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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】放熱構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220704BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20220704BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H01L23/36 D
H01L23/46 B
H05K7/20 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019099100
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020194863
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 充晃
(72)【発明者】
【氏名】杉村 一男
(72)【発明者】
【氏名】椿 和也
(72)【発明者】
【氏名】大石 英一郎
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-148618(JP,A)
【文献】特開2008-193017(JP,A)
【文献】特開2015-192057(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1469700(CN,A)
【文献】特開2014-179483(JP,A)
【文献】特開2003-142864(JP,A)
【文献】特開2010-267912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を発する電子部品に接触する接触面を含む受熱面を有し前記接触面に接触した前記電子部品の熱を放熱する放熱部と、
前記電子部品を囲うように配置され前記受熱面に接触して設けられ前記放熱部を介して伝導される前記電子部品の熱を蓄熱する蓄熱部と、
前記蓄熱部及び前記電子部品を収容する筐体と、を備え、
前記蓄熱部は、前記電子部品が内側に位置する蓄熱開口部を有し、前記電子部品が前記蓄熱開口部に位置した状態で前記電子部品を囲い、
前記筐体は、前記蓄熱開口部の軸線方向の一方側から前記蓄熱部が組み付けられ前記軸線方向の他方側から前記電子部品が組み付けられ、
前記軸線方向において前記蓄熱開口部の内側に位置し前記電子部品が挿通される筐体開口部を有することを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
前記電子部品及び前記蓄熱部と前記受熱面との間に設けられた熱伝導部材を備える請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
熱を発生する電子部品とは離れて設けられ前記電子部品により発生する熱を放熱する放熱部と、
前記電子部品及び前記放熱部を接続し前記電子部品により発生する熱を前記放熱部に伝導する熱伝導部材と、
前記放熱部側に設けられ前記電子部品により発生する熱を蓄熱する蓄熱部と、を備えることを特徴とする放熱構造。
【請求項4】
熱を発生する電子部品とは離れて設けられ前記電子部品により発生する熱を放熱する放熱部と、
前記電子部品及び前記放熱部を接続し前記電子部品により発生する熱を前記放熱部に伝導する熱伝導部材と、
記電子部品により発生する熱を蓄熱する蓄熱部と、を備え、
前記蓄熱部は、前記放熱部側に設けられ前記熱伝導部材を介して前記放熱部に対向して位置することを特徴とする放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放熱構造として、例えば、特許文献1には、発熱体から伝導された熱を放熱する冷却体を備えた冷却装置が開示されている。