(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】気泡コンクリート複合建材
(51)【国際特許分類】
E04C 2/28 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
E04C2/28
(21)【出願番号】P 2019547443
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018054732
(87)【国際公開番号】W WO2018158211
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】202017101111.9
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519311248
【氏名又は名称】シービーエス インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンホフ, アードルフ
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112133(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第19743413(DE,A1)
【文献】特開2010-248746(JP,A)
【文献】特開昭57-137104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00 - 2/54
E04B 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行で、且つ互いに間隔を有して配置された複数の支持構造部材(2)が組み込まれた気泡コンクリート複合建材であって、
前記支持構造部材(2)は、前記気泡コンクリート複合建材(1,10,13,17,23,26,29,32)の平面に対して横切る方向に延びるリブ(4)を有し、
前記リブは、それぞれ、前記リブ(4)の平面から同じ方向に曲がり、隣接する前記気泡コンクリート複合建材(1,10,13,17,23,26,29,32)の外面に対して平行、またはほぼ平行に延びる支持構造リム(5,5.1)を有し、
前記支持構造部材(2)の前記支持構造リム(5,5.1)は、前記支持構造リム(5,5.1)の長さにわたって並設されて延びる気泡コンクリート層(3,11,12,14,15,18,19)内に鋳造されており、
前記気泡コンクリート層は、少なくとも2つの気泡コンクリートシェル(11,12,14,15,18,19)から形成され、各支持構造リム(5,5.1)は、別個の気泡コンクリートシェル(11,12,14,15,18,19)内に鋳造されていることを特徴とし、前記2つの気泡コンクリートシェル(11,12,14,15,18,19)のバルク密度は異なり、両方の気泡コンクリートシェル(11,12,14,15,18,19)は、静力学的荷重引き受け機能の一部を担い、より高いバルク密度を有する気泡コンクリートシェル(11,14,18)はより大部分の静力学的荷重引き受け機能を担い、より低いバルク密度を有する気泡コンクリートシェル(12,15,19)は主に遮断機能を受け持
ち、
前記支持構造部材は、前記建材の全長にわたって延び、1つの気泡コンクリートシェルのバルク密度が、他の気泡コンクリートシェルのバルク密度よりも30から50%高い、気泡コンクリート複合建材。
【請求項2】
前記支持構造リム(5,5.1)は、他の支持構造リム(5,5.1)の方向に窪み、前記支持構造部材(2)の長手延長方向に沿って延びる少なくとも1つの窪んだ結合溝(7,7.1)を有することを特徴とする、請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記少なくとも1つの結合溝(7,7.1)は、両側においてアンダーカットされていることを特徴とする、請求項2に記載の建材。
【請求項4】
前記リブ(4)は、前記支持構造部材(2)の長手方向の延長に沿う少なくとも1つの結合溝(9)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の建材。
【請求項5】
