(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】建築物の基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220704BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D27/34 Z
(21)【出願番号】P 2018119782
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】土佐内 優介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102937(JP,A)
【文献】特開2008-280828(JP,A)
【文献】特開2005-146556(JP,A)
【文献】特開2013-002077(JP,A)
【文献】特開2001-207437(JP,A)
【文献】特開2009-084972(JP,A)
【文献】特開2009-275358(JP,A)
【文献】特開2013-113048(JP,A)
【文献】特開平09-158242(JP,A)
【文献】特開平11-336071(JP,A)
【文献】特開2012-107446(JP,A)
【文献】特開2015-031119(JP,A)
【文献】特開2007-224645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外周部を有する第1部分と、
前記第1部分の前記第1外周部の端部から外側に延在した第2部分と、
前記第1部分および前記第2部分上に設けられ、前記第1外周部の前記端部よりも外側に設けられた第2外周部を有する第3部分と、を有し、
前記第2部分は、前記第2外周部の下側に設けられる、
地盤改良体
と、
前記地盤改良体上に設けられた基礎構造体と、を含む、
建築物の基礎構造。
【請求項2】
前記第
2部分は、複数設けられ、
隣り合う2つの前記第2部分は前記第3部分の前記第2外周部と連結する部分を有し、
前記第2外周部は、前記隣り合う2つの前記第2部分の間に設けられる、
請求項1に記載の
建築物の基礎構造。
【請求項3】
前記第1部分は、前記第1外周部と連結され、前記第1外周部の内側に複数の仕切られた領域を形成する仕切り部を有する、
請求項
1または2に記載の
建築物の基礎構造。
【請求項4】
前記第1部分は、格子状に設けられる、
請求項
1乃至3のいずれか一に記載の
建築物の基礎構造。
【請求項5】
前記第1部分の前記第1外周部は、第1方向に沿う部分および前記第1方向と交差する第2方向に沿う部分を有し、
前記第2部分は、前記第1部分のうち前記第1外周部の隅部から延在し、
前記第2部分の延在する方向は、前記第1方向及び前記第2方向と同一平面上であって、前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれかと同じである、
請求項
1乃至
4のいずれか一に記載の
建築物の基礎構造。
【請求項6】
前記第1部分の前記第1外周部は、第1方向に沿う部分および前記第1方向と交差する第2方向に沿う部分を有し、
前記第2部分は、前記第1部分のうち前記第1外周部の隅部から延在し、
前記第2部分の延在する方向は、前記第1方向及び前記第2方向と同一平面上であって、前記第1方向及び前記第2方向と異なる、
請求項
1乃至
5のいずれか一に記載の
建築物の基礎構造。
【請求項7】
下部改良体と、前記下部改良体上に設けられた上部改良体とを有する地盤改良体と、前記地盤改良体上の基礎構造体と、を含み、
前記下部改良体は、格子状の第1部分と、前記第1部分の端部から延在する第2部分とを有し、
前記上部改良体は、前記第1部分及び前記第2部分上に設けられる、
建築物の基礎構造。
【請求項8】
前記第1部分または前記第2部分の底面は、凹凸を有する、
請求項1乃至
7のいずれか一に記載の
建築物の基礎構造。
【請求項9】
前記第1部分の底面から下側に設けられ、柱状形状を有する第4部分を有する、
請求項1乃至
8のいずれか一に記載の
建築物の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、地盤改良体および建築物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の荷重を地盤で支持する基礎形式として直接基礎がある。直接基礎は、地盤の比較的浅いところに硬質な地盤がある場合、その硬質な地盤に建物の荷重を伝達する。一方、建物直下に軟弱地盤が堆積している場合、建物の重量を支えるための十分な強度を有する堅固な地盤の層(以下、支持層)に到達する杭を地盤中に築造し、建物の重量を支持層に伝達する杭基礎が用いられる。しかしながら、支持層が深くにある軟弱地盤上に中低層の建物を建てる場合、杭基礎を採用することは不経済となる場合がある。また、大深度までの杭基礎の施工を行なうことにより生じる廃土量が多くなるなどの環境負荷も大きくなるなどの課題がある。
