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特許7098629抗PD-1モノクローナル抗体、その製造方法及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】抗PD-1モノクローナル抗体、その製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220704BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220704BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220704BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220704BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220704BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220704BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220704BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/06
A61P31/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019536981
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2018073575
(87)【国際公開番号】W WO2018137576
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-07-05
(31)【優先権主張番号】201710054783.5
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510277073
【氏名又は名称】三生国健薬業(上海)股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE GUOJIAN PHARMACEUT ICAL(SHANGHAI)CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】趙▲ジエ▼
(72)【発明者】
【氏名】高宏海
(72)【発明者】
【氏名】郭錦林
(72)【発明者】
【氏名】党尉
(72)【発明者】
【氏名】朱玲巧
(72)【発明者】
【氏名】張成海
(72)【発明者】
【氏名】趙楽
(72)【発明者】
【氏名】陳建鶴
(72)【発明者】
【氏名】黄浩旻
(72)【発明者】
【氏名】朱禎平
【審査官】新留 豊
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-523265(JP,A)
【文献】国際公開第2016/015685(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/011580(WO,A1)
【文献】特表2010-530753(JP,A)
【文献】特開2006-340714(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106008714(CN,A)
【文献】国際公開第2015/112900(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/014688(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/058115(WO,A1)
【文献】生物学辞典,第1版,2010年,第600頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/28
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖相補性決定領域と、軽鎖相補性決定領域とを含み、
重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:7で表され、かつ軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:9で表される
ことを特徴とする、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。
【請求項2】
前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体において、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:8で表され、かつ軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:10で表される、請求項1に記載の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1~2の何れか1項に記載の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体をコードすることを特徴とする、ヌクレオチド分子。
【請求項4】
前記ヌクレオチド分子において、
抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:33で表され、かつ軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:34で表される、請求項3に記載のヌクレオチド分子。
【請求項5】
前記ヌクレオチド分子において、
抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:11で表され、かつ軽鎖をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:12で表される、請求項3に記載のヌクレオチド分子。
【請求項6】
請求項3~4の何れか1項に記載のヌクレオチド分子を含んでなることを特徴とする、発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターを含んでなることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項8】
請求項1~2の何れか1項に記載の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を製造する方法であって、
発現条件において、請求項7に記載の宿主細胞を培養して抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を発現させる工程aと、
前記工程aで発現させる抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を分離精製する工程bと
を含むことを特徴とする、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~2の何れか1項に記載の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなることを特徴とする、薬学的組成物
【請求項10】
腫瘍及び/又は治療感染症を治療するための薬物の製造方法であって、
請求項1~2の何れか1項に記載の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体又は請求項9に記載の組成物を用いることを特徴とする腫瘍及び/又は治療感染症を治療するための薬物の製造方法。
【請求項11】
前記腫瘍は、大腸癌であることを特徴とする、請求項10に記載の腫瘍及び/又は治療感染症を治療するための薬物の製造方法。
【請求項12】
重鎖相補性決定領域と、軽鎖相補性決定領域とを含み、
重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:28で表され、かつ軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:30で表される、
ことを特徴とする、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。
【請求項13】
請求項12に記載の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体をコードすることを特徴とする、ヌクレオチド分子。
【請求項14】
前記ヌクレオチド分子において、
抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:27で表され、かつ軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:29で表される、請求項13に記載のヌクレオチド分子。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品に関し、具体的には抗PD-1モノクローナル抗体、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトプログラム細胞死受容体-1(以下、「PD-1」とも称する)は、288個のアミノ酸からなるI型膜タンパク質であり、免疫チェックポイント(Immune Checkpoint)のうち主な1つとして知られている(Blank et al,2005,Cancer Immunotherapy,54:307~314)。PD-1は、活性化Tリンパ球で発現され、そのリガンドであるプログラム細胞死受容体-リガンド1(programmed cell death-Ligand 1、以下「PD-L1」とも称する)及びプログラム細胞死受容体-リガンド2(programmed cell death-Ligand 2、以下「PD-L2」とも称する)に結合することでTリンパ球の活性及び関連体内細胞の免疫反応を抑制することができる。PD-L2は、主にマクロファージと樹状細胞で発現され、一方、PD-L1は、Bリンパ球とTリンパ球、微小血管上皮細胞などの末梢性細胞、及び肺臓、肝臓、心臓等の組織細胞で広く発現されている。大量の研究により、PD-1とPD-L1の相互作用が体内免疫系の均衡維持に必須であると同時に、PD-L1陽性腫瘍細胞が免疫監視から逃れるための主な機序と原因であることが解明されている。したがって、PD-1/PD-L1シグナル経路に対するガン細胞の負の調節を遮断して免疫系を活性化することは、T細胞に関連する腫瘍特異的な細胞免疫反応を促進することができ、新たな腫瘍治療法としてガン免疫療法を確立するのに有用であると考えられる。
【0003】
Pdcd1遺伝子によってコードされるPD-1は、CD28とCTLA-4に関連する免疫グロブリンスーパーファミリーに属するメンバーである。PD-1がそのリガンドであるPD-L1及び/又はPD-L2に結合すると、抗原受容体を介したシグナル伝達を阻害することが研究により解明され、また、ラットPD-1の構造及びマウスPD-1とヒトPD-L1の共結晶構造(Zhang、X.ら,Immunity 20:337~347(2004); Linら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:3011~6(2008))も既に解明されている。PD-1及びそれに類似するファミリーメンバーは、I型の膜貫通糖タンパク質であり、リガンド結合用のIg可変型(V-型)ドメインとシグナル伝達分子結合用の細胞質尾部を含む。PD-1細胞質尾部には、チロシン残基に基づくシグナル伝達モチーフであるITIM(免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ)及びITSM(免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフ)を含む。
【0004】
