(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220704BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220704BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20220704BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41J2/01 401
B41M5/00 100
B41M5/00 120
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2018237032
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135425(WO,A1)
【文献】特開2012-126057(JP,A)
【文献】特開2013-018127(JP,A)
【文献】特開2014-226879(JP,A)
【文献】特開2016-124165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0162741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体へインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記媒体へエネルギー線を照射するエネルギー線照射部と、
前記エネルギー線照射部によりエネルギー線が照射された後の前記インクを加熱する後加熱手段と
を備え、
前記インクは、前記エネルギー線照射部が照射するエネルギー線を吸収することで発熱するインクであり、
色材と、
前記後加熱手段により加熱されることで前記媒体に定着する樹脂である熱定着性樹脂と、
溶媒と
を含み、
前記エネルギー線照射部は、前記媒体に付着した前記インクにエネルギー線を照射することにより、前記インク中の前記溶媒の少なくとも一部を蒸発させ、
前記後加熱手段は、前記インクを加熱することにより、前記色材と共に前記熱定着性樹脂を前記媒体に定着させ
、
かつ、
前記エネルギー線照射部は、前記媒体上の前記インクの温度が前記溶媒の沸点を超えないように前記インクを加熱し、
前記後加熱手段は、前記媒体上の前記インクの温度が前記沸点を超える温度になるように前記インクを加熱することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記後加熱手段は、前記インクを加熱することにより、前記媒体上で前記熱定着性樹脂を被膜化させて、前記色材と共に前記熱定着性樹脂を前記媒体に定着させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記熱定着性樹脂は、熱可塑性の樹脂であり、
前記後加熱手段は、前記熱定着性樹脂が溶解する温度以上になるように前記インクを加熱することにより、前記後加熱手段での加熱を行った後に冷却された前記熱定着性樹脂が前記媒体に定着するように、前記インクを加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記熱定着性樹脂は、熱硬化性の樹脂であり、
前記後加熱手段は、前記熱定着性樹脂が硬化する温度以上になるように前記インクを加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記後加熱手段は、前記媒体を加熱することで前記媒体を介して前記インクを加熱するヒータであり、前記媒体の温度が80℃以上になるように、前記媒体を加熱することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記後加熱手段は、前記インクへエネルギー線を照射することで前記インクを発熱させる手段であり、1秒間以上の間、パルス状のエネルギー線を前記インクへ照射することにより、前記インクを加熱することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記インクは、前記熱定着性樹脂と共に前記媒体に定着する固体の物質である固体含有物を更に含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記固体含有物は、酸化金属の粒子であることを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記固体含有物は、前記エネルギー線照射部により照射されるエネルギー線を吸収する
ことで発熱し、かつ、前記媒体へ定着した前記インクの硬さを当該固体含有物を含まない場合よりも高める物質であり、
前記エネルギー線照射部は、エネルギー線の照射により前記インク中の前記固体含有物を発熱させることにより、前記インクを加熱することを特徴とする請求項7又は8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記エネルギー線照射部は、エネルギー線として紫外線を照射し、
前記固体含有物は、酸化亜鉛の粒子であることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、
前記媒体へインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記媒体へエネルギー線を照射するエネルギー線照射部と、
前記エネルギー線照射部によりエネルギー線が照射された後の前記インクを加熱する後加熱手段と
を用い、
前記インクは、前記エネルギー線照射部が照射するエネルギー線を吸収することで発熱するインクであり、
色材と、
前記後加熱手段により加熱されることで前記媒体に定着する樹脂である熱定着性樹脂と、
溶媒と
を含み、
前記エネルギー線照射部により、前記媒体に付着した前記インクにエネルギー線を照射することにより、前記インク中の前記溶媒の少なくとも一部を蒸発させ、
前記後加熱手段により、前記インクを加熱することにより、前記色材と共に前記熱定着性樹脂を前記媒体に定着させ
、
かつ、
前記エネルギー線照射部により、前記媒体上の前記インクの温度が前記溶媒の沸点を超えないように前記インクを加熱し、
前記後加熱手段により、前記媒体上の前記インクの温度が前記沸点を超える温度になるように前記インクを加熱することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタ用のインクとして、溶媒を蒸発させることで媒体(メディア)に定着する蒸発乾燥型のインクが広く用いられている。また、近年、蒸発型のインクとして、紫外線等のエネルギー線の照射によりインク自体が発熱するインク(瞬間乾燥型のインク)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような瞬間乾燥型のインクを用いる場合、例えば、媒体への着弾の直後に媒体上のインクへエネルギー線を照射することで、インクの滲み(色間滲み等)が発生する前に、短時間で効率的にインクを乾燥させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
瞬間乾燥型のインクは、近年に開発された新しい種類のインクである。そのため、瞬間乾燥型のインクの構成や使い方等については、更に様々な検討を行うことが望まれている。また、この場合において、様々な用途に対して、その用途に適した構成の瞬間乾燥型のインクを用いること等が望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、瞬間乾燥型のインクを様々な応用分野で用いることについて、鋭意研究を行った。そして、この鋭意研究の中で、従来は粉体塗装法(パウダーコーティング)により塗装を行っていた分野で瞬間乾燥型のインクを用いることを考えた。この場合、粉体塗装法とは、例えば、電界を加えた被塗装物に対して粉体を圧縮空気によりスプレーから噴射させることで、粉体を被塗装物に静電付着させる塗装の方法のことである。粉体塗装法については、例えば、粉体を静電付着させる静電塗装法等と考えることもできる。また、粉体塗装法では、粉体を付着させた後に被塗装物を加熱することで、粉体を加熱溶融して被膜化する。粉体塗装法は、有機溶剤等を用いる必要がなく(VOCフリー)、凹凸状の被塗装物や立体的な被塗装物に対しても塗装が可能であり、かつ、堅牢度も優れていることから、屋内又は屋外で使用する様々な被塗装物への塗装に用いられている。より具体的に、例えば、従来、家電製品、道路資材、及びその他の多くの工業製品等において、粉体塗装法での塗装が広く行われている。
【0006】
しかし、従来の粉体塗装法の用途は、通常、単色での塗りつぶしを行う用途に用いられていた。これは、粉体塗装法の場合、スプレーにより粉体を噴射する構成上、粉体が付着する面積が広くなり、高精細な画像やフルカラー画像を描くことが難しいためである。また、粉体塗装法を用いる場合、通常、粉末の飛散防止や、高電圧を用いるための感電防止等のために、作業環境整備や安全対策を施すことが必要になる。そのため、塗装を行う前の準備等に多くのコストや時間がかかるという問題もあった。
【0007】
これに対し、本願の発明者は、従来は粉体塗装法により塗装を行っていた被塗装物と同一又は同様の物を印刷対象の媒体として用い、瞬間乾燥型のインクを用いることで、適切に印刷を行い得ることを見出した。また、この場合において、単に瞬間乾燥型のインクを用いるのではなく、所定の熱定着性樹脂を含むインクを用い、媒体に付着したインクに対して十分な加熱を行うことで、粉体塗装法の分野において求められているのと同程度の高い堅牢度を有する状態でインクを媒体に定着させ得ることを見出した。