前記リブ(4)の前記結合溝(9)は、前記リブ(4)内において、前記曲げられた支持構造リム(5,5.1)の方向に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の建材。
【請求項6】
前記リブおよび/または前記支持構造リムは、前記支持構造部材の長手方向の延長に対して横切って作用する結合構造を保持していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の建材。
【請求項7】
2つの気泡コンクリートシェル(14,15)は、互いに離間して配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の建材。
【請求項8】
前記2つの気泡コンクリートシェル(14,15)の間に、特に耐衝撃性の遮断材層(16)が配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の建材。
【請求項9】
前記建材(23)は、背中合わせになっており、且つ隣接する支持構造部材(2)への隔たりよりも小さい間隔で互いに離間した、少なくとも2つの支持構造部材(2)を有し、
前記2つの支持構造部材(2)のリブは、少なくとも1つの端領域の縁の近くの端部で、解放部(24)を横切るボルト(25)によって互いに結合されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の建材。
【請求項10】
結合溝(7.1)の少なくともいくつかの内に、パイプホルダーといったホルダー(21)が固定されていることを特徴とする、請求項2に記載の建材。
【請求項11】
建材(17,29)は、支持構造部材(2)の長手延長方向において、均一に撓んでいることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の建材。
【請求項12】
前記撓んだ建材(17)の下側頂点の、前記建材の両端部を結んだ仮想線からの距離は、L/200の値に相当し、ここで、Lは、前記支持構造部材(2)の長手延長方向における前記建材(17)の長さであることを特徴とする、請求項
11に記載の建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡コンクリート複合建材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建築のために、板状の壁および/または天井建材がプレハブ部品として使用されている。壁または天井建材として設計された複数のそのようなプレハブ建材は、対応して互いに同一であり、建築現場において建物の建造のために互いに接続される。これらの建材は、その接続側において、溝-さね-結合(Nut-Feder-Verbund)の方法に従って製作できる補完的なプロフィールを有する。そのようなプレハブ建材によって、建物を短時間で完成することができる。そのような建材の大量生産の可能性によって、それらを低コストで生産できる。
【0003】
そのような壁または天井建材は、欧州特許第0808959号明細書によって知られている。この従来技術から知られた建材は、互いに離間した2つのカバー層を有する。シェルとしても呼ばれるカバー層は、間隔を有して互いに配置された複数の支持構造部材(Tragwerkprofile)によって離間されている。支持構造部材は、建材の平面を横切る方向に(quer zur Ebene)延びるリブを有する。これによって、カバー層の間隔が互いに定義される。リブの端部には同一方向に曲げられた支持構造リムが形成されている。それらは、カバー層の平面延長に対して平行に延びる。それぞれ互いが背中合わせで互いに隔たった2つの支持構造部材は、支持空間を形成する。この中にプリストレス可能な補強鉄筋が配置される。支持空間は、続いて通常のコンクリートによって充填される。これは、通常のコンクリートによって充填された支持空間とともに、支柱を形成する。壁側の静力学的(statisch)荷重が、この支柱を介して下部のせり台に伝搬される。各建材は、互いに隔たって配置された複数のそのような支柱を有する。
【0004】
