(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】反応媒体として式(I)の化合物を含む新規のサーモクロミック色素組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 9/02 20060101AFI20220704BHJP
C09D 11/17 20140101ALI20220704BHJP
C09D 11/18 20060101ALI20220704BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220704BHJP
C09B 11/26 20060101ALI20220704BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20220704BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20220704BHJP
C09D 11/50 20140101ALI20220704BHJP
【FI】
C09K9/02 C
C09D11/17
C09D11/18
C09B67/20 F
C09B11/26 F
B43K7/00
B43K29/02 F
C09D11/50
(21)【出願番号】P 2019537252
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(86)【国際出願番号】 FR2018050374
(87)【国際公開番号】W WO2018150146
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-20
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デブラウワー,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ダミアーノ,アン-リセ
(72)【発明者】
【氏名】ブルク,アレキサンダー
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0089920(US,A1)
【文献】国際公開第2006/044337(WO,A1)
【文献】米国特許第05876492(US,A)
【文献】国際公開第03/060001(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/002714(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/168389(WO,A1)
【文献】特開平11-166123(JP,A)
【文献】特開2002-053853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 9/00-9/02
C09D 11/17,11/18,11/50
C09B 11/04,67/20
B43K 7/00,29/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1~10重量%の少なくとも1つの電子供与体有機染料化合物、
(B)1~20重量%の少なくとも1つの電子受容体化合物、および
(C)70~98重量%の以下の式(I):
【化1】
(式中、
n=0~2であり、かつ
m=5~19である)を有する少なくとも1つの化合物
を含む、サーモクロミック色素組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物が、以下の化合物:
【化2】
または
の1つから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)2~4重量%の少なくとも1つの電子供与体有機染料化合物、
(B)4~10重量%の少なくとも1つの電子受容体化合物、および
(C)86~94重量%の式(I)を有する少なくとも1つの化合物
を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
化合物(A)が、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(青色63号、CAS番号:69898-40-4)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号:34372-72-0)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(黄色CK37号、CAS番号:144190-25-0)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(青色203号、CAS番号:98660-18-5)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(黒色15号、CAS番号:36431-22-8)および3,3,-ビス-(1-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(赤色40号、CAS番号:50292-91-6)から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
