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特許7098643HIV/AIDSに対する強力な三環式P2リガンド含有HIVプロテアーゼ阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】HIV/AIDSに対する強力な三環式P2リガンド含有HIVプロテアーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/06 20060101AFI20220704BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 31/428 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 31/423 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 31/635 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
C07D493/06 CSP
A61P31/18
A61K31/352
A61K31/428
A61K31/423
A61K31/635
A61P43/00 111
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019545906
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 US2017060840
(87)【国際公開番号】W WO2018089621
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/419,850
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ アラン ケー.
(72)【発明者】
【氏名】満屋 裕明
(72)【発明者】
【氏名】ニャラパトラ プラサンス レディ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/175994(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1634922(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 493/06
A61P 31/18
A61K 31/352
A61K 31/428
A61K 31/423
A61K 31/635
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物:
式中、
nは0~3の整数であり;
Xは(-CHR5-)mまたは-O-であって、mは1または2であり、各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり;
X1、X2およびX3はそれぞれ独立して(-CHR5-)mであり;
R1はアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ヒドロキシまたはアミノであり;
R2はアルキルであり;
R3はアリール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾフラニルまたはインドリルであり;
R4はH、アルキルまたはアルコキシである。
【請求項2】
X1は(-CHR5-)mであって、mが2であり;
X2は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X3は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシである、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項3】
X1は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X2は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X3は(-CHR5-)mであって、mが2であり;
各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシである、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項4】
XがOである、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項5】
Xは(-CHR5-)mであって、mが1であり、R5はH、アルキルまたはアルコキシである、
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項6】
R4がHまたはアルコキシであることができる、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項7】
式(I)の化合物が下記式
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物であり、式中、n、R1、R2、R3およびR4は請求項1に定義したとおりである、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項8】
nが0である、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項9】
R2が無置換アルキルである、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項10】
R3がアリール、ベンゾチアゾールまたはベンゾオキサゾールである、請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項11】
R3がフェニルである、請求項10記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項12】
R3
である、請求項10記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項13】
R3
である、請求項12記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項14】
R3
であって、式中、
R6はアルキル、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキル ヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロ シクロアルキルアミノまたはヘテロシクロアミノであり;
X4はS、またはOである、
請求項10記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物。
【請求項15】
またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物である、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
請求項1記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、もしくは溶媒和物と1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項17】
式(I):
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、媒和物もしくはクラスレート:
式中、
nは0~3の整数であり;
Xは(-CHR5-)mまたは-O-であって、mは1または2であり、各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり;
X1、X2およびX3はそれぞれ独立して(-CHR5-)mであり;
R1はアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ヒドロキシまたはアミノであり;
R2はアルキルであり;
R3
であり、式中、R6はアルキル、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキル ヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロ シクロアルキルアミノまたはヘテロシクロアミノであり、R7はH、アルキル、シクロアルキルまたはアルキルアリールであり、
R4はH、アルキルまたはアルコキシである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所によって交付された助成金GM053386の下に政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
AIDSの流行は21世紀の医学における最も困難な課題の1つである。この疾患と戦う数多くの戦略のうち、HIVプロテアーゼ阻害剤(PI)を逆転写酵素阻害剤(RTI)と併用する高活性抗レトロウイルス療法(HAART)は、HIV感染症を管理するための第一選択処置であり続けている。そのような併用療法は生活の質を向上させ、HIVマネジメントを強化し、疾患の進行を停止させたが、この破壊的な疾患の処置には、これらの処置レジメンの毒性と複雑さをどちらも減らすことを含めて、数多くの課題が残っている。加えて、HIVの多剤耐性株を発生させている患者の数も増えつつある。そして、これらの株がさらに伝染しうることを示す十分な証拠もある。
【0003】
HAARTは工業先進国におけるAIDS流行に大きな影響を与えたが、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV1)の根絶は達成されておらず、その理由の1つは、血中および感染組織中に残存するウイルスリザーバーにある。AIDSの抗ウイルス治療の制約は、複雑なレジメン、薬剤耐性HIV-1変異体の発生、およびいくつかある固有の有害作用によっても、一層厳しくなる。さらに、HAARTの利益を最適にしようとする努力は、(i)薬物関連毒性、(ii)個体がAIDSを発症した時の免疫学的機能の部分的回復;(iii)生存期間延長の結果としてのさまざまながんの発生、(iv)HAARTを受けた個体における炎症の増悪、すなわち免疫再構築症候群(IRS);および(v)抗ウイルス療法のコストの増加を含む、いくつかの難題に直面してきた。HAARTのこのような制約は、薬剤耐性HIV-1変異体によって、一層厳しくなる。
