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特許7098503制御装置、電力システム、制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】制御装置、電力システム、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220704BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20220704BHJP
   H02J 3/34 20060101ALI20220704BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/16
H02J3/34
H02J3/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018195273
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020065348
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久米 里奈
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雪菜
(72)【発明者】
【氏名】直井 伸也
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-248345(JP,A)
【文献】特開2014-050292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02M 7/42 - 7/98
H02J 9/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御装置であって、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力する制御部を備え、
前記第1設定時間は、予め設定された前記第1遮断器が動作を開始して、前記第1遮断器の第1側の系統と、前記第1遮断器の第2側の系統とを電気的に分離させるまでに要すると推定される時間に基づいて設定された時間である、
制御装置。
【請求項2】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御装置であって、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1信号が入力された後に前記第1信号とは異なる前記第1遮断器を開放状態にする第2信号が入力された場合、前記第1設定時間が経過した後の第2設定時間の間、前記第2電圧指令値に基づく前記ゲート信号の出力を停止する、
制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2信号が入力された場合に、前記第1設定時間が経過したときから前記第2設定時間の計測を開始、または前記第2信号が入力された場合に、前記第1信号が入力されたときから前記第1設定時間と前記第2設定時間とを含む第3時間の計測を開始する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値を導出する第1導出部と、
前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値を導出する第2導出部と、
前記第2電圧指令値に基づく前記自励式電力変換器に出力するゲート信号を生成する生成部と、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、前記ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させず、前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させる調整部と、を備える、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御装置であって、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力する制御部を備える制御装置と、
交流母線と負荷とが並列に接続された第1遮断器に第1側が接続され、直流系統に第2側が接続された自励式電力変換器と、
前記第1遮断器と、
前記第1遮断器に交流系統を介して接続された第2遮断器と、を備え、
前記第2遮断器は、前記交流系統に設定値以上の電圧が印加された場合に、前記第1遮断器と前記自励式電力変換器との電気的接続を分離し、
