(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】機械式駐車システム
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220704BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220704BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
E04H6/18 601G
E04H6/18 601A
G03B15/00 V
G03B15/00 S
G03B15/00 W
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2018124627
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208672
【氏名又は名称】中島 愼一
(72)【発明者】
【氏名】赤石 仁
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128882(JP,A)
【文献】特開2016-003493(JP,A)
【文献】特開2018-041259(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138428(WO,A1)
【文献】特開2016-092814(JP,A)
【文献】特開2017-027546(JP,A)
【文献】特開2006-265822(JP,A)
【文献】特開2019-044332(JP,A)
【文献】特開2020-012354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
H04N 7/18
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と出入口ドアを介して連通し、運転手が駐車車両に乗降可能、かつ、内部を撮影するカメラを有しない乗降室と、
前記駐車車両を格納可能な複数の格納部を有する格納室と、前記駐車車両を載置可能なトレーを有し、前記乗降室と前記格納部間で前記トレーを搬送する搬送装置と、
前記乗降室の外に設置され、撮像された画像を表示可能なモニタおよび前記乗降室が無人であることを確認した後に操作され前記トレーの搬送許可を入力する無人確認ボタンを有する操作盤と、を備えた機械式駐車装置を有する機械式駐車システムであって、
前記駐車車両は、
水平方向に360°及び駐車車両の天井から垂直方向の下方側を180°程度撮像が可能な単一の全天球カメラを有するドライブレコーダーと、前記ドライブレコーダーにより撮像された前記駐車車両の周囲
における乗降室が無人か否かの状態及び前記駐車車両の内部
における同乗者が残留していないかの状態を示す画像の画像データを無線通信により送信する送信部と、を備え、
前記操作盤は、前記画像データを受信する受信部を備え、
前記画像データを前記送信部から前記受信部に送信して前記モニタに前記画像を表示する
とともに、
前記運転手又は管理者が前記モニタに表示される前記画像を見て乗降室が無人であることを確認した後に無人確認ボタンを操作することで、前記出入口ドアの閉鎖と前記トレーの搬送が許可される、
機械式駐車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降室と格納室間で駐車車両を搬送する搬送装置を備えた機械式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置として、乗降室と格納室間で駐車車両を移動する搬送装置、例えば駐車車両の入出庫階と格納階を結ぶリフト装置を構成し、このリフト装置を使用してトレーに載置した駐車車両を異なる階床間で搬送するものがある。このような機械式駐車装置では、乗降室の外で同乗者や荷物を駐車車両から降ろした後に、運転手のみが駐車車両と共に乗降室に乗り込んでトレー上に駐車車両を載置し、運転手が乗降室から退室した後に、操作盤を操作してトレーを格納階へ移動する。すなわち、安全を確保するために、乗降室が無人の状態でリフト装置が駆動される。
【0003】
しかし、乗降室外にいた同乗者が不用意に乗降室に侵入したり、車内に同乗者が残された状況で操作盤を操作したりしてしまうことや、運転手が乗降室にいる状態で第三者が誤って操作盤を操作してしまうことが想定されることから、従来、乗降室に、乗降室内を撮像するカメラを配置し、カメラの映像に人を発見したとき操作盤の操作を停止するようにしたものが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献に記載のものは、カメラを乗降室に設ける必要があることから、機械式駐車装置としての設備コストが嵩むという課題があった。また、乗降室に配置したカメラだと、駐車車両の内部を撮像することが難しく、車内に残った人を見落として格納処理を行ってしまう虞があった。
【0006】
