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特許7098590電力変換装置およびそれを用いた可変速揚水システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】電力変換装置およびそれを用いた可変速揚水システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220704BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220704BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02M7/48 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019172795
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021052468
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野里 航平
(72)【発明者】
【氏名】小西 勝久
(72)【発明者】
【氏名】手操 亮裕
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-067341(JP,A)
【文献】特開2011-109801(JP,A)
【文献】特開2006-350900(JP,A)
【文献】特開平09-149647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端子が第1の交流電源から供給される第1の交流電圧を受ける遮断器と、
前記遮断器の他方端子に接続され、前記遮断器がオンされた場合に、前記第1の交流電源から前記遮断器を介して供給される前記第1の交流電圧を直流電圧に変換して直流ラインに出力するコンバータと、
前記直流ラインの直流電圧を平滑化させるコンデンサと、
前記直流ラインの直流電圧を第2の交流電圧に変換して負荷に供給するインバータと、
一方端子が第2の交流電源から供給される第3の交流電圧を受けるスイッチと、
前記スイッチの他方端子に接続され、前記スイッチがオンされた場合に、前記第2の交流電源から前記スイッチを介して供給される前記第3の交流電圧を直流電圧に変換して前記直流ラインに供給する整流器と、
前記スイッチおよび前記遮断器を順次オンさせた後に前記スイッチをオフさせる第1の制御部と、
前記直流ラインの直流電圧を検出し、その検出値を直流電圧帰還値として出力する電圧検出部と、
前記スイッチがオンされ、かつ前記遮断器がオンされたことに応じて前記直流電圧帰還値を保持し、保持した前記直流電圧帰還値を直流電圧指令値として出力し、前記遮断器がオンされ、かつ前記スイッチがオフされたことに応じて直流電圧定格値を前記直流電圧指令値として出力する直流電圧指令部と、
前記遮断器がオンされている場合に、前記電圧検出部から出力される前記直流電圧帰還値が前記直流電圧指令値になるように前記コンバータを制御する第2の制御部とを備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記直流電圧指令部は、
前記遮断器がオフされている場合には前記直流電圧帰還値をそのまま出力し、前記遮断器がオンされたことに応じて前記直流電圧帰還値を保持および出力するラッチ回路と、
前記スイッチがオンされている場合には、前記ラッチ回路から出力される前記直流電圧帰還値を選択し、前記遮断器がオンされ、かつ前記スイッチがオフされた場合には前記直流電圧定格値を選択する選択回路と、
前記選択回路によって選択された前記直流電圧帰還値または前記直流電圧定格値に基づいて前記直流電圧指令値を生成する指令値生成部とを含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記指令値生成部は、前記直流電圧指令値の変化率を予め定められた値よりも小さな値に制限する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記コンバータは、前記スイッチがオンされ、かつ前記遮断器がオフされている場合には、前記直流ラインの直流電圧を前記第1の交流電圧に同期する第4の交流電圧に変換して前記遮断器の他方端子に出力し、
前記第1の制御部は、前記第4の交流電圧の位相および振幅が前記第1の交流電圧の位相および振幅に同期したことに応じて、前記遮断器をオンさせる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置を備え、
前記負荷は、ポンプ水車を駆動させる可変速発電電動機である、可変速揚水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電力変換装置およびそれを用いた可変速揚水システムに関し、特に、交流電源とコンバータの間に設けられた遮断器を備えた電力変換装置と、それを用いた可変速揚水システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許第6371021号公報(特許文献1)には、一方端子が第1の交流電源から供給される交流電圧を受ける遮断器と、第1の交流電源から遮断器を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換して直流ラインに供給するコンバータと、直流ラインの直流電圧を平滑化させるコンデンサと、直流ラインの直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータとを備えた電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6371021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電力変換装置において、コンデンサが充電されていない場合に遮断器をオンさせると、第1の交流電源から遮断器およびコンバータを介してコンデンサに過電流が流れるおそれがある。