【0004】
現在、HIV-1に対して実質的に特異的であるだけでなく、AIDSの治療における毒性または副作用もない抗レトロウイルス薬または抗レトロウイルス剤は不足している。
【発明の概要】
【0005】
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
列挙した請求項との関連において本明細書に開示する内容を説明するが、例示する内容によって、特許請求の範囲を本明細書に開示された内容に限定しようとする意図がないことは理解されるであろう。
【0007】
さまざまな態様は、式(I)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに向けられ、式中、nは0~3の整数であり; Xは(-CHR5-)mまたは-O-であって、mは1または2であり、各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり; X1、X2およびX3はそれぞれ独立して(-CHR5-)mであり; R1はアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ヒドロキシまたはアミノであり; R2はアルキルであり; R3はアリール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾフラニルまたはインドリルであり; R4はH、アルキルまたはアルコキシである。いくつかの例において、nは0である。加えて、(i)X1は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、X2およびX3はそれぞれ、mが1の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりであるか、または(ii)X1およびX2は、mが1の(-CHR5-)mであることができ、X3は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりである。(i)または(ii)のどちらの場合においても、XはOであることができる。加えて、(i)または(ii)のどちらの場合においても、Xは、mが1の(-CHR5-)mであることができ、R5は本明細書において定義するとおり(例えばH)である。上述の例のいずれにおいても、R4はHまたはアルコキシであることができる。
【0008】
他のさまざまな態様は、式(Ia)~(Ic)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに向けられ、式中、n、R1、R2、R3、R4およびR5は本明細書において定義するとおりであり、各R5は同じであるか異なることができる。
【0009】
本明細書では、
を含む、式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物のすべてのジアステレオマー、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートが考えられ、式中、n、R1、R2、R3およびR4。加えて、(i)X1は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、X2およびX3はそれぞれ、mが1の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりであるか、または(ii)X1およびX2は、mが1の(-CHR5-)mであることができ、X3は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりである。(i)または(ii)のどちらの場合においても、XはOであることができる。加えて、(i)または(ii)のどちらの場合においても、Xは、mが1の(-CHR5-)mであることができ、R5は本明細書において定義するとおり(例えばH)である。上述の例のいずれにおいても、R4はHまたはアルコキシであることができる。
【0010】
本明細書において開示する例のいずれにおいても、R3は無置換または置換アリールであることができる。R3は、例えばフェニルであることができる。しかしR3は置換アリールであることもできる。本明細書においてR3で表される置換アリール基は、例えば、
からなる群より選択されうる。
【0011】
本明細書において開示する例のいずれにおいても、R3はベンゾチアゾールまたはベンゾオキサゾール:
であり、式中、R6はアルキル(例えばC1~C6アルキル)、アルキルアミノ(例えばC1~C6アルキルアミノ)、シクロアルキルアミノ(例えばC3~C6シクロアルキルアミノ)、シクロアルキルヘテロシクロアミノ(例えばC3~C6シクロアルキル-C3~C6ヘテロシクロアミノ)、ヘテロシクロシクロアルキルアミノ(例えばC3~C6ヘテロシクロ-C3~C6シクロアルキルアミノ)またはヘテロシクロアミノ(例えばC3~C6ヘテロシクロアミノ)であり; X4はS、OまたはNR7であって、R7はH、アルキル、シクロアルキルまたはアルキルアリールである。X4はSまたはOであることができる。
【0012】
式(I)および(Ia)~(Ic)の化合物の例として、式1~24
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0013】
他のさまざまな態様は、なかんずく本明細書に記載するさまざまな化合物のビルディングブロックとして役立ちうる式(II)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに向けられ、式中、X、X1~X3およびR4は本明細書において定義され、X5は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、C(O)R、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2O(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2O(R)C(O)OR、(CH2)0~2O(R)C(O)ORまたは(CH2)0~2N(R)N(R)2からなる群より選択され、各Rは、独立して、水素、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであることができ、任意のアルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルまたは1つの窒素原子もしくは隣接する複数の窒素原子に結合した2つのR基は、該1つまたは複数の窒素原子と一緒になってヘテロシクリルを形成することができる。加えて、(i)X1は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、X2およびX3はそれぞれ、mが1の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりであるか、または(ii)X1およびX2は、mが1の(-CHR5-)mであり、X3は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりである。(i)または(ii)のどちらの場合においても、XはOであることができる。加えて、(i)または(ii)のどちらの場合においても、Xは、mが1であり、R5が本明細書において定義するとおり(例えばH)である、(-CHR5-)mであることができる。上述の例のいずれにおいても、R4はHまたはアルコキシであることができる。
【0014】
他のさまざまな態様は、式(IIa~IIc)
の化合物に向けられ、式中、R4、R5およびX5は本明細書において定義される。
【0015】
本明細書では、下記式
の化合物を含む、式(II)および(IIa)~(IIc)の化合物のすべてのジアステレオマーが考えられ、式中、X、X1~X3、R4およびX5は本明細書において定義するとおりである。加えて、(i)X1は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、X2およびX3はそれぞれ、mが1の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりであるか、(ii)X1およびX2は、mが1の(-CHR5-)mであることができ、X3は、mが2の(-CHR5-)mであることができ、各R5は同じであるか異なって、本明細書において定義するとおりである。(i)または(ii)のどちらの場合においても、XはOであることができる。加えて、(i)または(ii)のどちらの場合においても、Xは、mが1であり、R5が本明細書において定義するとおり(例えばH)である、(-CHR5-)mであることができる。上述の例のいずれにおいても、R4はHまたはアルコキシであることができる。
【0016】
さまざまな態様では、本明細書に記載するさまざまな態様の1種または複数種の化合物(例えば式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)、および1~24の化合物)と1種または複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤もしくはそれらの組み合わせとを含む薬学的組成物も考えられる。「薬学的組成物」は、対象(例えば哺乳動物)への投与に適した化学的または生物学的組成物を指す。そのような組成物は、限定するわけではないが、口腔粘膜、皮膚、皮膚上、硬膜外、注入、吸入、動脈内、心臓内、脳室内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、脊髄内、髄腔内、静脈内、経口、非経口、肺、浣腸剤または坐剤による経直腸、皮下、真皮下、舌下、経皮、および経粘膜などといった、いくつかある経路の1つまたは複数による投与のために特別に製剤化されうる。加えて、投与は、カプセル剤、滴剤、フォーム剤、ゲル剤、ガム剤、注射剤、溶液剤、貼付剤、丸剤、多孔性小袋(porous pouch)、粉剤、錠剤、または他の適切な投与手段を使って行うことができる。
