(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】無線周波数信号強度を用いるステーション内検証を有する電動工具システム
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20220704BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20220704BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B25F5/00 C
G05B19/418 Z
B23P21/00 307Z
(21)【出願番号】P 2018535317
(86)(22)【出願日】2017-01-04
(86)【国際出願番号】 US2017012162
(87)【国際公開番号】W WO2017120215
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-16
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504075577
【氏名又は名称】ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】カラフ ズヘル ナイム
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0277428(US,A1)
【文献】特表2013-508826(JP,A)
【文献】特開2008-217371(JP,A)
【文献】特開2015-133006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B24B3/00-3/60
B24B21/00-39/06
B25B21/00-23/18
B25D1/00-17/32
B23B35/00-49/06
B23D45/00-65/04
B27B1/00-23/00
B23P19/00-21/00
G05B19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークステーションを有する生産ライン上で用いられる産業用電動工具システムであって、
前記ワークステーションの第1のものの中の所定の位置に物理的に配置され、所定の電力でデジタル通信信号を伝搬するように構成された第1の無線周波数送受信機を有するコントローラと、
前記第1の無線周波数送受信機と通信するように構成された第2の無線周波数送受信機を有し、前記第1の無線周波数送受信機の前記伝搬されたデジタル通信信号の受信した信号強度を示す信号強度データを提供する、人間が操作可能な携帯型電動工具と、
を備え、
前記携帯型電動工具は、プロセッサ回路上で実行されるイベント駆動制御ループに従ってプロセッサ回路が仲介する所定の組み立てジョブ・ステップのシーケンスを前記工具に実行させるようにプログラムされたプロセッサ回路を有し、
前記プロセッサ回路は、前記イベント駆動制御ループの一部として、前記信号強度データについて質問し、前記信号強度データを所定の信号強度閾値と比較し、それにより、前記第1及び第2の無線周波数送受信機間の距離が、前記コントローラに近接するホーム領域を定める所定の距離を下回るかどうかを判断するようにプログラムされ、
前記プロセッサ回路は、前記イベント駆動制御ループの一部として、前記信号強度の比較を用いて前記工具が前記ホーム領域内にあるかどうかを試験し、前記試験を、前記所定の組み立てジョブ・ステップの前記シーケンスを仲介する前記制御ループ内の少なくとも1つの動作ステップとして使用するようにプログラムされることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の無線周波数送受信機は、前記第1及び第2の無線周波数送受信機間のデータの転送を仲介するデータ・リンク層を含み、前記第1及び第2の無線周波数送受信機間の物理的接続を調整する物理層をさらに含む階層化された通信規格に従って動作し、前記物理層は、前記信号強度データの生成を仲介することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2の無線周波数送受信機はWiFiプロトコルに従って動作し、少なくとも前記第2の無線周波数送受信機は、そのアンテナ入力から受信した信号の信号強度を測定し、前記測定した信号強度を前記信号強度データとして供給することを特徴とする、請求項1~請求項2のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
前記携帯型電動工具はバッテリを含み、前記バッテリにより前記第2の無線周波数送受信機及び前記プロセッサ回路に通電することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記生産ライン上に配置され、加工物がいつ前記ワークステーションの前記1つに配置されたかと検知するように配置された少なくとも1つのリミット・スイッチ又はセンサをさらに含み、前記少なくとも1つのリミット・スイッチ又はセンサは、前記コントローラに供給され、前記所定の組み立てジョブ・ステップの前記シーケンスを仲介する前記制御ループ内の少なくとも1つの動作ステップを定める制御信号を生成することを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記制御信号は、前記第1及び第2の無線周波数送受信機を用いて、前記コントローラにより無線通信で前記工具に通信されることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
第2の工具に、第2のプロセッサ回路上で実行され、前記ワークステーションの第2のものと関連付けられた第2の制御ループに従って第2のプロセッサ回路が仲介する所定の組み立てジョブ・ステップの第2のシーケンスを実行させるようにプログラムされた第2のプロセッサ回路を有する第2の携帯型電動工具をさらに含み、
前記第2の電動工具上で実行される前記第2の制御ループは、前記第2の電動工具が前記ワークステーションの前記第1のものにおいて動作するのを防止するために、前記第2の制御ループ内の信号強度データを使用することを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
