(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】保護リレー装置
(51)【国際特許分類】
H02H 3/46 20060101AFI20220704BHJP
H02H 3/06 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H02H3/46 D
H02H3/06 C
(21)【出願番号】P 2018225261
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 哲
(72)【発明者】
【氏名】石原 祐二
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴章
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆文
(72)【発明者】
【氏名】中村 正
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-121451(JP,A)
【文献】特開平11-018276(JP,A)
【文献】特開平09-200963(JP,A)
【文献】特公昭48-039113(JP,B2)
【文献】実公昭46-033796(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 1/00-3/07
3/32-3/52
99/00
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統における送電線に供給される電力に関する情報を取得する電力情報取得部と、
前記電力情報取得部により取得された情報に基づいて、前記電力における周波数が低下した場合に、前記送電線から電力の供給を受ける複数の負荷の各々に対応して設けられ、前記送電線と当該負荷とを接続又は遮断する遮断器を、前記周波数が回復するまで順次遮断する遮断部と、
前記周波数が低下した後に前記周波数が回復した場合、前記遮断部による前記遮断器の各々を遮断する遮断条件を
、より成立しやすい側に変更する遮断条件変更部と、
を備える保護リレー装置。
【請求項2】
前記遮断部は、
前記周波数が低下しているか否かを、前記周波数の下限値を示す周波数下限値に基づいて判定する周波数判定部と、
前記周波数判定部による判定結果に基づいて、前記周波数が低下している状態が継続している時間を測定する時間測定部と、
前記周波数が低下してから前記複数の遮断器の各々に遮断信号を出力するまでの時間として前記複数の遮断器ごとに定められた出力時間に基づいて、前記複数の遮断器のうち特定の遮断器に遮断信号を出力する遮断信号出力部と、を有し、
前記遮断条件変更部は、
前記周波数が低下してから前記周波数が回復するまでの時間に応じて、前記遮断条件を変更するか否かを判定する変更判定部と、
前記変更判定部により前記遮断条件を変更すると判定される場合に、前記周波数下限値を、より大きい値に変更する下限値変更部と、を有する、
請求項1に記載の保護リレー装置。
【請求項3】
前記遮断条件変更部は、前記遮断信号出力部により前記複数の遮断器のうち一部の遮断器に遮断信号が出力された後に、前記周波数判定部により前記周波数が低下していないと判定された場合に、前記遮断条件を変更する、
請求項2に記載の保護リレー装置。
【請求項4】
前記遮断部は、
前記周波数が低下しているか否かを、前記周波数の下限値を示す周波数下限値に基づいて判定する周波数判定部と、
前記周波数判定部による判定結果に基づいて、前記周波数が低下している状態が継続している時間を測定する時間測定部と、
前記周波数が低下してから前記複数の遮断器の各々に遮断信号を出力するまでの時間として前記複数の遮断器ごとに定められた出力時間に基づいて、前記複数の遮断器のうち特定の遮断器に遮断信号を出力する遮断信号出力部と、を有し、
前記遮断条件変更部は、
前記周波数が低下してから前記周波数が回復するまでの時間に応じて、前記遮断条件を変更するか否かを判定する変更判定部と、
前記変更判定部により前記遮断条件を変更すると判定される場合に、前記複数の遮断器の各々における前記出力時間を、より小さい時間に変更する出力時間変更部と、を有する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の保護リレー装置。
【請求項5】
前記出力時間変更部は、前記複数の遮断器のうち、前記遮断信号出力部により遮断信号が出力されていないと判定される遮断器における前記出力時間を、より小さい時間に変更する、
請求項4に記載の保護リレー装置。
【請求項6】
前記出力時間変更部は、前記変更判定部により前記遮断条件を変更すると判定される場合に、前記複数の遮断器の各々における前記出力時間を、前記周波数判定部において前記周波数が低下したと判定されてから前記周波数が回復したと判定されるまでの時間を減少させた値に変更する、
請求項4又は請求項5に記載の保護リレー装置。
【請求項7】
前記周波数が低下しているか否かを、前記遮断部における前記周波数の下限値を示す周波数下限値よりも大きい予備周波数下限値に基づいて判定する予備周波数判定部と、
前記予備周波数判定部による判定結果に基づいて、前記周波数が低下している状態が継続している時間を測定する予備時間測定部と、
前記周波数が低下してから前記複数の遮断器の各々に遮断信号を出力するまでの時間として前記複数の遮断器ごとに定められた予備出力時間に基づいて、前記複数の遮断器のうち特定の遮断器に遮断信号を出力する予備遮断信号出力部と、