【0005】
その対策として、第2の交流電源からスイッチを介して供給される交流電圧を直流電圧に変換して直流ラインに供給する整流器を設け、スイッチおよび遮断器を順次オンさせた後にスイッチをオフさせ、コンデンサの初期充電を行なう方法が考えられる。しかし、この方法では、スイッチおよび遮断器の両方がオンされている期間に、第1および第2の交流電源間に循環電流が流れるという問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、第1および第2の交流電源間の循環電流を抑制することが可能な電力変換装置と、それを用いた可変速揚水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電力変換装置は、一方端子が第1の交流電源から供給される第1の交流電圧を受ける遮断器と、遮断器の他方端子に接続され、遮断器がオンされた場合に、第1の交流電源から遮断器を介して供給される第1の交流電圧を直流電圧に変換して直流ラインに出力するコンバータと、直流ラインの直流電圧を平滑化させるコンデンサと、直流ラインの直流電圧を第2の交流電圧に変換して負荷に供給するインバータと、一方端子が第2の交流電源から供給される第3の交流電圧を受けるスイッチと、スイッチの他方端子に接続され、スイッチがオンされた場合に、第2の交流電源からスイッチを介して供給される第3の交流電圧を直流電圧に変換して直流ラインに供給する整流器と、スイッチおよび遮断器を順次オンさせた後にスイッチをオフさせる第1の制御部と、直流ラインの直流電圧を検出し、その検出値を直流電圧帰還値として出力する電圧検出部と、スイッチがオンされ、かつ遮断器がオンされたことに応じて直流電圧帰還値を保持し、保持した直流電圧帰還値を直流電圧指令値として出力し、遮断器がオンされ、かつスイッチがオフされたことに応じて直流電圧定格値を直流電圧指令値として出力する直流電圧指令部と、遮断器がオンされている場合に、電圧検出部から出力される直流電圧帰還値が直流電圧指令値になるようにコンバータを制御する第2の制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る電力変換装置では、直流ラインの直流電圧を検出し、その検出値を直流電圧帰還値として出力する電圧検出部を設け、スイッチおよび遮断器の両方がオンされたことに応じて直流電圧帰還値を保持し、保持した直流電圧帰還値を直流電圧指令値として出力し、電圧検出部から出力される直流電圧帰還値が直流電圧指令値になるようにコンバータを制御する。したがって、スイッチおよび遮断器の両方がオンされている期間には、整流器によって充電された直流ラインの直流電圧が維持されるようにコンバータを制御するので、第1および第2の交流電源間の循環電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施の形態による可変速揚水発電システムの要部を示す回路ブロック図である。
図2図1に示す制御装置のうちのスイッチおよび遮断器の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
図3図1に示す制御装置のうちのコンバータの制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
図4図3に示す制御部の構成を示すブロック図である。
図5図4に示す直流電圧指令部の構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態の効果を説明するためのタイムチャートである。
図7】実施の形態の比較例1を示すブロック図である。
図8図7で示す比較例1の問題点を説明するためのタイムチャートである。
図9】実施の形態の他の比較例2を示すブロック図である。
図10図9で示す比較例2の問題点を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、この発明の一実施の形態による可変速揚水発電システムの要部を示す回路ブロック図である。この可変速揚水発電システムでは三相交流電圧が使用されるが、図面および説明の簡単化のため、図1では一相に関連する部分のみが示されている。
【0011】
図1において、この可変速揚水発電システムは、遮断器B1、高調波フィルタ1、電流検出器2、変圧器3,11、コンバータ4、直流ラインL1~L3、コンデンサC1,C2、インバータ5、二重給電可変速発電電動機6、ポンプ水車7、回転速度検出器8、初充電電源9、スイッチS1,S2、限流抵抗器10、整流器12,13、操作部14、および制御装置15を備え、商用交流電源(電力系統)16に接続される。
【0012】
遮断器B1の一方端子は、商用交流電源16から供給される商用周波数の交流電圧VA1を受ける。交流電圧VA1の瞬時値は、制御装置15によって検出される。遮断器B1の他方端子に現れる交流電圧VA2の瞬時値は、制御装置15によって検出される。遮断器B1のオンおよびオフは、制御装置15によって制御される。
【0013】
高調波フィルタ1は、遮断器B1の他方端子と接地電圧GNDのラインとの間に直列接続されたコンデンサ1aおよびリアクトル1bと、リアクトル1bに並列接続された抵抗素子1cとを含み、コンバータ4で発生した高調波を交流電圧VA2から除去する。
【0014】
変圧器3は、1次巻線3aおよび2次巻線3bを含む。コンバータ4は、制御装置15によって制御され、複数のサイリスタ、複数のダイオード、交流端子4a、正側直流端子4b、中性点端子4c、および負側直流端子4dを含む。
【0015】