第2の携帯型電動工具をさらに備え、前記第2の携帯型電動工具は、該第2の電動工具が前記ワークステーションの前記第1のものにおいて動作するのを防止するために信号強度データに依存する第2の制御ループを電子的に実施するように構成された、請求項1~請求項7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
複数のワークステーションを有する生産ライン上で用いられる産業用電動工具システムを動作させる方法であって、
前記ワークステーションの第1のものの中の所定の物理的位置に、所定の電力でデジタル通信信号を伝搬するように構成された第1の無線周波数送受信機を有するコントローラを配置するステップと、
前記第1の無線周波数送受信機と通信するように構成された第2の無線周波数送受信機を有し、前記第1の無線周波数送受信機の前記伝搬されたデジタル通信信号の受信した信号強度を示す信号強度データを提供する、人間が操作可能な携帯型電動工具を準備するステップと、
前記携帯型電動工具のプログラムされたプロセッサを用いて、プロセッサ回路上で実行されるイベント駆動制御ループに従ってプロセッサ回路が仲介する所定の組み立てジョブ・ステップのシーケンスを前記工具に実行させるステップと、
前記プログラムされたプロセッサ回路を用いて、前記イベント駆動制御ループの一部として、前記信号強度データについて質問し、前記信号強度データを所定の信号強度閾値と比較し、それにより、前記第1及び第2の無線周波数送受信機間の距離が、前記コントローラに近接するホーム領域を定める所定の距離を下回るかどうかを判断するステップと、 前記プログラムされたプロセッサ回路を用いて、前記イベント駆動制御ループの一部として、前記信号強度の比較を用いて前記工具が前記ホーム領域内にあるかどうかを試験し、前記試験を、前記所定の組み立てジョブ・ステップの前記シーケンスを仲介する前記制御ループ内の少なくとも1つの動作ステップとして使用するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の無線周波数送受信機は、前記第1及び第2の無線周波数送受信機間のデータの転送を仲介するデータ・リンク層を含み、前記第1及び第2の無線周波数送受信機間の物理的接続を調整する物理層をさらに含む階層化された通信規格に従って動作し、
前記物理層を用いて前記信号強度データの生成を仲介するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の無線周波数送受信機はWiFiプロトコルに従って動作し、少なくとも前記第2の無線周波数送受信機は、そのアンテナ入力から受信した信号の信号強度を測定し、前記測定した信号強度を前記信号強度データとして供給することを特徴とする、請求項9~請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記携帯型電動工具に取り付けられたバッテリを用いて、前記第2の無線周波数送受信機及び前記プロセッサ回路に通電するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9~請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記生産ライン上に配置された少なくとも1つのリミット・スイッチ又はセンサを用いて、加工物がいつ前記ワークステーションの前記1つに配置されたかを検知することにより、制御信号を生成するステップと、
前記制御信号を用いて、前記所定の組み立てジョブ・ステップの前記シーケンスを仲介する前記制御ループ内の少なくとも1つの動作ステップを定めるステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項9~請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記制御信号は、前記第1及び第2の無線周波数送受信機を用いて、前記コントローラにより無線通信で前記工具に通信されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2の工具に、第2のプロセッサ回路上で実行され、前記ワークステーションの第2のものと関連付けられた第2の制御ループに従って第2のプロセッサ回路が仲介する所定の組み立てジョブ・ステップの第2のシーケンスを実行させるようにプログラムされた第2のプロセッサ回路を有する第2の携帯型電動工具を準備するステップと、
前記第2の電動工具が前記ワークステーションの前記第1のものにおいて動作するのを防止するために、前記第2の制御ループ内の信号強度データを使用するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項9~請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
第2の制御ループを電子的に実施する第2の携帯型電動工具準備するステップと、
前記第2の電動工具が前記ワークステーションの前記第1のものにおいて動作するのを防止するために、信号強度データを使用するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項9~請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
プログラムを格納する非一時的
コンピュータ可読媒体であって、前記プログラムは、プロセッサ回路により動作されたときに、前記プロセッサ回路に、
前記プロセッサ回路と関連した携帯型電動工具に、前記プロセッサ回路上で実行されるイベント駆動制御ループに従って前記プロセッサ回路が仲介する所定の組み立てジョブ・ステップのシーケンスを実行させること、
前記携帯型電動工具により受信した信号源からの無線周波数信号を処理して、前記無線周波数信号の強度を反映する信号強度データを取得し、前記信号強度データを所定の信号強度閾値と比較して、前
記信号源と前記携帯型電動工具との間の距離がホーム領域
を定める所定の距離より小さいかどうか、を判断すること、及び
前記信号強度の比較を用いて
、前記ホーム領域内に前記工具があるかどうかを調べ、その結果を、前記所定の組み立てジョブ・ステップの前記シーケンスを仲介する前記イベント駆動制御ループ内の少なくとも1つの動作ステップとして用いること、