このような方法で形成された支柱の間に存在する空隙は、気泡軽量コンクリートによって充填される。この建材の場合、カバー層は、型枠の形成に役立ち、それによって、気泡軽量コンクリートから成るコア層が鋳造され得る。さらに、カバー層は、遮断機能を担い得る。建材の静力学的特性は、柱状の支持体によって定義される。
【0005】
これらの既知の建材は、まず、支持構造部材をカバー層の内側に取り付けることによって製造される。続くステップにおいて、向かい合う支持物リムを他のカバー層に結合する。次いで、コンクリート鋳造のための型枠が準備される。続いて、支持空間への補強鉄筋の提供の後に、その中に通常のコンクリートが流し込まれる。次のステップにおいて、軽量コンクリートがコア層のために流し込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
この従来の建材が壁および/または天井建材に有利に使用され得るとしても、製造がより容易であるのみならず、機能性に関して改善された、そして、それによって適用可能性が改善された、このタイプの建材を駆使できることが望まれる。そのため、本発明の課題は、そのような建材を提案することにある。
【0008】
この課題は、平行で、かつ互いに間隔を有して配置された複数の支持構造部材が組み込まれた気泡コンクリート複合建材であって、前記支持構造部材は、当該気泡コンクリート複合建材の平面に対して横切る方向に延びるリブを有し、各リブが、該リブの平面から同じ方向に曲がり、隣接する、当該気泡コンクリート複合建材の外面に対して平行またはほぼ平行に延びる支持構造リムを有し、前記支持構造部材の支持構造リムは、支持構造リムの長さにわたって並設されて延びる気泡コンクリート層内に鋳造されている、気泡コンクリート複合建材によって解決される。
【0009】
これらの説明において使用される用語「気泡コンクリート」においては、その細孔によって通常のコンクリートよりも低いバルク密度を有するようなコンクリートとあると解釈される。細孔は、発泡剤の使用によってそのような気泡コンクリート内に提供され得、それにより、気泡コンクリートは、発泡コンクリートである。また、細孔性、あるいは砕石細孔性気泡コンクリートの使用も全く可能である。2つの実施形態において、軽量コンクリートは、典型的には、1600kg/m3未満のバルク密度を有する。
【0010】
この建材の場合、支持構造リムは気泡コンクリート層内に鋳造される。そのような気泡コンクリートは、軽量コンクリートである。支持構造部材は、気泡コンクリート層によって互いに連結されている。そのため、1つの同一の気泡コンクリート層内に、互いに間隔を置いて配置された複数の支持構造部材が存在する。この建材においては、以下のことが典型的に意図される。すなわち、少なくとも支持構造部材のリブの一方の側部に配置された支持構造リムは、一貫して気泡コンクリート層内に完全に鋳造されており、一方、他の支持構造リムは、外部を向いた表面によって露出可能であり、それによって一部のみが気泡コンクリート層内に鋳造される。他の応用の場合においては、建材の構成に関与する支持構造部材の両方の支持構造リムが気泡コンクリート層内に完全に鋳造されるように設計される。気泡コンクリート層内への支持構造リムの鋳造は、欧州特許第0808959号明細書によって知られる建材に対して製造のための追加のカバー層が必要でないため、製造を簡略化する。さらに有利なことに、気泡コンクリート層内への支持構造リムの鋳造によって、流し込まれた支持構造部材の一部におけるまだ固化していない気泡コンクリートの面的結合による支持構造部材と気泡コンクリート層との間の結合効果が、明らかに改善される。この結合は、結合溝(Verklammerungsnut)の結合によって、あるいは気泡コンクリート層に役立つ手段を有する支持構造部材の他の結合によって、さらに改善される。少なくとも、隣接するリブの部分を有する支持構造部材の支持構造リムの気泡コンクリート層内への鋳造によって、この建材の場合には、支持構造部材およびコンクリート層は、その相互作用において相互に静力学的に(statisch)定義される。すなわち、支持構造部材およびコンクリート層の両要素は、建材の静荷重(Statik)に対して、あるいは、建材を介して受け取るまたは逸らす荷重に対して、責任を負う。そのため、この機能性によって、そのような建材は複合建材とみなし得る。
【0011】
