(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】縮合イミダゾピペリジンJAK阻害剤化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20220704BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220704BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220704BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220704BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220704BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220704BHJP
A61P 27/00 20060101ALI20220704BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
C07D471/04 107Z
A61K9/10
A61K31/5377
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/00
A61P27/00
A61P27/04
C07D471/04 CSP
(21)【出願番号】P 2019559297
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018030148
(87)【国際公開番号】W WO2018204238
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514190040
【氏名又は名称】セラヴァンス バイオファーマ アール&ディー アイピー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファザリー, ポール アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジアン, ラン
(72)【発明者】
【氏名】マッキネル, ロバート マレー
(72)【発明者】
【氏名】サラディー, ヴェンカット アール.
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ダブロス, マータ
(72)【発明者】
【氏名】ゼレム, ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン, ノア
(72)【発明者】
【氏名】クラインシェック, メラニー エー.
(72)【発明者】
【氏名】クレーター, グレン ディー.
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522865(JP,A)
【文献】JONES, P et al.,Design and Synthesis of a Pan-Janus Kinase Inhibitor Clinical Candidate (PF-06263276) Suitable for Inhaled and Topical Delivery for the Treatment of Inflammatory Diseases of the Lungs and Skin,Journal of Medicinal Chemistry,2017年,Vol. 60,pp. 767-786
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化19】
の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
式:
【化20】
の化合物。
【請求項3】
式:
【化21】
の化合物の結晶形態であって、10.61±0.20、11.84±0.20、14.94±0.20、18.26±0.20および19.06±0.20の2θ値における回折ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、結晶形態。
【請求項4】
前記粉末X線回折パターンが、13.32±0.20、17.69±0.20および21.10±0.20の2θ値における追加の回折ピークを有することをさらに特徴とする、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項5】
前記粉末X線回折パターンが、10.85±0.20、16.14±0.20、16.35±0.20、18.43±0.20、19.20±0.20、19.49±0.20、20.72±0.20、21.94±0.20、22.64±0.20、23.64±0.20、25.19±0.20および28.08±0.20から選択される2θ値における2つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを有することをさらに特徴とする、請求項4に記載の結晶形態。
【請求項6】
268℃から277℃の間の温度で吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録した示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項7】
272.6±2℃にピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録した示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項8】
式:
【化22】
の化合物の結晶形態であって、8.16±0.20、8.97±0.20、15.29±0.20、16.70±0.20、18.00±0.20および20.18±0.20の2θ値における回折ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、結晶形態。
【請求項9】
前記粉末X線回折パターンが、7.69±0.20、10.66±0.20、11.46±0.20、11.91±0.20、15.80±0.20、17.02±0.20、18.83±0.20、22.39±0.20、22.98±0.20、24.89±0.20および26.54±0.20から選択される2θ値における2つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを有することをさらに特徴とする、請求項
8に記載の結晶形態。
【請求項10】
215℃から229℃の間の温度で吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項
8に記載の結晶形態。
【請求項11】
221.7±3℃のピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする、請求項
8に記載の結晶形態。
【請求項12】
請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
目への塗布に好適である、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
硝子体内注射に好適である、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
懸濁剤である、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
式1の化合物
【化23】
または薬学的に許容されるその塩を調製するための方法であって、
(a)式6の化合物:
【化24】
を、式7の化合物:
【化25】
[式中、R
Aは、水素または2,5-ジオキソピロリジニルである]
と反応させるステップと、
(b)必要に応じて薬学的に許容される塩を調製するステップと
を含み、
式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する、方法。
【請求項17】
式6の化合物:
【化26】
またはその塩。
【請求項18】
請求項3に記載の結晶形態を調製する方法であって、
(a)1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンの均質混合物を、極性非プロトン性溶媒中、または極性水混和性溶媒中、または極性非プロトン性溶媒および極性水混和性溶媒の混合物中において、45から75℃の間の温度で形成するステップと、
(b)前記均質混合物を、水混和性溶媒および水の混合物に、60から90℃の間の温度で添加して、第2の混合物を得るステップと、
(c)水を前記第2の混合物に、60から90℃の間の温度でゆっくりと添加して、スラリーを形成するステップと、
(d)前記スラリーから前記結晶形態を単離するステップと
を含む、方法。
【請求項19】
ステップ(a)の前記極性非プロトン性溶媒が、DMSO、DMF、NMP、DMAcおよびニトロメタンからなる群から選択され、ステップ(a)の前記極性水混和性溶媒が、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノールおよびTHFからなる群から選択され、ステップ(b)の前記水混和性溶媒が、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、THF、DMSO、DMF、NMP、DMAcおよびニトロメタンからなる群から選択される、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物における眼疾患の処置において使用するための、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態を含む組成物。
【請求項21】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞またはアトピー性角結膜炎である、請求項
20に記載の組成物。
【請求項22】
前記眼疾患が、糖尿病性黄斑浮腫またはブドウ膜炎である、請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
哺乳動物における眼疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態の使用。
【請求項24】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞またはアトピー性角結膜炎である、請求項
23に記載の使用。
【請求項25】
哺乳動物における眼疾患を処置するための、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項26】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞またはアトピー性角結膜炎である、請求項
25に記載の組成物。
【請求項27】
前記眼疾患が、ブドウ膜炎または糖尿病性黄斑浮腫である、請求項
26に記載の組成物。
【請求項28】
哺乳動物における皮膚の炎症性疾患の処置において使用するための、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態を含む組成物。
【請求項29】
前記皮膚の前記炎症性疾患が、アトピー性皮膚炎である、請求項
28に記載の組成物。
【請求項30】
哺乳動物における皮膚の炎症性疾患の処置において使用するための医薬の製造における、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態の使用。
【請求項31】
前記皮膚の前記炎症性疾患が、アトピー性皮膚炎である、請求項
30に記載の使用。
【請求項32】
哺乳動物における皮膚の炎症性疾患を処置するための、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む組成物であって、前記哺乳動物の前記皮膚に塗布されることを特徴とする、組成物。
【請求項33】
前記皮膚の前記炎症性疾患が、アトピー性皮膚炎である、請求項
32に記載の組成物。
【請求項34】
哺乳動物における呼吸器疾患の処置において使用するための、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態を含む組成物。
【請求項35】
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、特発性肺線維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、肺移植拒絶反応、原発性移植片機能不全、器質化肺炎、急性肺移植拒絶反応、リンパ球性細気管支炎、慢性肺同種移植片機能不全、拘束性慢性肺同種移植片機能不全、好中球性同種移植片機能不全または閉塞性細気管支炎である、請求項
34に記載の組成物。
【請求項36】
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性肺同種移植片機能不全または慢性閉塞性肺疾患である、請求項
35に記載の組成物。
【請求項37】
哺乳動物における呼吸器疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態の使用。
【請求項38】
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、特発性肺線維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、肺移植拒絶反応、原発性移植片機能不全、器質化肺炎、急性肺移植拒絶反応、リンパ球性細気管支炎、慢性肺同種移植片機能不全、拘束性慢性肺同種移植片機能不全、好中球性同種移植片機能不全または閉塞性細気管支炎である、請求項
37に記載の使用。
【請求項39】
哺乳動物における呼吸器疾患を処置するための、請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3から
11のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項40】
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、特発性肺線維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、肺移植拒絶反応、原発性移植片機能不全、器質化肺炎、急性肺移植拒絶反応、リンパ球性細気管支炎、慢性肺同種移植片機能不全、拘束性慢性肺同種移植片機能不全、好中球性同種移植片機能不全または閉塞性細気管支炎である、請求項
39に記載の組成物。
【請求項41】
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性肺同種移植片機能不全または慢性閉塞性肺疾患である、請求項
40に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の疾患、特に眼、皮膚および呼吸器疾患の処置に有用な、JAKキナーゼ阻害剤化合物を対象にする。本発明は、化合物の結晶形態、そのような化合物を含む医薬組成物、そのような化合物を使用してJAK阻害剤による処置に適している疾患を処置する方法、ならびに化合物を調製するために有用なプロセスおよび中間体も対象にする。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンフォカインおよび腫瘍壊死因子を含む細胞間シグナル伝達分子である。サイトカインは、通常の細胞増殖および免疫調節のために重大であるだけでなく、免疫媒介性疾患を推進し、悪性細胞の増殖にも寄与する。多くのサイトカインのレベル上昇は、多数の疾患または状態、特に炎症を特徴とする疾患の病理学に関係するとされてきた。疾患に関係する多くのサイトカインが、チロシンキナーゼのヤヌスファミリー(JAK)に依存するシグナル伝達経路を介して作用し、これは、転写因子のシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)ファミリーを介してシグナル伝達する。
【0003】
JAKファミリーは、4つのメンバー、JAK1、JAK2、JAK3およびチロシンキナーゼ2(TYK2)を含む。サイトカインのJAK依存性サイトカイン受容体との結合は、JAKキナーゼ上のチロシン残基のリン酸化をもたらす受容体二量体化を誘発し、JAK活性化を達成する。リン酸化JAKは、今度は、種々のSTATタンパク質と結合してリン酸化し、これが、二量体化し、細胞核に内在化し、遺伝子転写を直接的に変調し、数ある効果の中でも、炎症性疾患に関連する下流効果につながる。JAKは通常、ホモ二量体またはヘテロ二量体として対になってサイトカイン受容体と会合する。特異的なサイトカインは、特異的なJAK対合に関連する。JAKファミリーの4つのメンバーのそれぞれは、炎症に関連するサイトカインのうちの少なくとも1つのシグナル伝達に関係する。
【0004】
炎症は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞およびアトピー性角結膜炎を含む多くの眼疾患において、顕著な役割を果たす。ブドウ膜炎は、複数の眼内炎症状態を網羅し、多くの場合、公知の感染トリガーなしに生じる自己免疫である。該状態は、米国において、約200万人の患者に影響を及ぼしていると推定される。一部の患者において、ブドウ膜炎に関連する慢性炎症は、組織破壊につながり、米国において失明の5番目の主な原因である。JAK-STAT経路を介してシグナル伝達する、ブドウ膜炎患者の目において上昇したサイトカインは、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-23およびIFN-γを含む(HoraiおよびCaspi、J Interferon Cytokine Res、2011年、31巻、733~744頁;Ooiら、Clinical Medicine and Research、2006年、4巻、294~309頁)。ブドウ膜炎のための既存の療法は、多くの場合、準最適であり、多くの患者はコントロール不良である。ステロイドは、多くの場合、有効であるが、白内障および眼圧の増大/緑内障に関連する。
【0005】
糖尿病性網膜症(DR)は、網膜における血管への損傷によって引き起こされる。これは、糖尿病患者の間で、視力喪失の最も一般的な原因である。血管新生および炎症経路は、該疾患において、重要な役割を果たす。多くの場合、DRは、糖尿病性黄斑浮腫(DME)に進行することになり、これは、糖尿病患者における視力喪失の最も頻繁な原因である。該状態は、米国単独で約150万人の患者に影響を及ぼしていると推定され、そのうち約20%が両目に影響を及ぼす疾患を有する。IL-6等のJAK-STAT経路を介してシグナル伝達するサイトカイン、ならびにその産生がJAK-STAT経路シグナル伝達によって部分的に推進されるIP-10およびMCP-1(代替としてCCL2と称される)等の他のサイトカインは、DR/DMEに関連する炎症において役割を果たすと考えられる(Abcouwer、J Clin Cell Immunol、2013年、付録1、1~12頁;Sohnら、American Journal of Opthalmology、2011年、152巻、686~694頁;OwenおよびHartnett、Curr Diab Rep、2013年、13巻、476~480頁;Cheungら、Molecular Vision、2012年、18巻、830~837頁;Dongら、Molecular Vision、2013年、19巻、1734~1746頁;Funatsuら、Ophthalmology、2009年、116巻、73~79頁)。DMEのための既存の療法は、準最適であり、硝子体内抗VEGF処置は、一部の患者においてのみ有効であり、ステロイドは、白内障および眼圧の増大に関連する。
【0006】
ドライアイ疾患(DED)は、米国においておよそ500万人の患者に影響を及ぼしている多因子障害である。眼表面の炎症は、この疾患の発症および伝播において重要な役割を果たすと考えられる。IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6およびIFN-γ等のサイトカインのレベル上昇は、DED患者の眼液において留意されてきており(Stevensonら、Arch Ophthalmol、2012年、130巻、90~100頁)、レベルは、多くの場合、疾患重症度と相関している。加齢黄斑変性およびアトピー性角結膜炎も、JAK依存性サイトカインに関連すると考えられている。
【0007】
網膜静脈閉塞(RVO)は、高度に蔓延している視力に障害を起こす疾患である。網膜血流の閉塞は、網膜血管系の損傷、出血および組織虚血につながり得る。RVOの原因は多因子であるが、血管および炎症性メディエーターの両方が重要であることが示されている(Deobhaktaら、International Journal of Inflammation、2013年、論文ID438412)。IL-6およびIL-13等のJAK-STAT経路を介してシグナル伝達するサイトカイン、ならびにその産生がJAK-STAT経路シグナル伝達によって部分的に推進されるMCP-1等の他のサイトカインは、RVO患者の眼組織においてレベル上昇して検出されている(Shchukoら、Indian Journal of Ophthalmology、2015年、63巻(12号)、905~911頁)。RVOの多くの患者が光凝固によって処置されるが、これは、本質的に破壊的な療法である。抗VEGF剤も使用されるが、それらは一部の患者においてのみ有効である。目における炎症のレベルを低減させるステロイド薬(トリアムシノロンアセトニドおよびデキサメタゾンインプラント)は、ある特定の形態のRVOを持つ患者に有益な結果を提供することも示されているが、それらは白内障および眼圧の増大/緑内障を引き起こすことも示されている。
【0008】
アトピー性皮膚炎(AD)は、アメリカ合衆国単独において推定1400万人の人々に影響を及ぼしている、一般的な慢性炎症性皮膚疾患である。ADは、先進国において小児の10~20%および成人の1~3%に影響を及ぼしていると推定され(Baoら、JAK-STAT、2013年、2巻、e24137頁)、有病率は増大しつつある。JAK-STAT経路に依拠する炎症促進性サイトカイン、特に、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13およびIFNγの上昇は、ADに関連するとされてきた(Baoら、Leungら、The Journal of Clinical Investigation、2004年、113巻、651~657頁)。加えて、JAK対合を介してシグナル伝達する別のサイトカインであるIL-31の上方調節は、ADの慢性状態に関連する掻痒において役割を有することが示されている(Sunkolyら、Journal of Allergy and Clinical Immunology、2006年、117巻、411~417頁)。
【0009】
喘息は、予防も治癒もない、気道の慢性疾患である。該疾患は、炎症、線維症、過敏応答性および気道のリモデリングを特徴とし、これらはすべて、気流制限に寄与する。世界中で推定3億人が喘息に罹患しており、喘息を持つ人々の数は、2025年までに1億人超増加するであろうと推定される。ほとんどの患者は、ロイコトリエン修飾因子および/または長時間作用型ベータアゴニストと組み合わせられてよい吸入コルチコステロイドの使用により、喘息症状の制御を実現することができるが、疾患が従来の療法によって制御されない重症喘息を持つ患者のサブセットが残る。JAK-STAT経路を介してシグナル伝達する、喘息の炎症に関係するサイトカインは、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-11、IL-13、IL-23、IL-31、IL-27、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、インターフェロン-γ(IFNγ)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。気道の炎症は、喘息に加えて、他の呼吸器疾患の特徴である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、閉塞性細気管支炎およびサルコイドーシスも、病態生理学がJAKシグナル伝達サイトカインに関連していると考えられる呼吸器官疾患である。
炎症性疾患において上昇したサイトカインの数および各サイトカインが特定のJAK対合に関連することを考慮すると、JAKファミリーのすべてのメンバーに対してpan活性を持つ化学阻害剤は、眼、皮膚および呼吸器疾患の処置について広範な有用性を有し得る。強力なpan-JAK阻害剤が依然として必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】HoraiおよびCaspi、J Interferon Cytokine Res、2011年、31巻、733~744頁
【文献】Ooiら、Clinical Medicine and Research、2006年、4巻、294~309頁
【文献】Abcouwer、J Clin Cell Immunol、2013年、付録1、1~12頁
【文献】Sohnら、American Journal of Opthalmology、2011年、152巻、686~694頁
【文献】OwenおよびHartnett、Curr Diab Rep、2013年、13巻、476~480頁
【文献】Cheungら、Molecular Vision、2012年、18巻、830~837頁
【文献】Dongら、Molecular Vision、2013年、19巻、1734~1746頁
【文献】Funatsuら、Ophthalmology、2009年、116巻、73~79頁
【文献】Stevensonら、Arch Ophthalmol、2012年、130巻、90~100頁
【文献】Deobhaktaら、International Journal of Inflammation、2013年、論文ID438412
【文献】Shchukoら、Indian Journal of Ophthalmology、2015年、63巻(12号)、905~911頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、炎症性疾患の処置に有用なJAK阻害剤化合物を提供する。
【0012】
特に、一態様では、本発明は、式
【化1】
の1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン、以後、化合物1、または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0013】
本発明は、化合物の結晶形態、形態1および形態2も提供する。
【0014】
本発明は、化合物1またはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物も提供する。
【0015】
一態様では、本発明は、哺乳動物の眼疾患を処置する方法であって、この方法が、本発明の化合物1または薬学的組成物をその哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。一態様では、眼疾患は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞およびアトピー性角結膜炎である。特に、眼疾患は、糖尿病性黄斑浮腫またはブドウ膜炎である。
