(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】把持装置および試料容器処理システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2019543242
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2018053273
(87)【国際公開番号】W WO2018153691
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー、ジーン-クロード
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、トーマス
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-037320(JP,A)
【文献】特表2009-509777(JP,A)
【文献】特開平04-324359(JP,A)
【文献】特表2008-532798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル(40)が貼り付けられた複数の試料容器(30)を保持するための複数のラック(20)と、
試料容器(30)を取り扱うための把持装置(50)
と
を備えた、試料容器処理システム(10)であって、前記把持装置(50)は、
試料容器(30)を集合的に把持するように構成された、剛性を有する複数のフィンガー(60)を備え、
それぞれのフィンガー(60)は、前記試料容器(30)が前記把持装置(50)によって把持されている間に、前記試料容器(30)に接触するように構成された把持面(62)を備え、それぞれのフィンガー(60)は、前記把持面(62)とは異なる非把持面(64)を備え、
少なくとも1つのフィンガー(60)の前記非把持面(64)は、
把持された試料容器に隣接して配置される試料容器のラベルの、前記少なくとも1つのフィンガー(60)への貼り付きを抑えるように、少なくとも部分的に波状とされている、
試料容器処理システム(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフィンガー(60)の非把持面(64)が、一連の溝(66)および/またはセレーション(68)によって、少なくとも部分的に波状とされている、請求項1に記載の
試料容器処理システム(10)。
【請求項3】
前記把持装置(50)は、複数のフィンガー支持部(70)を備え、2つのフィンガー(60)が対応するフィンガー支持部(70)に連結されている、請求項1または2に記載の
試料容器処理システム(10)。
【請求項4】
前記フィンガー支持部(70)が互いに対して移動可能である、請求項3に記載の
試料容器処理システム(10)。
【請求項5】
前記フィンガー(60)の全ての把持面(62)が、共通の中心に向いている、請求項1~4のいずれか1項に記載の
試料容器処理システム(10)。
【請求項6】
前記フィンガー(60)のうち、いくつかまたは全ての把持面(62)がサンドブラストされている、請求項1~5のいずれか1項に記載の
試料容器処理システム(10)。
【請求項7】
前記ラック(20)が、前記試料容器(30)のための複数の支持部(22)を備えている、請求項
1~6のいずれか1項に記載の試料容器処理システム(10)。
【請求項8】
前記支持部(22)が、前記支持部(22)のそれぞれの中心間の距離が1.5cm~2.5cmの間となるパターンで配置されている、請求項
7に記載の試料容器処理システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置および試料容器処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料容器処理システムは、通常、複数の試料容器を取り扱う検査室自動化システムで使用され得る。典型的には、各試料容器には、多数の検査室ステーションで分析される試料が含まれている。検査室試料分配システムを含む典型的な検査室自動化システムは、特許文献1に示されている。
【0003】
把持装置は、典型的には、試料容器を処理するため、たとえば、試料容器を試料容器キャリアへと、および試料容器キャリアから、および、検査室ステーションへと、および検査室ステーションから、ロードおよびアンロードするために、試料容器処理システムで使用される。
【0004】
さらに、試料容器は保管ラックに保管され得る。このような保管ラックに必要なスペースを削減するために、保管ラックは通常、試料容器を高密度で保管するために具体化される。
【0005】
管として具体化可能な試料容器には、通常、たとえば試料容器に含まれる試料のタイプや試料に実行される分析操作などに関する情報を含むラベルが付される。ラベルは少なくとも部分的に剥がれる傾向があることがわかっている。したがって、高密度の保管ラックにおいて、把持装置は、隣接する試料容器から剥がれたラベルと接触することなく、所望の試料容器を把持するのに十分なスペースを有しない場合がある。この剥がれたラベルは、把持装置の表面に付着する可能性がある。これは、システムの誤動作につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ラベルの貼り付きの可能性を低減する把持装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、そのような把持装置を含む試料容器処理システムを提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の把持装置および請求項7に記載の試料容器処理システムによって解決される。