PD-1は、腫瘍の免疫逃避機構において重要な役割を果たす。腫瘍免疫療法とは、人体自身の免疫系を利用してガンを抵抗することを意味し、腫瘍治療法としては前例のない革新的なものである。しかしながら、腫瘍微小環境に起因して腫瘍細胞が有効な免疫破壊から免れるため、如何に腫瘍微小環境を打開するかが腫瘍治療にとって重要である。PD-1の腫瘍微小環境における作用については、現在、PD-L1がマウスやヒト腫瘍で発現し(殆どのPD-L1陰性腫瘍細胞系ではIFNγによって誘導可能である)、腫瘍の免疫逃避において重要なターゲットであると推定されている(Iwai Y.等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:12293~12297(2002); Strome S.E.等,Cancer Res.,63:6501~6505(2003)。免疫組織化学法を利用して組織生検を行ったところ、人においてPD-1が多くの原発腫瘍(例えば、腫瘍浸潤性リンパ球)で発現し、及び/又はPD-L1が腫瘍細胞で発現することが実証されている。これらの組織としては、肺ガン、肝ガン、卵巣ガン、子宮頸ガン、皮膚ガン、結腸ガン、神経膠腫、膀胱ガン、乳癌、腎臓ガン、食道ガン、胃ガン、口腔扁平上皮癌、尿路上皮癌、膵癌及び頭頸部腫瘍などが挙げられる。そこで、PD-1とPD-L1の相互作用を遮断することは腫瘍特異的なT細胞の免疫活性を向上させ、免疫系による腫瘍細胞の排除に有利であるため、PD-1は、腫瘍免疫治療薬の開発において注目されるターゲットになっている。
【0005】
ところで、従来の抗PD-1モノクローナル抗体は、選択性が弱く、結合性が低いといった欠陥があるため、新型の抗PD-1のモノクローナル抗体を開発して腫瘍や自己免疫疾患などを治療するための薬品とすることが期待される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体に選択性が弱く、結合性が低いといった欠陥がある課題に鑑みてなされたものであり、新たな抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を提供すると同時に、該モノクローナル抗体の製造方法及び用途を提供することをその目的とする。
【0007】
つまり、本発明の第1の側面においては、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を提供する。
【0008】
本発明の第2の側面においては、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体をコードするヌクレオチド分子を提供する。
【0009】
本発明の第3の側面においては、前記ヌクレオチド分子を含む発現ベクターを提供する。
【0010】
本発明の第4の側面においては、前記発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0011】
本発明の第5の側面においては、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第6の側面においては、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を含む組成物を提供する。
【0013】
本発明の第7の側面においては、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の薬物製造における用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく、本発明は、以下の技術案で構成される。
【0015】
つまり、本発明は、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を提供し、前記モノクローナル抗体は、
1)重鎖相補性決定領域としてSEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:13で表されるアミノ酸配列を有するCDRH1、SEQ ID NO:2又はSEQ ID NO:14で表されるアミノ酸配列を有するCDRH2、SEQ ID NO:3又はSEQ ID NO:15で表されるアミノ酸配列を有するCDRH3、及び
2)軽鎖相補性決定領域としてSEQ ID NO:4又はSEQ ID NO:16で表されるアミノ酸配列を有するCDRL1、SEQ ID NO:5又はSEQ ID NO:17で表されるアミノ酸配列を有するCDRL2、SEQ ID NO:6又はSEQ ID NO:18で表されるアミノ酸配列を有するCDRL3を含む。
【0016】
抗体の結合領域は、通常、1つの軽鎖可変領域と1つの重鎖可変領域を含み、各可変領域には何れもCDR1、CDR2及びCDR3の3つのドメインを含む。本発明に係る一本鎖抗体は、通常の一本鎖抗体であり、重鎖可変領域、軽鎖可変領域及び15~20個のアミノ酸残基からなる短いペプチドで構成される。好ましくは、本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:19又はSEQ ID NO:24又はSEQ ID NO:28で表されるアミノ酸配列を有し、その軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:21又はSEQ ID NO:26又はSEQ ID NO:30で表されるアミノ酸配列を有する。より好ましくは、本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖は、SEQ ID NO:8又はSEQ ID NO:20で表されるアミノ酸配列を有し、その軽鎖は、SEQ ID NO:10又はSEQ ID NO:22で表されるアミノ酸配列を有する。
【0017】
本発明に係るモノクローナル抗体は、当分野で慣用の技術手段を用いて製造することができ、これらの技術手段としては、ハイブリドーマ技術、ファージディスプレイ技術、シングルリンパ球遺伝子導入技術などが挙げられるが、ハイブリドーマ技術を用いて野生型やトランスジェニックマウスからモノクローナル抗体を製造することが好ましい。
【0018】
更に、本発明は、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体をコードするヌクレオチド分子を提供する。
【0019】
そのうち、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド分子は、SEQ ID NO:23又はSEQ ID NO:27又はSEQ ID NO:31又はSEQ ID NO:33で表されるヌクレオチド配列を有し、その軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド分子は、SEQ ID NO:25又はSEQ ID NO:29又はSEQ ID NO:32又はSEQ ID NO:34で表されるヌクレオチド配列を有する。
【0020】
好ましくは、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖をコードするヌクレオチド分子は、SEQ ID NO:11で表されるヌクレオチド配列を有し、その軽鎖をコードするヌクレオチド分子は、SEQ ID NO:12で表されるヌクレオチド配列を有し、又は、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の重鎖をコードするヌクレオチド分子は、SEQ ID NO:37で表されるヌクレオチド配列を有し、その軽鎖をコードするヌクレオチド分子は、SEQ ID NO:40で表されるヌクレオチド配列を有する。
【0021】
本発明に係るヌクレオチド分子は、当分野で慣用の製造方法で製造することができ、これらの製造方法としては、例えば、PCR法などの遺伝子工学技術で上記モノクローナル抗体をコードするヌクレオチド分子を取得し、或いは全長遺伝子を人工合成する方法を利用して上記モノクローナル抗体をコードするヌクレオチド分子を取得する。
【0022】
当業者であれば、上記モノクローナル抗体のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に、例えば、置換、欠損、変更、挿入や増加などを適宜加えることでポリヌクレオチドのホモログを得ることのできることを熟知している。本発明に係るポリヌクレオチドのホモログは、該モノクローナル抗体をコードする遺伝子における1個又は2個以上の塩基を、抗体活性を維持する前提で置換、欠損又は増加することで取得することができる。
【0023】
更に、本発明は、上述のヌクレオチド分子を含む発現ベクターを提供する。
【0024】
そのうち、前記発現ベクターは、当分野で慣用の発現ベクターであり、例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、標識遺伝子及び/又は配列などの適切な調節配列、及び他の適切な配列を含んでなる発現ベクターを使用することができる。前記発現ベクターとしては、ウイルスや、ファージ又はファージミドなどのプラスミドであってもよく、より具体的には、例えば、Sambrookら編集の「Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989」を参照することができ、核酸操作に関連する方法と策略は、Ausubelら編集の「Current Protocols in Molecular Biology,第2版」を参照することができる。
【0025】
本発明に係る発現ベクターとしては、pDR1、pcDNA3.1、pDHFR、pCG-53又はpCHO 1.0が好ましく、pCHO 1.0がより好ましい。
【0026】
更に、本発明は、上述の発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。
【0027】
本発明に係る宿主細胞は、当分野で慣用の各種の宿主細胞を使用することができ、上記組換え発現ベクターが安定に自己複製し、且つ持ち込まれたヌクレオチドが効率よく発現可能である限り特に制限がない。そのうち、前記宿主細胞は、原核発現細胞や真核発現細胞であってもよく、前記発現ベクターとしては、COS、CHO(Chinese Hamster Ovary)、NS0、sf9、sf21、DH5α、BL21(DE3)又はTG1が好ましく、E.coli TG1、BL21(DE3)細胞(一本鎖抗体又はFab抗体発現用)又はCHO-K1細胞(全長IgG抗体発現用)がより好ましい。本発明において、上記発現ベクターを宿主細胞に導入することで組換え発現形質転換体を得ることができる。そのうち、上述の形質転換では当分野で慣用の形質転換法を利用することができるが、化学試薬による形質転換法、ヒートショック法又はエレクトロポレーション法がより好ましい。
【0028】
更に、本発明は、上記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の製造方法を提供し、該製造方法は、発現条件において、本発明に係る宿主細胞を培養することで抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を発現させる工程aと、前記工程aで得られる抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を分離精製する工程bとを含む。
【0029】
本発明において、宿主細胞の培養方法及び前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の分離精製方法は、何れも当分野で慣用の方法であり、具体的な操作は、細胞培養やモノクローナル抗体の分離精製に関連する技術マニュアルを参考して遂行することができる。本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の製造方法は、発現条件において上記宿主細胞を培養することで抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を発現させる工程と、前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を分離精製する工程とを含む。上記方法を利用することで組換えタンパク質をほぼ均一な物質に精製することができ、例えば、SDS-PAGE電気泳動でシングルバンドとすることができる。
【0030】