冷却体は、蓄熱体を冷却体の本体内部に埋め込むことで小型化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-93848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の冷却装置は、例えば、蓄熱体が冷却体の本体よりも熱伝導率が低いため、内部に埋め込まれた蓄熱体により冷却体の本体の熱伝導が悪化し冷却体の性能が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、適正に放熱することができる放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る放熱構造は、熱を発する電子部品に接触する接触面を含む受熱面を有し前記接触面に接触した前記電子部品の熱を放熱する放熱部と、前記電子部品を囲うように配置され前記受熱面に接触して設けられ前記放熱部を介して伝導される前記電子部品の熱を蓄熱する蓄熱部と、前記蓄熱部及び前記電子部品を収容する筐体と、を備え、前記蓄熱部は、前記電子部品が内側に位置する蓄熱開口部を有し、前記電子部品が前記蓄熱開口部に位置した状態で前記電子部品を囲い、前記筐体は、前記蓄熱開口部の軸線方向の一方側から前記蓄熱部が組み付けられ前記軸線方向の他方側から前記電子部品が組み付けられ、前記軸線方向において前記蓄熱開口部の内側に位置し前記電子部品が挿通される筐体開口部を有することを特徴とする。
【0007】
上記放熱構造において、前記電子部品及び前記蓄熱部と前記受熱面との間に設けられた熱伝導部材を備えることが好ましい。
【0009】
本発明に係る放熱構造は、熱を発生する電子部品とは離れて設けられ前記電子部品により発生する熱を放熱する放熱部と、前記電子部品及び前記放熱部を接続し前記電子部品により発生する熱を前記放熱部に伝導する熱伝導部材と、前記放熱部側に設けられ前記電子部品により発生する熱を蓄熱する蓄熱部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る放熱構造は、熱を発生する電子部品とは離れて設けられ前記電子部品により発生する熱を放熱する放熱部と、前記電子部品及び前記放熱部を接続し前記電子部品により発生する熱を前記放熱部に伝導する熱伝導部材と、前記電子部品により発生する熱を蓄熱する蓄熱部と、を備え、前記蓄熱部は、前記放熱部側に設けられ前記熱伝導部材を介して前記放熱部に対向して位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る放熱構造は、電子部品を囲う蓄熱部を備えることにより電子部品の熱を適正に放熱することができる。また、本発明に係る放熱構造は、電子部品及び放熱部を接続する熱伝導部材と、放熱部側又は電子部品側のいずれか一方側に設けられる蓄熱部とを備えるので、電子部品の熱を適正に放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る放熱構造の構成例を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る放熱構造の第1放熱例を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る放熱構造の第2放熱例を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る半導体の温度上昇例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の第1変形例に係る放熱構造の構成例を示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態の第1変形例に係る放熱構造の構成例を示す分解斜視図である。
図7図7は、第1実施形態の第2変形例に係る放熱構造の構成例を示す分解斜視図である。
図8図8は、第2実施形態に係る放熱構造の構成例を示す断面図である。
図9図9は、第2実施形態の変形例に係る放熱構造の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔第1実施形態〕
図面を参照しながら実施形態に係る放熱構造1について説明する。図1は、第1実施形態に係る放熱構造1の構成例を示す断面図である。放熱構造1は、電子部品としての半導体2から発生する熱を放熱するものである。放熱構造1は、例えば、図1に示すように、放熱部10と、蓄熱部20と、ケース41とを備える。
【0016】