前記制御装置は、前記第1信号が入力された場合に、前記第1設定時間が経過した後に前記交流系統の電圧が前記設定値以上にならないように前記ゲート信号の出力を行う、
電力システム。
【請求項6】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御方法であって、
制御装置が、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1設定時間は、予め設定された前記第1遮断器が動作を開始して、前記第1遮断器の第1側の系統と、前記第1遮断器の第2側の系統とを電気的に分離させるまでに要すると推定される時間に基づいて設定された時間である、
自励式電力変換器の制御方法。
【請求項7】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御装置のコンピュータに、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させ、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させ、
前記第1設定時間は、予め設定された前記第1遮断器が動作を開始して、前記第1遮断器の第1側の系統と、前記第1遮断器の第2側の系統とを電気的に分離させるまでに要すると推定される時間に基づいて設定された時間である、
プログラム。
【請求項8】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御方法であって、
制御装置が、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1信号が入力された後に前記第1信号とは異なる前記第1遮断器を開放状態にする第2信号が入力された場合、前記第1設定時間が経過した後の第2設定時間の間、前記第2電圧指令値に基づく前記ゲート信号の出力を停止する、
自励式電力変換器の制御方法。
【請求項9】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御装置のコンピュータに、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させ、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力させ、
前記第1信号が入力された後に前記第1信号とは異なる前記第1遮断器を開放状態にする第2信号が入力された場合、前記第1設定時間が経過した後の第2設定時間の間、前記第2電圧指令値に基づく前記ゲート信号の出力を停止させる、
プログラム。
【請求項10】
交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御方法であって、
制御装置が、
前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、
前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、
交流母線と負荷とが並列に接続された第1遮断器に交流系統を介して接続された第2遮断器が、
前記交流系統に設定値以上の電圧が印加された場合に、前記第1遮断器と、前記第1遮断器に第1側が接続され直流系統に第2側が接続された自励式電力変換器との電気的接続を分離し、
前記制御装置が、前記第1信号が入力された場合に、前記第1設定時間が経過した後に前記交流系統の電圧が前記設定値以上にならないように前記ゲート信号の出力を行う、
自励式電力変換器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置、電力システム、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自励式の電力変換器は、平常時には指定した有効電力や無効電力を出力するように運転を行い、系統事故により交流電源が喪失した場合には、自励式の電力変換器が交流電力の供給源となり、交流電圧の振幅や位相を維持し、電気機器が必要とする有効電力および無効電力を電気機器に供給するように制御される。しかしながら、系統において事故などの所定の事象が生じた場合、事故除去完了までの時間によっては単独運転への移行が円滑に行われない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-134669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、単独運転への移行を円滑に行うことができる制御装置、電力システム、制御方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の制御装置は、交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御装置である。