【0003】
そのため、非特許文献1、特許文献1及び特許文献2のように、建物重量が大きくない場合には、軟弱地盤をセメント系固化材などによって改良し地盤改良体とすることで地盤の支持力を確保し、基礎形式を直接基礎とすることで、合理的かつ経済的な設計・施工が行われている。
【0004】
なお、軟弱地盤において、地盤の表層付近を改良したとしても、直接基礎を用いて建築物を建築すると、建築物が不揃いに沈下を起こす(斜めに傾く)等の不同沈下の問題が発生する可能性がある。その場合、床等のひび割れや傾斜など、使用上の支障をきたすことが懸念される。非特許文献1~3には、そういった不同沈下を抑制しつつ、支持力も確保する方法が示されている。また、地盤改良体を用いた場合、地震時には地盤改良体底面における水平方向への滑動を抑制することが求められ、その設計法が示されている(非特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-146556号公報
【文献】特開2008-280828号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】佐々木裕幸,外3名,「浅層改良を併用した軟弱地盤上に建つ直接基礎建物」,日本建築学会大会学術講演梗概集,1999年,9月,p.725-726
【文献】佐原守,外1名,「盛土地盤上に浅層改良併用直接基礎に支持させた大型倉庫」,日本建築学会大会学術講演梗概集,2010年,9月,p.465-466
【文献】又吉直哉,外1名,「沖積低地に築造された改良土盤上に直接基礎で支持させた集合住宅の沈下観測」,日本建築学会大会学術講演梗概集,2005年,9月,p.595-596
【文献】日本建築学会編,「建築基礎のための地盤改良設計指針案」,第4刷,日本建築学会,2012年5月25日,p.87-88
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、大地震による地盤の被害が多く発生していることを背景に、不同沈下の抑制と合わせて、より大きな地震力に対しても地盤改良体底面の滑動を抑制することが求められる。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明の一実施形態は、不同沈下を抑制するとともに、地震時において地盤改良体の水平方向への滑動に対する抵抗力を大きくすることが可能な構造物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、第1外周部を有する第1部分と、第1部分の第1外周部の端部から外側に延在した第2部分と、第1部分および第2部分上に設けられ、第1外周部の端部よりも外側に設けられた第2外周部を有する第3部分と、を有し、第2部分は、第2外周部の下側に設けられる地盤改良体が、提供される。
【0010】
上記地盤改良体において、第3部分は、複数設けられ、隣り合う2つの第2部分は第3部分の第2外周部と連結する部分を有し、第2外周部は、隣り合う2つの第2部分の間に設けられてもよい。
【0011】
上記地盤改良体において、第1部分は、第1外周部と連結され、第1外周部の内側に複数の仕切られた領域を形成する仕切り部を有してもよい。
【0012】
上記地盤改良体において、第1部分は、格子状に設けられてもよい。
【0013】
上記地盤改良体において、第2部分の厚さは、第1部分の厚さよりも薄くてもよい。
【0014】
上記地盤改良体において、第2部分の厚さは、第1部分の厚さよりも厚くてもよい。
【0015】
上記地盤改良体において、第1部分の第1外周部は、第1方向に沿う部分および第1方向と交差する第2方向に沿う部分を有し、第2部分は、第1部分のうち第1外周部の隅部から延在し、第2部分の延在する方向は、第1方向及び第2方向と同一平面上であって、第1方向及び第2方向の少なくともいずれかと同じであってもよい。
【0016】
上記地盤改良体において、第1部分の第1外周部は、第1方向に沿う部分および第1方向と交差する第2方向に沿う部分を有し、第2部分は、第1部分のうち第1外周部の隅部から延在し、第2部分の延在する方向は、第1方向及び第2方向と同一平面上であって、第1方向及び第2方向と異なってもよい。