ここで、以下の説明では、後述する蓄熱開口部23の軸線に沿った方向を軸線方向と称する。軸線方向は、放熱部10と蓄熱部20とが積層される積層方向と同じ方向である。幅方向は、後述する放熱フィン12の複数の突起12aが並ぶ方向に沿った方向である。奥行き方向は、軸線方向及び幅方向に直交する方向である。
【0017】
放熱部10は、半導体2の熱を放熱するものである。放熱部10は、銅やアルミニウム等の金属により形成されている。放熱部10は、放熱板11と、放熱フィン12とを有する。放熱板11は、板状に形成され、積層方向において当該放熱板11の一方側に受熱面11aを有する。受熱面11aは、平面状に形成され、半導体2の接続面が接続される。受熱面11aは、半導体2の接続面よりも大きく形成され、受熱面11aの中央部に半導体2の接続面が接触する接触面11bを有する。
【0018】
放熱フィン12は、放熱板11に設けられ受熱面11aとは反対側に形成されている。放熱フィン12は、放熱板11と一体形成され、複数の突起12aが設けられている。複数の突起12aは、それぞれが板状に形成され、幅方向に沿って並んでいる。放熱フィン12は、複数の突起12aを有することで、伝熱面積を拡大し、放熱効果を向上させている。
【0019】
蓄熱部20は、熱を蓄熱するものである。蓄熱部20は、例えば、周知の固液相変化材や固体蓄熱材等により構成される。固液相変化材は、物質が固体から液体に相変化(融解)するときに熱を蓄え、液体から固体に相変化(凝固)するときに熱を放熱するものである。固体蓄熱材は、相変化せずに蓄熱及び放熱するものである。蓄熱部20は、固液相変化材を用いる場合、内部が空洞になったアルミニウム等の熱伝導性のよい金属ケースに固液相変化材を充填口から充填し、充填後、当該充填口を封止することで形成される。また、蓄熱部20は、固液相変化材を用いる場合、固液相変化材を小型カプセルに封入し、この小型カプセルを樹脂に混ぜて蓄熱材を形成してもよい。
【0020】
蓄熱部20は、板状に形成され、蓄熱部本体21と、当接面22と、蓄熱開口部23とを有している。当接面22は、積層方向において蓄熱部本体21の放熱部10側に設けられ、放熱部10の受熱面11aに当接している。蓄熱開口部23は、蓄熱部本体21の中央部に設けられ、開口されている。蓄熱開口部23は、例えば、半導体2の外形に合わせて矩形状に形成されている。蓄熱開口部23は、その内側に半導体2が挿通され、当該半導体2が位置している。蓄熱部20は、半導体2が蓄熱開口部23に位置した状態で半導体2を囲い、幅方向及び奥行き方向において半導体2との間に一定の間隔が設けられている。つまり、蓄熱部20は、半導体2が蓄熱開口部23に位置した状態で当該半導体2を挟み、当該半導体2とは非接触の状態である。蓄熱部20は、ケース41に収容され保持された状態で、放熱部10に組み付けられている。蓄熱部20は、その当接面22が放熱部10の受熱面11aに接触して設けられることで、放熱部10を介して伝導される半導体2の熱を蓄熱する。蓄熱部20は、半導体2の熱が後述する蓄熱温度T2(図4参照)に到達すると、放熱部10を介して半導体2の熱を蓄熱し、半導体2の熱が蓄熱温度T2に到達しないと、当該半導体2の熱を蓄熱しない。
【0021】
ケース41は、蓄熱部20を収容するものである。ケース41は、例えば、樹脂や金属等の素材により形成される。ケース41は、その内側に第1収容部41a(図6参照)を有している。第1収容部41aには、蓄熱部20が収容されている。ケース41は、蓄熱部20の当接面22を除いて、第1収容部41aに収容された蓄熱部20の外周面を覆う。ケース41は、金属の素材により形成した場合、当該ケース41からも蓄熱部20に熱を伝えることがことができ、蓄熱部20に熱を効率よく伝えることができる。
【0022】
次に、放熱構造1の放熱例について説明する。図2は、第1実施形態に係る放熱構造1の第1放熱例を示す断面図である。図3は、第1実施形態に係る放熱構造1の第2放熱例を示す断面図である。図4は、第1実施形態に係る半導体2の温度上昇例を示す図である。図4では、半導体2に流れる電流Iと半導体2の温度Tとの関係を示している。図4では、横軸が時間を表し、縦軸が電流又は温度を表している。
【0023】