【0008】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、前記媒体へインクを吐出する吐出ヘッドと、前記媒体へエネルギー線を照射するエネルギー線照射部と、前記エネルギー線照射部によりエネルギー線が照射された後の前記インクを加熱する後加熱手段とを備え、前記インクは、前記エネルギー線照射部が照射するエネルギー線を吸収することで発熱するインクであり、色材と、前記後加熱手段により加熱されることで前記媒体に定着する樹脂である熱定着性樹脂と、溶媒とを含み、前記エネルギー線照射部は、前記媒体に付着した前記インクにエネルギー線を照射することにより、前記インク中の前記溶媒の少なくとも一部を蒸発させ、前記後加熱手段は、前記インクを加熱することにより、前記色材と共に前記熱定着性樹脂を前記媒体に定着させることを特徴とする。
【0009】
このように構成した場合、例えば、エネルギー線の照射により発熱する瞬間乾燥型のインクを用いることで、様々な媒体に対して適切に印刷を行うことができる。また、これにより、例えば、従来の粉体塗装法で被塗装物として用いられていた物と同一又は同様の媒体に対し、適切に印刷を行うことができる。このような媒体としては、例えば、凹凸状の媒体や立体的な媒体等を用いることが考えられる。また、この場合、粉体塗装法のように粉体が飛散することはなく、また、高電圧を媒体にかけることも不要であるため、環境整備等にかかるコストや時間を大幅に低減することができる。また、この場合、媒体に高電圧をかける必要がないため、従来の粉体塗装法では塗装が困難であった素材の媒体に対しても、適切に印刷を行うことができる。
【0010】
また、この場合、媒体上のインクへエネルギー線を照射して、溶媒の少なくとも一部を蒸発させることで、後加熱手段での加熱を行う前に、インクの粘度を適切に高めることができる。この場合、インクの粘度について、例えば、媒体上で滲みが発生しない粘度にまで高めることが考えられる。媒体上で滲みが発生しないとは、例えば、印刷に求められる品質で問題となる滲みが発生しないことである。また、この場合、複数色のインクを用いる場合にもインクの滲みを適切に抑えることが可能になるため、互いに異なる色のインクを吐出する複数の吐出ヘッドを用いて、カラー印刷(例えば、フルカラー印刷)を行うこと等も可能である。そのため、このように構成すれば、例えば、様々な媒体に対し、高い品質の印刷(例えば、高精細な印刷)を適切に行うことができる。また、この場合、吐出ヘッドとしては、例えば、インクジェットヘッドを好適に用いることができる。
【0011】
更に、この場合、熱定着性樹脂を含むインクを用い、媒体上のインクを後加熱手段で加熱することで、媒体に対してインクをより強固に付着させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、従来の粉体塗装法と同様の高い堅牢度を有する印刷を適切に行うことができる。また、この場合、後加熱手段は、例えば、インクを加熱することにより、媒体上で熱定着性樹脂を被膜化させて、色材と共に熱定着性樹脂を媒体に定着させる。このように構成すれば、媒体に対してインクをより適切に定着させることができる。
【0012】
また、この構成において、熱定着性樹脂としては、例えば、熱可塑性の樹脂を用いることが考えられる。この場合、後加熱手段は、例えば、熱定着性樹脂が溶解する温度以上になるようにインクを加熱することにより、後加熱手段での加熱を行った後に冷却された熱定着性樹脂が媒体に定着するように、インクを加熱する。このように構成すれば、例えば、媒体に対してインクを適切に定着させることができる。また、熱定着性樹脂としては、例えば、熱硬化性の樹脂を用いることも考えられる。この場合、後加熱手段は、例えば、熱定着性樹脂が硬化する温度以上になるようにインクを加熱する。このように構成した場合も、例えば、媒体に対してインクを適切に定着させることができる。
【0013】
また、この構成において、後加熱手段としては、例えば、媒体を加熱するヒータ等を好適に用いることができる。この場合、後加熱手段は、例えば、媒体を介して、間接的にインクを加熱する。また、この場合、ヒータにより、例えば、媒体の温度が80℃以上(好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上)になるように媒体を加熱することが考えられる。このように構成すれば、例えば、媒体上に熱定着性樹脂を定着させるための加熱を確実かつ適切に行うことができる。このようなヒータとしては、例えば赤外線ヒータ等を好適に用いることができる。
【0014】
また、後加熱手段として、インクへエネルギー線を照射することでインクを発熱させる手段を用いることも考えられる。また、この場合、例えば、媒体の温度を大きく上昇させずに、インクの温度のみを上昇させること等も可能である。より具体的に、この場合、例えば、媒体の温度を60℃以下程度(好ましくは50℃以下程度)に抑えつつ、インクの温度を80℃以上(好ましくは100℃以上)に加熱することが考えられる。このように構成すれば、例えば、媒体の耐熱温度が低い場合等にも、熱定着性樹脂を適切かつ十分に加熱することができる。また、この場合、後加熱手段では、例えば、1秒間以上の間、パルス状のエネルギー線をインクへ照射することが考えられる。このように構成すれば、例えば、媒体等の温度が過度の上昇すること等を防ぎつつ、インクを適切に加熱することができる。また、この場合、デューティー比が50%以下のエネルギー線をインクへ照射することがより好ましい。
【0015】
また、この構成において、熱定着性樹脂としては、例えば、色材を内包する樹脂の粒子等を好適に用いることができる。また、色材としては、例えば、固体で粒子状の顔料等を好適に用いることができる。また、色材については、必ずしも熱定着性樹脂に内包させずに、インクに添加してもよい。また、色材として、染料等を用いることも考えられる。
【0016】
また、この構成では、例えば、熱定着性樹脂と共に媒体に定着する固体の物質である固体含有物を更に含むインクを好適に用いることができる。固体含有物については、例えば、インクに添加されるフィラー等と考えることもできる。また、固体含有物としては、インクの堅牢性を高めるための物質を用いることが好ましい。このような固体含有物については、例えば、媒体へ定着したインクの硬さを当該固体含有物を含まない場合よりも高める物質等と考えることもできる。また、固体含有物については、例えば、溶媒中に分散する固体の物質等と考えることもできる。また、このような固体含有物としては、例えば、酸化金属の粒子等を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、定着後のインクの堅牢性を適切に高めることができる。
【0017】
また、この構成において、固体含有物としては、例えば、エネルギー線照射部により照射されるエネルギー線を吸収することで発熱する物質を用いることも考えられる。この場合、エネルギー線照射部は、例えば、エネルギー線の照射によりインク中の固体含有物を発熱させることにより、インクを加熱する。このように構成すれば、例えば、インクを発熱させるための物質を用いて、定着後のインクの堅牢性を適切に高めることができる。
【0018】
また、この構成において、エネルギー線照射部が照射するエネルギー線としては、たとえは、紫外線を用いることが考えられる。そして、この場合、固体含有物としては、例えば、紫外線を吸収することで発熱する酸化金属等を用いることが考えられる。また、より具体的に、このような固体含有物としては、例えば、酸化亜鉛の粒子等を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、インクを発熱させるための物質を用いて、定着後のインクの堅牢性を適切に高めることができる。
【0019】
また、エネルギー線照射部によるインクの加熱の仕方と、後加熱手段でのインクの加熱の仕方について、着弾直後のインクに含まれる溶媒の沸点との関係で考えた場合、例えば、エネルギー線照射部による加熱では媒体上のインクの温度が溶媒の沸点を超えないようにインクを加熱し、後加熱手段による加熱では媒体上のインクの温度がこの沸点を超える温度になるようにインクを加熱すると考えることもできる。このように構成すれば、例えば、エネルギー線照射部での加熱時において、インクの突沸等を適切に防ぐことができる。また、後加熱手段での加熱時において、インクを適切かつ十分に加熱することができる。
【0020】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する印刷方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。また、この場合、印刷方法について、例えば、印刷物の製造方法等と考えることもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば、様々な媒体に対し、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。
図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を簡略化して示す上面図及び側断面図である。
【
図2】本例において用いるインクの構成の例を示す図である。
図2(a)は、インクの構成の一例を示す。
図2(b)は、インクの構成の他の例を示す。
【
図3】印刷装置10において行う印刷の動作の一例を示す図である。
図3(a)~(d)は、印刷の動作における様々なタイミングでの媒体50の様子の一例を示す。
【
図4】本例において用いるインクの例について更に詳しく説明をする図である。
図4(a)~(g)は、本例において用いるインクの様々な例を示す。
【
図5】インクの構成の更なる変形例を示す図である。
図5(a)、(b)は、酸化亜鉛粒子を含むインクの構成の例を示す。
【
図6】印刷装置10の構成の変形例を示す図である。
【
図7】後加熱手段として用いる恒温槽32の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。
図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を簡略化して示す上面図及び側断面図である。
【0024】