を有する予備遮断部を更に備え、
前記遮断条件変更部は、
前記周波数が低下してから前記周波数が回復するまでの時間に応じて、前記遮断条件を変更するか否かを判定する変更判定部と、
前記変更判定部により前記遮断条件を変更すると判定される場合に、前記予備遮断部を起動させる予備起動制御部と、を有する、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の保護リレー装置。
【請求項8】
前記予備出力時間は、前記遮断部における前記周波数が低下してから前記複数の遮断器の各々に遮断信号を出力するまでの時間として前記複数の遮断器ごとに定められた出力時間よりも小さい時間である、
請求項7に記載の保護リレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、保護リレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の保護を目的とした保護リレー装置に一つとして、電力系統の周波数が低下した場合に、電力系統に接続される負荷を遮断することにより周波数の回復を図るUFリレー(Under Frequency Relay)装置がある。UFリレー装置においては、一旦低下した周波数が回復した後、再度、電力系統の周波数が低下してしまうと、負荷を遮断するタイミングが遅れてしまう場合があり、低下した周波数の回復が遅くなる。または場合によっては回復させることが困難となる要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、一旦低下した周波数が回復した後、再度、電力系統の周波数が低下した場合に、負荷を遮断するタイミングが遅れないように制御することができる保護リレー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の保護リレー装置は、電力情報取得部と、遮断部と、遮断条件変更部と、を持つ。前記電力情報取得部は、電力系統における送電線に供給される電力に関する情報を取得する。前記遮断部は、前記電力情報取得部により取得された情報に基づいて、前記電力における周波数が低下した場合に、前記送電線から電力の供給を受ける複数の負荷の各々に対応して設けられ、前記送電線と当該負荷とを接続又は遮断する遮断器を、前記周波数が回復するまで順次遮断する。前記遮断条件変更部は、前記周波数が低下した後に前記周波数が回復した場合、前記遮断部による前記遮断器の各々を遮断する遮断条件を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態の保護リレー装置20が適用される保護リレーシステム1の構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態の保護リレー装置20の構成を示すブロック図。
【
図3】第1の実施形態の遮断部25の構成を示すブロック図。
【
図4】第1の実施形態の周波数下限値記憶部256に記憶される情報の構成を示す図。
【
図5】第1の実施形態の出力時間記憶部258に記憶される情報の構成を示す図。
【
図6】第1の実施形態の保護リレー装置20の動作の流れを示すフローチャート。
【
図7】第2の実施形態の保護リレー装置20Aの構成を示すブロック図。
【
図8】第2の実施形態の出力時間変更部29の動作を説明する図。
【
図9】第3の実施形態の保護リレー装置20Aの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の保護リレー装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態の保護リレー装置20が適用される保護リレーシステム1の構成を示すブロック図である。保護リレーシステム1は、例えば、電力系統に設けられる送電線2と、計器用変成部10と、保護リレー装置20と、複数の負荷40(負荷40-1、40-2、…、40-N)と、複数の負荷40の各々に対応して設けられる複数の遮断器30(遮断器30-1、30-2、…、30-N)とを備える。ここで、Nは任意の自然数である。
【0009】
図1では、電力系統に一つの保護リレーシステム1が設けられる場合を例示したが、電力系統に複数の保護リレーシステム1が設けられていてもよい。
【0010】
計器用変成部10は、送電線2に供給される電力に関する測定値を測定する。計器用変成部10は、例えば、送電線2に供給される電力の電圧を、抵抗により測定可能な電圧に降圧させ、降圧後の電圧波形(アナログ波形)を保護リレー装置20に出力する。保護リレー装置20は、計器用変成部10により測定された電圧値に基づいて、遮断器30の各々に遮断信号を出力する。遮断信号は、遮断器30を遮断するための信号である。遮断器30は、送電線2と負荷40とに接続され、保護リレー装置20の制御により、送電線2と負荷40とを接続、又は遮断する。負荷40は、例えば、需要家の負荷であり、遮断器30が接続状態である場合に送電線2から電力の供給を受けるが、遮断器30が遮断状態である場合には送電線2から電力が供給されずに停電状態となる。
【0011】
図2は、第1の実施形態の保護リレー装置20の構成を示すブロック図である。保護リレー装置20は、例えば、電力情報取得部22と、UFリレー回路24と、遮断条件変更部26とを備える。保護リレー装置20を構成するこれらの機能部は、例えば、CPUなどのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。