静力学的定義に関する建材の複合特性によって、静力学的要求を満たすために、従来技術の建材の際に必要な静力学的特性の獲得のために少なくとも支えの形状において使用されねばならない通常のコンクリートが、その製造に全く必要でないことは、そのような複合建材にとって有利である。それによって、その建材は、全体に、より少ない重量で製造できる。壁または天井建材として静力学的要求を満たすために、その建材が400から1200kg/m3の気泡コンクリート層の平均バルク密度を有する場合に、十分であると考えられる。それに反して、通常のコンクリートは、約2500kg/m3のバルク密度を有する。
【0012】
そのような建材の製造における利点は、支持構造部材が気泡コンクリート層内に鋳造される点に基づく。そのため、欧州特許第0808959号明細書による、カバー層への支持構造部材の結合のための単一あるいは複数の固定ステップは省略される。
【0013】
気泡コンクリート層への支持構造リムの流し込みは、気泡コンクリート層がただ1つだけの、または複数の、例えば2つの気泡コンクリートシェルから形成できる可能性を開く。最後の場合では、各支持構造リムは、別個の気泡コンクリートシェル内に鋳造される。支持構造部材の支持構造リムがそれぞれ1つの気泡コンクリートシェル鋳造される建材においては、2つの気泡コンクリートシェルは、異なるバルク密度を持ち得る。そのため、例えば、より高いバルク密度を有する1つの気泡コンクリートシェルを意図し、一方、他の気泡コンクリートシェルはより低いバルク密度を有することが可能である。より低いバルク密度を有する気泡コンクリートシェルは、建材のそのような実施形態において、とりわけ、遮断機能、特に断熱に関しての機能にふさわしく、一方、より高いバルク密度を有する気泡コンクリートシェルは、静力学的荷重の受け入れ機能の大きな部分を担う。2つの気泡コンクリートシェルを有する建材においては、これらは平面的に互いに隣接して鋳造され得る。異なるバルク密度のため、より低いバルク密度を有する気泡コンクリートシェルは、より高いバルク密度のシェル上に、しかもこれが鋳造された直後で、且つまだ固まっていない状態で、ウエット・オン・ウエット式で(frisch auf frisch)提供され得る。そのとき、鋳造された両気泡コンクリートシェルは、以下の結果をもって、同時に固まる。すなわち、それらはその境界において互いに固まり、それによって、両気泡コンクリートシェル間の結合は特に鋳造され、また、固化した部材内において、いかなる境界面は認識できず、単に、1つの気泡コンクリートシェルから他の気泡コンクリートシェルへの遷移領域における密度の変化だけが認識できる。そのような2つの気泡コンクリートシェルを有する建材は、所望される場合、例えば、気泡コンクリートシェル間に遮断層が配置されるべき場合には、互いに離間され得る。典型的には、遮断層が十分に頑丈な場合に、遮断層が設けられる。その際、踏み耐性(Trittfestigkeit)が十分と見なされ、それによって、この上に2つの気泡コンクリートシェルうちの1つが、この材料がそれほど圧縮されることなく、流し込まれ得る。
【0014】
それぞれの気泡コンクリートシェル内の支持構造リムの結合強化のために、他の支持構造リムの方向に垂直の方向に窪み、支持構造部材の長手方向の長さに沿う、1つ以上の結合溝が提供され得る。これらは、一実施形態によれば、例えば蟻溝形状に、両側においてアンダーカットされている。そのような突起あるいは刻み込みによって、一方では、支持構造リムの形状安定性が向上し、他方では、外側に露出した結合溝は、例えば、暖房システムのパイプのためのホルダーのような留め具をその中に組み込むために使用され得る。ホルダーおよびそれに結合される物体、例えばパイプは、支持構造リムとともに、コンクリートシェルの中に鋳造される。リブもまた、そのような、剛性を高める突起あるいは刻み込みによって強化され得る。一実施形態において、リブは、その長手方向の長さに沿う結合溝によって強化される。その結合溝は、その背部から始まって、支持構造リムの曲がり方向に作成されている。また、そのような結合溝は、両側がアンダーカットされ得る。有利な一実施形態においては、リブの結合溝の幅が、溝の端の境界が気泡コンクリートシェル内に達し、それによってともに鋳造されるように、延びている。これは、支持構造部材と気泡コンクリートシェルとの間の結合に対してポジティブに作用する。さらに、リブおよび/または支持構造リムは、支持構造部材の長手方向の拡張を横切る方向に(in Querrichtung zur Laengserstreckung)作用する結合構造を有ることができる。
