(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】耐衝撃性があり収縮可能な織られた管状スリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
D03D 3/02 20060101AFI20220704BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20220704BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20220704BHJP
D03D 15/567 20210101ALI20220704BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20220704BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
D03D3/02
D03D1/00 Z
D03D11/00 Z
D03D15/567
H01B17/58 F
H02G3/04
(21)【出願番号】P 2019510955
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 US2017048301
(87)【国際公開番号】W WO2018039397
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-21
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チウ,シャオダン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ティアンキ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンターズ,ダニー
(72)【発明者】
【氏名】メブバニ,リテーシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チョン・ホワイ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/138589(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/075425(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/073757(WO,A1)
【文献】特表2016-516912(JP,A)
【文献】特開2016-091689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 3/02
D03D 1/00
D03D 11/00
D03D 15/567
H01B 17/58
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い部材を経路決めするとともに保護するためのテキスタイルスリーブであって、
両開放端部間で中心軸に沿って延在する中央キャビティを画定する周方向に連続した管状の外周を有する細長い織られた壁を備え、前記壁は、前記中心軸に概ね平行に延在する縦糸と、前記縦糸に対して概ね横方向に延在する横糸とを含み、前記壁は、前記外周の別の部分の周りに各々延在する別の第1の部分および第2の部分を有し、前記第1の部分は、互いに重なって当接し、かつ前記第1の部分と第2の部分との間および前記両開放端部間
に沿って互いに取り付けられる複数の層を有し、前記横糸の少なくともいくつかは、前記壁が直径方向に拡大された第1の状態から直径方向に縮径された第2の状態まで径方向に縮径されることを可能にする収縮可能な糸を含む、テキスタイルスリーブ。
【請求項2】
前記
複数の層は、前記横糸の少なくとも1本によって
前記両開放端部間に沿って互いに取り付けられる、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項3】
前記複数の層
を互いに相互接続する少なくとも1つのステッチをさらに備え、前記少なくとも1つのステッチは、前記複数の層の間で
往来して延在する前記横糸の少なくとも1本によって形成される、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項4】
前記複数の層
を互いに相互接続する複数のステッチを含む、請求項3に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項5】
前記複数の層
を互いに相互接続する少なくとも1つのステッチをさらに備え、前記少なくとも1つのステッチは、前記複数の層の間で
往来して延在する前記縦糸のうちの少なくとも1本によって形成される、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項6】