【0012】
電力情報取得部22は、計器用変成部10より、電力系統における送電線2に供給される電力に関する情報を取得し、取得した情報をUFリレー回路24に出力する。電力に関する情報は、電力に関係する情報であって、例えば、電力値、電圧値、電流値などである。
【0013】
UFリレー回路24は、例えば、複数の遮断部25(遮断部25-1、25-2、…、25-M)を備える。ここで、Mは任意の自然数である。遮断部25は、電力情報取得部22により取得された電圧値の周波数が低下した場合に、遮断器30の各々を、周波数が回復するまで順次遮断する。
【0014】
遮断部25は、電源のトリップなどにより送電線2に供給される電力の周波数が低下した場合に、遮断器30を遮断して負荷40への電力の供給を停止することにより、周波数を発電側で制御できる範囲にまで回復させる。
【0015】
遮断部25は、周波数の動揺による連鎖的な電源のトリップや大規模な停電を防ぐため、何段階かの時限を設定し、各々の時限で周波数が低下している状態が継続しており、周波数が回復していない場合には順次、遮断器30を遮断する。遮断部25は、周波数が回復した時点で、遮断器30の遮断を止める。
【0016】
遮断部25の各々は、互いに異なる遮断条件により、遮断器30に遮断信号を出力する。遮断条件は、遮断器30を遮断するための条件であって、例えば、周波数が低下していると判定する周波数の値(周波数下限値)や、周波数が低下してから遮断器30を遮断するまでの時限(出力時間)などである。
【0017】
例えば、基準とする周波数が50[Hz]である場合、遮断部25-1は周波数が49[Hz]未満となった場合に周波数が低下したと判定し、遮断部25-2は周波数が48.5[Hz]未満となった場合に周波数が低下したと判定する。また、周波数が低下したと判定された場合、遮断部25-1は周波数が低下した状態が1秒間継続した場合に30-1に遮断信号を出力し、2秒間継続した場合に30-2に遮断信号を出力する。遮断部25-2は周波数が低下した状態が0.5秒間継続した場合に30-1に遮断信号を出力し、0.8秒間継続した場合に30-2に遮断信号を出力する。この場合、遮断部25-1、及び25-2の何れか一方が、より早く遮断器30-1における遮断条件を充足した時点において遮断器30-1に遮断信号が出力され、遮断器30が遮断される。
【0018】
ここで、従来の遮断部25においては、周波数が低下した後に回復した場合において、再度、周波数が低下することが想定されていなかった。このため、再度の周波数の低下が発生した場合、負荷を遮断するタイミング(遮断信号を出力するタイミング)が遅れてしまう場合があった。
【0019】
例えば、従来の遮断部25において、一回目に周波数が低下した際に、複数の遮断器30のうち一部の遮断器30が遮断されることにより周波数が回復したとする。その後、当該一部の遮断された遮断器30が接続状態に戻されて復電される前、つまり、一部の遮断器30が遮断された状態において、二回目に周波数が低下すると、遮断部25は、すでに遮断状態にある遮断器30と比較して時限の遅い遮断器30を遮断せざるを得ない。この場合、遮断部25が遮断器30に遮断信号を出力するまでの時限は、一回目に周波数が低下した場合と比較して遅れてしまう。遮断器30に遮断信号を出力するタイミングが遅れてしまうと、遅れた分、周波数の低下が進んでしまい、遮断器30を遮断しても、周波数を回復させる効果が得られなくなる可能性があった。
【0020】
この対策として、本実施形態では、遮断条件変更部26が、周波数が低下した後に回復した場合、遮断部25による遮断器30の各々を遮断する遮断条件を変更する。これにより、二回目に周波数が低下した場合を想定して、遮断信号を出力するタイミングが遅れないようにする。
【0021】
遮断条件変更部26は、例えば、変更判定部27と、下限値変更部28とを備える。変更判定部27は、周波数が低下してから回復するまでの時間に応じて、遮断条件を変更するか否かを判定する。変更判定部27は、例えば、周波数が低下してから回復するまでの時間、つまり周波数が低下した状態が継続した時間に応じて、後述する出力時間記憶部258を参照する。
【0022】
ここで、遮断条件変更部26により周波数が低下したと判定する閾値は、UFリレー250により周波数が低下したと判定する閾値(周波数下限値)と同じ値である必要はない。例えば、遮断条件変更部26は、保護リレーシステム1における周波数下限値として設定され得る値のうち、最も大きな値を、周波数が低下したと判定する閾値として用いてよい。
【0023】
或いは、遮断条件変更部26は、遮断部25-1~25-Mの各々に設けられたUFリレー250の周波数下限値のうち最も大きな値を、周波数が低下したと判定する閾値として用いてよい。
【0024】
或いは、遮断部25-1~25-Mの各々に設けられたUFリレー250の周波数下限値ごとに、周波数が低下したか否かを判定するようにしてもよい。
【0025】
変更判定部27は、周波数が低下した状態が継続した時間と出力時間記憶部258に記憶されている遮断器30の各々の出力時間とを比較することにより、遮断器30の各々が遮断状態であるか、接続状態であるかを判定する。変更判定部27は、遮断器30の各々のうち、一部の遮断器30が遮断状態であり、残りの遮断器30が接続状態であると判断する場合、遮断条件を変更すると判定する。一方、変更判定部27は、全ての遮断器30が一律に遮断状態又は接続状態であると判断する場合、遮断条件を変更しないと判定する。