【0017】
「薬学的賦形剤」または「薬学的に許容される賦形剤」は(時には液状の)担体を含み、その中に活性治療作用物質が調合される。一般に賦形剤は、製剤に、化学的および/または生物学的安定性ならびに放出特徴は与えうるが、薬理学的活性はなにも与えない。適切な製剤の例は、例えばRemington, The Science And Practice of Pharmacy, 20th Edition,(Gennaro, A. R., Chief Editor), Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000に見いだすことができ、この文献は、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書にいう「薬学的に許容される担体」または「賦形剤」には、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤が含まれる。一態様において、担体は非経口投与に適している。あるいは、担体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、舌下、または経口投与に適しうる。薬学的に許容される担体として、滅菌水溶液または滅菌水性分散液、および滅菌注射用溶液または滅菌注射用分散液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。薬学的活性物質のためのそのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野においては周知である。従来の媒質または作用物質は、それらが活性化合物と不適合でない限り、本発明の薬学的組成物におけるその使用が考えられる。組成物には補助活性化合物も組み込むことができる。
【0019】
薬学的組成物は滅菌されており、製造条件下および貯蔵条件下で安定でありうる。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコール)、ならびにそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散系の場合は要求される粒径の維持、および界面活性剤の使用などによって維持することができる。
【0020】
いくつかの場合、薬学的組成物には等張化剤、例えば糖類、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることができる。注射用組成物の長時間にわたる吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンなどを組成物中に含めることによって引き起こすことができる。そのうえ、本明細書に記載する化合物は、持効性製剤中に、例えば遅放性ポリマーを含む組成物中に、調合することができる。活性化合物は、急速な放出から化合物を保護することになる担体を使って、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化送達システムなどといった放出制御製剤を使って、調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、およびポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマー(PLG)などの生分解性生体適合性ポリマーを使用しうる。そのような製剤を調製するための方法は当業者には数多く知られている。
【0021】
本明細書では経口投与剤形も考えられる。薬学的組成物は、カプセル剤(硬または軟)、錠剤(フィルムコート錠、腸溶性錠または非コート錠)、散剤または顆粒剤(コート剤もしくは非コート剤)または液剤(溶液剤もしくは懸濁剤)として経口投与しうる。製剤は、都合がよいように、当技術分野において周知のどの方法で調製してもよい。薬学的組成物は、1種または複数種の適切な製造助剤または賦形剤、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、希釈剤、流動剤、緩衝剤、保湿剤、保存剤、着色剤、甘味料、香料、および薬学的に適合する担体を含みうる。
【0022】
具陳する態様のそれぞれについて、当技術分野において公知のさまざまな剤形によって、化合物を投与することができる。当業者に公知の生物学的に許容される任意の剤形およびそれらの組み合わせが考えられる。そのような剤形の例には、咀嚼錠、速溶錠、発泡錠、再構成用散剤、エリキシル剤、液剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、多層錠剤、二層錠剤、カプセル剤、軟ゼラチンカプセル剤、硬ゼラチンカプセル剤、カプレット、口中錠、チュアブル口中錠、ビーズ剤、散剤、ガム剤、顆粒剤、粒剤、微粒子剤、分散性顆粒剤、カシェ剤、潅注液、坐剤、クリーム剤、外用剤、吸入剤、エアロゾル吸入剤、貼付剤、粒子吸入剤、インプラント、デポーインプラント、経口摂取剤(ingestibles)、注射剤(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内注射剤を含む)、注入剤、およびそれらの組み合わせがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0023】
混合によって含めることができる他の化合物は、例えば医学的に不活性な成分(例えば固形および液状の希釈剤)、例えば錠剤またはカプセル剤用のラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、デンプンまたはリン酸カルシウム、軟カプセル剤用のオリーブ油またはオレイン酸エチル、および懸濁剤または乳剤用の水または植物油;シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコールなどの潤滑剤;コロイド状粘土などのゲル化剤;トラガカントゴムまたはアルギン酸ナトリウムなどの増粘剤、デンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンなどの結合剤;デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウムなどの崩壊剤;発泡混合物;染料;甘味料;レシチン、ポリソルベートまたはラウリル硫酸などの湿潤剤;および他の治療上許容される補助成分、例えばそのような製剤用の公知の添加剤である保水剤、保存剤、緩衝剤および酸化防止剤である。
【0024】
経口投与用の分散液は、シロップ剤、乳剤、溶液剤、または懸濁剤であることができる。シロップ剤は、担体として、例えばサッカロースまたはサッカロースとグリセロールおよび/もしくはマンニトールおよび/もしくはソルビトールを含有することができる。懸濁剤および乳剤は、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有することができる。
【0025】
さまざまな態様による治療組成物中の活性化合物の量は、個体の疾患状態、年齢、性別、体重、病歴、リスク因子、疾患に対する素因、投与経路、既存の処置レジメン(例えば他の薬物療法との考えうる相互作用)、および体重などといった因子に応じて変動しうる。投薬レジメンは最適な治療応答が得られるように調節しうる。例えば単回ボーラス投与を行ってもよいし、ある期間にわたって分割量を数回投与してもよいし、治療状況の要求に応じて、用量を比例的に増減してもよい。
【0026】
本明細書にいう「投薬単位形(dosage unit form)」とは、処置される哺乳動物対照への単位投薬量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された前もって決定された分量の活性化合物を必要な薬学的担体と共に含有する。本発明の投薬単位形の仕様は、活性化合物に特有の特徴および達成しようとする特定治療効果、ならびに個体における感受性の処置のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の制約によって決まり、それらに直接依存する。本明細書に記載するさまざまな態様の化合物またはその適当な薬学的組成物が有効である哺乳動物(例えばヒト)における状態の処置に治療的に使用する場合は、本明細書に記載するさまざまな態様の化合物を有効量で投与することができる。本発明に適した投薬量は、組成物、薬学的組成物、または本明細書に記載する他の任意の組成物でありうる。
【0027】
投薬量は、1日に1回、2回、または3回投与されることができるが、それより頻繁な投与間隔も可能である。投薬量は、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、および/または7日ごと(週に1回)に投与してもよい。ある態様では、投薬量を、最長30日(30日を含む)にわたって、好ましくは7~10日にわたって、毎日投与しうる。別の一態様では、投薬量を10日にわたって1日2回投与しうる。患者が慢性疾患または慢性状態の処置を必要とする場合は、徴候および/または症状が続く限り、投薬量を投与することができる。患者は「維持処置」を必要とすることもあり、その場合、患者は数ヶ月、数年または生存中はずっと投薬を受けていく。加えて、本発明の組成物は、症状の再発予防を達成するための組成物であってもよい。例えば投薬量は、リスクがある患者における症状の発生を防止するために、特に無症候性の患者に、1日に1回または2回投与しうる。
【0028】