【0009】
本発明は、ラベルが貼り付けられた試料容器を取り扱うための把持装置に関する。これは、試料容器の取り扱いの一般的な状況であり、ラベルは通常、ラベルの一方の面に特定の接着剤で貼り付けられ、一方、ラベルの反対側の面には接着剤がなく、通常は視認可能な情報が含まれている。
【0010】
把持装置は、試料容器を集合的に把持するように構成された複数の(たとえば2~8つの、特に4つの)フィンガーを備えている。フィンガーは、試料容器を集合的に解放するようにも構成されていてもよい。これにより、試料容器を把持すること、または保持すること、また、試料容器を解放することが可能となり、試料容器は通常、把持装置によって操作されるべきときに把持される。
【0011】
各フィンガーは、試料容器が把持装置によって把持される間に、試料容器に接触するように構成された把持面を備えている。各フィンガーは、把持面とは異なる非把持面を備えている。
【0012】
少なくとも1つのフィンガーの非把持面は、非把持面の突出した接触領域を減らすように少なくとも部分的に構造化されている。突出した接触領域が減少した構造化された非把持面により、ラベルとの接触面を形成する突出した接触領域が減少し、それに応じて接着力が低下するため、フィンガーの非把持面へのラベルの貼り付きの可能性が低下する。その結果、把持された試料容器に隣接して配置される、たとえば、高い保管密度を有するラックに配置された、試料容器のラベルのフィンガーへの貼り付きは、システムの誤動作を防ぐために最小限に抑えられる。
【0013】
本発明はさらに、試料容器を取り扱うための把持装置に関し、把持装置は、試料容器を集合的に把持するように構成された、複数のフィンガーを備え、それぞれのフィンガーは、試料容器が把持装置によって把持されている間に、試料容器に接触するように構成された把持面を備え、それぞれのフィンガーは、把持面とは異なる非把持面を備え、少なくとも1つのフィンガーの非把持面は、少なくとも部分的に波状とされている。
【0014】
これにより、製造が容易になり、典型的な用途に適していることが証明された。
【0015】
それぞれのフィンガーは、剛性を有するフィンガーとして具体化され得る。試料容器が把持装置によって把持されるとき、剛性を有するフィンガーはわずかに曲がってもよい。特に、試料容器が把持装置によって把持されるときに、剛性を有するフィンガーの曲げまたはビームのたわみは0.5mm未満である。剛性を有するフィンガーは、例えば、剛性を有するフィンガーに10ニュートンの値を有する力を加えると、剛性を有するフィンガーの曲げまたはビームのたわみが0.5mm未満となるように設計され得る。剛性を有するフィンガーの曲げ剛性の値は、1000000ニュートン*mm2より大きくてもよい。
【0016】
把持装置は、把持または解放操作中にフィンガーを動かすように構成された操作ヘッドを備えていてもよい。操作ヘッドは、フィンガーを横方向(laterally)にのみ、すなわち回転成分なしで動かすように構成されていてもよい。操作ヘッドは、フィンガーを曲げることなく、フィンガーを把持位置から解放位置に、またはその逆に動かすように構成されていてもよい。
【0017】
全てのフィンガーの非把持面は、部分的に構造化されていてもよいし、完全に構造化されていてもよい。全てのフィンガーの非把持面は、部分的に波状であってもよいし、全体が波状になっていてもよい。
【0018】
把持装置は、複数の(例えば、2~4つの)フィンガー支持部を備えていてもよく、2つのフィンガーが対応するフィンガー支持部に連結されていてもよい。フィンガー支持部およびフィンガーは、一体品として具体化されていてもよい。
【0019】
フィンガー支持部は、互いに対して移動可能であってもよい。これにより、フィンガーによる把持および解放操作が可能になる。
【0020】
一実施形態によれば、フィンガーの全ての把持面は共通の中心に向いている。通常、試料容器は、この共通の中心で把持されて保持され得る。
【0021】
一実施形態によれば、フィンガーのうち、いくつかまたは全ての把持面がサンドブラストされている。これにより、向上した試料容器の把持動作が可能となる。
【0022】
フィンガーの波状の表面は、一連の溝および/またはセレーションによって具体化されることが好ましい。溝および/またはセレーションは、長手方向および/または短手方向に延びていてもよい。
【0023】
溝および/またはセレーションは、0.5mm~5mmの範囲の溝幅を含むことができる。特に、溝の幅は1.4mmである。隣接する溝間の溝距離は、0.6~5.5mmの範囲とすることができる。特に、溝の距離は1.5mmである。溝および/またはセレーションの長さは、10mm~50mmの範囲、特に10mm~20mmの範囲であり得る。フィンガーの厚さは、1mm~8mmの範囲であり得、特に4mmであり得る。フィンガーの幅は、1mm~8mmの範囲であり得、特に3mmであり得る。フィンガーの長さは、25mm~75mmの範囲、特に30mm~60mmの範囲であり得る。フィンガーの把持面は、20mm2~80mm2の範囲、特に40mm2~60mm2の範囲であり得る。
【0024】
本発明はさらに、試料容器処理システムに関する。
【0025】
試料容器処理システムは、ラベルが貼り付けられた複数の試料容器を保持するための複数の(例えば1~1000)ラックを備えている。試料容器処理システムは、本発明による把持装置をさらに備える。
【0026】