【0026】
なお、後述する、電力系統において複数の保護リレーシステム1が設けられる場合など、条件によっては、変更判定部27は、全ての遮断器30が接続状態であると判断する場合であっても、遮断条件を変更する場合がある。
【0027】
上記においては、変更判定部27が、周波数が低下した状態が継続した時間に基づいて、遮断器30の各々が遮断状態であるか、接続状態であるかを判定する場合を例示して説明したが、これに限定されない。例えば、変更判定部27は、遮断信号出力部254による遮断器30への遮断信号を出力した結果に基づいて、遮断器30の各々が遮断状態であるか、接続状態であるかを判定するようにしてもよい。
【0028】
下限値変更部28は、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、周波数下限値を、より大きい値に変更する。下限値変更部28は、例えば、一回目に周波数が低下した際には周波数下限値が49[Hz]であった場合、二回目以降では、周波数下限値を、一回目の周波数下限値よりも大きい49.5[Hz]にする。これにより、二回目以降では、周波数が低下したと判定される時点が早まり、遮断器30に遮断信号が出力されるまでの時間を早めることができる。下限値変更部28は、より大きな値に変更した周波数下限値を、後述する周波数下限値記憶部256に記憶させる。
【0029】
なお、下限値変更部28は、基準とする周波数(例えば、50[Hz])を超えない範囲において、二回目以降の周波数下限値を、一回目の周波数下限値よりも大きい値に設定する。
【0030】
遮断条件変更部26は、例えば、一回目に周波数が低下した際には周波数が49[Hz]未満となった場合に周波数が低下したと判定された場合、二回目以降では、周波数が49.5[Hz]未満となった場合に周波数が低下したと判定されるようにする。これにより、二回目以降では、周波数が低下したと判定される時点が早まり、遮断器30に遮断信号が出力されるまでの時間を早めることができる。
【0031】
図3は、第1の実施形態の遮断部25の構成を示すブロック図である。遮断部25は、例えば、UFリレー250と、複数のタイマー252(タイマー252-1、252-2、…、252-N)と、複数のタイマー252の各々に対応して設けられる複数の遮断信号出力部254(遮断信号出力部254-1、254-2、…、254-N)と、周波数下限値記憶部256と、出力時間記憶部258とを備える。ここで、UFリレー250は、「周波数判定部」の一例である。タイマー252は、「時間測定部」の一例である。
【0032】
UFリレー250は、送電線2に供給される電力の周波数が低下しているか否かを、周波数下限値記憶部256に記憶される周波数下限値に基づいて判定する。UFリレー250には、電力情報取得部22により取得された送電線2に供給される電力に関する情報が入力される。UFリレー250は、電力情報取得部22からの情報に基づいて、例えば、送電線2に供給される電力における電圧の周波数を検出する。UFリレー250は、周波数下限値記憶部256を参照し、検出した周波数と自身のUFリレー250に設定された周波数下限値とを比較する。UFリレー250は、検出した周波数が周波数下限値未満である場合、周波数が低下したと判定する。UFリレー250は、判定結果をタイマー252に出力する。
【0033】
タイマー252は、UFリレー250による判定結果に基づいて、周波数が低下している状態が継続している時間を測定する。タイマー252は、出力時間記憶部258を参照し、周波数が低下している状態が継続している時間と、自身のタイマー252に設定された出力時間とを比較する。タイマー252は、周波数が低下している状態が継続している時間が出力時間に達している場合、その出力時間に対応する遮断器30に遮断信号を出力すると判定し、その旨の命令を示す信号を遮断信号出力部254に出力する。
【0034】
遮断信号出力部254は、タイマー252から遮断器30に遮断信号を出力する旨の命令を示す信号を取得した場合、遮断器30に遮断信号を出力する。周波数下限値記憶部256は、UFリレー250ごとの周波数下限値を記憶する。出力時間記憶部258は、UFリレー250ごとに、当該UFリレー250に接続するタイマー252の各々における出力時間を記憶する。
周波数下限値記憶部256、及び出力時間記憶部258は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどにより実現される。周波数下限値記憶部256はUFリレー250により参照される。また、出力時間記憶部258はタイマー252により参照される。
【0035】
図4は、第1の実施形態の周波数下限値記憶部256に記憶される周波数下限値を示す情報の構成を示す図である。
図4に示すように、周波数下限値を示す情報には、UFリレー識別番号と、周波数下限値との項目を備える。UFリレー識別番号には、保護リレー装置20に設けられた複数のUFリレー250を一意に識別する番号が示される。周波数下限値には、UFリレー識別番号に対応するUFリレー250における周波数下限値が示される。
【0036】
図5は、第1の実施形態の出力時間記憶部258に記憶される出力時間を示す情報の構成を示す図である。