本明細書に記載する組成物は、次に挙げるどの経路でも投与しうる:口腔粘膜、皮膚上、硬膜外、注入、吸入、動脈内、心臓内、脳室内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、脊髄内、髄腔内、静脈内、経口、非経口、肺、浣腸剤または坐剤による経直腸、皮下、真皮下、舌下、経皮、および経粘膜。好ましい投与経路は口腔粘膜および経口である。投与は、局所的であることができ、その場合は、組成物が疾患(例えば炎症)の部位の近くに、限局的に、その部位に、その部位付近に、またはその部位の近傍に直接投与される。また、投与は全身性であることもでき、その場合は、組成物が患者に与えられ、広く体じゅうを通過し、その結果、疾患の部位に到達する。局所投与は、疾患を包含し、かつ/または疾患に冒されており、かつ/または疾患の徴候および/または症状が活動性であるか、疾患の徴候および/または症状が生じる可能性がある、細胞、組織、器官、および/または器官系に投与することができる。投与は局所効果を持つ外用であることができ、組成物はその作用が望まれる場所に直接塗布される。投与は経腸投与であることができ、その場合、所望の効果は全身性(非局所性)であって、組成物は消化管を通して与えられる。投与は非経口投与であることができ、その場合は、所望の効果は全身性であって、組成物は消化管以外の経路によって与えられる。
【0029】
さまざまな態様では、治療有効量の1種または複数種の本明細書に記載するさまざまな態様の化合物(例えば式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)の化合物、および化合物1~24)を含む組成物が考えられる。いくつかの態様において、組成物は、HIV(例えばHIV-1)感染症またはAIDSを処置するための方法であって、治療有効量の1種または複数種の任意の上記請求項の化合物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む方法において有用である。さまざまな態様では、HIV感染症またはAIDSの緩和を必要とする患者を処置するための医薬として使用するための、式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)の化合物、および化合物1~24が考えられる。
【0030】
本明細書において使用する用語「治療有効量」とは、組織系、動物またはヒトにおいて研究者、獣医、医師または他の臨床家が求めている生物学的または医学的応答(処置される疾患または障害の症状の軽減を含む)を引き出す、1種または複数種の本明細書に記載するさまざまな態様の化合物(例えば式(I)、(Ia)~(Ic)、(II)の化合物、および化合物1~24)の量を指す。いくつかの態様において、治療有効量は、任意の医学的処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で疾患または疾患の症状を処置しまたは軽減しうる量である。ただし、本明細書に記載する化合物および組成物の総1日量は、担当医が妥当な医学的判断の範囲内で決定しうると理解すべきである。どの特定患者についても、具体的な治療有効量レベルは、処置される状態およびその状態の重症度;使用する具体的化合物の活性;使用する具体的組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路、使用する具体的化合物の排泄速度;処置の継続時間;使用する具体的化合物と併用されるまたは同時に使用される薬物などといった、研究者、獣医、医師または他の臨床家に周知の因子を含む、さまざまな因子に依存するであろう。1種または複数種の本明細書に記載する化合物の投与中に生じるかも知れないあらゆる毒性または他の望ましくない副作用に照らして治療有効量を選択できることも理解される。
【0031】
いくつかの態様において、本明細書に記載するさまざまな態様の化合物は、約1fM~約200nM(例えば約100fM~約200nM、約100fM~約100pM、約250fM~約100pM、約500fM~約5pM、約5pM~約100pM、約50pM~約250pM、約500pM~約100nMまたは約300pM~約75nM)のHIV-1プロテアーゼ阻害定数(Ki)を有することができる。
【0032】
別の態様において、本明細書に記載するさまざまな態様の化合物は、インビトロで、野生型実験室株HIV-1LAIに対して、50%阻害濃度(IC50)が約1fM~約200nM(例えば約100fM~約200nM、約100fM~約100pM、約250fM~約100pM、約500fM~約5pM、約10pM~約50nM、約10pM~約500pM、約100pM~約750pM、約500pM~約1nMまたは約500pM~約50nM)である抗ウイルス活性を有する。
【0033】
さらに別の態様において、本明細書に記載するさまざまな態様の化合物は、約200fM~約100nM(例えば約200fM~約600fM、約200fM~約50pM、約500fM~約500pM、約300fM~約1pM)のダルナビル抵抗性HIV-1変異体(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)抗ウイルスIC50を有する。さらなる別の態様において、本明細書に記載するさまざまな態様の化合物は、約50pM~約50nM(例えば約100pM~約50nMまたは約500pM~約10nM)のダルナビル抵抗性HIV-1変異体(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)IC50を有する。さらに別の態様において、本明細書に記載するさまざまな態様の化合物は、約1nM~約100nM(例えば約10nM~約75nMまたは約10nM~約75nM)のダルナビル抵抗性HIV-1プロテアーゼ(例えばNL4-3R、DRVRP20、DRVRP30、およびDRVRP51)抗ウイルスIC50を有する。
【0034】
範囲の形式で表される値は、その範囲の限界値として明示的に具陳された数値だけでなく、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲も、各数値および部分範囲が明示的に具陳されたかのように、すべて含まれるものと、柔軟に解釈されるべきである。例えば「約0.1%~約5%」または「約0.1%~5%」という範囲は、約0.1%~約5%を含むだけではなく、表示した範囲内の個々の値(例えば1%、2%、3%、および4%)ならびに表示した範囲内の部分範囲(例えば0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈すべきである。「約X~Y」という言明は、別段の表示がある場合を除き、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に「約X、Y、または約Z」という言明は、別段の表示がある場合を除き、「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を有する。
【0035】
この文書において、用語「1つの(a)」、「ある(an)」または「その(the)」は、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、1つまたは複数を包含するために使用される。用語「または」は、別段の表示がある場合を除き、非排他的な「または」を指すために使用される。加えて、本明細書において使用される表現法または用語法は、別段の定義がなければ、説明を目的としているに過ぎず、限定を目的としていないと理解すべきである。セクション見出しの使用はいずれも、本文書の解釈を助けることを意図しており、限定と解釈してはならない。さらに、セクション見出しに関連する情報は、その特定セクション内にもその特定セクション外にも見いだされうる。さらにまた、この文書において言及する刊行物、特許、および特許文書は、あたかも個別に参照により組み込まれたかのように、参照によりそのまま本明細書に組み込まれる。この文書と、そうして参照により組み込まれた文書との間に不一致があった場合、組み込まれた参考文献における使用法は、この文書の使用法を補うものと見なされるべきであり、両立しえない不一致については、この文書における使用法が優先される。
【0036】
本明細書に記載する方法において、工程は、時間的順序または作業順序が明示的に具陳されている場合を除き、本発明の原理から逸脱することなく任意の順番で実行することができる。さらにまた、指定された工程は、明示的な請求項の文言が、それらは別々に実行されると具陳していない限り、同時に実行することもできる。例えば、Xを行うという請求項の工程と、Yを行うという請求項の工程とは、単一の作業内で同時に行うことができ、その結果生じるプロセスは前記請求項の字義どおりの範囲内に包含されるであろう。
【0037】
本明細書において使用する用語「約」は、言明された値の、または言明された範囲の限界値の、例えば10%以内、5%以内、または1%以内の値または範囲の変動率を許容することができる。
【0038】
本明細書において使用する用語「実質的に」とは、~の大部分、または主として、例えば少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、または少なくとも約99.999%もしくはそれ以上の場合などを指す。
【0039】
本明細書において使用する用語「置換(された)」または「置換基」とは、分子または別の基に対して(例えばアリル基またはアルキル基に対して)置換することができる基または置換されている基を指す。置換基の例には次に挙げるものがあるが、それらに限定されるわけではない:ハロゲン(例えばF、Cl、Br、およびI)、OR、OC(O)N(R)2、CN、NO、NO2、ONO2、アジド、CF3、OCF3、R、O(オキソ)、S(チオノ)、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R)2、SR、SOR、SO2R、SO2N(R)2、SO3R、-(CH2)0~2P(O)(OR)2、C(O)R、C(O)C(O)R、C(O)CH2C(O)R、C(S)R、C(O)OR、OC(O)R、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)C(O)OR、(CH2)0~2N(R)N(R)2、N(R)N(R)C(O)R、N(R)N(R)C(O)OR、N(R)N(R)CON(R)2、N(R)SO2R、N(R)SO2N(R)2、N(R)C(O)OR、N(R)C(O)R、N(R)C(S)R、N(R)C(O)N(R)2、N(R)C(S)N(R)2、N(COR)COR、N(OR)R、C(=NH)N(R)2、C(O)N(OR)R、またはC(=NOR)R、式中、各Rは独立して水素、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであることができ、任意のアルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルまたは1つの窒素原子もしくは隣接する複数の窒素原子に結合した2つのR基は、該1つまたは複数の窒素原子と一緒になってヘテロシクリルを形成することができ、これは、一置換されるか、または独立して多置換されうる。