を実行させることを特徴とする、非一時的
コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、産業用電動工具システムに関する。より具体的には、本開示は、携帯型電動工具が組み立てステップのシーケンスを仲介するプロセッサを含む電動工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本項は、本開示に関する背景情報を提供するが、これは必ずしも従来技術ではない。
【0003】
出荷時設定において、組み立てラインの作業員が接近した状態で作業することは一般的である。一般に、各々が組み立て工程の異なるステップ専用である異なるワークステーションが、組み立てラインに沿って連続的に配置される。隣接するワークステーションにおける作業員が同じタイプの電動工具を使用していても、それらの工具の個々の設定が大変異なることがある。例として、2人の隣接する作業員がそれぞれ同じタイプの携帯用締結工具を用いることがある。しかしながら、それぞれのジョブが、異なるファスナ取り付けトルクの使用を必要とすることがある。例えば、1人の作業員が昼食から戻った後に不注意で近くの工具を取り上げた場合、不注意で間違った工具設定(例えば、間違ったトルク)が使用される可能性がある。この不注意による工具の交換は、工具が無線で制御され、たどるべき導管コードがない場合でも発生する可能性が高い。
【発明の概要】
【0004】
本項は、本開示の全体的な概要を提供するものであり、その全範囲又はその特徴の全てを包括的に開示するものではない。
【0005】
開示される工具の改善は、接近した状態で作業している複数の操作者が不注意で工具を交換する問題に対処する。開示されるシステムは、これを、費用のかかる工場全体にわたる工具識別及び追跡システムに対する必要性なしに行う。代わりに、開示される改善は、1つは工具自体の中に、そして、1つは工具のコントローラ・ボックスのような電気部品の中にある簡単な短距離無線周波数(RF)送受信機の対を用いる。コントローラは、ワークステーションと関連付けられた固定位置に物理的に取り付けられ、短距離無線信号を送信し、その信号の強度は、工具がコントローラに近接する所定のホーム領域内にあるかどうかを判断するために、工具により使用される。
【0006】
より具体的には、無線送受信機の対の一方に結合されたプロセッサ制御論理回路が、送受信機から、送受信機の対の他方のものから受信した信号の報告された信号強度についてのデータを取得する。RF信号強度は、送信元と宛先との間の距離の2乗に比例して低減する。従って、プロセッサ制御論理回路は、近接性の尺度として信号強度を用いて、工具とコントローラ・ボックスとの間の距離を評価する。好ましい実施形態において、RF信号は、ベース・ステーションとして機能するコントローラ及びクライアント・ステーションとして機能する工具を用いてWiFiデータを搬送する。
【0007】
工具に実装されているプロセッサ制御論理回路は、所定の閾値より上の信号強度か下の信号強度かを区別するようにプログラムされる。信号強度が閾値より上である場合、工具に実装されている回路により、工具が使用可能にされる。信号強度か閾値より下である場合、工具に実装されている回路により、工具が使用不能にされる。
【0008】
従って、作業者が工具の使用の開始を望む場合、工具を取り上げて制御ボックスからある半径方向距離内にあるホーム領域に移動させ、この半径距離内では、信号強度は閾値を上回る。次に、作業を行うために工具がホーム領域の外に移動されるとすぐに、論理回路により工具が使用可能にされる。
【0009】
工具に実装されているプロセッサ制御論理回路は、種々の異なる組み立てジョブを仲介するように構成することができる。幾つかの限定されない例として、論理回路は、開始トリガを押すことによって工具が覚醒するオン・ウェイク手順又は使用事例を実施することができる。次に、プロセッサは、工具がホーム領域内にあるかどうかをチェックし、そしてホーム領域内にある場合は、工具を使用可能にする。工具がホーム領域内にない場合、工具は、ひとたびホーム領域に入ると使用可能なままである。この使用事例の場合、次に、省エネルギー・スリープ・モードに戻るまで、又は、バッテリが取り外されるまで、工具は使用可能にされたままである。論理回路は、工具が予めプログラムされた組み立てジョブを終えた(例えば、所定数のファスナが取り付けられた)とき、プロセッサが工具を使用不能にするオン・リセット手順又は使用事例を実施することもできる。次に、工具は、ジョブ・リセット・コマンドが発行され、工具がホーム領域に入る(又はすでにホーム領域にいる)まで使用不能にされる。論理回路は、工具がホーム領域を超えて移動したとき、プロセッサがタイマーを開始するオン・タイム手順又は使用事例をさらに実施することができる。工具がホーム領域に戻る前にタイマーが終了した場合、工具は使用不能にされる。他の使用事例も考えられる。
【0010】
従って、1つの態様によると、複数のワークステーションを有する生産ライン上で使用される産業用電動工具システムが開示される。電動工具システムは、ワークステーションの1つの中の所定の位置に物理的に配置され、所定の電力でデジタル通信信号を伝搬するように構成された第1の無線周波数送受信機を有するコントローラを含む。システムは、第1の無線周波数送受信機と通信するように構成された第2の無線周波数送受信機を有し、かつ、第1の無線周波数送受信機の伝搬されたデジタル通信信号の受信信号強度を示す信号強度データを提供する、人間により操作可能な携帯型電動工具も含む。
【0011】
携帯型電動工具は、工具に、プロセッサ回路上で実行される制御ループに従ってプロセッサ回路が仲介する所定の組み立てジョブ・ステップのシーケンスを実行させるようにプログラムされたプロセッサ回路を有する。このプロセッサ回路は、信号強度データについて質問し、かつ、信号強度データを所定の信号強度閾値と比較し、それにより、第1の無線周波数送受信機と第2の無線周波数送受信機との間の距離が、コントローラに近接するホーム領域を定める所定の距離を下回るかどうかを判断するようにプログラムされる。プロセッサ回路は、さらに、信号強度の比較を用いて工具がホーム領域内にあるかどうかを試験し、かつ、所定の組み立てジョブ・ステップのシーケンスを仲介する制御ループ内の少なくとも1つの動作ステップとして試験を使用するようにプログラムされる。
【0012】