尚、以下において説明をする点を除き、印刷装置10は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置10は、以下において説明をする構成に加え、公知の印刷装置と同一又は同様の様々な構成を更に備えてもよい。また、本例において、
印刷装置10は、例えば、従来は粉体塗装法で塗装を行っていた被塗装物と同一又は同様の物を印刷対象の媒体(メディア)として用いる。また、以下の説明等から理解できるように、媒体50としては、従来の粉体塗装では塗装が困難であった物を用いてもよい。
【0025】
本例において、印刷装置10は、媒体50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、プラテン14、ガイドレール16、走査駆動部18、プリントヒータ20、プリヒータ22、アフターヒータ24、赤外線ヒータ26、及び制御部30を備える。
【0026】
ヘッド部12は、媒体50に対してインクを吐出する部分である。また、本例において、ヘッド部12は、瞬間乾燥方式プリント部の一例であり、互いに異なる色のインクをそれぞれが吐出する複数のインクジェットヘッド102c~kと、複数の紫外線光源104とを有する。インクジェットヘッド102c~kは、吐出ヘッドの一例であり、カラー印刷用の各色のカラーインクを吐出する。また、より具体的に、インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド102c~kは、図中に示すように、X方向(X軸方向)の位置を揃えて、X方向と直交するY方向(Y軸方向)へ並べて配設される。この場合、X方向は、後に説明をする副走査動作時に媒体50に対して相対的にヘッド部12を移動させる副走査方向と平行な方向である。また、Y方向は、主走査動作時に媒体50に対して相対的にヘッド部12を移動させる主走査方向と平行な方向である。主走査動作とは、例えば、主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。
【0027】
また、本例において、インクジェットヘッド102c~kから吐出するインクとしては、エネルギー線が照射されることで発熱する液体である瞬間乾燥型のインク(瞬間乾燥型の液体)を用いる。瞬間乾燥型のインクとは、例えば、エネルギー線の照射によりインク自体が発熱するインクのことである。エネルギー線の照射によりインク自体が発熱するとは、例えば、インク中のいずれかの成分がエネルギー線を吸収することで、インク全体の温度が上昇することである。また、本例において、このようなエネルギー線としては、紫外線光源104により照射される紫外線(UV光)を用いる。
【0028】
また、本例において、インクジェットヘッド102c~kから吐出するインクは、少なくとも、各色の色材、熱定着性樹脂、及び溶媒を含む。この場合、色材とは、例えば、インクの色を示す物質のことである。また、熱定着性樹脂とは、例えば、所定の温度以上で加熱されることで媒体50に定着する樹脂のことである。本例において、熱定着性樹脂としては、赤外線ヒータ26により加熱されることで媒体50に定着する樹脂を用いる。また、溶媒とは、インク中の他の成分を溶解又は分散させる液体成分のことである。また、各色のインクは、上記以外に、公知のインク(例えば、公知の瞬間乾燥型のインク)と同一又は同様の成分を更に含んでよい。また、本例において用いるインクの特徴については、後に更に詳しく説明をする。
【0029】
紫外線光源104は、媒体50へエネルギー線を照射するエネルギー線照射部の一例であり、媒体50に付着した各色のインクへ、エネルギー線の一例である紫外線を照射する。紫外線光源104としては、例えば、紫外線を発生するLEDであるUVLEDを好適に用いることができる。この場合、紫外線光源104については、例えば、UVLED瞬間乾燥手段又はUV瞬間乾燥手段等と考えることができる。紫外線光源104を構成するUVLEDとしては、例えば、発光の中心波長が360~390nm程度(例えば、356nm又は385nm等)の公知の高出力型UVLED等を好適に用いることができる。また、それぞれの紫外線光源104については、例えば、複数のUVLEDにより構成することが考えられる。この場合、各回の主走査動作においてインクが吐出される領域の副走査方向における幅であるプリント幅内において必要な強度で均一な照射分布が得られるように、面状に複数のUVLEDを並べて配設することが考えられる。
【0030】
また、本例において、複数の紫外線光源104のそれぞれは、図中に示すように、インクジェットヘッド102c~kの並びに対し、主走査方向における一方側及び他方側のそれぞれに配設される。また、紫外線光源104は、紫外線を照射することにより、媒体50上のインクを発熱させて、インク中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させる。この場合、インク中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させるとは、例えば、求められる印刷の品質等に応じて、インクが十分に乾燥するように、溶媒の少なくとも一部を蒸発させることである。また、本例において、紫外線光源104は、媒体50上のインクへ紫外線を照射して、溶媒の少なくとも一部を蒸発させることで、赤外線ヒータ26等での加熱を行う前に、媒体50上で滲みが発生しない粘度にまで、インクの粘度を高める。媒体50上で滲みが発生しないとは、例えば、印刷に求められる品質で問題となる滲みが発生しないことである。この場合、例えば通常の蒸発乾燥型のインク(例えば、瞬間乾燥型以外の蒸発乾燥型のインク)を用いる場合には滲みの問題が大きくなるような媒体50を用いる場合にも、適切に滲みを抑えることができる。また、複数色のインクを用いる場合にもインクの滲みを適切に抑えることが可能になるため、本例のように、互いに異なる色のインクを吐出する複数のインクジェットヘッド(インクジェットヘッド102c~k)を用いて、カラー印刷(例えば、フルカラー印刷)を行うこと等が可能になる。そのため、本例によれば、例えば、様々な媒体50に対し、高い品質の印刷(例えば、高精細な印刷)を適切に行うことができる。
【0031】
プラテン14は、媒体50を支持する台状部材であり、ヘッド部12と対向させて媒体50を支持する。また、本例において、プラテン14は、内部にプリントヒータ20、プリヒータ22、及びアフターヒータ24を収容する。ガイドレール16は、主走査動作時にヘッド部12の移動をガイドするレール部材である。
【0032】
走査駆動部18は、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせるとは、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドc~kに主走査動作及び副走査動作を行わせることである。主走査動作時において、走査駆動部18は、例えば、ガイドレール16に沿ってヘッド部12を移動させつつ、印刷すべき画像に応じて、インクジェットヘッドc~kにインクを吐出させる。
【0033】
また、本例において、走査駆動部18は、ヘッド部12における紫外線光源104の駆動を更に行う。また、走査駆動部18は、主走査方向における一方及び他方の両方(双方)の向きでの主走査動作をヘッド部12に行わせる。そして、この場合、主走査動作時の移動方向においてインクジェットヘッド102c~kよりも後方側になる紫外線光源104から媒体50上のインクへ紫外線を照射するように、紫外線光源104の駆動を行う。このように構成すれば、例えば、媒体50への着弾の直後のインクへ適切に紫外線を照射することができる。また、印刷に求められる品質によっては、媒体50への着弾から一定の時間が経過した後に紫外線光源104に紫外線を照射させること等も考えられる。この場合、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102c~kと紫外線光源104との位置関係を適宜変更することで、紫外線が照射されるまでの時間を調整することが考えられる。
【0034】
また、走査駆動部18は、主走査動作の合間に副走査動作の駆動を行うことにより、媒体50においてヘッド部12と対向する領域を変更する。この場合、副走査動作とは、例えば、媒体50に対して相対的に副走査方向へ移動する動作のことである。走査駆動部18は、例えば図示を省略したローラ等を駆動することで、副走査方向と平行な搬送方向(メディア搬送方向)へ媒体50を移動させることで、副走査動作の駆動を行う。
【0035】
プリントヒータ20、プリヒータ22、及びアフターヒータ24は、媒体50を加熱する加熱手段である。また、これらのうち、プリントヒータ20は、ヘッド部12と対向する位置において媒体50を加熱するヒータである。プリントヒータ20を用いることにより、例えば、媒体50上のインクをより効率的に加熱することが可能になる。また、この場合、本例の印刷装置10の構成について、紫外線光源104とプリントヒータ20とを併用してインクを乾燥させる構成と考えることもできる。
【0036】
ここで、プリントヒータ20での加熱温度が高い場合、例えばヘッド部12におけるインクジェットヘッドが加熱されることで、ノズル詰まり等の問題が生じやすくなる。この場合、ノズル詰まりとは、例えば、インクジェットヘッドのノズルがインクの乾燥により詰まることである。そのため、プリントヒータ20による加熱温度については、70℃以下にすることが好ましい。また、本例のように、瞬間乾燥型のインクを用いる場合、紫外線光源104により紫外線を照射することで、インクを効率的に加熱することが可能である。そのため、プリントヒータ20による加熱温度については、環境温度(周囲温度)の影響を抑え、媒体50の温度を一定化すること等を目的に、十分に低い温度にすることがより好ましい。より具体的に、プリントヒータ20は、例えば、プリントヒータ20と対向する領域に対し、室温により近い温度(例えば、50℃以下程度)での加熱を行う。また、プリントヒータ20による媒体50の加熱温度については、好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下である。このように構成すれば、例えば、ノズル詰まり等の問題を抑えつつ、環境温度の影響等を適切に抑えることができる。