ラックは、試料容器を保持および保管するために使用され得る。ラックは、試料容器を搬送するためのラック、または試料容器を検査室ステーションまたは冷蔵庫のような保管装置に供給するためのラックであってもよい。把持装置に関して、本明細書で説明したすべての実施形態および変形例を適用することができる。
【0027】
なお、試料容器は、試料容器処理システムの一部と見なされてもよいし、別のエンティティと見なされてもよい。
【0028】
一実施形態によれば、ラックは、試料容器用の複数(例えば、30~100)の支持部を備えている。支持部は、支持部のそれぞれの中心間の距離が1.5cm~2.5cmの間となるパターン、例えば規則的なパターンで配置されてもよい。この距離は2cmであってもよい。このような寸法は、高い密度でパックされた試料容器を提供する際に、典型的な用途に適していることが証明されている。また、このような寸法では、把持装置のフィンガーへのラベルの貼り付きが増加する可能性があり、それは本発明による把持装置によって大幅に低減できることが観察された。
【0029】
次に、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】試料容器処理システムの2つのフィンガーを示す図である。
【
図3】試料容器処理システムのラックの上部断面図である。
【
図5】試料容器処理システムを斜視図で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
【0032】
試料容器処理システム10は、ラック20を備えている。ラック20は、複数の試料容器30を保持するように構成されている。試料容器30は、典型的な試験室用管として具体化されている。
【0033】
試料容器30のいくつかまたは全てには、それぞれのラベル40が貼り付けられている。そのようなラベルは、たとえば、それぞれの試料容器30に含まれる試料の、種類、由来、および/または意図された処理ステップに関する情報を提供するために使用される。
【0034】
試料容器処理システム10は、把持装置50をさらに備えている。把持装置50は、従来の操作ヘッド55を備え、その下に全部で4つのフィンガー60が取り付けられている。各フィンガー60は、剛性を有するフィンガーとして具体化される。操作ヘッド55に関しては、関連する技術文献が参照される。
【0035】
フィンガー60は、それぞれが2つのフィンガー60を含む2つのグループにグループ化され、フィンガーの各グループは、それぞれのフィンガー支持部70に接続されている。フィンガー60の構成については、以下でさらに説明する。
【0036】
操作ヘッド55は、試料容器30を集合的に保持または解放するようにフィンガー60を移動させるように構成されている。フィンガー60は、
図2に関してさらに説明される。
【0037】
図2は、フィンガー支持部70によって共にグループ化された2つのフィンガー60の1のグループを示している。フィンガー支持部70は、操作ヘッド55に取り付けられている。
【0038】
各フィンガー60は、サンドブラストされたそれぞれの把持面62と、それぞれの非把持面64とを備えている。非把持面64は、把持面62を除いたフィンガー60の表面/把持面62がないフィンガー60の表面であってもよいし、例えば、試料容器30と接触しないフィンガー60の表面であってもよい。
【0039】
把持面62は、試料容器30が把持または保持されるときに、それぞれの試料容器30に接触するように構成されている。
【0040】
非把持面64は、一連の溝66およびセレーション68で部分的に波状にされている。
【0041】
図2に示されるように、右側において模式的詳細拡大図において、非把持面64の突出した接触領域69は、セレーション68の当接面によって形成される。この手段により、非把持面64は、ラベル40への接触領域を形成する突出した接触領域69を減らすように構成される。これにより、非把持面64とラベル40との間の貼り付きが抑制される。
【0042】
図3は、
図2においてA-Aで示される面に沿った試料容器30およびフィンガー60の典型的な構成を示している。
【0043】
示されるように、ラック20は、規則的なパターンで配置された複数の支持部22を含んでいる。各支持部22は、それぞれの試料容器30を受容し、保持することができる。図示されている試料容器30のうちの1つは、その上に貼り付けられたラベル40を有している。
【0044】
図3に示されるように、把持面62は、把持される試料容器30が位置する共通の中心を向いている。非把持面64は、共通の中心から離れる方向を向いている。
【0045】
図3は、試料容器30が把持されていない状態を示している。示されるように、隣接する試料容器30に貼り付けられたラベル40は、試料容器30との接触を部分的に失う可能性があり、したがって、フィンガー60の非把持面64と接触する可能性がある。
【0046】
非把持面64の波状部により、ラベル40は非把持面64に貼り付かずに、ラベル40が貼り付けられるべき試料容器30上に残る。
【0047】
図4は、フィンガー60が試料容器30を集合的に把持している状態を示している。ラベル40はその試料容器30上に残っている。フィンガー60は、例えば、フィンガー60によって保持された試料容器30を持ち上げて、試料容器キャリアまたは分析ステーションにロードすることができる。
【0048】
示された実施形態によって、従来技術の構成でしばしば見られる、ラベル40がその試料容器30から意図せずに取り除かれるという問題は、効果的に省かれる。
【0049】
図5は、試料容器処理システム10を斜視図で示している。見られるように、フィンガー60は試料容器30を把持し、特定の操作のためにそれを持ち上げることができる。