変圧器3の1次巻線3aは遮断器B1の他方端子に接続され、その2次巻線3bはコンバータ4の交流端子4aに接続される。変圧器3は、遮断器B1の他方端子とコンバータ4の交流端子4aとの間で交流電力を授受する。電流検出器2は、コンバータ4の交流端子4aと変圧器3の2次巻線3bとの間に流れる交流電流の瞬時値を検出し、その検出値Idを示す信号を制御装置15に出力する。
【0016】
コンバータ4の正側直流端子4b、中性点端子4c、および負側直流端子4dはそれぞれ直流ラインL1~L3の一方端に接続される。コンデンサC1は、直流ラインL1,L2間に接続され、直流ラインL1,L2間の直流電圧Epを平滑化させる。コンデンサC2は、直流ラインL2,L3間に接続され、直流ラインL2,L3間の直流電圧Enを平滑化させる。直流電圧Ep,Enの各々は、制御装置15によって検出される。
【0017】
コンバータ4は、遮断器B1がオフされている場合には、直流電圧Ep,Enを交流電圧VA3に変換して交流端子4aに出力する。また、コンバータ4は、遮断器B1がオンされた場合には、交流端子4aの交流電圧VA3を直流電圧Ep,Enに変換する。
【0018】
制御装置15は、遮断器B1がオフされている場合には、遮断器B1の他方端子の交流電圧VA2の位相および振幅が、商用交流電源16から供給される交流電圧VA1の位相および振幅に同期するように、コンバータ4を制御する。そして、制御装置15は、交流電圧VA2の位相および振幅が交流電圧VA1の位相および振幅に同期した場合には、遮断器B1をオンさせる。
【0019】
また、制御装置15は、遮断器B1がオンされた場合には、直流電圧Ep,Enの和の電圧VD=Ep+Enが直流電圧指令値VDcとなり、かつ直流電圧Epと直流電圧Enの差の電圧ΔE=Ep-Enが0Vになるように、コンバータ4を制御する。
【0020】
インバータ5は、複数のサイリスタ、複数のダイオード、交流端子5a、正側直流端子5b、中性点端子5c、および負側直流端子5dを含む。インバータ5の正側直流端子5b、中性点端子5c、および負側直流端子5dは、それぞれ直流ラインL1~L3の他方端に接続される。インバータ5は、制御装置15によって制御され、直流電圧Ep,Enを所望の励磁周波数Feの交流電圧VA4に変換して交流端子5aに出力する。
【0021】
可変速発電電動機6は、回転子に設けられた励磁巻線6aと、固定子に設けられた固定子巻線6bとを含む。励磁巻線6aは、インバータ5の交流端子5aに接続され、励磁周波数Feの交流電圧VA4を受ける。固定子巻線6bは、商用交流電源16から供給される商用周波数の交流電圧VA1を受ける。回転子には回転軸が設けられており、回転軸はポンプ水車7に結合される。回転軸およびポンプ水車7は、商用周波数および励磁周波数Feに応じた回転速度で回転駆動される。
【0022】
回転速度検出器8は、可変速発電電動機6の回転軸の回転速度を検出し、その検出値Rdを示す信号を制御装置15に出力する。制御装置15は、商用周波数と回転速度の検出値Rdとの差分に応じた回転速度指令値になるように、励磁周波数Feを制御する。
【0023】
可変速揚水発電システムでは、電力系統における消費電力が小さな夜間には、余剰電力によって可変速発電電動機6を駆動させて下側池の水を上側池に汲み上げる。
【0024】
また、消費電力が大きな昼間には、上側池から下側池に放水し、水力によって可変速発電電動機6を発電機として動作させて交流電力を発生する。可変速発電電動機6で発生した商用周波数の交流電力は電力系統に供給される。
【0025】
初充電電源9は、交流電圧VA5を出力端子9aに出力する。交流電圧VA5は、たとえば商用周波数を有する。変圧器11は、1次巻線11aおよび2次巻線11b,11cを含む。スイッチS1,S2は、初充電電源9の出力端子9aと変圧器11の1次巻線11aとの間に直列接続される。限流抵抗器10は、スイッチS1に並列接続される。
【0026】
スイッチS1,S2の各々のオンおよびオフは、制御装置15によって制御される。初期充電の開始時には、まずスイッチS2がオンされ、次にスイッチS1がオンされる。初期充電の終了時には、まずスイッチS1がオフされ、次にスイッチS2がオフされる。限流抵抗器10は、初充電電源9から変圧器11に流れる電流の急激な増大および減少を抑制し、初充電電源9、変圧器11などを保護する。
【0027】
整流器12は、交流端子12a、正側直流端子12b、および負側直流端子12cを含む。整流器13は、交流端子13a、正側直流端子13b、および負側直流端子13cを含む。変圧器11の2次巻線11b,11cは、整流器12,13の交流端子12a,13aにそれぞれ接続される。変圧器11は、初充電電源9から供給される交流電力を整流器12,13に伝達する。
【0028】
整流器12の正側直流端子12bおよび負側直流端子12cは、それぞれ直流ラインL1,L2に接続される。整流器12は、複数のダイオードを含み、変圧器11の2次巻線11bに現れる交流電圧を整流して直流電圧VD1に変換し、その直流電圧VD1を直流端子12b,12c間に出力する。
【0029】
整流器13の正側直流端子13bおよび負側直流端子13cは、それぞれ直流ラインL2,L3に接続される。整流器13は、複数のダイオードを含み、変圧器11の2次巻線11cに現れる交流電圧を整流して直流電圧VD2に変換し、その直流電圧VD2を直流端子13b,13c間に出力する。VD1=VD2である。
【0030】
操作部14は、複数のボタン、複数のスイッチ、画像表示部などを含む。システムの使用者は、操作部14を操作することにより、システムの始動および停止などを行なうことができる。
【0031】
制御装置15は、操作部14からの信号、電流検出器2の出力信号、交流電圧VA1,VA2、直流電圧Ep,Epなどに基づいて、遮断器B1、コンバータ4、インバータ5、スイッチS1,S2などを制御する。
【0032】