制御装置は、制御部を持つ。制御部は、前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力する。制御部は、前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力する。前記第1設定時間は、予め設定された前記第1遮断器が動作を開始して、前記第1遮断器の第1側の系統と、前記第1遮断器の第2側の系統とを電気的に分離させるまでに要すると推定される時間に基づいて設定された時間である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る電力システム1に含まれる制御装置30の使用環境の一例を示す図。
図2】制御装置30の機能構成の一例を示す図。
図3】電力システム1において行われる処理等のタイミングを示すタイミングチャート。
図4】パルス生成部がゲート信号の出力を待機しない場合の処理等のタイミングを示すタイミングチャートの一例を示す図。
図5】第2の実施形態の電力システム1Aの機能構成の一例を示す図。
図6】電力システム1Aにおいて行われる処理等のタイミングを示すタイミングチャート。
図7】第1の実施形態および第2の実施形態の変形例1の電力システム1Bの機能構成の一例を示す図。
図8】第1の実施形態および第2の実施形態の変形例2の電力システム1Cの機能構成の一例を示す図。
図9】第1の実施形態および第2の実施形態の変形例2の電力システム1Dの機能構成の一例を示す図。
図10】変形例4の制御装置30Aの機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の制御装置、電力システム、制御方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力システム1に含まれる制御装置30の使用環境の一例を示す図である。電力システム1は、例えば、交流電圧源10と、交流送電線12と、第1遮断部14と、第2遮断部16と、交流母線18と、負荷20と、電力変換器22と、電流検出器24と、電圧検出器26と、制御装置30とを含む。また、電力システム1は、例えば、交流電圧源100と、交流母線102と、電力変換器106と、電流検出器108と、電圧検出器110と、制御装置112とを含む。
【0009】
第2遮断部16および電力変換器22は交流母線(交流系統)PL1を介して接続され、電力変換器22および電力変換器106は直流母線(直流系統)PL2を介して接続されている。第2遮断部16は、第1遮断部14に交流系統を介して電気的に接続されている。電力変換器22と電力変換器106とのそれぞれは、例えば、交流と直流とを相互に変換する自励式電力変換器である。
【0010】
まず、単独運転について説明する。第1遮断部14よりも交流電圧源10(背後系統)側で系統事故が発生し、第1遮断部14が開放されると、第1遮断部14より電力変換器22側の系統は、背後系統側から分離され単独系統となる。単独系統内には発電機などの電力供給源が存在しなくなるが、制御装置30が、電力変換器22を交流電力供給源として運転させることで、単独系統に接続される負荷20に電力の供給が継続される。この電力変換器22の運転を単独運転と称する。
【0011】
自励式電力変換器が、通常時の系統に対して指定された有効電力と無効電力を出力する通常運転を行う場合と、単独系統に対して交流電力供給源として単独運転を行う場合とでは、電力変換器22は、制御モードが異なる。単独運転時の電力変換器22の制御モードは、自励式電力変換器が交流母線PL1の電圧を一定に維持する制御を行うことで、単独系統内の負荷20が必要な有効電力および無効電力を負荷20に供給するモード(CVCF制御モード)である。
【0012】
交流電圧源10と、第1遮断部14とは、交流送電線12を介して、電気的に接続されている。第1遮断部14がオン状態(閉止状態)の場合、交流電圧源10と交流母線18とは電気的に接続される。第1遮断部14がオフ状態(開放状態)の場合、交流電圧源10と交流母線18とは電気的に分離される。
【0013】
第2遮断部16と、負荷20とは、交流母線18を介して、電気的に接続されている。第2遮断部16がオン状態(閉止状態)の場合、負荷20と電力変換器22とは電気的に接続される。第2遮断部16がオフ状態(開放状態)の場合、負荷20と電力変換器22とは電気的に分離される。
【0014】
電力変換器22の直流端子側には交流母線18が交流母線PL1を介して電気的に接続され、電力変換器22の直流端子側には直流母線PL2を介して電力変換器106が電気的に接続される。
【0015】