【0015】
建材内において支持構造部材は間隔を置いて配置されている。その際、支持構造部材は、同じ方法で互いに配置され得る。すなわち、支持構造リムは同じ方向を指している。同様に、支持構造部材を、支持構造リムの曲がり方向に関して交互に配置する可能性は存在する。支持構造部材は、そのような建材の適用のために、2つの支持構造部材が互いに背中あわせに配置された状態でボルトによって共に結合されるように、互いが配置され得る。その2つの支持構造部材は、隣接する他の支持構造部材に対してよりもより少ない間隔で互いに配置される。このボルトは、縁に近接する建材の端部内に配置され、外部からアクセス可能である。そのため、ボルトの周りに、建材の持ち上げのための輪(Ringschlaufe)を設けることができる。典型的には、そのような建材は、1つまたは2つのそのような昇降装置取り付け点を有する。また、取り付け点がこの方法で用意されるかどうかに関係なく、支持構造部材は、上記形態および方法において、建材の中に対の状態でグループ化されて配置され得る。
【0016】
そのような建材は、壁建材または天井建材として利用され得る。建材の意図された形態によれば、典型的には、バルク密度に関して、複数の気泡コンクリートシェルが形成され得る。天井建材としてのコンセプトにおいて、工場での製造に基づいて、天井建材は、支持構造部材の長手延長方向に、しかも後の荷重方向とは逆方向に、均一の曲率を有するようにしてもよい。これは、型枠の対応する構造によって、例えば、作成される建材の長さにわたって延びる湾曲した型枠によって達成できる。これによって、以下のことの達成が意図される。すなわち、建造される建物の内のそのような天井建材の製造に際に、プレハブ天井の際にそうであるように、これは、自重によって、撓もうとすることになる。しかしながら、その湾曲により、平らな形状となる。その点において、さもないと認められる、平坦でない天井上面の結果を伴う天井建材の撓みが、この処置によって回避される。
【0017】
この気泡コンクリート複合建材の特別な特性によって、これは、単に壁または天井建材として意図されるものではない。さらに、例えば階段のような他の建物構成要素を形成することも可能である。そのような階段建材の内部に存在する支持構造部材は、一実施形態によれば、互いに背中合わせの対になって配置される。支持構造部材対は、階段の段支持部材の接続に適している。階段の段支持部材は、支持構造リムに対してその一端において突き出ており、その端において、典型的には隅に製作された階段の段エッジ保護部材を支える。これは、階段のエッジを効果的に保護する。これは、気泡コンクリート層内に鋳造することができ、しかも、気泡コンクリートの上面とわずかな間隔で、または上面に露出して位置し得る。
【0018】
以下において、本発明は、添付の図面を参照のもとに、実施形態に基づいて記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態による建材の概略水平断面図である。
【
図2】
図1の建材に組み込まれた支持構造部材の正面図である。
【
図3】さらなる実施形態による建材の概略水平断面図である。
【
図4】さらなる実施形態による建材の概略水平断面図である。
【
図5】さらなる実施形態による建材の概略断面図である。
【
図6】さらなる建材の上部水平狭側部の概略平面図である。
【
図8】天井建材として形成された、さらなる建材の部分遠近法図である。
【
図9】階段建材として形成された、さらなる建材の遠近法図/内部図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示された実施形態では、壁建材として提供された建材1は、鋼鉄製で互いに間隔をおいて配置された複数の支持構造部材2から構成される。これらは、少なくとも1mmの壁厚を有する。例示された実施形態では、支持構造部材は、600mm以下の間隔で互いに離間している。支持構造部材2は、バルク密度450kg/m