前記少なくとも1本の縦糸は、前記複数の層の最外層の緯糸の上および前記複数の層の最内層の緯糸の下に延在する、請求項5に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項7】
前記少なくとも1本の縦糸は、前記複数の層を前記両開放端部間で連続的に相互接続する、請求項6に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項8】
前記壁の前記第1の部分は、第1の層数を有し、前記壁の前記第2の部分は、第2の層数を有し、前記第1の層数は、前記第2の層数と異なる、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項9】
前記第2の層数は、1層以上である、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項10】
前記第2の層数は、1である、請求項9に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項11】
前記第1の層数は、2である、請求項10に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項12】
前記第2の部分は
、互いに取り付けられる複数の層を有する、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項13】
前記第1の部分および前記第2の部分の各々の前記複数の層
を互いに相互接続する前記横糸の少なくとも1本によって形成される少なくとも1つのステッチをさらに含む、請求項12に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項14】
前記第1の部分および前記第2の部分の各々の前記複数の層
を互いに相互接続する前記縦糸のうちの少なくとも1本によって形成される少なくとも1つのステッチをさらに含む、請求項12に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項15】
前記縦糸および前記横糸の少なくとも1本は、前記収縮可能な糸の融点よりも低い融点を有する低融点糸を含む、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【請求項16】
直径方向に拡大された組付け部品の前記第1の状態は、第1の直径を有し、直径方向に縮径された前記第2の状態は、第2の直径を有し、前記第1の直径と前記第2の直径との比率は、約1.5:1~5:1の
間である、請求項1に記載のテキスタイルスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2016年8月24日に提出された米国仮出願連続番号第62/378,968号および2017年8月23日に提出された米国特許出願連続番号第15/684,857号の利益を主張し、参照によりその内容全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して、細長い部材を保護するためのテキスタイルスリーブ、より特定的には、耐衝撃性のある収縮可能な織られた管状スリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
織られた(woven)スリーブの中に、ワイヤ、ワイヤハーネス、ケーブルおよび様々なタイプの管などの細長い部材を収容して、細長い部材への衝撃および摩耗、流体ならびに熱的影響に対する保護を提供することが知られている。スリーブおよびその内容物に対するダメージを防ぐために高い耐衝撃性が必要とされる用途においては、巻付可能であり周方向に連続的でもある管状スリーブが知られている。各々は衝撃力および摩耗に対する好適な保護を提供するために作製され得るが、各々は欠点を伴う。巻付可能なスリーブは、クランプ、ストラップ、テープなどの、保護されている細長い部材の周りにそれらを固定するための二次的な固定具を要求するため、組付けの間に追加の労力および時間が要求され、これにより組付けの費用を増加させる。さらに、二次的な固定具を在庫に置いておく必要があることは、費用がかかる。またさらに、二次的な固定具は、使用の間にほどける可能性を呈することがあり、これにより細長い部材の環境影響に対する直接の暴露の危険を与える。加えて、巻付可能なスリーブは、典型的には、対向する縁部が互いに重なる不均一な厚さを有するため、スリーブの外囲/表面は、不均一な外観を有し、狭いエリアで用いられることを妨げることがあり、または他の態様では組付けを困難にすることがある、増加された厚さの領域を有する。巻付可能なスリーブに対する別の欠点は、異なる直径の用途のために異なるサイズを在庫に置いておく必要性であり、これは棚卸しおよび費用をさらに増加させる。