図5に示すように、出力時間を示す情報には、UFリレー識別番号と、タイマー識別番号と、遮断器識別番号と、出力時間との項目を備える。UFリレー識別番号には、UFリレー250を一意に識別する番号が示される。タイマー識別番号には、UFリレー識別番号に対応するUFリレー250に接続される複数のタイマー252を一意に識別する番号が示される。遮断器識別番号には、複数のタイマー252の各々に接続される遮断器30を一意に識別する番号が示される。出力時間には、UFリレー識別番号に対応するUFリレー250において、遮断器識別番号に対応する遮断器30に遮断信号を出力するまでの時間が示される。
【0037】
図6は、第1の実施形態の保護リレー装置20の動作の流れを示すフローチャートである。
保護リレー装置20は、電力情報取得部22により送電線2に供給される電力の電圧を示す情報を取得する(ステップS1)。電力情報取得部22は取得した電圧を示す情報をUFリレー回路24に出力する。
【0038】
UFリレー回路24は、遮断部25の各々に設けられたUFリレー250により、送電線2に供給される電力の周波数が低下しているか否かを判定する(ステップS2)。UFリレー250は、判定結果をタイマー252に出力する。
【0039】
送電線2に供給される電力の周波数が低下していると判定された場合、タイマー252は、周波数が低下した状態が継続している時間を測定し、測定した時間が、予め定められた所定の出力時間に達したか否かを判定する(ステップS3)。タイマー252は、例えば、出力時間記憶部258を参照して予め定められた所定の出力時間を取得する。
【0040】
周波数が低下した状態が継続している時間が、予め定められた所定の出力時間に達した場合、遮断信号出力部254は、対応する遮断器30に遮断信号を出力して、遮断器30を遮断させる(ステップS4)。そして、保護リレー装置20は、ステップS1に戻る。
【0041】
一方、ステップS2において、UFリレー回路24により送電線2に供給される電力の周波数が低下していないと判定された場合、変更判定部27は、周波数が低下した後に回復したか否かを判定する(ステップS5)。
【0042】
周波数が低下した後に回復した場合、変更判定部27は、周波数が低下してから回復するまでの時間に応じて、遮断条件を変更するか否かを判定する(ステップS6)。変更判定部27は、例えば、保護リレー装置20が制御する複数の遮断器30のうち、一部の遮断器30が遮断され、残りの遮断器30が接続状態であると判断する場合、遮断条件を変更すると判定する。一方、変更判定部27は、保護リレー装置20が制御する複数の遮断器30の全てが遮断されているか、又は接続状態であると判断する場合、遮断条件を変更しないと判定する。
【0043】
遮断条件を変更すると判定された場合、下限値変更部28は、周波数下限値をより大きな値に変更する(ステップS7)。
【0044】
一方、ステップS3において、周波数が低下した状態が継続している時間が、予め定められた所定の出力時間に達していない場合、ステップS5において、送電線2に供給される電力の周波数は、周波数が一旦低下した後に回復したものでないと判定される場合、ステップS6において遮断条件を変更しないと判定される場合の各々の場合には、保護リレー装置20は、ステップS1に戻る。
【0045】
以上説明したように、第1の実施形態の保護リレー装置20は、周波数が低下した後に回復した場合、遮断部25による遮断器30の各々を遮断する遮断条件を変更する遮断条件変更部26を備える。これにより、第1の実施形態の保護リレー装置20は、周波数が低下し、遮断器30を遮断することにより周波数を回復させた場合において、遮断した遮断器30を接続状態に戻して復電される前に、再度、周波数が低下した場合であっても、変更した後の遮断条件により遮断器30の各々を遮断することができるために、負荷40を遮断するタイミングが遅れないように制御することができる。
【0046】
また、第1の実施形態の保護リレー装置20では、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、周波数下限値を、より大きい値に変更する下限値変更部28を備えるため、一回目に周波数が低下した後に回復した場合に、周波数下限値をより大きな値に変更することができ、二回目以降に周波数が低下した場合に、周波数の低下をより早く検知することができるために、負荷40を遮断するタイミングが遅れないように制御することができる。
【0047】
また、第1の実施形態の保護リレー装置20では、遮断条件変更部26は、遮断信号出力部254により複数の遮断器30のうち一部の遮断器30に遮断信号が出力された後に、UFリレー250(周波数判定部)により周波数が低下していないと判定された場合に、遮断条件を変更するようにしてもよい。これにより、第1の実施形態の保護リレー装置20では、一部の遮断器30が遮断されたことを確実に認識した上で遮断条件を変更することができ、二回目の周波数の低下に備えることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、遮断条件を変更する場合に、周波数が低下してから遮断器30を遮断するまでの時限(出力時間)を変更する点において、上述した実施形態と相違する。以下の説明では、上述した実施形態と相違する構成について説明し、上述した実施形態と同等の構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図7は、第2の実施形態の保護リレー装置20Aの構成を示すブロック図である。保護リレー装置20Aは、例えば、遮断条件変更部26Aを備える。遮断条件変更部26Aは、出力時間変更部29を備える。
【0050】