次に、この可変速揚水発電システムの基本的な動作について説明する。システムの使用者が操作部14を用いてシステムの始動を指令すると、制御装置15によってスイッチS2,S1が順にオンされる。スイッチS2がオンされると、初充電電源9からスイッチS2、限流抵抗器10、変圧器11を介して整流器12,13に交流電力が供給され、コンデンサC1,C2の充電が開始される。このとき、初充電電源9の出力電流は限流抵抗器10によって一定値以下に制限され、過電流によって初充電電源9などが破損することが防止される。
【0033】
次いでスイッチS1がオンされると、限流抵抗器10がスイッチS1によって短絡され、初充電電源9からスイッチS2,S1および変圧器11を介して整流器12,13に交流電力が供給され、コンデンサC1,C2はそれぞれ直流電圧VD1,VD2に充電される。このとき、初充電電源9の出力電流は限流抵抗器10によって制限されないので、コンデンサC1,C2を迅速に充電することができる。
【0034】
コンデンサC1,C2がそれぞれ直流電圧VD1,VD2に充電されると、コンバータ4は、直流電圧VD1,VD2を交流電圧VA3に変換して交流端子4aに出力する。このとき、制御装置15は、交流電圧VA2の位相および振幅が交流電圧VA1の位相および振幅に同期するように、コンバータ4を制御する。
【0035】
交流電圧VA2の位相および振幅が交流電圧VA1の位相および振幅に同期すると、制御装置15によって遮断器B1がオンされる。遮断器B1がオンされると、商用交流電源16から遮断器B1および変圧器3を介してコンバータ4に交流電力が供給される。このとき、コンデンサC1,C2が既に充電されているので、コンバータ4に過電流が流れることが防止される。
【0036】
遮断器B1がオンされると、コンバータ4は、交流電圧VA3を直流電圧Ep,Enに変換する。制御装置15は、遮断器B1がオンされたときの直流電圧VD=Ep+En=VD1+VD2を保持し、保持した直流電圧VDを直流電圧指令値VDcとする。そして制御装置15は、直流電圧VDが直流電圧指令値VDc=VD1+VD2になり、かつ直流電圧Ep,Enの差の電圧ΔVD=Ep-Enが0Vになるように、コンバータ4を制御する。
【0037】
このとき、整流器12,13は直流電圧VD=VD1+VD2を出力し、コンバータ4も直流電圧VD=VD1+VD2を出力するので、初充電電源9と商用交流電源16の間に流れる循環電流は小さく抑制される。
【0038】
次に、制御装置15によってスイッチS1,S2が順次オフされる。スイッチS1がオフされると、初充電電源9からコンデンサC1,C2に流れる電流が限流抵抗器10によって一定値以下に制限される。次いでスイッチS2がオフされると、初充電電源9からコンデンサC1,C2に流れる電流が遮断される。これにより、整流器12,13によるコンデンサC1,C2の充電は停止され、これ以降は、コンバータ4のみによってコンデンサC1,C2が充電される。
【0039】
制御装置15は、スイッチS2がオフされたときに、直流電圧定格値VDrを直流電圧指令値VDcとする。そして制御装置15は、直流電圧VDが直流電圧指令値VDc=VDrになり、かつ直流電圧Ep,Enの差の電圧ΔVD=Ep-Enが0Vになるように、コンバータ4を制御する。
【0040】
インバータ5は、直流電圧Ep,Enを励磁周波数Feの交流電圧VA4に変換して可変速発電電動機6の励磁巻線6aに供給する。制御装置15は、回転速度検出器8の出力信号によって示される回転速度の検出値Rdと商用周波数との差分に応じて、励磁周波数Feを制御する。可変速発電電動機6の回転軸は商用周波数および励磁周波数Feに応じた回転速度で回転駆動され、ポンプ水車7によって下側池の水が上側池に汲み上げられ、電力系統の消費電力が調整される。
【0041】
以下、制御装置15の構成および動作について詳細に説明する。図2は、制御装置15のうちのスイッチS1,S2および遮断器B1の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図2において、制御装置15は、電圧検出器21,22および制御部23を含む。
【0042】
電圧検出器21は、商用交流電源16から供給される交流電圧VA1の瞬時値を検出し、その検出値VA1dを示す信号を制御部23に与える。電圧検出器22は、遮断器B1の他方端子に現れる交流電圧VA2の瞬時値を検出し、その検出値VA2dを示す信号を制御部23に与える。
【0043】
制御部23は、可変速揚水発電システムの始動を指令する信号STと、電圧検出器21,22の出力信号とに基づいて、スイッチS1を制御する信号φS1と、スイッチS2を制御する信号φS2と、遮断器B1を制御する信号φB1とを生成する。
【0044】
信号STは、操作部14から与えられる。可変速揚水発電システムの停止時には、信号STは非活性化レベルの「L」レベルにされている。信号STが「L」レベルにされている場合には、信号φS1,φS2,φB1はともに非活性化レベルの「L」レベルにされている。信号φS1,φS2,φB1がともに「L」レベルである場合には、スイッチS1,S2および遮断器B1はともにオフされている。
【0045】
可変速揚水システムの使用者によって操作部14が操作されて信号STが活性化レベルの「H」レベルにされると、制御部23は、信号φS2,φS1を「L」レベルから「H」レベルに順次立ち上げる。信号φS2が「H」レベルにされるとスイッチS2がオンされ、信号φS1が「H」レベルにされるとスイッチS1がオンされ、整流器12,13によってコンデンサC1,C2が充電されて、Ep=VD1,En=VD2となる。
【0046】
信号φS1を「H」レベルに立ち上げた後に、制御部23は、電圧検出器22の出力信号によって示される交流電圧の検出値VA2dの位相および振幅が、電圧検出器21の出力信号によって示される交流電圧の検出値VA1dの位相および振幅に同期した場合には、信号φB1を「H」レベルにする。信号φB1が「H」レベルにされると遮断器B1がオンされ、商用交流電源16から遮断器B1および変圧器3を介してコンバータ4に交流電力が供給される。