【0040】
本明細書において使用する用語「アルキル」とは、1~40個の炭素原子(C1~C40)、1~約20個の炭素原子(C1~C20)、1~12個の炭素(C1~C12)、1~8個の炭素原子(C1~C8)、またはいくつかの態様では、1~6個の炭素原子(C1~C6)を有する置換または無置換の直鎖および分岐アルキル基およびシクロアルキル基を指す。直鎖アルキル基の例には、1~8個の炭素原子を持つもの、例えばメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチル基がある。分岐アルキル基の例には、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、および2,2-ジメチルプロピル基があるが、それらに限定されるわけではない。本明細書において使用する用語「アルキル」は、n-アルキル、イソアルキル、およびアンテイソアルキル基ならびに他の分岐鎖型アルキルを包含する。代表的な置換アルキル基は、本明細書において列挙する基のいずれか、例えばアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、ニトロ、チオ、アルコキシ、およびハロゲン基により、1回または複数回置換されうる。
【0041】
本明細書において使用する用語「シクロアルキル」とは、置換または無置換の環状アルキル基、例えば限定するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル基などを指す。いくつかの態様においてシクロアルキル基は3個から約8~12個までの環原子を有しうるが、別の態様では、環炭素原子の数は3個から4、5、6、または7個までの範囲にある。いくつかの態様において、シクロアルキル基は3~6個の炭素原子(C3~C6)を有しうる。シクロアルキル基はさらに多環式シクロアルキル基、例えば限定するわけではないが、ノルボルニル、アダマンチル、ボルニル、カンフェニル、イソカンフェニル、およびカレニル基、ならびに限定するわけではないが、デカリニルなどの縮合環を包含する。
【0042】
本明細書において使用する用語「シクロアルキルアルキル」とは、本明細書において定義するアルキル基の水素または炭素結合が本明細書において定義するシクロアルキル基で置き換えられている、本明細書において定義する置換または無置換アルキル基を指す。代表的なシクロアルキルアルキル基にはシクロペンチルアルキルがあるが、それに限定されるわけではない。
【0043】
本明細書において使用する用語「アルキルシクロアルキル」とは、本明細書において定義するシクロアルキル基の水素が、本明細書において定義するアルキル基への結合で置き換えられている本明細書において定義する置換または無置換シクロアルキル基を指す。代表的なアルキルシクロアルキル基にはアルキルシクロプロピルがあるが、それに限定されるわけではない。
【0044】
本明細書において使用する用語「アシル」とは、カルボニル部分を含有する基であって、カルボニル炭素原子を介して結合している基を指す。カルボニル炭素原子は別の炭素原子(これは、置換または無置換アルキル、アリール、アラルキル シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル基などの一部であることができる)にも結合している。カルボニル炭素原子が水素に結合している特別な例では、この基は、本明細書において定義されるアシル基の1つ、「ホルミル」基である。アシル基は、カルボニル基に結合した0個から約12~40、6~10、1~5または2~5個までの追加炭素原子を含みうる。アクリロイル基はアシル基の一例である。アシル基は、本明細書における意味では、ヘテロ原子も含みうる。ニコチノイル基(ピリジル-3-カルボニル)は、本明細書における意味でのアシル基の一例である。他の例には、アセチル、ベンゾイル、フェニルアセチル、ピリジルアセチル、シンナモイル、およびアクリロイル基などがある。カルボニル炭素原子に結合している炭素原子を含有する基がハロゲンを含有する場合、その基は「ハロアシル」基と呼ばれる。一例はトリフルオロアセチル基である。
【0045】
用語「ヘテロシクリルカルボニル」とは、置換または無置換ヘテロシクリル基に結合しているアシル基の一例であり、用語「ヘテロシクリル」とは、本明細書において定義される通りである。ヘテロシクリルカルボニル基の一例はプロリル基であり、この場合、プロリル基はD-プロリル基またはL-プロリル基であることができる。
【0046】
本明細書において使用する用語「アリール」とは、環内にヘテロ原子を含有しない置換または無置換の環状芳香族炭化水素を指す。したがってアリール基には、フェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニル、インダセニル、フルオレニル、フェナントレニル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、クリセニル、ビフェニレニル、アントラセニル、およびナフチル基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、アリール基は、その基の環部分に約6~約14個の炭素(C6~C14)または6~10個の炭素原子(C6~C10)を含有する。アリール基は無置換であってもよいし、本明細書において定義するように置換されていてもよい。代表的な置換アリール基は、モノ置換されているか、または2回以上置換されていてよく、2、3、4、5、もしくは6置換フェニルまたは2~8置換ナフチル基でありうるが、それらに限定されるわけではなく、それらの置換基は、例えば炭素基または非炭素基、例えば本明細書において列挙するものでありうる。
【0047】
本明細書において使用する用語「アラルキル」および「アリールアルキル」とは、アルキル基の水素または炭素結合が本明細書において定義するアリール基への結合で置き換えられている本明細書において定義するアルキル基を指す。代表的なアラルキル基には、ベンジル基およびフェニルエチル基ならびに縮合(シクロアルキルアリール)アルキル基、例えば4-エチル-インダニルがある。アラルケニル基は、アルキル基の水素または炭素結合が本明細書において定義するアリール基で置き換えられている本明細書において定義するアルケニル基である。
【0048】
本明細書において使用する用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロシクロ」とは、3個以上の環原子を含有し、そのうちの1つまたは複数(例えば1、2、または3個)がヘテロ原子、例えば限定するわけではないが、N、O、およびSである、置換または無置換の芳香環および非芳香環化合物を指す。したがってヘテロシクリルは、シクロヘテロアルキルまたはヘテロアリールであるか、多環式であるなら、それらの任意の組み合わせであることができる。いくつかの態様において、ヘテロシクリル基は3~約20個の環原子を含み、一方、別のヘテロシクリル基は3~約15個の環原子を含む。いくつかの態様において、ヘテロシクリル基は、3~8個の炭素原子(C3~C8)、3~6個の炭素原子(C3~C6)、3~5個の炭素原子(C3~C5)または6~8個の炭素原子(C6~C8)を含むヘテロシクリル基を含む。C2-ヘテロシクリルと指定されるヘテロシクリル基は、2個の炭素原子と3個のヘテロ原子とを持つ5員環、2個の炭素原子と4個のヘテロ原子都を含む6員環などであることができる。同様に、C4-ヘテロシクリルは、1個のヘテロ原子を持つ5員環、2個のヘテロ原子を持つ6員環などであることができる。炭素原子の数とヘテロ原子の数の和は環原子の総数に等しい。ヘテロシクリル環は1つまたは複数の二重結合も含みうる。ヘテロアリール環はヘテロシクリル機の一態様である。「ヘテロシクリル基」という語句には縮合環種が含まれ、これには縮合芳香族基および縮合非芳香族基を含むものが包含される。代表的なヘテロシクリル基には、ピロリジニル、アゼチジニル、ピペリジニル(piperidynyl)、ピペラジニル、モルホリニル、クロマニル、インドリノニル、イソインドリノニル、フラニル、ピロリジニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、チオフェニル、テトラヒドロフラニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、トリアジオリル(triazyolyl)、テトラゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリニル(benzthiazolinyl)、およびベンゾイミダゾリニル基があるが、それらに限定されるわけではない。インドリノニル基の例には、一般式:
を有する基があり、式中、Rは本明細書において定義するとおりである。イソインドリノニル基の例には、一般式:
を有する基があり、式中、Rは本明細書において定義するとおりである。ベンゾオキサゾリニル基の例には、一般式:
を有する基があり、式中、Rは本明細書において定義するとおりである。ベンゾチアゾリニル基の例には、一般式:
を有する基があり、式中、Rは本明細書において定義するとおりである。いくつかの態様において、ベンゾオキサゾリニル基およびベンゾチアゾリニル基中の基Rは、N(R)2基である。いくつかの態様において、各Rは水素またはアルキルであり、前記アルキル基は置換されているか、または無置換である。いくつかの態様において、前記アルキル基はヘテロシクリル基(例えばピロリジニル基)で置換されている。
【0049】