電流検出部24は、例えば、交流母線18と電力変換器22との間であって、交流母線PL1に電気的に接続されている。電流検出部24は、電力変換器22を構成する部材(例えばアーム)に設けられてもよい。
【0016】
電圧検出部26は、例えば、交流母線18に電気的に接続される。電圧検出部26は、交流母線18の電圧を検出する。
【0017】
負荷20は、例えば、需要家など使用する装置や負荷等である。負荷20は、交流系統(交流電圧源10や交流母線18)と電力変換器22との一方または双方から電力の供給を受ける。
【0018】
制御装置30は、電流検出器24の検出結果、および電圧検出部26の検出結果を取得し、取得した情報等に基づいて、種々の制御を行う。制御装置30の機能構成および制御内容については後述する。
【0019】
電力変換器106の直流端子側には、電力変換器22が電気的に接続されて、電力変換器106の交流端子側には交流母線102が電気的に接続されている。電力変換器106は、交流母線PL3(交流系統)を介して、交流電圧源100に電気的に接続されている。
【0020】
電流検出部108は、例えば、交流母線102と電力変換器106との間であって、交流母線PL3に電気的に接続されている。電圧検出部110は、例えば、交流母線102に電気的に接続される。電圧検出部110は、交流母線102の電圧を検出する。
【0021】
制御装置112は、電流検出器108の検出結果、および電圧検出部110の検出結果を取得し、取得した情報等に基づいて、交流電力を直流電力に変換したり、直流電力を交流電力に変換したりする。
【0022】
図2は、制御装置30の機能構成の一例を示す図である。制御装置30は、例えば、位相導出部32と、dq変換部34と、dq変換部36と、交流電流制御部38と、交流電圧制御部40と、dq逆変換部42と、パルス生成部44と、調整部46とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。なお、これらの構成要素のうち一部あるいは全部、又はこれらの構成要素に含まれる構成要素のうち一部あるいは全部は、回路(circuit)でもよい。交流電流制御部38、交流電圧制御部40、dq逆変換部42、パルス生成部44、および調整部46は、「制御部」の一例である。交流電流制御部38は、「第1導出部」の一例である。交流電圧制御部40は、「第2導出部」の一例である。
【0023】
位相導出部32は、通常運転時に用いられる交流系統の位相θ1を導出する。位相導出部32は、例えば、電圧検出器26により検出された電圧検出値Vに基づいて、交流母線60の3相ごとの電圧の位相を導出し、導出した位相θ1をdq逆変換部42に出力する。
【0024】
位相導出部32は、後述する開放信号が入力された場合に、単独運転時に用いられる出力電力に応じた位相θ2を導出する。位相導出部32は、例えば、電力変換器22が単独運転を行って電圧源として動作する場合の出力周波数f(例えば、東日本であれば50[Hz]、西日本であれば60[Hz])を設定する。位相導出部32は、設定した周波数に基づいて電力変換器22が出力すべき電圧の位相を導出し、導出した位相θ2をdq逆変換部42に出力する。
【0025】
dq変換部34は、位相導出部32により導出された位相情報を用いて、電流検出器24の検出結果である3相の電流検出値を2相の電流検出値に変換し、変換結果である有効分電流Idと無効分電流Iqとを交流電流制御部38に出力する。
【0026】
dq変換部36は、位相導出部32により導出された位相情報を用いて、電圧検出器26の検出結果である3相の電圧検出値を2相の電圧検出値に変換し、変換結果である有効分電圧指令値Vsdと無効分電圧指令値Vsqとを交流電流制御部38に出力する。
【0027】
交流電流制御部38は、通常運転時に用いられる有効分電圧指令値Vcd1および無効分電圧指令値Vcq1を導出する。交流電流制御部38は、dq変換部34により出力された有効分電流Idと、dq変換部36により出力された有効分電圧Vsdと、有効電力指令値Prefとに基づいて、有効分電圧指令値Vcd1を導出する。例えば、交流電流制御部38は、電力変換器22が有効電力指令値Prefに合致する有効電力を出力するように、有効分電圧指令値Vcd1を導出する。
【0028】
交流電流制御部38には、dq変換部34により出力された無効分電流Iqと、dq変換部36により出力された無効分電圧Vsqと、無効電力指令値Qrefとに基づいて、無効分電圧指令値Vcq1を導出する。例えば、交流電流制御部38は、電力変換器22が無効電力指令値Qrefに合致する無効電力を出力するように、無効分電圧指令値Vcq1を導出する。交流電流制御部38は、導出した有効分電圧指令値Vcd1および無効分電圧指令値Vcq1をdq逆変換部42に出力する。
【0029】