【0047】
信号φB1を「H」レベルにした後、制御部23は、信号φS1,φS2を「H」レベルから「L」レベルに順次立ち下げる。信号φS1が「L」レベルにされるとスイッチS1がオフされ、信号φS2が「L」レベルにされるとスイッチS2がオフされ、整流器12,13によるコンデンサC1,C2の充電が停止される。
【0048】
図3は、制御装置15のうちのコンバータ4の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。図3において、制御装置15は、電圧検出器31,32、加算器33、減算器34、および制御部35を含む。
【0049】
電圧検出器31は、直流ラインL1,L2間の直流電圧Epを検出し、その検出値を示す信号を出力する。電圧検出器32は、直流ラインL2,L3間の直流電圧Enを検出し、その検出値を示す信号を出力する。
【0050】
加算器33は、電圧検出器31,32によって検出された直流電圧Ep,Enを加算して直流ラインL1,L3間の直流電圧VD=Ep+Enを求める。電圧検出器31,32および加算器33は、直流ラインL1,L3間の直流電圧VD(直流電圧帰還値)を検出する電圧検出部を構成する。
【0051】
減算器34は、電圧検出器31によって検出された直流電圧Epから電圧検出器32によって検出された直流電圧Enを減算して、直流電圧Ep,Enの差である直流電圧ΔE=Ep-Enを求める。直流電圧VD,ΔEは、制御部35に与えられる。
【0052】
制御部35は、制御部23からの信号φS2,φB1と、電圧検出器21からの交流電圧の検出値VA1dを示す信号と、電流検出器2からの交流電流の検出値Idを示す信号と、加算器33からの直流電圧VDを示す信号と、減算器34からの直流電圧ΔEを示す信号とに基づいて、コンバータ4を制御するためのゲート信号Gを生成する。
【0053】
具体的には、制御部35は、信号φS2が「H」レベルにされ、かつ信号φB1が「L」レベルにされている場合には、交流電圧VA2の検出値VA2dの振幅および位相が交流電圧VA1の検出値VA1dの振幅および位相に同期するように、コンバータ4を制御する。
【0054】
また、制御部35は、信号φB1が「H」レベルにされた場合には、直流電圧VDが直流電圧指令値VDcに一致し、かつ直流電圧ΔEが0Vになるように、コンバータ4を制御する。
【0055】
図4は、図3に示した制御部35の構成を示すブロック図である。図4において、制御部35は、直流電圧指令部41、減算器42,46、直流電圧制御部43、正弦波発生器44、乗算器45、電流制御部47、加算器48,50、バランス制御部49、PWM制御部51を備える。
【0056】
直流電圧指令部41は、直流電圧VD(直流電圧帰還値)、直流電圧定格値VDr、および信号φS2,φB1に基づいて、直流電圧指令値VDcを生成する。信号φB1が「L」レベルである場合(遮断器B1がオフしている場合)には、直流電圧指令部41は、直流電圧VDをそのまま直流電圧指令値VDcとして出力する(VDc=VD)。
【0057】
信号φB1が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられたとき(遮断器B1がオンされたとき)には、そのときの直流電圧VDを保持し、保持した直流電圧VDを直流電圧指令値VDcとして出力する(VDc=VD=VD1+VD2)。
【0058】
信号φB1が「H」レベルであり、信号φS2が「L」レベルである場合(遮断器B1がオンされ、スイッチS2がオフされた場合)には、直流電圧指令部41は、直流電圧定格値VDrを直流電圧指令値VDcとして出力する(VDc=VDr)。
【0059】
図5は、直流電圧指令部41の構成を示すブロック図である。図5において、直流電圧指令部41は、ラッチ回路61、ゲート回路62、スイッチ63、および変化率制限部64を含む。
【0060】
ラッチ回路61は、信号φB1(図2)が「L」レベルにされている場合(すなわち、遮断器B1がオフされている場合)には、直流電圧VDをそのまま出力する。また、ラッチ回路61は、信号φB1が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられたとき(すなわち、遮断器B1がオンされたとき)には、そのときの直流電圧VD=VD1+VD2を保持および出力する。
【0061】
ゲート回路62は、信号φS2(図2)および信号φB1に基づいて信号φ62を生成する。信号φS2が「H」レベルにされている場合(すなわちスイッチS2がオンされている場合)、または信号φB1が「L」レベルにされている場合(すなわち、遮断器B1がオフされている場合)には、信号φ62は「L」レベルにされる。信号φB1が「H」レベルにされ(すなわち、遮断器B1がオンされ)、かつ信号φS2(図2)が「L」レベルにされた場合(すなわち、スイッチS2がオフされた場合)には、信号φ62は「H」レベルにされる。
【0062】
スイッチ63は、切換端子63a,63bおよび共通端子63cを含む。切換端子63aは、ラッチ回路61の出力電圧を受ける。切換端子63bは、直流電圧定格値VDrを受ける。共通端子63cは、変化率制限部64に接続される。ゲート回路62の出力信号φ62が「L」レベルにされている場合には、端子63a,63c間が導通する。ゲート回路62の出力信号φ62が「H」レベルにされている場合には、端子63b,63c間が導通する。ゲート回路62およびスイッチ63は、ラッチ回路61の出力電圧VDまたは直流電圧定格値VDrを選択する選択回路を構成する。
【0063】