【0037】
プリヒータ22は、搬送方向においてヘッド部12よりも上流側で媒体50を加熱するヒータである。プリヒータ22を用いることにより、ヘッド部12の位置へ到達する前に予備加熱を行い、媒体50の初期温度を適切に調整することができる。また、この場合、プリヒータ22による媒体50の加熱温度についても、例えば、環境温度の影響を抑えること等を目的に、十分に低い温度(例えば50℃以下、好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下)にすることが好ましい。
【0038】
アフターヒータ24は、搬送方向においてヘッド部12よりも下流側で媒体50を加熱するヒータである。アフターヒータ24については、例えば、乾燥促進のための後乾燥手段等と考えることができる。アフターヒータ24を用いることにより、例えば、印刷を完了するまでの間に、インクをより確実に乾燥させることができる。アフターヒータ24による媒体50の加熱温度については、例えば30~50℃程度にすることが考えられる。また、アフターヒータ24の加熱温度については、使用する媒体50の耐熱温度以下の範囲で、ある程度の高い温度に設定してもよい。
【0039】
赤外線ヒータ26は、赤外線を照射することで媒体50を加熱するヒータである。赤外線ヒータ26としては、例えば、遠赤外線を含む赤外線を発生する赤外線光源等を好適に用いることができる。また、本例において、赤外線ヒータ26は、搬送方向においてヘッド部12よりも下流側において、アフターヒータ24と共に媒体50を加熱する。赤外線ヒータ26については、例えば、赤外線を利用した後加熱用のヒータ等と考えることもできる。また、本例において、赤外線ヒータ26は、図中に示すように、媒体50を挟んでアフターヒータ24と対向する位置に配設されることで、アフターヒータ24とは反対側から媒体50を加熱する。また、これにより、赤外線ヒータ26は、媒体50においてインクが付着している面へ向けて、赤外線を照射する。
【0040】
また、本例において、赤外線ヒータ26は、紫外線光源104により紫外線が照射された後のインクを加熱する後加熱手段の一例であり、インク中の熱定着性樹脂を媒体50に定着させるための温度以上にインクの温度が高まるように、媒体50上のインクを加熱する。また、これにより、赤外線ヒータ26は、色材等と共に熱定着性樹脂を媒体50に定着させる。このように構成すれば、例えば、高い堅牢性を有する状態でインクを媒体50に定着させることができる。また、赤外線ヒータ26については、例えば、媒体50を加熱することで媒体50を介して間接的にインクを加熱する手段等と考えることもできる。熱定着性樹脂の特徴や、熱定着性樹脂を媒体50に定着させる動作等については、本例において用いるインクの特徴と共に、後に更に詳しく説明をする。
【0041】
ここで、上記においても説明をしたように、本例においては、アフターヒータ24についても、紫外線光源104により紫外線が照射された後のインクを加熱する手段と考えることができる。そのため、アフターヒータ24と赤外線ヒータ26とを合わせた構成について、後加熱手段の一例と考えてもよい。また、この場合、相対的に高い温度での加熱を行う構成(例えば、赤外線ヒータ26)を主な後加熱手段と考え、相対的に低い温度での加熱を行う構成(例えばアフターヒータ24)については、補助的な後加熱手段と考えてもよい。また、プリントヒータ20、プリヒータ22、アフターヒータ24、及び赤外線ヒータ26のそれぞれとしては、公知の様々な加熱手段を用いることが考えられる。また、印刷装置10を使用する環境や求められる印刷の品質によっては、プリントヒータ20、プリヒータ22、及びアフターヒータ24のうちの一部又は全てを省略してもよい。また、後加熱手段として、赤外線ヒータ26以外の加熱手段を用いてもよい。この場合、後加熱手段としては、例えば、温風ヒータやタングステンヒータ等を用いることが考えられる。
【0042】
制御部30は、例えば印刷装置10のCPUであり、印刷装置10の各部の動作を制御する。本例によれば、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102c~kにより媒体50へカラーインクを吐出することにより、印刷すべき画像等を媒体上に適切に描くことができる。また、本例のように、瞬間乾燥型のインクを用いる場合、様々な素材の媒体50に対し、滲みの発生を抑えて、高い品質での印刷を行うことができる。また、この場合において、単に瞬間乾燥型のインクを用いるのではなく、熱定着性樹脂を含むインクを用いて、加熱により熱定着性樹脂を媒体50に定着させることで、高い堅牢性を有する状態でインクを媒体50に定着させることができる。そのため、本例によれば、高品質で耐久性の高い印刷を適切に行うことができる。
【0043】
また、より具体的に、上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、従来の粉体塗装法で被塗装物として用いられていた物と同一又は同様の物を媒体50として用いることが考えられる。このような媒体としては、例えば、凹凸状の媒体50や立体的な媒体50等を用いることが考えられる。そして、この場合、本例においては、例えば、粉体塗装法のように粉体が飛散することはなく、また、高電圧を媒体にかけることも不要である。そのため、本例によれば、例えば、粉体塗装法での塗装を行う場合等と比べ、環境整備にかかるコストや時間を大幅に低減することができる。また、この場合、媒体50に高電圧をかける必要がないため、従来の粉体塗装法では塗装が困難であった素材の媒体50に対しても、より適切に印刷を行うことができる。
【0044】
続いて、本例において用いるインクの特徴等について、更に詳しく説明をする。
図2は、本例において用いるインクの構成の例を示す図であり、インクの成分の一部を模式的に示す。
図2(a)は、インクの構成の一例を示す。上記においても説明をしたように、本例において用いるインクは、色材、熱定着性樹脂、及び溶媒202を含む。また、
図2(a)に示す場合において、インクは、色材として、固体で粒子状の顔料204を含む。顔料204については、例えば、粉体状の色材等と考えることもできる。また、この構成において、インクは、熱定着性樹脂として、樹脂を粒子状にした熱定着性樹脂粒子206を含む。熱定着性樹脂粒子206については、例えば、乾燥状態で粉末状になる樹脂の粒子等と考えることもできる。また、この場合、顔料204及び熱定着性樹脂粒子206は、図中に示すように、溶媒202中でそれぞれが分散した状態で、インクに含まれる。
【0045】
また、この構成のインクについては、例えば、色材として顔料204を用いる瞬間乾燥型のインクに熱定着性樹脂粒子206を更に添加したインク等と考えることができる。この場合、顔料204及び熱定着性樹脂粒子206等の粒子状の成分については、例えば、インクの保管中での凝集安定性と、インクジェットヘッドでの吐出安定性とを確保できるサイズの粒子を用いることが好ましい。より具体的に、これらの各々の粒子の平均粒径については、例えば、30nm以上で1500nm以下程度にすることが好ましい。平均粒径が30nm未満の場合、粒子間の凝集が生じやすくなることが考えられる。また、平均粒径が1500nmを超えると、沈殿が生じやすくなり保存安定性の問題が生じるおそれがある。また、この場合、例えばノズル径が50μm以下となる高解像度のインクジェットヘッドにおいて、吐出が不安定になるおそれがある。
【0046】
また、顔料204及び熱定着性樹脂粒子206については、個別に溶媒202中に分散させるのではなく、例えば
図2(b)に示すように、熱定着性樹脂粒子206に顔料204を内包させた混合樹脂粒子に一体化させて、溶媒202中に分散させてもよい。
図2(b)は、インクの構成の他の例を示す。この場合、例えば熱定着性樹脂粒子206の材料となる樹脂と顔料204とを混濁重合させる方法や、混錬粉砕法等を用いることで、熱定着性樹脂粒子206に顔料204を内包させることができる。また、この場合、顔料204を内包する熱定着性樹脂粒子206について、例えば、色材と熱定着性樹脂とからなる着色熱定着性樹脂粒子等と考えることができる。また、着色熱定着性樹脂粒子については、例えば、顔料204及び熱定着性樹脂粒子206を主成分とする樹脂の粒子等と考えることもできる。熱定着性樹脂粒子206については、例えば、色材を内包する樹脂の粒子等と考えることができる。また、この場合、顔料204を内包した状態の顔料204の平均粒径についても、30nm以上で1500nm以下程度にすることが好ましい。また、顔料204としては、平均粒径が1μ未満のナノ顔料等を好適に用いることができる。
【0047】
また、例えば
図2(a)、(b)に示したような本例のインクにおいて、溶媒としては、公知の瞬間乾燥型のインクと同一又は同様の溶媒を用いることができる。この場合、インク中に最も大きな重量比で含まれる液体成分である主溶媒としては、例えば水を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、インクの安全性を適切に高めることができる。また、印刷に求められる品質や、使用する媒体50によっては、溶媒として、溶剤(有機溶剤)を用いること等も考えられる。より具体的に、例えば、媒体50の素材等に応じて、媒体50に対するインクの接着性を高める目的や、印刷時に媒体50のカールやコックリング等を防ぐ目的で、溶媒として溶剤を用いることが考えられる。
【0048】
また、この場合、インクの安全性を高めることや、ノズル詰まりを生じにくくする観点から、沸点が100℃程度以上(例えば、100℃以上で250℃以下)の溶剤(エコ溶剤)を用いることが好ましい。このような溶剤としては、例えば、イソパラピン類の溶剤、ナフテン類の溶剤、又はアルキルベンゼン類の溶剤のうち、有機則の対象外の溶剤を用いることが考えられる。また、溶剤として、例えば、テレビン油又はアマニ油等の植物性油類からなる溶剤を用いることが考えられる。また、例えば上記の複数の溶剤を混合した溶剤を用いてもよい。