交流電圧制御部40は、単独運転時に用いられる有効分電圧指令値Vcd2および無効分電圧指令値Vcq2を導出する。交流電圧制御部40は、dq変換部34により出力された有効分電流Idと、dq変換部36により出力された有効分電圧Vsdと、交流電圧指令値Vsdrefとに基づいて、有効分電圧指令値Vcd2を導出する。例えば、交流電圧制御部40は、電力変換器22が交流電圧指令値Vcdrefに合致する電圧を出力するように、有効分電圧指令値Vcd2を導出する。
【0030】
交流電圧制御部40は、dq変換部34により出力された無効分電流Iqと、dq変換部36により出力された無効分電圧Vsqと、交流電圧指令値Vsqrefとに基づいて、無効分電圧指令値Vcq2を導出する。例えば、交流電圧制御部40は、電力変換器22が交流電圧指令値Vcqrefに合致する交流電圧を出力するように、無効分電圧指令値Vcq2を導出する。交流電圧制御部40は、例えば、開放信号が入力された場合に、有効分電圧指令値Vcd2および無効分電圧指令値Vcq2を導出し、導出結果をdq逆変換部42に出力する。なお、開放信号が入力されていない場合は、有効分電圧指令値Vcd1および無効分電圧指令値Vcq1がdq逆変換部42に出力される。
【0031】
開放信号S(第1信号)は、例えば、系統の異常などが発生した場合に第1遮断部14が開放状態に制御され、電力変換器22が単独系統となる場合に出力される信号である。開放信号Sは、交流系統への他装置からの電力供給が低減した場合に出力される信号である。
【0032】
dq逆変換部42は、電圧指令値と位相に基づいてdq逆変換を行って、2相の電圧指令値を三相の電圧指令値に変換し、変換した三相の電圧指令値をパルス生成部44に出力する。dq逆変換部42は、開放信号Sが入力されていない場合、位相θ1、有効分電圧指令値Vcd1、および無効分電圧指令値Vcq1に基づいてdq逆変換を行う。dq逆変換部42は、開放信号Sが入力された場合、位相θ2、有効分電圧指令値Vcd2、および無効分電圧指令値Vcq2に基づいてdq逆変換を行う。
【0033】
パルス生成部44は、dq逆変換部42により出力された電圧指令値に基づいて、電力変換器22のスイッチング素子に与えるゲート信号を生成し、生成したゲート信号を電力変換器22に出力する。電力変換器22は、パルス生成部44により出力されたゲート信号に基づいて、通常運転時または単独運転時に適した制御を実行する。
【0034】
調整部46は、開放信号Sが入力された場合に、第1設定時間の間、ゲート信号の出力(または生成)を停止させる指示をパルス生成部44に出力する。第1設定時間は、予め設定された第1遮断器14が動作を開始して、第1遮断器14の交流送電線12側の系統と、第1遮断器14の交流母線18側の系統とを電気的に分離させるまでに要すると推定される時間に基づいて設定された時間である。第1設定時間は、予め実験や、シミュレーション等に基づいて設定された時間である。これにより、パルス生成部44は、設定時間の間、ゲート信号の出力(または生成)を停止する。
【0035】
図3は、電力システム1において行われる処理等のタイミングを示すタイミングチャートである。時刻tにおいて、第1遮断器14に対して交流送電線12側の系統において、所定の事象(例えば地絡や漏電などの系統事故)が発生したものとする。この場合、時刻t+1において、第1遮断部14が、開放信号Sを出力すると共に、自装置を開放状態にする開放動作を行う。時刻t+2において、制御装置30の調整部46に開放信号Sが入力された場合、調整部46は、第1設定時間Tの間、パルス生成部44にゲート信号を出力させる動作を停止(または待機)させる。時刻t+3は、第1遮断部14の開放動作が完了し、所定の事象が解消された時刻である。所定の事象が解消されたとは、第1遮断器14が動作して、所定の事象が発生している箇所と、交流母線18とが分離されたことである。
【0036】
時刻t+4は、調整部46に開放信号が入力された時刻から第1設定時間T経過した時刻である。時刻t+4において、パルス生成部44は、有効分電圧指令値Vcd2、および無効分電圧指令値Vcq2に基づいて生成されたゲート信号を電力変換器22に出力する。
【0037】
これにより、電力変換器22は、有効分電圧指令値Vcd2、および無効分電圧指令値Vcq2に基づいて生成されたゲート信号に応じた制御を実行する。この結果、単独運転への移行を円滑に行うことができる。
【0038】
例えば、パルス生成部が、第1設定時間の間、ゲート信号の出力を待機しない場合、電力変換器は、第1遮断部の開放動作が完了する前に、出力したゲート信号に基づく制御を実行することがある。図4は、パルス生成部がゲート信号の出力を待機しない場合の処理等のタイミングを示すタイミングチャートの一例を示す図である。この場合、系統事故などが除去される前に単独運転が開始されることがあり、電力変換器が、系統に電力を供給すると、過電流や過電圧が生じることがある。