【0017】
上記地盤改良体において、第2部分は、第1部分の第1外周部のうち隣り合う隅部の間にさらに設けられ、第1外周部の外側に延在してもよい。
【0018】
上記地盤改良体において、第2部分の底面は、凹凸を有してもよい。
【0019】
上記地盤改良体において、第2部分の底面は、階段形状を有してもよい。
【0020】
上記地盤改良体において、第1部分の底面から下側に設けられ、柱状形状を有する第4部分を有してもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、上記地盤改良体と、上記地盤改良体上に設けられた基礎構造体と、を含む建築の基礎構造が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態によれば、不同沈下を抑制するとともに、建築物の水平方向への滑動に対する抵抗力を大きくすることが可能な建築物の基礎構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す上面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す底面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の地盤改良体が滑動するときを示す上面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の地盤改良体の形成方法を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す上面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の地盤改良体の一部を示す上面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す上面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す上面図および断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す上面図および断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す上面図および断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態の地盤改良体を示す上面図および断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態の建築物の基礎構造を示す上面図および断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態の建築物の基礎構造を示す上面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における地盤改良体および建築物の基礎構造について説明する。但し、本発明の一実施形態に係る地盤改良体および建築物の基礎構造は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本発明の一実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
また、説明の便宜上、「上(上方)」又は「下(下方)」という語句を用いて説明するが、「上(上方)」は地表面から空に垂直に向かう方向を示し、「下(下方)」は空から地盤中へ鉛直に向かう方向を示す。また、水平方向は、地表面と平行となる方向を示す。
【0026】
<第1実施形態>
(1-1.地盤改良体の構成)
図1は、地盤改良体100の上面図である。
図2は、地盤改良体100の底面図である。
図3(A)は、地盤改良体100のうちA1-A2間の断面図である。
図3(B)は、地盤改良体100のうちB1-B2間の断面図である。
図3(C)は、地盤改良体100のうちC1-C2間の断面図である。
【0027】
図1、
図2、
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)に示すように、地盤改良体100は、地盤50の表層に設けられる。地盤50は、軟弱地盤である。一方、地盤改良体100は、地盤50に含まれた土に加えてセメントなどに代表される固化材を加えて攪拌・混合するなどして固化したものである。セメントには、例えば普通ポルトランドセメントが用いられる。したがって、地盤改良体100は、地盤50に比べて高い強度と剛性を有する。地盤改良体100は、下部改良体110(第1部分という場合がある)、延長改良体130(第2部分という場合がある)および上部改良体120(第3部分という場合がある)を有する。なお、この例では、下部改良体110、上部改良体120および延長改良体130は、それぞれ同じ強度と剛性を有している。