加えて、所望の耐衝撃性を提供するためには、一般的に、比較的厚い壁を形成する必要があり、比較的狭い空間では巻付可能なスリーブを使用することをできなくすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周方向に連続した管状スリーブに関しては、巻付可能なスリーブと同様に、異なる直径の用途のために異なるサイズを在庫に置く必要性が存在する。さらに、管状スリーブは、一般に、直径が固定されており、このように、細長い部材がスリーブの内径に対して1つ以上の増加されたサイズの領域を有する用途においては、このスリーブのタイプを使用することを困難または不可能にし得るため、スリーブは、増加されたサイズの領域上に適合し得ない。増加されたサイズの領域は、たとえば拡大された機械的または電子コネクタによって提示され得る。さらに、固定された直径の管状スリーブは、典型的には、たとえば、端部のうちの一方または両方の周りおよびスリーブを通って延在する部材上にテープを施すことによるなどして、所定の位置にそれらを固定するための二次的な固定具を必要とする。したがって、それらは、巻付可能なスリーブについて上述された同様の欠点に悩まされる。加えて、上述されたように、所望の耐衝撃性を提供するためには、一般的に、比較的厚い壁を形成する必要があるため、比較的狭い空間でスリーブを使用する能力を損なう。
【0005】
したがって、必要とされるのは、そこに含まれる細長い部材に対して特に衝撃、摩耗および汚染に対する高められた保護を提供し、二次的な固定機構の必要なく使用中に所定の位置に固定されたままとなり、細長い部材の直径の幅範囲を超えて設置するのに有用かつ容易であり、製造および組付けにおいて経済的であり、かつ長く有効な寿命を示すスリーブである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の概要
本開示の1つの局面は、細長い部材を経路決めするとともに保護するためのモノリシックな一片のテキスタイルスリーブを提供する。スリーブは、両開放端部間で中心軸に沿って延在する周方向に連続した管状の外周を有する細長い織られた壁を含む。壁は、中心軸に概ね平行に延在する縦糸と、縦糸に対して概ね横方向に延在する横糸とを含む。壁の少なくとも一部は、多層化されており、互いに重なる複数の層を含む。複数の層は、互いに中心軸の同じ側に互いに当接する。1つ以上の横糸は、収縮可能な糸として提供給される。収縮可能な糸は、保護対象となる細長い部材の周りにおけるスリーブの組付けを容易にするための組付け部品の状態ともよばれる直径方向に拡大された第1の状態から、スリーブを所望の位置に固定および維持するのを容易にするための組み付けられた状態ともよばれる直径方向に縮径された第2の状態まで径方向に縮径される能力を有する壁を提供するとともに、外囲/外周を最小化して狭い空間におけるスリーブの使用を容易にする。
【0007】
本発明の別の局面によれば、互いに重なって当接する複数の層は、当接する層の互いからの分離を防ぐために、別個の位置において、当接する複数の層に対して共通する少なくとも1本の緯糸および/または少なくとも1本の縦糸を介して、ともに固定され得る。これにより、当接する層の間への保護されている細長い部材の不注意による挿入を防止する。
【0008】
本発明の別の局面によれば、互いに重なって当接する複数の層は、層の最外のものの中の緯糸の上およびスリーブの軸方向に延在する長さに沿って層の最内のものの中の緯糸の下に蛇行する少なくとも1本の縦糸を介して、ともに固定され得る。
【0009】
本発明の別の局面によれば、互いに重なって当接する複数の層は、層の1つから延在しかつ重なって当接する層の他のものの中の1つ以上の縦糸の上に蛇行する少なくとも1本の緯糸を介して、層の互いからの分離を防止するために、ともに固定され得る。
【0010】
本発明の別の局面によれば、互いに重なって当接する複数の層は、外周の実質的に全体の周りに延在し得る。
【0011】
本発明の別の局面によれば、互いに重なって当接する複数の層は、外周の選択した周方向に延在する多層部分の周りに延在し得る。単一層が多層部分の対向する縁部間の外周の残部の周りに延在する。したがって、壁の増加された厚さ領域は、衝撃力、摩耗、熱条件に対する高められた保護を提供するために特に所望の領域に形成され得る、またはそうでなければ、一方で、高められた保護の度合いを要求することのない領域に単一層領域が設けられ得る。このように、スリーブは、スリーブが比較的狭い空間において使用されることを可能にする最適な外囲/外周を有するとともに、スリーブの製造および材料含有量に関する費用を最小化して作製されることができる。
【0012】
本発明の別の局面によれば、織られた壁は、直径方向に対向する側を有する。側のうちの一方は、第1の層数を有し、側のうちの他方は、第2の層数を有する。第1の層数および第2の層数は、互いに異なるものとして提供されてもよく、これにより互いに異なる衝撃力に対する保護の度合いを提供し、所用の用途のために最適な厚さおよび外囲/外周を有する壁を提供する。