【0016】
さらに別の方法の態様では、本発明は、皮膚の炎症性疾患、特にアトピー性皮膚炎を処置する方法であって、本発明の化合物1または医薬組成物を、哺乳動物の皮膚に塗布するステップを含む、方法を提供する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、哺乳動物における呼吸器疾患を処置する方法であって、本発明の化合物1または薬学的に許容されるその塩または医薬組成物を、哺乳動物に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0018】
別個の明確な態様において、本発明は、化合物1を調製するために有用な、本明細書において記述されている合成プロセスおよび中間体も提供する。
【0019】
本発明は、医学療法において使用するための本明細書において記述されている通りの化合物1、および哺乳動物における眼疾患、皮膚疾患または呼吸器疾患を処置するための製剤または医薬の製造における本発明の化合物の使用も提供する。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
式:
【化19】
の化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目2)
式:
【化20】
の化合物。
(項目3)
式:
【化21】
の化合物の結晶形態であって、10.61±0.20、11.84±0.20、14.94±0.20、18.26±0.20および19.06±0.20の2θ値における回折ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、結晶形態。
(項目4)
前記粉末X線回折パターンが、13.32±0.20、17.69±0.20および21.10±0.20の2θ値における追加の回折ピークを有することをさらに特徴とする、項目3に記載の結晶形態。
(項目5)
前記粉末X線回折パターンが、10.85±0.20、16.14±0.20、16.35±0.20、18.43±0.20、19.20±0.20、19.49±0.20、20.72±0.20、21.94±0.20、22.64±0.20、23.64±0.20、25.19±0.20および28.08±0.20から選択される2θ値における2つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを有することをさらに特徴とする、項目4に記載の結晶形態。
(項目6)
ピーク位置が図1に示されているパターンのピーク位置と実質的に一致する粉末X線回折パターンを特徴とする、項目3に記載の結晶形態。
(項目7)
268℃から277℃の間の温度で吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録した示差走査熱量測定トレースを特徴とする、項目3に記載の結晶形態。
(項目8)
272.6±2℃にピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録した示差走査熱量測定トレースを特徴とする、項目3に記載の結晶形態。
(項目9)
図2に示されているものと実質的に一致する示差走査熱量測定トレースを特徴とする、項目3に記載の結晶形態。
(項目10)
式:
【化22】
の化合物の結晶形態であって、8.16±0.20、8.97±0.20、15.29±0.20、16.70±0.20、18.00±0.20および20.18±0.20の2θ値における回折ピークを含む粉末X線回折パターンを特徴とする、結晶形態。
(項目11)
前記粉末X線回折パターンが、7.69±0.20、10.66±0.20、11.46±0.20、11.91±0.20、15.80±0.20、17.02±0.20、18.83±0.20、22.39±0.20、22.98±0.20、24.89±0.20および26.54±0.20から選択される2θ値における2つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを有することをさらに特徴とする、項目10に記載の結晶形態。
(項目12)
ピーク位置が図6に示されているパターンのピーク位置と実質的に一致する粉末X線回折パターンを特徴とする、項目10に記載の結晶形態。
(項目13)
215℃から229℃の間の温度で吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする、項目10に記載の結晶形態。
(項目14)
221.7±3℃のピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする、項目10に記載の結晶形態。
(項目15)
図7に示されているものと実質的に一致する示差走査熱量測定トレースを特徴とする、項目10に記載の結晶形態。
(項目16)
項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
(項目17)
目への塗布に好適である、項目16に記載の医薬組成物。
(項目18)
硝子体内注射に好適である、項目17に記載の医薬組成物。
(項目19)
懸濁剤である、項目18に記載の医薬組成物。
(項目20)
式1の化合物
【化23】
または薬学的に許容されるその塩を調製するための方法であって、
(a)式6の化合物:
【化24】
を、式7の化合物:
【化25】
[式中、R
A
は、水素または2,5-ジオキソピロリジニルである]
と反応させるステップと、
(b)必要に応じて薬学的に許容される塩を調製するステップと
を含み、
式1の化合物または薬学的に許容されるその塩を提供する、方法。
(項目21)
式6の化合物:
【化26】
またはその塩。
(項目22)
項目3に記載の結晶形態を調製する方法であって、
(a)1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンの均質混合物を、極性非プロトン性溶媒中、または極性水混和性溶媒中、または極性非プロトン性溶媒および極性水混和性溶媒の混合物中において、45から75℃の間の温度で形成するステップと、
(b)前記均質混合物を、水混和性溶媒および水の混合物に、60から90℃の間の温度で添加して、第2の混合物を得るステップと、
(c)水を前記第2の混合物に、60から90℃の間の温度でゆっくりと添加して、スラリーを形成するステップと、
(d)前記スラリーから前記結晶形態を単離するステップと
を含む、方法。
(項目23)
ステップ(a)の前記極性非プロトン性溶媒が、DMSO、DMF、NMP、DMAcおよびニトロメタンからなる群から選択され、ステップ(a)の前記極性水混和性溶媒が、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノールおよびTHFからなる群から選択され、ステップ(b)の前記水混和性溶媒が、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、THF、DMSO、DMF、NMP、DMAcおよびニトロメタンからなる群から選択される、項目22に記載の方法。
(項目24)
哺乳動物における眼疾患の処置において使用するための、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態。
(項目25)
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞またはアトピー性角結膜炎である、項目24に記載の化合物または結晶形態。
(項目26)
前記眼疾患が、糖尿病性黄斑浮腫またはブドウ膜炎である、項目25に記載の化合物または結晶形態。
(項目27)
哺乳動物における眼疾患の処置のための医薬の製造における、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態の使用。
(項目28)
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞またはアトピー性角結膜炎である、項目27に記載の使用。
(項目29)
哺乳動物における眼疾患を処置する方法であって、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を、前記哺乳動物の目に投与するステップを含む、方法。
(項目30)
前記眼疾患が、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞またはアトピー性角結膜炎である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記眼疾患が、ブドウ膜炎または糖尿病性黄斑浮腫である、項目30に記載の方法。
(項目32)
哺乳動物における皮膚の炎症性疾患の処置において使用するための、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態。
(項目33)
前記皮膚の前記炎症性疾患が、アトピー性皮膚炎である、項目32に記載の化合物または結晶形態。
(項目34)
哺乳動物における皮膚の炎症性疾患の処置において使用するための医薬の製造における、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態の使用。
(項目35)
前記皮膚の前記炎症性疾患が、アトピー性皮膚炎である、項目34に記載の使用。
(項目36)
哺乳動物における皮膚の炎症性疾患を処置する方法であって、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を、前記哺乳動物の前記皮膚に塗布するステップを含む、方法。
(項目37)
前記皮膚の前記炎症性疾患が、アトピー性皮膚炎である、項目36に記載の方法。
(項目38)
哺乳動物における呼吸器疾患の処置において使用するための、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態。
(項目39)
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、特発性肺線維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、肺移植拒絶反応、原発性移植片機能不全、器質化肺炎、急性肺移植拒絶反応、リンパ球性細気管支炎、慢性肺同種移植片機能不全、拘束性慢性肺同種移植片機能不全、好中球性同種移植片機能不全または閉塞性細気管支炎である、項目38に記載の化合物または結晶形態。
(項目40)
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性肺同種移植片機能不全または慢性閉塞性肺疾患である、項目39に記載の化合物または結晶形態。
(項目41)
哺乳動物における呼吸器疾患の処置のための医薬の製造における、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態の使用。
(項目42)
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、特発性肺線維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、肺移植拒絶反応、原発性移植片機能不全、器質化肺炎、急性肺移植拒絶反応、リンパ球性細気管支炎、慢性肺同種移植片機能不全、拘束性慢性肺同種移植片機能不全、好中球性同種移植片機能不全または閉塞性細気管支炎である、項目41に記載の使用。
(項目43)
哺乳動物における呼吸器疾患を処置する方法であって、前記哺乳動物に、項目1もしくは2に記載の化合物または項目3から15のいずれか一項に記載の結晶形態と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
(項目44)
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、特発性肺線維症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、肺移植拒絶反応、原発性移植片機能不全、器質化肺炎、急性肺移植拒絶反応、リンパ球性細気管支炎、慢性肺同種移植片機能不全、拘束性慢性肺同種移植片機能不全、好中球性同種移植片機能不全または閉塞性細気管支炎である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記呼吸器疾患が、喘息、慢性肺同種移植片機能不全または慢性閉塞性肺疾患である、項目44に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の種々の態様を、付随する図面を参照して例証する。
【0021】
【
図1】
図1は、化合物1の結晶形態2(以後、形態2)の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。
【0022】
【
図2】
図2は、結晶形態2の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【0023】
【
図3】
図3は、結晶形態2の熱重量分析(TGA)プロットを示す。
【
図4】
図4は、約25℃の温度で観察された結晶形態2の動的水分吸着(DMS)等温線を示す。
【0024】
【0025】
【
図6】
図6は、化合物1の結晶形態1(以後、形態1)の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。
【0026】
【
図7】
図7は、結晶形態1の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【0027】
【
図8】
図8は、結晶形態1の熱重量分析(TGA)プロットを示す。
【
図9】
図9は、約25℃の温度で観察された結晶形態1の動的水分吸着(DMS)等温線を示す。
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
化学構造は、本明細書において、ChemDrawソフトウェア(PerkinElmer,Inc.、Cambridge、MA)において実装される通り、IUPAC既約に従って命名される。
さらに、本発明の化合物の構造におけるテトラヒドロイミダゾピリジン部分のイミダゾ部は、互変異性形態で存在する。化合物は、
【化2】
として同等に表され得る。
【0030】
IUPAC既約によれば、これらの表現は、テトラヒドロイミダゾピリジン部の原子の異なる番号付けを生み出す。したがって、この構造は、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-3,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンと指定される。これは、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンとも指定され得る。構造が特定の形態で示されている、または命名されているが、本発明は、それらの互変異性体も含むことが理解されるであろう。
【0031】
本発明の化合物は、いくつかの塩基性基を含有し、したがって、化合物は、遊離塩基として、またはモノプロトン化塩形態、ジプロトン化塩形態もしくはそれらの混合物等の種々の塩形態で存在することができる。すべてのそのような形態は、別段の指示がない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0032】
本発明は、式1の同位体標識化合物、すなわち、原子が、同じ原子番号を有するが自然界において優勢である原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置きかえられているまたは富化されている、式1の化合物も含む。式1の化合物に組み込まれ得る同位体の例は、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18Oおよび18Fを含むがこれらに限定されない。特に興味深いのは、三重水素または炭素-14が富化されている式1の化合物であり、これらの化合物は、例えば、組織分布研究において使用され得る。同じく特に興味深いのは、とりわけ代謝部位において重水素が富化されている式1の化合物であり、これらの化合物は、より優れた代謝安定性を有することが期待される。加えて、特に興味深いのは、11C、18F、15Oおよび13N等の陽電子放出同位体が富化されている式1の化合物であり、これらの化合物は、例えば、陽電子放射断層撮影(PET)研究において使用され得る。
【0033】
定義
その種々の態様および実施形態を含む本発明について記述する場合、下記である。
用語「治療有効量」は、処置を必要とする患者に投与された場合に処置を達成するために十分な量を意味する。
【0034】
用語「処置すること」または「処置」は、患者(特にヒト)において処置されている医学的状態、疾患または障害(例えば、呼吸器疾患)を、予防すること、寛解させることまたは抑制すること;あるいは医学的状態、疾患または障害の症状を緩和することを意味する。
【0035】
用語「薬学的に許容される塩」は、患者またはヒト等の哺乳動物への投与に許容される塩(例えば、所与の投薬レジームのための許容される哺乳類の安全性を有する塩)を意味する。代表的な薬学的に許容される塩は、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エジシル酸、フマル酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルクロン酸(glucoronic)、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸およびキシナホ酸等の塩を含む。
【0036】
用語「その塩」は、酸の水素が金属カチオンまたは有機カチオン等のカチオンによって置きかえられた場合に形成される化合物を意味する。例えば、カチオンは、式1の化合物のプロトン化形態、すなわち、1つまたは複数のアミノ基が酸によってプロトン化された形態であることができる。典型的には、塩は、薬学的に許容される塩であるが、これは、患者への投与が意図されていない中間化合物の塩には必要とされない。
【0037】
用語「アミノ保護基」は、アミノ窒素における望ましくない反応を防止するために好適な保護基を意味する。代表的なアミノ保護基は、ホルミル;アシル基、例えば、アセチルおよびトリ-フルオロアセチル等のアルカノイル基;tertブトキシカルボニル(Boc)等のアルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)等のアリールメトキシカルボニル基;ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)および1,1-ジ-(4’-メトキシフェニル)メチル等のアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)等のシリル基等を含むがこれらに限定されない。
【0038】
用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ基における望ましくない反応を防止するために好適な保護基を意味する。代表的なヒドロキシ保護基は、メチル、エチルおよびtert-ブチル等のアルキル基;アシル基、例えば、アセチル等のアルカノイル基;ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、9-フルオレニルメチル(Fm)およびジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)等のアリールメチル基;トリメチルシリル(TMS)およびtert-ブチルジメチルシリル(TBS)等のシリル基等を含むがこれらに限定されない。
【0039】
多数の保護基ならびにそれらの導入および除去は、T. W. GreeneおよびP.G.M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New Yorkにおいて記述されている。
【0040】
一般的合成手順
化合物1およびその中間体は、下記の一般的方法および手順に従い、市販されているまたは慣用的に調製される出発材料および試薬を使用して調製することができる。加えて、酸性または塩基性の原子または官能基を有する化合物は、別段の指示がない限り、塩として使用されてよいか、または生成されてよい(一部の事例において、特定の反応における塩の使用は、反応を行う前に、慣用的手順を使用して、塩の、非塩形態、例えば遊離塩基への変換を必要とすることになる)。
【0041】
本発明の特定の実施形態が下記の手順において示され得るまたは記述され得るが、当業者ならば、そのような手順を使用して、または当業者に公知である他の方法、試薬および出発材料を使用することによって、本発明の他の実施形態または態様も調製できることを認識するであろう。特に、化合物1は、反応物質を異なる順序で合わせて最終生成物を生成するまでの途中で異なる中間体を提供する、様々なプロセスルートによって調製されてよいことが分かるであろう。
【0042】
1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(化合物1)の調製を、添付の実施例において詳細に記述する。主要ステップをスキーム1にまとめる。
【化3】
式中、試薬7は、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2-モルホリノアセテートである、すなわち、変数R
Aは、実施例1に記述される通り、活性化剤2,5-ジオキソピロリジニルを表す。代替として、モルホリン-4-イル酢酸、すなわち、R
Aは、水素を表し、実施例4に記述される通り、典型的なアミド結合形成条件下で、試薬7として使用される。
【0043】
中間体3は、以下の調製1および3において記述されている通りに調製されてよい。主要な保護された中間体5の調製の代替方法は、スキーム2において例証される。
【化4】
【0044】
ブロモインダゾールアルデヒド8を、ベンジル保護されたイミン化合物2と反応させて、中間体9を提供してよい。反応は、典型的には、亜硫酸水素ナトリウムの存在下、約130℃から約140℃の間の温度で、約1から約6時間の間にわたってまたは反応が実質的に完了するまで、行われる。化合物9を、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を使用して還元して、化合物10を提供し、これを、典型的な鈴木・宮浦カップリング条件下、保護されたフェニルトリフルオロボレート11と組み合わせて、中間体5を提供する。反応は、典型的には、パラジウム触媒の存在下、昇温で行われる。スキーム2においてトリフルオロホウ酸カリウム塩として示される鈴木パートナー11は、対応するボロネート(以下の調製1における中間体1~5)を二フッ化水素カリウムと反応させて、中間体11を提供することによって調製することができる。代替として、ボロネート中間体を、トリフルオロボレート11の代わりに使用することができる。
【0045】
したがって、方法態様では、本発明は、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、スキーム1において例証される通り、式6の化合物を式7の化合物と反応させて、式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供するステップを含む、方法を提供する。
【0046】
追加の方法態様では、本発明は、式1の化合物を調製する際に有用な、式5の化合物および式6の化合物を提供する。
【0047】
結晶形態
別の態様では、本発明は、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)を結晶形態で提供する。
【0048】
形態1
本発明の結晶形態1は、化合物1の結晶性遊離形態である。一態様では、形態1は、数あるピークの中でも、8.16±0.20、8.97±0.20、15.29±0.20、16.70±0.20、18.00±0.20および20.18±0.20の2θ値における有意な回折ピークを有する粉末X線回折(PXRD)パターンを特徴とする。形態1は、7.69±0.20、10.66±0.20、11.46±0.20、11.91±0.20、15.80±0.20、17.02±0.20、18.83±0.20、22.39±0.20、22.98±0.20、24.89±0.20および26.54±0.20から選択される2θ値における3つまたはそれよりも多いおよび4つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを含む2つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを有するPXRDパターンをさらに特徴としてよい。別の態様では、形態1は、8.16±0.20、8.97±0.20、15.29±0.20、16.70±0.20、18.00±0.20および20.18±0.20から選択される2θ値における3、4、5または6つの回折ピークを有するPXRDパターンを特徴とする。
【0049】
粉末X線回折の分野で周知であるように、PXRDパラーンのピーク位置は、相対的ピーク高さよりも、比較的、実験の詳細(例えば、サンプル調製および装置のジオメトリの詳細)に感受性でない。したがって、1つの態様において、結晶形態1は、ピーク位置が、
図6に示されるものと実質的に一致する粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0050】
別の態様では、上記結晶形態1は、高温に曝露されたときの挙動によって特徴付けられる。
図7において実証される通り、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定(DSC)トレース(trace)は、約210℃から約234℃の範囲内、または約215℃から約229℃の間の範囲内、または約220℃から約224℃の間の範囲内の、溶融遷移として同定される吸熱熱流のピークを呈する。結晶形態1は、約221.7℃にピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする。
図8の熱重量分析(TGA)トレースは、約293℃の分解開始未満の温度で顕著な重量損失がないことを示す。
【0051】
本発明の形態1結晶性遊離形態について、代表的な動的水分吸着(DMS)トレースを
図9に示す。結晶形態1は、吸収および脱着の2サイクル間の小さなヒステリシスを実証した。形態1は、
図9に示されている通り、5%から70%相対湿度の湿度範囲における約0.99%の重量増加および5%から90%相対湿度の湿度範囲における約1.32%の重量増加を室温で実証した。形態1は、わずかに吸湿性であるとみなされる。
【0052】
結晶形態1は、上昇した温度および湿度への曝露時に安定であることが示されている。40℃および75%相対湿度の加速条件で36週間後、化学的純度における統計的に有意な変化は観察されなかった。
【0053】
形態1は、化合物1をエタノールに加熱しながら溶解し、続いて、アセトニトリルを添加することによって調製されてよく、ここで、アセトニトリルのエタノールに対する比は、約1:1、または約1:3~3:1である。次いで、得られた混合物を加温し、続いて、約20℃から約25℃の間の温度で、約4時間から約30時間の間にわたって、または約16時間にわたって撹拌する。次いで、固体を濾過し、乾燥させて、形態1を提供する。
【0054】
形態1は、化合物1をエタノールと混合し、混合物を、約50から約80℃の間の温度で、約2から30分間、または約10分間にわたって撹拌し、続いて、約50から約80℃の間の温度でアセトニトリルをゆっくりと添加することによって調製されてもよく、ここで、アセトニトリルのエタノールに対する体積比は、約3:1~1:1、または約1.5:1である。形態1の種晶を添加し、反応混合物を、約20℃から約25℃の間の温度で、約4時間から約30時間の間にわたって、または約18時間にわたって撹拌してよい。次いで、固体を濾過し、乾燥させて、形態1を提供する。
【0055】
形態2
本発明の結晶形態2は、化合物1の結晶性遊離形態である。一態様では、形態2は、数あるピークの中でも、10.61±0.20、11.84±0.20、14.94±0.20、18.26±0.20および19.06±0.20の2θ値における有意な回折ピークを有する粉末X線回折(PXRD)パターンを特徴とする。形態2は、13.32±0.20、17.69±0.20および21.10±0.20の2θ値における追加の回折ピークを有するPXRDパターンをさらに特徴としてよい。形態2は、10.85±0.20、16.14±0.20、16.35±0.20、18.43±0.20、19.20±0.20、19.49±0.20、20.72±0.20、21.94±0.20、22.64±0.20、23.64±0.20、25.19±0.20および28.08±0.20から選択される2θ値における3つまたはそれよりも多いおよび4つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを含む2つまたはそれよりも多い追加の回折ピークを有するPXRDパターンをさらに特徴としてよい。
【0056】
別の態様では、形態2は、10.61±0.20、11.84±0.20、13.32±0.20、14.94±0.20、17.69±0.20、18.26±0.20、19.06±0.20および21.10±0.20から選択される2θ値における3、4、5または6つの回折ピークを有するPXRDパターンを特徴とする。
【0057】
粉末X線回折の分野において周知であるように、PXRDパターンのピーク位置は、相対的なピークの高さよりも、試料調製および機器の形状の詳細等の実験詳細に対して比較的感度が低い。故に、一態様では、結晶形態2は、ピーク位置が
図1に示されているものと実質的に一致する粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0058】
結晶形態2の構造は、単結晶X線回折分析によってさらに特徴付けられた。結晶は、斜方晶系およびPbca空間群に属する。単位格子寸法は、a=9.7245(11)Å、b=16.8197(14)Å、c=32.604(4)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、体積=5332.8(10)Å3である。算出された密度は、1.302g/cm3である。結晶は、単位格子当たり8個の分子を含有する。構造は、結晶が水も他の溶媒分子も含有せず、分子構造が本明細書において描写されている通りの実施例1の化合物の構造と一致することを確認するものである。導出された原子位置から予測される粉末X線回折ピークは、観察された結果と良好に一致する。
【0059】
別の態様では、結晶形態2は、高温に曝露された場合のその挙動を特徴とする。
図2において実証される通り、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定(DSC)トレースは、約268℃から約277℃の範囲内、または約270℃から約275℃の間の範囲内、または約271℃から約274℃の間の範囲内の、溶融遷移として同定される吸熱熱流のピークを呈する。結晶形態2は、約272.6±2℃のピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする。
【0060】
図3の熱重量分析(TGA)トレースは、約269℃の分解開始未満の温度では有意な重量損失がないことを示す。
【0061】
本発明の形態2結晶性遊離形態について、代表的な動的水分吸着(DMS)トレースを
図4に示す。結晶形態2は、吸収および脱着の2サイクル間のヒステリシスを示さず、吸湿性の並外れて小さい傾向を実証した。形態2は、
図4に示されている通り、5%から90%相対湿度の湿度範囲における約0.18%の重量増加および5%から70%相対湿度の湿度範囲における約0.12%の重量増加を室温で実証した。形態2は、非吸湿性であるとみなされる。
【0062】
形態2は、実施例1の化合物1を、DMSOに(例えば、1から3mL、または約2mLのDMSOについて、1gの化合物1の比で)、約45から75℃の間の温度でまたは約60℃で溶解し、続いて、メタノールを添加することによって調製することができ、ここで、メタノールのDMSOに対する体積比は、約1:4~約1:1、または約1:2である。次いで、均質混合物を、メタノールおよび水の予混合溶液に、約60から約90℃の間または約75℃の温度で滴下添加し(ここで、メタノールのDMSOに対する比は、1.5~3:1である)、ここで、メタノールの水に対する予混合溶液の体積比は、約0.5:1~約1:2、または約1:0.9である。次いで、混合物を、約60から約90℃の間または約75℃の温度で、約30分間から約2時間または約1時間にわたって撹拌させる。次いで、水を、約60から約90℃の間または約75℃の温度でゆっくりと添加することができ、ここで、水のメタノールに対する体積比は、2から4の間である。次いで、得られたスラリーを室温(典型的には、約20から約25℃の温度)まで、典型的には約2から約12時間または約6時間かけてゆっくりと冷却する。次いで、スラリーを室温で保持し、次いで、濾過し、約50から約90%または約70%水の、水およびメタノールの混合物で洗浄して、形態2を提供する。
【0063】
一態様では、本発明は、結晶形態2を調製する方法であって、
(a)1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンの均質混合物を、極性非プロトン性溶媒中、または極性水混和性溶媒中、または極性非プロトン性溶媒および極性水混和性溶媒の混合物中において、45から75℃の間の温度で形成するステップと、
(b)均質混合物を、水混和性溶媒および水の混合物に、60から90℃の間の温度で添加して、第2の混合物を得るステップと、
(c)水を第2の混合物に、60から90℃の間の温度でゆっくりと添加して、スラリーを形成するステップと、
(d)スラリーから結晶形態を単離するステップと
を含む、方法を提供する。
【0064】
一部の態様では、ステップ(a)の極性非プロトン性溶媒は、DMSO、DMF、NMP、DMAcおよびニトロメタンからなる群から選択され、ステップ(a)の極性水混和性溶媒は、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノールおよびTHFからなる群から選択され、ステップ(b)の水混和性溶媒は、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、THF、DMSO、DMF、NMP、DMAcおよびニトロメタンからなる群から選択される。一部の態様では、ステップ(a)の極性非プロトン性溶媒は、DMSOであり、ステップ(a)の極性水混和性溶媒は、メタノールであり、ステップ(b)の水混和性溶媒は、メタノールである。
【0065】
一部の態様では、ステップ(c)において取得されたスラリーを、ステップ(d)の前に、約20から25℃の間の温度まで冷却する。
【0066】
代替として、形態2は、実施例1において取得された化合物1を、極性水混和性溶媒および水の混合物中、60から90℃の間の温度で撹拌することによって形成され得る。一部の態様では、溶媒の水に対する比は、約1:1、または2:1~0.5:1である。一部の態様では、極性水混和性溶媒は、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、THF、DMSO、DMF、NMP、DMAcおよびニトロメタンからなる群から選択される。
【0067】
医薬組成物
化合物1および薬学的に許容されるその塩は、典型的には、医薬組成物または製剤の形態で使用される。そのような医薬組成物は、有利にも、経口、吸入、光注入、局所(経皮を含む)、経直腸、鼻腔および非経口投与モードを含むがこれらに限定されない、任意の許容される投与ルートによって患者に投与されてよい。
【0068】
したがって、その組成物態様の1つでは、本発明は、薬学的に許容される担体または賦形剤と化合物1とを含む医薬組成物を対象にし、ここで、上記で定義した通り、「化合物1」は、化合物1またはその薬学的に許容される塩を意味する。必要に応じて、そのような医薬組成物は、所望ならば、他の治療剤および/または製剤化剤を含有してよい。組成物およびその使用について論じる場合、化合物1は、本明細書において、「活性剤」とも称され得る。
【0069】
一部の態様では、本開示は、化合物1もしくは薬学的に許容されるその塩、または形態1もしくは形態2と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。一部の態様では、医薬組成物は、目への塗布に好適である。一部の態様では、組成物は、目の中への注射に好適である。一部の態様では、組成物は、硝子体内注射に好適である。一部の態様では、組成物は、懸濁物である。一部の態様では、組成物は、結晶性懸濁物である。一部の態様では、組成物は、形態1または形態2の懸濁物である。
【0070】
本発明の医薬組成物は、典型的には、治療有効量の化合物1を含有する。しかしながら、当業者ならば、医薬組成物が、治療有効量を超える、すなわちバルク組成物、または治療有効量未満、すなわち治療有効量を実現するように複数回投与のために設計された個々の単位用量を含有してよいことを認識するであろう。
【0071】
典型的には、そのような医薬組成物は、例えば、約0.05から約30重量%まで、および約0.1%から約10重量%までの活性剤を含む、約0.01から約95重量%までの活性剤を含有することになる。
【0072】
任意の従来の担体または賦形剤を、本発明の医薬組成物において使用してよい。特定の担体もしくは賦形剤、または担体もしくは賦形剤の組合せの選択は、特定の患者を処置するために使用されている投与モード、または医学的状態もしくは病状の種類によって決まることになる。これに関して、特定の投与モードに好適な医薬組成物の調製は、十分に医薬品分野の当業者の範囲内である。加えて、本発明の医薬組成物において使用される担体または賦形剤は、市販されている。さらなる例証として、従来の製剤化技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年);およびH.C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)において記述されている。
【0073】
薬学的に許容される担体としての働きをすることができる材料の代表的な例は、下記を含むがこれらに限定されない:ラクトース、グルコースおよびスクロース等の糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプン等のデンプン;微結晶性セルロース等のセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース等のその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤ワックス等の賦形剤;ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール等のポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに医薬組成物において用いられる他の非毒性の適合性物質。
【0074】
医薬組成物は、典型的には、活性剤を、薬学的に許容される担体および1つまたは複数の必要に応じた原料と、徹底的かつ密接に、混合するまたは混和することによって調製される。次いで、得られた均一に混和された混合物を、従来の手順および設備を使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤等に成形するまたは充填することができる。
【0075】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、単位剤形で包装される。用語「単位剤形」は、患者に投薬するために好適な、すなわち、各単位が、単独でまたは1つもしくは複数の追加の単位と組み合わせてのいずれかで、所望の治療効果を生成するように算出された所定分量の活性剤を含有する、物理的に不連続な単位を指す。例えば、そのような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤等、または眼内もしくは非経口投与に好適な単位包装であってよい。
【0076】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、経口投与に好適である。経口投与に好適な医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、キャンディー剤、カシェ剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤の形態;あるいは水性または非水性液体中の液剤または懸濁剤として;あるいは水中油型または油中水型液体乳剤として;あるいはエリキシル剤またはシロップ剤として等であってよく、それぞれが、所定量の化合物1を活性原料として含有する。
【0077】
固体剤形で(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤等として)の経口投与が意図されている場合、本発明の医薬組成物は、典型的には、活性剤および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含むことになる。必要に応じて、そのような固体剤形は、デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸等の充填剤または増量剤;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア等の結合剤;グリセロール等の保湿剤;クロスカルメロースナトリウム(crosscarmellose sodium)、寒天、炭酸カルシウム、バレイショもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケートおよび/または炭酸ナトリウム等の崩壊剤;パラフィン等の溶液遅延剤;第四級アンモニウム化合物等の吸収加速剤;セチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレート等の湿潤剤;カオリンおよび/またはベントナイト粘土等の吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはそれらの混合物等の滑沢剤;着色剤;ならびに緩衝剤を含んでよい。
【0078】
放出剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味、香味および着香剤、保存剤ならびに酸化防止剤も、本発明の医薬組成物中に存在することができる。薬学的に許容される酸化防止剤の例は、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfate)、亜硫酸ナトリウム等の水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等の油溶性酸化防止剤;および、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤を含む。錠剤、カプセル剤、丸剤等のためのコーティング剤は、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸酢酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸、メタクリル酸エステルコポリマー、トリメリト酸酢酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等、腸溶コーティングに使用されるものを含む。
【0079】
本発明の医薬組成物は、例として、可変割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース;あるいは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを使用して、活性剤の緩徐または制御放出を提供するように製剤化されてもよい。加えて、本発明の医薬組成物は、乳白剤を必要に応じて含有してよく、活性原料のみを、または優先的に、胃腸管のある特定の一部で、必要に応じて、遅延様式で放出するように製剤化されてよい。使用され得る包埋組成物の例は、ポリマー性物質およびワックスを含む。活性剤は、適切ならば、上述した賦形剤の1つまたは複数を加えた、マイクロカプセル形態であることもできる。
【0080】
経口投与に好適な液体剤形は、例証として、薬学的に許容される乳剤、マイクロ乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。液体剤形は、典型的には、活性剤および不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(とりわけ、綿実、ラッカセイ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシおよびゴマ油)、オレイン酸、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル等、ならびにそれらの混合物を含む。代替として、ある特定の液体製剤は、例えばスプレー乾燥によって粉末に変換することができ、これを使用して、従来の手順によって固体剤形を調製する。
【0081】
懸濁剤は、活性原料に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物等の懸濁化剤を含有してよい。
【0082】
化合物1は、非経口的に(例えば、静脈内、皮下、筋肉内または腹腔内注射によって)投与することもできる。非経口投与では、活性剤は、典型的には、例として、滅菌水溶液、生理食塩水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の低分子量アルコール、植物油、ゼラチン、オレイン酸エチル等の脂肪酸エステル等を含む、非経口投与に好適なビヒクルと混ぜられる。非経口製剤は、1つまたは複数の酸化防止剤、可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤または分散剤を含有してもよい。これらの製剤は、滅菌注射用媒質、滅菌剤、濾過、照射または熱の使用によって、無菌にされてよい。
【0083】
化合物1は、眼内注射のための滅菌水性懸濁剤または液剤として製剤化されてもよい。そのような水性製剤に組み込まれてよい有用な賦形剤は、ポリソルベート80、セルロースポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヒスチジン、α-α-トレハロース二水和物、スクロース、ポリソルベート20、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、塩化ベンザルコニウム、アンバーライトIRP-69、ポリオキシエチレングリコールエーテル(ラウリル、ステアリルおよびオレイル)、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、タウロコール酸ナトリウム、サポニンおよびクレモフォールEL、ポリカルボフィル-システイン、キサンタンガム、ゲランガム、ヒアルロン酸、リポソームならびにリン酸ナトリウムを含む。浸透性増強剤、界面活性剤、胆汁酸、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン等のシクロデキストリンおよびキレート剤が製剤に含まれてよい。活性剤と複合体を形成する能力を有する、親水性の外面および親油性の内面を持つ円筒状オリゴヌクレオチドも、製剤に含まれてよい。ベンジルアルコールは、保存剤としての働きをすることができ、等張性を調整するために塩化ナトリウムが含まれてよい。加えて、pH調整のために、塩酸および/または水酸化ナトリウムを溶液に添加してよい。眼内注射のための水性製剤は、保存剤フリーとして調製されてよい。
【0084】
眼製剤は、目への活性原料の持続放出を可能にし得る。眼製剤は、乳剤(水中油型または油中水型)、懸濁剤または軟膏剤として製剤化されてよい。懸濁物製剤は、化合物1または薬学的に許容されるその塩を、結晶形態、例えば形態1もしくは形態2として、または非晶質状態で、含有してよい。
【0085】
化合物1は、点眼剤投薬に好適であるようにまたは硝子体内インプラントとして製剤化されてもよい。インプラントは、一定の治療レベルの薬物を送達することを可能にし得る。レザバーインプラントは、典型的には、ケイ素、エチレン酢酸ビニル(EVA)またはポリビニルアルコール(PVA)等の非反応性物質によって囲まれたペレット化された薬物コアで作製されており、これらのインプラントは、非生分解性であり、連続量の薬物を数カ月から1年間にわたって送達することができる。マトリックスインプラントを使用してもよい。これらは、典型的には、充填用量、続いて、漸減用量の薬物を、1日から6カ月の期間中、送達するために使用される。これらは、最も一般的には、コポリマーポリ乳酸(PLA)および/またはポリ乳酸グリコール酸(PLGA)から作製され、水および二酸化炭素に分解する。イオントフォレーシスを使用してもよい。これは、小電流が印加されて組織へのイオン化された薬物透過を増強する、非侵襲的技術である。
【0086】
細胞ベースの送達システムであるカプセル化細胞技術(ECT)を使用して、治療剤を目に送達してもよい。典型的には、遺伝子修飾細胞は、半透膜の中空管内に包装され、これは、免疫細胞の侵入を防止し、栄養素および治療用分子が膜を越えて自由に拡散することを可能にする。ポリマー切片の両端を密閉し、チタンループを固定端に置き、これを、毛様体扁平部にインプラントし、強膜に固定する。
【0087】
化合物1は、眼底への送達を可能にする任意の形態で製剤化されてよい。送達モードの例は文献において公知である(Kunoら、Polymers、2011年、3巻、193~221頁、del Amoら、Drug Discovery Today、2008年、13巻、135~143頁、Short、Toxicologic Pathology、2008年、36巻、49~62頁)。そのような送達モードは、脈絡膜上腔を介して脈絡膜および網膜への送達を可能にする脈絡膜上送達、テノン嚢下送達、眼球周囲送達、コンタクトレンズ、涙点プラグならびに強膜プラグを含むがこれらに限定されない。化合物1は、眼球周囲、強膜上、球後、球周囲または結膜下注射によって送達されてもよい。
【0088】
化合物1は、乳剤、ポリマー性マイクロもしくはナノスフェア、リポソーム、マイクロもしくはナノ粒子、マイクロスフェア、ミセルまたはデンドリマーとして送達されてよい。ポリ乳酸(polyactide)およびPLGA等の生分解性および生体適合性ポリマーを使用することができる。化合物1は、カプセル化されていてよい。
【0089】
加えて、化合物1は、皮膚への局所投与のために、軟膏剤またはクリーム剤として製剤化されてよい。軟膏製剤は、典型的には透明な油性または脂肪性材料の基剤を有する半固体調製物である。軟膏製剤において使用するために好適な油性材料は、ペトロラタム(石油ゼリー)、ミツロウ、ココアバター、シアバターおよびセチルアルコールを含む。軟膏剤は、所望ならば、皮膚軟化剤および透過増強剤を必要に応じて付加的に含んでよい。
【0090】
クリーム製剤は、典型的には精製水を含む、油相および水性相を含む乳剤として調製されてよい。クリーム製剤の成分は、ペトロラタム(petrolatrum)、鉱油、植物および動物油ならびにトリグリセリド等の油基剤;ラノリンアルコール、ステアリン酸およびセトステアリルアルコール等のクリーム基剤;ポリビニルアルコール等のゲル基剤;プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール等の溶媒;ポリソルベート、ステアレート、例えばステアリン酸グリセリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ポリオキシステアレート、PEGステアリルエーテル、パルミチン酸イソプロピルおよびソルビタンモノステアレート等の乳化剤;多糖および亜硫酸ナトリウム等の安定剤;中鎖トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピルおよびジメチコン等の皮膚軟化剤(すなわち、保湿剤);セチルアルコールおよびステアリルアルコール等の硬化剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、ソルビン酸、ジアゾリジニル尿素およびブチル化ヒドロキシアニソール等の抗菌剤;N-メチルピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート等の透過増強剤;ならびにエデト酸二ナトリウム等のキレート剤を含んでよい。
【0091】
代替として、本発明の医薬組成物は、吸入による投与のために製剤化される。吸入による投与に好適な医薬組成物は、典型的には、エアゾールまたは散剤の形態となる。そのような組成物は、概して、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、ネブライザーまたは同様の送達デバイス等の周知の送達デバイスを使用して投与される。
【0092】
加圧容器を使用する吸入によって投与される場合、本発明の医薬組成物は、典型的には、活性原料と、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガス等の好適な噴射剤とを含むことになる。加えて、医薬組成物は、化合物1と、粉末吸入器において使用するために好適な散剤を含む、カプセルまたはカートリッジ(例えば、ゼラチン製)の形態であってよい。好適な散剤基剤は、例として、ラクトースまたはデンプンを含む。
【0093】
下記の非限定的な例は、本発明の代表的な医薬組成物を例証する。
【0094】
錠剤経口固体剤形
化合物1または薬学的に許容されるその塩を、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドンおよびクロスカルメロースナトリウムと、4:5:1:1の比で乾式混和し、錠剤に圧縮して、錠剤1個当たり例えば5mg、20mgまたは40mgの活性剤の単位投薬量を提供する。
【0095】
カプセル剤経口固体剤形
化合物1または薬学的に許容されるその塩を、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドンおよびクロスカルメロースナトリウムと、4:5:1:1の比で、湿式造粒によって組み合わせ、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに充填して、1個のカプセル剤当たり例えば5mg、20mgまたは40mgの活性剤の単位投薬量を提供する。
【0096】
液体製剤
化合物1(0.1%)、水(98.9%)およびアスコルビン酸(1.0%)を含む液体製剤は、本発明の化合物を、水およびアスコルビン酸の混合物に添加することによって形成される。