【0049】
また、インクの溶媒の少なくとも一部としては、水やエコ溶剤等に限らず、必要に応じて低沸点の溶剤等を用いてもよい。この場合、例えば、インクの乾燥速度を調整すること等を目的に、低沸点の溶剤を添加すること等が考えられる。また、例えば特殊な樹脂からなる熱定着性樹脂粒子206を用いる場合等には、熱定着性樹脂粒子206との組み合わせで、有機則に該当する溶剤を用いることが必要になること等も考えられる。そして、このような場合には、必要に応じて、低沸点の溶剤を用いることも考えられる。
【0050】
また、本例のインクにおいて、媒体上で溶媒202が蒸発すると、顔料204及び熱定着性樹脂粒子206は、粉体となって媒体上に残ることになる。そして、この状態で後加熱手段として用いる赤外線ヒータ26(
図1参照)により加熱を行うことで、熱定着性樹脂粒子206を構成する熱定着性樹脂が被膜状になり、媒体50に定着する。この場合、インクは、熱定着性樹脂粒子206を構成する熱定着性樹脂について、重量比で20重量%以上含むことが好ましい。このように構成すれば、赤外線ヒータ26での加熱によりインクを適切に被膜化させることができる。また、この場合、赤外線ヒータ26により、例えば、媒体の温度が80℃以上(好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上)になるように媒体を加熱することが考えられる。また、この場合、赤外線ヒータ26については、例えば、高温定着手段及び高温後乾燥手段の一例と考えることもできる。
【0051】
また、熱定着性樹脂粒子206を構成する熱定着性樹脂としては、例えば、熱可塑性の樹脂又は熱硬化性の樹脂を好適に用いることができる。熱定着性樹脂として熱可塑性の樹脂を用いる場合、例えば、ガラス転移点が100℃以上の樹脂を好適に用いることができる。また、この場合、赤外線ヒータ26により媒体を加熱することで、例えば、熱定着性樹脂が溶解する温度以上になるようにインクを加熱する。また、これにより、例えば、赤外線ヒータ26での加熱を行った後に冷却された熱定着性樹脂が媒体に定着するように、インクを加熱する。また、熱定着性樹脂として熱硬化性の樹脂を用いる場合、例えば、重合開始温度が90℃以上の樹脂を好適に用いることができる。また、この場合、赤外線ヒータ26により媒体を加熱することで、例えば、熱定着性樹脂が硬化する温度以上になるようにインクを加熱する。これらのように構成すれば、例えば、媒体に対してインクを適切に定着させることができる。
【0052】
また、より具体的に、熱定着性樹脂として熱可塑性の樹脂を用いる場合、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ナイロン樹脂、又はこれらの混合物の粉体等を好適に用いることができる。また、熱定着性樹脂として熱硬化性の樹脂を用いる場合、例えば、エポキシ系、エポキシ・ポリエステル系(ハイブリッド樹脂)、ポリエステル系、フッ素樹脂系、又はこれらの混合の粉体等を好適に用いることができる。
【0053】
また、上記においても説明をしたように、本例において用いるインクは、公知のインク(例えば、公知の瞬間乾燥型のインク)と同一又は同様の成分を更に含んでよい。より具体的に、上記以外の成分として、インクは、例えば、紫外線吸収剤(UV吸収剤)を更に含んでよい。紫外線吸収剤とは、例えば、紫外線を吸収して熱に変換する物質のことである。この場合、例えば、インクの全体に対して重量比で0.2~5重量%程度の紫外線吸収剤を添加することが考えられる。紫外線吸収剤としては、例えば、公知の紫外線吸収剤を好適に用いることができる。また、紫外線吸収剤を別途添加しなくても、インク中の他の成分が十分に紫外線を吸収して発熱する場合には、その成分について、紫外線吸収剤を兼ねていると考えることもできる。
【0054】
また、インクは、更に他の成分を含んでもよい。この場合、例えば、インクの成分として、バインダ樹脂を更に添加すること等が考えられる。バインダ樹脂とは、例えば、溶媒を蒸発させることのみで、別途加熱等を行わなくても被膜化する樹脂のことである。このようなバインダ樹脂を用いることにより、インク中の溶媒を蒸発させた後、赤外線ヒータ26での加熱を行うまでの間に、媒体上の残ったインクの成分が飛散すること等を適切に防ぐことができる。また、この場合、バインダ樹脂については、インク中の粉体状の成分を媒体上に仮止め(仮定着)するための樹脂等と考えることもできる。バインダ樹脂を用いる場合、例えば、インクの全体に対して重量比で10重量%以下程度(例えば、0.1~10重量%程度)のバインダ樹脂を添加することが好ましい。また、バインダ樹脂については、インクの必須の成分ではなく、インクの乾燥後における仮止めの強度を高めたい場合に添加する成分等と考えることができる。そのため、求められる印刷の品質に応じて、バインダ樹脂については、添加しなくてもよい。また、バインダ樹脂と比較して考えた場合、本例において用いる熱定着性樹脂については、溶媒を蒸発させることのみでは被膜化せずに、所定の温度以上への加熱を行うことで被膜化する樹脂等と考えることもできる。
【0055】
また、インクの成分として、例えば定着時のインク層(インク画像)の平坦化を促進するために、融点か100℃以下の樹脂である低温溶解性樹脂(例えば、パラフィン又はワックス等)を添加すること等も考えられる。また、その他にも、インクの成分として、例えば、分散の安定化や粘度調整等のための添加剤を添加することが考えられる。また、本例のインクの成分として、印刷用のインクに限らず、塗料等で用いられている公知の添加剤等を更に添加することも考えられる。
【0056】
続いて、本例の印刷装置10(
図1参照)において行う印刷の動作について、更に詳しく説明をする。
図3は、印刷装置10において行う印刷の動作の一例を示す。
図3(a)~(d)は、印刷の動作における様々なタイミングでの媒体50の様子の一例を示す。
【0057】
図3(a)は、媒体50上へインクを吐出する動作について説明をする図である。また、図示の便宜上、
図3(a)においては、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド(インクジェットヘッド102c~k)について、一つのインクジェットヘッド102に代表させて示している。また、複数の紫外線光源104のうち、主走査動作でのヘッド部12の移動方向においてインクジェットヘッド102よりも後方側になる紫外線光源104のみを図示している。また、図中に示す動作において、ヘッド部12は、図中に矢印で示す方向へ移動しつつ、インクジェットヘッド102からインクを吐出する。また、媒体50に着弾したインクにより描かれる画像(インク画像)に対し、紫外線光源104から紫外線を照射することで、インクの温度を上昇させる。また、これにより、インクの溶媒を急速に蒸発させて、インクの滲みが発生することを防止する。また、本例においては、上記においても説明をしたように、プラテン14内に配設したプリントヒータ20により50℃以下の低い温度で媒体50を加熱することで、環境温度の影響を抑えている。
【0058】
図3(b)は、紫外線光源104による紫外線の照射でインク中の溶媒を蒸発させた直後(瞬間乾燥方式での溶媒の蒸発後)における媒体50の様子の一例を示す。この場合、インクの成分のうち、蒸発しない成分が媒体50上に残ることになる。より具体的に、本例においては、顔料や乾燥した熱定着性樹脂粒子が、凝集した粉体となって、媒体50上に残ることになる。そのため、この状態については、例えば、凝集した粉体により構成される画像が媒体50上に形成された状態等と考えることができる。また、この状態については、例えば、未定着の画像(未定着インク画像)が媒体50上に形成された状態等と考えることもできる。また、このような未定着な画像については、例えば、インクが粉体化して粗面化した画像等と考えることもできる。
【0059】
図3(c)は、赤外線ヒータ26によりインクを加熱して媒体50にインクを定着させる動作について説明をする図である。上記においても説明をしたように、本例においては、赤外線ヒータ26により媒体50上のインクを高温(例えば、100℃以上)に加熱することで、熱定着性樹脂を被膜化させて、インクを媒体50に定着させる。また、本例においては、上記においても説明をしたように、プラテン14内に配設したアフターヒータ24を更に用いて、インクに対する高温の加熱を行う。
【0060】
より具体的に、熱定着性樹脂として熱可塑性の樹脂を用いる場合、例えば、媒体50において赤外線ヒータ26の位置に搬送されて来た部分を赤外線ヒータ26により加熱することで、熱定着性樹脂が溶解する温度以上への昇温加熱を行う。また、これにより、熱定着性樹脂を軟化させ、顔料等を含んだ状態で溶融状態の熱定着性樹脂を被膜化させる。このように構成すれば、例えば、インクの層を適切に平坦化することができる。この場合、その後に媒体50を冷却することで、媒体50に対してインクの層を強固に付着(接着)させることができる。このような動作については、例えば、媒体50に対してインクを高温加熱溶融定着させる動作等と考えることができる。また、熱定着性樹脂として熱硬化性の樹脂を用いる場合、例えば、媒体50において赤外線ヒータ26の位置に搬送されて来た部分を赤外線ヒータ26により加熱することで、熱定着性樹脂が硬化(加熱硬化)する温度以上への昇温加熱を行う。また、これにより、顔料等を含んだ状態で熱定着性樹脂を被膜化させる。このように構成した場合も、媒体50に対してインクの層を強固に付着させることができる。
【0061】