【0013】
本発明の別の局面によれば、少なくとも1本の収縮可能な緯糸は、熱、流体、および紫外線照射の少なくとも1つの選択された印加を介して収縮するように活性化され得る。
【0014】
本発明の別の局面によれば、少なくとも1本の収縮可能な横糸は、互いに、撚り合わされる、供給される、または挿入される収縮可能な糸および非収縮可能な糸を介して、少なくとも1本の非収縮可能な糸との共通の糸として、単一のピックで織られ得る。
【0015】
本発明の別の局面によれば、縦糸は、任意の所望の材料からなるマルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供され得る。
【0016】
本発明の別の局面によれば、縦糸は、PET、ナイロン、PP、PE、PPS、PEEK、およびノメックス(Nomex)のうちの少なくとも1つ以上として提供され得る。
【0017】
本発明の別の局面によれば、壁は、残りの糸のそれよりも低い融点を有する低融点糸を含んで織られ得る。低融点糸は、融解される際、スリーブを所定の長さに切断し、端部ほつれの可能性を最小化することを容易にする。
【0018】
本発明の別の局面によれば、直径方向に拡大された第1の状態は、第1の直径を有して提供され得、直径方向に縮径された第2の状態は、第2の直径を有して提供され得る。それぞれの第1の直径と第2の直径との間の比率は、約1.5:1~5:1またはそれ以上の間の範囲にわたり得る。
【0019】
本発明の別の局面によれば、互いに重なって当接する複数の層の少なくとも1つは、少なくとも部分的に互いに重なって当接する複数の層の他のものとは異なるタイプの糸材料から形成され得る。
【0020】
本発明の別の局面によれば、互いに重なって当接する複数の層の少なくとも1つは、互いに重なって当接する複数の層の他とは異なる織パターンを有して形成され得る。
【0021】
本発明のさらに別の局面によれば、細長い部材を経路決めするとともに保護するためのモノリシックな一片のテキスタイルスリーブを構築する方法が提供給される。上記方法は、細長い壁を、壁の両開放端部間で中心軸に概ね平行に延在する縦糸と、縦糸に対して概ね横方向に延在する横糸とで織ることを含む。壁の少なくとも一部は、互いに中心軸の共通の側に沿って互いに重なって当接する織られた複数の層を有して形成される。さらに、互いに重なって当接する複数の層および壁の残部が、両開放端部間で延在する単一の共通のキャビティを画定するように、周方向に連続している織られた壁を形成することを含む。キャビティは、その中への保護対象となる細長い部材の受容のためにサイズ決めされる。またさらに、横糸の1本以上を、収縮可能な糸であるものとして提供することを含む。収縮可能な糸は、直径方向に拡大された第1の状態から直径方向に縮径された第2の状態まで径方向に縮径される能力を有する壁を提供する。
【0022】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、当接する層の互いからの不注意による分離を防止するために、重なって当接する複数の層を、当接する層の他方のそれぞれの縦糸および/または緯糸の周りに結ばれる、当接する層の一方の縦糸および/または緯糸を介して、別個の位置で、互いに分離不能かつ固定された配置で織ることをさらに含む。これにより、当接する層の間に保護される細長い部材の不注意による分離を防止する。
【0023】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、少なくとも1本の縦糸を、スリーブの軸方向に延在する長さに沿って層の最外のものの中の緯糸の上および層の最内のものの中の緯糸の下に蛇行させるように織ることによって、互いに重なって当接する複数の層をともに固定することをさらに含み得る。これにより、互いに固定される層の間への保護対象となる細長い部材の不注意による挿入を防止する。
【0024】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、層の1つからの少なくとも1つの緯糸を、複数の層の他のものの中の1つ以上の縦糸の上または下に蛇行させるように織ることによって、互いに重なって当接する複数の層をともに固定することをさらに含み得る。これにより、互いに固定される層の間への保護対象となる細長い部材の不注意による挿入を防止する。
【0025】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、互いに重なって当接する複数の層を、外周の実質的に全体の周りに延在するように織ることをさらに含み得る。
【0026】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、外周の別個の部分の周りに互いに重なって当接する複数の層を織り、外周の残部の周りに延在する単一層を織ることをさらに含み得る。