出力時間変更部29は、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、複数の遮断器30の各々における出力時間を、より小さい時間に変更する。この場合、出力時間変更部29は、複数の遮断器30の各々における出力時間を、少なくとも遮断条件を変更する前の出力時間より小さい値に変更すればよく、例えば、複数の遮断器30の各々における出力時間を、一律、変更する前の出力時間より所定の時間(例えば、0.5[sec])短縮させる。
【0051】
出力時間変更部29は、複数の遮断器30のうち、遮断信号出力部254により遮断信号が出力されていない(つまり、遮断状態ではなく、接続状態にある)と判定される遮断器30における出力時間を、より小さい時間に変更するようにしてもよい。
【0052】
この場合、例えば、変更判定部27は、周波数が低下した状態が継続した時間に応じて、遮断器30の各々が遮断状態であるか、接続状態であるかを判定し、判定結果を、遮断条件を変更する旨の通知と共に、出力時間変更部29に出力する。
【0053】
出力時間変更部29は、変更判定部27により遮断条件を変更する旨の通知を取得した場合、遮断器30の各々が遮断状態であるか、接続状態であるかを判定した判定結果に基づいて、接続状態にある遮断器30の出力時間を変更する。出力時間変更部29は、例えば、接続状態にある遮断器30のうち、最も出力時間が小さい遮断器30の出力時間を、すでに遮断済みの遮断器30のうち最も出力時間が小さい遮断器30の出力時間に変更する。
【0054】
ここで、遮断条件を変更する前において、遮断器30-1における出力時間がT1[sec]、であり、遮断器30-2における出力時間がT2[sec]であり、…、遮断器30-Nにおける出力時間がT(N)[sec]である場合を考える。
【0055】
この場合、例えば、出力時間変更部29は、遮断器30-1のみが遮断され、残りの遮断器30-2、…、遮断器30-Nが接続された状態である場合には、遮断器30-2における出力時間をT2[sec]からT1[sec]に変更する。そして、出力時間変更部29は、遮断器30-K(但し、Kは2<K<Nを満たす任意の自然数)における出力時間をT(K)[sec]からT(K-1)[sec]に変更する、というように順次変更し、最終的に、遮断器30-Nにおける出力時間をT(N)[sec]からT(N-1)[sec]に変更する。この場合、出力時間変更部29は、すでに遮断された遮断器30-1における出力時間については、T1[sec]のまま変更しない。
【0056】
或いは、出力時間変更部29は、遮断器30-1及び30-2が遮断され、残りの遮断器30-3、…、遮断器30-Nが接続された状態である場合には、遮断器30-3における出力時間をT3[sec]からT1[sec]に変更する。そして、出力時間変更部29は、遮断器30-K(但し、Kは3<K<Nを満たす任意の自然数)における出力時間をT(K)[sec]からT(K-2)[sec]に変更する、というように順次変更し、最終的に、遮断器30-Nにおける出力時間をT(N)[sec]からT(N-2)[sec]に変更する。この場合、出力時間変更部29は、すでに遮断された遮断器30-1及び30-2における出力時間については、遮断器30-1における出力時間をT1[sec]のまま、遮断器30-2における出力時間をT2[sec]のまま、として変更しない。
【0057】
また、出力時間変更部29は、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、複数の遮断器30の各々における出力時間を、UFリレー250において周波数が低下したと判定されてから周波数が回復したと判定されるまでの時間を減少させた値に変更するようにしてもよい。
【0058】
例えば、変更判定部27は、周波数が低下した状態が継続した時間に応じて、遮断部25の各々におけるUFリレー250において周波数が低下したと判定されてから回復するまでの時間を判定し、その判定結果を、遮断条件を変更する旨の通知と共に、出力時間変更部29に出力する。
【0059】
出力時間変更部29は、変更判定部27により遮断条件を変更する旨の通知を取得した場合、遮断器30の各々が遮断状態であるか、UFリレー250において周波数が低下したと判定されてから回復するまでの時間を判定した判定結果に基づいて、接続状態にある遮断器30の出力時間を変更する。
【0060】
図8は、第2の実施形態における出力時間変更部29が行う処理を説明する図である。
図8の横軸は時間、縦軸は送電線2に供給される電力の周波数を示す。
図8の例では、周波数が、時間taにおいて周波数f(ta)、時間tbにおいて周波数f(tb)、時間tcにおいて周波数f(tc)、時間tdにおいて周波数f(td)と変化している。また、周波数f(ta)、及びf(td)は基準周波数f0、周波数f(tb)、及びf(tc)はUFリレー250における周波数下限値FLである。
【0061】
この場合、UFリレー250により周波数が低下したと判定される周波数は、周波数f(tb)から周波数f(tc)までの間の周波数である。この場合、周波数が低下して周波数が回復したと判定されるまでの時間は、UFT(=tc-tb)である。
【0062】
そして、この場合、出力時間変更部29は、周波数が回復した後、UFリレー250に接続されるタイマー252の各々における出力時間を、一律、UFT(=tc-tb)短縮する。なお、出力時間変更部29は、出力時間を変更した後の値が負(マイナス)の値となる場合には、例えば、出力時間を0(ゼロ)[sec]とし、変更後の出力時間がマイナスの値とならないようにする。