変化率制限部64は、直流電圧指令値VDcの変化率を一定値以下に制限しながら、スイッチ63の共通端子63cから受けた直流電圧VDまたは直流電圧定格値VDrを直流電圧指令値VDcとして出力する。変化率制限部64は、選択回路によって選択されたラッチ回路61の出力電圧VDまたは直流電圧定格値VDrに基づいて直流電圧指令値VDcを生成する指令値生成部を構成する。
【0064】
図4に戻って、減算器42は、直流電圧指令値VDcと、加算器33(図3)からの直流電圧VDとの差の電圧ΔVD=VDc-VDを算出する。
【0065】
直流電圧制御部43は、信号φB1が「H」レベルにされている場合には、電圧ΔVDが0Vとなるように、変圧器3の1次巻線3aと遮断器B1の他方端子との間に流れる電流を制御するための電流指令値Iを算出する。直流電圧制御部43は、たとえば、直流電圧ΔVDを比例演算または比例積分演算することにより電流指令値Iを算出する。
【0066】
減算器46は、電流指令値Iと電流検出器2の出力信号によって示される交流電流の検出値Idとの差を算出する。
【0067】
電流制御部47は、電流指令値Iと電流検出値IAdとの差が0となるように、正弦波状に変化する電圧指令値VA1aを生成する。電流制御部47は、たとえば電流指令値Iと電流検出値Idとの差を比例制御または比例積分制御に従って増幅することにより電圧指令値VA1aを生成する。加算器48は、電圧指令値VA1aと電圧検出器21の出力信号によって示される交流電圧VA1の検出値VA1dとを加算して電圧指令値VA1を生成する。
【0068】
バランス制御部49は、信号φB1および直流電圧ΔE=Ep-Enに基づいて、電圧指令値Vを生成する。たとえばバランス制御部49は、直流電圧ΔEを比例演算または比例積分演算することにより電圧指令値Vを生成する。
【0069】
信号φB1が「H」レベルであり、かつΔE=Ep-En>0である場合には、コンデンサC1の充電時間がコンデンサC2の充電時間よりも短くなるように、電圧指令値Vが生成される。信号φB1が「H」レベルであり、かつΔE=Ep-En<0である場合には、コンデンサC1の充電時間がコンデンサC2の充電時間よりも長くなるように、電圧指令値Vが生成される。信号φB1が「L」レベルである場合には、電圧指令値Vは0にされ、バランス制御は実行されない。加算器50は、電圧指令値VA1,Vを加算して電圧指令値VA1cを生成する。
【0070】
PWM制御部51は、電圧指令値VA1cに基づいて、電圧検出器21の出力信号によって示される交流電圧の検出値VA1dを電圧指令値VA1cに等しくするための複数のゲート信号Gを出力する。このゲート信号Gは、コンバータ4に含まれる複数のサイリスタを駆動するための信号である。
【0071】
図6は、本実施の形態の効果を説明するためのタイムチャートである。図6において、(A)は遮断器B1を制御する信号φB1の波形を示し、(B)はスイッチS2を制御する信号φS2の波形を示し、(C)は直流電圧制御の停止期間および実行期間を示し、(D)は電圧指令値VDcの変化を示し、(E)は初充電電源9の出力電流I9の実効値の変化を示している。
【0072】
初期状態(時刻t0)では、信号φS2が「H」レベルにされてスイッチS2がオンされ、コンデンサC1,C2は整流器12,13によって直流電圧VD1,VD2に充電されている。直流電圧VD1,VD2の各々は、初充電電源9の出力電圧VA5、変圧器11の構成、整流器12,13の構成などによって定められる一定値である。図6では、直流電圧VD=VD1+VD2が直流電圧定格値VDrよりも若干高くなっている場合が示されている。なお、スイッチS1もオンされている。
【0073】
また、初期状態(時刻t0)では、信号φB1が「L」レベルにされて遮断器B1がオフされ、コンバータ4の直流電圧制御は停止されている。このため、直流電圧VDは整流器12,13によって一定値(VD1+VD2)に維持されている。
【0074】
このとき、コンバータ4は、直流電圧VD1,VD2を交流電圧VA3に変換して交流端子4aに出力する。コンバータ4は、制御部35(図3)により、遮断器B1の他方端子の交流電圧VA2の位相および振幅が商用交流電源16から供給される交流電圧VA1の位相および振幅に同期するように制御される。
【0075】
このとき、初充電電源9からスイッチS1,S2、変圧器11、整流器12,13、コンバータ4、および変圧器3を介して高調波フィルタ1に交流電流I9が流れる。交流電流I9は、小さな値に設定されている。
【0076】
また、信号φB1が「L」レベルにされているので、直流電圧VDがそのままラッチ回路61(図5)を通過し、さらにスイッチ63および変化率制限部64(図5)を通過して直流電圧指令値VDcとなっている(VDc=VD=VD1+VD2)。
【0077】
交流電圧VA2の位相および振幅が交流電圧VA1の位相および振幅に同期したことに応じて、制御部23によって、信号φB1が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられ、遮断器B1がオンされる(時刻t1)。
【0078】
また、信号φB1の立ち上りエッジに応答して、ラッチ回路61によって直流電圧VD=VD1+VD2が保持および出力される。この時点では、信号φS2が「H」レベルであるので、ラッチ回路61の出力電圧VD=VD1+VD2がスイッチ63および変化率制限部64を通過して直流電圧指令値VDcとなる(VDc=VD=VD1+VD2)。したがって、時刻t1では直流電圧指令値VDcは変化しない。
【0079】
また、信号φB1が「H」レベルにされると、制御部35(図3図4)によってコンバータ4の直流電圧制御が実行される。コンバータ4は、交流電圧VA3を直流電圧Ep,Enに変換して直流ラインL1~L3に出力する。制御部35は、直流電圧VD=Ep+Enが直流電圧指令値VDc=VD1+VD2になるように、コンバータ4を制御する。このため、整流器12,13とコンバータ4の間にはほとんど電流は流れず、初充電電源9の出力電流I9は小さな値に維持され、初充電電源9と商用交流電源16の間に流れる循環電流は小さな値に抑制される。