化合物(B)が、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号:79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号:136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BZP、CAS番号:843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号:1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:1806-29-7)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号:2362-14-3)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素(CAS番号:3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号:27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号:74462-02-5)、およびα,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号:110726-28-8)から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
サーモクロミック色素化合物の反応媒体としての、以下の式(I):
【化5】
(式中、
n=0~2であり、かつ
m=5~19である)を有する化合物の使用。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物を含む、マイクロカプセル化サーモクロミック色素。
【請求項8】
請求項
7に記載のマイクロカプセル化サーモクロミック色素を含む、インク組成物。
【請求項9】
請求項
8に記載のインク組成物を含む、筆記用具。
【請求項10】
ペン、より具体的には摩擦で消去可能なインクペンから選択される、請求項
9に記載の筆記用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応媒体として式(I)の化合物を含む新規のサーモクロミック色素組成物に関する。本発明はまた、本発明によるサーモクロミック色素組成物を含むマイクロカプセル化サーモクロミック色素、そのようなマイクロカプセル化サーモクロミック色素を含むインク組成物、そしてそのようなインク組成物を含む筆記用具に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術および本発明の目的
サーモクロミック色素組成物は、温度変化に関連する可逆的な退色特性を示す。これらの組成物は、インクマーキングが繰返しの消去を必要とする時に使用される。
【0003】
インクのサーモクロミック効果は以下の3つの化合物の共同により機能する:
(A)少なくとも1つの電子供与体有機染料またはロイコ染料化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容体または顕色剤化合物、および
(C)化合物(A)および(B)に起因し得る可逆的な電子受容/供与反応をもたらすことができる、反応媒体として働く少なくとも1つの化合物、または温度変化調節剤。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】温度変化は、インクの呈色または退色を可逆的に引き起こす。すなわち、温度の増加はインクの消去を引き起こし、冷却はその出現を引き起こす。これらの変化は
図1の図式に従う。この図式において、インクの初期色消失温度はT3であり、インクの色が完全に消失する温度はT4であり、T
GはT3とT4との間の媒体温度である。反対に、インクの初期色消失温度はT1であり、T
HはT1とT2との間の温度である。(T
G)と(T
H)との間の範囲は変色ヒステリシス範囲(ΔH)と呼ばれる。
【0005】
驚くべきことに、本発明者らは、これらの化合物の退色および再呈色温度にそれぞれ対応する最適な融合および結晶化温度範囲を示す式(I)の少なくとも1つの化合物を化合物(C)として含む新しいサーモクロミック色素組成物を発見した。本発明の式(I)の化合物は、サーモクロミック色素組成物において温度変化調節剤として使用されるべき多数の利点を示す:それは顕著なヒステリシスの特徴および呈色状態と退色状態との間で極めて高い色対比を有する。本発明によるサーモクロミック色素組成物はまた、酸化防止特性および/またはUV線への抵抗性を示し、これらの特性は式(I)の化合物に内在し、組成物に酸化防止剤および/または抗UV化合物を加える必要がない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の説明
第1の実施形態によれば、本発明の技術的目的は、
(A)少なくとも1つの電子供与体有機染料化合物、
(B)少なくとも1つの電子受容体化合物、および
(C)以下の式(I):
【化1】
(式中、
n=0~2であり、かつ
m=5~19、好ましくはm=7~19、よりいっそう好ましくはm=11~17である)を有する少なくとも1つの化合物
を含むサーモクロミック色素組成物を提供することである。
【0007】
式(I)の化合物は、酸化防止剤またはUV安定化剤としてのそれらの使用について先行技術で公知であるが、化合物(C)、すなわち、サーモクロミック色素組成物中で電子供与体有機染料化合物(A)と電子受容体化合物(B)との間の可逆的な電子受容/供与反応をもたらすことができる反応媒体としてのそれらの使用についてはこれまで記載されていない。上記に定義される本発明による式(I)の化合物がサーモクロミック色素組成物中の化合物(C)または温度変化調節剤としてのその使用を可能とする最適な融合および結晶化温度を示すことを本発明者らが発見したことは絶対的に驚くべきことである。