【0028】
図1および
図2に示すように、下部改良体110は、地盤改良体100のうち下方に設けられ、4つの隅部116を有する外形が正方形の部分をいう。下部改良体110は、外周部112(第1外周部ともいう)および仕切り部114を有する。外周部112は、第1方向D1に沿った部分および第1方向D1に直交する第2方向D2に沿った部分を有している。外周部112は、下部改良体110の外枠を形成する。仕切り部114は、外周部112に連結して設けられ、外周部112の内側に複数の仕切られた領域50aを形成する。この例では、仕切り部114は、第1方向D1に沿った部分および第2方向D2に沿った部分を有しており、それぞれが直交して配置される。このとき、下部改良体110は、外周部112および仕切り部114により正方形に仕切られた領域が設けられることで、格子形状を有している。
図3(B)に示すように、下部改良体110の底面110dは平坦な形状を有している。
【0029】
上部改良体120は、地盤改良体100のうち下部改良体110上に平面状に設けられた四辺を有する部分をいう。上部改良体120は、下部改良体110と重畳する部分(内部領域121)と、下部改良体110の端部112eよりも外側に広がった部分(外周部122、第2外周部ともいう)と、を有する。この例では、外周部122は、下部改良体110の四辺よりも外側に広がって配置されている。また、この例では、下部改良体110の厚さt110および上部改良体120の厚さt120は、同じである。
【0030】
延長改良体130は、地盤改良体100のうち下部改良体110の外周部112から外側に延在した部分をいう。延長改良体130は、上部改良体120の外周部122の下側に設けられる。
図1、
図2および
図3(B)に示すように、延長改良体130は、下部改良体110の外周部112の端部112eと上部改良体120の外周部122の端部122eとの間に設けられた部分を有する。この例では、
図1および
図2に示すように、延長改良体130は、外周部122の端部122eまで延在して設けられている。また、延長改良体130は、上部改良体120の外周部122と接触し、底面130dは平坦な形状を有している。
【0031】
また、
図1~
図3に示すように、延長改良体130は、複数設けられている。この例では、延長改良体130-1は、下部改良体110のうち外周部112の一辺112aの隅部116-1から延在して設けられる。延長改良体130-2は、隅部116-2から延在して設けられる。延長改良体130-1および延長改良体130-2は、隣り合って配置されている。このとき、延長改良体130-1および延長改良体130-2の延在する方向は、第2方向D2と同じ方向を有している。また、隅部116-1において、延長改良体130(延長改良体130-1)は第2方向D2に沿って延在する部分(部分130-1a)とともに一辺112bから第1方向D1に沿って延在する部分(部分130-1b)を有する。また、隅部116-2において、延長改良体130(延長改良体130-2)は第2方向D2に沿って延在する部分(部分130-2a)とともに一辺112cから第1方向D1に沿って延在する部分(部分130-2b)を有する。延長改良体130は、隅部116-2、隅部116-3、隅部116-4においても同様に、第1方向D1沿って延在する部分および第2方向D2に沿って延在する部分をしている。このため、
図1において、下部改良体110および延長改良体130は、井の字型(井桁状)を有して配置される。
【0032】
地盤改良体100は上記構造を有することにより、
図3(A)に示すように地盤50のうち下部改良体110の側面110sと上部改良体120の底面120dで囲われた領域50aを拘束するため、軟弱地盤の圧縮変形やせん断変形を抑制することができる。そのうえで、面的に一体となった地盤改良体が建物荷重を支持するため、不同沈下を抑制することができる。
【0033】
本実施形態では延長改良体130は複数設けられ、地盤50のうち複数の延長改良体130のうち隣り合う2つの部分(具体的には延長改良体130-1および延長改良体130-2)の間に設けられた領域50bに対して拘束効果を有する。これにより、拘束された軟弱地盤の圧縮変形やせん断変形が抑制されることで、滑動抵抗をさらに大きくすることができる。
【0034】
