(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】一体型エネルギー貯蔵システムを有する建築材料
(51)【国際特許分類】
E04C 2/52 20060101AFI20220704BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
E04C2/52 Z
E04B2/56 641G
E04B2/56 641H
(21)【出願番号】P 2019553164
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 US2017066668
(87)【国際公開番号】W WO2018112339
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-12-04
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519219483
【氏名又は名称】スペア パワー システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】コストス,ジェフェリー ティー.
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-037881(JP,A)
【文献】特開2000-333370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0171484(US,A1)
【文献】特開2001-081902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00 - 2/54
E04B 2/56 - 2/70,2/88 - 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバッテリセルを含み、
かつ少なくとも1つのバッテリアセンブリを有する一体型エネルギー貯蔵システム
と、
建築材料によって製造され、前記少なくとも1つのバッテリアセンブリが内部に埋め込まれる建築材料製造物と、
構造体に固定される場合に見えるように意図された、又は建物の外部ファサードの一部を形成する表面と、を有する建築用パネルであって、
前記少なくとも1つのバッテリアセンブリは、外面を有し、前記外面の大部分は、前記少なくとも1つのバッテリアセンブリを粘性建築材料前駆体内に埋め込ませるように、前記粘性建築材料前駆体を前記少なくとも1つのバッテリアセンブリの周辺に流すことにより、前記
粘性建築材料
前駆体によってオーバー形成され、
前記外面の大部分をオーバー形成した前記粘性建築材料前駆体を硬化させて前記建築材料製造物を形成し、
前記少なくとも1つのバッテリアセンブリは、前記建築材料製造物の内部に埋め込まれて前記建築用パネルに不可分に一体構造を形成し、
前記少なくとも1つのバッテリアセンブリは、
更に、前記少なくとも1つのバッテリアセンブリを、前記
建築用パネルの外部にある電気回路と接続するように動作可能な電気コネクタを有する、建築用パネル。
【請求項2】
前記建築材料は、合成樹脂材料、コンクリート、セラミック、ガラス、石英、木材チップ、おがくず、漆喰、石膏、ガラス繊維、およびカーボン繊維からなる群から選択される1つ以上の部材を有
し、
前記粘性建築材料前駆体は、前記建築材料の液体形態または半液体形態を有する、請求項1に記載の建築用パネル。
【請求項3】
前記建築材料
製造物は、前記
少なくとも1つのバッテリセルが、前記建築材料を通して見えないように不透明で
あり、
前記建築用パネルの前記表面は、前記建築材料製造物の表面である、請求項1または2に記載の建築用パネル。
【請求項4】
前記
建築用パネルは、前記
少なくとも1つのバッテリセルの状態または動作の少なくとも1つの態様を監視および/または制御するように動作可能な前記少なくとも1つのバッテリアセンブリに関連付けられた電子回路をさらに有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項5】
前記電子回路は、前記建築材料内に埋め込まれている、請求項4に記載の建築用パネル。
【請求項6】
前記
建築用パネルは、前記
建築用パネルを壁取付構造体に固定するように構成された締結要素をさらに有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項7】
前記
建築用パネルは、複数のバッテリアセンブリを有する、請求項1~6のいずれか1
項に記載の建築用パネル。
【請求項8】
前記