3の気泡軽量コンクリートシェル3内に鋳造されている。支持構造部材2は、建材1の全長にわたって延びている。建材1は壁建材であるため、支持構造部材2の長さは建材の高さに対応している。
図2の正面図において、支持構造部材2に関して支持構造2が拡大して示されており、支持構造部材2は、リブ4を有する。リブ4の各端において、支持構造リム(5,5.1)が折れ曲がっている。支持構造リム(5,5.1)は、同一方向に折れ曲げられている。支持構造リム(5,5.1)は、建材1の外面(6,6.1)に平行、あるいは、ほぼ平行に延びている。90度の角度で曲げられた支持構造リム(5,5.1)は、結合要素によって構成されている。ここでは、蟻溝形状の(schwalbenschwanzfoermig)結合部(7,7.1)と、端側折り曲げ部(8,8.1)とである。蟻溝形状の結合部(7,7.1)は、各支持構造リム(5,5.1)内において、他の支持構造リム(5.1,5.2)の方向に向けて形成され、支持構造部材2の長手方向の全長にわたって延びている。端側折り曲げ部(8,8.1)は、それぞれ他の支持構造リム(5,5.1)の方向を向いている。リブ4内において、同様に、横断面において蟻溝形状の結合部9が形成されている。これら結合構造(7,8,7.1,8.1,9)のために、本実施形態では、支持構造部材2は、全体として気泡軽量コンクリートシェル3内に鋳造されている。この結合によって、建材1は、支持構造部材2と気泡軽量コンクリートシェル3とによって、静力学的に共同で定義される。支持構造部材2と気泡軽量コンクリートシェル3の両要素は、静力学的機能を担う。
【0021】
図3は、別の建材10を示す。建材10においては、
図1の実施形態において気泡軽量コンクリートシェル3によって形成された気泡軽量コンクリート層は、2層の気泡軽量コンクリートシェル(11,12)によって形成されている。各気泡軽量コンクリートシェル(11,12)において、支持構造部材2の支持構造リム(5,5.1)が鋳造されている。気泡軽量コンクリートシェル(11,12)のバルク密度は異なる。例示された実施形態では、気泡軽量コンクリートシェル11は、気泡軽量コンクリートシェル12よりも高いバルク密度を有する。建材10は壁建材として提供されている。そのため、建材10の静力学(Statik)は、主として気泡軽量コンクリートシェル11の支持構造部材2によって定義され、一方、気泡軽量コンクリートシェル12は、断熱機能をよりいっそう担う。しかしながら、これは、より少ない程度において、建材10の静力学的定義に関与する。本実施形態において、気泡軽量コンクリートシェル11のバルク密度は約600kg/m
3であり、気泡軽量コンクリートシェル12のバルク密度は350kg/m
3である。
【0022】
建材10の製造においては、支持構造部材2が所望の配置に提供された後に、まず、高いバルク密度を有する気泡軽量コンクリートシェル11が対応する型枠に流し込まれる。気泡軽量コンクリートシェル12は、ウエット・オン・ウエット式で気泡軽量コンクリートシェル11上に鋳造され得る。そのより低いバルク密度によって、これは、気泡軽量コンクリートシェル11のまだ硬化していない材料と混ざること、あるいはその中に入り込むことはない。2つの気泡軽量コンクリートシェル(11,12)の結合は、特に、2つの気泡軽量コンクリートシェル(11,12)の同時の凝結硬化によるのが良い。
【0023】
図4は、建材10と同様に、2つの気泡軽量コンクリートシェル(14,15)を有する別の建材13を示す。建材10との相違は、建材13における2つの気泡軽量コンクリートシェル(14,15)が互いに離間していることにある。本実施形態においては、2つの気泡軽量コンクリートシェル(14,15)の間に遮断材層16が挿入されている。気泡軽量コンクリートシェル(14,15)のバルク密度は、気泡軽量コンクリートシェル(11,12)のバルク密度に対応し、気泡軽量コンクリートシェル15はより低いバルク密度を有する方のシェルである。遮断材層16は、踏み耐性(trittfest)があり、それゆえ十分に堅い。それによって、気泡軽量コンクリートシェル14の鋳造の後に、ウエット・オン・ウエット式で遮断材層16が提供され、続いて気泡軽量コンクリートシェル15を即座に鋳造することができる。気泡軽量コンクリートシェル(14,15)の鋳造は、