【0008】
したがって、本発明はまた、サーモクロミック色素組成物の電子供与体有機染料化合物(A)と電子受容体化合物(B)との間の可逆的な電子受容/供与反応をもたらすことができる反応媒体としての、以下の式(I):
【化2】
(式中、
n=0~2であり、かつ
m=5~19、好ましくはm=7~19、よりいっそう好ましくはm=11~17である)を有する化合物の使用に関する。
【0009】
有利には、本発明によるサーモクロミック色素組成物中に存在する式(I)の化合物は、以下の化合物:
【化3】
または
の1つから選択される。
【0010】
化合物(A)、(B)および(C)の重量比は、これらの各化合物の性質および濃度により影響される。
【0011】
電子供与体有機染料化合物(A)の重量比は、サーモクロミック色素化合物の総重量に対して1~10重量%、好ましくは1~6重量%、よりいっそう好ましくは2~4重量%で変動し得る。
【0012】
電子受容体化合物(B)の重量比は、サーモクロミック色素化合物の総重量に対して1~20重量%、好ましくは1~14重量%、よりいっそう好ましくは4~10重量%で変動し得る。
【0013】
反応媒体の役割を果たす式(I)の化合物(C)の重量比は、サーモクロミック色素化合物の総重量に対して70~98重量%、好ましくは80~98重量%、よりいっそう好ましくは86~94重量%で変動し得る。
【0014】
したがって、本発明によるサーモクロミック色素組成物は、
(A)1~10重量%、好ましくは1~6重量%、よりいっそう好ましくは2~4重量%の少なくとも1つの電子供与体有機染料化合物、
(B)1~20重量%、好ましくは1~14重量%、よりいっそう好ましくは4~10重量%の少なくとも1つの電子受容体化合物、および
(C)70~98重量%、好ましくは80~98重量%、よりいっそう好ましくは86~94重量%の式(I)を有する少なくとも1つの化合物
を含み得る。
【0015】
好ましい実施形態によれば、本発明によるサーモクロミック色素組成物は、
(A)2~4重量%の少なくとも1つの電子供与体有機染料化合物、
(B)4~10重量%の少なくとも1つの電子受容体化合物、および
(C)86~94重量%の式(I)を有する少なくとも1つの化合物
を含む。
【0016】
有利には、本発明によるサーモクロミック色素組成物は、20~80℃、好ましくは30~80℃、よりいっそう好ましくは40~70℃の範囲内のカプセル化後の変色ヒステリシス範囲(ΔH)を有する。
【0017】
電子供与体有機染料化合物(A)の非限定的なリストは、古典的に公知の化合物、例えば、ジフェニルメタンフタリド、フェニルインドリルフタリド、ジフェニルメタンアザフタリド、フェニルインドリルアザフタリド、フルオラン、スチリルキノリンおよびジアザローダミンラクトンを含むことができ、これらの化合物の例は以下に示される。
【0018】
電子供与体有機染料化合物(A)は、したがって、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(青色63号、CAS番号:69898-40-4)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタレート(CAS番号:1552-42-7)、2’-クロロ-6’-(ジエチルアミノ)-3’-メチルフルオラン(CAS番号:21121-62-0)、6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン(CAS番号:21934-68-9)、6’-(ジエチルアミノ)-1’,3’-ジメチルフルオラン(CAS番号:21934-68-9)、2-クロロ-6-(ジメチルアミノ)フッ素(CAS番号:26567-23-7)、3-ジエチルアミノベンゾフルオラン(CAS番号:26628-47-7)、3’,6’-ビス(ジエチルアミノ)-2-(4-ニトロフェニル)スピロ[イソインドール-1,9’-キサンテン]-3-オン(CAS番号:29199-09-5)、2-フェニルアミノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(CAS番号:29512-49-0)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フッ素(CAS番号:34372-72-0)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(黒色15号、CAS番号:36431-22-8)、3-(1,2-ジメチル-3-インドリル)-3-[4-(ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル]フタリド(CAS番号36499-49-7)、3’,6’-ジメトキシフルオラン(CAS番号:36886-76-7)、3,3-ビス-(1-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(赤色40号、CAS番号:50292-91-6)、3,3-ビス-(2-メチル-1-オクチル-1H-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(CAS番号:50292-95-0)、2’-アニリノ-6’-[エチル(p-トリル)アミノ]-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン]-3-オン(CAS番号:59129-79-2)、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(CAS番号:69898-40-0)、3-(N-エチル-n-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフッ素(CAS番号:70516-41-5)、3-[4-(ジエチルアミノ)フェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)フタリド(CAS番号:75805-17-3)、2’-(2-クロロアニリノ)-6’-(ジブチルアミノ)フッ素(CAS番号:82137-81-3)、2-フェニルアミノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン(CAS番号:89331-94-2)、3-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-6-(ジメチルアミノ)-3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-3-1(3H)-イソベンゾフラノン(CAS番号:92453-31-1)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(青色203号、CAS番号:98660-18-5)、7,7-ビス[4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル]フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(CAS番号:132467-74-4)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(黄色CK37号、CAS番号:144190-25-0)、3-(2,2-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)ビニル)-3-(4-ジエチルアミノフェニル)-フタリド(CAS番号:148716-90-9)から選択することができる。
【0019】
好ましくは、電子供与体有機染料化合物(A)は、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(青色63号、CAS番号:69898-40-4)、2’-(ジベンジルアミノ)-6’-(ジエチルアミノ)フルオラン(CAS番号:34372-72-0)、N,N-ジメチル-4-[2-[2-(オクチルオキシ)フェニル]-6-フェニル-4-ピリジニル]ベンゼンアミン(黄色CK37号、CAS番号:144190-25-0)、7-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-7H-フロ[3,4-b]ピリジン-5-オン(青色203号、CAS番号:98660-18-5)、2-(2,4-ジメチルフェニルアミノ)-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン(黒色15号、CAS番号:36431-22-8)および3,3,-ビス-(1-ブチル-2-メチル-インドール-3-イル)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(赤色40号、CAS番号:50292-91-6)から選択される。
【0020】
電子受容体化合物(B)の非限定的なリストは、活性プロトンを有する化合物、例えば、フェノールヒドロキシル基(モノフェノールまたはポリフェノール)を有する化合物、置換基、例えば、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、これらのエステル、アミド基またはハロゲン原子を有するそれらの誘導体、および縮合フェノール-アルデヒド樹脂、例えばビスフェノールまたはトリスフェノールを含み得る。
【0021】
本発明の意味において以下の定義が提供される:
- アルキル:飽和脂肪族炭化水素基であって、直鎖または分岐鎖であり、C1~C20、好ましくはC1~C12、よりいっそう好ましくはC1~C6である。「分岐鎖」という用語は、直鎖アルキル鎖が少なくとも1つの内部アルキル基、例えばメチルまたはエチルを有することを意味する。アルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、l-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基およびn-ペンチル基を挙げることができる。
- アリール:少なくとも1つの芳香環に由来する任意の官能基または置換基であり;芳香環は、互いに重なり合うp軌道を環の各原子が含む非局在化π系を含む任意のフラットな単環または多環基に対応し;そのようなアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフタレン基およびアントラセン基を挙げることができる。本発明によるアリール基は、好ましくは4~12個の炭素原子、よりいっそう好ましくは5~6個の炭素原子を含む。よりいっそう好ましくは、本発明によるアリール基はフェニル基である。
【0022】