放熱構造1は、図4に示すように、時刻t1から時刻t2の間、通常電流値Iaの電流Iが半導体2に流れた場合、半導体2の熱が放熱部10に伝わり、当該放熱部10により半導体2の熱が放熱される(図2参照)。このとき、半導体2の上昇温度T1は、半導体2の消費電力と放熱部10の熱抵抗の積により求められる。蓄熱部20が蓄熱を開始する蓄熱温度T2は、図4に示すように、通常電流値Iaの電流Iが半導体2に流れた場合における半導体2の上昇温度T1と、半導体2が故障する故障温度T3との間に設定されている。これにより、蓄熱部20は、通常電流値Iaの電流Iが半導体2に流れている場合には、半導体2の温度Tが蓄熱温度T2に到達しないので半導体2の熱を蓄熱しない。
【0024】
一方で、放熱構造1は、図4に示すように、時刻t2から時刻t3の間、大電流値Ibの電流Iが半導体2に流れた場合、半導体2が通常時の上昇温度T1を超えて温度上昇する。このとき、放熱部10も、半導体2の通常時の上昇温度T1を超えて温度上昇する。そして、放熱構造1は、放熱部10の温度が蓄熱温度T2に到達すると、蓄熱部20が放熱部10を介して半導体2の熱を蓄熱する(図3参照)。
【0025】
これにより、放熱構造1は、大電流値Ibの電流Iが半導体2に流れても、当該半導体2の温度Tを蓄熱温度T2以下に抑制することができ、半導体2の温度Tを故障温度T3よりも小さくすることができる。放熱構造1は、大電流値Ibの電流Iが半導体2に流れた後、半導体2に流れる電流Iが通常電流値Iaの電流Iに戻ると(時刻t3)、蓄熱部20に蓄熱された熱が放熱部10に伝わり、この放熱部10に伝わった熱を放熱する。これにより、放熱構造1は、半導体2の温度Tを半導体2の通常時の上昇温度T1に戻すことができる。なお、図4に示す破線部分の温度Taは、蓄熱部20により半導体2の熱を蓄熱しない場合の温度上昇を表しており、半導体2の故障温度T3を超えている。
【0026】
以上のように、第1実施形態に係る放熱構造1は、放熱部10と、蓄熱部20とを備える。放熱部10は、熱を発する半導体2に接触する接触面11bを含む受熱面11aを有し、接触面11bに接触した半導体2の熱を放熱する。蓄熱部20は、半導体2を挟むように配置される。蓄熱部20は、例えば、半導体2が内側に位置する蓄熱開口部23を有し、半導体2を囲う。そして、蓄熱部20は、受熱面11aに接触して設けられ、放熱部10を介して伝導される半導体2の熱を蓄熱する。
【0027】
この構成により、放熱構造1は、大電流値Ibの電流Iが半導体2に流れた際に当該半導体2に発生した熱を放熱部10を介して蓄熱部20に蓄熱することができる。そして、放熱構造1は、この蓄熱部20に蓄熱された熱を放熱部10を介して放熱することができる。これにより、放熱構造1は、大電流値Ibの電流Iが半導体2に流れた場合でも適正に放熱することができる。放熱構造1は、蓄熱部20の当接面22と放熱部10の受熱面11aとが広い面積で接触しているので、放熱部10と蓄熱部20との間で熱を効率よく伝えることができる。放熱構造1は、蓄熱部20を用いることで、蓄熱部20を用いないで放熱する場合と比較して小型化することができる。放熱構造1は、従来のように蓄熱体を冷却体の本体内部に埋め込む構造と比較して、放熱部10の性能が低下することを抑制できる。この結果、放熱構造1は、半導体2の熱を適正に放熱することができる。
【0028】
〔第1実施形態の第1変形例〕
次に、第1実施形態の第1変形例について説明する。なお、第1実施形態の第1変形例では、第1実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図5は、第1実施形態の第1変形例に係る放熱構造1Aの構成例を示す断面図である。図6は、第1実施形態の第1変形例に係る放熱構造1Aの構成例を示す分解斜視図である。第1変形例に係る放熱構造1Aは、熱伝導シート30を備える点で第1実施形態に係る放熱構造1とは異なる。
【0029】