図3の実施形態と同様に1つのステップで、且つ最初に鋳造された気泡軽量コンクリートシェル14が硬化する必須の待ち時間がなく、行われ得る。
図3から認識できるように、本実施形態においても、支持構造リム(5,5.1)は、それぞれ気泡軽量コンクリートシェル14または15内に完全に鋳造されている。
【0024】
また、建材17の別の実施形態が
図5に示される。この建材17もまた2つの気泡軽量コンクリートシェル(18,19)を有する。建材17は天井建材として提供される。気泡軽量コンクリートシェル18は、気泡軽量コンクリートシェル19よりも高いバルク密度を有し、しかも本実施形態では、約850kg/m
3のバルク密度を有する。気泡軽量コンクリートシェル19は、約500-650kg/m
3のバルク密度を有する。建材17の上面20は、その上に提供される床、例えばコンクリート製の床(Estrich)の土台を形成している。この理由から、この建材17の構造に組み込まれる支持構造部材2の支持構造リム5は、その上側において露出している。同様に露出する結合溝7によって、上面20上に塗り付けられるコンクリート製の床(図示されず)のための特別の結合手段が作り出されている。
【0025】
支持構造部材2の、あるいは天井建材17の個々の同一物の、他の支持構造リム5.1の個々の結合溝7内には、暖房のために役立つ配管システムのパイプ22を保持するホルダー21が配置されている。
図5の断面図から認識されるように、ホルダー21は、これによって保持されるパイプと共に、気泡軽量コンクリートシェル18内に鋳造されている。建材17の実施形態が示すように、記載された概念において、支持構造リム(5,5.1)内に存在する結合溝(7,7.1)は、補強に役立つのみ見ならず、本実施形態では保持目的である他の目的にも役立つ。この建材17では、気泡軽量コンクリートシェル18は、パイプ22によって導かれる熱流体の作用の際に放熱器として働く下部シェルを示している。そのため、本実施形態においては、このシェルが放熱機能を有し得るようなバルク密度が使用される。類似の方法において、気泡軽量コンクリートシェル18に組み込まれた配管システムのパイプ22は、天井冷却のためにもまた使用され得る。パイプの組み込み、または配管システムの上記概念が、両方の気泡軽量コンクリートシェルにおいて可能であることは自明であり、また、壁暖房の実現との関連で、気泡軽量コンクリートシェル内に鋳造されたそのような配管システムの組み込みが可能であることは自明である。
【0026】
示されない方法おいて、建材17は、支持構造部材の長手延長方向において(天井建材17の張り方向において)、わずかに撓んでいる、しかも、建材17の長さを、係数200で割ったものに相当する量:L/200[長さの単位]だけ、撓んでいる。この撓みによって、建材17の上面20はわずかに凸状に撓んでいる。これによって、天井建材として構想された建材17は、事前に撓んでおり、しかも、取り付けの際に同様に調節する撓みが、そのとき上面20を平坦に導く量において撓んでいる。他のそのような建材の遠近法図が
図9に描かれている。
【0027】
図6は別の建材23を示す。この天井建材として設計された建材23は、原則的には
図1の建材1と同様に構築される。そのため、同一部分は同一の参照符号で示される。建材23は、建材1とは、2つの支持構造部材2が狭い間隔をおいて互いに配置され、これらの間において、そのリブ中間部の領域内に、解放部24が設けられている点が異なる。互いに背中合わせの2つの支持構造部材2は、解放部24を貫いて延びるボルト25によって互いに結合されている。ボルト25の露出された軸は、例えば輪である昇降具の接続のための接続点として、建材23をクレーン等によって持ち上げるために使用され得る。
図6においては、例示的に、そのような昇降装置用接続点が示されている。建材23が単一のそのような昇降装置用接続点のみを有する場合、それは、その長さに関して中心にある。多くの場合、対応する間隔で互いに配置された2つのそのような昇降装置用接続点が意図され得る。
【0028】
図7は別の建材26を示す。建材26は、天井建材として設計され、本実施形態においては、原則的には