本明細書において使用する用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、本明細書において定義するアルキル基の水素または炭素原子が本明細書において定義するヘテロシクリル基への結合で置き換えられている本明細書において定義するアルキル基を指す。代表的なヘテロシクリルアルキル基には、フラン-2-イルメチル、フラン-3-イルメチル、ピリジン-3-イルメチル、テトラヒドロフラン-2-イルメチル、およびインドール-2-イルプロピルがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0050】
本明細書において使用する用語「ヘテロシクリルアルコキシ」とは、本明細書において定義するアルキル基の水素または炭素原子が本明細書において定義するヘテロシクリル基への結合で置き換えられており、かつ前記アルキル基が酸素に取り付けられている本明細書において定義するアルキル基を指す。代表的なヘテロシクリルアルコキシ基には、-O-(CH2)qヘテロシクリル(式中、qは1~5の整数である)があるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、ヘテロシクリルアルコキシ基は、-O-CH2CH2-モルホリンなどの-O-(CH2)qモルホリニルを包含する。
【0051】
本明細書において使用する用語「ヘテロアリールアルキル」とは、アルキル基の水素または炭素原子が本明細書において定義するヘテロアリール基への結合で置き換えられている本明細書において定義するアルキル基を指す。
【0052】
本明細書において使用する用語「アルコキシ」とは、本明細書において定義するシクロアルキル基を含むアルキル基に接続された、酸素原子を指す。線状アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどがあるが、それらに限定されるわけではない。分岐アルコキシの例には、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペンチルオキシ、イソヘキシルオキシなどがあるが、それらに限定されるわけではない。環状アルコキシの例には、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどがあるが、それらに限定されるわけではない。アルコキシ基は、酸素原子に結合した1個から約12~20個までまたは約12~40個までの炭素原子を含むことができ、さらに二重結合または三重結合を含むことができ、ヘテロ原子も含むことができる。例えばアリルオキシ基は、本明細書における意味でのアルコキシ基である。メトキシエトキシ基も本明細書における意味でのアルコキシ基であり、ある構造の隣接する2つの原子がメチレンジオキシ基で置換されている場合には、そのメチレンジオキシ基もそうである。
【0053】
本明細書において使用する用語「アミン」とは、例えばN(基)3という式を有し、式中の各基は独立してHまたはH以外、例えばアルキル、アリールなどであることができる、1級、2級、および3級アミンを指す。アミンには、R-NH2、例えばアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン; R2NH(式中、Rは本明細書において定義される)、例えばジアルキルアミン、ジアリールアミン、アラルキルアミン、ヘテロシクリルアミンなど;およびR3N(式中、各Rは独立して選択される)、例えばトリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、トリアリールアミンなどが包含されるが、それらに限定されるわけではない。用語「アミン」は、本明細書にいうアンモニウムイオンも包含する。
【0054】
本明細書において使用する用語「アミノ基」とは、-NH2、-NHR、-NR2、-NR3 の形態の置換基(式中、各Rは本明細書において定義される)、およびプロトン化されえない-NR3 を除くそれぞれのプロトン化型を指す。したがって、アミノ基で置換された化合物はいずれも、アミンであると考えることができる。「アミノ基」は、本明細書における意味で、1級、2級、3級、または4級アミノ基であることができる。「アルキルアミノ」基には、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、およびトリアルキルアミノ基が含まれる。
【0055】
「アルキルアミノ」の例は-NH-アルキルおよび-N(アルキル)2である。
【0056】
「シクロアルキルアミノ」基の例は-NH-シクロアルキルおよび-N(シクロアルキル)2である。
【0057】
「シクロアルキルヘテロシクロアミノ」基の例は-NH-(ヘテロシクロシクロアルキル)であり、この場合、ヘテロシクロ基は窒素に取り付けられ、シクロアルキル基はヘテロシクロ基に取り付けられている。
【0058】
「ヘテロシクロシクロアミノ」基の例は-NH-(シクロアルキル複素環)であり、この場合、シクロアルキル基は窒素に取り付けられ、ヘテロシクロ基はシクロアルキル基に取り付けられている。
【0059】
本明細書において使用する用語「ハロ」、「ハロゲン」または「ハライド」基とは、単独で、または別の置換基の一部として、別段の言明がある場合を除き、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
【0060】
本明細書において使用する用語「ハロアルキル」基は、モノハロアルキル基、ポリハロアルキル基(この場合、ハロ原子はすべて同じであっても、異なっていてもよい)、およびすべての水素原子がフルオロなどのハロゲン原子で置き換えられているパーハロアルキル基を包含する。ハロアルキルの例には、トリフルオロメチル、1,1-ジクロロエチル、1,2-ジクロロエチル、1,3-ジブロモ-3,3-ジフルオロプロピル、パーフルオロブチル、-CF(CH3)2などがある。
【0061】
本明細書において使用する用語「塩」および「薬学的に許容される塩」とは、本明細書に開示する化合物の誘導体であって、親化合物がその酸塩または塩基塩の形成によって修飾されているものを指す。薬学的に許容される塩の例には、アミンなどの塩基性基の鉱酸塩または有機酸塩、およびカルボン酸などの酸性基のアルカリ塩または有機塩があるが、それらに限定されるわけではない。薬学的に許容される塩には、例えば非毒性の無機酸または有機酸から形成される、親化合物の従来の非毒性塩または4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、そのような従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸などの無機酸から誘導されるもの、および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、およびイセチオン酸などの有機酸から調製される塩がある。
【0062】
薬学的に許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。いくつかの例において、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸型または遊離塩基型を、化学量論量の適当な塩基または酸と、水中もしくは有機溶媒中またはそれら2つの混合物中で反応させることによって、調製することができ、一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒質が好ましい。適切な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に見いだされ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
用語「溶媒和物」とは、非共有結合的分子間力によって結合した化学量論量または非化学量論量の溶媒をさらに含む化合物またはその塩を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0064】
用語「プロドラッグ」とは、生物学的条件下(インビトロまたはインビボ)で、加水分解し、酸化し、または他の形で反応して活性化合物、特に本発明の化合物を与える、化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例には、生物加水分解性部分、例えば生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバメート、生物加水分解性カーボネート、生物加水分解性ウレイド、および生物加水分解性ホスフェート類似体を含む本発明の化合物の誘導体および代謝産物があるが、それらに限定されるわけではない。カルボキシル官能基を持つ化合物の具体的プロドラッグは、そのカルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在するどのカルボン酸部分のエステル化によっても、都合よく形成される。プロドラッグは、典型的には、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed.(Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)およびDesign and Application of Prodrugs(H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers GmbH)に記載されている方法など、周知の方法によって調製することができる。
【実施例
【0065】
例示のために提供される以下の実施例を参照することにより、本発明をより良く理解することができる。本発明は本明細書に記載する実施例に限定されない。
【0066】
スキーム1:三環式リガンドの合成:
【0067】
実験手順:
trans-3-ブロモ-2-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(26):