本発明において、アフィニティークロマトグラフィーを利用して抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を分離精製することができ、この場合、アフィニティーカラムの特性に基づき、例えば、高塩濃度緩衝液、pH変更などといった通常の方法を利用してアフィニティーカラムに吸着するモノクローナル抗体を溶出することができる。本発明者は、得られた抗ヒトPD-1モノクローナル抗体に対して評価を行ったところ、該モノクローナル抗体が比較的高い親合力でヒトPD-1に効率よく結合することを確認した。
【0031】
更に、本発明は、上記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる組成物を提供する。
【0032】
本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体と、薬学的に許容可能な担体とを組み合わせて医薬組成物とすることで安定な治療効果を奏することができ、これらの製剤によって本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体のアミノ酸コア配列の構造完全性が確保されると同時に、タンパク質の各官能基が分解する(例えば、凝集、脱アミノ化や酸化)ことから免れるようにすることができる。液体製剤は、通常、2℃~8℃の条件で少なくとも1年以上安定して保存することができ、凍結乾燥製剤は、30℃で少なくとも6ヶ月以上安定して保存することができる。前記抗ヒトPD-1モノクローナル抗体製剤としては、例えば、製薬分野で慣用の懸濁剤、注射剤、凍結乾燥剤などの形態であってもよいが、注射剤、凍結乾燥剤がより好ましい。
【0033】
本発明において、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の注射剤又は凍結乾燥剤に添加する薬学的に許容可能な担体としては、界面活性剤、溶液安定剤、等張化剤及び緩衝液のうち1種又は2種以上を使用することができ、これらについて特に制限がない。そのうち、界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween-20又はTween-80)、ポロキサマー(例えば、poloxamer-188)、Tritonなどの非イオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウムや、テトラデシル、リノレイル又はオクタデシルサルコシン、プルロニックス(Pluronics)、MONAQUATTMなどが挙げられるが、これらの界面活性剤については特に制限がなく、その添加量は、抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の粒子化傾向を最小限に抑える程度である。溶液安定剤としては、例えば、還元糖及び非還元糖などの糖類、グルタミン酸ナトリウムやヒスチジンなどのアミノ酸類、三価アルコール、高級糖アルコール、プロパンジオール、ポリエチレングリコールなどのアルコール類のうち1種又は2種以上を併用することができるが、これらの溶液安定剤については特に制限がない。溶液安定剤の添加量は、最後に得られた製剤が一定期間内において安定な状態を保持できると当業者が認める程度である。等張化剤としては、塩化ナトリウム、マンニトールのうち1種又は2種以上を併用することができ、緩衝液としては、Tris、ヒスチジン緩衝液、リン酸塩緩衝液のうち1種又は2種以上を併用することができるが、これら等張化剤や緩衝液については特に制限がない。
【0034】
更に、本発明は、本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体又はその組成物の、薬物製造における用途を提供する。
【0035】
本発明に係る薬物は、腫瘍、自己免疫疾患、感染症、移植拒否反応を治療するための薬物であり、腫瘍、自己免疫疾患の治療薬であることが好ましく、腫瘍治療薬であることがより好ましい。本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を単独使用してもよいが、抗PD-L1モノクローナル抗体や他の抗腫瘍薬と併用してもよい。
【0036】
そのうち、前記抗腫瘍薬の適用対象として、例えば、肺ガン、肝ガン、卵巣ガン、子宮頸ガン、皮膚ガン、結腸ガン、神経膠腫、膀胱ガン、乳癌、腎臓ガン、食道ガン、胃ガン、口腔扁平上皮癌、尿路上皮癌、膵癌及び/又は頭頸部腫瘍などが挙げられ、大腸癌を適用対象とすることが特に好ましい。
【0037】
本発明で言う抗腫瘍薬とは、腫瘍に対して抑制及び/又は治療効果を示す薬物を意味し、腫瘍関連症状の進展遅延及び/又は重篤度の低下に繋がる薬物や、腫瘍関連症状の軽減と他の副症状防止に繋がる薬物、並びに腫瘍転移を低減又は防止する薬物などを含む。
【0038】
人を含む動物を適用対象として本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体及びその組成物を投与する際、投与量は、患者の年齢や体重、疾患特性や重篤さ、及び投与ルートに基づいて適宜決め、動物実験結果と実際状況に合わせて総投与量を一定範囲内に調整することができる。例えば、静脈注射の場合、投与量は1~1800mg/日である。
【0039】
当分野の周知常識から逸脱しない前提で上述の各条件を任意に組み合わせることにより、本発明の各好適な実施形態を得ることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、優れた生物活性を示し、ヒトPD-1タンパク質受容体の細胞外領域に効果的に結合することができ、タンパク質レベルと細胞レベルでPD-1タンパク質をブローキングしてPD-1タンパク質とリガンドPD-L1の結合を阻害することができる。また、該モノクローナル抗体を単独使用又は他の抗腫瘍薬と併用することで腫瘍免疫治療、PD-L1陽性腫瘍患者の診断とスクリーンに用いることができ、腫瘍、感染症、自己免疫疾患及び免疫拒否反応などを治療対象とする薬品の製造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】MLRのIL-2分泌に対するPD-1抗体の促進効果を示す図である。
図2】MLRのIFN-γ分泌に対するPD-1抗体の促進効果を示す図である。
図3】MLRの細胞増殖に対するPD-1抗体の促進効果を示す図である。
図4】PD-1ファミリーメンバーに対するmAb1-25-Humanizedの選択結果を示す図である。
図5】マウスMC38腫瘍移植モデルに対するmAb1-25-Humanizedの抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されないことに留意されたい。以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、何れも通常の方法や条件で行われ、又は製品マニュアルに従って行われる。実施例に記載の室温とは10℃~30℃の範囲であり、当分野で慣用の室温である。また、本発明で使用する試薬と原料は、何れも市販のものである。
【0043】
以下、実施例で使用する実験材料の由来と実験試薬の調製方法を具体的に説明する。
【0044】
実験材料
ヒト全血は、上海市長海病院より入手し、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll密度遠心法を利用してヒト全血から分離した。人CD14+単核細胞及びCD4+T細胞は、MiltenyiBiotec社製の磁気細胞ソーティングシステムで分離し、分離された細胞は、AIM-V培地を用いて37℃、5%のCO2インキュベータで通常のとおりにして培養を行った。
【0045】
Histopaque-1077は、sigma社製であり、CD4 MicroBeads、OctoMACS Starting Kit細胞ソーティングセット及びMS MACS分離カラムは、MiltenyiBiotec社製であった。注射用組換えヒト顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)は、廈門市特宝バイオテック社製であり、100μg/mlの母液に調製した後に分注して-80℃の冷蔵庫に保存した。組換えヒトIL-4は、R&D systems社製であり、100μg/mlの母液に調製した後に分注して-80℃の冷蔵庫に保存した。AIM-Vは、Gibco社製であった。streptavidin-HRP、抗人IL-2抗体、ビオチン化抗ヒトIL-2抗体、抗ヒトIFN-gamma抗体、ビオチン化抗ヒトIFN-gamma抗体及びヒト由来IFN-gamma標準品は、何れもBD Pharmingen社製であった。ヒト由来IL-2標準品は、北京双鷺製薬会社製であり、注射用クラスの製品を高濃度母液に調製した後に分注して-80℃の冷蔵庫に保存した。Cell Titer-Glo(登録商標)発光法細胞活性検出キットは、Promega社製であった。
【0046】
試薬
ELISAコーティング液は、炭酸ナトリウム1.59g、炭酸水素ナトリウム2.93gをpH7.0の純水で1000mlとなるように調製した。PBSTは、リン酸二水素カリウム0.2g、リン酸水素二ナトリウム・12水和物2.9g、塩化ナトリウム8.0g、塩化カリウム0.2g、Tween-20 1mlをpH7.0の純水で1000mlとなるように調製した。ELISA発色剤Aは、酢酸ナトリウム13.6g、クエン酸1.6g及び30%の過酸化水素水0.3mlをpH7.0の純水で500mlとなるように調製した。ELISA発色剤Bは、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.2g、クエン酸0.95g、グリセリン50ml、及びTMB0.15gを3mlのDMSO溶かしたものをpH7.0の純水で500mlとなるように調製した。ELISA停止剤は、98%の濃硫酸111mlをpH7.0の純水で1000mlとなるように調製した。
【0047】
実施例1:ヒトPD-1及びそのリガンドPD-L1の製造
ヒトPD-1のcDNAは、Origene社より購入した(カタログ番号:SC117011)。プライマーを設計した後、PD-1遺伝子のcDNAをテンプレートとして細胞外コーディング領域を増幅し、ヒトIgG1遺伝子のcDNAをテンプレートとしてFcコーディング領域を増幅した。上記増幅で得られたPCR断片を回収し、Overlap PCRを利用して上記断片を1つの組換え断片に繋いた。プライマー設計時に、5’末端にシグナルペプチド(MGVKVLFALICIAVAEA)のコーディング領域を導入し、更に、両端に予定の制限酵素認識サイトを導入した。そして、Avr IIとPac Iを用いてpCHO1.0ベクター及び上記組換えPCR断片を消化し、消化産物を精製した後にライゲーションしてTOP10コンピテント細胞に導入し、LB(Amp)平板培地で塗布して一晩培養した。細菌コロニーをピックアップし、拡大培養してプラスミドを抽出し、Avr IIとPac Iでプラスミドを消化して遺伝子断片の挿入があるか否かを確認した。そして、陽性プラスミドについて配列測定を行い、配列が完全に正しいクローンを選んでCHO細胞に導入した。PD-1リガンドであるPD-L1のcDNAは、北京Sino Biological Inc社より購入し、カタログ番号がHG10084-Mであった。同様に、上記方法を利用してPD-L1細胞外領域とヒト抗体Fc領域との融合遺伝子発現ベクターを構築した。
【0048】
リポソーム法を利用して上記pCHO 1.0(ヒトPD-1-hFcとPD-L1-hFc)ベクターをそれぞれCHO-S細胞系(Life technologies社製)に導入し、6mMのグルタミン(Gibco社製)を含むCD FortiCHO培地(Life technologies社製)で2日間培養した後、ピューロマイシン(Gene Operation社製)とアミノプテリン(Sigma社製)で陽性クローン細胞をスクリーニングした。陽性クローン細胞を取って振とうフラスコに接種し、各フラスコが総量200ml、密度3×10個/mlとなるようにし、6mMのグルタミン及び体積比で1:100の抗凝集剤(Invitrogen社製)を含むCD FortiCHO培地で12日間培養した後、上清液を集めてProtein AアフィニティーカラムでPD-1-hFc抗原とPD-L1-hFcを精製した。タンパク質の定量は、ビシンコニン酸(Bicinchoninic acid,BCA)法を用いて行い、精製済みのタンパク質を次のマウス免疫と解析評価に用いた。