【0063】
以上説明したように、第2の実施形態における保護リレー装置20Aでは、出力時間変更部29を備える。出力時間変更部29は、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、複数の遮断器30の各々における出力時間を、変更する前より小さい時間に変更する。これにより、第2の実施形態における保護リレー装置20Aでは、二回目に周波数が低下した場合であっても、周波数が低下したと判定されてから遮断器30に遮断信号が出力されるまでの時間を、出力時間を変更しない場合よりも、早めることができ、周波数がさらに低下してしまう前に回復させることが可能となる。
【0064】
また、第2の実施形態の保護リレー装置20Aでは、出力時間変更部29は、複数の遮断器30のうち、遮断信号出力部254により遮断信号が出力されていないと判定される遮断器30における出力時間を、変更する前より小さい時間に変更するようにしてもよい。これにより、第2の実施形態における保護リレー装置20Aでは、二回目に周波数が低下した場合に遮断され得る遮断器30について出力時間を変更し、二回目に周波数が低下した場合に遮断され得ない遮断器30について出力時間を変更しないようにすることができ、二回目に周波数が低下した場合における対策を効率よく行うことが可能となる。
【0065】
また、第2の実施形態の保護リレー装置20Aでは、出力時間変更部29は、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、複数の遮断器30の各々における出力時間を、遮断部25の各々に設けられるUFリレー250において周波数が低下したと判定されてから周波数が回復したと判定されるまでの時間を減少させた値に変更するようにしてもよい。これにより、第2の実施形態における保護リレー装置20Aでは、一回目に周波数が低下した際に遮断された遮断器30に対応するタイマー252に設定されていた出力時間のうち最も遅い時間とほぼ同じ時間だけ、出力時間を短縮させることができる。このため、二回目に周波数が低下した場合であっても、一回目に周波数が低下した場合と同様か、それよりも早く、残りの遮断器30を遮断することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、説明する。本実施形態では、UFリレー回路24が予備の遮断部25(予備遮断部25B)(
図9参照)を備える点において、上述した実施形態と相違する。
【0067】
本実施形態は、電力系統に複数の保護リレーシステム1が設けられる場合に適用されてよい。
【0068】
従来、電力系統に設けられた複数の保護リレーシステム1では、互いに異なる周波数下限値及び出力時間が用いられる。つまり、電力系統において、周波数が基準周波数f0よりも低下した場合、第1の保護リレーシステム1では全ての遮断器30が遮断されるが、第2の保護リレーシステム1においては全ての遮断器30が接続状態である場合が発生し得る。
【0069】
例えば、一回目に周波数が低下した場合において、第1の保護リレーシステム1における全ての遮断器30が遮断されることにより周波数が回復したとする。この場合、一回目と同等の低下幅で、二回目に周波数が低下すると、第1の保護リレーシステム1が既に全ての遮断器30を遮断してしまったために、周波数の回復を図る処理を行うことができないにもかかわらず、第2の保護リレーシステム1においては、二回目の周波数の変化が、第2の保護リレーシステム1に設定された周波数下限値未満とならないために、遮断器30を遮断するに至らない。このため、二回目に周波数が低下した場合に対応が遅れてしまう場合があった。
【0070】
この対策として、本実施形態では、第2の保護リレーシステム1では遮断器30に遮断信号を出力していないが、周波数における低下の度合いと、周波数が低下した状態が継続した時間とから、第1の保護リレーシステム1が、すでに全部又は一部の遮断器30に遮断信号を出力したと推測される場合、第2の保護リレーシステム1における予備遮断部25Bを起動させる。これにより、第2の保護リレーシステム1では予備遮断部25Bを起動させる前には遮断器30を遮断するに至らない周波数の変化に対しても、遮断器30に遮断信号を出力できるようになり、電力系統の全体として、周波数の低下に適切に対応し周波数の回復を図ることが可能となる。
【0071】
図9は、第3の実施形態の保護リレー装置20Bの構成を示すブロック図である。保護リレー装置20Bは、例えば、UFリレー回路24Bと、遮断条件変更部26Bとを備える。UFリレー回路24Bは、予備遮断部25Bを備える。遮断条件変更部26Bは、予備起動制御部126を備える。
【0072】
予備の遮断部25は、二回目に周波数が低下した場合に備えて起動される機能部であって、予備遮断部25Bは、遮断部25と同様の構成を備え、二回目に周波数が低下した場合に備えて起動される。予備遮断部25Bは、遮断部25と比較して、感度よく周波数の低下に反応する。ここで、感度よく周波数の低下に反応するとは、周波数の低下をより早く検知することであり、例えば、遮断部25に設定された周波数下限値よりも大きな閾値(後述する予備周波数下限値)により周波数が低下したか否かを判定したり、遮断部25に設定された出力時間をよりも小さな時間(後述する予備出力時間)で遮断器30に遮断信号を出力したりすることをいう。