【0027】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、互いに中心軸の直径方向に対向する側に沿って延在する対向する側を有する壁を織り、側のうちの一方を第1の層数を有して織り、側の他方を第2の層数を有して織ることをさらに含み得る。第1の層数および第2の層数は異なる。これにより衝撃力に対するなど、異なるレベルの保護を有する壁を提供し、所用の用途のために最適な厚さおよび外囲/外周を有する壁を提供する。
【0028】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、少なくとも1本の収縮可能な糸を、熱、流体、および紫外線照射の少なくとも1つの選択された印加を介して収縮するように活性化可能であるものとして提供することをさらに含み得る。
【0029】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、少なくとも1本の収縮可能な糸を、非収縮可能な糸を有する単一のピックとして織ることをさらに含み得る。収縮可能な糸および非収縮可能な糸は、互いに撚り合わされ、供給され、または挿入される。
【0030】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、縦糸を、マルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供することをさらに含み得る。
【0031】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、縦糸を、PET、ナイロン、PP、PE、PPS、PEEK、およびノメックス糸のうちの少なくとも1つ以上として提供することをさらに含み得る。
【0032】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、収縮されていない第1の状態から収縮された第2の状態へ、密度を2倍以上に増加させるように壁を織ることをさらに含み得る。
【0033】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、残りの糸のそれよりも低い融点を有する低融点糸を含むように壁を織ることをさらに含み得る。低融点糸は、切断された端部において最小の端部ほつれとなるようにスリーブを所定の長さに切断することを容易にするために、融解され固化され得る。
【0034】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、第1の直径を有する直径方向に拡大された収縮されていない組付け部品の第1の状態を提供し、第2の直径を有する直径方向に収縮された完全に組み付けられた第2の状態を提供することをさらに含み得る。第1の直径と第2の直径との間の比率は、約1.5:1~5:1の間またはそれ以上の範囲にあり得る。
【0035】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、互いに重なって当接する複数の層の他とは異なるタイプの糸材料を有する、互いに重なって当接する複数の層の少なくとも1つを織ることをさらに含み得る。
【0036】
本発明の別の局面によれば、上記方法は、互いに重なって当接する複数の層の他とは異なる織パターンを有する、互いに重なって当接する層の少なくとも1つを織ることをさらに含み得る。
【0037】
これらのおよび他の局面、構成ならびに利点は、現在好ましい実施形態およびベストモードの以下の詳細な説明、添付された請求項、ならびに添付の図面を参照して、当業者にとってより容易に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】完全に組み立てられるには満たない拡張された状態で示される、本発明の1つの局面に従って構築される、管状の織られたスリーブの概略斜視図である。
【
図1A】スリーブが完全に組み付けられた縮められた状態で示される、
図1に類似の図である。
【
図2A】
図1のスリーブの壁の異なる実施形態の、
図1の線2-2に概ね沿った概略断面図である。
【
図2B】
図1のスリーブの壁の異なる実施形態の、
図1の線2-2に概ね沿った概略断面図である。
【
図2C】
図1のスリーブの壁の異なる実施形態の、
図1の線2-2に概ね沿った概略断面図である。
【
図2D】
図1のスリーブの壁の異なる実施形態の、
図1の線2-2に概ね沿った概略断面図である。
【
図5】本発明の1つの局面に従って構築される、管状の織られたスリーブの概略斜視図である。
【
図5A】
図5を参照して説明されるようなスリーブの斜視図である。
【
図6】その緯糸および縦糸を示し、互いに重なる複数の層を繋ぐ相互接続領域を示す、
図5のスリーブの壁の部分図である。
【
図7】