【0097】
腸溶コーティング経口剤形
化合物1を、ポリビニルピロリドンを含有する水溶液に溶解し、微結晶性セルロースまたは糖ビーズ上に、1:5w/w 活性剤:ビーズの比でスプレーコーティングし、次いで、アクリルコポリマーを含むおよそ5%重量増加の腸溶コーティングを塗布する。腸溶コーティングビーズをゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに充填して、1個のカプセル剤当たり例えば30mgの活性剤の単位投薬量を提供する。
【0098】
腸溶コーティング経口剤形
Eudragit-L(登録商標)およびEudragit-S(登録商標)の組合せまたは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶コーティングを、上述した錠剤経口剤形またはカプセル剤経口剤形に塗布する。
【0099】
眼内注射のための水性製剤
各1mLの滅菌水性懸濁剤は、5mgから50mgまでの化合物1、等張性のための塩化ナトリウム、保存剤としての0.99%(w/v)ベンジルアルコール、0.75%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.04%ポリソルベートを含む。pHを5から7.5に調整するために、水酸化ナトリウムまたは塩酸が含まれてよい。
【0100】
眼内注射のための水性製剤
滅菌保存剤フリー水性懸濁剤は、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、0.03%ポリソルベート20および5%スクロース中に、5mg/mLから50mg/mLまでの化合物1を含む。
【0101】
局所投与のための軟膏製剤
化合物1を、ペトロラタム、C8~C10トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸オクチルおよびN-メチルピロリドンと、ある比で組み合わせて、0.05重量%から5重量%の活性剤を含有する組成物を提供する。
【0102】
局所投与のための軟膏製剤
化合物1を、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、モノ-およびジ-グリセリド、パラフィン、ブチル化ヒドロキシトルエンならびにエデト酸カルシウム二ナトリウムと、ある比で組み合わせて、0.05重量%から5重量%の活性剤を含有する組成物を提供する。
【0103】
局所投与のための軟膏製剤
化合物1を、鉱油、パラフィン、炭酸プロピレン、白色ペトロラタムおよび白色ワックスと組み合わせて、0.05重量%から5重量%の活性剤を含有する組成物を提供する。
【0104】
局所投与のためのクリーム製剤
鉱油を、化合物1、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、ポリソルベート60、セチルアルコール、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシル40ステアレート、ソルビン酸、メチルパラベンおよびプロピルパラベンと組み合わせて、油相を形成し、これを、精製水と、せん断混和によって組み合わせて、0.05重量%から5重量%の活性剤を含有する組成物を提供する。
【0105】
局所投与のためのクリーム製剤
化合物1、ベンジルアルコール、セチルアルコール、クエン酸無水物、モノおよびジ-グリセリド、オレイルアルコール、プロピレングリコール、セトステアリル硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ステアリルアルコール、トリグリセリドおよび水を含むクリーム製剤は、0.05重量%から5重量%の活性剤を含有する。
【0106】
局所投与のためのクリーム製剤
化合物1、セトステアリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、プロピレングリコール、セトマクロゴール1000、ジメチコン360、クエン酸、クエン酸ナトリウムおよび精製水を、保存剤としてのイミド尿素、メチルパラベンおよびプロピルパラベンとともに含むクリーム製剤は、0.05重量%から5重量%の活性剤を含有する。
【0107】
乾燥粉末組成物
微粉化した化合物1(1g)を、粉砕ラクトース(25g)と混和する。次いで、この混和された混合物を、剥離可能なブリスターパックの個々のブリスターに、用量当たり約0.1mgから約4mgの間の化合物1を提供するために十分な量で充填する。乾燥粉末吸入器を使用して、ブリスターの内容物を投与する。
【0108】
定量吸入器組成物
レシチン(0.2g)を脱塩水(200mL)に溶解することによって調製された溶液に、微粉化した化合物1(10g)を分散させる。得られた懸濁物をスプレードライし、次いで、微粉化して、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微粉化された組成物を形成する。次いで、微粉化された組成物を、定量吸入器によって投与された場合に用量当たり約0.1mgから約4mgの化合物1を提供するために十分な量で、加圧した1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含有する定量吸入器カートリッジに充填する。
【0109】
ネブライザー組成物
化合物1(25mg)を、1.5~2.5当量の塩酸を含有する溶液に溶解し、続いて、pHを3.5から5.5に調整するための水酸化ナトリウムおよび3重量%のグリセロールを添加する。すべての成分が溶解するまで、溶液をよく撹拌する。用量当たり約0.1mgから約4mgの化合物1を提供するネブライザーデバイスを使用して、溶液を投与する。
【0110】
有用性
化合物1は、JAKファミリーの酵素:JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2の強力阻害剤であることが示されている。
【0111】
眼疾患
多くの眼疾患は、JAK-STAT経路に依拠する炎症促進性サイトカインの上昇に関連することが示されている。化合物1は4つすべてのJAK酵素で強力な阻害を呈することから、JAKを介してシグナル伝達する多数のサイトカイン(IL-6、IL-2およびIFN-γ等)のシグナル伝達および病原性作用を強力に阻害すること、ならびに、その産生がJAK-STAT経路シグナル伝達によって推進される他のサイトカイン(MCP-1およびIP-10等)の増大を防止することが期待される。
【0112】
特に、化合物1は、サイトカイン上昇の下流効果の阻害を登録するアッセイを含むアッセイ3から6において記述されている細胞アッセイにおけるIL-6、IL-2およびIFNγシグナル伝達の阻害について、6.4またはそれよりも大きいpIC50値(400nMまたはそれ未満のIC50値)を呈した。
【0113】
アッセイ7の薬物動態研究は、単回硝子体内注射後のウサギの目における持続的曝露および硝子体組織において観察されたものよりも少なくとも3桁低い血漿中濃度を実証した。
【0114】
さらに、化合物1の硝子体内投薬は、ラット網膜/脈絡膜組織におけるIL-6誘発性pSTAT3の有意な阻害ならびにウサギ硝子体および網膜/脈絡膜組織におけるIFN-γ誘発性IP-10の有意かつ持続的な阻害を実証している。化合物1の硝子体内投薬は、ウサギにおけるIFN-γ誘発性pSTAT1の有意かつ持続的な阻害を実証している。
【0115】
有意な全身レベルの非存在下での持続的な眼内JAK阻害は、全身的に推進される有害作用なしに、目において強力な局所抗炎症活性をもたらすであろうことが期待される。故に、化合物1は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞およびアトピー性角結膜炎を含むがこれらに限定されない若干数の眼疾患において有益であることが期待される。
【0116】
特に、ブドウ膜炎(HoraiおよびCaspi、J Interferon Cytokine Res、2011年、31巻、733~744頁)、糖尿病性網膜症(Abcouwer、J Clin Cell Immunol、2013年、付録1、1~12頁)、糖尿病性黄斑浮腫(Sohnら、American Journal of Opthalmology、2011年、152巻、686~694頁)、ドライアイ疾患(Stevensonら、Arch Ophthalmol、2012年、130巻、90~100頁)、網膜静脈閉塞(Shchukoら、Indian Journal of Ophthalmology、2015年、63(12)、905~911頁)および加齢黄斑変性(Knickelbeinら、Int Ophthalmol Clin、2015年、55巻(3号)、63~78頁)は、JAK-STAT経路を介してシグナル伝達するある特定の炎症促進性サイトカインの上昇を特徴とする。したがって、化合物1は、関連する眼炎症を緩和し疾患進行を逆転させる、またはこれらの疾患における症状軽減を提供することができる場合がある。
【0117】
一態様では、したがって、本発明は、哺乳動物における眼疾患を処置する方法であって、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンまたは薬学的に許容されるその塩と、医薬担体とを含む医薬組成物を、哺乳動物の目に投与するステップを含む、方法を提供する。一態様では、眼疾患は、ブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、ドライアイ疾患、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞またはアトピー性角結膜炎である。一態様では、方法は、化合物1を硝子体内注射によって投与するステップを含む。
【0118】
炎症性皮膚疾患
例えば、アトピー性皮膚炎は、JAK-STAT経路に依拠する炎症促進性サイトカイン、特に、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13およびIFNγの上昇に関連するとされてきた。上記で引用した細胞アッセイにおけるサイトカイン阻害に加えて、化合物1は、アッセイ2で記述される通り、IL-13の阻害について13nMのIC50値を呈した。さらに、化合物1のモデルのクリームおよび軟膏製剤は、検出可能な血漿曝露なしに、マウスにおいては少なくとも2日間およびミニブタにおいては少なくとも7日間にわたって、持続的な皮膚レベルを実証している。
【0119】
顕著な全身レベルの非存在下での持続的な皮膚レベルの化合物1は、全身的な有害作用を推進せずに、皮膚において強力な局所的抗炎症活性および鎮痒活性をもたらすと期待される。したがって、化合物1は、円形脱毛症、白斑、皮膚T細胞リンパ腫、結節性痒疹、扁平苔癬、原発性限局性皮膚アミロイド症、水疱性類天疱瘡、移植片対宿主病の皮膚徴候、類天疱瘡、円板状ループス、環状肉芽腫、慢性単純性苔癬、外陰部/陰嚢/肛門そう痒症、硬化性苔癬、ヘルペス後神経痛そう痒、扁平毛孔性苔癬および脱毛性毛嚢炎(foliculitis decalvans)を含むがこれらに限定されない、多数の皮膚炎症またはそう痒状態において有益と期待される。特に、円形脱毛症(Xingら、Nat Med.、2014年、Sep;20(9):1043~9頁)、白斑(Craiglowら、JAMA Dermatol. 2015年、Oct;151(10):1110~2頁)、皮膚T細胞リンパ腫(Netchiporoukら、Cell Cycle. 2014年;13(21):3331~5頁)結節性痒疹(Sonkolyら、J Allergy Clin Immunol.、2006年、Feb;117(2):411~7頁)、扁平苔癬(Welz-Kubiakら、J Immunol Res.、2015年;2015:854747)、原発性限局性皮膚アミロイド症(Tanakaら、Br J Dermatol.、2009年 Dec;161(6):1217~24頁)、水疱性類天疱瘡(Felicianiら、Int J Immunopathol Pharmacol.、1999年 May-Aug;12(2):55~61頁)および移植片対宿主病の皮膚徴候(Okiyamaら、J Invest Dermatol.、2014年 Apr;134(4):992~1000頁)は、JAK活性化を介してシグナル伝達するある特定のサイトカインの上昇を特徴とする。したがって、化合物1は、これらのサイトカインによって推進された関連する皮膚炎症またはそう痒症を緩和することができる場合がある。特に、化合物1は、アトピー性皮膚炎および他の炎症性皮膚疾患の処置に有用となることが期待され得る。
【0120】
一態様では、したがって、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)における炎症性皮膚疾患を処置する方法であって、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンまたはその薬学的に許容される塩と、医薬担体とを含む医薬組成物を、哺乳動物の皮膚に塗布するステップを含む、方法を提供する。一態様では、炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎である。
【0121】
化合物1は、炎症性皮膚疾患を処置するために、ムピロシンおよびフシジン酸等のグラム陽性抗生物質と組み合わせて使用してもよい。一態様では、したがって、本発明は、哺乳動物における炎症性皮膚疾患を処置する方法であって、化合物1およびグラム陽性抗生物質を、哺乳動物の皮膚に塗布するステップを含む、方法を提供する。別の態様では、本発明は、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンまたは薬学的に許容されるその塩と、グラム陽性抗生物質と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0122】
呼吸器疾患
JAK-STAT経路を介してシグナル伝達するサイトカイン、特に、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-11、IL-13、IL-23、IL-31、IL-27、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、インターフェロン-γ(IFNγ)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、喘息の炎症および他の炎症性呼吸器疾患にも関係するとされてきた。上述した通り、化合物1は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2酵素の強力阻害剤であることが示され、細胞アッセイにおいて炎症促進性サイトカインの強力な阻害も実証している。
【0123】
JAK阻害剤の抗炎症活性は、喘息の前臨床モデルにおいて確実に実証されている(Malaviyaら、Int Immunopharmacol、2010年、10巻、829~836頁;Matsunagaら、Biochem and Biophys Res Commun、2011年、404巻、261~267頁;Kudlaczら、Eur J Pharmacol、2008年、582巻、154~161頁)。したがって、化合物1は、炎症性呼吸器障害、特に、喘息の処置に有用であることが期待される。肺の炎症および線維症は、喘息に加えて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫および閉塞性細気管支炎等の他の呼吸器疾患の特徴である。したがって、化合物1は、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺気腫、閉塞性細気管支炎およびサルコイドーシスの処置にも有用であることが期待される。
【0124】
一態様では、したがって、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)における呼吸器疾患を処置する方法であって、哺乳動物に、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンまたは薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0125】
1つの態様において、呼吸器疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、肺臓炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺臓炎、間質性肺疾患(特発性肺線維症を含む)、急性肺傷害、急性呼吸促迫症候群、気管支炎、気腫、閉塞性細気管支炎またはサルコイドーシスである。別の態様において、呼吸器疾患は、喘息または慢性閉塞性肺疾患である。
【0126】
さらなる態様では、呼吸器疾患は、肺感染症、蠕虫感染症、肺動脈性高血圧症、サルコイドーシス、リンパ脈管筋腫症、気管支拡張症または浸潤性肺疾患である。さらに別の態様では、呼吸器疾患は、薬物誘発性肺臓炎、真菌誘発性肺臓炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺臓炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、特発性急性好酸球性肺炎、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増加症候群、レフレル症候群、閉塞性細気管支炎器質化肺炎または免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎である。
【0127】
本発明は、哺乳動物における喘息を処置する方法であって、哺乳動物に、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オンまたは薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を投与するステップを含む、方法をさらに提供する。
【0128】
化合物1または薬学的に許容されるその塩は、好酸球性肺疾患を処置するためにも有用であり得る。好酸球性気道炎症は、好酸球性肺疾患と総称される疾患の特徴的特色である(Cottinら、Clin. Chest. Med.、2016年、37巻(3号)、535~56頁)。好酸球性疾患は、IL-4、IL-13およびIL-5シグナル伝達に関連するとされてきた。好酸球性肺疾患は、感染症(とりわけ蠕虫感染症)、薬物誘発性肺臓炎(例えば、抗生物質、フェニトインまたはl-トリプトファン等の治療薬によって誘発されるもの)、真菌誘発性肺臓炎(例えば、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)、過敏性肺臓炎および好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以前はチャーグ・ストラウス症候群として公知であった)を含む。未知の病因の好酸球性肺疾患は、特発性急性好酸球性肺炎(pneumoni)、特発性慢性好酸球性肺炎、好酸球増加症候群およびレフレル症候群を含む。
【0129】
化合物1または薬学的に許容されるその塩は、PAHを処置するためにも有用であり得る。IL-6遺伝子における多型は、IL-6レベル上昇および肺動脈性高血圧症(PAH)を発症するリスクの増大に関連するとされてきた(Fangら、J Am Soc Hypertens.、2017年、11巻(3号)、171~177頁)。PAHにおけるIL-6の役割を裏付けるように、IL-6受容体鎖gp130の阻害は、PAHのラットモデルにおいて疾患を寛解させた(Huangら、Can J Cardiol.、2016年、32巻(11号)、1356.e1~1356.e10)。
【0130】
化合物1または薬学的に許容されるその塩は、サルコイドーシスおよびリンパ脈管筋腫症等の非アレルギー性肺疾患を処置するためにも有用であり得る。IFNγ、IL-12およびIL-6等のサイトカインは、サルコイドーシスおよびリンパ脈管筋腫症等の広範な非アレルギー性肺疾患に関係するとされてきた(El-Hashemiteら、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、2005年、33巻、227~230頁およびEl-Hashemiteら、Cancer Res.、2004年、64巻、3436~3443頁)。
【0131】
化合物1または薬学的に許容されるその塩は、慢性好中球性炎症に関連する疾患である気管支拡張症および浸潤性肺疾患を処置するためにも有用であり得る。ある特定のサイトカインは、好中球性炎症に関連する(例えば、IL-6、IFNγ)。
【0132】
病理学的T細胞活性化は、複数の呼吸器疾患の病因において重大である。自己反応性T細胞は、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(COSとも称される)において役割を果たす。COSと同様に、肺移植拒絶反応の病因は、移植ドナー肺によるレシピエントT細胞の異常なT細胞活性化と連関している。肺移植拒絶反応は、初期に原発性移植片機能不全(PGD)、器質化肺炎(OP)、急性拒絶反応(AR)もしくはリンパ球性細気管支炎(LB)として出現し得るか、または肺移植数年後に慢性肺同種移植片機能不全(CLAD)として出現し得る。CLADは、以前は閉塞性細気管支炎(BO)として公知であったが、現在は、BO、拘束性CLAD(rCLADまたはRAS)および好中球性同種移植片機能不全を含めた、異なる病理学的徴候を有し得る症候群とみなされている。慢性肺同種移植片機能不全(CLAD)は、移植肺に機能性を漸進的に失わせることから、肺移植レシピエントの長期管理における主要課題である(Gauthierら、Curr Transplant Rep.、2016年、3巻(3号)、185~191頁)。CLADは、処置に対して応答性が乏しく、したがって、この状態を予防するまたは処置することができる有効な化合物が依然として必要である。IFNγおよびIL-5等のいくつかのJAK依存性サイトカインは、CLADおよび肺移植拒絶反応において上方調節される(Berasteguiら、Clin Transplant.、2017年、31巻、e12898)。その上、JAK依存性IFNシグナル伝達の下流にあるCXCL9およびCXCL10等のCXCR3ケモカインの高い肺レベルは、肺移植患者におけるより悪い転帰と連関している(Shinoら、PLOS One、2017年、12巻(7号)、e0180281)。JAK阻害は、腎移植拒絶反応において有効であることが示されている(Vicentiら、American Journal of Transplantation、2012年、12巻、2446~56頁)。したがって、化合物1は、肺移植拒絶反応およびCLADを処置するまたは予防する際に有効である潜在性を有し得る。肺移植拒絶反応の基礎として記述されているのと同様のT細胞活性化事象も、造血幹細胞移植後に出現することができる肺移植片対宿主病(GVHD)の主な推進力とみなされる。CLADと同様に、肺GVHDは、極めて乏しい転帰を持つ慢性進行状態であり、処置は現在のところ承認されていない。サルベージ療法として全身性JAK阻害剤ルキソリチニブを受けた、ステロイド不応性急性または慢性GVHDを持つ95人の患者の遡及的な多施設調査研究は、肺GVHDを持つ人々を含む大多数の患者におけるルキソリチニブに対する完全または部分的な応答を実証した(Zeiserら、Leukemia、2015年、29巻、10号、2062~68頁)。より最近では、別のT細胞媒介性肺疾患である免疫チェックポイント阻害剤誘発性肺臓炎が、免疫チェックポイント阻害剤の使用増大とともに現れた。これらのT細胞刺激剤で処置されたがん患者において、致死的肺臓炎が発症し得る。化合物1または薬学的に許容されるその塩は、これらのあまり便宜の図られていない重篤な呼吸器疾患のための新規処置を提示する潜在性を有する。
【0133】
消化器疾患
JAK阻害剤として、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、様々な他の疾患にも有用であり得る。化合物1または薬学的に許容されるその塩は、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎(直腸S状結腸炎、全結腸炎、潰瘍性直腸炎および左側大腸炎)、クローン病、膠原線維性大腸炎、リンパ球性大腸炎、ベーチェット病、セリアック病、免疫チェックポイント阻害剤誘発性大腸炎、回腸炎、好酸球性食道炎、移植片対宿主病関連大腸炎および感染性大腸炎を含むがこれらに限定されない様々な胃腸炎症の兆候に有用であり得る。潰瘍性大腸炎(Reimundら、J Clin Immunology、1996年、16巻、144~150頁)、クローン病(Woywodtら、Eur J Gastroenterology Hepatology、1999年、11巻、267~276頁)、膠原線維性大腸炎(Kumawatら、Mol Immunology、2013年、55巻、355~364頁)、リンパ球性大腸炎(Kumawatら、2013年)、好酸球性食道炎(Weinbrand-Goichbergら、Immunol Res、2013年、56巻、249~260頁)、移植片対宿主病関連大腸炎(Coghillら、Blood、2001年、117巻、3268~3276頁)、感染性大腸炎(Stallmachら、Int J Colorectal Dis、2004年、19巻、308~315頁)、ベーチェット病(Zhouら、Autoimmun Rev、2012年、11巻、699~704頁)、セリアック病(de Nittoら、World J Gastroenterol、2009年、15巻、4609~4614頁)、免疫チェックポイント阻害剤誘発性大腸炎(例えば、CTLA-4阻害剤誘発性大腸炎;(Yanoら、J Translation Med、2014年、12巻、191頁)、PD-1-またはPD-L1阻害剤誘発性大腸炎)および回腸炎(Yamamotoら、Dig Liver Dis、2008年、40巻、253~259頁)は、ある特定の炎症促進性サイトカインレベルの上昇を特徴とする。多くの炎症促進性サイトカインは、JAK活性化を介してシグナル伝達するため、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、炎症を緩和し、症状軽減を提供することができる場合がある。特に、化合物1または薬学的に許容されるその塩は、潰瘍性大腸炎の鎮静の誘導および維持のため、ならびに、クローン病、免疫チェックポイント阻害剤誘発性大腸炎、および移植片対宿主病における胃腸への有害作用の処置のために、有用であり得る。一態様では、したがって、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)における胃腸の炎症性疾患を処置する方法であって、哺乳動物に、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または薬学的に許容される担体と化合物1もしくはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0134】
他の疾患
化合物1またはその薬学的に許容される塩は、他の炎症性疾患、自己免疫疾患またはがん等の他の疾患を処置するためにも有用であり得る。
【0135】