【0073】
予備遮断部25Bは、例えば、予備UFリレー250Bと、予備タイマー252Bと、予備遮断信号出力部254Bとを備える。ここで、予備UFリレー250Bは、「予備周波数判定部」の一例である。また、予備タイマー252Bは、「予備時間測定部」の一例である。
【0074】
予備UFリレー250Bは、遮断部25におけるUFリレー250に対応し、周波数が低下しているか否かを、遮断部25におけるUFリレー250に設定される周波数下限値よりも大きい予備周波数下限値に基づいて判定する。
【0075】
予備タイマー252Bは、遮断部25におけるタイマー252に対応し、予備UFリレー250Bによる判定結果に基づいて、周波数が低下している状態が継続している時間を測定する。
【0076】
予備遮断信号出力部254Bは、遮断部25における遮断信号出力部254に対応し、周波数が低下してから複数の遮断器30の各々に遮断信号を出力するまでの時間として複数の遮断器30ごとに定められた予備出力時間に基づいて、複数の遮断器30のうち特定の遮断器30に遮断信号を出力する。
【0077】
予備起動制御部126は、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、予備遮断部25Bを起動させる。
【0078】
以上説明したように、第3の実施形態における保護リレー装置20Bは、予備遮断部25Bと予備起動制御部126を備える。予備遮断部25Bは、遮断部25よりも感度よく周波数の低下に反応するように設定され、変更判定部27により遮断条件を変更すると判定される場合に、予備起動制御部126により起動される。これにより、二回目に周波数が低下した場合であっても、一回目と同様に、適切なタイミングで遮断器30に遮断信号を出力させることができる。
【0079】
特に、周波数の変化に伴い、電力系統における一部の遮断器30が遮断され、負荷40に電力が供給されなくなると、電力系統における総需要が変化し、一旦回復した周波数が、再度急激に変化することが想定される。このような急激な変化には、一回目に周波数が低下した場合よりも、より早い対応が必要となる可能性がある。このため、遮断条件として、特に、出力時間や、複数の遮断器30を順次遮断する際の出力時間の時間差を短縮させることが望ましい。こうすることで、周波数の急激な変化に対し、短時間により多くの負荷40を電力系統から遮断することができるために、より早く周波数を回復させることが可能となる。
【0080】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、周波数が低下した後に回復した場合において、遮断条件を変更する遮断条件変更部26を備えことにより、再度、周波数が低下した場合であっても、変更した後の遮断条件により遮断器30の各々を遮断することができるために、負荷40を遮断するタイミングが遅れないようにすることが可能となる。
【0081】
なお、上記では、遮断条件を変更する場合についてのみ説明したが、上述した実施形態の保護リレー装置20において、変更した遮断条件を元に戻す処理が行われてもよい。例えば、保護リレー装置20は、遮断条件回復部を備える。遮断条件回復部は、UFリレー250により、周波数が回復したと判定された後、周波数が低下していない状態が一定時間継続した場合に、変更した遮断条件を元に戻す。或いは、遮断条件回復部は、遮断信号を出力した遮断器30が全て接続状態となり、負荷40への電力の供給が再開された場合に、変更した遮断条件を元に戻すようにしてもよい。ここでの遮断条件の変更には、周波数下限値の変更、出力時間の変更、及び予備遮断部25Bの起動が含まれる。変更した遮断条件を元に戻す処理には、変更した周波数下限値を元に戻す処理、変更した出力時間を元に戻す処理、及び予備遮断部25Bの起動を停止させる処理を含む。
【0082】
また、第3の実施形態において、電力系統に複数の保護リレーシステム1が設けられる場合に適用される場合を説明したが、これに限定されない。第1の実施形態、及び第2の実施形態においても、電力系統に複数の保護リレーシステム1が設けられる場合に適用されてよい。
例えば、電力系統における周波数の低下の度合いと、周波数が低下した状態が継続した時間とから、第1の保護リレーシステム1が、すでに全部又は一部の遮断器30に遮断信号を出力したと推測され、第2の保護リレーシステム1では遮断器30に遮断信号を出力していない場合に、第2の保護リレーシステム1において用いられる周波数下限値をより大きな値に変更してよい。同様に、第1の保護リレーシステム1が、すでに全部又は一部の遮断器30に遮断信号を出力したと推測され、第2の保護リレーシステム1では遮断器30に遮断信号を出力していない場合に、第2の保護リレーシステム1において用いられる出力時間をより小さな値に変更してよい。つまり、ある保護リレーシステム1において、全ての遮断器が接続状態であっても、遮断条件を変更する場合がある。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
1…保護リレーシステム、2…送電線、10…計器用変成部、20…保護リレー装置、22…電力情報取得部、25…遮断部、25B…予備遮断部、250…UFリレー(周波数判定部)、252…タイマー(時間測定部)、254…遮断信号出力部、256…周波数下限値記憶部、258…出力時間記憶部、26…遮断条件変更部、27…変更判定部、28…下限値変更部、29…出力時間変更部、126…予備起動制御部、30…遮断器、40…負荷