図5のスリーブの織パターンダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、
図1は、保護対象となる細長い部材12の周りに配置されるように示される、本発明の1つの局面に従って構築される、以下スリーブ10とよばれる、モノリシックな単一片の織られた保護管状スリーブを概略的に示す。スリーブ10は、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態で示される。
図1Aは、細長い部材12の周りにおける直径方向に縮径された完全に組み付けられた第2の状態のスリーブ10を示す。スリーブ10は、両開放端部20,22間で中心長手方向軸18に沿って延在する、周方向に連続した管状の外周16および内側キャビティ17を有する、細長い織られた壁14を含む。周方向に連続的かつ管状であることによって、スリーブ10は、長手方向に延在する自由側縁部を有しないということが理解されるべきである。壁12は、糸24がそこから真に平行であってもよくまたはわずかに曲げられていてもよいことを一般的に意味する、軸18に概ね平行に延在する縦糸24と、糸26が縦糸に対して真に横方向にあってもよくまたはわずかにそこから垂直でなくてもよいことを一般的に意味する、縦糸24対して概ね横方向に延在する横糸26とを含む。完全に両端部20,22間に延在する壁14の少なくとも一部は、多層化されており、互いに重なって当接する複数の層を有する。横糸26のうちの少なくともいくつか、場合によってすべてが、少なくとも1本の収縮可能な糸を含む。収縮可能な横糸26は、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態(
図1)から直径方向に縮径された完全に組み付けられた第2の状態(
図1A)まで径方向に縮められる能力を有する壁14を提供する。スリーブ10は、たとえばワイヤ、ワイヤハーネスまたは管などのキャビティ17を通って延在する細長い部材12を、経路決めし、衝撃力からのダメージに対して保護するとともに、摩耗に対する暴露および汚染、瓦礫などの侵入に対する保護を提供することを、基本的には意図される。重なって当接する複数の層を含む壁14の領域は、細長い部材12への前述の影響のすべてに対する高められた保護を提供し、特に衝撃力に対する高められた保護を提供すると同時に、スリーブ10が最小の外囲を占めることを可能にすることにより、狭い範囲において有用となる。
【0040】
本発明の1つの局面によれば、スリーブ10は、
図2Aおよび
図3Aに示されるように、外周16の全体または実質的に全体の周りに、互いに重なって当接する複数の層を有する。複数の層は、1つの端部20から反対側の端部22まで、壁14の直径方向に対向する側に沿って、キャビティ17の周りに延在する。例示であって限定ではないが一対の層28,28’として示される、重なって当接する層の1つのセットが、軸18の片側に沿って延在し、例示であって限定ではないが一対の層30,30’として示される、重なって当接する層の別のセットが、軸18の反対側に沿って延在する。層28,28’は、対向する長手方向に延在する縁部32,34に沿って、層30,30’と一体的に固定され相互接続される。層28,28’の層30,30’との相互接続は、直接、織機上などで、たとえば層28,28’,30,30’の両方のセットに共通な緯糸を介して、および/または、バインダーヤーンとよばれることもある縁部32,34の一方または両方を接合するために縫い合わせられる別の糸を介して、層28,28’,30,30’の織りと同時に行われてもよい。1つの例では、1つの縁部32が編ステッチ36を介して相互接続される一方、反対側の縁部34は層28,28’,30,30’の両方のセットに共通する緯糸38を介して相互接続される。
【0041】
層28,28’,30,30’は各々、収縮可能な横糸26を含む。層28,28’,30,30’の横糸は、全体的に収縮可能な糸から、または部分的に収縮可能な糸から提供されてもよい。部分的に収縮可能な糸で提供給される場合は、残りの非収縮可能な糸26の少なくともいくつかは、それと並んで当接する関係で撚り合わされる、供給されるまたは挿入されることによるなどして、収縮可能な横糸26と単一のピックとして束ねられた関係で織られ得る。他の態様では、非収縮可能な横糸26が、収縮可能な横糸26から、単一の糸として、したがって別のピックとして織られてもよいことが考えられる。
【0042】