化合物1またはその薬学的に許容される塩は、関節炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、移植拒絶反応、眼球乾燥症、乾癬性関節炎、糖尿病、インスリン依存性糖尿病、運動ニューロン病、骨髄異形成症候群、疼痛、サルコペニア、悪液質、敗血性ショック、全身性エリテマトーデス、白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、強直性脊椎炎、骨髄線維症、B細胞リンパ腫、肝細胞癌、ホジキン病、乳がん、多発性骨髄腫、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、卵巣明細胞癌、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、真性赤血球増加症、シェーグレン症候群、軟部組織肉腫、肉腫、脾腫、T細胞リンパ腫およびサラセミアメジャーのうちの1つまたは複数を処置するために有用であり得る。
【0136】
組合せ療法
本開示の化合物または薬学的に許容されるその塩は、疾患を処置するために同じ機序によってまたは異なる機序によって作用する1つまたは複数の作用物質と組み合わせて使用してよい。異なる作用物質を、順次にまたは同時に、別個の組成物でまたは同じ組成物で投与してよい。組合せ療法のための作用物質の有用なクラスは、抗血管新生薬、ステロイド、抗炎症、血漿カリクレイン阻害剤、胎盤増殖因子リガンド阻害剤、VEGF-Aリガンド阻害剤、アンジオポエチンリガンド-2阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼベータ阻害剤、Tekチロシンキナーゼ受容体刺激剤、カルシニューリン阻害剤、VEGFリガンド阻害剤、mTOR複合体1阻害剤、mTOR阻害剤、IL-17アンタゴニスト、カルモジュリン変調剤、FGF受容体アンタゴニスト、PDGF受容体アンタゴニスト、VEGF受容体アンタゴニスト、TNFアルファリガンド阻害剤、TNF結合剤、プロテオグリカン4刺激剤、VEGF-Cリガンド阻害剤、VEGF-Dリガンド阻害剤、CD126アンタゴニスト、補体カスケード阻害剤、グルココルチコイドアゴニスト、補体C5因子阻害剤、カンナビノイド受容体アンタゴニスト、スフィンゴシン-1-リン酸受容体-1変調剤、スフィンゴシン-1-リン酸受容体-3変調剤、スフィンゴシン-1-リン酸受容体-4変調剤、スフィンゴシン-1-リン酸受容体-5変調剤、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害剤、Flt3チロシンキナーゼ阻害剤、Kitチロシンキナーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼC阻害剤、副腎皮質刺激ホルモンリガンド、ストロマ細胞由来因子1リガンド阻害剤、免疫グロブリンG1アゴニスト;インターロイキン-1ベータリガンド阻害剤、ムチン刺激剤;核内因子カッパB変調剤、細胞毒性Tリンパ球タンパク質-4刺激剤、T細胞表面糖タンパク質CD28阻害剤、リポタンパク質リパーゼ刺激剤;PPARアルファアゴニスト、アデノシンA3受容体アゴニスト、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、VEGF受容体アンタゴニスト、インターフェロンベータリガンド、SMAD-2変調剤;TGFベータ1リガンド阻害剤、ソマトスタチン受容体アゴニスト、IL-2受容体アルファサブユニット阻害剤、VEGF-Bリガンド阻害剤、チモシンベータ4リガンド、アンジオテンシンII AT-1受容体アンタゴニスト、CCR2ケモカインアンタゴニスト、膜銅アミンオキシダーゼ阻害剤、CD11aアンタゴニスト、ICAM-1阻害剤、インスリン様増殖因子1アンタゴニスト、カリクレイン阻害剤、フコシルトランスフェラーゼ6刺激剤、GDPフコースシンターゼ(synthetase)変調剤、GHR遺伝子阻害剤、IGF1遺伝子阻害剤、VEGF-1受容体アンタゴニスト、アルブミンアゴニスト、IL-2アンタゴニスト、CSF-1アンタゴニスト;PDGF受容体アンタゴニスト、VEGF-2受容体アンタゴニスト、mTOR阻害剤、PPARアルファアゴニスト、Rho GTPアーゼ阻害剤、Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤、補体C3阻害剤、EGR-1転写因子阻害剤、核因子赤血球系2関連因子変調剤、核内因子カッパB阻害剤、インテグリンアルファ-V/ベータ-3アンタゴニスト、エリスロポエチン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド1アゴニスト、TNFRSF1A遺伝子刺激剤、アンジオポエチンリガンド-2阻害剤、アルファ-2抗プラスミン阻害剤、コラーゲンアンタゴニスト、フィブロネクチン阻害剤、ラミニンアンタゴニスト、プラスミン刺激剤、神経増殖因子リガンド、FGF1受容体アンタゴニスト、FGF3受容体アンタゴニスト、itkチロシンキナーゼ阻害剤、Lckチロシンキナーゼ阻害剤、Ltkチロシンキナーゼ受容体阻害剤、PDGF受容体アルファアンタゴニスト、PDGF受容体ベータアンタゴニスト、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、VEGF-3受容体アンタゴニスト、膜銅アミンオキシダーゼ阻害剤、ソマトスタチン2受容体アゴニスト、ソマトスタチン4受容体アゴニスト、ソマトスタチン5受容体アゴニスト、タンパク質キナーゼCアルファ阻害剤、タンパク質キナーゼCベータ阻害剤、タンパク質キナーゼCデルタ阻害剤タンパク質キナーゼCイプシロン阻害剤タンパク質キナーゼCエータ阻害剤、タンパク質キナーゼCシータ阻害剤、アンキリン変調剤、ムチン刺激剤、P2Y2プリン受容体アゴニスト、ギャップジャンクションアルファ-1タンパク質阻害剤、CCR3ケモカインアンタゴニスト;エオタキシンリガンド阻害剤、アミロライド感受性ナトリウムチャネル阻害剤、PDGF受容体アンタゴニスト、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、網膜色素上皮タンパク質阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、PDGF受容体アンタゴニスト、PDGF受容体ベータアンタゴニスト、PDGF-Bリガンド阻害剤、成長ホルモン受容体アンタゴニスト、細胞接着分子阻害剤、インテグリン変調剤、CXCR4ケモカインアンタゴニスト、コイルドコイルドメイン含有タンパク質阻害剤、Hsp90変調剤、Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤、VEGF遺伝子阻害剤、エンドグリン阻害剤、CCR3ケモカインアンタゴニスト、maxi Kカリウムチャネル変調剤、maxi Kカリウムチャネル刺激剤、PGF2アルファアゴニスト、プロスタノイド受容体アゴニスト、電位依存性クロライドチャネル2変調剤、補体C5a受容体アンタゴニスト、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、インターロイキン18リガンド阻害剤、TRPカチオンチャネルM8刺激剤、CNTF受容体アゴニスト、TRPV1遺伝子阻害剤、デオキシリボヌクレアーゼI刺激剤、IRS1遺伝子阻害剤、Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤、ポリADPリボースポリメラーゼ1阻害剤、ポリADPリボースポリメラーゼ2阻害剤、ポリADPリボースポリメラーゼ3阻害剤、バニロイドVR1アゴニスト、NFAT5遺伝子刺激剤、ムチン刺激剤、Sykチロシンキナーゼ阻害剤、アルファ2アドレナリン受容体アゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アミロイドタンパク質沈着阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3阻害剤、PARP刺激剤、タウ沈着阻害剤、DDIT4遺伝子阻害剤、ヘモグロビン合成変調剤、インターロイキン-1ベータリガンド阻害剤、TNFアンタゴニスト、KCNQ電位依存性カリウムチャネル刺激剤、NMDA受容体アンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ1阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、5-HT1a受容体アゴニスト、カルシウムチャネル阻害剤、FGF-2リガンド変調剤、ホスホイノシタイド3-キナーゼ阻害剤、CD44アンタゴニスト、ヒアルロニダーゼ変調剤、ヒアルロン酸アゴニスト、IL-1アンタゴニスト、I型IL-1受容体アンタゴニスト、補体因子P阻害剤、チューブリンアンタゴニスト、ベータアミロイドアンタゴニスト、IL2遺伝子刺激剤、I-カッパBキナーゼベータ阻害剤、核内因子カッパB変調剤、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤1阻害剤、FGF-2リガンド、プロテアーゼ変調剤およびコルチコトロピン変調剤を含むがこれらに限定されない。
【0137】
本発明のJAK阻害剤化合物と組み合わせて使用され得る具体的な作用物質は、ラナデルマブ、アフリベルセプト、RG-7716、AKB-9778、シクロスポリン、ベバシズマブ、エベロリムス、セクキヌマブ、フルオシノロンアセトニド、RP-101、乳酸スクアラミン、組換えヒトルブリシン、OPT-302、サリルマブ、デキサメタゾン、エクリズマブ、フィンゴリモド、アダリムマブ、レプロキサラップ、ミドスタウリン、コルチコトロピン、オラプテストペゴル(olaptesed pegol)、カナキヌマブ、レコフラボン(recoflavone)、アバタセプト、フェノフィブレート、ピクリデノソン、OpRegen、カンデサルタン、ゴリムマブ、ペガプタニブ、インターフェロン-ベータ、ジシテルチド、酢酸オクトレオチド、アネコルタブ、バシリキシマブ、脈絡膜上トリアムシノロンアセトニド、RGN-259、ジフルプレドナート、HL-036、アバシンカプタドペゴルナトリウム、イルベサルタン、プロパゲルマニウム、トリアムシノロンアセトニド、アジスロマイシン、BI-1467335、リフィテグラスト、エタボン酸ロテプレドノール、テプロツムマブ、KVD-001、TZ-101、アテシドルセン、Nov-03、ベバシズマブ、AVA-101、RU-101、ボクロスポリン、ボロラニブ(vorolanib)、シロリムス、コリンフェノフィブレート、VX-210、APL-2、CPC-551、エラミプレチド、SF-0166、シビネチド、エラミプレチド、リラグルチド、EYS-606、ネスバクマブ、アフリベルセプト、オクリプラスミン、フィルゴチニブ、セネゲルミン、アディポセル、ブロルシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、パデリポルフィン光線力学的療法、パゾパニブ、ASP-8232、ベルドレオチド、ソトラスタウリン、アビシパルペゴル(abicipar pegol)、ジカフォソルテトラナトリウム、HCB-1019、コンベルセプト、ベルチリムマブ、SHP-659、THR-317、ALK-001、PAN-90806、インターフェロンアルファ-2b、フルオシノロン、スニチニブマレート、エミクススタト、hI-con1、TB-403、ミノサイクリン、MA09-hRPE細胞、ペグプララニブナトリウム、ペグビソマント、ルミネート(luminate)、ブリキサフォル、H-1129、カロツキシマブ、AXP-1275、ラニビズマブ、イソプロピルウノプロストン、テシドルマブ、腸溶コーティングミコフェノール酸ナトリウム、タデキニグアルファ、トリアムシノロンアセトニド、シクロスポリン、ST-266、AVX-012、NT-501-ECT、チバニシラン、ベルテポルフィン、ドルナーゼアルファ、アガニルセン、リパスジル、ルカパリブリン酸塩、ズカプサイシン、テトラチオモリブデート、ジクロフェナク、LHA-510、AGN-195263、タクロリムス、レバミピド、R-348、ブリモニジン酒石酸塩、ビゾミチン、T-89、LME-636、BI-1026706、リメキソロン、トブラマイシン、TOP-1630、タラポルフィン、ブロムフェナクナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ダブネチド、エタボン酸ロテプレドノール、XED-60、EG-ミロチン(Mirotin)、APD-209、アデノビル、PF-04523655、ヒドロキシカルバミド、ナバメペント、レチナミン、CNTO-2476、ラニビズマブ、フルピルチン、B27PD、S-646240、GLY-230、ヒドララジン、ネパフェナク、DexNP、トレハロース、ヒアルロン酸、デキサメタゾン-Ca持続放出デポー剤、ナルゾタン、ヒアルロニダーゼ、ヒアルロン酸ナトリウム、イスナキンラ、ソマトスタチン、CLG-561、OC-10X、UCA-002、組換えヒト上皮増殖因子、ペミロラスト、VM-100、MB-11316、モノナトリウムアルファルミノール、ラニビズマブ、IMD-1041、LMG-324、HE-10、シンヒアルロン酸ナトリウム、BDM-E、間葉系前駆細胞、ジスルフィラム、CTC-96、PG-101、ベイフシュー(Beifushu)、キモトリプシンを含むがこれらに限定されない。
【0138】
本明細書において、化合物1またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の他の治療剤とを含む、医薬組成物も提供される。治療剤は、上記で指定した作用物質のクラスからおよび上述した具体的な作用物質のリストから、選択されてよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、眼送達に好適である。一部の実施形態では、医薬組成物は、液体または懸濁物組成物である。
【0139】
さらに、方法態様では、本発明は、哺乳動物における疾患または障害を処置する方法であって、哺乳動物に、化合物1またはその薬学的に許容される塩および1つまたは複数の他の治療剤を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0140】
併用療法において使用される場合、作用物質は、単一医薬組成物で製剤化されてもよく、あるいは、作用物質は、同時にまたは別個の時間に、同じまたは異なる投与経路によって投与される別個の組成物で提供されてもよい。そのような組成物は、別個に包装することができ、またはキットとして一緒に包装されてもよい。キット内の2つまたはそれよりも多くの治療剤は、同じ投与経路によってまたは異なる投与経路によって投与されてよい。
【実施例】
【0141】
下記の合成および生物学的実施例は、本発明を例証するために提供されるものであり、本発明の範囲をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではない。以下の実施例において、下記の略語は、別段の指示がない限り、下記の意味を有する。以下で定義されていない略語は、それらの一般に認められている意味を有する。
ACN=アセトニトリル
DCC=ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAc=ジメチルアセトアミド
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EtOAc=酢酸エチル
HATU=N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
LDA=リチウムジイソプロピルアミド
min=分
MTBE=メチルtert-ブチルエーテル
NBS=N-ブロモスクシンイミド
NMP=N-メチル-2-ピロリドン
RT=室温
THF=テトラヒドロフラン
ビス(ピナコラート)ジボロン=4,4,5,5,4’,4’,5’,5’-オクタメチル-[2,2’]ビ[[1,3,2]ジオキサボロラニル]
Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2=ジクロロメタンとのジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン)-ジパラジウム(II)複合体
【0142】
試薬および溶媒は、商業供給業者(Aldrich、Fluka、Sigma等)から購入し、さらに精製することなく使用した。反応混合物の進行を、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)および質量分析によってモニターした。反応混合物を、各反応において具体的に記述されている通りに後処理し、一般には、反応混合物を、抽出、ならびに、温度および溶媒依存性結晶化、および沈殿等の他の精製方法によって精製した。加えて、反応混合物を、カラムクロマトグラフィーによってまたは分取HPLCによって、典型的には、C18またはBDSカラムパッキングおよび従来の溶離液を使用して、慣用的に精製した。典型的な分取HPLC条件を以下に記述する。
【0143】
反応生成物の特徴付けは、質量分析および1H-NMR分光分析によって慣用的に行った。NMR分析のために、試料を重水素化溶媒(CD3OD、CDCl3またはd6-DMSO等)に溶解し、標準的な観察条件下、Varianジェミニ2000機器(400MHz)で1H-NMRスペクトルを獲得した。化合物の質量分析同定は、自動精製システムと接続された、Applied Biosystems(Foster City、CA)モデルAPI150EX機器またはWaters(Milford、MA)3100機器を用いるエレクトロスプレーイオン化法(ESMS)によって実施した。
分取HPLC条件
カラム:C18、5μm。21.2×150mmまたはC18、5μm 21×250またはC14、5μm 21×150mm
カラム温度:室温
流量:20.0mL/分
移動相:A=水+0.05%TFA
B=ACN+0.05%TFA、
注入体積:(100~1500μL)
検出器波長:214nm
【0144】
粗化合物を、1:1 水:酢酸に、約50mg/mLで溶解した。2.1×50mm C18カラムを使用して4分間の分析スケールテスト実行を、続いて、分析スケールテスト実行のB保持%に基づく勾配で100μLの注射を使用して15または20分間の分取スケール実行を行った。正確な勾配は、試料依存性であった。最良の分離のために、不純物が連なっている試料を21×250mm C18カラムおよび/または21×150mm C14カラムで確認した。所望生成物を含有する画分を、質量分光分析によって同定した。
【0145】
調製1:2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1-5)
【化5】
(a)2-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-1-フルオロベンゼン(1-2)
2つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。ACN(5L)中の、5-ブロモ-2-フルオロフェノール(1-1)(850g、4.5mol)、臭化ベンジル(837g、4.9mol)および炭酸カリウム(923g、6.7mol)の混合物を、20℃で12時間にわたって撹拌した。反応物を組み合わせ、濃縮し、水(8L)で希釈し、EtOAc(3×3L)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(3L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカゲルパッド(3:1 石油エーテル:EtOAcで溶離)を介して精製して、表題中間体(1.83kg、73%収率)を白色固体として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ7.38-7.46 (m, 5H), 7.15 (dd, J = 7.6, 2.0 Hz, 1H), 6.98-7.15 (m, 1H), 5.12 (s, 2H).
【0146】
(b)2-(ベンジルオキシ)-4-エチル-1-フルオロベンゼン(1-3)
6つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。THF(100mL)中の前のステップの生成物(200g、711mmol)の溶液に、炭酸カリウム(197g、1.4mol)を添加した。反応混合物を窒素で3回パージし、続いて、Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2(11.6g、14.2mmol)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、ジエチル亜鉛(1M、1.07L)を滴下添加し、反応混合物を70℃で1時間にわたって撹拌した。反応物を組み合わせ、20℃に冷却し、水(7L)にゆっくりと注ぎ入れた。混合物に、4M HCl水溶液をpH6になるまで添加した。有機層を分離し、水性相をEtOAc(3×2L)で抽出した。組み合わせた有機層をブライン(5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルパッド(50:1 石油エーテル:EtOAcで溶離)を介して精製して、表題中間体(900g、92%収率)を薄黄色油として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.29-7.43 (m, 5H), 6.94-6.97 (m, 1H), 6.82 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.70 (m, 1H), 5.09 (s, 2H), 2.52-2.58 (m, 2H), 1.17 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0147】
(c)1-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-5-エチル-2-フルオロベンゼン(1-4)
4つの反応を並行して行い、組み合わせた。ACN(1L)中の2-(ベンジルオキシ)-4-エチル-1-フルオロベンゼン(1-3)(293g、1.3mol)の溶液に、NBS(249g、1.4mol)を20℃で小分けにして添加した。反応混合物を20℃で2時間にわたって撹拌した。反応混合物を組み合わせ、濃縮した。残留物を水(5L)で希釈し、EtOAc(2×5L)で抽出した。有機相をブライン(4L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 100:1~10:1で溶離)によって精製して、表題中間体(1.4kg、89%収率)を薄黄色油として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.29-7.38 (m, 5H), 7.2 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 6.8 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.06 (s, 2H), 2.6 (q, J = 7.6 Hz, 2 H), 1.1 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0148】
(d)2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1-5)
7つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。ジオキサン(2L)中の前のステップの生成物(200g、647mmol)の溶液に、酢酸カリウム(190g、1.9mol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(181g、712mmol)およびPd(dppf)Cl2-CH2Cl2(10.6g、12.9mmol)を、窒素下、20℃で添加した。混合物を120℃で2時間にわたって撹拌した。反応混合物を組み合わせ、濃縮し、水(5L)で希釈し、EtOAc(3×4L)で抽出した。組み合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 1:0~5:1で溶離)によって精製して、表題化合物(1.35kg、84%収率)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.33-7.51 (m, 6H), 6.82 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.17 (s, 2H), 2.85 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.33 (s, 12H), 1.15 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0149】
調製2:1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミン(2)
【化6】
ACN(3L)中のピリジン-3,4-ジアミン(400g、3.67mol)の溶液に、臭化ベンジル(596g、3.49mol)を0℃で小分けにして添加し、反応混合物を30分間にわたって、次いで20℃で12時間にわたって撹拌し、濾過した。濾過ケーキをACN(500mL)で洗浄し、乾燥させて、表題化合物のHBr塩(600g、2.14mol、58%収率)を白色粉末として得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ7.83 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.32-7.40 (m, 5H), 6.76 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.28 (s, 2H).
【0150】
調製3:6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-カルバルデヒド(3)
【化7】
(a)1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-2,2-ジエトキシエタン-1-オン(3-1)
9つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。THF(700mL)中の1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン(100g、518mmol)の溶液を脱気し、窒素で3回パージした。次いで、2M LDA(311mL)を-70℃で添加し、反応混合物を、窒素下、-70℃で0.5時間にわたって撹拌した。THF(200mL)中のエチル2,2-ジエトキシアセテート(96g、544mmol)の溶液を、窒素下、-70℃で滴下添加し、反応混合物を1時間にわたって撹拌した。反応物を組み合わせ、氷飽和塩化アンモニウム(10L)に小分けにして注ぎ入れ、EtOAc(3×3L)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル EtOAc 1:0~100:1で溶離)によって精製して、表題化合物(1.26kg、84%収率)を黄色油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.12 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 5.15 (s, 1H), 3.61-3.7 (m, 4H), 1.2 (t, J = 7.2 Hz, 6H).