【0049】
実施例2:ヒトPD-1-hFc抗原によるマウス免疫、及びハイブリドーマの作製とスクリーニング
実施例1で得られたヒトPD-1-hFc抗原を、生理食塩水で濃度が50μg/75μlとなるように希釈し、同量のフロイント完全アジュバント(Sigma社製)と混ぜ合わせて超音波で完全に乳化した後、4~5週齢のBalb/cマウス(上海霊暢バイオテック会社より購入、動物製造許可証:SCXK(滬)2013-0018)に皮下経由で多箇所に注射した。3週後、PD-1-hFc抗原を生理食塩水で濃度が50μg/75μlとなるように希釈し、同量のフロイント不完全アジュバント(Sigma社製)と混ぜ合わせて超音波で完全に乳化した後、マウスに皮下経由で多箇所に注射することで免疫を行い、2週後には再び同じ免疫を繰り返した。3回の免疫が終わってから7日目にマウスから血液を1滴採取し、血清を分離してELISAで血清抗体価を測定した。
【0050】
抗体価は、ELISA法を利用して以下のように行われた。ELISAプレートをヒトPD-1-hFc抗原でコーティング濃度が2.5μg/ml、各ウェル当たり100μlとなるようにして4℃で一晩コーティングした。PBST(0.5% Tween-20を含むPBS)でプレート2回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。各ウェル当たりに1%のBSAを含むコーティング緩衝液を200μl加えてブローキングし、常温で4時間ブローキングした後に叩いて液体を完全に除き、次に備えて-20℃の冷蔵庫に保存した。測定時には、ELISAプレートの各ウェルに濃度が異なるマウス血清を100μlずつ加え、各濃度に平行して2つのウェルを設け、室温で1.5時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。HRP標識ヤギ抗ラットIg抗体(Sigma社製)をPBSTで1:10000倍希釈し、希釈液を100μl加えて室温で1時間インキュベートした後、PBSTで3回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。各ウェルに発色液を(使用に先立ってELISA発色剤Aと発色剤Bを1:1の体積比で混ぜ合わせる)100μlを加えて発色させ、そして各ウェルに2MのHSO停止剤を100μl加えて反応を停止させた。プレートリーダー(Molecular Device)を用いて波長450nmで各ウェルのOD値を測定し、血清抗体価が100000を超えるマウスに対して、採血後の1週間内にラット1匹当たりに抗原タンパク質10μg/生理食塩水100μl、尾静脈経由で再び強化免疫を行った。
【0051】
血清抗体価が100000を超えるマウスは、強化免疫を行ってから3日目に脾細胞を取って融合させた。生長状態が良好であるハイブリドーマsp2/0細胞(中国科学院典型培養物保存委員会細胞バンクより入手)を37℃、5%のCOインキュベータで培養し、融合に先立って1日前に培養液を1回新たに入れ替えた。融合及びスクリーニングは、次のように行われた。マウス脾臓を採取し、研磨して脾臓からBリンパ球を分離し、洗浄した後に細胞数を計測した。脾細胞とsp2/0細胞が10:1の比例となるように2種類の細胞を混合し、1500rpm、7分間遠心し、上清液を捨てて1分間以内にPEG-1450(Sigma社製)を1ml加えて90秒間軽く振り回し、2.5分間以内に無血清DMEM培地(Gibco社製)を5ml加え、そして一気に無血清培地を5ml加えて反応を停止させた。5分間静置し、1280rpm、8分間遠心し、96ウェルプレート1枚当たりsp2/0細胞200万個、各ウェル当たり200μlを均一に接種した。まず、ヒポキサンチン(hypoxanthine、H)、アミノプテリン(aminopterin、A)及びチミジン(thymidine、T)を含むHAT培地でスクリーニングを行い、3~4日ごとに培地を半分新たに入れ替えた(旧培地を半分吸取り、同量の新しいHAT培地を入れる)。10日後、96ウェルプレートの底部を10%埋めるまでハイブリドーマ細胞が増殖すると、上清液を取ってPD-1-hFc抗原でコーティングしたELISAプレートを用いて測定した。ELISA測定は、上述の通りにして行い、陽性ハイブリドーマをピックアップし、24ウェルプレートに移して拡大培養し、限界希釈法を利用してサブクローニングを行った。標的抗体を安定に発現するハイブリドーマ細胞株を取得し、抗体ライブラリーを構築した。
【0052】
実施例3:PD-1とPD-L1の相互作用に対するラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の阻害効果
実施例2で得られた安定型モノクローナル細胞株をHybridoma-SFM無血清培地(Life Technologies社製)で7日間培養し、Protein Gアフィニティーカラム(GE社製)を用いて培養上清液からラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を精製した。精製済みの抗体に対して濃度を測定し、ELISA法でPD-1とPD-L1の相互作用に対するラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の阻害効果を検討した。
【0053】
ヒトPD-1-hFc抗原を用い、コーティング濃度2.5μg/ml、各ウェル当たり100μl、4℃で一晩コーティングすることでELISAプレートをコーティングした。プレートをPBST(Tween-20を0.5%含むPBS)で2回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。各ウェル当たりにBSAを1%含むコーティング緩衝液を200μl加えてブローキングし、常温で4時間ブローキングした後に軽く叩いて液体を完全に除き、次に備えて-20℃の冷蔵庫に保存した。上記PD-1-hFcをコーティングしたELISAプレートに、適宜濃度のビオチン化PD-L1-hFc(実施例1で調製したPD-L1-hFcをEZ-LinkTM NHS-Biotinでビオチン化し、ビオチン化操作は、メーカー提供のマニュアルに従う)と、ラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体を十分な量にして同時に加え、室温で1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄し、適宜希釈したStreptavidin-HRPを各ウェル100μlずつ加えた後、PBSTで3回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。各ウェルに発色液を100μl加え、更に2MのHSO停止剤を100μl加えて反応を停止させた。プレートリーダー(Molecular Device社製)を用い、波長450nmで各ウェルOD値を測定した。
【0054】
実施例4:混合リンパ球反応(Mixed Lymphocyte Reaction、MLR)に対するラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の促進活性
Histopaqueを用いてヒト血液から末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cell、PBMC)を分離し、そして付着法を利用してPBMCにおける単核細胞サブセットを分離し、IL-4とGM-CSFを併用することで単核細胞から誘導樹状細胞へ分化誘導した。7日後、上記誘導樹状細胞を消化して集めた。別のトナーの血液から上記と同様にしてPBMCを分離し、そこからMACSマグネットとCD4 MicroBeads(Miltenyiバイオテック社製)を用いてCD4陽性T細胞を分離した。誘導樹状細胞(104個/ウェル)と分離されたCD4陽性T細胞(105個/ウェル)とを比例に従って均一に混ぜ合わせた後、各ウェル当たり150μlずつ96ウェルプレートに接種した。数時間後、上記96ウェルプレートにAIM-V培地で希釈したラット由来抗ヒトPD-1抗体を50μl加え、同時に、市販の抗体であるOpdivoとKeytrudaを陽性対照物とし、PD-1に結合しない無関連の抗体を陰性対照物とした。96ウェルプレートを37℃、4日間インキュベートし、標準操作法に従ってIL-2とIFN-gammaの分泌、及びリンパ球の増殖状況を確認した。IL-2とIFN-gammaの分泌は、標準的な二重抗体サンドイッチ法(測定用抗体は、BD Biosciences社から購入)を利用して測定し、リンパ球の増殖は、Cell Titer-Glo(登録商標)法(測定関連試薬は、Promega社から購入)を利用して測定した。陽性対照抗体であるOpdivoは、Bristol-Myers Squibb社製であり(LOT番号が4M59291であり、EXPがSEP2016である)、陽性対照抗体であるKeytrudaは、Merk社製であった(LOT番号とEXPが、K013835/070C12015である)。本実施例で使用する培地は、AIM-V(Life Technologies社製)であった。データ読み取りは、多機能プレートリーダー(Molecular Device社製)を用い、GraphPad Prism6を用いてデータを解析してEC50を算出した。上記精製済のラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体に対してMLR評価を行い、MLR強度の増強効果が特に著しい抗体を選んで次の実験に用いた。
【0055】
実施例5:ラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体のヌクレオチド配列とアミノ酸配列の測定
実施例3及び実施例4の測定結果に基づき、番号が1-15及び1-25であるクローン(mAb1-15及びmAb1-25)を選んでリード抗体とした。Trizol(Life Technologies社製)でクローン1-15及びクローン1-25に対応するハイブリドーマのモノクローナル細胞株からトータルRNAを抽出し、逆転写キット(Takara社製)を用いてmRNAをcDNAに逆転写し、文献に記載されているプライマーペア(Roland Kontermann及びStefan Duebel編集の「Antibody Engineering」、第1版、プライマーペアの配列は、第323頁に記載されている)を用い、PCR法によりラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の遺伝子を増幅し、PCR産物をpMD18-Tベクターに導入して可変領域の遺伝子配列を測定した。
【0056】
番号が1-15であるラット由来抗体(mAb1-15)は、重鎖可変領域の遺伝子配列全長が354bpであり、118個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:23で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:24で表され、軽鎖可変領域の遺伝子配列全長が321bpであり、107個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:25で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:26で表される。
SEQ ID NO:23
GAAGTGAACCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTAGTGAAGCCTGGAGGGTCCCTGAAACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACTTTCAGTAGCTATGACATGTCTTGGGTTCGCCAGACTCCGGAGAAGAGGCTGGAGTGGGTCGCAACCATTAGTGGTGGTGGTCGTTACACCTATTATCCAGACAGTGTGAAGGGGCGATTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAAGAACAACCTGTACCTGCAAATGAGCAGTCTGAGGTCTGAGGACACGGCCTTGTATTACTGTGCAAATAGGTACGACGTGGACTGGTTTGCTTACTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCA
SEQ ID NO:24
EVNLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNNLYLQMSSLRSEDTALYYCANRYDVDWFAYWGQGTLVTVSA
SEQ ID NO:25
GATATTGTGCTAACTCAGTCTCCAGCCACCCTGTCTGTGACTCCAGGAGATAGCGTCAGTCTTTCCTGCAGGGCCAGCCAAAGTATTAGCAACAACCTACACTGGTATCAACAAAAATCACATGAGTCTCCAAGGCTTCTCATCAAGTATGCTTCCCAGTCCATCTCTGGGATCCCCTCCAGGTTCAGTGGTAGTGGATCAGGGACAGATTTCACTCTCAGTATCAACAGTGTGGAGACTGAAGATTTTGGAATGTATTTCTGTCAACAGAGTAACAGCTGGCCGCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAT
SEQ ID NO:26
DIVLTQSPATLSVTPGDSVSLSCRASQSISNNLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVETEDFGMYFCQQSNSWPLTFGAGTKLELN
【0057】
番号が1-25であるラット由来抗体(mAb1-25)は、重鎖可変領域の遺伝子配列全長が351bpであり、117個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:27で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:28で表され、軽鎖可変領域の遺伝子配列全長が321bpであり、107個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:29で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:30で表される。IgBLASTにおいてアミノ酸配列を対比した結果、両者が何れもマウスIgG可変領域遺伝子の特徴を示すことを確認できた。IgBLASTにおいてアミノ酸配列を対比した結果、番号が1-15及び1-25である抗体は、軽鎖及び重鎖が何れもマウスIgG可変領域遺伝子の特徴を示すことを確認できた。
SEQ ID NO:27
GAAGTGAAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGACTTAGTGAAGCCTGGAGGGTCCCTGAAACTCTCCTGTGTAGCCTCTGGATTCGCTTTCAGTAGCTATGACATGTCTTGGGTTCGCCAAACTCCGGAGAAGCGGCTGGAGTGGGTCGCTACCATTAGTGGTGGTGGTCGTTACACCTACTATCCAGACACTGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAGGAACACCCACTACCTGCAAATGAGCAGTCTGAGGTCTGAGGACACGGCCCTCTATTTTTGTGCAAGTCCTTACGGCGGTTACTTCGATGTCTGGGGCGCAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCA
SEQ ID NO:28
EVKLVESGGDLVKPGGSLKLSCVASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVATISGGGRYTYYPDTVKGRFTISRDNARNTHYLQMSSLRSEDTALYFCASPYGGYFDVWGAGTTVTVSS
SEQ ID NO:29
GATATTGTGCTAACTCAGTCTCCAGCCACCCTGTCTGTGACTCCGGGAGCTAGAGTCAGTCTTTCCTGCAGGGCCAGTCAAAGTATTAGCAACTTCCTACACTGGTATCAACAAAAATCACATGAGTCTCCAAGGCTTCTCATCAAATATGCTTCTCAGTCCATTTCTGGGATCCCCTCCAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGGACAGATTTCACTCTCAGTATCAGCAGTGTGGAGACTGAAGATTTTGGAATGTATTTCTGTCAACAGAGTAACAGCTGGCCTCATACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAA
SEQ ID NO:30
DIVLTQSPATLSVTPGARVSLSCRASQSISNFLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLSISSVETEDFGMYFCQQSNSWPHTFGAGTKLELK
【0058】
実施例6:ラット由来抗ヒトPD-1モノクローナル抗体のヒト化
実施例5における重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を解析し、KABAT法則に従って抗体1-15及び抗体1-25(mAb1-15及びmAb1-25)の3つの抗原相補性決定領域(complementarity-determining region,CDR)及び4つのフレーム領域(frame region,FR)を確定した。
【0059】
そのうち、クローン1-15の重鎖相補性決定領域のアミノ酸配列は、それぞれH-CDR1:SYDMS(SEQ ID NO:13)、H-CDR2:TISGGGRYTYYPDSVKG(SEQ ID NO:14)及びH-CDR3:RYDVDWFAY(SEQ ID NO:15)であり、軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列は、それぞれL-CDR1:RASQSISNNLH(SEQ ID NO:16)、L-CDR2:YASQSIS(SEQ ID NO:17)及びL-CDR3:QQSNSWPLT(SEQ ID NO:18)であった。
SEQ ID NO:13
SYDMS
SEQ ID NO:14
TISGGGRYTYYPDSVKG
SEQ ID NO:15
RYDVDWFAY
SEQ ID NO:16
RASQSISNNLH
SEQ ID NO:17
YASQSIS
SEQ ID NO:18
QQSNSWPLT
【0060】
また、クローン1-25の重鎖相補性決定領域のアミノ酸配列は、それぞれH-CDR1:SYDMS(SEQ ID NO:1)、H-CDR2:TISGGGRYTYYPDTVKG(SEQ ID NO:2)及びH-CDR3:PYGGYFDV(SEQ ID NO:3)であり、軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列は、それぞれL-CDR1:RASQSISNFLH(SEQ ID NO:4)、L-CDR2:YASQSIS(SEQ ID NO:5)及びL-CDR3:QQSNSWPHT(SEQ ID NO:6)であった。
SEQ ID NO:1
SYDMS
SEQ ID NO:2
TISGGGRYTYYPDTVKG
SEQ ID NO:3
PYGGYFDV
SEQ ID NO:4
RASQSISNFLH
SEQ ID NO:5
YASQSIS
SEQ ID NO:6
QQSNSWPHT
【0061】
番号が1-15である抗体については、NCBI IgBLASTを利用してヒトIgG生殖系配列と相同性対比を行い、IGHV3-7*03を選んで重鎖CDR移植テンプレートとし、ラット由来抗体1-15の重鎖CDRを該テンプレートに移植して重鎖のCDR移植抗体を形成した。同様に、ヒトIgG生殖系配列と相同性対比を行い、IGKV3-11*01を選んで軽鎖CDR移植テンプレートとし、ラット由来抗体1-15の軽鎖CDRを該テンプレートに移植して軽鎖のCDR移植抗体を形成した。更に、フレーム領域における一部のアミノ酸サイトに復帰変異を導入し、ここで言う復帰変異とは、ヒト由来フレーム領域の一部のアミノ酸残基をラット由来フレーム領域の同一位置のアミノ酸残基に置き換えることを意味する。復帰変異を導入するとき、アミノ酸配列に対してKABAT編集を行い、サイトの位置をKABATナンバリングに変更した。重鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第44位GをR、第94位RをNに変更したほうが好ましく、軽鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第49位YをK、第87位YをFに変更したほうが好ましい。上記可変領域遺伝子配列は、蘇州GENEWIZ社がCricetulus griseusのコドン使用好みを参考にしてコドンを最適化して合成したものであった。
【0062】
得られたヒト化抗体1-15(mAb1-15-humanized)は、重鎖可変領域遺伝子の配列全長が354bpであり、118個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:31で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:19で表され、重鎖全長配列がSEQ ID NO:20で表される。また、ヒト化抗体1-15の軽鎖可変領域遺伝子の配列全長が321bp、107個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:32で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:21で表され、軽鎖全長配列がSEQ ID NO:22で表される。
SEQ ID NO:31
GAGGTGCAGCTGGTGGAGAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCCGGCGGCAGCCTGAGGCTGAGCTGCGCCGCCAGCGGCTTCACCTTCAGCAGCTACGACATGAGCTGGGTGAGGCAGGCCCCCGGCAAGAGGCTGGAGTGGGTGGCCACCATCAGCGGCGGCGGCAGGTACACCTACTACCCCGACAGCGTGAAGGGCAGGTTCACCATCAGCAGGGACAACGCCAAGAACAGCCTGTACCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCCAACAGGTACGACGTGGACTGGTTCGCCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGC
SEQ ID NO:19
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCANRYDVDWFAYWGQGTLVTVSS
SEQ ID NO:32
GAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCCGCCACCCTGAGCCTGAGCCCCGGCGAGAGGGCCACCCTGAGCTGCAGGGCCAGCCAGAGCATCAGCAACAACCTGCACTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCCCCCAGGCTGCTGATCAAGTACGCCAGCCAGAGCATCAGCGGCATCCCCGCCAGGTTCAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGGAGCCCGAGGACTTCGCCGTGTACTTCTGCCAGCAGAGCAACAGCTGGCCCCTGACCTTCGGCCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAG
SEQ ID NO:21
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISNNLHWYQQKPGQAPRLLIKYASQSISGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYFCQQSNSWPLTFGQGTKVEIK
【0063】
番号が1-25である抗体については、NCBI IgBLASTにおいてヒトIgG生殖系配列と相同性対比を行い、IGHV3-7*03を選んで重鎖CDR移植テンプレートとし、ラット由来抗体1-25の重鎖CDRを該テンプレートに移植し、重鎖CDR移植抗体を形成した。また、上記と同様にヒトIgG生殖系配列と相同性対比を行い、IGKV3-11*01を選んで軽鎖CDR移植テンプレートとし、ラット由来抗体1-25の軽鎖CDRを該テンプレートに移植して軽鎖のCDR移植抗体を形成した。更に、フレーム領域における一部のアミノ酸サイトに復帰変異を導入し、ここで言う復帰変異とは、ヒト由来フレーム領域の一部のアミノ酸残基をラット由来フレーム領域の同一位置のアミノ酸残基に置き換えることを意味する。復帰変異を導入するとき、アミノ酸配列に対してKABAT編集を行い、サイトの位置をKABATナンバリングに変更した。重鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第3位Qをラット由来のK、第44位GをR、第78位LをH、第91位YをF、第94位RをSにそれぞれ変更したほうが好ましく、軽鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第49位YをK、第87位YをFにそれぞれ変更したほうが好ましい。上記可変領域遺伝子配列は、蘇州GENEWIZ社がCricetulus griseusのコドン使用好みを参考にしてコドンを最適化して合成したものであった。
【0064】
得られたヒト化抗体1-25(mAb1-25-Humanized)は、重鎖可変領域遺伝子配列全長が351bpであり、117個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:33で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:7で表される。また、ヒト化抗体1-25の軽鎖可変領域遺伝子の配列全長が321bpであり、107個のアミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:34で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:9で表される。
SEQ ID NO:33
GAAGTCAAACTCGTGGAGTCCGGCGGAGGCCTCGTTCAACCAGGTGGATCTCTTCGTTTGTCCTGCGCAGCATCAGGATTCGCTTTCTCCAGCTACGACATGAGCTGGGTCCGACAGGCTCCTGGAAAGAGGCTGGAATGGGTTGCTACTATCAGCGGCGGTGGTAGATATACTTATTACCCCGATACCGTAAAGGGGAGGTTCACCATTAGTCGCGATAACGCCAAAAATTCACACTACCTGCAGATGAACTCTCTGCGGGCCGAGGACACCGCCGTGTACTTTTGTGCCAGTCCCTATGGCGGGTATTTTGACGTGTGGGGCCAGGGGACACTGGTGACTGTGAGTTCT
SEQ ID NO:7
EVKLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKRLEWVATISGGGRYTYYPDTVKGRFTISRDNAKNSHYLQMNSLRAEDTAVYFCASPYGGYFDVWGQGTLVTVSS
SEQ ID NO:34
GAGATCGTCCTTACCCAATCACCAGCAACCTTGTCACTGTCACCAGGTGAAAGAGCAACCCTCAGTTGTAGGGCTAGTCAGAGTATCTCCAACTTCCTGCACTGGTACCAGCAGAAGCCTGGACAGGCCCCTCGGTTGCTCATTAAGTACGCCTCTCAATCTATCAGCGGAATCCCCGCTCGCTTTTCTGGCTCTGGCTCCGGGACTGATTTCACTCTGACAATTTCCAGCCTGGAACCCGAGGACTTTGCCGTTTATTTTTGCCAGCAGAGCAATAGCTGGCCCCATACATTCGGGCAGGGCACAAAAGTGGAGATAAAA
SEQ ID NO:9
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISNFLHWYQQKPGQAPRLLIKYASQSISGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYFCQQSNSWPHTFGQGTKVEIK
【0065】
上記人工合成によって得られた抗体1-15(mAb1-15-Humanized)のヒト化重鎖可変領域配列をヒト免疫グロブリンIgG4の定常領域(ヒト免疫グロブリンIgG4の定常領域は、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:35で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:36で表される)と繋ぐことで完全な1-15のヒト化重鎖(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:37で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:20で表される)を形成し、軽鎖可変領域をヒト免疫グロブリンKappa鎖の定常領域(ヒト免疫グロブリンKappa鎖の定常領域は、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:38で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:39で表される)と繋ぐことで完全な抗体1-15のヒト化軽鎖(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:40で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:22で表される)を形成した。
SEQ ID NO:35
GCAAGTACCAAGGGACCTAGTGTTTTCCCTCTTGCACCTTGCTCCAGGTCAACATCAGAGTCCACAGCTGCTCTTGGATGTCTCGTTAAGGACTACTTCCCAGAGCCAGTTACCGTATCCTGGAACTCCGGAGCTTTGACAAGCGGCGTTCATACATTCCCAGCTGTGTTGCAGAGTTCTGGGTTGTACAGTTTGAGCTCAGTGGTGACCGTGCCTTCATCTTCTTTGGGCACTAAGACCTACACCTGCAACGTGGATCACAAGCCAAGCAACACCAAGGTGGATAAGAGGGTGGAGTCCAAGTACGGCCCACCATGTCCTCCATGTCCAGCCCCTGAATTTTTGGGCGGGCCTTCTGTCTTTCTGTTTCCTCCTAAACCTAAAGATACCCTGATGATCAGCCGCACACCCGAAGTCACTTGTGTGGTCGTGGATGTGTCTCAGGAAGATCCCGAAGTGCAGTTTAACTGGTATGTCGATGGCGTGGAAGTGCATAATGCCAAAACTAAGCCCCGCGAAGAACAGTTCAACAGCACTTATCGGGTCGTGTCTGTGCTCACAGTCCTCCATCAGGATTGGCTGAATGGGAAAGAATATAAGTGCAAGGTGAGCAATAAGGGCCTCCCCAGCAGCATCGAGAAGACTATTAGCAAAGCCAAAGGGCAGCCACGGGAACCCCAGGTGTACACTCTGCCCCCCTCTCAGGAGGAGATGACTAAAAATCAGGTCTCTCTGACTTGTCTGGTGAAAGGGTTTTATCCCAGCGACATTGCCGTGGAGTGGGAGTCTAATGGCCAGCCCGAGAATAATTATAAGACAACTCCCCCCGTCCTGGACTCTGACGGCAGCTTTTTCCTGTATTCTCGGCTGACAGTGGACAAAAGTCGCTGGCAGGAGGGCAATGTCTTTAGTTGCAGTGTCATGCATGAGGCCCTGCACAATCACTATACACAGAAAAGCCTGTCTCTGAGTCTGGGCAAA
SEQ ID NO:36
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
SEQ ID NO:37
GAGGTGCAGCTGGTGGAGAGCGGCGGCGGCCTGGTGCAGCCCGGCGGCAGCCTGAGGCTGAGCTGCGCCGCCAGCGGCTTCACCTTCAGCAGCTACGACATGAGCTGGGTGAGGCAGGCCCCCGGCAAGAGGCTGGAGTGGGTGGCCACCATCAGCGGCGGCGGCAGGTACACCTACTACCCCGACAGCGTGAAGGGCAGGTTCACCATCAGCAGGGACAACGCCAAGAACAGCCTGTACCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCCAACAGGTACGACGTGGACTGGTTCGCCTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGAGCAGCGCAAGTACCAAGGGACCTAGTGTTTTCCCTCTTGCACCTTGCTCCAGGTCAACATCAGAGTCCACAGCTGCTCTTGGATGTCTCGTTAAGGACTACTTCCCAGAGCCAGTTACCGTATCCTGGAACTCCGGAGCTTTGACAAGCGGCGTTCATACATTCCCAGCTGTGTTGCAGAGTTCTGGGTTGTACAGTTTGAGCTCAGTGGTGACCGTGCCTTCATCTTCTTTGGGCACTAAGACCTACACCTGCAACGTGGATCACAAGCCAAGCAACACCAAGGTGGATAAGAGGGTGGAGTCCAAGTACGGCCCACCATGTCCTCCATGTCCAGCCCCTGAATTTTTGGGCGGGCCTTCTGTCTTTCTGTTTCCTCCTAAACCTAAAGATACCCTGATGATCAGCCGCACACCCGAAGTCACTTGTGTGGTCGTGGATGTGTCTCAGGAAGATCCCGAAGTGCAGTTTAACTGGTATGTCGATGGCGTGGAAGTGCATAATGCCAAAACTAAGCCCCGCGAAGAACAGTTCAACAGCACTTATCGGGTCGTGTCTGTGCTCACAGTCCTCCATCAGGATTGGCTGAATGGGAAAGAATATAAGTGCAAGGTGAGCAATAAGGGCCTCCCCAGCAGCATCGAGAAGACTATTAGCAAAGCCAAAGGGCAGCCACGGGAACCCCAGGTGTACACTCTGCCCCCCTCTCAGGAGGAGATGACTAAAAATCAGGTCTCTCTGACTTGTCTGGTGAAAGGGTTTTATCCCAGCGACATTGCCGTGGAGTGGGAGTCTAATGGCCAGCCCGAGAATAATTATAAGACAACTCCCCCCGTCCTGGACTCTGACGGCAGCTTTTTCCTGTATTCTCGGCTGACAGTGGACAAAAGTCGCTGGCAGGAGGGCAATGTCTTTAGTTGCAGTGTCATGCATGAGGCCCTGCACAATCACTATACACAGAAAAGCCTGTCTCTGAGTCTGGGCAAA
SEQ ID NO:20
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCANRYDVDWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