少なくとも1つのバッテリアセンブリは、直列または並列に電気的に接続された複数のバッテリセルを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項9】
前記建築用パネルは、
前記表面として、耐候性を有するように構成された少なくとも1つの
耐候性表面を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項10】
前記建築用パネルは、前記
建築用パネルの長さ寸法または幅寸法のいずれかの25%未満である厚さ寸法を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項11】
前記
少なくとも1つのバッテリアセンブリは、前記
少なくとも1つのバッテリアセンブリの状態または動作の少なくとも1つの態様を監視および/または制御するように動作可能な前記少なくとも1つのバッテリセルに関連付けられた電子回路を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項12】
外面を有
する少なくとも1つのバッテリ装置を有する一体型エネルギー貯蔵システム
と、
建築材料によって製造され、前記少なくとも1つのバッテリ装置の前記外面の大部分が接触および/または結合している建築材料製造物と、
構造体に固定される場合に見えるように意図された、又は建物の外部ファサードの一部を形成する表面と、を有する建築用パネルであって、
前記少なくとも1つのバッテリ装置は、
前記建築用パネルに不可分に一体構造を形成するように前記建築材料
製造物内に埋め込まれ、
前記
建築用パネルは、前記少なくとも1つのバッテリ装置を粘性建築材料前駆体内に埋め込ませるように、前記少なくとも1つのバッテリ装置の周辺に
前記粘性建築材料前駆体を
流して、前記粘性建築材料前駆体を硬化させて、それによって
内部に前記少なくとも1つのバッテリ装置が埋め込まれた前記建築材料
製造物を形成することによって形成される、建築用パネル。
【請求項13】
前記少なくとも1つのバッテリ装置は、少なくとも1つのバッテリセルを有する、請求項12に記載の建築用パネル。
【請求項14】
前記少なくとも1つのバッテリ装置は、少なくとも1つのバッテリセルを取り外し可能に受容するように構成されたスリーブを有する、請求項12または13に記載の建築用パネル。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の建築用パネルを複数有する壁構造体。
【請求項16】
前記複数の
建築用パネルは、取付構造体に取り外し可能に固定される、請求項15に記載の壁構造体。
【請求項17】
前記取付構造体は、副壁構造体に固定されたレールおよび/またはクロスメンバを有する、請求項16に記載の壁構造体。
【請求項18】
前記取付構造体は、前記
少なくとも1つのバッテリセルに、および/または前記
少なくとも1つのバッテリセルから電力を供給するように動作可能な電気回路を有する、請求項16または17に記載の壁構造体。
【請求項19】
前記複数の
建築用パネルは、前記電気回路に並列または直列に接続されている、請求項18に記載の壁構造体。
【請求項20】
前記壁構造体は、各
建築用パネル内に含まれる
前記少なくとも1つのバッテリセルの少なくとも1つの動作態様の状態を監視および/または前記少なくとも1つの動作態様を制御するように動作可能な電子回路に結合されている、請求項15~19のいずれか1項に記載の壁構造体。
【請求項21】
前記壁構造体は、外装または内装を形成する、請求項15~20のいずれか1項に記載の壁構造体。
【請求項22】
建物、シェルター、施設、構造物、あるいはそれらの任意の部分に電力を供給する方法であって、
請求項1~11のいずれか
1項に記載の建築用パネルを、前記建物、前記シェルター、前記施設、前記構造物、あるいはそれらの任意の部分の表面に設置する工程と、
前記複数の建築用パネルを、電力源に結合された電気回路に接続する工程と、
少なくとも1つの前記
建築用パネルの
前記少なくとも1つのバッテリセルを充電するために前記電力源を使用する工程と、
前記少なくとも1つの
建築用パネルを前記電力源から選択的に断線して、前記建物、前記シェルター、前記施設、前記構造物、あるいはそれらの任意の部分内で使用するための前記少なくとも1つの
建築用パネル内に埋め込まれた前記少なくとも1つの
バッテリセルから電力を回収する工程と
、を有する方法。
【請求項23】
前記
建築用パネルの設置は、前記複数の建築用パネルを取付構造体に取り外し可能に固定することを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記