さらなる適用可能な分野は、本明細書において与えられる説明から明らかになるであろう。本概要における説明及び特定の例は、例示目的であることのみを意図し、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0013】
本明細書において記載される図面は、全ての可能な実施例を示すものではなく、選択された実施形態の例証目的のためのものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】デジタル無線周波数(例えば、WiFi)信号を介して動作可能に通信する例示的な携帯型提携工具及びコントローラの斜視図である。
【
図2】ホーム領域を定めるためのコントローラの配置を示す例示的な組み立てラインの線図である。
【
図3】工具とコントローラとの間のデジタル無線周波数結合を示し、コントローラとソケット・トレイとの間の配線接続をさらに示す、携帯型工具及びコントローラのブロック図である。
【
図4】携帯型工具内に取り付けられた論理回路基板のブロック図である。
【
図5】携帯型工具の論理回路基板内に用いられるH-ブリッジ回路及び3相モータの詳細な回路図である。
【
図6a】携帯型工具の論理回路基板により実行されるオン・ウェイク(On-Wake)ジョブ制御シーケンスを示すフローチャートである。
【
図6b】携帯型工具の論理回路基板により実行されるオン・ジョブ・リセット(On-Job-Reset)ジョブ制御シーケンスを示すフローチャートである。
【
図6c】携帯型工具の論理回路基板により実行されるオン・タイム(On-Time)ジョブ制御シーケンスを示すフローチャートである。
【
図7】携帯型工具の論理回路基板上でプロセッサ(DSP)によりジョブ制御シーケンスがどのように実施されるかを示すプログラム・コードの抜粋である。
【
図8】ジョブ制御シーケンスにより使用されるイベントを生成するために、携帯型工具のプロセッサが、どのように信号強度パラメータを試験し、使用するかを示すプログラム・コードの抜粋である。
【
図9】開示される電動工具システムの動作原理の一部を示す情報及び制御アーキテクチャである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面の幾つかの図を通して、対応する参照符号は対応する部品を示す。
【0016】
ここで添付図面を参照して、例示的な実施形態をさらに十分に説明する。産業用電動工具システムを改善するための開示される原理は、多くの形態を取ることができる。従って、例として、付属コントローラを有するコードレスの単一のスピンドル・ピストル把持型締付け工具が、
図1に示されている。本明細書で開示される原理は、他の工具構成にも適用できることが理解されるであろう。
【0017】
従って、
図1に示されるように、携帯用工具が200で示される。この工具は、ユーザが工具を動作させるために押し下げることができるトリガ・スイッチ201を含む。202のLED光のパネルは、種々の動作状態情報を人間の操作者に示し、工具が使用可能であり、使用する準備ができたときに点灯するLEDを含む。コードレスであるため、工具は、着脱可能なバッテリ・パック204を含む。工具は、異なるサイズのファスナに適合するように、ある範囲の異なる交換可能なソケットを受け入れることができ、ソケット206が、取り付けられた状態で示される。工具は、WiFiデジタル制御信号を介してコントローラ210と無線通信する。コントローラ210は、産業作業現場内の他の工具及びセンサと無線で及び多芯ケーブルを介して結合することができる。コントローラは、患者情報を工具操作者に示すディスプレイ212を提供する。
【0018】
工場環境
開示されるシステムの原理を示すために、例示的な組み立てラインの一部が
図2に示される。この例では、加工物が作業ゾーンを通り、一連の組み立てステーション14及び16を超えて進む、自動車用のエンジン10である。各々の組み立てステーションにおいて、作業者は、その組み立てステーションで必要とされる特定のタスクを実行するように具体的にプログラムされた工具20を使用する。例えば、ステーション14において、作業者は、オルタネータをエンジンに固定するためにファスナを取り付けることができ、ステーション16において、作業者は、燃料ポンプをエンジンに取り付けることができる。これらの作業者の各々は、同じヘッド・サイズを有するボルトを使用できるが、オルタネータ及び燃料ポンプを固定するのに必要なトルクは異なり得る。従って、作業者が、不注意で互いの工具を使用しないこと、又は、間違ったトルクを用いてオルタネータ及び燃料ポンプの両方を取り付けないことを保証する必要がある。
【0019】
以下にさらに十分に説明されるように、開示されるシステムは、プロセッサ制御論理回路及び関連した無線(WiFi)通信システムによるこの工具選択エラーを防止する。このシステムの基本構成部品は、工具20と、コントローラ22とを含む。コントローラ22は、部品ビン24の近く又は工具ソケット・トレイ26の近くといった予め指定された位置に物理的に配置される。好ましくは、コントローラ22は、作業者が頻繁に訪れる組み立てステーション内の何かの近くに配置すべきである。
図2に示される例では、作業者は、そのステーションで行われるステップに応じて、部品ビン24を訪れて、それぞれのオルタネータ又は燃料ポンプを取り付けるために必要とされる必要数のボルトを取得する。組み立てステーションにおいて異なるサイズのファスナが使用される場合、作業者は、工具ソケット・トレイ26を訪れて、取り付けられるファスナのための適切なサイズのソケットを取り出す。幾つかの用途において、このソケット・トレイには、コントローラ22に結合された電子センサ又はスイッチを設けることができる。このように、コントローラは、どのソケットが工具上に取り付けられたかを知り、その情報を製造作業内の他のシステム(工具自体を含む)に通信することができる。
【0020】
工具システム・アーキテクチャ
図3に示されるように、工具20及びコントローラ22はそれぞれ、WiFiプロトコルなどの適切なデジタル通信プロトコルに従って動作する無線送受信機32を含む論理回路基板を有する。システムの観点から、コントローラ22内の送受信機32は、アクセスポイント・ステーションとして動作する一方で、工具内の送受信機32は、ステーション(顧客)モードで動作する。各々の組み立てステーションにおいて、コントローラ内の基地局送受信機を、工具内の端末送受信機のみからの通信を受け入れるように構成することなどによって、アクセスポイント及び顧客が対にされる。全てのMACアドレスが異なるので、このことは、特定の工具を識別するために端末送受信機のMACアドレスを用いることによって行うことができる。