SEQ ID NO:38
CGCACTGTGGCTGCCCCCAGTGTTTTCATATTTCCCCCCAGTGATGAGCAACTGAAGTCCGGCACAGCCTCTGTTGTATGTCTGCTGAATAATTTTTATCCACGGGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGTCTGGGAACTCTCAAGAGAGTGTGACAGAGCAGGACAGTAAAGACAGCACCTATAGCCTCAGCAGCACCCTGACCCTGTCTAAAGCCGACTATGAAAAACACAAAGTGTATGCCTGCGAAGTGACCCATCAGGGGCTCAGCTCTCCCGTTACCAAGAGCTTTAACCGAGGCGAATGT
SEQ ID NO:39
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO:40
GAGATCGTGCTGACCCAGAGCCCCGCCACCCTGAGCCTGAGCCCCGGCGAGAGGGCCACCCTGAGCTGCAGGGCCAGCCAGAGCATCAGCAACAACCTGCACTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCCAGGCCCCCAGGCTGCTGATCAAGTACGCCAGCCAGAGCATCAGCGGCATCCCCGCCAGGTTCAGCGGCAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGGAGCCCGAGGACTTCGCCGTGTACTTCTGCCAGCAGAGCAACAGCTGGCCCCTGACCTTCGGCCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAGCGCACTGTGGCTGCCCCCAGTGTTTTCATATTTCCCCCCAGTGATGAGCAACTGAAGTCCGGCACAGCCTCTGTTGTATGTCTGCTGAATAATTTTTATCCACGGGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGTCTGGGAACTCTCAAGAGAGTGTGACAGAGCAGGACAGTAAAGACAGCACCTATAGCCTCAGCAGCACCCTGACCCTGTCTAAAGCCGACTATGAAAAACACAAAGTGTATGCCTGCGAAGTGACCCATCAGGGGCTCAGCTCTCCCGTTACCAAGAGCTTTAACCGAGGCGAATGT
SEQ ID NO:22
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISNNLHWYQQKPGQAPRLLIKYASQSISGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYFCQQSNSWPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0066】
上記人工合成によって得られた抗体1-25(mAb1-25-Humanized)のヒト化重鎖可変領域配列をヒト免疫グロブリンIgG4定常領域(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:35で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:36で表される)と繋ぐことで完全な抗体1-25のヒト化重鎖(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:11で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:8で表される)を形成し、軽鎖定常領域とヒト免疫グロブリンKappa鎖の定常領域(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:38で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:39で表される)を繋ぐことで、完全な抗体1-25のヒト化軽鎖(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:12で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:10で表される)を形成した。
SEQ ID NO:11
GAAGTCAAACTCGTGGAGTCCGGCGGAGGCCTCGTTCAACCAGGTGGATCTCTTCGTTTGTCCTGCGCAGCATCAGGATTCGCTTTCTCCAGCTACGACATGAGCTGGGTCCGACAGGCTCCTGGAAAGAGGCTGGAATGGGTTGCTACTATCAGCGGCGGTGGTAGATATACTTATTACCCCGATACCGTAAAGGGGAGGTTCACCATTAGTCGCGATAACGCCAAAAATTCACACTACCTGCAGATGAACTCTCTGCGGGCCGAGGACACCGCCGTGTACTTTTGTGCCAGTCCCTATGGCGGGTATTTTGACGTGTGGGGCCAGGGGACACTGGTGACTGTGAGTTCTGCAAGTACCAAGGGACCTAGTGTTTTCCCTCTTGCACCTTGCTCCAGGTCAACATCAGAGTCCACAGCTGCTCTTGGATGTCTCGTTAAGGACTACTTCCCAGAGCCAGTTACCGTATCCTGGAACTCCGGAGCTTTGACAAGCGGCGTTCATACATTCCCAGCTGTGTTGCAGAGTTCTGGGTTGTACAGTTTGAGCTCAGTGGTGACCGTGCCTTCATCTTCTTTGGGCACTAAGACCTACACCTGCAACGTGGATCACAAGCCAAGCAACACCAAGGTGGATAAGAGGGTGGAGTCCAAGTACGGCCCACCATGTCCTCCATGTCCAGCCCCTGAATTTTTGGGCGGGCCTTCTGTCTTTCTGTTTCCTCCTAAACCTAAAGATACCCTGATGATCAGCCGCACACCCGAAGTCACTTGTGTGGTCGTGGATGTGTCTCAGGAAGATCCCGAAGTGCAGTTTAACTGGTATGTCGATGGCGTGGAAGTGCATAATGCCAAAACTAAGCCCCGCGAAGAACAGTTCAACAGCACTTATCGGGTCGTGTCTGTGCTCACAGTCCTCCATCAGGATTGGCTGAATGGGAAAGAATATAAGTGCAAGGTGAGCAATAAGGGCCTCCCCAGCAGCATCGAGAAGACTATTAGCAAAGCCAAAGGGCAGCCACGGGAACCCCAGGTGTACACTCTGCCCCCCTCTCAGGAGGAGATGACTAAAAATCAGGTCTCTCTGACTTGTCTGGTGAAAGGGTTTTATCCCAGCGACATTGCCGTGGAGTGGGAGTCTAATGGCCAGCCCGAGAATAATTATAAGACAACTCCCCCCGTCCTGGACTCTGACGGCAGCTTTTTCCTGTATTCTCGGCTGACAGTGGACAAAAGTCGCTGGCAGGAGGGCAATGTCTTTAGTTGCAGTGTCATGCATGAGGCCCTGCACAATCACTATACACAGAAAAGCCTGTCTCTGAGTCTGGGCAAA
SEQ ID NO:8
EVKLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKRLEWVATISGGGRYTYYPDTVKGRFTISRDNAKNSHYLQMNSLRAEDTAVYFCASPYGGYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
SEQ ID NO:12
GAGATCGTCCTTACCCAATCACCAGCAACCTTGTCACTGTCACCAGGTGAAAGAGCAACCCTCAGTTGTAGGGCTAGTCAGAGTATCTCCAACTTCCTGCACTGGTACCAGCAGAAGCCTGGACAGGCCCCTCGGTTGCTCATTAAGTACGCCTCTCAATCTATCAGCGGAATCCCCGCTCGCTTTTCTGGCTCTGGCTCCGGGACTGATTTCACTCTGACAATTTCCAGCCTGGAACCCGAGGACTTTGCCGTTTATTTTTGCCAGCAGAGCAATAGCTGGCCCCATACATTCGGGCAGGGCACAAAAGTGGAGATAAAACGCACTGTGGCTGCCCCCAGTGTTTTCATATTTCCCCCCAGTGATGAGCAACTGAAGTCCGGCACAGCCTCTGTTGTATGTCTGCTGAATAATTTTTATCCACGGGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGTCTGGGAACTCTCAAGAGAGTGTGACAGAGCAGGACAGTAAAGACAGCACCTATAGCCTCAGCAGCACCCTGACCCTGTCTAAAGCCGACTATGAAAAACACAAAGTGTATGCCTGCGAAGTGACCCATCAGGGGCTCAGCTCTCCCGTTACCAAGAGCTTTAACCGAGGCGAATGT
SEQ ID NO:10
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISNFLHWYQQKPGQAPRLLIKYASQSISGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYFCQQSNSWPHTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0067】
上記抗体1-15のヒト化軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子をそれぞれpTT5発現ベクターに導入し、得られた抗体1-15のヒト化軽鎖発現ベクター及び重鎖発現ベクターを組み合わせてHEK293E発現系(NRC biotechnology Research Institute社製)に一過的に導入して抗体を発現した。HEK293細胞をFreeStyle 293発現培地(Gibco社製)で培養し、PEI導入法を利用してプラスミドを細胞に導入してから5日後に細胞上清液を回収し、Protein Aアフィニティークロマトグラフィーで精製して抗体を得た。このように精製した完全な抗体分子をmAb1-15-Humanizedと標記した。
【0068】
上記と同様にして、抗体1-25のヒト化軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子をそれぞれpTT5発現ベクターに導入し、得られた抗体1-25のヒト化軽鎖発現ベクター及び重鎖発現ベクターを組み合わせてHEK293E発現系に一過的に導入して抗体を発現した。HEK293細胞をFreeStyle 293発現培地で培養し、PEI導入法を利用してプラスミドを細胞に導入してから5日後に細胞上清液を回収し、Protein Aアフィニティークロマトグラフィーで精製して抗体を得た。このように精製した完全な抗体分子をmAb1-25-Humanizedと標記した。
【0069】
なお、ラット由来の抗体1-15及び抗体1-25について、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をoverlapping PCRによってそれぞれヒト免疫グロブリンIgG4の重鎖定常領域(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:35で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:36で表される)及びKappa軽鎖定常領域(ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:38で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:39で表される)と繋ぐことで発現ベクターを形成し、上記と同様にして抗体を発現して精製した。得られたキメラ抗体は、それぞれmAb1-15-Chimeric及びmAb1-25-Chimericと標記した。