図4は、地盤改良体100が横方向に滑動する場合を示す模式図である。
図4に示すように、地盤改良体100が地震等により第2方向D2に力N100を有して動こうとした場合、地盤50が力N50で地盤改良体100を受け止めることとなる。このとき、地盤改良体100は、延長改良体130(この例では、延長改良体130-1の部分130-1b及び延長改良体130-2の部分130-2b)を有するため、下部改良体110の幅L1に加えて延長改良体の幅L2-1、および幅L2-1だけ広がることとなる。
図3(B)に示すように、下部改良体110の高さt110と延長改良体130の高さt130は同じある場合、力N50と垂直な面の面積である水平投影面積Aは、以下の式となる。
【数1】
上記より、本実施形態を用いることより力N50に対する水平投影面積を大きくすることができるため、地盤改良体100の滑動に対する抵抗力を増大させることができる。
【0035】
さらに、
図1,
図2および
図3(C)に示すように、複数の延長改良体130のうち隣り合う2つの部分は、上部改良体120の外周部122と連結し、支持された状態を有する。このとき、上部改良体120は、平面において延長改良体130-1および延長改良体130-2の間にも設けられる。これにより、外側に張り出した延長改良体130が局部的に破壊してしまうことを抑制する。
【0036】
(1-2.地盤改良体の形成方法)
次に、
図5の上面図および断面図を用いて、地盤改良体100の形成方法の一例を説明する。まず、
図5(A1)および
図5(A2)に示すように、地盤改良体100を形成したい地盤50の表層に対して所定の形状を有する凹み55を形成するための掘削処理を行う。地盤50は、軟弱地盤である。地盤50の掘削方法として、特に制限されないが、例えば事前に設けた目印をもとにバックホウなどの重機を用いて土を掘り上げることにより行われる。このとき、凹み55のうち下部改良体110(および延長改良体130(図示せず))となる凹み55-1の深さ(厚さt110に相当)は、上部改良体120となる凹み55-2の深さ(厚さt120に相当)と同じである。
【0037】
次に、設けられた凹み55に地盤改良体100を形成する。地盤改良体100は、掘りあげられた土と固化材(セメント等)の混合物を埋め込むことにより形成される。セメントとして、例えば、普通ポルトランドセメントが用いられ、主に石灰(カルシウム)とともに、アルミニウム、ケイ素、鉄などの酸化物が含まれる。また、普通ポルトランドセメントの他に、高炉セメント、シリカセメントなどが用いられてもよい。このとき、
図5(B1)および
図5(B2)に示すように、下部改良体110となる凹み55(凹み55-1)に土とセメントを散布し、水を加えて攪拌した後、ローラーなどの重機を用いて押し固める(転圧する)。続いて、
図5(C1)および
図5(C2)に示すように、同様の形成処理を上部改良体120となる凹み55(凹み55-2)に対しても行う。以上により、地盤改良体100が地盤50の表層に形成される。
【0038】
なお、ここでいう地盤改良とは、セメントや水ガラスや微生物等の固化作用がある材料を用いた固化剤を土に加えることで、地盤の強度と剛性を改善することである。このため、地盤改良体100の形成方法は当該方法に限定されない。例えば、地盤改良体100は、セメントを土の上に撒き、その場で撹拌混合して、地盤改良体100を形成してもよい。
【0039】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態の地盤改良体と形状の異なる地盤改良体について説明する。なお、第1実施形態と同様の構造および名称を有する部分については、その説明を援用する。
【0040】
(地盤改良体100Aの構成)
図6に地盤改良体100Aの上面図を示す。
図6に示すように、地盤改良体100Aは、下部改良体110、上部改良体120および延長改良体130Aを含む。
【0041】
本実施形態において、地盤改良体100Aの延長改良体130が延在する方向D3は、第1方向D1および第2方向D2と同じ平面上であって、第2方向D2と異なる方向(斜め方向)であってもよい。これにより、地盤改良体100Aの地盤改良する範囲を小さくし、経済的な施工が可能となる。また、延長改良体130Aを設けることで、水平投影面積を大きくすることができ、縦方向と横方向に滑動しようとする際の抵抗力を大きくすることができる。
【0042】
図7は、地盤改良体100Aの一部(特に延長改良体130Aの変形例)を示す上面図である。