第1変形例に係る放熱構造1Aは、図5及び図6に示すように、放熱部10と、蓄熱部20と、サーマルインターフェースマテリアル(熱伝導部材)としての熱伝導シート30と、筐体40とを備える。熱伝導シート30は、放熱部10よりも熱伝導率が高い部材である。熱伝導シート30は、薄膜状又は薄板状に形成され、例えば、グラファイト(黒鉛)シートが用いられるが、これに限定されない。熱伝導シート30は、放熱板11の受熱面11aと同等の大きさに形成されている。熱伝導シート30は、放熱板11の受熱面11aと、半導体2及び蓄熱部20との間に設けられている。つまり、熱伝導シート30は、積層方向の一方側の面が放熱板11の受熱面11aに接触し、且つ、積層方向の他方側の面が半導体2及び蓄熱部20に接触した状態で、放熱板11の受熱面11aと半導体2及び蓄熱部20との間に介在している。熱伝導シート30は、例えば、大電流値Ibの電流Iが半導体2に流れた場合、半導体2の熱を放熱部10よりも速く蓄熱部20に伝えることができ、蓄熱効果を向上することができる。
【0030】
筐体40は、各種部品を収容するものである。筐体40は、樹脂や金属等の素材により形成される。筐体40は、ケース41と、カバー42とを有する。ケース41は、図6に示すように、外形が矩形状に形成され、第1収容部41aと、第2収容部41b(図5参照)と、筐体開口部としてのケース開口部41cとを有する。第1収容部41aは、軸線方向において放熱部10側に設けられ、放熱部10側が開口されている。第1収容部41aは、その内側が蓄熱部20の形状に合わせて形成されている。
【0031】
第1収容部41aは、底面部410と、内側壁部411と、外側壁部412とを有する。底面部410は、軸線方向において、第1収容部41aの開口縁413とは反対側に設けられた面部であり、蓄熱部20を支持する。内側壁部411は、ケース開口部41cの縁部に沿って設けられ、軸線方向に沿って立設している。外側壁部412は、第1収容部41aの外形を規定し、軸線方向に沿って立設している。第1収容部41aは、底面部410、内側壁部411、及び、外側壁部412により囲われて形成されている。
【0032】
第1収容部41aは、軸線方向の一方側(放熱部10側)から蓄熱部20が組み付けられ、当該蓄熱部20を収容する。ケース41は、蓄熱部20を第1収容部41aに収容した状態で当該蓄熱部20の位置を外側壁部412により規定する。ケース41は、蓄熱部20を収容し蓄熱部20の位置を規定した状態で、熱伝導シート30を介して放熱部10の受熱面11aに組み付けられる。ケース41は、4つの角部に孔部41dが設けられ、熱伝導シート30は、4つの角部に孔部31が設けられている。ケース41及び熱伝導シート30は、孔部41d、31にボルト(図示省略)が挿通され、この挿通されたボルトにより放熱部10の受熱面11aに組み付けられる。
【0033】
第2収容部41bは、図5に示すように、軸線方向において放熱部10とは反対側に設けられ、放熱部10とは反対側が開口されている。第2収容部41bは、その内側が半導体2の基板3の形状に合わせて形成されている。
【0034】
第2収容部41bは、底面部414と、外側壁部415とを有する。底面部414は、軸線方向において、第2収容部41bの開口縁416とは反対側に設けられた面部である。外側壁部415は、第2収容部41bの外形を規定し、軸線方向に沿って立設している。第2収容部41bは、底面部414及び外側壁部415により囲われて形成されている。
【0035】
第2収容部41bは、軸線方向の他方側(放熱部10とは反対側)から半導体2及び基板3が組み付けられ当該半導体2及び基板3を収容する。このとき、ケース41は、ケース開口部41cの内側に半導体2が挿通されている。ケース41は、半導体2及び基板3を第2収容部41bに収容した状態で当該半導体2及び基板3の位置を外側壁部415により規定する。ケース41は、半導体2及び基板3を収容しこれらの位置を規定した状態で、カバー42により開口縁416が覆われる。
【0036】
ケース開口部41cは、ケース41の本体に設けられた開口である。ケース開口部41cは、半導体2の形状に合わせて矩形状に形成されている。ケース開口部41cは、蓄熱開口部23と同等の大きさに形成され、軸線方向において蓄熱開口部23の内側に位置している。ケース開口部41cは、軸線方向において放熱部10とは反対側から半導体2が挿通され、この挿通された半導体2がケース開口部41cの内側に位置する。
【0037】
カバー42は、第2収容部41bの開口縁416を覆うものである。カバー42は、矩形状に形成され、半導体2及び基板3が第2収容部41bに収容された状態で、第2収容部41bの開口縁416を覆い、当該開口縁416を閉塞する。