建築用パネルの設置は、建物の内装または外装を形成することを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記電力源は、公益企業または独立型の電力システムである、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのバッテリセルを充電するために使用される前記電気回路は、前記シェルター、前記施設、前記構造物、あるいはそれらの任意の部分内で使用するための前記
バッテリセルから回収された電力を供給するためにも、少なくとも使用することができる、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
充電のために使用される前記電気回路は、要求に基づいて、
前記少なくとも1つのバッテリセルに、および/または
前記少なくとも1つのバッテリセルから電力を分配するための、および/または、並列配置から直列配置に
複数のバッテリセルを切り替えるための制御システムを有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのバッテリ装置を有する一体型エネルギー貯蔵システム
と、
建築材料によって製造され、前記少なくとも1つのバッテリ装置を内部に埋め込む建築材料製造物と、
構造体に固定される場合に見えるように意図された、又は建物の外部ファサードの一部を形成する表面と、を有する建築用パネルを製造する方法であって、
前記少なくとも1つのバッテリ装置が粘性建築材料前駆体内に埋め込まれるように前記少なくとも1つのバッテリ装置の周辺に前記粘性建築材料前駆体を流す工程と、
前記粘性建築材料前駆体を硬化させて、それによって、
内部に前記少なくとも1つのバッテリ装置が埋め込まれた前記建築材料製造物を形成し、前記建築材料
製造物内に前記
少なくとも1つのバッテリ装置を
前記建築用パネルに不可分に一体構造を形成するように少なくとも部分的に収容する工程と、を有する方法。
【請求項29】
前記流す工程は、前記粘性建築材料前駆体を型に導入することを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記粘性建築材料前駆体が前記
少なくとも1つのバッテリ装置の周辺に導入される前に、前記
少なくとも1つのバッテリ装置は、前記型内に垂れ下げられる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記粘性建築材料前駆体は、合成樹脂材料、コンクリート、セラミック、石英、ガラス、木材チップ、おがくず、漆喰、石膏、ガラス繊維、およびカーボン繊維からなる群から選択される1つ以上の部材を有する
ものであり、かつ、液体形態または半液体形態を有する、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記硬化させる工程は、前記粘性建築材料前駆体内で合成樹脂材料を重合させることを有する、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年12月15日に出願された米国仮特許出願第62/434,869号の利益を主張し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、一体型エネルギー貯蔵システムが内部に埋め込まれた、内装および外装パネル、フローリングパネル、カウンタートップ、あるいは階段等の建築材料に関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術の説明
分散型エネルギー貯蔵システムは、セキュリティシステム用に臨界負荷を維持すること、停電中にバックアップ電力を供給すること、電気感応機器用に電力品質を維持すること、機器への損傷を防止するためのサージ保護を提供すること、ピーク使用時により高いレートを回避するために電気負荷を移行させること、および再生可能エネルギー発生システムに対して貯蔵および回収を提供すること等、多くの用途で使用されている。しかしながら、従来のエネルギー貯蔵システムは、多くの欠点を有する。例えば、従来のシステムは、非常にかさばり、建物内において大量の空間を占める。多くの場合、部屋全体は、従来のエネルギー貯蔵システムの収容および維持専用となる。それらは、機能的な目的を果たすが、従来のシステムは、典型的には美的な魅力がなく、システムを隠すための努力を行わなければならない。さらに、従来のシステムを建物および家の内部に設置し、維持することは、しばしば時間がかかり、費用もかかる。