【0151】
(b)1-(4’-(ベンジルオキシ)-2’-エチル-3,5,5’-トリフルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2,2-ジエトキシエタン-1-オン(3-2)
5つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。エタノール(150mL)およびトルエン(1.5L)中の1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-2,2-ジエトキシエタン-1-オン(3-1)(189g、586mmol)の混合物に、水(150mL)、炭酸ナトリウム(84.8g、800mmol)および2-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1-5)(190g、533mmol)を20℃で添加した。懸濁物を真空下で脱気し、窒素で数回パージした。Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2(13g、16mmol)を添加し、反応混合物を窒素で数回パージし、120℃で2時間にわたって撹拌した。反応物を組み合わせ、20℃に冷却し、水(5L)に注ぎ入れ、EtOAc(3×4L)で抽出した。組み合わせた有機層をブライン(5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 100:1~5:1で溶離)によって精製して、表題中間体(880g、70%収率)を黄色油として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.48 (m, 5H), 6.94-6.96 (m, 2H), 6.86-6.92 (m, 2H), 5.29 (s, 1H), 5.19 (s, 2H), 3.67-3.77 (m, 4H), 2.52 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.25 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.07 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0152】
(c)6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-3-(ジエトキシメチル)-4-フルオロ-1H-インダゾール(3-3)
4つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。THF(2L)中の前のステップの生成物(220g、466mmol)の溶液に、ヒドラジン一水和物(47.6g、931mmol)を20℃で添加した。反応混合物を100℃で12時間にわたって撹拌した。4つの反応物を組み合わせ、20℃に冷却し、濃縮した。残留物をEtOAc(5L)に溶解し、0.1M HCl(2×1.5L)で洗浄した。組み合わせた有機層をブライン(1.5L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、表題中間体(900g、粗製物)を黄色ガム状物として得て、これを、次のステップにおいて直接使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.36-7.48 (m, 5H), 6.94-6.96 (m, 2H), 6.86-6.92 (m, 2H), 5.29 (s, 1H), 5.19 (s, 2H), 3.67-3.77 (m, 4H), 2.52 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.25 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.07 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0153】
(d)6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-カルバルデヒド(3)
3つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。アセトン(1.5L)中の前のステップの生成物(300g、643mmol)の溶液に、4M HCl(16mL)を20℃で滴下添加し、反応混合物を20℃で0.17時間にわたって撹拌した。反応物を組み合わせ、濃縮し、MTBE(1L)で希釈し、濾過した。濾過ケーキをMTBE(2×300mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、表題中間体(705g、粗製物)を黄色固体として得て、これを、次のステップにおいて直接使用した。(m/z):[M+H]+C23H18F2N2O2の計算値393.13、実測値393.1。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 14.51 (s, 1H), 10.17 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.50 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.40-7.42 (m, 4H), 7.24 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.25 (s, 2H), 2.52-2.53 (m, 2H), 1.03 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0154】
調製4:5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(4)
【化8】
4つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。DMF(1.1L)中の6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-カルバルデヒド(3)、調製3の生成物(172g、440mmol)の溶液に、亜硫酸水素ナトリウム(68.6g、659mmol)および1-ベンジル-4-イミノ-1,4-ジヒドロピリジン-3-アミン(2)(136g、484mmol)を20℃で添加し、反応混合物を150℃で2時間にわたって撹拌した。4つの反応物を組み合わせ、反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物を水(10L)に注ぎ入れ、濾過した。濾過ケーキを減圧下で乾燥させて、表題中間体(990g、粗製物)を黄色固体として得て、これを、精製することなく直接使用した。(m/z):[M+H]
+C
35H
27F
2N
5Oの計算値572.2、実測値572.3。
【0155】
調製5:5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(5)
【化9】
3つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。メタノール(1.5L)およびTHF(1L)中の5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(4)、調製4の生成物(330g、577mmol)の混合物に、水素化ホウ素ナトリウム(267g、6.9mol)を小分けにして20℃で添加し、反応混合物を20℃で24時間にわたって撹拌した。3つの反応物を組み合わせ、反応混合物を水(10L)に添加し、10分間にわたって撹拌し、濾過した。濾液をEtOAc(2×5L)で抽出し、組み合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物をEtOAc(2L)で希釈し、30分間にわたって撹拌し、濾過した。濾過ケーキをMTBE(3×200mL)で洗浄して、表題中間体(275g、28%収率)を薄黄色固体として得た。(m/z):[M+H]
+C
35H
31F
2N
5Oの計算値576.25、実測値576.3。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ7.50-7.52 (m, 2H), 7.35-7.43 (m, 7H), 7.23-7.25 (m, 3H), 7.15 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 5.25 (s, 2H), 3.72 (s, 2H), 3.43 (br. s, 2H), 2.78 (br. s, 2H), 2.66 (br. s, 2H), 2.55 (q, 2H), 1.04 (t, J=7.6Hz, 3H).
【0156】
調製6:5-エチル-2-フルオロ-4-(4-フルオロ-3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(6)
【化10】
5つの反応を並行して行い、後処理のために組み合わせた。THF(500mL)およびメタノール(500mL)中の5-ベンジル-2-(6-(4-(ベンジルオキシ)-2-エチル-5-フルオロフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(5)、調製5の生成物(55g、95.5mmol)の混合物に、パラジウム炭素(15g、9.6mmol)および12M HCl水溶液(10mL)を添加した。懸濁物を真空下で脱気し、水素で数回パージし、水素(50psi)下、50℃で12時間にわたって撹拌した。反応物を組み合わせ、反応混合物を濾過した。濾液を真空下で濃縮して、表題中間体のHCl塩(150g、粗製物)をオフホワイトの固体として提供した。(m/z):[M+H]
+C
21H
19F
2N
5Oの計算値396.16、実測値396.2。
1H NMR (400MHz, MeOD) δ7.43 (s, 1H), 7.07 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.91 (d, J= 8.8 Hz, 1H), 4.57 (s, 2H), 3.74 (s, 2H), 3.24 (s, 2H), 2.55 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.08 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0157】
調製7:2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2-モルホリノアセテート(7’)
【化11】
(a)tert-ブチル2-モルホリノアセテート(7-1)
THF(3L)中のモルホリン(160g、1.84mol)および炭酸カリウム(381g、2.76mol)の混合物に、2-ブロモ酢酸tert-ブチル(341g、1.75mol)を0℃でゆっくりと添加した。反応混合物を30分間にわたって、次いで、20℃で12時間にわたって撹拌し、濃縮した。水(1.5L)を添加し、反応混合物をEtOAc(3×1L)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、表題中間体(300g、81%収率)を黄色油として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ3.74 (t,J=4.8 Hz, 4H), 3.10 (s, 2H), 2.57 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 1.46 (s, 9H).
【0158】
(b)2-モルホリノ酢酸(7”)
ジオキサン中3M HCl(2.0L)中の前のステップの生成物(7-1)(300g、1.49mol)の混合物を、20℃で12時間にわたって撹拌し、濃縮して、表題化合物のHCl塩(270g、99%収率)を淡色固体として得て、これを、次のステップにおいて直接使用した。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ4.13 (s, 2H), 3.93 (br. s, 4H), 3.64 (br. s, 4H).
【0159】
(c)2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2-モルホリノアセテート(7’)
DCM(2L)中の、前のステップの生成物(150g、826mmol)、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(95g、826mmol)、DCC(256g、1.24mol)およびDIPEA(160g、1.24mol)の混合物を、15℃で12時間にわたって撹拌し、濾過した。濾液を濃縮し、EtOAc(800mL)で洗浄した。固体を濾過によって収集し、濃縮して、表題化合物(150g、75%収率)を白色固体として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ3.68 (s, 2H), 3.58 (t, J=4.8 Hz, 4H), 2.82 (s, 4H), 2.57 (t, J = 5.2 Hz, 4H).
【0160】
(実施例1)
1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)
【化12】
DMF(600mL)中の、5-エチル-2-フルオロ-4-(4-フルオロ-3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(6)2HCl(100g、214mmol)、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2-モルホリノアセテート(7’)(67.2g、278mmol)およびDIPEA(69g、534mmol)の混合物を、15℃で12時間にわたって撹拌し、濾過した。溶液を逆相クロマトグラフィー(Agela FLEXATM FS-1L機器;2kg Agela C18 DACカラム;200gの試料をDMF(900mL)に溶解;流速300mL/分;溶媒A水、溶媒B ACN;勾配(%B、時間(分):0/15、0~40/45、40/50)によって精製して、表題化合物(50.0g、44.8%収率)を薄黄色固体として生じさせた。(m/z):[M+H]
+C
27H
28F
2N
6O
3の計算値523.22、実測値523.0。
1H NMR (400MHz, MeOD) δ7.22 (s, 1H), 6.80-6.96 (m, 3H), 4.68-4.78 (m, 2H), 3.96 (s, 2H), 3.65-3.95 (m, 4H), 3.35-3.38 (m, 2H), 2.77-2.92 (m, 2H), 2.52-2.56 (m, 6H), 1.06 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0161】
(実施例2)
結晶性1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)形態1
250mLのフラスコに、1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)、実施例1の生成物(5g)およびエタノール(50mL)を添加し、反応混合物を50~80℃で10分間にわたって撹拌し、次いで、ACN(75mL)を50~80℃でゆっくりと添加し、続いて、実施例3からの種晶を添加した。反応混合物を20~25℃で18時間にわたって撹拌した。得られた固体を濾過によって収集し、真空下、50℃で18時間にわたって乾燥させて、表題化合物形態1(3.6g、72%収率)を提供した。
【0162】
(実施例3)
結晶性1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)形態1
化合物1、実施例1の生成物(1g)をエタノール(10mL)に添加し、加熱して溶解させた。アセトニトリル(10mL)を添加し、反応混合物を撹拌し、加温し、次いで、室温で16時間にわたって撹拌し、濾過し、真空下、50℃で18時間にわたって乾燥させて、表題化合物形態1(0.23g)を提供した。
【0163】
(実施例4)
1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)
【化13】
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.298mL、1.707mmol)を、DMF(0.5mL)中の、5-エチル-2-フルオロ-4-(4-フルオロ-3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール(135mg、0.341mmol)(6)、HATU(156mg、0.410mmol)および2-モルホリノ酢酸(7”)(54.5mg、0.376mmol)の溶液に添加し、反応混合物を室温で24時間にわたって撹拌した。水酸化リチウム(49.1mg、2.049mmol)を添加し、反応混合物を65℃で1時間にわたって撹拌し、真空で濃縮して、透明黄色液体を産出した。粗液を、分取HPLCを介して精製して、表題化合物のTFA塩(142mg、0.223mmol、65.3%収率)をベージュ色固体として産出した。
【0164】
(実施例5)
結晶性1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)形態2
実施例1の化合物1(2.5g)をDMSO(5mL)に60℃で溶解した。均質溶液が取得されたら、MeOH(2.5mL)を溶液に添加した。均質混合物を、MeOH(12.75mL)およびH2O(11.25mL)の予混合溶液に、75℃で30分間かけて滴下添加した。混合物が完全に添加されたら、組み合わせた混合物を75℃で1時間にわたって撹拌させ、その間に結晶性スラリーが形成された。H2O(36mL)を75℃で2時間かけて滴下添加した。H2Oチャージが完了した後、スラリーを75℃で1時間にわたって撹拌し、次いで、20℃に6時間かけてゆっくりと冷却した。スラリーを20℃でさらに10時間にわたって保持した後、濾過し、70%H2O/MeOH(10mL)で洗浄し、真空下、50℃で18時間にわたって乾燥させて、表題化合物形態2(2.13g)を提供した。
【0165】
本発明の固体形態の特性
実施例2および5の1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)の2つの無水形態、形態1および形態2の試料を、それぞれ、粉末X線回折(PXRD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水分吸着(DMS)および偏光顕微鏡法画像によって分析した。形態2は単結晶X線回折分析によっても分析した。
【0166】
実施例6:粉末X線回折
図1および6の粉末X線回折パターンは、45kVの出力電圧および40mAの電流でCu-Kα線(λ=1.54051Å)を使用するBruker D8-AdvanceX線回折計を用いて得た。この装置を、サンプルにおいて強度が最大となるように入射スリット、発散スリットおよび散乱スリットを設定したBragg-Brentanoジオメトリで作動させた。計測のために、少量の粉末(5~25mg)をサンプルホルダー上に静かに押し込んで、滑らかな表面を形成させ、X線曝露に供した。サンプルを、2°から35°(単位:2θ)まで0.02°の刻み幅および1工程あたり0.30°秒の走査速度での2θ-2θモードで走査した。データ取得を、Bruker DiffracSuite計測ソフトウェアによって制御し、Jadeソフトウェア(バージョン7.5.1)によって解析した。上記装置は、コランダム標準を用いて±0.02°2シータ角以内に較正した。観察されたPXRD2シータピーク位置およびd間隔を、結晶形態1および結晶形態2についてそれぞれ、表1および2に示す。
【表1】
【表2】
【0167】
実施例7:熱分析
示差走査熱量測定(DSC)を、Thermal Analystコントローラを備えたTA Instruments Model Q-100モジュールを用いて行った。データを収集し、TA Instruments Thermal Analysisソフトウェアを用いて解析した。各結晶形態のサンプルを、ふた付きのアルミニウムパンに正確に秤量した。5℃での5分間の等温平衡期間の後、サンプルを10℃/分の線形加熱勾配で0℃から300℃に加熱した。
【0168】
本発明の形態1結晶性遊離形態の代表的なDSCサーモグラムを、
図7に示す。1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定(DSC)トレースは、約210℃から約234℃の範囲内、または約215℃から約229℃の間の範囲内、または約220℃から約224℃の間の範囲内の、溶融遷移として同定される吸熱熱流のピークを呈する。結晶形態は、約221.7℃または221.7±3℃のピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする。
【0169】
本発明の形態2結晶性遊離形態の代表的なDSCサーモグラムを、
図2に示す。1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定(DSC)トレースは、約268℃から約277℃の範囲内、または約270℃から約275℃の間の範囲内、または約271℃から約274℃の間の範囲内の、溶融遷移として同定される吸熱熱流のピークを呈する。結晶形態は、約272.6℃または272.6±2℃のピークを持つ吸熱熱流の最大値を示す、1分当たり10℃の加熱速度で記録された示差走査熱量測定トレースを特徴とする。
【0170】
熱重量分析(TGA)の計測は、高分解能を備えるTA Instruments Model Q-50モジュールを用いて行った。データを、TA Instruments Thermal Analystコントローラを用いて収集し、TA Instruments Universal Analysisソフトウェアを用いて解析した。秤量したサンプルを白金パン上に置き、周囲温度から300~350℃まで10℃の加熱速度で走査した。使用中、天秤および炉チャンバーに窒素流をパージした。
【0171】
本発明の形態1結晶性遊離形態の代表的なTGAトレースを、
図8に示す。
図8の熱重量分析(TGA)トレースは、約293℃の分解開始未満の温度では顕著な重量損失がないことを示す。
【0172】
本発明の形態2結晶性遊離形態の代表的なTGAトレースを、
図3に示す。
図3の熱重量分析(TGA)トレースは、約269℃の分解開始未満の温度では顕著な重量損失がないことを示す。
【0173】
実施例8:動的水分吸着の評価
動的水分吸着(DMS)の計測を、VTI大気微量天秤SGA-100システム(VTI Corp.,Hialeah,FL 33016)を使用して行った。秤量したサンプルを使用し、解析の開始時の湿度は、可能な限り最低の値(0%RHに近い値)であった。DMS解析は、120分間にわたる最初の乾燥工程(0%RH)の後、5%RH~90%RHの湿度範囲にわたる5%RH/工程という走査速度での吸着および脱着の2サイクルからなった。DMSの実行は、25℃の等温で行われた。
【0174】
本発明の形態1結晶性遊離形態についての代表的なDMSトレースを、
図9に示す。
【0175】
結晶形態1は、吸収および脱着の2サイクル間の小さなヒステリシスを実証した。形態1は、
図9に示されている通り、5%から70%相対湿度の湿度範囲における約0.99%の重量増加および5%から90%相対湿度の湿度範囲における約1.32%の重量増加を室温で実証した。形態1は、わずかに吸湿性であるとみなされる。
【0176】
本発明の形態2結晶性遊離形態についての代表的なDMSトレースを、
図4に示す。結晶形態2は、吸収および脱着の2サイクル間のヒステリシスを示さず、吸湿性の並外れて小さい傾向を実証した。形態2は、
図4に示されている通り、5%から70%相対湿度の湿度範囲における約0.12%の重量増加および5%から90%相対湿度の湿度範囲における約0.18%の重量増加を室温で実証した。形態2は、非吸湿性であるとみなされる。
【0177】
(実施例9)
形態2の単結晶X線回折
データは、Oxford Cryosystemsコブラ冷却デバイスを備えた、Rigaku Oxford Diffraction Supernova Dual Source、Cu at Zero、アトラスCCD回折計で収集した。データは、Cu Kα放射線を使用して収集した。Bruker AXS SHELXTL結晶学ソフトウェアスイートを使用して、構造を解明し、精密化した。全詳細はCIFにおいて見ることができる。別段の記載がない限り、炭素と結合している水素原子を、幾何学的に置き、ライディング等方性変位パラメーターを用いて精密化させた。ヘテロ原子と結合している水素原子を、差分フーリエマップに位置付け、等方性変位パラメーターを用いて自由に精密化させた。
【表3】
【0178】
(実施例10)
形態1の固体状態安定性評価
本発明の形態1結晶性遊離形態の試料を、2つの配置a)開いたガラスバイアルおよびb)乾燥剤を含有するHDPEボトルの内側に置いた閉じたガラスバイアル下、25℃および60%相対湿度(RH)ならびに40℃および75%RHで貯蔵した。HDPEボトルをインダクションシーリングした。特定の間隔で、代表的な試料の内容物を除去し、化学的純度についてHPLCによって分析した(HPLC純度(%a/a)として以下に示す)。
【表4】
【0179】
(実施例11)
形態1および形態2の偏光顕微鏡法(PLM)画像
形態1および形態2の試料を、交差偏光フィルター付きの光学顕微鏡(Olympus BX51)下で検査した。画像を、PaxIt撮像ソフトウェア(バージョン6.4)によって制御したPaxCamカメラで収集した。試料を、液浸媒質として軽油を用いるスライドガラス上で調製した。粒子のサイズに応じて、4倍、10倍または20倍対物レンズを拡大のために使用した。
調製8:tert-ブチル2-ヨード-1-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-カルボキシレート(C-5)
【化14】
【0180】
0.01M HCl(500mL)中の化合物C-22(25g、135.86mmol)の溶液に、ジメトキシメタン(21.64mL、244.54mmol)を添加した。得られた溶液を100℃で18時間にわたって撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物をジエチルエーテルおよびエタノールで2回トリチュレートし、濾過し、乾燥させて、化合物C-21(25.2g、94.6%収率)を提供した。