収縮可能な横糸26が収縮されていない状態で織られることによって、キャビティ17がそこを通る細長い部材12を容易に受容するように好適にサイズ決めされるように拡大されている壁14を有して、スリーブ10は形成される。織られたままの第1の直径と収縮されたときの第2の直径との間の比率は、約1.5:1~5:1またはそれ以上の間の範囲にわたり得る。このように、細長い部材12が拡大された付属品、コネクタ、独特な形状の分岐などを有する場合、それは依然としてスリーブ10のキャビティ17を通って容易に挿入されることができる。収縮可能な横糸26は、マルチフィラメントまたはモノフィラメントのいずれかとして提供されてもよく、約50~10000デニールの間の範囲にあるサイズを有して提供されてもよい。キャビティ17を通って細長い部材12を配置する際、用いられる収縮可能な横糸26のタイプに応じて、熱、流体、および紫外線照射の少なくとも1つの選択された印加を介して、壁14は活性化されて細長い部材12の周りに密接嵌合のぴったりとした関係になるように収縮し得る(
図1A)。したがって、スリーブ10は、二次的な固定機構の必要なく細長い部材12の周りに固定されることにより、クランプ、ストラップ、テープなどの必要をなくす。またさらに、織られた壁14は、収縮される際、密度を高くされるため、とりわけ耐衝撃性、耐摩耗性、不浸透性などの壁14の保護特性は大いに上昇する。たとえば、密度は、収縮されてない状態における第1の密度から収縮された状態における第2の密度まで、2倍以上増加され得る。1つの例では、例示であって限定ではないが、密度は243kg/m
3から552kg/m
3まで増加された。加えて、壁14が細長い部材12の周りへの密接なぴったりとした嵌合に持ち込まれることによって、壁14の厚さおよび外囲が最小化されることにより、狭いエリアで有用となる。1つの例では、例示であって限定ではないが、壁14の仕上げ厚さは、約2.6mmであった。
【0043】
縦糸24は、PET、ナイロン、PP、PE、PPS、PEEK、およびノメックス材料糸のうちの少なくとも1本のマルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントとして提供され得る。縦糸24のデニールは、50~10000の範囲であり得る。例示であって限定ではないが、1200デニールのPETなどの比較的嵩高いマルチフィラメントは、衝撃力を減ずることをさらに容易にするような増加された嵩高性を提供するとともに、スリーブ10の可撓性を高めることがわかっている。縦糸密度、すなわち縦糸24の端部の数は、意図された用途のために所望のとおりに調整され得る。高い密度は、「織られたままの組付け部品の状態」から収縮された状態まで、直径収縮の比率を小さくする傾向にあるが、増加された耐衝撃性を提供する。
【0044】
図2Dおよび
図3Dでは、本発明の別の局面に従ってスリーブ110が示される。同じ参照符号が、
図2Aおよび
図3Aのスリーブ10に関して説明されたものと同様の構成を示すために用いられる。互いに重なる複数の層28,28’および30,30’は、それぞれの層28,28’と30,30’との間への細長い部材12の不注意による挿入を防止するために、選択位置においてそれぞれの複数の層28,28’および30,30’に共通する1本以上の緯糸を介してともに織られて、層28,28’をともに束ねかつ層30,30’をともに束ねる連結ステッチまたはタイ40を介して相互接続領域を形成することによるなどして、ともに相互接続されてもよい。これにより、細長い部材12が意図されたキャビティ17で配置されることを確保する。したがって、互いに重なって当接する複数の層28,28’および30,30’は、それぞれ、ともに効果的に固定されて、層28,30のうちの一方から延在し、かつ重なって当接する層28’,30’のうちの他方の中の1つ以上の縦糸24の上に蛇行する少なくとも1本の緯糸40を介して、層28,28’および30,30’の互いからの分離を防止する。相互連結位置の数およびその位置は、所望のとおりに選択され得ることが認識されるべきである。スリーブ110が、
図4に示される。一対のタイ40が、両端部20,22の各々に隣接して存在し、これにより、説明されたように、層28,28’および30,30’の互いからの不注意による分離を防止する。所望のとおりのタイが所望のとおりにスリーブ110の外周のまわりかつスリーブ110の長さに沿って形成されてもよいことが認識されるべきである。
【0045】
図5および
図5Aには、本発明の別の局面に従ってスリーブ210が示される。同じ参照符号が、
図2Aおよび
図3Aのスリーブ10に関して説明されたものと同様の構成を示すために用いられる。互いに重なる複数の層28,28’および30,30’は、少なくとも1本の縦糸24を層28,30のうちの最外のものの中の1本以上の緯糸26の上(over)および層28’,30’のうちの最内のものの中の1つ以上の緯糸26の上(over)に蛇行するように織ることを介して連結ステッチを形成することによるなどして、相互連結され得る(
図6および