最後に、バッテリの基本構成要素(すなわち、バッテリセル)は、接続されると、構造全体にわたってより分散され、それによって、1つのセルまたは部品が熱イベントを開始した場合に、伝播保護の点において、他に類を見ない安全上の利点を提供するように、エネルギー貯蔵解決策を建物構造に組み込むことが困難であることが証明されている。専用の貯蔵空間をほとんどまたは全く必要としない、安全で、見えない、あるいは美的に魅力があるエネルギー貯蔵システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明の一実施形態では、一体型エネルギー貯蔵システムを有する建築用パネルが提供される。建築用パネルは、少なくとも1つのバッテリセルを含み、かつ製造された建築材料内に埋め込まれた少なくとも1つのバッテリアセンブリを有する。少なくとも1つのバッテリアセンブリは、外面を含み、外面の大部分は、建築材料によってオーバー形成され、および/または建築材料に結合される。少なくとも1つのバッテリアセンブリは、少なくとも1つのバッテリアセンブリを、パネルの外部にある電気回路に接続するように動作可能な電気コネクタを有する。また、複数の建築用パネルを含む壁構造体も提供される。
【0005】
別の実施形態では、建物、シェルター、施設、あるいはそれらの任意の部分に電力を供給する方法が提供される。本方法は、本明細書中に記載されるような複数の建築用パネルを含む建物の表面上に壁を設置する工程と、複数の建築用パネルを、電力源に結合された電気回路に接続する工程とを有する。本方法はさらに、電力源を使用して、少なくとも1つのパネルの少なくとも1つのバッテリセルを充電する工程と、少なくとも1つのパネルを電力源から選択的に断線する工程と、建物内で使用するための少なくとも1つのパネル内に埋め込まれた少なくとも1つのセルから電力を回収するステップとを有する。
【0006】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つのバッテリ装置を有する一体型エネルギー貯蔵システムを有する建築用パネルが提供される。バッテリ装置は、外面を有し、外面の大部分は、製造された建築材料と接触および/または結合している。少なくとも1つのバッテリ装置は、建築材料内に埋め込まれる。パネルは、少なくとも1つのバッテリ装置を粘性建築材料前駆体内に埋め込むように、少なくとも1つのバッテリ装置の周辺に粘性建築材料前駆体を流して、粘性建築材料を固化させるように粘性建築材料前駆体を硬化させて、それによって建築材料を形成するによって形成される。
【0007】
さらに別の実施形態では、一体型エネルギー貯蔵システムを有する建築用パネルを製造する方法が提供される。本方法は、少なくとも1つのバッテリ装置が粘性建築材料前駆体内に埋め込まれるように少なくとも1つのバッテリ装置の周辺に粘性建築材料前駆体を流す工程を有する。本方法はさらに、粘性建築材料を固化させるように粘性建築材料前駆体を硬化させて、それによって、建築材料内にバッテリ装置を少なくとも部分的に収容する工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による複数の建築用パネルを有する壁構造体の部分正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の壁構造体の一実施形態による内部構成要素を示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の壁構造体の別の実施形態による内部構成要素を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の壁構造体の別の実施形態による内部構成要素を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の壁構造体の別の実施形態による内部構成要素を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による、バッテリセルが埋め込まれた建築用パネルの正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態による、バッテリ装置が内部に埋め込まれ、かつバッテリセルを取り外し可能に受容するように構成された建築用パネルを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7の実施形態による建築用パネルのバッテリ装置内に受容されたバッテリセルを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態による、パネル内に埋め込まれたバッテリ装置内に受容された2つのバッテリセルを有する建築用パネルを示す背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の実施形態は、一体型エネルギー貯蔵システムで使用するための建築用パネルに関する。