本発明の目的は、設備コストの低減を図るとともに、安全増しを図ることのできる機械式駐車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る機械式駐車システムは、外部と出入口ドアを介して連通し、運転手が駐車車両に乗降可能、かつ、内部を撮影するカメラを有しない乗降室と、前記駐車車両を格納可能な複数の格納部を有する格納室と、前記駐車車両を載置可能なトレーを有し、前記乗降室と前記格納部間で前記トレーを搬送する搬送装置と、前記乗降室の外に設置され、撮像された画像を表示可能なモニタおよび前記乗降室が無人であることを確認した後に操作され前記トレーの搬送許可を入力する無人確認ボタンを有する操作盤と、を備えた機械式駐車装置を有する機械式駐車システムであって、前記駐車車両は、水平方向に360°及び駐車車両の天井から垂直方向の下方側を180°程度撮像が可能な単一の全天球カメラを有するドライブレコーダーと、前記ドライブレコーダーにより撮像された前記駐車車両の周囲における乗降室が無人か否かの状態及び前記駐車車両の内部における同乗者が残留していないかの状態を示す画像の画像データを無線通信により送信する送信部と、を備え、前記操作盤は、前記画像データを受信する受信部を備え、前記画像データを前記送信部から前記受信部に送信して前記モニタに前記画像を表示するとともに、前記運転手又は管理者が前記モニタに表示される前記画像を見て乗降室が無人であることを確認した後に無人確認ボタンを操作することで、前記出入口ドアの閉鎖と前記トレーの搬送が許可される、ことを特徴としている。
【0008】
第1態様に係る機械式駐車システムによれば、駐車車両に搭載されるドライブレコーダーにより撮像された画像を操作盤のモニタに表示して乗降室内の状態を把握することができ、これによって、カメラを別途、乗降室に設けることなく安全を確認することができ、したがって、安全を確保しつつ設備コストの低減を図ることができる。
【0009】
第2態様に係る機械式駐車システムは、第1態様に係る機械式駐車システムにおいて、前記ドライブレコーダーは、全天球カメラを具備することを特徴としている。
【0010】
第2態様に係る機械式駐車システムによれば、駐車車両の前後左右および駐車車両内の様子を撮像し、乗降室に残された人や、駐車車両内に残された人を確実にモニタに表示することができ、これによって、安全性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の機械式駐車システムによれば、設備コストの低減を図るとともに、安全増しを図ることができる。なお、前述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本
実施形態における機械式駐車
システムの乗降室
を示す平面図である。
【
図4】本実施形態における駐車車両を含む制御系を示すブロック構成図である。
【
図6】本実施形態における駐車車両と操作盤との間での通信状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の機械式駐車システムを実施するための形態について、図を参照して説明する。
【0014】
図1は、本
実施形態における機械式駐車
システムの乗降室
を示す平面図、
図2は、本実施形態における乗降室の正面図、
図3は、本実施形態における乗降室の側面図である。
【0015】
本実施形態の機械式駐車システムは、外部と出入口ドア1を介して連通し、運転手が駐車車両2から乗り降りする乗降室3と、駐車車両2を格納可能な複数の格納部を有する図示しない格納室と、乗降室3と格納部間で駐車車両2を移動する搬送装置、すなわち駐車車両2を搭載可能なトレー4を異なる階床間で移動するリフト装置5と、外部と連通し、非常時に用いられる非常口6と、出入口ドア1近傍に配置され、機械式駐車装置を操作する操作盤7とを備えている。
【0016】
出入口ドア1は、例えば上下開閉式のものであり、トレー4との対向位置に配置され、駐車車両2が通過可能な幅寸法を有していると共に、通常時、駐車車両2の入出庫を行う運転手はここから出入りするようになっている。
【0017】
リフト装置5は、図示しない制御装置により駐車車両2を搭載可能なトレー4を昇降させるものであり、このリフト装置5がトレー4を乗降室3の昇降口に位置させると、トレー4上面と乗降室3の床が略同一レベルとなり、駐車車両2の乗り入れ、乗り出しが可能となるとともに、運転手は安全に乗降することができる。
【0018】
図4は、本実施形態における駐車車両を含む制御系を示すブロック構成図である。
【0019】
駐車車両2は、カメラを有するドライブレコーダー10と、ドライブレコーダー10により撮像された画像の画像データをアンテナ11を介して無線通信により送信する送信部12とを備えている。ドライブレコーダー10のカメラは、
図1~
図3に示すように、例えば水平方向において360°、垂直方向において360°撮像することのできる全天球型のものであり、これによって、駐車車両2の周囲および駐車車両2の車内を撮像することができる。すなわち、近時、運転中の画像を録画するドライブレコーダーを車両に取り付ける車両所有者がますます増えているとともに、ドライブレコーダーに備えらえるカメラも多様化し、全方位を撮像することのできるいわゆる全天球カメラを搭載したものも存在している。本発明は、このような実状に鑑み、ドライブレコーダー10により撮像される画像を用いて乗降室3の安全を確認するようにしたものである。
【0020】
操作盤7は、送信部12から送信される画像データをアンテナ20を介して受信する受信部21と、ドライブレコーダー10により撮像された画像を表示可能なモニタ22と、乗降室3が無人であることを確認した後に操作されトレー4の搬送許可を入力する無人確認ボタン23とを備えているとともに、ボタン操作に対応した処理を行う処理部30に接続されている。ドライブレコーダー10で撮像された画像の画像データは、リアルタイムで操作盤7に送られてモニタ22により表示される。このモニタ22の表示で乗降室3内の安全が確認されるようになっている。