【0039】
これに対して、本実施形態の制御装置30は、上記の図3で説明したように、過電流や過電圧を抑制するために、第1設定時間Tの間、ゲート信号を出力することを停止する。この結果、単独運転への移行を円滑に行うことができる。
【0040】
ここで、連系強化や再生可能エネルギー導入促進などを目的として、直流送電システムや周波数変換システムの導入が進んでいる。これらのシステムに適用される、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自己消弧型の半導体素子を利用した自励式の電力変換器は、自身が交流電圧源となって電力を電気機器へ供給することができる。この特徴を生かし、自励式の電力変換器は平常時には指定した有効電力や無効電力を出力するよう運転を行い、系統事故により交流電源が喪失した場合には、自励式の電力変換器が交流電力供給源となり、交流電圧の振幅や位相を維持し、電気機器が必要とする必要な有効電力、無効電力を供給するような運転を行う。例えば、比較対象のシステムは、自励式の電力変換器が交流系統内の遮断器の開放信号を受信することで平常時の運転から交流電力供給源となる運転へ切り替える。
【0041】
しかし、幹線遮断(事故除去)完了までの時間と自励式の電力変換器が開放信号を受信するまでの時間のうち、どちらが早いかは事故発生のタイミング等によって異なる。比較対象のシステムは、事故除去完了までの時間によっては交流系統に過電圧が生じたり自励式の電力変換器に過電流が流れたりして自励式の電力変換器が停止してしまう場合がある。例えば、自励式の電力変換器の信号受信の方が、事故除去よりも早いと交流系統の事故点へと事故電流が流れることで自励式の電力変換器が過電流で停止する。自励式の電力変換器が事故除去と同時に定電圧運転へ移行し、なおかつ、定電圧運転移行前に自励式の電力変換器がインバータ動作で運転していた場合、過渡過電圧の増大により自励式の電力変換器の保護停止に至る。
【0042】
これに対して、本実施形態の制御装置30は、系統事故に起因して交流電源が喪失した場合において、自励式の電力変換器至近の交流系統に自励式の電力変換器自身が交流電力供給源となるよう運転を切り替える場合、自励式の電力変換器を構成する半導体素子の点弧を一時的に所定の時間停止することで、事故除去完了までの時間に関わらず自励式の電力変換器が運転継続できる。
【0043】
具体的には、本実施形態の制御装置30は、第1遮断器14の開放信号の受信後には電力変換器22は一時的に所定の時間ゲートブロック(ゲート信号の出力が停止)するため電力変換器22に過電流が流れることを防止する。単独運転移行前に電力変換器22がインバータ動作で運転し、なおかつ、事故除去と同時に電力変換器22が単独運転に移行する場合、過渡過電圧の増大から変換器自身を保護するために第2遮断器16がトリップ(自動遮断)するが、本実施形態によれば、制御装置30が、ゲートブロックする制御を行うことにより交流母線18へのエネルギー注入を停止させる。すなわち、制御装置30は、開放信号が入力された場合に、第1設定時間が経過した後に交流母線18の電圧が設定値以上にならないようにゲート信号の出力を行うことにより、過電圧を回避させ第2遮断器16のトリップを回避でき、電力変換器22の運転継続性を向上させることができる。
【0044】
以上説明した第1の実施形態によれば、制御装置30の調整部46が、交流系統側に設けられた第1遮断器14を開放状態に制御する開放信号Sが入力された場合、開放信号Sに基づく第1設定時間Tの間、第2電圧指令値に基づくゲート信号の出力を停止することにより、単独運転への移行を円滑に行うことができる。
【0045】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、制御装置30は、開放信号が複数回出力された場合、1回開放信号が出力された場合よりも、待機時間を長くする。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0046】
図5は、第2の実施形態の電力システム1Aの機能構成の一例を示す図である。電力システム1Aは、電力システム1の機能構成に加え、検出部13と、監視装置130とを備える。検出部13は、交流系統における所定の事象を検出する。監視装置130は、検出部13の検出結果に基づいて、所定の事象の発生を監視する。監視装置130は、所定の事象が生じた場合に、第1遮断部14および制御装置30に開放信号S1を出力する。
【0047】