エネルギー貯蔵システムは、ある量の化学エネルギーを貯蔵することが可能であり、例えば、パネルを有する建物、シェルター、あるいは施設に電力を供給したい場合に、化学エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である。1つ以上の実施形態では、エネルギー貯蔵システムは、個々のパネル、複数のパネル、あるいは壁全体、床、カウンタートップ、階段、あるいはそれらの任意の部分を有してもよい。エネルギー貯蔵システムは、概して、1つ以上の建築用パネル内に埋め込まれた少なくとも1つのバッテリアセンブリを有する。1つのバッテリアセンブリまたは複数のバッテリアセンブリは、分離した電力を提供するために個別に使用することができ、または、複数の建築用パネルを有する壁構造体、床材、カウンタートップ、あるいは階段を通してより広範な電力を提供することができる。
図1を参照すると、一体型エネルギー貯蔵システムは、壁取付構造体30に固定された複数の建築用壁パネル20から構成された壁構造体10として提供されている。複数のパネルは、壁構造体10内に構造的かつ電気的に一体化した少なくとも1つのバッテリアセンブリ40を有する。
【0010】
パネル20は、概して、製造された建築材料から構成されている。本明細書中で使用される「製造された」建築材料は、自然界に存在せず、美的な壁装剤、クラッディング、ファサード、フローリング、カウンタートップ、あるいは階段として使用されるように構成された人工の材料または加工された材料を指す。製造された建築材料は、未処理または純粋な粘土、石、および木材などの、原料または未処理の建築材料は含まない。しかしながら、製造された建築材料は、それを構成する原料または天然材料とは異なる形態、構造、および/または機能の材料を生成するように処理された原料または天然材料から形成されてもよい。例えば、製造された建築材料は、原料を粉砕して粒子にし、粉砕された材料をバインダーまたは他の合成材料と混合することによって形成されてもよい。特定の実施形態では、製造された建築材料は、合成樹脂材料、コンクリート、セラミックス、石英、ガラス、木材チップ、おがくず、漆喰、石膏、ガラス繊維、および炭素繊維からなる群から選択される1つ以上の部材を有する。製造された建築材料は、バッテリアセンブリ40と共に使用するのに好ましい熱特性を提供するように選択され得る。特定の実施形態では、建築材料は、太陽放射等の外部熱源からバッテリアセンブリを絶縁するように動作するであろう比較的低い熱伝導率を有してもよい。他の実施形態では、建築材料は、バッテリアセンブリから熱を回収する役目を果たす特定のヒートシンク品質を有することが可能となるように、十分な熱伝導率を有してもよい。いずれのシナリオにおいても、建築材料は、動作環境および条件の範囲にわたって、バッテリセルのより効率的な動作を可能にすることができる。特定の実施形態では、製造された建築材料は、約0.05~約10W/(m・K)、約0.1~約7.5W/(m・K)、より好ましくは約0.5~約5W/(m・K)の熱伝導率を有してもよい。使用される特定の材料は、美的および機能的考慮事項を含む多くの要因に依存し得る。
【0011】
特定の好ましい実施形態では、パネル20は、本明細書中に記載されるように、少なくとも1つのバッテリ装置またはアセンブリを粘性建築材料前駆体でオーバー形成することによって製造される。本明細書中で使用される「オーバー形成」は、粘性建築材料前駆体内にバッテリ装置を埋め込ませるように、粘性建築材料前駆体をバッテリ装置の周辺に流すプロセスを指す。オーバー形成はまた、物体が型キャビティに挿入され、粘性材料が型と物体との間の空間に導入されるオーバーモールディングの概念を含む。粘性建築材料前駆体は、典型的には本明細書中に記載されている1つ以上の製造された建築材料の液体形態または半液体形態を有する。粘性前駆体は、オーバー形成の前に処理(例えば、加熱)されてもよい。特定の実施形態では、粘性建築材料前駆体は、型に流入させることによって所望通りに成形される。そのような実施形態では、バッテリ装置またはアセンブリは、前駆体が電池装置の大部分(50%超)、70%超、90%超、または95%超の周辺に流され、接触することができるように、前駆体が流される前に、型内に垂れ下げられてもよい。このように、本発明の実施形態で利用されるオーバー形成プロセスは、プラスチック産業で一般に使用されるオーバーモールディングプロセスと同様である。次に、粘性建築材料前駆体は、粘性建築材料を固化させるように硬化されて、製造された建築材料内にバッテリ装置を少なくとも部分的に収容する。特定の実施形態では、粘性建築材料前駆体は、合成樹脂材料を前駆体内で重合させることによって、硬化される。しかしながら、硬化の方法は、前駆体材料の化学的性質に依存することが理解されるのであろう。例えば、粘性建築材料前駆体は、前駆体を加熱、冷却、および/またはUV光にさらすことによって硬化されてもよい。