【0021】
処理部30は、通常の機械式駐車装置で知られた構成で、乗降室3に乗り込んだ駐車車両2の運転手或いは管理人によって出入り口ドア1を閉操作するためのボタンが操作されたとき出入り口ドア1の閉処理を行うドア閉処理部31と、ドア閉処理による出入り口ドア1の閉動作完了後に、一連の格納処理を行う格納処理部32とを含んで構成されている。
【0022】
【0023】
操作盤7には、前述したように、ドライブレコーダー10により撮像された画像を表示可能なモニタ22と、乗降室3が無人であることを確認した後に操作されトレー4の搬送許可を入力する無人確認ボタン23とが備えられている。
【0024】
図6は、本実施形態における駐車車両と操作盤との間での通信状態を示す説明図である。
【0025】
詳細な説明については後述するが、駐車車両2の送信部12と操作盤7の受信部21との間で無線通信可能状態となると、送信部12から画像データが送信され、ドライブレコーダー10で撮像された画像がモニタ22に表示される。
【0026】
本実施形態にあっては、駐車車両2を入庫する場合、乗降室3の外で同乗者や荷物を駐車車両2から降ろした後に、運転手が駐車車両2を運転して出入口ドア1を介して乗降室3に乗り入れ、トレー4に車両を載置する。この後、運転手は駐車車両2から降り、出入口ドア1から乗降室3の外へと退室する。この間、ドライブレコーダー10はカメラにより撮像を継続している。そして、ドライブレコーダー10により撮像された画像の画像データは、送信部12によりアンテナ11を介して送信される。送信部12と操作盤7の受信部21との間で無線通信可能状態となると、送信部12から送信された画像データは、アンテナ20を介して操作盤7の受信部21で受信され、モニタ22にドライブレコーダー10で撮像された画像が表示される。
【0027】
そして、運転手が乗降室3の外へ出た後、運転手自身、或いは管理人がモニタ22の画像で乗降室3内に人がいないことを確認すると、運転手自身、或いは管理人は操作盤7の無人確認ボタン23を操作する。この操作に応じてトレー4の搬送許可が入力され、処理部30のドア閉処理部31は、出入り口ドア1を閉じ、次いで、出入り口ドア1の閉動作完了後に、格納処理部32は、リフト装置5を駆動して駐車車両2を搭載したトレー4を格納室へと搬送して格納する。
【0028】
一方、乗降室3の外で降ろした同乗者、特に子どもが不用意に乗降室3に侵入したり、車内に同乗者が残された状況で操作盤7を操作したりしてしまうことや、運転手が乗降室3にいる状態で第三者が誤って操作盤7を操作してしまうことが想定される。このような事態が生じるとドライブレコーダー10は、
図1~3に示すように、駐車車両2の前後左右にいる人や、背の低い子ども、駐車車両2内に残された人を撮像し、画像データが操作盤7に送られ、モニタ22により表示される。このモニタ22の画像を確認した運転手自身、或いは管理人は、乗降室3内に残った人を外に出し、完全を確認したうえで操作盤7の無人確認ボタン23を操作して、駐車車両2の入庫を行う。
【0029】
以上説明したように本発明は、外部と出入口ドア1を介して連通し、運転手が駐車車両2に乗降可能な乗降室3と、駐車車両2を格納可能な複数の格納部を有する図示しない格納室と、駐車車両2を載置可能なトレー4を有し、乗降室3と格納部間でトレー4を移動する搬送装置、すなわちリフト装置5と、乗降室3の外に設置され、撮像された画像を表示可能なモニタ22および乗降室3が無人であることを確認した後に操作されトレー4の搬送許可を入力する無人確認ボタン23を有する操作盤7とを備えた機械式駐車装置を有する機械式駐車システムであって、駐車車両2は、全天球カメラを有するドライブレコーダー10と、ドライブレコーダー10により撮像された前記駐車車両の周囲及び前記駐車車両の内部の画像の画像データを無線通信により送信する送信部12と、を備え、操作盤7は、画像データを受信する受信部21を備え、前記画像データを前記送信部12から前記受信部21に送信して前記モニタ22に前記画像を表示することを特徴とする。
【0030】
このような構成によれば、駐車車両2に搭載されるドライブレコーダー10により撮像された画像を操作盤7のモニタ22に表示して乗降室3内の状態を把握することができ、これによって、カメラを別途、乗降室3に設けることなく安全を確認することができ、したがって、安全を確保しつつ設備コストの低減を図ることができる。
【0031】
また、本発明は前述の構成に加えて、ドライブレコーダー10は、全天球カメラを具備することを特徴とする。
【0032】
このような構成によれば、駐車車両2の前後左右および駐車車両2内の様子を撮像し、乗降室3に残された人や、駐車車両内に残された人を確実にモニタ22に表示することができ、これによって、安全性の向上を図ることができる。
【0033】
以上、本発明の機械式駐車システムの実施形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の機械式駐車システムは、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施例が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 出入口ドア
2 駐車車両
3 乗降室
4 トレー
5 リフト装置(搬送装置)
7 操作盤
10 ドライブレコーダー
11,20 アンテナ
12 送信部
21 受信部
22 モニタ
23 無人確認ボタン