撹拌したオレフィン25(5.39mL、59.44mmol)およびプロパルギルアルコール(10.4mL、178.32mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、NBS(11.63g、65.38mmol)を、アルゴン雰囲気下、-20℃で、0.5時間かけて少しずつ加えた。反応混合物を-20℃で2時間撹拌し、23℃でさらに15時間撹拌した。この期間後に、水の添加によって反応混合物をクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。抽出物を飽和NaHSO3水溶液、K2CO3水溶液、水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の15%Et2O)で精製することで、26(12.7g、98%)を得た。
【0068】
6-(プロパ-2-イン-1-イルオキシ)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン(27):
26(10g、45.65mmol)とDBU(34mL、228.25mmol)の混合物を、アルゴン雰囲気下、110℃で5時間撹拌した。この期間後に、反応混合物を冷却し、100mLの無水エーテルを加え、1時間撹拌した。セライトのプラグで混合物を濾過し、エーテルで洗浄し、冷浴を使って減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ペンタン中の15%Et2O)で精製することで、27(5.36g、85%)を揮発性の液体として得た。
【0069】
2a1,5,6,7a-テトラヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4(4aH)-オン(28):
撹拌した27(1.57g、11.4mmol)のジクロロメタン(40mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、23℃で、Co2(CO)8(4.3g、12.5mmol)を加えた。反応混合物を23℃で1時間撹拌した。この期間後に、上記混合物に0℃でNMO(8g、68.4mmol)を加え、反応混合物を23℃で3時間撹拌した。セライトのプラグで混合物を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の40%EtOAc)で精製することで、28(380mg、20%)を得た。
【0070】
ヘキサヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4(4aH)-オン(29):
撹拌した28(165mg、0.99mmol)のMeOH(5mL)溶液に、アルゴン下、23℃で、HCOONH4(626mg、9.93mmol)および10%Pd/C(25mg)を加えた。反応混合物を15分間還流した。この期間後に、反応混合物を23℃に冷却し、セライトのプラグで濾過した。MeOHを減圧下で除去した。粗残渣にクロロホルムを加えて過剰のHCOONH4を析出させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の45%EtOAc)で精製することで、29(128mg、77%)を得た。
【0071】
オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-オール(30):
撹拌した29(88mg、0.52mmol)のMeOH(5mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、0℃で、NaBH4(24mg、0.63mmol)を加えた。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。この期間後に、飽和NH4Cl水溶液の添加によって反応混合物をクエンチし、層を分離した。水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の50%EtOAc)で精製することで、30(87mg、98%)を得た。
【0072】
(2aR,2a1R,4S,4aR,7aR)-オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-オール(31)および(2aS,2a1S,4R,4aS,7aS)-オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-イルアセテート(32):
アルコール30(60mg、0.35mmol)のTHF(5mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、23℃で、酢酸ビニル(0.6ml、6.2mmol)およびセライト担持リパーゼPS-30(100mg)を加えた。反応混合物を6時間撹拌した(1H-NMRで50:50)。この期間後に、セライトのプラグで反応混合物を濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の30%→50%EtOAc)で精製することで、アルコール31(32mg、53%)およびアセテート32(35mg、47%)を得た。
【0073】
アルコール31:
【0074】
アセテート32:
【0075】
(2aS,2a1S,4R,4aS,7aS)-オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-オール(33):
撹拌したアセテート32(32mg、0.15mmol)のMeOH(3mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、23℃で、K2CO3(31mg、0.23mmol)を加えた。反応混合物を23℃で1時間撹拌した。この期間後に、飽和NH4Cl水溶液の添加によって反応混合物をクエンチし、層を分離した。水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の50%EtOAc)で精製することで、33(26mg、99%)を得た。
【0076】
4-ニトロフェニル((2aR,2a1R,4S,4aR,7aR)-オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-イル)カーボネート(34):
撹拌したアルコール31(30mg、0.18mmol)のジクロロメタン(4mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、23℃で、ピリジン(57μL、0.7mmol)を加え、反応混合物を0℃に冷却してから、4-ニトロフェニルクロロホルメート(53mg、0.26mmol)を加えた。反応混合物を23℃まで温め、12時間撹拌した。完了したら溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の35%EtOAc)で精製することで、34(47mg、80%)を得た。
【0077】
4-ニトロフェニル((2aS,2a1S,4R,4aS,7aS)-オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-イル)カーボネート(35):
化合物34について概説した手順に従って標題の化合物(35)を得た(51mg、収率88%)。
【0078】
スキーム2:ベンゾチアゾール等配電子体43の合成:
【0079】
実験手順:
2-(メチルチオ)ベンゾ[d]チアゾール-6-スルホニルクロリド(37)
クロロスルホン酸(5.1mL、77.35mmol)を、アルゴン雰囲気下、-78℃で、2-(メチルチオ)ベンゾチアゾール(36)(2g、11mmol)にゆっくり加えた(強い発熱)。反応混合物を23℃まで温め、60℃で90分間、撹拌した。再び混合物を23℃に冷却してから、塩化チオニル(1.2mL、16.57mmol)を加えた。反応混合物を1時間還流下に撹拌し、23℃に冷却した。冷却した混合物に、EtOAcおよび水を、発泡が収まるまでゆっくり加えた。2つの層を分離し、有機層を濃縮し、乾燥(Na2SO4)し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、37(2.9g、収率94%)を得た。
【0080】
N-((2R,3S)-3-アジド-4-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシブチル)-N-イソブチル-2-(メチルチオ)ベンゾ[d]チアゾール-6-スルホンアミド(40)
イソブチルアミン(0.27mL、2.66mmol)を、アルゴン雰囲気下、23℃で、撹拌した38(200mg、0.89mmol)のイソプロパノール溶液に加えた。反応混合物を65℃で12時間撹拌した。この期間後に、イソプロパノールを減圧下で除去し、ジクロロメタン中の粗生成物39に、アルゴン雰囲気下、23℃で、スルホニルクロリド37(248mg、0.89mmol)およびトリエチルアミン(0.37mL、2.66mmol)を加えた。反応混合物を23℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の15%EtOAc)で精製することで、40(433mg、2工程で90%)を得た。
【0081】
tert-ブチル((2S,3R)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)-3-ヒドロキシ-4-((N-イソブチル-2-(メチルチオ)ベンゾ[d]チアゾール)-6-スルホンアミド)ブタン-2-イル)カルバメート(41)
トリフェニルホスフィン(160mg、0.61mmol)を、撹拌した40(275mg、0.5mmol)のTHF/H2O(比3:1、4mL)溶液に、23℃で加えた。反応混合物を23℃で24時間撹拌した。この期間後に、反応混合物に、Boc無水物(133mg、0.61mmol)および重炭酸ナトリウム(85mg、1mmol)を23℃で加えた。反応混合物を23℃で20時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、EtOAcで希釈した。反応混合物を食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の30%EtOAc)で精製することで、41(270mg、2工程で87%)を白色固形物として得た。