図7(A)に示すように、延長改良体130A1は、第3方向D3に延在するとともに、端部130A1eを有してもよい。このとき、端部130A1eは、第3方向D3に直交してもよい。この形状を有することにより、この形状を有することにより、地盤改良体100Aは第3方向D3に対して直交する面を設けることとなるため、第3方向に滑動しようとする際の抵抗力を大きくすることができる。
【0043】
また、
図7(B)に示すように、延長改良体130A2は第1方向D1および第2方向D2に延在して直角三角形のような形状を有し、端部130A2eを有してもよい。端部130A2eは、端部130A1eと同様に第3方向にD3に直交しつつ、端部130A1eの長さよりも長い。この形状を有することにより、地盤改良体100Aは第3方向D3に対して直交する面を設けることとなるため、第3方向に滑動しようとする際の抵抗力を大きくすることができる。
【0044】
また、
図7(C)に示すように、延長改良体130A3は第3方向D3に延在するとともに、端部130A3eを有してもよい。端部130A3eは凹み(谷)部分を有してもよい。
【0045】
また、
図7(D)に示すように、延長改良体130A4は、2辺に設けられた延長改良体130を組み合わせた形状を有してもよい。
【0046】
また、
図7(E)に示すように、延長改良体130A5は第3方向D3に延在する二等辺三角形のような形状でもあってよい。また、
図7(F)に示すように、延長改良体130A6は、三方に凸部を有する形状を有してよい。このとき、凹みを有する複数の端部130A6eが設けられる。
【0047】
上記のように、延長改良体130が様々な方向に延在し、様々な形状を有することにより、第1方向D1や第2方向D2に加えて、水平方向のうち様々な方向に対する滑動抵抗をより効果的に得ることができる。
【0048】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態および第2実施形態の地盤改良体と形状の異なる地盤改良体について説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態と同様の構造および名称を有する部分については、その説明を援用する。
【0049】
(地盤改良体100Bの構成)
図8に地盤改良体100Bの上面図を示す。
図8に示すように、本実施形態において地盤改良体100Bは、下部改良体110、上部改良体120および延長改良体130Bを有する。延長改良体130Bは、下部改良体110のうち外周部112の隅部116から延在した第1延長改良体130B1とともに、隣り合う隅部116の間に設けられ、外側に延在する第2延長改良体130B2を有する。この例では、第2延長改良体130B2は、第1方向D1または第2方向D2に延在している。
【0050】
延長改良体130Bは、第1延長改良体130B1とともに第2延長改良体130B2を有することにより、延長改良体130Bのうち隣り合う部分の間にある軟弱地盤の領域50bが小さくなるため、軟弱地盤に対してさらに高い拘束効果を有する。これにより、拘束された軟弱地盤の変形が抑制されることで、滑動抵抗をさらに大きくすることができる。
【0051】
<第4実施形態>
本実施形態では、第1乃至第3実施形態の地盤改良体と形状の異なる地盤改良体について説明する。なお、第1乃至第3実施形態と同様の構造および名称を有する部分については、その説明を援用する。
【0052】
(地盤改良体100Cの構成)
図9(A)に地盤改良体100Cの上面図を示す。
図9(B)に地盤改良体100CのうちB1-B2間の断面図を示す。
図9(A)および
図9(B)に示すように、地盤改良体100Cは、下部改良体110、上部改良体120および延長改良体130に加えて柱状改良体140(第4部分ともいう)を含む。
【0053】
柱状改良体140は、下部改良体110の底面110dから下側に設けられ、柱状形状を有している。この例では、柱状改良体140は、下部改良体の110外周部112および仕切り部114に周期的に配置される(より具体的には、基礎構造体及び柱が設けられる部分に配置される)。柱状改良体140の長さは特に限定されず、必要に応じて所望の長さを有すればよい。柱状改良体140は、延長改良体130と直交する方向に延在している。
【0054】
地盤改良体100Cは、柱状改良体140を有することにより水平方向の力(揺れ)に対して直交する部分を広く有することとなる。したがって、地震などの自然災害において地盤改良体の滑動抵抗をより大きくすることができる。
【0055】
また、地盤改良体100Cは、柱状改良体140を有することにより、地盤改良体100Cがその自重や建物の重量によって沈下しようとする際には、140の周面に摩擦力が作用することとなる。したがって、その摩擦力により、沈下を抑制することができる。