【0080】
スイッチS1がオフされた後の時刻t2において、信号φS2が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられると、スイッチS2がオフされて初期充電が停止され、初充電電源9の出力電流I9は0Aになる。
【0081】
また、信号φS2が「L」レベルにされると、ゲート回路62(図5)の出力信号φ62が「H」レベルにされ、スイッチ63(図5)の端子63b,63c間が導通し、直流電圧VDの代わりに直流電圧定格値VDrが変化率制限部64に与えられる。直流電圧指令値VDcは、変化率制限部64により、直流電圧VDから直流電圧定格値VDrに徐々に変更される(VDc=VDr)。制御部35は、直流電圧VD=Ep+Enが直流電圧指令値VDc=VDrになるように、コンバータ4を制御する。
【0082】
以上のように、本実施の形態では、直流ラインL1,L3間の直流電圧VDを検出し、その検出値を直流電圧帰還値VDとして出力する電圧検出部(電圧検出器31,32および加算器33)を設け、スイッチS2および遮断器B1の両方がオンされたことに応じて直流電圧帰還値VDを保持し、保持した直流電圧帰還値VDを直流電圧指令値VDcとして出力し、電圧検出部から出力される直流電圧帰還値VDが直流電圧指令値VDcになるようにコンバータ4を制御する。
【0083】
したがって、スイッチS2および遮断器B1の両方がオンされている期間には、整流器12,13によってコンデンサC1,C2を直流電圧VD=VD1+VD2に充電するとともに、コンバータ4によってコンデンサC1,C2を直流電圧VD=VD1+VD2に充電するので、整流器12,13とコンバータ4の間に流れる電流を小さく抑制し、初充電電源9と商用交流電源16の間に流れる循環電流を小さく抑制することができる。
【0084】
[比較例1]
図7は、本実施の形態の比較例1となる可変速揚水発電システムの要部を示すブロック図であって、図5と対比される図である。この比較例1が上記実施の形態と異なる点は、直流電圧指令部41が直流電圧指令部41Aで置換されている点である。直流電圧指令部41Aは、直流電圧指令部41からラッチ回路61およびゲート回路62を除去したものである。
【0085】
スイッチ63の切換端子63aは、直流電圧VDを受ける。スイッチ63は、信号φB1によって制御される。信号φB1が「L」レベルにされている場合には、直流電圧VDが変化率制限部64に与えられる。信号φB1が「H」レベルにされた場合には、直流電圧定格値VDrが変化率制限部64に与えられる。
【0086】
図8は、比較例1の問題点を説明するためのタイムチャートであって、図6と対比される図である。図8において、(A)は遮断器B1を制御する信号φB1の波形を示し、(B)はスイッチS2を制御する信号φS2の波形を示し、(C)は直流電圧制御の停止期間および実行期間を示し、(D)は電圧指令値VDcの変化を示し、(E)は初充電電源9の出力電流I9の実効値の変化を示している。
【0087】
初期状態(時刻t0)では、上記実施の形態と同様に、信号φS2が「H」レベルにされてスイッチS2がオンされ、コンデンサC1,C2は直流電圧VD1,VD2に充電されている。また、信号φB1が「L」レベルにされて遮断器B1がオフされ、コンバータ4の直流電圧制御は停止されている。このため、直流電圧VDは整流器12,13によって一定値(VD1+VD2)に維持されている。なお、スイッチS1もオンされている。
【0088】
また、信号φB1が「L」レベルにされているので、直流電圧VDがスイッチ63および変化率制限部64(図7)を通過して直流電圧指令値VDcとなっている(VDc=VD=VD1+VD2)。
【0089】
交流電圧VA2の位相および振幅が交流電圧VA1の位相および振幅に同期したことに応じて、制御部23によって、信号φB1が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられ、遮断器B1がオンされる(時刻t1)。
【0090】
また、信号φB1が「H」レベルに立ち上げられると、スイッチ63の端子63b,63c間が導通し、直流電圧定格値VDrがスイッチ63を介して変化率制限部64に与えられ、直流電圧指令値VDcは直流電圧VDC=VD1+VD2から直流電圧定格値VDrに徐々に変更される(VDc=VDr)。
【0091】
また、信号φB1が「H」レベルにされると、制御部35(図3図4)によってコンバータ4の直流電圧制御が実行される。コンバータ4は、交流電圧VA3を直流電圧Ep,Enに変換して直流ラインL1~L3に出力する。制御部35は、直流電圧VD=Ep+Enが直流電圧指令値VDc=VDrになるように、コンバータ4を制御する。
【0092】
このとき、整流器12,13がコンデンサC1,C2を直流電圧VD=VD1+VD2に充電するとともに、制御部35がコンデンサC1,C2の直流電圧VDが直流電圧定格値VDrになるようにコンバータ4を制御する。ここではVD1+VD2>VDrであるので、整流器12,13からコンバータ4に電流I9が流れ、初充電電源9と商用交流電源16の間に循環電流I9が流れてしまう。
【0093】
スイッチS1がオフされた後の時刻t2において、信号φS2が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられると、スイッチS2がオフされて初期充電が停止され、初充電電源9の出力電流は0Aになる。
【0094】
したがって、この比較例1では、初充電電源9と商用交流電源16の間に流れる循環電流が実施の形態よりも大きくなる。
【0095】
[比較例2]
比較例1では、スイッチS2および遮断器B1の両方がオンしているときにコンバータ4の直流電圧制御を実行したために、初充電電源9と商用交流電源16との間に循環電流が流れた。そこで、比較例2では、スイッチS2がオフされた後に、コンバータ4の直流電圧制御を実行する。