したがって、電子受容体化合物(B)は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号:79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号:136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BZP、CAS番号:843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号:1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:1806-29-7)、4,4’-エチリデンビスフェノール(CAS番号:2081-08-5)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号:2362-14-3)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素(CAS番号:3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号:27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号:74462-02-5)、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号:110726-28-8)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(CAS番号:140-66-9)、4-ヒドロキシジフェニルエーテル(CAS番号:831-82-3)、ビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタン(CAS番号:1096-84-0)、4-(メチルスルホニル)フェノール(CAS番号:14763-60-1)、4-ヒドロキシフェニル-4’-イソプロポキシフェニルスルホン(CAS番号:95235-30-6)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:92-88-6)、4-ヒドロキシビフェニル(CAS番号:92-69-3)、p-ヒドロキシクメン(CAS番号:99-89-8)、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(CAS番号:131-56-6)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ、CAS番号:150-76-5)、3-n-ペンタデシルフェノール(CAS番号:501-24-6)、4-(2-フェニルイソプロピル)フェノール(CAS番号:599-64-4)、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(CAS番号:3380-34-5)、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル)尿素(CAS番号:232938-43-1)、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(CAS番号:79-94-7)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(CAS番号:80-05-7)および4,4’-スルホニルジフェノール(BPS、CAS番号:80-09-1)から選択され得る。
【0023】
好ましくは、電子受容体化合物(B)は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC、CAS番号:79-97-0)、4-ヘキシル-1,3-ジヒドロキシベンゼン(4-ヘキシルレゾルシノール、CAS番号:136-77-6)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(BZP、CAS番号:843-55-0)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(ビスフェノールAF、CAS番号:1478-61-1)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(CAS番号:1571-75-1)、2,2’-ジヒドロキシビフェニル(CAS番号:1806-29-7)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:2167-51-3)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(CAS番号:2362-14-3)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素(CAS番号:3236-71-3)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(CAS番号:13595-25-0)、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(CAS番号:27955-94-8)、4,4’-(2-エチルヘキシリデン)ジフェノール(CAS番号:74462-02-5)、およびα,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン(CAS番号:110726-28-8)から選択される。
【0024】
本発明によるサーモクロミック色素組成物は、上記に定義される式(I)の化合物(C)中に化合物(A)および(B)を溶解させた後、均質な混合物が得られるまで撹拌機、例えばホモミキサーまたは分散機などによりそれを撹拌することにより調製される。