【0021】
従って、工具及びコントローラは、これらの間のWiFi通信を享受し、この通信チャネルを用いて、センサ情報を工具に供給し、また、メッセージ・パケットを工具からコントローラに供給する。現在のところ好ましい実施形態において、工具内の論理回路基板30が、工具の機能のほぼ全てを提供する。従って、工具は、ひとたび使用可能になると、コントローラとは独立して動作することができる。しかしながら、組み立てラインの作業に応じて、コントローラ内の論理回路基板30は、工具内の論理回路基板30が使用するトリガ信号及びデータを提供することができる。このように、
図2の例において、工具ソケット・トレイ26は、コントローラの論理回路基板30に電気的に接続することができ、従って、コントローラは、どのソケットがホルダから除去されたかを把握し、その情報を工具に報告することができる。同様に、34(
図2)におけるような組み立てライン上に取り付けられた加工物センサ又は感知スイッチを、コントローラの論理回路基板30に接続し、新しい加工物が加工を待っている組み立てステーションに到着したときに信号を与えることができる。コントローラは、この情報を工具に中継し、次に工具はこの情報を用いて、予めプログラムされた動作のシーケンスを実行する。
【0022】
いずれの無線周波数信号とも同様に、コントローラの送受信機32から発するWiFi信号の信号強度は、送受信機のアンテナからの距離の2乗に比例して低下する。送受信機のアンテナから発するWiFi信号は、送受信機アンテナを中心とする略球状の信号ゾーンを定める。開示されるシステムは、所定の信号強度閾値を定め、それより上では、
図2の15で示されるように、信号はホーム領域内にあると見なされる。このホーム領域は、送受信機アンテナから十分に近い半径方向距離内の略球状の位置を表し、信号強度が所定の信号強度閾値を上回ることを確実に保証する。ホーム領域15の半径方向外方の同心の領域17があり、この領域17では、信号強度は時として所定の信号閾値を瞬間的に超えることがあるが、確実にかつ常に超えるわけではない。従って、確実な動作を保証するために、ホーム領域は、信号強度が確実に(95%より高い可能性で)所定の信号強度を上回るように、アンテナ位置から半径方向に配置された地点の位置として定められる。例えば、所定の信号強度は、-30dBmとすることができる。確実にこの所定の信号強度内にある半径は、送受信機の出力電力を変えることによって変化し得る。
【0023】
無線工具アーキテクチャ
ここで
図4を参照すると、無線工具の電子部品が示される。これらの電子部品は、論理回路基板30、モータ50が結合されるモータ・ロータ・フィードバック回路40、トリガ処理回路60(
図1のトリガ22を提供する)、多機能パネル70(
図1のLED光202を提供する)、及び充電式バッテリ90が接続される高電流ドライバ回路80を含む。これらの構成部品は、示されるように電気的に接続される。
【0024】
論理回路基板30は、取り付けられたランダム・アクセス・メモリ(RAM)34及びフラッシュ・メモリ35と連携するデジタル信号プロセッサ(DSP)回路33を含む。論理回路基板30はまた、温度センサ36、リアルタイム・クロック回路37、及びWiFi送受信機回路32(
図3にも見られる)も含む。論理回路基板はまた、示されるような、5V、15V、3.6V、3.3V及び1.9Vなどの複数の異なるDC供給電圧を提供する電源供給セクション38も含む。これらの供給電圧は、論理回路基板30に取り付けられた他の構成部品をサポートするように提供される。
【0025】
モータ・ロータ・フィードバック回路40は、モータの回転位置を感知するための、リゾルバ又はディスク磁石アレイのような機構を有する。感知された位置データは、モータ・コイルを正弦曲線状に励磁させるパルス幅変調波形を生成するために、DSPプロセッサにより用いられる。
【0026】
トリガ処理回路60は、工具内に配置された手動トリガ、並びに、他の操作者の操作可能な制御からの入力を処理するトランスデューサ回路62を含む。従って、トリガ処理回路は、オペレータ・トリガ・イベント及び他の制御イベントをプロセッサ33に通信する。さらに、トリガ処理回路は、加工物を照明するのを助けるためにヘッドライトをオン及びオフする。
【0027】
高電流駆動回路は、
図5に示される3相Hブリッジ回路82と、モータ巻線の3相内の3相正弦波駆動電流を生じさせるように、パルス幅変調駆動信号をHブリッジに供給する3相駆動回路84とを含む。論理基板30上のプロセッサ33は、オン・オフ信号を供給して、これらのパルス幅変調駆動信号を生成する。電流測定回路86は、電流を監視し、モータ電流のデータ信号を再びプロセッサ33に供給する。
【0028】
Hブリッジ回路
図5を参照すると、Hブリッジ回路82が、例示的な3相モータ50に取り付けられ、Hブリッジ回路82を通じて3相交流電流が供給された状態で、より詳細に示される。Hブリッジ回路は、各々が、プロセッサ33(
図4)によりそれぞれのゲート端子に適用される駆動信号によりオン及びオフされる、電界効果トランジスタ128T及び128Bなどの6つのスイッチング・トランジスタの集まりを用いる。ダイオード134が、スイッチング・トランジスタの各々の両端にある。
【0029】
スイッチング・トランジスタは、それぞれ3つのトランジスタの2つのバンクに編成され、示されるように、トランジスタ128Tは上部バンクを定める一方で、トランジスタ128Bは下部バンクを定める。上部バンクのトランジスタ128Tは、DC供給レール130に結合され、一方、底部バンクのトランジスタ128Bは、接地レール132に結合される。上部及び下部バンクは、示されるように一緒に接続されて、U、V及びWと呼ばれるトランジスタの対を定める。各対は、同じくU、V及びWと呼ばれる3つのモータ端子の異なるものに接続される。3つの対の各々に選択的に通電して、その対応するモータ端子をDC供給レール130又は接地レール132のいずれかに接続することができる。例えば、トランジスタ128T-Uがオンにされ、トランジスタ128B-Uがオフにされた場合、モータ端子Uは、DC供給レール130に電気的に接続される。逆に、トランジスタ128T-Uがオフにされ、トランジスタ128B-Uがオンにされた場合、モータ端子Uは、接地レール132に電気的に接続される。