【0056】
<第5実施形態>
本実施形態では、第1乃至第4実施形態の地盤改良体と形状の異なる地盤改良体について説明する。なお、第1乃至第4実施形態と同様の構造および名称を有する部分については、その説明を援用する。
【0057】
(地盤改良体100Dの構成)
図10(A)に地盤改良体100Dの上面図を示す。
図10(B)に地盤改良体100DのうちB1-B2間の断面図を示す。
図10(A)および
図10(B)に示すように、地盤改良体100Dは、下部改良体110D、上部改良体120および延長改良体130Dを有する。
図10(A)および
図10(B)に示すように、下部改良体110Dの底面110Ddおよび延長改良体130Dの底面130Ddの全体において、凹凸を有する形状を有してもよい。地盤改良体100Dは、上記形状を有することにより、底面110Ddでの摩擦抵抗が大きくなるため、水平方向への滑動抵抗をより大きくすることができる。なお、本実施形態では、下部改良体110Dの底面110Ddおよび延長改良体130Dの底面130Ddの全体において、凹凸を有する形状を有しているが、一部において凹凸を有する形状を有してもよい。
【0058】
<第6実施形態>
本実施形態では、第1乃至第5実施形態の地盤改良体と形状の異なる地盤改良体について説明する。なお、第1乃至第5実施形態と同様の構造および名称を有する部分については、その説明を援用する。
【0059】
(地盤改良体100Eの構成)
図11(A)に地盤改良体100Eの上面図を示す。
図11(B)に地盤改良体100EのうちB1-B2間の断面図を示す。
図11(A)および
図11(B)に示すように、地盤改良体100Eは、下部改良体110、上部改良体120および延長改良体130Eを有する。
図10(A)および
図10(B)に示すように、延長改良体130Eの底面130Edは、階段形状を有する形状(斜めに凹凸を有する形状)であってもよい。上記形状を有することにより、地盤改良体全体の体積を低減させつつ、水平投影面積を大きくすることができ、水平方向への滑動抵抗を大きくすることができる。なお、下部改良体110の底面も一部において階段形状を有してもよい。
【0060】
<第7実施形態>
本実施形態では、第1乃至第6実施形態の地盤改良体と形状の異なる地盤改良体について説明する。なお、第1乃至第6実施形態と同様の構造および名称を有する部分については、その説明を援用する。
【0061】
(地盤改良体100Fの構成)
図12(A)に地盤改良体100Fの上面図を示す。
図12(B)に地盤改良体100FのうちB1-B2間の断面図を示す。
図12(A)および
図12(B)に示すように、地盤改良体100Fは、延長改良体130Fの厚さt130Fは下部改良体110の厚さt110に比べて薄くてもよい。また、延長改良体130Fは、上部改良体120に連結されなくてもよい。この形状を有することにより、地震などの自然災害において地盤改良体の滑動抵抗をより大きくすることができる。
【0062】
<第8実施形態>
本実施形態では、地盤改良体100を含む建築物の基礎構造について説明する。
【0063】
(建築物の基礎構造10の構成)
図13(A)は、建築物の基礎構造10の上面図であり、
図13(B)は建築物の基礎構造10のA1-A2間の断面図である。
図13(A)および
図13(B)に示すように、建築物の基礎構造10は、地盤改良体100に加えて、基礎構造体200、および上部構造体300を有する。
【0064】
基礎構造体200(直接基礎という)は、建築物の土台となる部分である。基礎構造体200は、地盤改良体100上に設けられる。この例では、基礎構造体200は、広く平面状に配置されたベタ基礎を有している。また、基礎構造体200は、地盤改良体100の一部(この場合上部改良体120)に設けられた凹部に設けられている。この構造とすることにより、基礎構造体200の建築物に対する支持安定性を向上させることができる。なお、このとき延長改良体130は、基礎構造体200の外側に設けられている。
【0065】
上部構造体300は、地盤改良体100および基礎構造体200上に設けられる。また、上部構造体300は、下部改良体110に重畳して設けられるとともに、下部改良体110と同様に格子状に配置される。
【0066】
本実施形態の建築物の基礎構造10は、地盤改良体100を有することにより、建築物の不同沈下が抑制されるとともに、水平方向への滑動を抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態において、建築物の基礎構造10の基礎構造体200としてベタ基礎を示したが、これに限定されない。