【0025】
このようにして、上記に定義される式(I)の化合物(C)に関連付けられる化合物(A)および(B)は、マイクロカプセルの形状に配合することができる。それにより、本発明によるサーモクロミック色素組成物は、マイクロカプセルにカプセル化されてマイクロカプセル化サーモクロミック色素を形成する。そのようなマイクロカプセル化サーモクロミック色素は、本発明による別の目的を構成する。それらは、機械的拘束に耐性であり、水に不溶性、したがって分散可能であり、かつ遅い凝集を示すという点で有利な特徴を示す。
【0026】
本発明によるマイクロカプセル化サーモクロミック色素の融合温度(または退色温度T4)は、20~80℃、好ましくは30~80℃、よりいっそう好ましくは40~70℃で変動し得る。
【0027】
本発明によるマイクロカプセル化サーモクロミック色素の結晶化温度(または再呈色温度T1)は、-40~20℃、好ましくは-30~10℃、よりいっそう好ましくは-20~0℃で変動し得る。
【0028】
本発明によるサーモクロミック色素組成物を含むマイクロカプセルは、0.5~30μm、好ましくは1~10μm、よりいっそう好ましくは3~5μmの範囲内であり得る平均直径を示す。この平均直径は、D90の体積に対応し、90体積%のマイクロカプセルがD90の指し示される値より小さいことを意味する。この平均直径は、Malvern Zetasizer Nano ZSシステムを使用してグラニュロメトリーレーザーにより決定することができる。
【0029】
使用されるマイクロカプセル化の方法としては、
- 例えば重合または界面重縮合を通じての、コーティングマイクロカプセルのインサイチュ形成に基づく化学的方法、これらの方法は好ましい、
- 物理化学的方法、例えば、相分離コアセルベーション、溶媒蒸発抽出、エマルションの熱誘導性ゲル化(ホットメルト)、または
- 機械的方法、例えば、噴霧化/乾燥(スプレー乾燥)、液滴のゲル化または凝固、流動床コーティング(スプレーコーティング)
などの従来法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
本発明によるサーモクロミック色素組成物を含むマイクロカプセルは、有利には、アミノプラスト樹脂ベース、好ましくはメラミン樹脂、尿素樹脂またはベンゾグアナミン樹脂ベースを用いて調製される。
【0031】
本発明によるサーモクロミック色素組成物を含むマイクロカプセルは、好ましくは、メラミン樹脂を用いるインサイチュ重合を通じて調製される。
【0032】
本発明の別の技術的目的は、本発明によるマイクロカプセル化サーモクロミック色素を含むインク組成物に関する。
【0033】
インク組成物中に存在する本発明によるマイクロカプセル化サーモクロミック色素は、インク組成物の総重量の5~50重量%を示す。
【0034】
本発明によるインク組成物は、さらには、主に水から構成される。有利には、水は、インク組成物の総重量の40~80重量%を示す。それはまた、1つまたは複数の水混和性共溶媒を含み得る。したがって、本発明によるインク組成物は、有機溶媒または水性溶媒、好ましくは水性溶媒を含有し得る。本発明によるインク組成物はまた、最終の意図する応用にしたがって異なる役割を果たし得る1つまたは複数の特定のアジュバントを含有し得る。これらの応用は、セリグラフィー、オフセット印刷、グラビア印刷、スプレーコーティング、静電塗装、電着塗装、ロールコーティング、インクジェット印刷ならびに筆記用具、例えば、ボールペン、筆ペン、マーカーおよび色鉛筆用のインクを通じたインク印刷に関し得る。本発明によるインク組成物はまた、鋳型を形成するために熱可塑性または熱硬化性樹脂組成物に加えられ得る。
【0035】
本発明によるインク組成物に加えられ得る溶媒としては、水および極性の水混和性溶媒、例えば:
- アルコール:C1~C15の直鎖または分岐鎖のアルコール、例えば、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール;グリセリン;ジグリセリン;ポリグリセリン、
- エステル、例えば、酢酸エチルまたは酢酸プロピル、
- 炭酸エステル、例えば、炭酸プロピレンまたは炭酸エチレン、
- ケトン、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトンまたはシクロヘキサノン、
- グリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、3-ブチレングリコールおよびチオジエチレングリコール、
- アミド、例えば、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド、および
- これらの混合物
を挙げることができる。
【0036】
1つまたは複数の溶媒は、インク組成物の総重量の5~20重量%を示す。
【0037】
上記のアジュバントとしては、
- ゲル化効果を生成できるレオロジー修飾剤(ずり減粘剤)、例えば、キサンタンガムまたはアラビアゴム、
- 消泡剤、例えば、ポリシロキサンの修飾水性分散液(SynthronのMOUSSEX(登録商標))、
- pH調節剤、例えば、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、
- 界面活性剤、例えば、ポリエーテルポリオール(DOWのTERGITOL(登録商標))、
- 殺傷剤、例えば、イソチアゾリノン(ThorのACTICIDE(登録商標))、
- 腐食阻害剤、例えば、ベンゾトリアゾール、