【0038】
以上のように、第1実施形態の第1変形例に係る放熱構造1Aは、半導体2及び蓄熱部20と放熱部10の受熱面11aとの間に設けられた熱伝導部材を備える。この熱伝導部材は、例えば、放熱部10よりも熱伝導率が高い熱伝導シート30である。この構成により、放熱構造1Aは、大電流値Ibの電流Iが半導体2に流れた場合、半導体2の熱を放熱部10よりも速く蓄熱部20に伝えることができ、蓄熱効果を向上することができる。
【0039】
上記放熱構造1Aは、筐体40を備える。この筐体40は、軸線方向の一方側から蓄熱部20が組み付けられ、軸線方向の他方側から半導体2が組み付けられ、蓄熱部20及び半導体2を収容する。筐体40は、軸線方向において蓄熱開口部23の内側に位置し半導体2が挿通されるケース開口部41cを有する。この構成により、放熱構造1Aは、蓄熱部20を保持する筐体40が、半導体2及び基板3を保持する筐体としても機能することができる。これにより、放熱構造1Aは、これらの部品を筐体40に組み付けた後に当該筐体40を放熱部10に組み付けることにより、組み付け性を向上することができる。また、放熱構造1Aは、筐体40に各種部品を組み付けることで部品筐体の数を削減することができる。
【0040】
〔第1実施形態の第2変形例〕
次に、第1実施形態の第2変形例について説明する。なお、第1実施形態の第2変形例では、第1実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図7は、第1実施形態の第2変形例に係る放熱構造1Bの構成例を示す分解斜視図である。第2変形例に係る放熱構造1Bは、蓄熱部20Bが2つに分割されて配置されている点で第1実施形態に係る放熱構造1とは異なる。
【0041】
第2変形例に係る放熱構造1bは、図7に示すように、放熱部10と、蓄熱部20Bと、熱伝導シート30と、筐体40とを備える。蓄熱部20Bは、熱を蓄熱するものであり、第1蓄熱板20aと、第2蓄熱板20bとを有する。第1蓄熱板20a及び第2蓄熱板20bは、幅方向に沿って並んで配置され、幅方向において半導体2を挟んで位置している。
【0042】
第1蓄熱板20aは、幅方向において、半導体2の一方側に位置している。第1蓄熱板20aは、当該第1蓄熱板20aの奥行き方向の長さが半導体2の奥行き方向の長さと同等である。第1蓄熱板20aの当接面22は、積層方向において放熱部10側に設けられ、放熱部10の受熱面11aに対向している。第2蓄熱板20bは、幅方向において、半導体2の他方側に位置している。第2蓄熱板20bは、第1蓄熱板20aと同等の形状に形成され、当該第2蓄熱板20bの奥行き方向の長さが半導体2の奥行き方向の長さと同等である。第2蓄熱板20bの当接面22は、積層方向において放熱部10側に設けられ、放熱部10の受熱面11aに対向している。
【0043】
蓄熱部20Bは、幅方向において半導体2が第1蓄熱板20a及び第2蓄熱板20bの間に位置した状態で当該半導体2を挟んでいる。そして、蓄熱部20Bは、幅方向において半導体2との間に一定の間隔が設けられ、当該半導体2とは非接触の状態で位置している。蓄熱部20Bは、ケース41Bに収容され保持された状態で、放熱部10に組み付けられる。
【0044】
ケース41Bは、外形が矩形状に形成され、第1収容部41eと、第2収容部41fと、第3収容部41gと、ケース開口部41hとを有する。第1収容部41eは、第1蓄熱板20aを収容するものである。第1収容部41eは、軸線方向において放熱部10側に設けられ、その内側が第1蓄熱板20aの形状に合わせて形成されている。第1収容部41eは、例えば、底面部410と、壁部417とを有する。底面部410は、第1蓄熱板20aを支持する部分である。壁部417は、第1蓄熱板20aの外形に沿って形成され、軸線方向に沿って立設している。第1収容部41eは、底面部410及び壁部417により囲われて形成されている。
【0045】
第2収容部41fは、上述の第1収容部41eと同等に形成され、第2蓄熱板20bを収容するものである。第2収容部41fは、軸線方向において放熱部10側に設けられ、その内側が第2蓄熱板20bの形状に合わせて形成されている。第2収容部41fは、例えば、底面部410と、壁部417とを有する。底面部410は、第2蓄熱板20bを支持する部分である。壁部417は、第2蓄熱板20bの外形に沿って形成され、軸線方向に沿って立設している。第2収容部41fは、底面部410及び壁部417により囲われて形成されている。