【0030】
プロセッサ33は、トランジスタを選択的に切り換え、電流が所望の流れ方向及び所望の時間にそれぞれのモータ・コイルを通って流れるようにプログラムされる。例えば、トランジスタ128B-Vを同時にオンにする間、トランジスタ128T-Uをオンにすることによって、電流は、端子Uから端子Vの方向にコイルL1を通って流れる。コイルL1を通る電流を反対方向に誘導するために、コンピュータ又はプロセッサは、トランジスタ128T-V及び128B-Uをオンにする。この方法で、コンピュータ又はプロセッサ33により、電流は、3つのモータ・コイルの各々を通っていずれの方向に選択的に流れることができる。上部及び下部バンク・トランジスタのあらゆる所定の対において、コンピュータ又はプロセッサ33は、これがDC供給レール130と接地レール132との間の短絡をもたらすので、上部トランジスタ及び下部トランジスタの両方を同時に切り換えないようにプログラムされる。
【0031】
それぞれの駆動信号は、コンピュータ33により協調した方法で制御されるので、3つのモータ・コイルL1、L2及びL3は、適切な交流波形で励磁される。具体的には、スイッチング・トランジスタは、正確に制御された時間シーケンスにおいてオン及びオフにされ、3つのモータ巻線内に3つの正弦波の交流駆動電流を生成する3つのパルス幅変調駆動信号を生成する。
【0032】
イベント駆動制御構造
基本的なパルス幅変調駆動信号を供給することに加えて、プロセッサ33は、高レベルの組み立てタスク指向又はジョブ指向命令の仲介も担当する。例えば、特定の組み立てステップが2つのボルトの取り付けを必要とする場合、プロセッサ33は、これらのステップの両方がいつ達成されたかをカウントするようにプログラムされ、工具の電源が切られるとすぐに、次のジョブを開始するためにリセット信号を待つ。より具体的には、プロセッサ33は、実行されるジョブに応じてプログラムで変えることができるイベント駆動制御ループを実施するようにプログラムされる。
【0033】
図6a~
図6cは、幾つかの例示的なイベント駆動制御ループを示す。これらの例示的な制御ループは、工場の組み立てライン環境内での可能な使用事例の一部を示す。他の使用事例も考えられる。これらの使用事例の各々を見る前に、イベント駆動制御ループ・アーキテクチャについての幾らかの一般的な情報が助けになり得る。工具はバッテリ駆動式であるので、プロセッサ33は、工具をバッテリ節約スリープ状態にする能力を有する。このスリープ状態において回路の多くの電源は切られている。手持ち式工具のトリガを押すことによって、ウェイクアップ信号を提供することができる。ひとたび覚醒すると、プロセッサは、複数のイベント駆動制御ループ・プログラムの選択されたものをロードし、その制御ループの実行を開始する。プロセッサは、ウェイクアップ時にどの制御ループ・プログラムをロードし、実行するかを識別する情報をメモリに格納する。
【0034】
オン・ウェイク
図6aにおいて、オン・ウェイク使用事例が示される。この使用事例においては、200におけるように手持ち式工具上の開始トリガを押すことによって、工具が覚醒される。トリガが押されると直ちに動作を開始する従来の工具とは異なり、この使用事例においては、202におけるように、イベント駆動制御ループが工具使用不能状態に入る。ステップ204において工具が覚醒しない(すなわち、依然としてスリープ状態にある)場合、制御ループは単に、もとの工具使用不能状態202に循環する。
【0035】
工具が覚醒状態の場合、ステップ206において、制御ループは、工具がホーム領域(
図2のホーム領域のような)内にあるかどうかを試験する。工具がホーム領域内にある場合、ステップ208において、工具は使用可能状態にされる。工具がホーム領域内にない場合、制御ループはステップ202に戻り、そこで使用不能状態に入る。
【0036】
ステップ208において、ひとたび工具が使用可能にされると、工具をホーム領域から離れるように動かすことができることを理解するのが重要である。従って、ホーム領域内にある間、組み立てジョブ機能(例えば、ファスナを加工物に固定する)を実行する必要はない。ホーム領域は、代わりに、特定の組み立てジョブ割り当てにより指示されるような、作業者が定期的に訪れる領域として考えることができる。従って、工具がホーム領域内にあるかどうかの試験(例えば、ステップ206)は、単に、制御ループ・プログラムが通常の動作サイクルの一部として応答するイベントである。信号強度の評価に依存するホーム領域の存在の試験は、制御ループが指示したときにのみ必要とされる。
【0037】
従って、オン・ウェイク使用事例は、開始トリガを押すことによって、工具を覚醒させる。次に、プロセッサは、工具がホーム領域(適用可能なステーション内検証ゾーン)内にあるかどうかを確かめる。工具が検証ゾーン又はホーム領域内にある場合、プロセッサは、工具が再びスリープになるまで又はバッテリが除去されるまで、工具を使用可能にする。工具がホーム領域内にない場合、工具は使用不能なままである。
【0038】
オン・ジョブ・リセット
図6bにおいて、オン・ジョブ・リセット使用事例が示される。この使用事例に関連するステップの一部は、オン・ウェイク事例(
図6a)のものと同じである。ステップが同じ場合、同様の参照番号が使用されている。オン・ジョブ・リセット使用事例は、例えば、組み立てステップが所定のシーケンスに従い、組み立てライン上に新しい加工物が到着したときにこれをリセットしなければならない場合などに使用することができる。従って、200において開始トリガが押されたときに、オン・ジョブ・リセット使用事例のための制御ループが始まる。オン・ウェイク事例におけるように、次に、202において、工具が使用不能状態にされる。組み立てラインからのコマンド信号(例えば、新しい加工物が組み立てライン上に到着したときにセンサ又はスイッチ34によりトリガすることができる)などにより、ジョブ・リセット信号が送られた場合、プロセッサは、ステップ210において、上述のように工具がホーム領域にあるか又は検証ゾーン内にあるかを試験するステップ206に制御を渡すことにより、ステップ210に応答する。ジョブ・リセット信号を受信するまで、制御ループは、引き続き工具使用不能状態202に循環する。