図14(A)は、建築物の基礎構造10Aの上面図であり、
図14(B)は建築物の基礎構造10AのA1-A2間の断面図である。
図14(A)および
図14(B)に示すように、建築物の基礎構造10Aは、地盤改良体100に加えて、基礎構造体200A、および上部構造体300を有する。このとき、基礎構造体200Aには、独立基礎や布基礎が用いられてもよい。
【0068】
(変形例1)
本発明の第1実施形態において、上部改良体120の外周部122は、下部改良体110の四方に広がって配置される例を示したが、これに限定されない。例えば、外周部122は、下部改良体110の一辺にのみ配置されてもよい。
【0069】
(変形例2)
また、本発明の第1実施形態において、
図3(A)および
図3(B)において、下部改良体110の厚さt110および上部改良体120の厚さt120は同じ厚さを有しているが、これに限定されなくてもよい。例えば、上部改良体120の厚さt120は下部改良体110の厚さt110に比べて薄くてもよい。
【0070】
(変形例3)
また、本発明の第1実施形態において、延長改良体130は、上部改良体120の外周部122の端部122eまで延在して設けられているが、これに限定されない。延長改良体130は上部改良体120の外周部122の端部122eまで延在されなくてもよいし、端部122eよりも外側に延在してもよい。
【0071】
(変形例4)
また、本発明の第1実施形態において、地盤改良体100の下部改良体110、上部改良体120および延長改良体130は、それぞれ同じ強度と剛性を有している例を示したが、これに限定されない。地盤改良体100において、下部改良体110および延長改良体130と、上部改良体120とで強度と剛性を異ならせてもよい。このとき、例えば下部改良体110および延長改良体130の剛性を上部改良体120よりも高くしてもよい。上記剛性の調整は、例えば土とセメントの比率を変えて行ってもよいし、セメント中の成分比(カルシウム、アルミニウム、鉄およびケイ素の他、ナトリウム、カリウム、チタン、マンガンなど)を変えて行ってもよい。下部改良体110および延長改良体130の強度と剛性をさらに高めることにより、建物から加わる下方への荷重を安定して受け止めることができるため、基礎構造の不同沈下を抑制することができる。
【0072】
(変形例5)
また、本発明の第1実施形態において、下部改良体110が格子状である例を示したが、これに限定されない。仕切り部114により設けられた複数の仕切られた領域は周期的な形状を有する場合に限定されず、異なる間隔を有して設けられてもよい。また、仕切られた領域は4つに限定されず、6個でもよいし、9個でもよいし、12個でもよいし、16個でもよいし、それ以上でもよい。このとき、下部改良体110の外形は正方形ではなく、長方形であってもよし、台形でも、多角形でも、建物の平面形状に合わせて最適な形状にしてよい。
【0073】
(変形例6)
また、本発明の第1実施形態において、外周部112が、第1方向D1および第1方向D1に直交する第2方向D2を有している例を示したが、これに限定されない。第1方向D1と第2方向D2とは、直交せずに交差すればよい。このとき、下部改良体110の外形は、菱形であってもよい。
【0074】
(変形例7)
また、本発明の第1実施形態において、下部改良体110の仕切り部114は、第1方向D1に沿った部分および第2方向D2に沿った部分を有し、それぞれが直交して配置される例を示したが、これに限定されない。例えば、仕切り部114は、一部に曲線部分を有してもよい。また、仕切り部114は、必ずしも設けられなくてもよい。また、下部改良体110の外形は、矩形でなくてもよい。例えば、下部改良体110の外形は、円形状でもよい。
【0075】
(変形例8)
また、本発明の第1実施形態において、地盤改良体100は、土と固化材(セメント)を混ぜて形成されたものを用いて説明したが、これに限定されない。例えば、地盤改良体は、砂利や砕石を転圧し、敷き詰めたものでもよい。
【0076】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
10・・・基礎構造,50・・・地盤,100・・・地盤改良体,110・・・下部改良体,112・・・外周部,114・・・仕切り部,116・・・隅部,120・・・上部改良体,122・・・外周部,130・・・延長改良体,140・・・柱状改良体,200・・・基礎構造体,300・・・上部構造体