また、監視装置130は、開放信号S1を出力後、第1遮断部14の動作が完了していない場合、開放信号S2を第1遮断部14および制御装置30に出力する。開放信号S2は、例えば、開放信号S1に応じた動作では、所定時間以内に、交流母線18と、交流送電線12とが分離されない場合に出力される信号である。例えば、監視装置130は、第1遮断部14の動作状態または第1遮断部14に含まれる遮断検出部の検出結果を、第1遮断部14から取得し、取得結果に基づいて、第1遮断部14の動作が完了しているか否かを判定する。遮断検出部は、例えば、交流母線18側の電流の検出結果と、交流送電線12側の電流の検出結果とに基づいて、第1遮断部14の動作が完了して、交流母線18と、交流送電線12とが分離されたか否かを検出する。
【0048】
図6は、電力システム1Aにおいて行われる処理等のタイミングを示すタイミングチャートである。時刻t1において、所定の事象が発生したものとする。この場合、時刻t+1において、監視装置130が、例えば、検出部13の検出結果に基づいて、第1遮断部14および制御装置30に開放信号S1を出力する。第1遮断部14が、開放信号S1が入力されると、自装置を開放状態にする開放動作を行う。時刻t1+2において、制御装置30の調整部46が、開放信号S1が入力された場合、調整部46は、第1設定時間
Tの間、パルス生成部44にゲート信号を出力させる動作を停止させる。
【0049】
時刻t1+3において、所定の事象が解消されていない場合、監視装置130は、第1遮断部14および制御装置30に開放信号S2を出力する。第1遮断部14は、開放信号S2が入力されると、自装置を開放状態にする開放動作を再度行う。なお、開放信号S2は、第1設定時間Tが経過する前に出力されてもよい。
【0050】
時刻t1+4において、制御装置30は、開放信号S2が入力されると、開放信号S2が入力されてから第2設定時間T1(<第1設定時間Tまたは≦第1設定時間T)、待機を延長する。そして、制御装置30は、延長した第2設定時間T1が経過した後に、電力変換器22に単独運転を開始させる。なお、制御装置30は、第2設定時間T1、待機を延長することに代えて、時刻t1+2から第2設定時間T1(>第1設定時間T)の間、ゲート信号を出力することを停止してもよい。例えば、制御装置30は、第1設定時間Tが経過したときから第2設定時間T1の計測を開始してもよいし、開放信号S1が入力されたときから第1設定時間Tよりも長い第2設定時間T1の計測を開始してもよい。
【0051】
時刻t1+5において、第1遮断器14の動作が完了して、所定の事象が解消されると、制御装置30は、ゲート信号の出力を開始して、電力変換器22に単独運転を開始させる。
【0052】
このように、1回の開放信号で第1遮断器14が正常に動作して交流送電線12と交流母線18とが分離されない場合であっても、制御装置30は、2回目の開放信号が入力された場合、ゲート信号の出力を停止する待機時間を延長することにより、単独運転への移行を円滑に行うことができる。
【0053】
なお、上記の例では、開放信号S1、S2が入力された場合について説明したが、開放信号S2が入力された後に開放信号S3が入力された場合についても上記の処理と同様にゲート信号を出力するのを待機する時間が延長されてもよい。
【0054】
以上説明した第2の実施形態によれば、制御装置30が、第1信号が入力された後に、第1遮断器14を開放状態に制御する第1信号とは異なる第2信号が入力された場合、第1設定時間が経過した後に、第2電圧指令値に基づくゲート信号の出力を停止してから所定時間後に単独運転に移行させることにより、交流系統における過電流や過電圧を抑制しつつ、単独運転への移行を円滑に行うことができる。
【0055】
(変形例1)
以下、第1の実施形態および第2の実施形態の変形例1について説明する。第1の実施形態および第2の実施形態の変形例1は、第1の実施形態および第2の実施形態の電力変換器106および制御装置112に代えて、二次電池や燃料電池などの直流電圧源を備える。図7は、第1の実施形態および第2の実施形態の変形例1の電力システム1Bの機能構成の一例を示す図である。
【0056】
(変形例2)
以下、第1の実施形態および第2の実施形態の変形例2について説明する。第1の実施形態および第2の実施形態の変形例2は、第1の実施形態および第2の実施形態の機能構成に加え、更に無効電力を調整する調相設備122を備える。図8は、第1の実施形態および第2の実施形態の変形例2の電力システム1Cの機能構成の一例を示す図である。なお、変形例2の電力システム1Cにおいて、電力変換器22の他に、他励式の電力変換器が設けられてもよい。
【0057】
第1遮断部14の開放動作が完了する前に、電力変換器22が単独運転を開始すると、系統事故中に生じる調相設備122の残留電流が事故除去と同時に電力変換器22に流れ込み、電力変換器22が停止する場合がある。これに対して、本実施形態の電力システム1Bによれば電力変換器22が一時的にゲートブロックされることで、調相設備122の残留電流が減衰した後に単独運転が行われるため、残留電流の流入を防止され、電力変換器22の運転継続性が向上する。