【0039】
制御ループがステップ206に達したときに工具がホーム領域又は検証ゾーン内にある場合、制御ループは、工具が使用可能にされるステップ208に制御を渡す。示されるように、次に、ステップ212においてジョブが完了するまで、工具は使用可能状態にあるままである。この点で、ジョブ完了試験は、実行する必要がある組み立てプロセスの各々に対応する多くのサブステップ(図示せず)を含み得ることが留意される。これは、2つのファスナを加工物に取り付けるような簡単なプロセスとすることができ、又は潜在的に予めプログラムされた異なるトルクを用いて、異なるサイズのファスナに適合するように、幾つかのソケット変更を必要とするより複雑なプロセスとすることができる。
【0040】
オン・タイム
図6cにおいて、オン・タイム使用事例が示される。既述のように、同様のステップには同様の参照番号が与えられる。この使用事例において、工具がホーム領域又は検証ゾーンの外に移動すると、プロセッサにより開始されるタイマーが、カウントダウンを開始する。工具がホーム領域に戻る前にタイマーが終了した場合には、工具は、ホーム領域に戻るまで、使用不能にされる。従って、示されるように、200においてプロセスが開始した後、214においてタイマーがリセットされる。206において試験されるときに工具がホーム領域内にある場合、208において工具は使用可能にされ、制御はステップ214に戻り、そこで再びタイマーをリセットする。従って、工具がホーム領域内に留まっている限り、工具は使用可能にされ、タイマーは連続的にリセットされる。
【0041】
ステップ206において工具がホーム領域内にない場合、制御はステップ216に進み、そこで、タイマーが満了したかどうかを判断するためのチェックが行われる。満了していない場合、制御は、単に折り返してステップ206に戻る。工具が、タイマーが満了するまでホーム領域の外に留まっていた場合、ステップ216における試験は、制御をステップ202に渡し、そこで工具が使用不能にされる。工具がホーム領域に入った場合、タイマーは再スタートする。
【0042】
例示的なソース・コードの詳細
プロセッサ33がどのようにプログラムされるかについての付加的な詳細を与えるために、以下の実行可能コードの抜粋について論じる。このコードは、DSP内の内部メモリに、又は代替的にフラッシュRAM34(
図4)に格納すること、及びプロセッサ33によりアクセスすることが可能であり、プロセッサに、コードが記述するステップを実行させることが理解されるであろう。
【0043】
開示される実施形態において、プロセッサ33が実施する制御ループは、イベント駆動式である。従って、制御ループは、イベントを定期的に処理し、この定期的処理の一部として、制御ループはWiFi信号強度を評価する。より具体的には、制御ループ・コードは、信号強度が変化したときにイベントがトリガされるように書かれる。従って、信号強度の変化は、制御ループ内のトリガ・イベントでもある。
【0044】
図7のコードの抜粋は、イベントを処理するために基本的な制御ループがどのように構成され得るかを示す。
図7のコードは、指定された条件が満たされた場合に各々が識別された機能を実施するケース・ステートメントのシーケンスを含む。幾つかのケース・ステートメントが、どのように「in_zone」条件、すなわちnot in zone(ゾーン内にない)条件(!in_zone)を試験するかに留意されたい。例えば、ケースMSG_JOB_COMPLETEステートメントの23行目、及びnot in zone(ゾーン内にない)(!in_zone)がケース・ステートメント試験の一部であるケースMSG_PARTENTRYステートメントの29行目を参照されたい。このin_zone条件は、信号強度の変化が確認されるたびにメモリ内にフラグを設定及びリセットすることによって、プロセッサにより維持される。
【0045】
in_zoneフラグの設定又はリセットを担当するコードが
図8に示される。示されるコードにおいて、受け取った信号強度センサは、SENSOR_RSSIと示される。ブーリアン・フラグin_zoneは、3~11行目にわたるIFステートメントにより設定される。4行目において、所定の信号強度が、変数zone.areaとして格納される。これは、数値定数(dBmでの)として表すことができ、これより下では、工具は、ゾーンの外(ホーム領域の外)にあると考えらえる。従って、4行目において、工具の論理回路基板30(
図4)上のWiFi送受信機32により報告される信号強度は、変数IParamにより表される。この値を比較して、これがzone.areaの数値定数により格納された所定の信号強度を下回るか又はこれに等しいかを判断する。試験により実際の信号強度が所定の信号強度に等しいか又はこれを下回るかが明らかになった場合、IFステートメントは失敗する。しかしながら、実際の信号強度が所定の信号強度と等しくない又はこれより下でない場合、IFステートメントは成功し、6~8行目におけるさらなるステップが行われる。これらのステップは、in_zoneフラグを、試験をパスした条件(in_zone)と等しくなるように設定し、次に、工具がin_zoneである(すなわち、ホーム領域内にある)他の関係するプロセスに警告するPostEventメッセージを送ることを含む。
【0046】
情報及び制御アーキテクチャ
開示される動力工具システムは、種々の情報交換及び制御ステップが異なるアーキテクチャ層にどのように入るかを示す
図9を参照してよりよく理解される情報及び制御アーキテクチャを実装する。上部層300には、組み立てステーション・タスクがある。示されるように、これらのタスクは、組み立てステーションにおいて工具を用いて作業者により実行される個々のステップを含む。従って、組み立てステーション・タスク・レベル300において、実行される組み立てプロセスは、組み立てステーションにおいて加工物(例えば、エンジン)が到着するのを待つステップ302、部品ビンから部品(例えば、送水ポンプ)を取得するステップ304、部品を加工物上に配置するステップ306、ファスナを取り付けるステップ308、及び工具を用いてファスナを締め付けるステップ310のようなステップを含む。ステップ304において部品ビンから部品を取得する際、作業者がコントローラ22のすぐ近くに移動したが、正しい工具を手に取ったことを保証する自動的に実行されるステップは、作業者には明白に明らかではない。このチェックするステップは、目に見えない形で自動的に生じ、情報及び制御アーキテクチャにおけるずっと下の層で行われる。
