aとの間の気密性が確保される。このため、非筆記状態と筆記状態とが切り替えられる際に、回転筒230は、軸筒210に対し軸線方向daには相対移動されない。
【0063】
以上のような本実施の形態によれば、とりわけ、回転筒230の回転筒開口部230aが閉鎖体240の閉鎖部244により気密に閉鎖されることにより、回転式のシャッター機構を採用しながら、非筆記時におけるペン先21の収容空間の気密性が十分に高められた筆記具200を提供することができる。
【0064】
特に、筆記具200は、閉鎖体240を軸筒10に対して前方から付勢する付勢手段270を備え、筆記体20が非筆記状態にあるとき、付勢手段270の付勢力によって閉鎖体240の閉鎖部244が回転筒開口部230aの周縁領域に後方から押し付けられるようになっている。このことにより、回転筒開口部230aを高い気密性をもって閉鎖することができる。
【0065】
また、筆記体20の突出部24が回転筒230の被係合部230e1を貫いて軸筒210のガイド溝210gに係合しているため、回転式のシャッター機構を確実に作動させることができる。
【0066】
更に、回転筒230の回転筒開口部230aと閉鎖体240の閉鎖部244とは、位相が中心軸線L周りに180度ずれている。このため、回転筒開口部230aとシャッター部230sとを、それぞれ最大の大きさに寸法決めすることができる。
【0067】
パッキン251としては、一例として、ニトリルゴムやシリコンゴムなど弾力性を有した材質や、フッ素樹脂やポリアセタール樹脂など肉厚を薄くすることで弾性が得られる材質が用いられ、その断面形状や外形形状が限定されることが無い。このため、シール部材の選択の自由度が高い。
【0068】
なお、以上の第2の実施の形態では、筆記体20の突出部24が軸筒210の内面に形成されたガイド溝210gによってガイドされるものとして説明を行ったが、このような例には限られない。すなわち、筆記具200の変形例として、軸筒10に固定され、回転筒230の内部に筆記体20を取り囲んだ状態で配置され、前端が開放された内筒を有する筆記具が想定され得る。この内筒は、側壁に軸筒210の軸線方向daと平行な方向に延びて突出部24をガイドする、ガイド孔を有する。この場合、筆記体20の突出部24は、内筒のガイド孔を貫いて回転筒230の被係合部231eに係合していれば良い。結局、本変形例による筆記具は、第1の実施の形態による筆記具100において、閉鎖体40の前端部を開放したものであるといえる。したがって、本変形例による筆記具において筆記状態と非筆記状態とが切り替えられる際の、内筒、回転筒230及び突出部24の相互作用は、第1の実施の形態による筆記具100の閉鎖体40、回転筒30及び突出部24の相互作用と共通する。
【0069】
このような構成によれば、軸筒210の内周面にガイド溝210gを設けることなく、第2の実施の形態による筆記具200と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 軸筒
10a 軸筒開口部
11 第1縮径部
12 第2縮径部
13 雌ネジ部
14 軸筒側受け部
20 筆記体
21 ペン先
22 筆記体本体
23 保持体
24 突出部
25 保持体側受け部
30 回転筒
30a 回転筒開口部
30s シャッター部
31 回転筒本体
31e 被係合部
31e1 螺旋状の切り欠き部
31e2 直線状の切り欠き部
31g 環状の溝
32 回転筒小径部
40 閉鎖体
40a 閉鎖体開口部
41 閉鎖体本体
41g ガイド孔
42 閉鎖体小径部
43 雄ネジ部
44 閉鎖部
45 第1パッキン
51 第2パッキン
60 弾性体
100 筆記具
200 筆記具
210 軸筒
210a 軸筒開口部
210g ガイド溝
230 回転筒
230a 回転筒開口部