【0181】
メタノール(250mL)中の化合物C-21(25.0g、127.55mmol)の溶液に、DIPEA(57.23mL、318.87mmol)を添加し、続いて、(Boc)2O(68.23mL、318.87mol)を添加し、反応物を室温で18時間にわたって撹拌した。得られた反応物を水(150mL)で希釈し、酢酸エチル(3×200mL)を使用して抽出した。組み合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、デカントし、減圧下で濃縮して、粗生成物C-20を取得し、これを、さらに精製することなく次のステップに持ち越した。
【0182】
メタノール(500mL)中のこの粗化合物C-20(40.0g、123.8mmol)の溶液に、1M NaOH溶液(200mL)を添加し、得られた溶液を室温で18時間にわたって撹拌した。溶媒を真空下で留去し、得られた粗製物を水(200mL)で希釈し、酢酸エチル(3×300mL)を使用して抽出した。組み合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗生成物を取得して、これを、カラムクロマトグラフィー(100~200シリカゲル)を介して精製し、5~10%MeOH:DCMで溶離して、所望生成物C-19(20g、72.4%収率)を得た。
【0183】
THF(400mL)中の化合物C-19(20g、89.68mmol)の溶液に、NIS(30.26g、134.52mmol)を室温で添加し、得られた溶液を同じ温度で2時間にわたって撹拌した。反応混合物を水(200mL)で希釈し、酢酸エチル(2×300mL)中で抽出し、有機層を、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(3×100mL)、続いて、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗生成物C-18を取得して、これを、さらに精製することなく次のステップにおいて使用した。
【0184】
THF(150mL)中の化合物C-18(15.0g、42.97mmol)の撹拌溶液に、NaH(1.8g 45.11mmol)を0℃で小分けにして添加し、反応混合物を室温で1時間にわたって撹拌した。次いで、SEMクロリド(8.18mL、45.11mmol)を0℃で滴下添加した。反応物を室温で6時間にわたって撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターし、反応物を0℃の氷水(200mL)でクエンチし、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。組み合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を濾過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を取得して、これを、カラムクロマトグラフィー(100~200)シリカ(10~15% EtOAc:ヘキサンで溶離)によって精製して、所望生成物C-5を粘性液体(11g、55%)として得た。
【0185】
調製9:2-(2-エチル-5-フルオロ-4-メトキシフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(C-12)
【化15】
-40℃に冷却した無水THF(1000mL)中の化合物C-17(347.6g、973.14mmol)の撹拌懸濁物に、n-ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、362.6mL、905.02mmol)を50分間かけて添加し、その時点で、リンイリドの特徴的な黄色は持続していた。反応混合物を-10℃に加温し、1時間にわたって撹拌し、次いで、混合物を-30℃に冷却し、無水THF(200mL)中の化合物R-1(50g、324.38mmol)の溶液を30分間かけて添加した。結果として生じた混合物を周囲温度に加温し、終夜撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターした。完了したら、反応物を水(500mL)の漸進的添加によってクエンチし、ジエチルエーテル(3×500mL)で抽出した。組み合わせた有機層を、水(2×500mL)、ブライン(250mL)で洗浄し、(無水Na
2SO
4)で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗化合物を得た。取得された粗生成物C-16を、精製することなく次のステップにおいて使用した。
【0186】
エタノール(1000mL)中の粗製物C-16(110g、723.39mmol)の溶液に、10%Pd/C(50g)を添加した。水素ガスのバルーンを取り付け、反応物を排気し、水素で3回再充填した。反応物を、水素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。室温で終夜撹拌した後、反応は完了した。これをセライトのパッドに通して濾過し、真空で濃縮して、粗化合物を提供して、これを、カラムクロマトグラフィー(100~200)シリカゲルを介して精製し、3~5%酢酸エチル/ヘキサンを使用して溶離して、所望生成物C-15を無色液体(2ステップにわたって24g、48%)として取得した。
【0187】
MeCN(200mL)中の化合物C-15(24.0g、155.84mmol)の溶液に、MeCN(100mL)中のNBS(28.0g、157.40mmol)の溶液を添加した。得られた溶液を室温で18時間にわたって撹拌した。溶媒を真空で除去し、残留物をジエチルエーテル(100mL)で希釈した。沈殿物が観察され、これを、濾過によって除去し、濾液を亜硫酸ナトリウム水溶液(200mL)およびブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で濃縮して、所望生成物C-14を黄色油(35.0g、97%収率)として得た。
【0188】
ジオキサン(400mL)中の化合物C-14(20g、85.836mmol)の溶液に、化合物R-2(32.69g、128.755mmol)およびKOAc(25.27g、257.508mmol)を添加した。反応混合物を窒素で15分間にわたって脱気し、次いで、パラジウム触媒(3.5g、4.29mmol)を添加した。反応混合物を撹拌し、110℃で3時間にわたって加熱した。反応物をセライトのパッドに通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(2×200mL)およびブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。取得された粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(100~200シリカゲル)を介して精製し、3~5%EtOAc:ヘキサンで溶離して、所望生成物C-12(20g、83%収率)を得た。
【0189】
調製10:3-(ジメチル-スタンニル)-6-(2-エチル-5-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-インダゾール(C-6)
【化16】
化合物C-13(25g、126.84mmol)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(134.5mL、1471.5mL)およびp-TSA(5.57g、29.18mmol)の混合物を、THF(700mL)に溶かし、60℃で終夜加熱した。反応混合物を氷水に注ぎ入れ、水性相を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で蒸発させ、残留物をシリカゲル(230~400)カラム(ヘキサン中1~2%酢酸エチルで溶離)上で精製して、所望化合物C-11(23.5g、67%収率)を得た。
【0190】
DMF:H2O(396:99mL)中の、化合物C-11(13.3g、47.5mmol)、化合物C-12(15.96g、57.0mmol)およびK3PO4(30.21g、142.5mmol)の溶液を、窒素で15分間にわたって脱気し、次いで、パラジウム触媒(1.6g、2.37mmol)を添加し、反応混合物を窒素で5分間にわたってパージした。得られた反応混合物を、連続的に撹拌しながら、100℃で12時間にわたって加熱した。反応混合物をセライトのパッドに通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、EtOAc(2×100mL)で抽出し、冷水(100mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、粗生成物を得て、これを、フラッシュクロマトグラフィー(100~200シリカゲル)を介して精製し、10%EtOAc:ヘキサンで溶離して、C-10(14g、91.4%収率)を得た。
【0191】
メタノール(600mL)中の化合物C-10(52g、146.89mmol)の溶液に、濃HCl(50mL)を添加し、得られた溶液を60℃で終夜加熱した。反応混合物を室温に冷却し、真空下で濃縮した。残留物をEtOAc(200mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(2×150mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮して、所望生成物C-9(35g、88.9%収率)を得た。
【0192】
DMF(100mL)中の化合物C-9(17.5g、64.81mmol)の溶液に、KOH(14.5g、259.54mmol)を添加し、混合物を15分間にわたって撹拌した。DMF(50mL)中のヨウ素(32.7g、129.62mmol)の溶液を0℃でゆっくりと添加し、反応混合物を室温で30分間にわたって撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターし、次いで、反応混合物を水(200mL)で希釈し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。有機層を飽和メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液(2×150mL)および水(3×100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮して、粗生成物C-8(21g)を得た。
【0193】
DCM(230mL)中のC-8(21.0g、53.02mmol)の溶液に、p-TsOH(1.8g、10.60mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。化合物R-3(7.04mL、79.54mmol)を上記の溶液に滴下添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。TLCモニタリングは、反応の完了を示した。反応混合物をDCM(2×150mL)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(200mL)およびブライン(200mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮して、粗生成物を得て、これを、フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、C-7を得た。
【0194】
トルエン(200mL)中のC-7(10.0g、20.83mmol)の溶液を、窒素で20分間にわたって脱気し、続いて、R-4(4.89mL、22.91mmol)およびPd(PPh3)4(1.2g、1.04mmol)を添加した。反応混合物を窒素でさらに5分間にわたってパージし、次いで、100℃で撹拌した。2時間後、TLCは、反応の完了を示す。反応混合物を室温に冷却し、セライトパッドに通して濾過し、残留物を酢酸エチルで洗浄した。濃縮した濾液をカラムクロマトグラフィー(中性アルミナ)によって精製し、2~5%EtOAc:ヘキサンで溶離して、生成物C-6(6.4g、57.6%収率)を得た。
【0195】
調製11:2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン(C-3)
【化17】
トルエン(100mL)中の化合物C-6(6.4g、12.37mmol)の溶液に、化合物C-5(5.9g、12.37mmol)を添加した。反応混合物を窒素で20分間にわたって脱気し、続いて、ヨウ化銅(I)(470mg、2.47mmol)およびPd(PPh
3)
4(714mg、1.237mmol)を添加し、次いで、100℃で12時間にわたって撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターした。反応物を室温に冷却し、セライトパッドに通して濾過し、残留物を酢酸エチルで洗浄した。有機層を水で希釈し、分離し、有機部分をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗生成物を得て、これを、カラムクロマトグラフィー(100~200メッシュサイズシリカ)によって精製し、20%EtOAc:ヘキサンで溶離して、C-4(4g、45.9%)を得た。
【0196】
ジオキサン(30mL)中の化合物C-4(4.0g、5.6mmol)の溶液に、濃HCl(30mL)を添加した。反応混合物を70℃で16時間にわたって撹拌した。反応の進行をLCMSによってモニターした。反応物を室温に冷却し、真空で濃縮し、ジエチルエーテルでトリチュレートし、分取HPLCを介して精製して、所望化合物C-3(0.65g、29.5%)を得た。
【0197】
(実施例12)
1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(C-1)
【化18】
室温のDCM(0.5ml)中のC-3(180mg、0.460mmol)の混合物に、三臭化ホウ素、DCM(100ml)中1m(2.299ml、2.299mmol)を添加した。得られた混合物を30分間にわたって撹拌した後、それを濃縮した。得られた残留物をMeOH(3×3.0mL)と共蒸発させ、AcOH:H
2Oの1:1混合物(3.0mL)に再溶解し、濾過し、逆相分取HPLCによって精製した。所望の画分を組み合わせ、フリーズドライして、C-2((5-エチル-2-フルオロ-4-(3-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1H-インダゾール-6-イル)フェノール)をTFA塩として得た。
【0198】
室温のDMF(0.5ml)中の、C-2、TFA(15mg、0.031mmol)および7”(2当量、0.061mmol)の混合物に、HATU(25.5mg、0.067mmol)およびDIEA(0.043ml、0.244mmol)を添加した。得られた混合物を室温で終夜撹拌した。反応物をMeOH(0.5000ml)および水(0.500ml)で希釈した。LiOH(2.193mg、0.092mmol)を添加した。得られた混合物を65℃で1時間にわたって加熱した。次いで、反応物を濃縮し、得られた残留物を、DCM(0.500ml)およびTFA(0.500ml)の混合物により室温で30分間にわたって処理し、濃縮し、AcOH:H2Oの1:1混合物(1.5mL)に再溶解し、濾過し、逆相分取HPLCによって精製して、化合物C-1をTFA塩として得た。(m/z):[M+H]+C27H29FN6O3の計算値504.23、実測値505.2。
【0199】
生物学的アッセイ
化合物1を、下記の生物学的アッセイのうちの1つまたは複数において特徴付けた。
【0200】
アッセイ1:生化学的JAKキナーゼアッセイ
4つのランサスクリーンJAK生化学的アッセイ(JAK1、2、3およびTyk2)のパネルを、共通のキナーゼ反応緩衝液(50mM HEPES、pH7.5、0.01%Brij-35、10mM MgCl2および1mM EGTA)中で行った。組換えGSTタグ付きJAK酵素およびGFPタグ付きSTAT1ペプチド基質を、Life Technologiesから入手した。
【0201】
連続希釈化合物を、4つのJAK酵素のそれぞれおよび基質とともに、白色384ウェルマイクロプレート(Corning)中、周囲温度で1時間にわたってプレインキュベートした。その後、ATPを、1%DMSOを含む10μLの総体積で添加して、キナーゼ反応を開始した。JAK1、2、3およびTyk2についての最終酵素濃度は、それぞれ、4.2nM、0.1nM、1nMおよび0.25nMであり、使用した対応するKm
ATP濃度は、25μM、3μM、1.6μMおよび10μMであるのに対し、基質濃度は、4つすべてのアッセイについて200nMである。キナーゼ反応を周囲温度で1時間にわたって進めさせた後、TR-FRET希釈緩衝液(Life Technologies)中のEDTA(10mM最終濃度)およびTb抗pSTAT1(pTyr701)抗体(Life Technologies、2nM最終濃度)の10μLの調製物を添加した。プレートを周囲温度で1時間にわたってインキュベートさせた後、エンビジョンリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。放出比シグナル(520nm/495nm)を記録し、DMSOおよびバックグラウンド対照に基づくパーセント阻害値を算出するために利用した。
【0202】
用量応答分析のために、パーセント阻害データを化合物濃度に対してプロットし、IC50値を4パラメーターロバスト当てはめモデルからプリズムソフトウェア(GraphPad Software)を用いて決定した。結果をpIC50(IC50の負の対数)として表現し、その後、チェン-プルソフ式を使用して、pKi(解離定数Kiの負の対数)に変換した。
【0203】
【0204】
アッセイ2:細胞JAK効力アッセイ:IL-13の阻害
アルファスクリーンJAKI細胞効力アッセイを、BEAS-2Bヒト肺上皮細胞(ATCC)におけるインターロイキン-13(IL-13、R&D Systems)誘発性STAT6リン酸化を測定することによって行った。抗STAT6抗体(Cell Signaling Technologies)を、アルファスクリーンアクセプタービーズ(Perkin Elmer)とコンジュゲートさせたのに対し、抗pSTAT6(pTyr641)抗体(Cell Signaling Technologies)を、EZ-リンクスルホ-NHS-ビオチン(Thermo Scientific)を使用してビオチン化した。
【0205】
BEAS-2B細胞を、10%FBS(Hyclone)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)および2mMグルタマックス(Life Technologies)を補充した50%DMEM/50%F-12培地(Life Technologies)中、5%CO2加湿インキュベーター内、37℃で増殖させた。アッセイの1日目、細胞を、25μLの培地を加えた白色ポリ-D-リシンコーティング384ウェルプレート(Corning)中に7,500細胞/ウェル密度で播種し、インキュベーター内で終夜接着させた。アッセイの2日目、培地を除去し、用量応答の試験化合物を含有する12μLのアッセイ緩衝液(ハンクス平衡塩類溶液/HBSS、25mM HEPESおよび1mg/mLウシ血清アルブミン/BSA)で置きかえた。化合物をDMSO中で連続希釈し、次いで、培地中でさらに1000倍希釈して、最終DMSO濃度を0.1%にした。細胞を、試験化合物とともに37℃で1時間にわたってインキュベートし、続いて、12μlの予め温めておいたIL-13(アッセイ緩衝液中80ng/mL)を刺激のために添加した。37℃で30分間にわたってインキュベートした後、アッセイ緩衝液(化合物およびIL-13を含有)を除去し、10μLの細胞溶解緩衝液(25mM HEPES、0.1%SDS、1%NP-40、5mM MgCl2、1.3mM EDTA、1mM EGTA、ならびにRoche Diagnostics製のコンプリートウルトラミニプロテアーゼ阻害剤およびPhosSTOPを補充)。プレートを周囲温度で30分間にわたって振とうした後、検出試薬を添加した。ビオチン抗pSTAT6および抗STAT6コンジュゲートアクセプタービーズの混合物を最初に添加し、周囲温度で2時間にわたってインキュベートし、続いて、ストレプトアビジンコンジュゲートドナービーズ(Perkin Elmer)を添加した。最低でも2時間のインキュベーション後、アッセイプレートをエンビジョンプレートリーダーで読み取った。アルファスクリーン発光シグナルを記録し、DMSOおよびバックグラウンド対照に基づくパーセント阻害値を算出するために利用した。
【0206】
用量応答分析のために、パーセント阻害データを化合物濃度に対してプロットし、IC50値を4パラメーターロバスト当てはめモデルからプリズムソフトウェアを用いて決定した。結果を、IC50値の負の対数であるpIC50として表現してもよい。化合物1は、このアッセイにおいて7.9のpIC50値を呈した。
【0207】
アッセイ3:細胞JAK効力アッセイ:ヒトPBMCにおけるIL-2/抗CD3刺激IFNγの阻害
インターロイキン-2(IL-2)/抗CD3刺激インターフェロンガンマ(IFNγ)の阻害についての試験化合物の効力を、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離したヒト末梢血単核細胞(PBMC)において測定した。IL-2はJAKを介してシグナル伝達することから、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0208】
(1)ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なドナーのヒト全血から、フィコール勾配を使用して単離した。細胞を、37℃、5%CO2加湿インキュベーター内、10%熱失活ウシ胎仔血清(FBS、Life Technologies)、2mMグルタマックス(Life Technologies)、25mM HEPES(Life Technologies)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したRPMI(Life Technologies)中で培養した。細胞を、培地(50μL)中に200,000細胞/ウェルで播種し、1時間にわたって培養した。化合物をDMSO中で連続希釈し、次いで、培地中でさらに500倍希釈した(2×最終アッセイ濃度に)。試験化合物希釈物(100μL/ウェル)を細胞に添加し、37℃、5%CO2で1時間にわたってインキュベートし、続いて、予め温めておいたアッセイ培地(50μL)中のIL-2(R&D Systems;最終濃度100ng/mL)および抗CD3(BD Biosciences;最終濃度1μg/mL)を24時間にわたって添加した。
【0209】
(2)サイトカイン刺激後、細胞を500gで5分間にわたって遠心分離し、上清を除去し、-80℃で冷凍した。IL-2/抗CD3に応答した試験化合物の阻害効力を決定するために、ELISA(R&D Systems)を介して上清IFNγ濃度を測定した。IC50値を、IFNγの濃度対化合物濃度の阻害曲線の分析から決定した。データは、pIC50(IC50の負の10進対数)値として表現される。化合物1は、このアッセイにおいて約6.7のpIC50値を呈した。
【0210】
アッセイ4:細胞JAK効力アッセイ:CD4+T細胞におけるIL-2刺激pSTAT5の阻害
インターロイキン-2(IL-2)/抗CD3刺激STAT5リン酸化の阻害についての試験化合物の効力を、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離したヒト末梢血単核細胞(PBMC)中のCD4陽性(CD4+)T細胞において、フローサイトメトリーを使用して測定した。IL-2はJAKを介してシグナル伝達することから、このアッセイは、JAK細胞効力の尺度を提供する。
【0211】
CD4+T細胞を、フィコエリトロビリン(PE)コンジュゲート抗CD4抗体(クローンRPA-T4、BD Biosciences)を使用して同定し、一方、アレクサフルオル647コンジュゲート抗pSTAT5抗体(pY694、クローン47、BD Biosciences)を使用して、STAT5リン酸化を検出した。
【0212】
(1)IL-2/抗CD3によるサイトカイン刺激を24時間の代わりに30分間にわたって実施したことを除いて、アッセイ3段落(1)のプロトコールに準拠した。
【0213】
(2)サイトカイン刺激後、細胞を、予め温めておいた固定溶液(200μL;BD Biosciences)により、37℃、5%CO2で10分間にわたって固定し、DPBS緩衝液(1mL、Life Technologies)で2回洗浄し、氷冷パーム緩衝液III(1000μL、BD Biosciences)に4℃で30分間にわたって再懸濁した。細胞を、DPBS中2%FBS(FACS緩衝液)で2回洗浄し、次いで、抗CD4 PE(1:50希釈)および抗CD3アレクサフルオル647(1:5希釈)を含有するFACS緩衝液(100μL)に、暗所にて室温で60分間にわたって再懸濁した。インキュベーション後、細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄した後、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。IL-2/抗CD3に応答した試験化合物の阻害効力を決定するために、pSTAT5のメジアン蛍光強度(MFI)をCD4+T細胞において測定した。IC50値を、MFI対化合物濃度の阻害曲線の分析から決定した。データは、pIC50(IC50の負の10進対数)値として表現される。化合物1は、このアッセイにおいて約7.7のpIC50値を呈した。
【0214】
アッセイ5:細胞JAK効力アッセイ:ヒトPBMCにおけるIL-6刺激CCL2(MCP-1)の阻害
インターロイキン-6(IL-6)刺激CCL2(MCP-1)産生の阻害についての試験化合物の効力を、ヒト全血(Stanford Blood Center)から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)において測定した。IL-6はJAKを介してシグナル伝達することから、このアッセイは、JAK細胞効力の遠位測定を提供する。
【0215】
(1)アッセイ3段落(1)のプロトコールに準拠して、試験化合物とともにインキュベーションした。本アッセイでは、試験化合物をウェルに添加し、インキュベートした後、予め温めておいたアッセイ培地(50μL)中のIL-6(R&D Systems;最終濃度10ng/ml)を添加した。