【0070】
実施例7:MLRに対する本発明の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の促進作用
本実施例では、MLR(混合リンパ球反応)方法を利用してmAb1-15-HumanizedとmAb1-25-Humanizedの生体活性を比較した。ここで、市販のOpdivo及びKeytrudaを陽性対照抗体とし、具体的には、実施例4でも述べたようにIL-2分泌、IFN-γ分泌及び細胞増殖に対する促進活性を評価することで行った。図1-3に示すように、ヒトIgG4同型の対照抗体はヒトPD-1を認識せず、MLRに対して明らかな影響が示さないが、陽性対照抗体であるOpdivo及びKeytrudaは、MLRを促進することでIL-2分泌量が多くなり、EC50がそれぞれ24.63ng/ml及び18.37ng/mlであった(表1)。一方、本発明のmAb1-15-Humanized及びmAb1-25-Humanizedは、上記陽性対照抗体と同様にMLRのIL-2分泌を促進することができ、EC50がそれぞれ16.51ng/ml及び10.73ng/mlであった。また、mAb1-15-Humanizedとその関連キメラ抗体mAb1-15-Chimericは、MLRのIL-2分泌に対する促進活性がほぼ同じく(それぞれ16.51ng/ml、23.56ng/mlでる)、mAb1-25-Humanizedとその関連キメラ抗体mAb1-25-Chimericも、MLRのIL-2分泌に対する促進活性がほぼ同じであり(それぞれ10.73ng/ml、9.953ng/mlである)、本発明に係るラット由来抗体のヒト化操作がその目的を達成していることが実証された。更に、以上で述べたように、MLRのIL-2分泌に対する促進活性からして、本発明のmAb1-25-Humanizedが2つの陽性対照抗体OpdivoとKeytrudaを遥かに上回ることが確認できた。
【0071】
また、本発明のmAb1-15-Humanized及びmAb1-25-Humanizedも、MLRを刺激してIFN-γ分泌を促進し、並びにMLRにおけるT細胞の増殖を促進することができ、EC50は表1に示される通りであった。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例8:抗原に対する本発明の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の結合特性
Ab1-15-Humanized及びmAb1-25-HumanizedとPD-1との結合特性については、Biacore T200(GE healthcare社製)を用いて測定した。具体的には、Amine Coupling Kit(GE healthcare社製)を用いてCM5センサーチップ(GE healthcare社製)を活性化させ、そしてProtein A/G融合タンパク質(Thermo Pierce社製)をチップに固定し、固定量が2000RUであった。FC3(Flow cell 3)を参考セルとし、FC4(Flow cell 4)を試料セルとした。FC4セルを用いてmAb1-15-Humanized、mAb1-25-Humanized、陽性対照抗体(Opdivo及びKeytruda)等をそれぞれ捕捉し、濃度が異なるヒトPD-1(北京Sino Biological Inc社製)を注入した。サイクリング条件として、FCの全セルに速度50μl/分間で測定試料を4分間注入し、解離時間20分間、速度10μl/分間で6Mの塩酸グアニジニウムを30秒間注入して表面を再生させ、最後にBiacore T200 Evaluation Software Ver 1.0を利用して捕捉抗体のシグナルと非捕捉抗体のシグナルの差、及び相互作用の結合特性を算出した。実験結果は、表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示すように、本発明のmAb1-15-Humanized及びmAb1-15-Chimericは、結合特性がほぼ同じく、両者のPD-1に対する結合能力が何れも陽性抗体であるOpdivoを遥かに上回り、Keytrudaと同等のレベルであった。また、本発明のmAb1-25-Humanized及びmAb1-25-Chimericは、結合特性がほぼ同じく、両者のPD-1に対する結合能力が何れも陽性対照抗体であるOpdivo及びKeytrudaを遥かに上回り、PD-1に結合した後には陽性対照抗体に比べて結合が強く、より遅い解離速度を示した。
【0076】
更に、本実施例ではBiacore T200(GE healthcare社製)を用い、別の測定方法によってもmAb1-15-Humanized及びmAb1-25-HumanizedとPD-1の結合特性を測定した。具体的には、EZ-Link(登録商標)Sulfo-NHS-Biotin(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて実施例1で得られたPD-1-hFcをビオチン化し、メーカーのマニュアルに従って操作を行い、ビオチン化が終わると余分なビオチン標識を透析により除去した。そして、ビオチン化PD-1-hFc融合タンパク質をSAセンサーチップ(GE healthcare社製)に固定し、FC3(Flow cell 3)を参考セルとし、FC4(Flow cell 4)を試料セルとした。FC4セルに濃度が異なるmAb1-15-Humanized、mAb1-25-Humanized、陽性対照抗体(Opdivo又はKeytruda)等をそれぞれ注入し、サイクリングとしてFCの全セルに速度50μl/分間で測定試料を4分間注入し、解離時間を20分間にし、最後にBiacore T200 Evaluation Software Ver 1.0を利用して捕捉抗体のシグナルと非捕捉抗体のシグナルの差、及び相互作用の結合特性を算出した。実験結果は、表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
表3に示すように、PD-1に対する本発明のmAb1-15-Humanized及びmAb1-25-Humanizedの結合能力が陽性対照抗体であるOpdivo及びKeytrudaを遥かに上回り、PD-1に結合した後には陽性照抗体に比べて結合が強く、より遅い解離速度を示した。
【0079】
実施例9:PD-1同ファミリーメンバーに対する本発明の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の特異性
CD28、CTLA-4、ICOS等のタンパク質分子は、PD-1と同じファミリーに属し、配列においても相同性があり、これらのタンパク質分子に対して本発明の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体が交差反応性を示すかどうかを確認するため、以下の実験を行った。ELISAプレートに、ヒトPD-1-hFc、CD28-hFc、CTLA-4-hFc、ICOS-hFc等のタンパク質分子(そのうち、ヒトPD-1-hFcは、実施例1に記載の方法で調製し、CTLA-4細胞外配列は、http://www.uniprot.org/uniprot/P16410を参考にして調製し、CTLA-4-hFcは、実施例1に記載のヒトPD-1-hFc製造方法と同様にして調製し、CD28-hFc及びICOS-hFcは、北京Sino Biological Inc社より購入した)をそれぞれ同じ濃度でコーティングし、コーティング濃度2μg/ml、各ウェル当たり100μlずつ、4℃で一晩コーティングした。PBST(0.5%のTween-20を含むPBS)でプレートを2回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。各ウェルに1%のBSAを含むコーティング緩衝液を200μl加えてブローキングを行い、常温で4時間ブローキングしてから叩いて液体を完全に除き、-20℃の冷蔵庫に保存して次に備えた。検出時には、ELISAプレートの各ウェルに、希釈によって濃度勾配を形成したmAb1-25-Humanizedを100μlずつ加え、各濃度に平行して3つのウェルを設け、室温で1時間インキュベートした。そして、ELISAプレートをPBSTで3回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。PBSTで1:5000倍希釈したHRP標識のヤギ抗人Fab抗体(Sigma社製)を100μl加え、室温で1時間インキュベートした後、ELISAプレートをPBSTで3回洗浄し、軽く叩いて液体を完全に除いた。各ウェルに発色液(使用に先立って、ELISA発色剤Aと発色剤Bを1:1の体積比で混ぜ合わせる)を100μl加えて発色させ、各ウェル当たりに2MのHSO停止剤を100μl加えて反応を停止させ、プレートリーダー(Molecular Device)を利用して波長450nmで各ウェルのOD値を測定した。
【0080】
図4に示すように、本発明のmAb1-25-Humanizedは、PD-1を特異的に結合するが、PD-1と同じファミリーに属するタンパク質分子CD28、CTLA-4及びICOSには結合せず、本発明のmAb1-25-Humanizedが優れた特異性を有することが実験により確認できた。
【0081】
実施例10:体内における本発明の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の腫瘍抑制効果
ヒトPD-1トランスジェニックマウス(遺伝的背景がC57BL/6である)及びMC38マウス大腸癌細胞は、上海南方モデル生物研究センターから購入した。該トランスジェニックマウスにおいてマウスの相同部分をヒト由来PD-1遺伝子の細胞外部分で置き換えたため、本発明の抗ヒトPD-1モノクローナル抗体は、該トランスジェニックマウスのPD-1分子に結合可能となり、免疫系を活性化させて腫瘍抑制効果を奏することができる。具体的には、血清濃度10%のDMEM(血清と培地は何れもGibco社製である)を培地としてMC38を体外培養し、マウス1匹当たり1×10個の細胞となるようにMC38細胞をヒトPD-1トランスジェニックマウスに接種した。接種した腫瘍細胞が体積約100mmまで生長すると、ランダムに動物を幾つかの組に分けた。このとき、ブランク対照組としてマウス16匹に生理食塩水のみを注射し、mAb1-25-Humanized抗体組として1mg/kg、3mg/kg、10mg/kgと3つの投与組を設け、各投与量にマウス8ずつであった。また、Keytruda陽性対照組としては、投与量を10mg/kgとし、マウスが8匹であった。そして、既定の投与計画に従って週に2回、3週間続けて投与を行い、毎週2回の頻度で腫瘍体積を測定した。各組の経時的な腫瘍生長グラフは、図5に示す。
【0082】
図5に示すように、本発明のmAb1-25-Humanizedは、薬剤量依存的に体内腫瘍生長を抑制し、mAb1-25-Humanized(10mg/kg)では、対照組に比べてマウス体内のMC38移植腫瘍生長(P=0.0007***)に対して特に顕著な抑制効果を示すことが確認できた。一方、Keytruda(10mg/kg)でもMC38腫瘍生長(P=0.0012**)を抑制することができるが、その抑制効果は本発明のmAb1-25-Humanizedの以下であった。また、腫瘍抑制率を見るとき、対照組に比べてmAb1-25-Humanized(10mg/kg)組では腫瘍抑制率が80.7%であるが、Keytruda(10mg/kg)組では腫瘍抑制率が65.9%に留まることから、本発明のmAb1-25-Humanizedがより効果的にマウス体内の腫瘍細胞生長を抑制することのできることが実証できた。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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