図1の建材1と同様に構築される。建材26は、同図から認識されるように、互いにペアで背中合わせに配置されている支持構造部材2の配置によって区別される。建材26は、隣接する壁(図では破線で示される)とネジで固定できるように設計されている。この場合、壁は、ボルトヘッドおよびターンバックルのアクセスためのグリップを有する。本実施形態では、建材26と隣接する壁の狭側面との互いに面する側面は、枠部材によって保護されている。また、その枠部材によって、壁の高さを横切る方向におけるポジティブロック結合(Formschluss)が得られる。この理由から、図において建材26の右端に配置された2つの支持構造部材2の間に、打ち抜き穴27が提供される。打ち抜き穴27は、建材26の鋳造のための型枠内のコルゲート管部によって提供される。コルゲート管挿入部28は、建材26の一部分である。建材26によるこの垂直打ち抜き穴27によって、天井建材26をその下層、および/または上層とネジ締めすることができる。そのような建材接続は、とりわけ、地震の危険のある地域に建造される建物に有用である。
【0029】
図8は、天井建材として設計された別の建材29を示す。図においては建材29の一部のみが示されている。この建材29は、下層上に載置された状態で図式化されて説明され、スパンにわたって凸状に撓んでいる。
図8は、クレーンによって運ばれた建材29が完全に切り離される前の建材29を示している。下側頂点30の、同建材の両端部を結んだ仮想線31からの距離は、L/200の値に相当し、ここで、Lは、建材29のスパン方向の長さである。
【0030】
上記気泡コンクリート建材の複合特性により、その静力学的に定義された機能に関連して、建材設計の上記概念は、他の建材、例えば、階段建材にも適している。そのような階段建材32が
図9に示されている。
図9は、階段建材32を、可視部分(上部分)と、内部視部分(下部分)とにおいて示している。建材32は、気泡軽量コンクリート層33内に支持構造部材2を組み込むという、既に上記建材において説明されたコンセプトに応じて形成されている。例示された階段建材32では、2つの支持構造部材対34が互いに離間して配置されている。各支持構造部材対34は、建材32の隣接する側端から離れている。支持構造部材対の両支持構造部材2は、背中合わせで、互いに間隔を置いて配置されている。これらの間に、階段の段支持部材35が配置され、しかも、支持構造部材2の長手方向に角度をつけて配置されている。これは、形成される階段の段36の支持に役立ち、また、階段の段支持部材35の露出端部に位置する階段の段エッジ保護部材37の支持に役立つ。階段の段エッジ保護部材37は、階段建材32の幅にほぼ相応する幅を有する。支持構造部材対34は、これに保持される階段の段支持部材35および階段の段エッジ保護部材37と共に、まだ流動可能な気泡軽量コンクリートが上記建材を含む型枠内に提供される前に、対応する準備された型枠内に配置される。気泡軽量コンクリートの固化の後に、階段建材32が完成する。
【0031】
この建材32において、階段の段36を介して建材32内に伝わる力は、階段の段支持部材35を介して支持構造部材2内および気泡軽量コンクリート33内に伝わり、また、これらを介して建材32を支持する土台に伝わる。本実施形態において、建材32の複合特性は、特に明らかである。
【0032】
本発明を、実施形態に基づいて記載した。当業者にとっては、請求項の範囲を逸脱することなく、発明を請求項の範囲内において変更するさらなる様々な可能性が、請求項がこれらの実施形態の文脈において説明されることなく、存在する。
【符号の説明】
【0033】
1 建材
2 支持構造部材
3 気泡軽量コンクリートシェル
4 リブ
5,5.1 支持構造リム
6,6.1 外面
7,7.1 結合溝
8,8.1 折り曲げ部
9 結合溝
10 建材
11 気泡軽量コンクリートシェル
12 気泡軽量コンクリートシェル
13 建材
14 気泡軽量コンクリートシェル
15 気泡軽量コンクリートシェル
16 遮断材層
17 建材
18 気泡軽量コンクリートシェル
19 気泡軽量コンクリートシェル
20 上面
21 ホルダー
22 パイプ
23 建材
24 解放部
25 ボルト
26 建材
27 打ち抜き穴
28 コルゲート管挿入部
29 建材
30 頂点
31 線
32 階段建材
33 気泡軽量コンクリート層
34 支持構造部材対
35 階段の段支持部材
36 階段の段
37 階段の段エッジ保護部材