ここで、赤外線ヒータ26によりインクを加熱してインクを媒体50に定着させる動作については、例えば、焼結定着の動作等と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、赤外線ヒータ26による加熱温度については、使用する熱定着性樹脂の特性等に合わせて、例えば100℃以上(例えば、100℃以上で250℃以下)に設定することが考えられる。また、赤外線ヒータ26による加熱温度については、通常、130℃以上の高温(例えば、130℃以上で200℃以下)に設定することが好ましい。赤外線ヒータ26での加熱温度が低温過ぎる場合、例えば、平坦化の度合いが低くなり、印刷された画像が粗面化した印象になる場合がある。また、インクの層の接着強度が不足すること等も考えられる。また、赤外線ヒータ26での加熱温度が高温過ぎる場合、例えば、インクや媒体50に焦げが発生するおそれがある。また、熱定着性樹脂が溶融することでインクの粘度が過度に低下して、滲みの問題が生じること等も考えられる。
【0062】
また、
図1においては、図示の便宜上、媒体50の搬送経路における比較的短い区間でのみ赤外線ヒータ26による加熱を行う構成を図示している。しかし、より高い品質でインクを媒体50に定着させることを考えた場合、赤外線ヒータ26での加熱時間を十分に長くすることが好ましい。そのため、例えば媒体50の搬送経路の一部で赤外線ヒータ26による加熱を行う場合、赤外線ヒータ26により加熱が行われる時間が十分に確保できるように、赤外線ヒータ26を配設することが好ましい。
【0063】
また、より具体的に、赤外線ヒータ26により媒体50を加熱する時間については、10分以上(例えば、10~20分程度)にすることが好ましい。この場合、赤外線ヒータ26により媒体50を加熱する時間とは、例えば、媒体50の各位置(一つの位置)に対して赤外線ヒータ26により加熱を行う時間のことである。このように構成すれば、例えば、熱定着性樹脂を溶融等により平坦化する時間を適切に確保することができる。また、この場合、例えば、十分に時間をかけてインクを定着させることで、インクの層に含まれる空気を除去する脱泡等を適切に行うこともできる。
【0064】
また、赤外線ヒータ26での加熱を行った後には、媒体50において赤外線ヒータ26により加熱が行われた領域を冷却することで、インクの定着を完了させる。この場合、例えば、自然冷却により室温への冷却を行うことが考えられる。また、必要に応じて、例えば送風ファン等の冷却手段を用いて、媒体50を冷却してもよい。また、より高い品質でインクを媒体50に定着させるためには、例えば、急冷しないように媒体50を冷却すること等も考えられる。この場合、例えば、赤外線ヒータ26よりも低い温度での加熱を行う区間を設ける構成や、低温の状態(区間)と高温の状態(区間)とが複数回繰り返されるヒートアニール処理を施す構成等を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、熱歪の影響を低減して、インクの層の接着力をより適切に高めることができる。
【0065】
図3(d)は、インクの層の定着が完了した状態の媒体50の様子の一例を示す。図中に示すように、本例によれば、例えば、熱定着性樹脂を含むインクを用い、媒体50上のインクを赤外線ヒータ26で加熱することで、媒体50に対して、極めて接着性が高い状態で強固にインクを付着させることができる。また、これにより、平滑性の高い高品質でかつ堅牢性が高い印刷を適切に行うことができる。また、より具体的に、上記においても説明をしたように、本例において、媒体50としては、例えば、従来は粉体塗装法で塗装を行っていた被塗装物と同一又は同様の物を用いることが考えられる。そして、この場合において、例えば、従来の粉体塗装法と同様の高い堅牢度を有する印刷を適切に行うことができる。従来は粉体塗装法で塗装を行っていた被塗装物と同一又は同様の物とは、例えば、家電製品、道路資材、及びその他の多くの工業製品等のことである。また、このような媒体50としては、例えば、道路標識、ガイドレール、又は屋外看板等を構成する物のような、高い耐久性が求められる物を用いることが考えられる。
【0066】
以上のように、本例によれば、例えば、粉体塗装で形成する塗装膜と同様の高接着性及び高堅牢度が得られる状態でインクの層を形成することができる。また、この場合において、複数色のインクを用いることで、従来の粉体塗装法では困難であった画像の形成等も可能になる。より具体的に、本例によれば、例えば、複数色のインクを用いたカラー印刷(例えば、フルカラー印刷)や、高精細な画像を印刷すること等も可能になる。また、上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、粉体塗装法のように粉体が飛散することはなく、また、高電圧を媒体50にかけることも不要である。そのため、本例によれば、例えば、粉体塗装法での塗装を行う場合等と比べ、環境整備にかかるコストや時間を大幅に低減することができる。また、作業環境を良好にすること等も可能である。
【0067】
また、粉体塗装法の場合、原理状、被塗装物は、通常、電界を有効に印加できる導電性の金属等に限られる。これに対し、本例においては、電界を印加する必要がないため、様々な媒体50を用いることが可能である。より具体的に、本例においては、例えば、熱定着性樹脂を定着させる加熱時の温度に耐えられる様々な媒体50を用いることが可能である。このような媒体50としては、例えば、絶縁性のガラス、セラミック等の無機物、又は耐熱性プラスチック等の有機物等を用いることが考えられる。また、本例において行う印刷の結果について、例えば一般的なインクジェットプリンタで行う印刷の結果と比べた場合、様々な媒体50に対し、強固な被膜状のインクの層を形成できると考えることができる。
【0068】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、インクジェットヘッドと媒体50との間に電圧をかけることなく、媒体50への印刷を行うことが可能である。しかし、必要に応じて、インクジェットヘッドと媒体50との間に電圧をかけること等も考えられる。この場合、例えば、インクジェットヘッドから吐出するインクを媒体50に引き寄せられるように帯電させておくことで、粉体塗装法で塗装を行う場合等と同様に、インクジェットヘッドと媒体50との間の空間を広くして印刷を行うことができる。
【0069】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明や、変形例の説明等を行う。先ず、本例において用いるインクについて、補足説明を行う。上記においても説明をしたように、本例においては、乾燥することで粉体状になる成分を含むインクを用いる。そのため、本例において用いるインクについては、例えば、液体化した粉末塗装用のインク等と考えることもできる。また、このようなインクを吐出するインクジェットヘッドについては、例えば、液体化した粉末塗装用のインクを塗布する手段等と考えることができる。また、上記において説明をしたように、本例において用いるインクは、紫外線の照射により発熱する瞬間乾燥型のインクである。そのため、本例のインクについては、例えば、UV瞬間乾燥粉体分散インク等と考えることもできる。また、熱定着性樹脂粒子を含むことや、紫外線光源としてUVLEDを用いること等を考えた場合、本例のインクについて、例えば、UV瞬間乾燥型熱定着性樹脂粒子インク又はUV-LED瞬間乾燥熱定着性樹脂粒子インク等と考えることもできる。
【0070】
また、本例において用いるインクの具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形が可能である。
図4は、本例において用いるインクの例について更に詳しく説明をする図である。上記においても説明をしたように、本例においては、色材、熱定着性樹脂粒子、及び溶媒等を含むインクを用いる。そして、このようなインクの構成については、上記において説明をした構成のインクに限らず、様々に変更を行うことができる。
図4(a)~(g)は、本例において用いるインクの様々な例を示す図であり、着色された熱定着性樹脂粒子206を含むインクを用いる場合について、熱定着性樹脂粒子206の構成の様々な例を示す。
【0071】
図4(a)は、
図2(b)に示したインクの構成を再度示す図である。図中に示すように、この場合、熱定着性樹脂粒子206が顔料204を内包することにより、熱定着性樹脂粒子206が着色される。また、この構成については、例えば、色材として用いる顔料204を熱定着性樹脂粒子206中に予め分散させた構成等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、インク中で顔料204が凝集すること等を適切に防ぐことができる。また、この場合、例えばナノ顔料等のサイズの小さなインクを用いることで、高精細な印刷が可能なインクの構成を適切に実現することができる。
【0072】
また、インクの構成の変形例においては、熱定着性樹脂粒子206の表面を他の高分子物質(例えば、高分子の樹脂)で更に覆うことで、熱定着性樹脂粒子206をマイクロカプセル化した粒子を形成すること等も考えられる。この場合、例えば
図4(b)に示すように、
図4(a)に示した構成の熱定着性樹脂粒子206の外側を高分子物質208で覆うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、必要に応じて、インクに含まれる粒子の表面の性質の調整(改質)を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、赤外線ヒータ26による加熱で熱定着性樹脂粒子206を溶融させる場合において、粒子間の馴染みをよくすることで、粒子間の合粒を助ける効果を持たせること等が可能になる。
【0073】
また、インクの色材としては、顔料204に限らず、他の種類の色材を用いてもよい。この場合、例えば、インク中のいずれかの成分に対して溶解又は分散する無機又は有機の色材を用いることが考えられる。また、より具体的に、顔料204以外の色材としては、染料を用いることが考えられる。また、この場合、例えば
図4(c)に示すように、顔料204及び染料の両方を色材として用いてもよい。
【0074】