【0046】
第3収容部41gは、軸線方向において放熱部10とは反対側に設けられ、放熱部10とは反対側が開口されている。第3収容部41gは、その内側が半導体2の基板3の形状に合わせて形成されている。
【0047】
ケース開口部41hは、ケース41Bの本体に設けられた開口である。ケース開口部41hは、半導体2の形状に合わせて矩形状に形成されている。ケース開口部41hは、幅方向において第1収容部41eと第2収容部41fとの間に位置している。ケース開口部41hは、軸線方向において放熱部10とは反対側から半導体2が挿通され、この挿通された半導体2がケース開口部41hの内側に位置する。なお、半導体2には、奥行き方向に沿って延在する電流経路2aが設けられている。
【0048】
以上のように、第1実施形態の第2変形例に係る放熱構造1Bにおいて、蓄熱部20Bは、半導体2を幅方向に沿って両側から挟むように配置される。蓄熱部20Bは、例えば、第1蓄熱板20a及び第2蓄熱板20bを有し、当該第1蓄熱板20a及び第2蓄熱板20bが、幅方向に沿って並んで配置され、幅方向において半導体2を挟んで位置している。そして、蓄熱部20Bは、放熱部10の受熱面11aに熱伝導シート30を介して設けられ、放熱部10から伝導される半導体2の熱を蓄熱する。この構成により、放熱構造1Bは、半導体2の熱を適正に放熱することができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る放熱構造1Cについて説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図8は、第2実施形態に係る放熱構造1Cの構成例を示す断面図である。第2実施形態に係る放熱構造1Cは、ヒートパイプ50を介して半導体2と放熱部10とを接続する点で第1実施形態に係る放熱構造1とは異なる。
【0050】
第2実施形態に係る放熱構造1Cは、図8に示すように、放熱部10と、蓄熱部20Cと、熱伝導シート30と、ケース41Cと、熱伝導部材としてのヒートパイプ50とを備える。半導体2は、ヒートパイプ50の延在方向において当該ヒートパイプ50の一方側に設けられ、積層方向において放熱部10側とは反対側に位置している。半導体2は、熱伝導シート30を介してヒートパイプ50に接続されている。
【0051】
放熱部10は、ヒートパイプ50の延在方向において他方側に設けられ、積層方向においてヒートパイプ50の半導体2側とは反対側に位置している。放熱部10は、受熱面11aがヒートパイプ50に接触している。放熱部10は、ヒートパイプ50を介して伝導する半導体2の熱を放熱する。また、放熱部10は、蓄熱部20Cに蓄熱された熱を放熱する。
【0052】
ヒートパイプ50は、長尺状に形成され、ヒートパイプ50の延在方向において一方側に半導体2が設けられ、他方側に放熱部10が設けられ、半導体2及び放熱部10を接続する。ヒートパイプ50は、半導体2により発生する熱を放熱部10及び蓄熱部20Cに伝導する。
【0053】
蓄熱部20Cは、ヒートパイプ50の放熱部10側に設けられ、ヒートパイプ50を介して放熱部10に対向して位置している。蓄熱部20Cは、板状に形成され、積層方向から視て放熱部10の受熱面11aと同等の大きさに形成されている。蓄熱部20Cは、ケース41Cに収容され保持された状態で、ヒートパイプ50を介して放熱部10に組み付けられている。蓄熱部20Cは、その当接面22がヒートパイプ50に接続して設けられることで、ヒートパイプ50を介して伝導される半導体2の熱を蓄熱する。また、蓄熱部20Cは、蓄熱した熱をヒートパイプ50を介して放熱部10に伝える。
【0054】
以上のように、第2実施形態に係る放熱構造1Cは、放熱部10と、ヒートパイプ50と、蓄熱部20Cとを備える。放熱部10は、熱を発生する半導体2とは離れて設けられ、半導体2により発生する熱を放熱する。ヒートパイプ50は、半導体2及び放熱部10を接続し、当該半導体2により発生する熱を放熱部10に伝導する。蓄熱部20Cは、放熱部10側に設けられ、半導体2により発生する熱を蓄熱する。この構成により、放熱構造1Cは、ヒートパイプ50により半導体2の熱を均熱することにより、半導体2の熱を放熱部10及び蓄熱部20Cに効率よく伝えることができる。この結果、放熱構造1Cは、半導体2の熱を適正に放熱することができる。