図7を参照。用語「上(over)」は、縦糸24が対応する緯糸26から径方向外側に延在して対応する緯糸26の周囲に延在することを意味するように意図されることが認識されるべきである)。連結ステッチ40は、例示であって限定ではないが、一方の端部22から反対の端部22までのスリーブ210の全体長さに沿って延在するように示される、スリーブ210の軸方向に延在する長さの少なくとも一部に沿って延在し得る。重なって当接するそれぞれの層28,28’および30,30’が連結ステッチ40を介して相互接続され結び付けられることにより、互いに固定されるそれぞれの層28,28’および30,30’間への保護対象となる細長い部材12の不注意による挿入が防止され、これにより細長い部材12が意図された中央キャビティ17内に配置されることが確保される。したがって、スリーブ210の全体保護特性が、意図されたとおりに、細長い部材12に対して与えられる。スリーブ110のための連結ステッチ40に関して上述されたように、連結ステッチ40は、所望のとおりに、重なって当接する層28,28’および30,30’の各々の間に延在する単一の連結ステッチとして形成されてもよく、または、互いに周方向に離間される複数の連結ステッチとして提供されてもよい。
【0046】
本発明の別の局面によれば、壁14は、残りの糸のそれよりも低い融点を有する低融点糸(low melt yarn)を含んで織られ得る。低融点糸は、融解される際、スリーブを所定の長さに切断し、端部ほつれの可能性を最小化することを容易にする。低融点糸は、選択された位置で、横糸26および/または縦糸24として含まれてもよい。
【0047】
本発明の別の局面によれば、直径方向に拡大された組付け部品の第1の状態は、第1の直径を有して提供されてもよく、直径方向に縮径された第2の状態は、第2の直径を有して提供されてもよい。第1の直径と第2の直径との比率は、約1.5~10、またはそれ以上の間の範囲にあり得る。
【0048】
図2Bおよび
図3Bには、本発明の別の局面に従ってスリーブ10’が示される。スリーブ10’は、
図2Aおよび
図3Aのスリーブ10とは対照的に、1つの端部から反対側の端部まで延在する第1の層数を有する側のうちの一方と、1つの端部から反対側の端部まで延在する第2の層数を有する側のうちの他方とを有する。第1の層数および第2の層数は異なり、これにより互いに異なるレベルの衝撃力に対する保護を提供し、所定の用途のための最適な厚さおよび外囲を有する壁14’を提供する。示される例では、片側が単一の織られた層28を有するため、重量、厚さを最小化し、可撓性を高める一方、反対側は、互いに重なる一対の織られた層30,30’を有する。このように、織られた層30,30’は、衝撃力ならびに摩耗および汚染などの他の可能性のあるダメージ要因に対する暴露を経験する可能性が増加することが予想される使用中の方向に向かって方向付けられることが意図される。層の数の相違以外は、壁14’の構築は、概ね上述されたものと同様であるため、さらなる議論は必要でない。
【0049】
図2Cおよび
図3Cには、本発明の別の局面に従ってスリーブ10”が示される。スリーブ10”は、
図2Bおよび
図3Bのスリーブ10’とは対照的に、1つの端部から反対側の端部まで延在する単一の織られた層28を有する片側を有すると共に、反対側は、互いに重なりかつ1つの端部から反対側の端部まで延在する3つの織られた層30,30’,30”を有する側を有する。このように、多層化された側は、キャビティ17に含まれる細長い部材への、特に衝撃力に対するさらに高められた保護を提供する。層の数の相違以外は、壁14”の構築は概ね上述されたものと同様であるため、さらなる議論は必要ではない。
【0050】
議論されたおよび示された実施形態の各々において、多層を有する壁の部分は、各層が同じ糸材料または互いに異なる糸材料から形成されて構築され得る。さらに、各層は、同じ織パターンまたは互いに異なる織パターンを有して形成されてもよい。したがって、多層領域のうちの1つ以上の層は、1つのタイプの糸(1つの材料、および、たとえば平織(plain)、バスケット織(basket)、綾織(twill)、朱子織(satin)などの1つのタイプの織パターンからなる、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントを含む)から形成されてもよく、一方、多層領域のうちの他の層は、異なるタイプの糸および/または異なる織パターン(異なる材料および1つのタイプの異なる織パターンからなる、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントを含む)から形成されてもよい。このように、壁および多層領域の個々の層は、所望のタイプの所望される保護のために最適化され得る。
【0051】
言うまでもなく、本発明の多くの修正および変形が上記の教示に照らして可能である。すべての請求項のおよびすべての実施形態のすべての構成は、そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わされることができることが考えられる。したがって、添付の請求項の範囲内で、本発明は、特定的に説明された以外の態様で実施され得ることが理解されるべきである。