【0012】
パネル20は、概して、パネル20が壁構造体10に固定される場合に見えるように意図された表面22を有し、よって、表面22は、美的な好みに合わせて製作される。特定の実施形態では、表面22が建物の外部ファサードの一部を形成するように、耐候性であるように構成されている。本明細書中に使用される「耐候性」とは、表面が、風、雨、あるいは太陽の影響に耐えることができる一方で、その外観および一体感を保持することができることを意味する。有利には、耐候性表面22は、湿気がバッテリアセンブリ40の電気部品に接触して損傷するのを防止するように機能することができる。このような実施形態では、パネル20は、耐候性のある建築材料から構成されることが好ましいが、パネル20が例えば耐候性コーティングで処理される場合には、非耐候性の材料を使用してもよい。好ましい実施形態では、パネルは、バッテリアセンブリ40を隠すように設計され、よって、建築材料は、光を透過しないように不透明であり、バッテリアセンブリ40は、建築材料を通して見えない。パネル20は、様々な形状およびサイズで構築されてもよく、湾曲または平坦であってもよい。しかしながら、好ましい実施形態では、パネル20は、長さまたは幅寸法のいずれかの約25%未満、約15%未満、約10%未満、あるいは5%未満の厚さ寸法を有する直角プリズムの形状である。特定の実施形態では、パネル20は、構造的に耐荷重性であるように設計された建築材料とは対照的に、比較的薄い板状の構造物である。
【0013】
上述したように、少なくとも1つのバッテリアセンブリ40は、壁構造体10内に一体化されている。本明細書中で使用される「バッテリアセンブリ」は、任意のバッテリスリーブ、バッテリケーシングあるいはカバー、バッテリセル、電気接続部(例えば、ワイヤ)、センサ、コントローラ、インジケータライト、および安全部品を含む、本発明の電気エネルギー貯蔵およびバッテリ一体化の側面に関連する様々なデバイスまたは構成要素のうちの1つまたは複数を指す。特定の実施形態では、バッテリアセンブリ40は、建物構造によって担持されるような外部回路を含まないが、電源は、概して、パネル20の外部にある電気回路にバッテリアセンブリ40を接続するように動作可能な電気コネクタを有する。特定の実施形態では、バッテリアセンブリ40はさらに、(
図6に示すように)少なくとも1つのバッテリセル、好ましくは複数のバッテリセルを含むバッテリ装置を有する。
【0014】
特定の実施形態では、バッテリアセンブリ40は、パネル20内に埋め込まれたバッテリ装置43を有する。本明細書中で使用される「バッテリ装置」は、バッテリアセンブリ40を有する構成要素のうちの1つ、いくつか、あるいはすべてを指す。例えば、
図7および
図8の実施形態に示すように、バッテリ装置43は、バッテリセル46が取り外し可能に受容される保護スリーブ44であってもよい。保護スリーブ44は、バッテリセル46をスリーブ44内に完全に収容するように、または封止するように、蓋45を有してもよい。しかしながら、特定の他の実施形態では、バッテリ装置43は、1つまたは複数のバッテリセル、電気接続部、センサ、コントローラ、インジケータライト、および保護部品(例えば、保護スリーブ)を含む、バッテリアセンブリ40の部品の一部またはすべてを含む。
【0015】
図2~
図5の実施形態に示すように、埋め込まれたバッテリ装置43(またはバッテリアセンブリ40)は、パネル20が一体構造を形成するように、建築材料によってオーバー形成され、および/または建築材料と結合した外面42を有し、これによって、パネル20の機能を破損またはその他の方法で破壊することなく、バッテリ装置がパネル20と不可分になる。特定の実施形態では、外面42の大部分(50%超)、70%超、90%超、あるいは95%超は、建築材料によってオーバー形成され、および/または建築材料と結合し、および/または概して、建築材料と直接接触する。特定の実施形態では、パネル20は、複数のバッテリ装置および/または複数のバッテリアセンブリを有する。同時に、または代替的に、バッテリ装置43またはアセンブリ40(または複数のバッテリ装置または複数のアセンブリ)は、各々、複数のバッテリセル46を有してもよい。例えば、