【0055】
上記放熱構造1Cにおいて、蓄熱部20Cは、放熱部10側に設けられ、ヒートパイプ50を介して放熱部10に対向して位置する。この構成により、放熱構造1Cは、半導体2の熱をヒートパイプ50を介して放熱部10及び蓄熱部20Cに効率よく伝えることができる。また、放熱構造1Cは、蓄熱部20Cに蓄熱された熱をヒートパイプ50を介して放熱部10に効率よく伝えることができる。
【0056】
〔第2実施形態の変形例〕
次に、第2実施形態の変形例に係る放熱構造1Dについて説明する。なお、第2実施形態の変形例では、第2実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図9は、第2実施形態の変形例に係る放熱構造1Dの構成例を示す断面図である。変形例に係る放熱構造1Dは、蓄熱部20Dが半導体2側に設けられる点で第2実施形態に係る放熱構造1Cとは異なる。
【0057】
第2実施形態の変形例に係る放熱構造1Dは、図9に示すように、放熱部10と、蓄熱部20Dと、熱伝導シート30と、ケース41Dと、ヒートパイプ50とを備える。
【0058】
蓄熱部20Dは、ヒートパイプ50の延在方向において半導体2側に設けられ、半導体2に接触して位置している。蓄熱部20Dは、例えば、固液相変化材を小型カプセルに封入し、この小型カプセルを含むゲル状の樹脂が形成される。そして、蓄熱部20Dは、ケース41Dの内側に半導体2が位置した状態で、小型カプセルを含むゲル状の樹脂をケース41Dの内側に充填し当該樹脂を固化することで形成される。これにより、ケース41Dの内側で固化した蓄熱部20Dは、半導体2の周囲を覆った状態で当該半導体2に接触する。言い換えれば、半導体2は、ケース41Dの内側で固化した蓄熱部20Dの内部に埋設されている。
【0059】
以上のように、第2実施形態の変形例に係る放熱構造1Dにおいて、蓄熱部20Dは、半導体2側に設けられ、半導体2に接触して位置する。この構成により、放熱構造1Dは、半導体2の熱を蓄熱部20Dに効率的に蓄熱することができる。また、放熱構造1Dは、半導体2の熱を直接、蓄熱部20Dに蓄熱するので、ヒートパイプ50による熱輸送の構造を簡素化することができる。放熱構造1Dは、蓄熱部20Dに蓄熱された半導体2の熱をヒートパイプ50を介して放熱部10に伝えることができ、蓄熱部20Dに蓄熱された熱を効率的に放熱することができる。
【0060】
なお、上記説明では、熱伝導シート30は、例えば、グラファイト(黒鉛)シートである例について説明したが、これに限定されず、放熱部10よりも熱伝導率が高ければその他の部材であってもよい。
【0061】
筐体40は、軸線方向の一方側から蓄熱部20が組み付けられ、軸線方向の他方側から半導体2が組み付けられる例について説明したが、これに限定されず、その他の組み付け方法により組み付けられてもよい。
【0062】
筐体40は、ケース開口部41c、41hを有する例について説明したが、これに限定されず、ケース開口部41c、41hを有していなくてもよい。
【0063】
サーマルインターフェースマテリアル(熱伝導部材)は、熱伝導シート30を含んで構成される例について説明したが、これに限定されず、その他の構成であってもよい。サーマルインターフェースマテリアル(熱伝導部材)は、例えば、密着度を増やすためのグリスや放熱用の放熱シート等を含んで構成されてもよい。つまり、サーマルインターフェースマテリアル(熱伝導部材)は、熱伝導シート30、放熱シート、及び、グリスの少なくとも1つを含んで構成される。
【符号の説明】
【0064】
1、1A、1C、1D 放熱構造
2 半導体(電子部品)
11a 受熱面
11b 接触面
10 放熱部
20、20C、20D 蓄熱部
23 蓄熱開口部
30 熱伝導シート
40 筐体
41c、41h ケース開口部(筐体開口部)
50 ヒートパイプ(熱伝導部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9