【0082】
tert-ブチル((2S,3R)-4-((2-(シクロプロピルアミノ)-N-イソブチルベンゾ[d]チアゾール)-6-スルホンアミド)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)-3-ヒドロキシブタン-2-イル)カルバメート(42)
撹拌した41(960mg、1.56mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、0℃で、mCPBA(807mg、4.68mmol)を加え、その混合物を23℃で12時間撹拌した。この期間後に、飽和Na2S2O3(2ml)水溶液の添加によって反応混合物をクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。抽出物を飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、減圧下で濃縮した。乾燥THF(10mL)中の粗生成物に、アルゴン雰囲気下、23℃で、シクロプロピルアミン(0.35mL、4.68mmol)を加え、その混合物を65℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の50%EtOAc)で精製することで、42(880mg、2工程で91%)を白色固形物として得た。
【0083】
N-((2R,3S)-3-アミノ-4-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-ヒドロキシブチル)-2-(シクロプロピルアミノ)-N-イソブチルベンゾ[d]チアゾール-6-スルホンアミド(43)
撹拌した42(870mg、1.39mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、0℃で、TFA(5mL)を加え、その混合物を23℃で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去することで、43(730mg、収率100%)を得た。
【0084】
スキーム3:阻害剤13および14の合成
【0085】
実験手順:
(2aR,2a1R,4S,4aR,7aR)-オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-イル((2S,3R)-4-((2-(シクロプロピルアミノ)-N-イソブチルベンゾ[d]チアゾール)-6-スルホンアミド)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)-3-ヒドロキシブタン-2-イル)カルバメート(13):
撹拌した活性化アルコール34(6mg、0.018mmol)および等配電子体43(11.3mg、0.021mmol)のアセトニトリル(2mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、23℃で、DIPEA(16μL、0.09mmol)を加えた。反応混合物を完了まで23℃で撹拌した。完了したら、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の65%EtOAc)で精製することで、13(12mg、92%)を得た。
【0086】
(2aS,2a1S,4R,4aS,7aS)-オクタヒドロ-2H-1,7-ジオキサシクロペンタ[cd]インデン-4-イル((2S,3R)-4-((2-(シクロプロピルアミノ)-N-イソブチルベンゾ[d]チアゾール)-6-スルホンアミド)-1-(3,5-ジフルオロフェニル)-3-ヒドロキシブタン-2-イル)カルバメート(14):
阻害剤13について概説した手順に従って標題の阻害剤(14)を得た(17mg、収率80%)。
【0087】
本発明は以下の態様を提供するが、その番号付けが重要性のレベルを示していると解釈してはならない。
態様1は、以下に関する:
式(I)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレート:
式中、
nは0~3の整数であり; Xは(-CHR5-)mまたは-O-であって、mは1または2であり、各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり;
X1、X2およびX3はそれぞれ独立して(-CHR5-)mであり;
R1はアルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ヒドロキシまたはアミノであり;
R2はアルキルであり;
R3はアリール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾフラニルまたはインドリルであり;
R4はH、アルキルまたはアルコキシである。
態様2は、
X1は(-CHR5-)mであって、mが2であり;
X2は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X3は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシである、
態様1の化合物に関する。
態様3は、
X1は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X2は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X3は(-CHR5-)mであって、mが2であり;
各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシである、
態様1の化合物に関する。
態様4は、
XがOである、態様1~3の化合物に関する。
態様5は、
Xは(-CHR5-)mであって、mが1であり、R5はH、アルキルまたはアルコキシである、
態様1~3の化合物に関する。
態様6は、
R4がHまたはアルコキシであることができる、態様1~5の化合物に関する。
態様7は、
式(I)の化合物が下記式
の化合物であり、式中、n、R1、R2、R3およびR4は態様1に定義したとおりである、態様1の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートに関する。
態様8は、
nが0である、態様1~7の化合物に関する。
態様9は、
R2が無置換アルキルである、態様1~8の化合物に関する。
態様10は、
R3がアリール、ベンゾチアゾールまたはベンゾオキサゾールである、態様1~8の化合物に関する。
態様11は、
R3がフェニルである、態様10の化合物に関する。
態様12は、
R3
である、態様10の化合物に関する。
態様13は、
R3
である、態様12の化合物に関する。
態様14は、以下に関する:
R3
であって、式中、
R6はアルキル、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロシクロアルキルアミノまたはヘテロシクロアミノであり;
X4はS、OまたはNR7であって、R7はH、アルキル、シクロアルキルまたはアルキルアリールである、
態様10の化合物。X4はSまたはOであることができる。
態様15は、
またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレートである、態様1の化合物に関する。
態様16は、以下に関する:
式(II)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、多形、プロドラッグ、溶媒和物もしくはクラスレート:
式中、
X、X1~X3およびR4は本書類において定義され、X5は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、C(O)R、C(O)OR、OC(O)OR、C(O)N(R)2、OC(O)N(R)2、C(S)N(R)2、(CH2)0~2O(R)C(O)R、(CH2)0~2N(R)C(O)R、(CH2)0~2O(R)C(O)OR、(CH2)0~2O(R)C(O)ORまたは(CH2)0~2N(R)N(R)2からなる群より選択され、各Rは、独立して、水素、アルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルであって、任意のアルキル、アシル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルまたは1つの窒素原子もしくは隣接する複数の窒素原子に結合した2つのR基は、該1つまたは複数の窒素原子と一緒になってヘテロシクリルを形成することができる。
態様17は、
X1は(-CHR5-)mであって、mが2であり;
X2は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X3は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシである、
態様16の化合物に関する。
態様18は、
X1は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X2は(-CHR5-)mであって、mが1であり;
X3は(-CHR5-)mであって、mが2であり;
各R5は、独立して、H、アルキルまたはアルコキシである、
請求項16記載の化合物に関する。
態様19は、
XがOである、態様16~18の化合物に関する。
態様20は、
Xは(-CHR5-)mであって、mが1であり、R5がH、アルキルまたはアルコキシである、態様16~18の化合物に関する。
態様21は、以下に関する:
R4がHまたはアルコキシであることができる、態様16~18の化合物。請求項1記載の化合物と1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物。
態様22は、
治療有効量の1種または複数種の請求項1記載の化合物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、HIV感染症を処置するための方法に関する。
態様23は、
HIV感染症の緩和を必要とする患者を処置するための医薬として使用するための、態様1の化合物に関する。