図4(c)に示す場合において、熱定着性樹脂粒子206は、染料により着色(染色)されている。また、熱定着性樹脂粒子206は、周囲を高分子物質208で覆われることで、カプセル化されている。更に、高分子物質208は、顔料204を内包した状態で、熱定着性樹脂粒子206の周囲を覆っている。この構成については、例えば、インクに含まれる粒子の中心部(コア)を構成する熱定着性樹脂粒子206が染料で着色され、その周囲にナノ顔料等の顔料204が付着(接着)した構成と考えることができる。このように構成すれば、例えば、より濃い色のインクを適切に作成することができる。また、染料及び顔料を用いることで、例えば、染料の演色性と顔料の耐候性との両方の特長を持ったインクを作成することができる。
【0075】
また、インクの色材として、染料のみを用いることも考えられる。この場合、例えば
図4(d)に示すように、染料で着色された熱定着性樹脂粒子206を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、染料により実現する高い透明性を活かして、演色性の高い印刷を行うこと等が可能になる。また、
図4(d)に示す構成の熱定着性樹脂粒子206に対し、例えば
図4(e)に示すように、高分子物質208を追加して、マイクロカプセル化すること等も考えられる。この場合も、例えば、インクに含まれる粒子の表面の性質の改質や、熱定着性樹脂粒子206を溶融させる場合に粒子間の合粒を助ける効果等を得ることができる。
【0076】
また、顔料及び染料の両方を色材として用いる構成に関しては、例えば、
図4(f)に示す構成を用いることも考えられる。この構成は、例えば、
図4(b)に示す構成に対し、更に、マイクロカプセル化のための高分子物質208を染料で着色した構成である。また、例えば
図4(g)に示すように、顔料204を内包する熱定着性樹脂粒子206を染料で着色すること等も考えられる。これらのように構成すれば、例えば、より濃い色のインクを適切に作成することができる。また、これらの場合も、染料及び顔料を用いることで、例えば、染料の演色性と顔料の耐候性との両方の特長を持ったインクを作成することができる。
【0077】
また、定着後のインクの堅牢性を更に高めるためには、例えば、インクの堅牢性を高めるための物質を更にインクに添加すること等も考えられる。
図5は、インクの構成の更なる変形例を示す図であり、インクの成分として酸化亜鉛粒子を更に添加した場合のインクの構成の例を示す。
図5(a)、(b)は、酸化亜鉛粒子を含むインクの構成の例を示す。以下において説明をする点を除き、
図5において、
図1~4と同じ符号を付した構成は、
図1~4における構成と同一又は同様の特性を有してよい。
【0078】
図5に示す構成において、インクは、溶媒202、顔料204、熱定着性樹脂粒子206、及び酸化亜鉛粒子210を含む。また、
図5(a)に示す例のインクにおいて、顔料204及び熱定着性樹脂粒子206は、熱定着性樹脂粒子206に内包されている。また、
図5(b)に示す例の場合、インクは、熱定着性樹脂粒子206に内包されている顔料204及び酸化亜鉛粒子210に加え、熱定着性樹脂粒子206の外部にも、顔料204及び酸化亜鉛粒子210を更に含んでいる。これらのようなインクを用いる場合にも、熱定着性樹脂粒子206を含むインクを用いることで、媒体50に対してインクを適切に定着させることができる。
【0079】
また、酸化亜鉛は、安定性が高く、かつ、硬い物質である。そのため、酸化亜鉛粒子210をインクに添加することにより、例えば、定着後のインクの堅牢性をより高めることができる。また、この場合において、酸化亜鉛は、ほぼ無色(例えば、透明又は白色)の物質であるため、添加によりインクの色が大きく変化すること等も生じにくい。そのため、必要に応じて、十分な量の酸化亜鉛粒子210を添加すること等も可能になる。
【0080】
また、酸化亜鉛は、紫外線を吸収することで発熱する物質である。そのため、酸化亜鉛粒子210を添加したインクにおいては、酸化亜鉛粒子210について、紫外線吸収剤として用いることもできる。この場合、紫外線光源104(
図1参照)は、紫外線の照射によりインク中の酸化亜鉛粒子210を発熱させることにより、インクを加熱する。このように構成すれば、例えば、インクを発熱させるための物質を利用して、定着後のインクの堅牢度を高めることができる。また、酸化亜鉛粒子210を紫外線吸収剤として利用する場合、紫外線光源104においては、例えば発光の中心波長が350~380nm程度のUVLEDを用いることが好ましい。UVLEDの発光の中心波長は、360~370nm程度であることがより好ましい。また、酸化亜鉛粒子210としては、例えば、平均粒径が1μm以下(例えば、0.01~1μm)程度の粒子を用いることが好ましい。酸化亜鉛粒子210の平均粒径は、好ましくは、0.2μm以下である。
【0081】
ここで、この構成のインクにおいて、酸化亜鉛粒子210は、インクに含まれる固体含有物及び酸化金属の粒子の一例である。この場合、固体含有物とは、例えば、熱定着性樹脂と共に媒体に定着する固体の物質のことである。また、固体含有物については、例えば、溶媒中に分散する固体の物質等と考えることもできる。また、固体含有物については、例えば、インクに添加されるフィラー等と考えることもできる。
【0082】
また、このような固体含有物としては、酸化亜鉛粒子210以外の物質、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、ポリシロキサン、酸化珪素、酸化アルミニウム等を用いてもよい。また、固体含有物としては、一種類の物質のみを単独で用いてもよく、複数の物質を組み合わせて用いてもよい。この場合も、酸化亜鉛粒子210を用いる場合と同様に、例えば、媒体へ定着したインクの硬さを当該固体含有物を含まない場合よりも高める物質等を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、定着後のインクの堅牢性を適切に高めることができる。また、より具体的に、このような固体含有物としては、例えば、酸化亜鉛以外の酸化金属の粒子を用いることが考えられる。また、この場合も、固体含有物として、例えば、紫外線を吸収することで発熱する酸化金属等を用いることが考えられる。また、インクに添加する固体含有物としては、紫外線吸収剤の機能を有さない物質を用いてもよい。この場合、例えば、固体含有物とは別に紫外線吸収剤をインクに添加することが考えられる。
【0083】
尚、固体含有物とは別に紫外線吸収剤をインクに添加する場合、例えば、公知の有機化合物系の紫外線吸収剤等を用いることが考えられる。また、このような紫外線吸収剤としては、例えば、ラジカル重合系の化学反応において用いられる紫外線吸収剤(ラジカル重合系の紫外線吸収剤)や、カチオン重合系の化学反応において用いられる紫外線吸収剤(カチオン重合系の紫外線吸収剤)を用いることが考えられる。また、より具体的に、ラジカル重合系の紫外線吸収剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール(型)1、α-ヒドロキシアセトフェノン(型)2~6、α-アミノアセトフェノン(型)7~9等のアセトフェノン系の紫外線吸収剤、モノアシルフォスフィンオキサイド(MAPO)、ビスアシルフォスフィンオキサイド(MAPO)等のアシルフォスフィンオキサイド系光硬化開始剤、O-アシルオキシム16、17等のO-アシルオキシム系光硬化開始剤、IRGACURE01~02等のオキシムエステル系光硬化開始剤、チタノセン等のチタノセン系光硬化開始剤、ベンゾフェノン、チオキサントン、ケトクマリン等の2分子反応型光硬化開始剤等を用いることが考えられる。また、カチオン重合系の紫外線吸収剤としては、例えば、オニウム塩27~29等のオニウム塩系の物質、ヨードニウム塩24、非イオン性のジアリールヨードニウム塩、トリアリールヨードニウム塩、ジフェニールヨードニウム塩等のヨードニウム塩又はスルフォニウム塩、イミドスルホネイト、オキシムスルホネイト等の非イオン性光カチオン重合開始剤等を用いることが考えられる。また、これら以外にも、例えば、公知の無機の紫外線吸収剤等を用いることが考えられる。また、紫外線吸収剤として、複数種類の物質をインクに添加してもよい。
【0084】
また、印刷装置10の構成等についても、様々に変更を行うことができる。
図6は、印刷装置10の構成の変形例を示す。以下に説明をする点を除き、
図6において、
図1~5と同じ符号を付した構成は、
図1~5における構成と同一又は同様の特徴を有してよい。
【0085】
上記においては、主に、媒体50にインクを定着させる後加熱手段までも含めて一体に構成された印刷装置10の構成の例について、説明をした。しかし、上記において説明をした印刷の動作と同一又は同様の動作については、例えば、複数の装置を用いて実現してもよい。この場合、例えば、印刷の動作に用いる複数の装置を組み合わせた構成について、印刷装置10と考えることができる。
【0086】
また、より具体的に、本変形例において、印刷装置10は、印刷部42、加熱部44、及び巻取部46を備える。印刷部42は、印刷装置10における本体部分(プリンタ部分)であり、媒体50へインクを吐出する動作や、媒体50上のインクを乾燥させる動作を行う。また、印刷部42については、例えば、
図1を用いて説明をした印刷装置10の構成から後加熱手段である赤外線ヒータ26を除いた構成を有する部分等と考えることもできる。
【0087】
また、加熱部44は、赤外線ヒータ26を有する部分であり、印刷部42での処理が完了した後の媒体50上のインクを赤外線ヒータ26により加熱することで、インク中の熱定着性樹脂を被膜化させて、色材と共に熱定着性樹脂を媒体50に定着させる。加熱部44については、例えば、