【0047】
組み合立てステーション・タスク・レベル300におけるステップの一部は、組み立てラインに沿って配備される電子システムからの情報を必要とする。例えば、加工物がいつワークステーションに到着したかを判断するために、コントローラ22により、センサ又はリミット・スイッチに質問し、次に、コントローラ22は、この情報を工具20に通信する。このシステム間メッセージ通信は、システム・メッセージ処理層320において行われる。コンピュータ・ネットワークを通信インフラストラクチャの一部として用いる例示的な組み立てプラントにおいて、これらのシステム間メッセージは、一般的に、コンピュータ・ネットワーク上で通信される。従って、システム・メッセージ処理層320において、リミット・スイッチ又はセンサ34は、その変化状態を、特定のコントローラ22が加入するイベント・メッセージ322として通信する。加入しているコントローラは、リミット・スイッチ又はセンサの現存状態をそのメモリに格納し、ステップ324においてその状態情報を工具と交換するようにプログラムされる。
【0048】
システム・メッセージ処理層の下には、工具制御論理層340がある。この層において、
図6a~
図6cの制御プロセスにより例示されるフロー制御論理が実行される。従って、層340内の制御論理ステップは、作業者が工具を使用しようと(例えば、層300におけるステップ310において、ファスナを締め付けようと)試みるときに、工具が応答する方法を確立する。工具が、適用可能な工具フロー制御論理(例えば、
図6a~
図6c)を介して使用可能状態にされた場合、締め付けるステップの進行が許可される。使用可能状態にされていない場合、締め付けるステップは阻止される。
【0049】
既述のように、システム・メッセージ処理層320において実行されるステップの多くは、ネットワーク通信を要する。センサ又はリミット・スイッチ34とコントローラ22との間のような2つの固定装置間の通信は、適切なイーサネット・ケーブル等を介してネットワーク上で通信するように配線接続することができる。しかしながら、工具10は携帯型であり、従って、適切な無線通信機構が提供される。現在のところ好ましい実施形態において、無線通信は、WiFi(すなわち、IEEE802.11規格)を用いて提供される。
【0050】
WiFiプロトコル自体は、OSIモデルに従って通信層にアーキテクチャ的に分類される。OSIモデルは、7つの層:すなわち、アプリケーション層362(最上位)、プレゼンテーション層364、セッション層366、トランスポート層368、ネットワーク層370、データ・リンク層372、及び物理層374(最下位)を定める。WiFi規格は、データ・リンク層をメディア・アクセス制御(MAC)層及び論理リンク(LLC)層に細分する。MAC層は、ネットワーク上の共有チャネルにわたる2つの通信装置のネットワーク・インターフェース・カード(NIC)間のデータ・パケットの移動を担当している。LLC層は、メッセージ・フレームの同期化、フロー制御及びエラー・チェックを担当している。
【0051】
従って、携帯型工具と組み立てプラント内の他の装置との間で通信される情報は、情報を伝達するためにデータ・リンク層(及び上の層)に依存する。情報交換の観点から、OSI物理層372は、本質的に無関係である。言い換えれば、工具とそのコントローラの間、又はコントローラとセンサ又はリミット・スイッチの間のような、デバイス間のメッセージは、通信を担当する物理機構に関係なく行われる。言い換えれば、こうした情報通信は、信号がイーサネット、WiFiによって送られても、又はさらには赤外線で送られても、同じである。
【0052】
開示される工具制御システムの1つの重要な一意の態様は、工具がホーム領域内にあるかどうかを判断するために用いられる信号強度情報が、上述のOSI層362~370のいずれにおいても通信されないことである。むしろ、信号強度信号は、物理層372の一部として通信される。この点で、通常、WiFi信号の信号強度は、通信装置が、通信が実施可能であるかどうかを判断するのを可能にするように伝達される。信号強度が十分ではない場合、通信が試みられないことさえある。しかしながら、開示される動力工具制御システムは、有利なことに、工具がホーム領域の近くにあるかどうかを判断する全く異なる目的のために、この信号強度情報を使用する。本質的に、開示される動力工具制御システムは、全く異なる目的のために、WiFiプロトコルの一部として与えられる機構を利用する。その結果、携帯型工具がホーム領域内にあるか又はあったかを確認する、洗練され、効果的かつ経済的な方法がもたらされる。
【0053】
実施形態の上記の説明は、図示及び説明のために与えられている。これは、網羅的であること又は本開示を限定することを意図するものではない。具体的に示され又は説明されていない場合でも、特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されるものではなく、適用可能な場合には、交換可能であり、選択される実施形態において用いることができる。特定の実施形態の個々の要素又は特徴はまた、様々な方法で変化し得る。こうした変形は、本開示からの逸脱とみなすべきではなく、全てのこうした変更は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
10:エンジン
14、16:組み立てステーション
20、200:工具
22、210:コントローラ
24:部品ビン
26:ソケット・トレイ
30:論理回路基板
32:送受信機
33:プロセッサ
34:センサ又はスイッチ
36:温度センサ
37:リアルタイム・クロック回路
40:モータ・ロータ・フィードバック回路
50:モータ
60:トリガ処理回路
62:トランスデューサ回路
70:多機能パネル
80:高電流ドライバ回路
82:3相Hブリッジ回路
84:3相駆動回路
86:電流測定回路
90:バッテリ
128B、128T:電界効果トランジスタ
130:DC供給レール
132:接地レール
134:ダイオード
201:トリガ・スイッチ
202:LED光のパネル
205:バッテリ・パック
212:ディスプレイ
L1、L2、L3:モータ・コイル