図9に示すように、(対応するカソード47aおよび47bおよび対応するアノード49aおよび49bを有する)2つのバッテリセル46aおよび46bは、パネル20のスリーブ44内に受容され、内部配線41を介して直列に接続されてもよい。複数のバッテリアセンブリ、装置、および/またはバッテリセルは、エネルギー貯蔵システムの特定の用途に応じて、直列および/または並列に電気的に接続されてもよい。
【0016】
図2~
図5は、複数のバッテリアセンブリ、複数の装置、および/または複数のバッテリセルの例示的な電気的構成を示す。しかしながら、これらの配置は、単なる例として提供されており、当技術分野で知られている任意の他の電気的配置を本発明の範囲内で利用してもよいことが当業者には理解されるであろう。
図2は、直列配置で電気的に接続された複数のパネル20のバッテリアセンブリ40を示す。電気配線32は、1つのパネルのバッテリアセンブリからのカソード47を、隣接するパネルの別のバッテリアセンブリからのアノード49に接続するように構成されている。
図3は、並列配置で電気的に接続された複数のパネル20のバッテリアセンブリを示す。電気配線32は、パネル20aのバッテリアセンブリ40aからのカソード47aを、パネル20bのバッテリアセンブリ40bからの別のカソード47bに接続するように構成されている。同様の構成により、パネル20aおよび20bのアノード(
図3には図示せず)が接続されている。特定のこのような実施形態では、パネル20は、ポート48を有し、これにより、電気配線32は、ポート48aおよび48bをそれぞれ介してカソード47aおよび47bに接続されている。
図4および
図5は、並列配置で電気的に接続された複数のパネル20のバッテリアセンブリ40を示す。電気配線32は、1つのパネル20aの1つのバッテリアセンブリ40aからのカソード47aを、隣接するパネル20bの第2のバッテリアセンブリ40bからの別のカソード47bに接続し、パネル20bのバッテリアセンブリ40bからのアノード49bを、パネル20cのバッテリアセンブリ40cからの別のアノード49cに接続するように構成されている。特に好ましい実施形態では、バッテリアセンブリ40および電気配線32は、視界から隠されている。例えば、このような好ましい実施形態では、バッテリアセンブリ40またはパネル20の外部の電気配線32の一部は、可視面22の反対側の背面23(例えば、背面23上のポート48)を介して接続されるであろう。
【0017】
バッテリセル(または複数のセル)の種類は、エネルギー貯蔵システムの特定の用途によって選択することができる。バッテリセルの化学的性質は、当該分野で知られ、かつ理解されており、任意の数の種々のバッテリセルの化学的性質を使用してもよい。例えば、少なくとも1つのバッテリセルは、任意の一次セルまたは二次セルの化学的性質であってもよい。特定の実施形態では、少なくとも1つのバッテリセルは、亜鉛-炭素、塩化亜鉛、アルカリ、オキシ水酸化ニッケル、リチウム(酸化銅、二硫化鉄、二酸化マンガン、フッ化炭素、および酸化クロムカソードを含む)、酸化水銀、亜鉛-空気、ザンボニー電池、酸化銀、およびマグネシウムからなる群から選択される。特定の他の実施形態では、少なくとも1つのバッテリセルは、ニッケル-カドミウム、鉛-酸、ニッケル-金属水素化物、ニッケル-亜鉛、銀-亜鉛、およびリチウムイオンからなる群から選択される二次セルの化学的性質であってもよい。他の可能な電池セルは、リチウムイオン、リチウム金属、リチウム空気、および固体電池の変形を含む。特に好ましい実施形態では、バッテリセルは、リチウムイオンバッテリセルである。しかしながら、使用されるバッテリセルの化学的性質は、所望の容量および電圧を含む多くの要因に依存することが理解されるのであろう。同様に、2つ以上のバッテリセルが使用される場合、バッテリセルの特定の配置は、これらの要因に基づいて選択されるであろう。例えば、より大きな静電容量が望まれる場合、バッテリセルは、並列回路で電気的に接続される。しかしながら、より大きな電圧が望まれる場合、バッテリセルは、電気的に直列に接続される。バッテリセルは、角柱セル、円筒セル、パウチセル、あるいはそれらの任意の組合せであってもよい。バッテリセルの特定の形状および寸法は、用途に合わせてカスタマイズすることができる。例えば、角柱セルは、最良の空間利用を提供し、一方、円筒セルは、高出力バッテリシステム用により単純な冷却オプションを提供し得る。また、パウチセルは、建築材料およびバッテリシステムの設計においてより多くの柔軟性を可能にするために使用されてもよい。特定の実施形態では、パネル20は、バッテリセルの状態または動作の少なくとも1つの態様を監視および/または制御するように動作可能なバッテリアセンブリ30に関連付けられた電子回路を有する。好ましい実施形態では、この電子回路は、建築材料内に埋め込まれる。