- 潤滑剤、
- 分散剤、
- 融合助剤、
- 架橋剤、
- 湿潤剤、
- 可塑剤、
- 酸化防止剤、
- UV安定化剤
を挙げることができる。
【0038】
本発明の追加の技術的目的は、本発明によるインク組成物を含む筆記用具に関する。これらの用具は、一般に、本発明によるインク組成物を含む本体部、および場合により摩擦部品から構成される。本発明による筆記用具は、有利には、ボールペン、鉛筆、チョーク、よりいっそう有利には、摩擦で消去可能なインクを有するボールペンから選択される。筆記用具の摩擦部品は、好ましくは、消しゴムである。
【0039】
本発明によるインク組成物を塗布できる媒体は、紙、繊維、革、プラスチック、ガラス、金属、木およびコンクリートである。
【0040】
上記に提供したものに加えて、本発明は、本発明によるサーモクロミック色素組成物中の温度変化調節剤としての本発明による式(I)の化合物の使用およびそれらの特徴付けに関する、以下の補足的記載の結果としてもたらされるであろうものをさらに提供する。
【実施例】
【0041】
実施例1:
サーモクロミック色素組成物の調製:
2.2重量部の3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(化合物(A)、CAS番号:69898-40-4)、2.2重量部の4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(化合物(B1)CAS番号:1478-61-1)、2.2重量部の2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(化合物(B2)、CAS番号:79-97-0)および93.3重量部の本発明による式(I)の化合物(化合物(1))(化合物(C)):
【化4】
を混合することによりサーモクロミック色素組成物を調製する。
【0042】
化合物(A)、(B1)および(B2)が化合物(C)に完全に溶解するまで、得られた混合物を110℃の温度に1時間、撹拌下で加熱する。
【0043】
マイクロカプセル化サーモクロミック色素の調製:
7.2重量部の無水マレイン酸およびメチルビニルエーテルのコポリマーの水溶液(33%のコポリマーの重量の溶液)を8.8重量部の水酸化ナトリウムの水溶液(1.0Mの溶液)で中和する。この溶液を38.4重量部の水で希釈し、混合物を少なくとも15m.s-1の速度でホモジナイザーを用いて乳化させる。以前に調製された27.8重量部のサーモクロミック色素組成物を加え、得られたエマルションを80℃の温度に30分間保つ。次に、17.8重量部のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー(50%のプレポリマーの重量の水溶液)を混合物に滴下で加える。次に、反応媒体を90℃の温度に加熱し、少なくとも15m.s-1の速度で4時間混合する。
【0044】
水性溶媒中に分散したサーモクロミック色素マイクロカプセルから構成されたスラリーを得、このマイクロカプセルは、632nmの照明でMalvern Zetasizer Nano ZSシステムを使用して決定される3.6μmのD90の直径を有する。
【0045】
得られるサーモクロミック色素マイクロカプセルは、色ヒステリシス効果により62℃を超えると青色から無色に色を変化させる特性を有する。
【0046】
インク組成物の調製:
10.5重量部のグリセリン(共溶媒)をブレードでの撹拌下、30℃の温度に加熱する。次に、0.2重量部のベンゾトリアゾール(腐食阻害剤)ならびに2.5重量%の1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンおよび2.5重量%の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(殺傷剤)を含む0.2重量部の水溶液を加える。添加物が完全に溶解するまで混合物を撹拌する。0.5重量部のキサンタンガム(レオロジー修飾剤)を15分にわたって緩徐に加える。レオロジー修飾剤の分散後、28.6重量部の蒸留水を加える。得られたインク組成物を撹拌下に3時間保った後、60重量部の上記で調製されたマイクロカプセル化サーモクロミック色素の水性分散液(30%のマイクロカプセル化サーモクロミック色素の重量の水溶液)を加える。次に、青色インクを少なくとも15m.s-1の速度で30分間分散機を用いて分散させる。インク組成物を減圧下で脱気した後、インクカートリッジに注入する。
【0047】
実施例2:
サーモクロミック色素組成物の調製:
2.2重量部の3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(化合物(A)、CAS番号:69898-40-4)、2.1重量部の2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(化合物(B1)、CAS番号:79-97-0)、2.1重量部の4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(化合物(B2)、CAS番号:13595-25-0)および93.8重量部の本発明による式(I)の化合物(化合物(2))(化合物(C)):
【化5】
を混合することによりサーモクロミック色素組成物を調製する。
【0048】
化合物(A)、(B1)および(B2)が化合物(C)に完全に溶解するまで、得られた混合物を110℃の温度に1時間、撹拌下で加熱する。
【0049】
マイクロカプセル化サーモクロミック色素の調製:
7.4重量部の無水マレイン酸およびメチルビニルエーテルのコポリマーの水溶液(33%のコポリマーの重量の溶液)を10.2重量部の水酸化ナトリウムの水溶液(1.0Mの溶液)で中和する。この溶液を40.3重量部の水で希釈し、混合物を少なくとも15m.s-1の速度でホモジナイザーを用いて乳化させる。以前に調製された25.3重量部のサーモクロミック色素組成物を加え、得られたエマルションを80℃の温度に30分間保つ。次に、16.8重量部のメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー(50%のプレポリマーの重量の水溶液)を混合物に滴下で加える。次に、反応媒体を90℃の温度に加熱し、少なくとも15m.s-1の速度で4時間混合する。
【0050】
水性溶媒中に分散したサーモクロミック色素マイクロカプセルから構成されたスラリーを得、このマイクロカプセルは、632nmの照明でMalvern Zetasizer Nano ZSシステムを使用して決定される3.9μmのD90の直径を有する。
【0051】
得られるサーモクロミック色素マイクロカプセルは、色ヒステリシス効果により55℃を超えると青色から無色に色を変化させる特性を有する。
【0052】
インク組成物の調製:
10.6重量部のグリセリン(共溶媒)をブレードでの撹拌下、30℃の温度に加熱する。次に、0.2重量部のベンゾトリアゾール(腐食阻害剤)、2.5重量%の1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンおよび2.5重量%の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(殺傷剤)を含む0.2重量部の水溶液、0.5重量部のポリシロキサンコポリマーの水溶液(50%のポリマーの重量の水溶液)(消泡剤)、ならびに0.5重量部のポリオールポリエーテル(界面活性剤)を加える。添加物が完全に溶解するまで混合物を撹拌する。0.5重量部のキサンタンガム(レオロジー修飾剤)を15分にわたって緩徐に加える。レオロジー修飾剤の分散後、27.0重量部の蒸留水を加える。得られたインク組成物を撹拌下に3時間保った後、60重量部の上記で調製されたマイクロカプセル化サーモクロミック色素の水性分散液(30%のマイクロカプセル化サーモクロミック色素の重量の水溶液)を加える。0.5重量部のトリエタノールアミンを用いてインク組成物のpHをpH=8に調整する。次に、青色インクを少なくとも15m.s-1の速度で30分間分散機を用いて分散させる。インク組成物を減圧下で脱気した後、インクカートリッジに注入する。
【0053】
実施例1および2で調製されたサーモクロミック色素マイクロカプセルの退色および再呈色温度の決定:
20℃/分の冷却/加熱速度で、-50~100℃の温度範囲について、TA Instruments Q20デバイスを用いる示差走査熱量測定(DSC)を使用して、得られたサーモクロミック色素マイクロカプセルの転移温度を測定する。測定された温度を以下の表1に指し示す。
【表1】
【0054】
測定される転移温度は以下の通りである:
T1:完全な再呈色温度
T2:部分的な再呈色温度
T3:部分的な退色温度
T4:完全な退色温度
【数1】
ΔH=ヒステリシス範囲=T
G-T
H
【0055】
実施例3:
本発明によるいくつものサーモクロミック色素組成物を試験して、組成物の完全な退色のために必要な化合物(A)、(B)および(C)の最適な比を決定した。
【0056】
化合物(A)および(B)が化合物(C)に完全に溶解するまで、化合物(A)、(B)および(C)を110℃の温度で1時間、撹拌下で混合することによりサーモクロミック色素組成物を調製する。
【0057】
試験した異なるサーモクロミック色素組成物1~9の組成を以下の表2に示す。
【表2】
【0058】
温度を65℃に増加させることにより、調製した異なるサーモクロミック色素組成物のサーモクロミック効果を視覚的に評価する。観察された結果を以下の表3に要約する。
【表3】
【0059】
サーモクロミック色素組成物中の化合物(1)の比がより増加すればするほど、サーモクロミック色素組成物が消去されて無色となるのがより容易になることを観察することができる。
【0060】
比較例1:
化合物(C)として本発明による式(I)の化合物(化合物(1)):
【化6】
を含む本発明によるサーモクロミック色素組成物を、類似の構造を有するが-C(CH
3)
3 terブチル基を有しない化合物であるドデシルパラベンにより化合物(1)を置き換えたサーモクロミック色素組成物と比較する。
【0061】
化合物(A)および(B)が化合物(C)に完全に溶解するまで、110℃の温度で1時間、撹拌下で化合物(A)、(B)および(C)を混合することによりサーモクロミック色素組成物を調製する。
【0062】
サーモクロミック色素組成物の組成を以下の表4に示す。
【表4】
【0063】
サーモクロミック効果を試験するために、サーモクロミック色素組成物の液滴を顕微鏡スライド上に置く。次に、化合物(C)の融点より高い温度にプレートを加熱する。プレートを室温に置いた時と、化合物(C)の融点より高い温度にプレートを加熱した時との色の強度の比較を通じて視覚的観察を行う。
【0064】
20℃で、化合物(1)およびドデシルパラベンを含む2つの組成物は共に青色である。
【0065】
90℃で、化合物(1)を含む本発明による組成物は完全に退色(無色)するが、ドデシルパラベンを含む比較用組成物は青色を維持する。比較用組成物において、ドデシルパラベンは、4-フェノールの近くでの立体障害がないことにより顕色剤の役割を果たす。