図1を用いて説明をした印刷装置10の構成における赤外線ヒータ26の機能を実行する部分等と考えることができる。また、本変形例において、加熱部44は、例えば、印刷部42とは別の筐体の装置として構成される。また、熱定着性樹脂として熱可塑性の樹脂を用いる場合、印刷部42については、例えば、インク中の熱定着性樹脂を溶融させる溶融加熱部等と考えることもできる。また、本変形例において、媒体50としては、加熱部44での加熱を行った後に巻き取りが行われるロール状の媒体50を用いる。巻取部46は、加熱部44での処理が完了した後の媒体50を巻き取る部分である。
【0088】
本変形例によれば、例えば、加熱部44での加熱温度を高くする場合にも、高温加熱の影響が印刷部42の各構成に及ぶことをより適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、印刷部42のヘッド部12におけるインクジェットヘッドにノズル詰まりが生じ、吐出不良が多発すること等をより適切に防止することができる。
【0089】
また、印刷装置10の構成の更なる変形例においては、後加熱手段として、赤外線ヒータ26に代えて、例えば恒温槽等を用いることも考えられる。
図7は、後加熱手段として用いる恒温槽32の構成の一例を示す。この場合、例えば、恒温槽32を有する加熱部44を印刷部と別の筐体で構成することが考えられる。また、
図7に示す場合において、媒体50としては、ロール状の媒体50等ではなく、例えば、リジットタイプの媒体50(リジットメディア)を用いている。
【0090】
また、この場合、印刷装置10の印刷部の構成としては、例えば、フラットベッドタイプの構成等を好適に用いることができる。フラットベッドタイプの構成とは、例えば、媒体50の位置を固定した状態で、ヘッド部の側を主走査方向及び副走査方向へ移動して媒体50上に画像を描く構成のことである。この場合も、例えば
図3(a)、(b)等を用いて上記において説明をしたのと同一又は同様にして、媒体50へのインクの吐出や、瞬間乾燥方式でインクを乾燥させる動作等を行うことができる。また、この場合、瞬間乾燥方式でインクを乾燥させた後には、加熱部44における恒温槽32内へ媒体50を移動させて、高温での加熱を行う。このように構成した場合も、例えば、後加熱手段として赤外線ヒータ等を用いる場合と同様に、被膜化及び平坦化した状態でインクを媒体50に強固に付着させることができる。
【0091】
また、本変形例のように、恒温槽32を用いる場合、ローラ等での搬送が難しい媒体50に対しても、より適切に後加熱を行うことができる。また、恒温槽32を用いることにより、例えば、周囲への影響を抑えつつ、より高い温度での加熱を行うこと等も可能になる。より具体的に、恒温槽32では、例えば、媒体50の温度が130℃以上になる条件での加熱を行うこと等が考えられる。
【0092】
また、上記において説明をした各構成のように、瞬間乾燥型のインクを用いる場合、媒体50にインクを定着させるために行う後加熱手段としても、インクへエネルギー線を照射することでインクを発熱させる手段を用いることが考えられる。また、この場合、例えば、媒体50の温度を大きく上昇させずに、インクの温度のみを上昇させること等も可能である。より具体的に、この場合、例えば、媒体の温度を60℃以下程度(好ましくは50℃以下程度)に抑えつつ、インクの温度を80℃以上(好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上)に加熱することが考えられる。このように構成すれば、例えば、媒体50の耐熱温度が低い場合等にも、熱定着性樹脂を適切かつ十分に加熱することができる。
【0093】
また、この場合、後加熱手段でのエネルギー線の照射については、例えば、媒体50への着弾の直後に行うエネルギー線の照射とは異なる条件で行うことが考えられる。より具体的に、上記において説明をした各構成のように、エネルギー線として紫外線(例えば、発光の中心波長が360~390nm程度の紫外線)を用いる構成の場合、ヘッド部12における紫外線光源104(
図1参照)では、例えば、インクの滲みが発生することを防ぐために、媒体50への着弾の直後のインクへ紫外線を照射する。そして、この場合、インクが激しく突沸すると、乾燥により粉体化した熱定着性樹脂等が周囲へ大きく飛散するおそれがある。そのため、この場合、紫外線を照射する条件(必要照射強度)については、インクが含む主溶媒の沸点等に応じて、例えば、溶媒の温度が沸点を大きく超えない程度に、紫外線の照射強度や照射時間を選択する。より具体的に、紫外線光源104から媒体50へ照射する単位面積あたりのエネルギーについては、例えば、0.01J/cm
2以上で5J/cm
2以下程度にすることが考えられる。また、この場合、単位面積あたりの紫外線の照射強度については、1~15W/cm
2とし、媒体50の各位置へ紫外線を照射する照射時間については、通常、1秒未満にすることが好ましい。媒体50の各位置へ紫外線を照射する照射時間は、より好ましくは、0.05~0.5秒程度である。
【0094】
これに対し、熱定着性樹脂を溶融又は硬化させるための後加熱では、インクの温度について、高い温度がある程度以上の時間続くように加熱することが好ましい。そして、この場合、例えば、媒体50や紫外線光源の温度が過度に上昇することを防ぎつつ、インクの温度を高温に維持することが好ましい。そのため、後加熱手段として用いる紫外線光源(後加熱用の紫外線光源)では、例えば、1秒間以上の間、パルス状の紫外線を媒体50上のインクへ照射することが考えられる。また、この場合、デューティー比が50%以下の紫外線をインクへ照射することが好ましい。このように構成すれば、例えば、媒体50等の温度が過度の上昇すること等を防ぎつつ、インクを適切に加熱することができる。また、より具体的に、後加熱用の紫外線光源では、例えば、単位面積あたりの紫外線の照射強度については、1~200W/cm2とし、媒体50の各位置へ紫外線を照射する照射時間については、1~100秒程度にすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、媒体50に対してインクを適切に定着させることができる。また、媒体50の耐熱温度が十分に高い場合には、紫外線の照射により、媒体50の温度についても、より高い温度(例えば100℃以上)に上昇させてもよい。また、紫外線光源104によるインクの加熱の仕方と、後加熱用の紫外線光源でのインクの加熱の仕方について、着弾直後のインクに含まれる溶媒の沸点との関係で考えた場合、例えば、紫外線光源104による加熱では媒体上のインクの温度が溶媒の沸点を超えないようにインクを加熱し、後加熱用の紫外線光源による加熱では媒体上のインクの温度がこの沸点(既に揮発除去されている溶媒の沸点)を超える温度になるようにインクを加熱すると考えることもできる。このように構成すれば、例えば、紫外線光源104での加熱時において、インクの突沸等を適切に防ぐことができる。また、後加熱用の紫外線光源での加熱時において、インクを適切かつ十分に加熱することができる。
【0095】
また、印刷装置10において、後加熱手段以外の各部についても、更に様々な変更が可能である。例えば、近年のインクジェットプリンタにおいて用いられているインクジェットヘッド(例えば、高解像度ヘッド)を用いて粉体のような粒子状の成分を含むインクを吐出する場合、通常、吐出可能な粒径は、500nm以下になる。これに対し、上記の構成においてインクに添加する熱定着性樹脂やその他の成分のサイズ等は特に限定されず、用途等に応じて、様々な粒径の物を用いることが考えられる。また、その結果、インクの成分の粒径について、例えば、数nm~数μm程度の範囲でばらつく場合もある。そのため、インクジェットヘッドのノズルの径(直径)については、必要に応じて、50μm以上等にしてもよい。また、この場合、インクジェットヘッドを駆動する信号の周波数(駆動周波数)等については、インクジェットヘッドの構成に応じて適宜変更することが好ましい。
【0096】
また、印刷に使用するインクの色についても、上記において説明をした色の限らず、様々に変更が可能である。より具体的には、例えば、YMCKの各色に加え、レッド色(R色)、グリーン色(G色)、及びブルー色(B色)の各色のインク等を更に用いることが考えられる。また、各色の淡色や、パール色、メタリック色、白色、又はクリア色等の特色のインクを更に用いてもよい。また、この場合、各色のインクとして、各色の色材、熱定着性樹脂、及び溶媒を含むインクを用いることが考えられる。また、必要に応じて、酸化亜鉛等の固体含有物を更に添加することが好ましい。また、特色のうち、クリア色とは、無色で透明な色のことである。クリア色のインクにおいて、酸化亜鉛等の固体含有物を添加する場合、固体含有物について、クリアインク用の色材を兼ねていると考えることもできる。
【0097】
また、上記においては、印刷装置10の構成として、主に、ヘッド部に主走査動作及び副走査動作を行わせるシリアル方式の構成を説明した。この場合、印刷装置10は、例えば、媒体の各位置に対して複数回の主走査動作を行うマルチパス方式により、媒体の各位置へインクを吐出する。しかし、上記において説明をしたインクや、インクの定着のさせ方等については、印字幅等の印刷の条件に関係なく適用可能である。そのため、印刷装置10の構成としては、媒体の各位置の上を1回だけインクジェットヘッドに通過させる1パスの方式でインクを吐出するライン方式(ラインプリンタ)の構成を用いること等も可能である。また、これらに限らず、印刷装置10の種類、配置、又は走査方法等を制限するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えば印刷装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・プラテン、16・・・ガイドレール、18・・・走査駆動部、20・・・プリントヒータ、22・・・プリヒータ、24・・・アフターヒータ、26・・・赤外線ヒータ、30・・・制御部、32・・・恒温槽、42・・・印刷部、44・・・加熱部、46・・・巻取部、50・・・媒体、102・・・インクジェットヘッド、104・・・紫外線光源、202・・・溶媒、204・・・顔料、206・・・熱定着性樹脂粒子、208・・・高分子物質、210・・・酸化亜鉛粒子