【0018】
特定の実施形態では、パネル20はさらに、パネル20を壁取付構造体30に固定するように構成された締結要素24を有する。締結要素24は、様々な締結具のいずれであってもよく、締結要素24の特定の設計および構成は、パネル20のサイズおよび重量、壁構造体10が内壁であるか外面であるか、およびエネルギー貯蔵システムの特定の用途に対する安全上の考慮事項等の様々な要因に依存するであろう。
図2~
図5の実施形態に示されるように、締結要素24は、パネル20が取付構造体30に取り外し可能に接続されるように、取付構造体30の受容部分34に挿入されるように構成され得る。特定の実施形態では、締結要素24は、パネル20を取付構造体30に構造的に固定するだけでなく、バッテリアセンブリ40の埋め込み部分と電気配線32との間に電気的接続を提供するように機能する役割を果たすことができる(
図4および
図5を参照)。しかしながら、特定の他の実施形態では、締結要素24は、バッテリアセンブリ40に対して電気接続を提供しない(
図2および
図3を参照)。当業者であれば、
図2~
図5に示す実施形態は、単に例示的な締結機構であり、選択された機構がパネル20を取付構造体30に固定することができる限り、任意の数の他の締結機構を使用してもよいことを理解するのであろう。
【0019】
同様に、取付構造体30は、種々の形態のいずれかであってもよく、特定の設計および構成は、パネル20のサイズおよび重量、壁構造体10が内壁であるか外面であるか、および安全上の考慮事項等の要因に依存する。しかしながら、特定の実施形態では、取り付け構造30は、
図1~
図5に示すように、副壁構造体50に取り付けられたレールおよび/またはクロスメンバを有する。
図4および
図5に示すように、特定の実施形態では、取付構造体30は、例えば締結要素24を介してバッテリセルに電力を供給し、および/またはバッテリセルから電力を供給するように動作可能な電気回路36を有する。そのような実施形態では、電気回路36は、壁構造体10を有する複数のパネル20が並列または直列に接続されるように構成されてもよい。同時に、または代替的に、壁構造体10は、各パネル20内に含まれる少なくとも1つのバッテリセルの少なくとも1つの動作態様の状態を監視および/または動作態様を制御するように動作可能な電子回路(図示せず、電気回路36とは別個)に結合されている。
【0020】
本発明のエネルギー貯蔵システムは、建物、シェルター、施設、あるいは構造物(例えば、敷地または境界を分離するための建築用スクリーンまたはフェンス)またはその任意の部分に電力を供給するために使用することができる。特定の実施形態では、本方法は、壁構造体10を建物の表面上に、例えば、内装または外装の形態で設置することを有するが、本発明の実施形態はまた、床被覆、天井、または他の建物表面を形成するために使用されてもよい。
図1に最もよく示されているように、壁構造体10は、複数のパネル20を有している。壁構造体10は、機能パネルと非機能パネルとの混合物を有してもよく、これにより、複数のパネルは、バッテリアセンブリを有するが、一方で、一部のパネルは、バッテリアセンブリを有さない(すなわち、一部のパネルは単に美的である)ことが理解されるのであろう。好ましい実施形態では、パネル20は、例えば、締結要素24のいくつかの変形例を使用することによって、パネルを取付構造体30に取り外し可能に固定することによって設置されている。複数のパネル20は、電気回路に接続され、電気回路は、電気配線32と、電力源に結合された回路36とを有することができる。電力源は、公共事業(例えば、石炭、天然ガス火力発電所、原子力発電所、風力発電所、太陽光発電所、あるいは水力発電所)または独立型電力システム(例えば、送電網外のローカルソーラー、風力、または化石燃料発電機)であってもよい。いずれにしても、電力源は、少なくとも1つ(または一部、または全部)のパネル20内の少なくとも1つ(または一部、または全部)のバッテリセルを充電するために使用されている。バッテリセルからの電気エネルギー分配が望まれる場合、パネル20は、電力源から選択的に断線され、電力は、建物内で使用するためにパネル20内に埋め込まれたバッテリセル46から回収される。特定の実施形態では、バッテリセルを充電するために使用されるのと同じ電気回路を、建物内で使用するためのセルから回収された電力を供給するために使用することもできる。そのような実施形態では、電気回路は典型的には、要求に基づいて、電力をセルに対して、および/またはセルから電力を選択的に分配するための、および/またはセルを並列から直列に切り替えるための制御システムを有するであろう。