【0058】
(変形例3)
以下、変形例3について説明する。変形例3は、変形例1と変形例2とを組み合わせた機能構成を有する。変形例3の電力システム1Dは、例えば、第1の実施形態および第2の実施形態の電力変換器106および制御装置112に代えて、直流電圧源120を備え、更に調相設備122を備える。図9は、第1の実施形態および第2の実施形態の変形例2の電力システム1Dの機能構成の一例を示す図である。
【0059】
(変形例4)
以下、変形例4について説明する。変形例4は、制御装置の構成が、第1の実施形態および第2の実施形態の制御装置の構成と異なる。第1の実施形態および第2の実施形態では、交流電圧制御部40に開放信号が入力された場合に、有効分電圧指令値Vcd2および無効分電圧指令値Vcq2がdq逆変換部42に出力され、開放信号が入力されていない場合は、有効分電圧指令値Vcd1および無効分電圧指令値Vcq1がdq逆変換部42に出力されるものとして説明した。変形例4では、後述する選択調整部47が、dq逆変換部42に出力する電圧指令値を制御する。
【0060】
図10は、変形例4の制御装置30Aの機能構成の一例を示す図である。選択調整部47は、位相導出部32により出力されたθ1またはθ2、交流電流制御部38により出力された有効分電圧指令値Vcd1および無効分電圧指令値Vcq1、交流電圧制御部40により出力された有効分電圧指令値Vcd2および無効分電圧指令値Vcq2、および開放信号を取得する。
【0061】
選択調整部47は、開放信号が入力された場合、第1所定時間T経過後に、単独運転のために、位相θ2、有効分電圧指令値Vcd2、および無効分電圧指令値Vcq2をdq逆変換部42に出力する。これにより、第1所定時間T経過後に単独運転のためのゲート信号が電力変換器22に出力される。なお、選択調整部47は、開放信号が入力されていない場合、通常運転のために、位相θ1、有効分電圧指令値Vcd1、および無効分電圧指令値Vcq1をdq逆変換部42に出力する。
【0062】
また、上記の例に代えて、例えば、交流電流制御部38または交流電圧制御部40は、選択調整部47の指示に基づいて、電圧指令値を導出する処理を実行してもよい。この場合、例えば、選択調整部47は、開放信号が入力されていない場合、交流電流制御部38に電圧指令値を導出させ、開放信号が入力された場合、交流電圧制御部40に電圧指令値を導出させてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、第1遮断器14を開放状態にする信号が入力された場合に、電力変換器22が単独運転を行うタイミングが、第1遮断器14が開放された後であればよく、これを実現するために、上記の制御装置に含まれる機能部のうち、どの機能部がどのように機能するかは問わない。例えば、開放信号の入力に応じて、第1所定時間の間、ゲート信号の生成または出力が待機されるように構成されてもよいし、dq逆変換部42の処理が待機するように構成されてもよい。
【0064】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、交流系統と直流系統とに接続された自励式電力変換器を制御する制御装置であって、前記交流系統と、前記交流系統および前記自励式電力変換器の双方から電力供給可能な負荷とを接続する第1遮断器を開放状態にする第1信号が入力されていない場合、前記交流系統の電圧検出値と、前記交流系統の電流検出値とに基づく第1電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力し、前記第1信号が入力されてから第1設定時間の間、ゲート信号を前記自励式電力変換器に出力せず、前記第1信号が入力されてから第1設定時間が経過した後、前記交流系統の電圧検出値を前記交流系統の電圧指令値に近づけるように導出される第2電圧指令値に基づくゲート信号を前記自励式電力変換器に出力する制御部を持つことにより、単独運転への移行を円滑に行うことができる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
10‥交流電圧源、12‥交流送電線、14‥第1遮断部、16‥第2遮断部、18‥交流母線、22‥電力変換器、24‥電流検出器、26‥電圧検出器、30‥制御装置、32‥位相導出部、34‥dq変換部、36‥dq変換部、38‥交流電流制御部、40‥交流電圧制御部、42‥dq逆変換部、44‥パルス生成部、46‥調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10