【0096】
図9は、本実施の形態の比較例2となる可変速揚水発電システムの要部を示すブロック図であって、図7と対比される図である。この比較例2が上記比較例1と異なる点は、直流電圧指令部41Aが直流電圧指令部41Bで置換されている点である。直流電圧指令部41Bは、直流電圧指令部41Aに遅延回路65を追加したものである。
【0097】
遅延回路65は、信号φB1の立ち上りエッジを遅延させて信号φB1aを生成する。信号φB1aは、スイッチ63を制御するとともに、コンバータ4の直流電圧制御の開始を指示するために使用される。信号B1aは、信号φB1の代わりに直流電圧制御部43およびバランス制御部49に与えられる。
【0098】
信号φB1aが「L」レベルにされている場合には、直流電圧VDがスイッチ63を介して変化率制限部64に与えられるとともに、コンバータ4の直流電圧制御は停止される。信号φB1aが「H」レベルにされた場合には、直流電圧定格値VDrが変化率制限部64に与えられるとともに、コンバータ4の直流電圧制御が開始される。
【0099】
図10は、比較例2の問題点を説明するためのタイムチャートであって、図6と対比される図である。図10において、(A)は遮断器B1を制御する信号φB1の波形を示し、(B)はスイッチS2を制御する信号φS2の波形を示し、(C)は信号φB1aの波形を示し、(D)は直流電圧制御の停止期間および実行期間を示し、(E)は電圧指令値VDcの変化を示し、(F)は初充電電源9の出力電流I9の実効値の変化を示している。
【0100】
初期状態(時刻t0)では、上記実施の形態と同様に、信号φS2が「H」レベルにされてスイッチS2がオンされ、コンデンサC1,C2は直流電圧VD1,VD2に充電されている。また、信号φB1が「L」レベルにされて遮断器B1がオフされ、コンバータ4の直流電圧制御は停止されている。このため、直流電圧VDは整流器12,13によって一定値(VD1+VD2)に維持されている。なお、スイッチS1もオンされている。
【0101】
また、信号φB1aが「L」レベルにされているので、直流電圧VDがスイッチ63および変化率制限部64(図7)を通過して直流電圧指令値VDcとなっている(VDc=VD=VD1+VD2)。
【0102】
交流電圧VA2の位相および振幅が交流電圧VA1の位相および振幅に同期したことに応じて、制御部23によって、信号φB1が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられ、遮断器B1がオンされる(時刻t1)。
【0103】
このとき、交流電圧VA2の位相および振幅が交流電圧VA1の位相および振幅に同期しているが、完全には一致していない。ここでは、交流電圧VA2の位相が交流電圧VA1の位相よりも若干進んでいるものとする。この場合、コンデンサC1,C2からコンバータ4、変圧器3、および遮断器B1を介して商用交流電源16に回生電流が流れ、直流電圧VDが徐々に低下する(時刻t1~t3)。
【0104】
直流電圧VDが低下すると、初充電電源9からスイッチS1,S2、変圧器11、および整流器12,13を介してコンデンサC1,C2に電流I9が流れる。直流電圧VDが徐々に低下すると、電流I9は徐々に増大する(時刻t1~t2)。スイッチS1がオフされた後の時刻t2において、信号φS2が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられると、スイッチS2がオフされて初期充電が停止され、初充電電源9の出力電流I9は0Aになる。したがって、時刻t1~t2において大きな循環電流が流れてしまう。
【0105】
スイッチS2がオフされた後も、コンデンサC1,C2からコンバータ4、変圧器3、および遮断器B1を介して商用交流電源16に回生電流が流れ、直流電圧VDが徐々に低下する(時刻t2~t3)。
【0106】
スイッチS2がオフされた後の時刻t3において、信号φB1aが「H」レベルに立ち上げられると、スイッチ63の端子63b,63c間が導通し、直流電圧定格値VDrがスイッチ63を介して変化率制限部64に与えられ、直流電圧指令値VDcは直流電圧VDから直流電圧定格値VDrに徐々に変更される(VDc=VDr)。
【0107】
また、信号φB1aが「H」レベルにされると、制御部35(図3図4)によってコンバータ4の直流電圧制御が実行される。コンバータ4は、交流電圧VA3を直流電圧Ep,Enに変換して直流ラインL1~L3に出力する。制御部35は、直流電圧VD=Ep+Enが直流電圧指令値VDc=VDrになるように、コンバータ4を制御する。
【0108】
したがって、この比較例2では、実施の形態と比べ、初充電電源9と商用交流電源16の間に大きな循環電流が流れ、また、直流電圧VDが大きく変動する。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
B1 遮断器、1 高調波フィルタ、2 電流検出器、3,11 変圧器、4 コンバータ、L1~L3 直流ライン、C1,C2 コンデンサ、5 インバータ、6 二重給電可変速発電電動機、7 ポンプ水車、8 回転速度検出器、9 初充電電源、S1,S2,63 スイッチ、10 限流抵抗器、12,13 整流器、14 操作部、15 制御装置、16 商用交流電源、21,22,31,32 電圧検出器、23,35 制御部、33,48,50 加算器、34,42,46 減算器、41,41A,41B 直流電圧指令部、43 直流電圧制御部、44 正弦波発生器、45 乗算器、47 電流制御部、49 バランス制御部、51 PWM制御部、61 ラッチ回路、62 ゲート回路、64 変化率制限部、65 遅延回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10