【0216】
(2)48時間にわたるサイトカイン刺激後、細胞を500gで5分間にわたって遠心分離し、上清を除去し、-80℃で冷凍した。IL-6に応答した試験化合物の阻害効力を決定するために、ELISA(R&D Systems)を介して上清CCL2(MCP-1)濃度を測定した。IC50値は、CCL2/MCP-1の濃度対化合物濃度の阻害曲線の分析から決定した。データは、pIC50(負の10進対数IC50)値として表現される。化合物1は、このアッセイにおいて約6.4のpIC50値を呈した。
【0217】
アッセイ6:細胞JAK効力アッセイ:IFNγ誘発性pSTAT1の阻害
インターフェロンガンマ(IFNγ)刺激STAT1リン酸化の阻害についての試験化合物の効力を、ヒト全血(Stanford Blood Center)由来のCD14陽性(CD14+)単球において、フローサイトメトリーを使用して測定した。IFNγはJAKを介してシグナル伝達することから、このアッセイは、JAK細胞効力の測定を提供する。
【0218】
単球は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート抗CD14抗体(クローンRM052、Beckman Coulter)を使用して同定し、アレクサフルオル647コンジュゲート抗pSTAT1抗体(pY701、クローン4a、BD Biosciences)を使用して、STAT1リン酸化を検出した。
【0219】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なドナーのヒト全血から、フィコール勾配を使用して単離した。細胞を、37℃、5%CO2加湿インキュベーター内、10%ウシ胎仔血清(FBS、Life Technologies)、2mMグルタマックス(Life Technologies)、25mM HEPES(Life Technologies)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を補充したRPMI(Life Technologies)中で培養した。細胞を、培地(200μL)中に250,000細胞/ウェルで播種し、1時間にわたって培養し、次いで、種々の濃度の試験化合物を含有するアッセイ培地(50μL)(0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma)、2mMグルタマックス、25mM HEPESおよび1×ペニシリンストレプトマイシンを補充したRPMI)に再懸濁した。化合物をDMSO中で連続希釈し、次いで、培地中でもう1000倍希釈して、最終DMSO濃度を0.1%にした。試験化合物希釈物を、細胞とともに、37℃、5%CO2で1時間にわたってインキュベートし、続いて、培地(50μL)中の予め温めておいたIFNγ(R&D Systems)を、0.6ng/mLの最終濃度で30分間にわたって添加した。サイトカイン刺激後、細胞を、予め温めておいた固定溶液(100μL)(BD Biosciences)により、37℃、5%CO2で10分間にわたって固定し、FACS緩衝液(1mL)(PBS中1%BSA)で2回洗浄し、1:10 抗CD14 FITC:FACS緩衝液(100μL)に再懸濁し、4℃で15分間にわたってインキュベートした。細胞を1回洗浄し、次いで、氷冷パーム緩衝液III(BD Biosciences)(100μL)に4℃で30分間にわたって再懸濁した。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、次いで、1:10 抗pSTAT1アレクサフルオル647:FACS緩衝液(100μL)に、室温、暗所で30分間にわたって再懸濁し、FACS緩衝液中で2回洗浄し、LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して分析した。
【0220】
試験化合物の阻害効力を決定するために、pSTAT1のメジアン蛍光強度(MFI)をCD14+単球において測定した。IC50値は、MFI対化合物濃度の阻害曲線の分析から決定した。データは、pIC50(負の10進対数IC50)値として表現される。化合物1は、このアッセイにおいて約7.1のpIC50値を呈した。
【0221】
アッセイ7:ウサギの目における眼内薬物動態
このアッセイの目的は、ウサギの眼組織における試験化合物の薬物動態を決定することであった。
【0222】
溶液製剤
実施例2において調製した1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)を、2%2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに溶解して、1mg/mLの標的濃度に到達した。試験化合物の溶液の両側性硝子体内注射(50μL/目)を、ニュージーランド白色ウサギ(50μg/目)に投与した。試験化合物濃度を、眼組織:硝子体、房水、網膜/脈絡膜および虹彩毛様体において、注射後所定の時点(30分、4時間、1日、3日、7日、14日)で測定した。2匹のウサギ(4つの目)に各時点で投薬した。硝子体組織において、化合物1は、およそ9時間の半減期および最終的におよそ2日間の終末相半減期を持つ初期の濃度の減少を特徴とする、濃度の二相減少を呈した。化合物は、網膜および脈絡膜領域にも迅速に分配することが分かり、硝子体組織と同様の薬物動態プロファイルを示す。
【0223】
懸濁物製剤
懸濁物製剤は、実施例2の化合物1(形態1)を、生理食塩水中の0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)+0.02%Tween80と組み合わせて、0.25mg/目、1mg/目および4mg/目用量についてそれぞれ5mg/mL、20mg/mLおよび80mg/mLの標的濃度に到達することによって調製した。試験化合物の懸濁物の両側性硝子体内注射(50μL/目)を、ニュージーランド白色ウサギに投与した。試験化合物濃度は、眼組織において、溶液製剤アッセイと同様に、注射後30分、4時間、24時間、72時間、7日、14日、28日、56日および84日で測定した。4mg/目用量群については、注射後168日における追加の時点でも収集した。すべての用量群が、目における測定可能な薬物濃度を、この研究において試験した最後の時点まで実証した。12週(84日)では、すべての用量について強固な持続的曝露が観察された。持続的曝露は、4mg/目用量群について、24週(84日)で観察された。化合物は、硝子体組織において、30分から24週まで、およそ5から10μg/mL/日の薬物クリアランス速度で、薬物濃度の線形減少を示した。クリアランス速度は、ビヒクルへの化合物1の溶解性および溶液製剤における眼の薬物動態学的挙動と一致している。すべての用量群が、目における測定可能な薬物濃度を、この研究において試験した最後の時点まで実証した。したがって、薬物曝露は、この研究において観察されたものよりも長いことが妥当と思われる。血漿における薬物濃度を測定し、3つすべての濃度で、硝子体組織における濃度よりも少なくとも3桁低いことが分かった。
【0224】
懸濁物製剤は、実施例5の化合物1(形態2)を、生理食塩水中の0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)+0.02%Tween80と組み合わせて、0.02mg/目、0.05mg/目、0.1mg/目および1mg/目用量についてそれぞれ0.4mg/mL、1mg/mL、2mg/mLおよび20mg/mLの標的濃度に到達することによって調製した。試験化合物の懸濁物の両側性硝子体内注射(50μL/目)を、ダッチベルテッドウサギに投与した。試験化合物濃度は、硝子体液、眼房水、虹彩毛様体、網膜、網膜色素上皮/脈絡膜細胞および血漿において、注射後30分、7日、14日、28日、42日および56日で測定した。化合物は、硝子体組織において、30分から試験した最後の時点まで、薬物濃度の非常に緩やかな減少を示した(0.02mg/目用量については28日、0.05mg/目および1mg/目用量については42日、ならびに0.1mg/目用量については56日)。すべての用量群が、目における測定可能な薬物濃度を、この研究において試験した最後の時点まで実証した。したがって、薬物曝露は、この研究において観察されたものよりも長いことが妥当と思われる。血漿における薬物濃度を測定し、3つすべての濃度で、硝子体組織における濃度よりも少なくとも3桁低いことが分かった。3桁は、対数スケール(すなわち、非対数スケールで1000)に対応する。
【0225】
アッセイ8:薬力学的アッセイ:ラットにおけるIL6誘発性pSTAT3の阻害
IL-6誘発性pSTAT3を阻害する試験化合物の単回硝子体内投与の能力を、ラット網膜/脈絡膜ホモジネートにおいて測定した。
【0226】
懸濁物製剤は、実施例2の化合物1を、精製水中の0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5 LV)、0.02%Tween80および9mg/mL塩化ナトリウムと組み合わせて、10mg/mLの標的濃度に到達することによって調製した。
【0227】
雌ルイスラットに、懸濁物製剤を硝子体内(IVT)投薬(目当たり5μL)した。3日後、IL-6(Peprotech;0.1mg/mL;目当たり5μL)またはビヒクルを硝子体内投与して、pSTAT3を誘発した。IL-6の2回目のIVT注射の1時間後に、眼組織を解離した。網膜/脈絡膜組織をホモジネートし、ELISA(Cell Signaling Technology)を使用してpSTAT3レベルを測定した。IL-6誘発性pSTAT3のパーセント阻害を、ビヒクル/ビヒクルおよびビヒクル/IL-6群と比較して算出した。100%よりも大きい阻害は、pSTAT3レベルの、ビヒクル/ビヒクル群において観察されるもの未満への低減を反映している。
【0228】
IL-6負荷の前に3日間の前処置を行った場合、懸濁物製剤によって投与された50μg用量の化合物1は、網膜/脈絡膜組織において、IL-6誘発性pSTAT3を116%阻害した。
【0229】
アッセイ9:薬力学的アッセイ:ウサギの目におけるIFNγ誘発性IP-10の阻害
インターフェロン-ガンマ(IFNγ)誘発性IP-10タンパク質レベルを阻害する試験化合物の単回硝子体内投与の能力を、ウサギの硝子体および網膜/脈絡膜組織において測定した。
【0230】
懸濁物製剤を、実施例2の化合物1(形態1)を、精製水中の0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)、0.02%Tween80および9mg/mL塩化ナトリウムと組み合わせることによって調製して、20mg/mLの標的濃度に到達させた。
【0231】
雄ニュージーランド白色ウサギ(Liveon Biolabs、India)を研究に使用した。動物を、到着後、研究施設(Jubilant Biosys Ltd.、India)で順化させた。各ウサギに、目当たり50μLの総用量体積で合計2回の硝子体内(IVT)注射を与えた。1回目のIVT注射(目当たり45μL)では、0.9mgの試験化合物またはビヒクルを送達した。1週間後、2回目のIVT注射(目当たり5μL)では、IP-10の誘導のためにIFNγ(1μg/目;ストック溶液1mg/mL;Kingfisher Biotech)またはビヒクルを送達した。注射当日、ウサギを、ケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の筋肉内注射で麻酔した。深く麻酔がかかったら、各目を滅菌生理食塩水ですすぎ、31ゲージ針付きの0.5mLのインスリンシリンジ(50単位=0.5mL)を使用し、ブラウンスタイン固定キャリパー(2 3/4”)で直筋から3.5mmかつ角膜輪部から4mmの位置をマークすることによって、両目の上鼻側にIVT注射を実施した。
【0232】
IFNγの2回目のIVT注射の24時間後に組織を採取した。硝子体液(VH)および網膜/脈絡膜組織(R/C)を採取し、ホモジネートし、ウサギCXCL10(IP-10)ELISAキット(Kingfisher Biotech)を使用して、IP-10タンパク質レベルを測定した。IFNγ誘発性IP-10のパーセント阻害を、ビヒクル/ビヒクルおよびビヒクル/IFNγ群と比較して算出した。
【0233】
IFNγ負荷の前に1週間の前処置を行った場合、化合物1の懸濁物製剤は、硝子体液および網膜/脈絡膜組織において、IFNγ誘発性IP-10をそれぞれ81%および80%阻害した。IFNγ負荷の前に1カ月の前処置を行った場合でも同様の効能が観察された。
【0234】
アッセイ10:マウスおよびミニブタの皮膚における皮膚薬物動態
このアッセイの目的は、無傷のマウスまたはミニブタの皮膚への24時間曝露後の、試験化合物の表皮、真皮および血漿薬物動態を決定することであった。
【0235】
1-(2-(6-(2-エチル-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-4-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)-1,4,6,7-テトラヒドロ-5H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-5-イル)-2-モルホリノエタン-1-オン(1)は、表6においてそれぞれ製剤Aまたは製剤Bとして記述されている通り、クリーム剤または軟膏剤中0.5%(w/w)に製剤化した。
【0236】
投薬の24時間前に、25gの雄Balb/cマウスの背部の毛を剃って、少なくとも6cm2の領域(体表面の約10%)を露出させ、別個の実験において、10kgのゲッティンゲンミニブタの背部の毛を剃って、少なくとも450cm2の領域(体表面の約10%)を露出させた。イソフルラン麻酔後、時間ゼロで、試験化合物をマウスまたはミニブタの背部に25μL/cm2の用量で塗布した。皮膚を粘着性カバーで覆って、ケージまたは寝具への化合物の損失を防止した。
【0237】
24時間曝露後、背部を石鹸および水で穏やかに洗浄して、吸収されなかった薬物を除去し、パッドで乾燥させた(patted dry)。この洗浄の直後に、マウスから心臓穿刺によっておよびミニブタから静脈穿刺を介して、採血した。次いで、粘着テープ剥離によって外皮(角質層)を除去した。表皮が露出したら、0.5cmのパンチ生検を取り出した。表皮および真皮を迅速に分離し、秤量し、スナップ凍結させた。マウスにおいては投薬48時間後、ならびにミニブタにおいては投薬48時間、94時間および168時間(7日)後に、同様の試料を取得した。
【0238】
表皮および真皮試料を、1:10(w/v)水中、Covaris超音波ホモジナイザーを使用してホモジネートした。試料を3体積のアセトニトリル中で抽出し、LC-MS分析を介して標準曲線に対して定量化した。以下の表7に示されている血漿、表皮および真皮についての薬物動態パラメーターAUC
0-tから明らかなように、表皮および真皮層において有意な化合物曝露が呈されたのに対し、血漿曝露は、マウスにおいて製剤A中で無視できる程度であり、マウスにおいて製剤B中でおよびミニブタにおいて両方の製剤中で定量下限未満であった。
【表6】
【表7】
【0239】
アッセイ11:マウスにおける肺および血漿薬物動態
化合物1の血漿および肺濃度ならびにそれらの比を、下記の様式で決定した。Charles River LaboratoriesからのBALB/cマウスをアッセイにおいて使用した。実施例2の化合物1形態1を、通常の生理食塩水(水中0.9%塩化ナトリウム)中の0.01%Tween80中、0.1mg/mLの濃度で懸濁剤として製剤化した。50μLの懸濁物製剤を、経口吸引によってマウスの気管に導入した。種々の時点(0.083、1、4、24、48、72および96時間)。投薬後、心臓穿刺を介して血液試料を取り出し、無傷の肺をマウスから切除した。血液サンプルを4℃にておよそ12,000rpmで4分間遠心することにより(Eppendorf centrifuge,5804R)、血漿を収集した。肺をパッドで乾燥し、計量し、1:3の希釈度で滅菌水中にてホモジナイズした。化合物1の血漿中濃度および肺内濃度を、試験マトリクスにおける検量線を構築する分析標準に対するLC-MS解析によって決定した。肺における良好な曝露は、360μg hr/gの肺AUC(0~96時間)で見られた。肺対血漿比を、μg hr/gを単位とする肺AUCとμg hr/mLを単位とする血漿AUCとの比として決定した(AUCは、慣例的に、試験化合物濃度対時間の曲線下面積として定義される)。肺対血漿のAUC比は、1780であり、血漿における非常に低い曝露を示していた。
【0240】
アッセイ12:薬力学的アッセイ:ウサギの目におけるIFNγ誘発性pSTAT1の阻害
インターフェロン-ガンマ(IFNγ)誘発性STAT1タンパク質のリン酸化(pSTAT1)を阻害する試験化合物の単回硝子体内投与の能力を、ウサギの網膜/脈絡膜組織において測定した。
【0241】
懸濁物製剤を、実施例2の化合物1(形態1)を、精製水中の0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)、0.02%Tween80および9mg/mL塩化ナトリウムと組み合わせることによって調製して、20mg/mLの標的濃度に到達させた。
【0242】
雄ニュージーランド白色ウサギ(Liveon Biolabs、India)を研究に使用した。動物を、到着後、研究施設(Jubilant Biosys Ltd.、India)で順化させた。各ウサギに、目当たり50μLの総用量体積で合計2回の硝子体内(IVT)注射を与えた。1回目のIVT注射(目当たり45μL)では、0.9mgの試験化合物またはビヒクルを送達した。1週間後、2回目のIVT注射(目当たり5μL)では、IP-10の誘導のためにIFNγ(1μg/目;ストック溶液1mg/mL;Kingfisher Biotech)またはビヒクルを送達した。注射当日、ウサギを、ケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の筋肉内注射で麻酔した。深く麻酔がかかったら、各目を滅菌生理食塩水ですすぎ、31ゲージ針付きの0.5mLのインスリンシリンジ(50単位=0.5mL)を使用し、ブラウンスタイン固定キャリパー(2 3/4”)で直筋から3.5mmかつ角膜輪部から4mmの位置をマークすることによって、両目の上鼻側にIVT注射を実施した。
【0243】
IFNγの2回目のIVT注射の2時間後、組織を採取した。網膜/脈絡膜組織(R/C)を採取し、ホモジネートし、ProteinSimple WES機器での定量的ウエスタンブロットによってpSTAT1レベルを測定した。IFNγ誘発性pSTAT1のパーセント阻害を、ビヒクル/ビヒクルおよびビヒクル/IFNγ群と比較して算出した。
【0244】
IFNγ負荷の前に1週間の前処置では、化合物1の懸濁物製剤は、IFNγ誘発性pSTAT1を85%阻害した。IFNγ負荷の前の単回用量の懸濁物製剤での3カ月の前処置の後では、化合物1の懸濁物製剤は、IFNγ誘発性pSTAT1を76%阻害した。
【0245】
懸濁物製剤は、実施例5の化合物1(形態2)を、通常の生理食塩水中の0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E5)+0.02%Tween80と組み合わせることによって調製して、11.1、3.3および1.1mg/mLの標的濃度に到達させた。
【0246】
雄ニュージーランド白色ウサギ(Liveon Biolabs、India)を研究に使用した。動物を、到着後、研究施設(Jubilant Biosys Ltd.、India)で順化させた。各ウサギに、目当たり50μLの総用量体積で合計2回の硝子体内(IVT)注射を与えた。1回目のIVT注射(目当たり45μL)では、500μg、150μgまたは50μgの試験化合物またはビヒクルを送達した。2週間後、2回目のIVT注射(目当たり5μL)では、IP-10の誘導のためにIFNγ(1μg/目;ストック溶液1mg/mL;Kingfisher Biotech)またはビヒクルを送達した。注射当日、ウサギを、ケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の筋肉内注射で麻酔した。深く麻酔がかかったら、各目を滅菌生理食塩水ですすぎ、31ゲージ針付きの0.5mLのインスリンシリンジ(50単位=0.5mL)を使用し、ブラウンスタイン固定キャリパー(2 3/4”)で直筋から3.5mmかつ角膜輪部から4mmの位置をマークすることによって、両目の上鼻側にIVT注射を実施した。
【0247】
IFNγの2回目のIVT注射の2時間後、組織を採取した。網膜/脈絡膜組織(R/C)を採取し、ホモジネートし、ProteinSimple WES機器での定量的ウエスタンブロットによってpSTAT1レベルを測定した。IFNγ誘発性pSTAT1のパーセント阻害を、ビヒクル/ビヒクルおよびビヒクル/IFNγ群と比較して算出した。
【0248】
IFNγ負荷の前に2週間の前処置を行った場合、化合物1の懸濁物製剤は、IFNγ誘発性pSTAT1を、500μg用量については79%、150μg用量については58%、および50μg用量については61%阻害した。
【0249】
アッセイ13:キノームスクリーニングおよびジニ係数
化合物1およびC-1を、他のキナーゼに対してスクリーニングして、それらの選択性プロファイルを評価した。
【0250】
キナーゼタグ付きT7ファージ株を、BL21株由来のE.coli宿主中の24ウェルブロックにおいて並行して増殖させた。E.coliを対数期まで増殖させ、冷凍ストックからのT7ファージを感染させ(感染多重度=0.4)、溶解するまで(90~150分)、32℃で振とうしながらインキュベートした。溶解物を遠心分離(6,000×g)し、濾過(0.2μm)して、細胞残屑を除去した。残りのキナーゼをHEK-293細胞において産生させ、その後、qPCR検出のためにDNAでタグ付けした。
【0251】
ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズを、ビオチン化小分子リガンドにより、室温で30分間にわたって処理して、キナーゼアッセイのための親和性樹脂を発生させた。リガンド化ビーズを過剰なビオチンでブロックし、ブロッキング緩衝液(シーブロック(Pierce)、1%BSA、0.05%Tween20、1mM DTT)で洗浄して、未結合のリガンドを除去し、非特異的ファージ結合を低減させた。1×結合緩衝液(20%シーブロック、0.17×PBS、0.05%Tween20、6mM DTT)中で、キナーゼ、リガンド化親和性ビーズおよび試験化合物を組み合わせることにより、結合反応を組み立てた。試験化合物を100%DMSO中40×ストックとして調製し、アッセイに直接希釈した。すべての反応は、ポリプロピレン384ウェルプレート中、0.04mlの最終体積で実施した。アッセイプレートを、室温で1時間にわたって振とうしながらインキュベートし、親和性ビーズを洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20)で洗浄した。次いで、ビーズを溶離緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20、0.5μM非ビオチン化親和性リガンド)に再懸濁し、室温で30分間にわたって振とうしながらインキュベートした。溶出液におけるキナーゼ濃度を、qPCRによって測定した。
【0252】
化合物を1μMでスクリーニングし、表8および9における一次スクリーニング結合相互作用についての結果を「%阻害」(=100-((試験化合物シグナル-陽性対照シグナル)/((陰性対照シグナル)-(陽性対照シグナル))×100)として報告し、ここで、陰性対照はDMSOであり、陽性対照は対照化合物である。
【表8】
【表9】
【0253】
化合物1は、化合物C-1よりも、CDK7およびCDK9について、有意に低い結合阻害を呈することが分かった。化合物1は、いくつかの他のキナーゼについても、より低い結合阻害を有していた。
【0254】
化合物1およびC-1の両方を、35の異なるキナーゼに対してスクリーニングした。両方の化合物について、ジニ係数を決定した。化合物1は0.62のジニ係数を有し、化合物C-1は0.46のジニ係数を有していた。ジニ係数を使用して、キナーゼのパネルに対する化合物の選択性を表現する(Graczyk、J. Med. Chem.、2007年、50巻、5773~5779頁)。より高い数字は、より選択的な化合物に対応する。
【0255】
化合物1と化合物C-1との間の唯一の構造差は、コアにおけるフルオロ基の存在である。この構造差は、化合物のキノーム選択性に重要な影響を有することが示された。
【0256】
アッセイ14:細胞毒性アッセイ
セルタイターグロールミネッセンス細胞生存/細胞毒性アッセイを、正常な増殖条件下、BEAS-2Bヒト肺上皮細胞(ATCC)において行った。
【0257】
細胞を、10%FBS(Hyclone)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Life Technologies)および2mMグルタマックス(Life Technologies)を補充した50%DMEM/50%F-12培地(Life Technologies)中、5%CO2加湿インキュベーター内、37℃で増殖させた。アッセイの1日目、細胞を、25μLの培地を加えた白色384ウェル組織培養プレート(Corning)中に500細胞/ウェル密度で播種し、インキュベーター内で終夜接着させた。アッセイの2日目、用量応答の試験化合物を含有する5μLの培地を添加し、37℃で48時間にわたってインキュベートした。30μLのセルタイターグロー検出溶液(Promega)をその後添加し、オービタルシェーカー上で5分間にわたって混合し、さらに10分間にわたってインキュベートした後、エンビジョンリーダーで読み取った。発光シグナルを記録し、パーセントDMSO対照値を算出した。
【0258】
用量応答分析のために、パーセントDMSO対照データを化合物濃度に対してプロットし、各データ点を線で結ぶことによって用量応答曲線を導出した。各曲線が15%阻害閾値と交差する濃度を、CC15として定義する。
【0259】
このアッセイにおいてより高いCC15価を呈する試験化合物は、細胞毒性を引き起こす可能性が低いことが期待される。
【0260】
化合物1は3.16μMのCC15を呈したのに対し、化合物C-1は630nMのCC15を呈した。したがって、化合物1は、このアッセイに基づき、化合物C-1よりも細胞毒性を引き起こす可能性が有意に低い。
【0261】
化合物1と化合物C-1との間の唯一の構造差は、コアにおけるフルオロ基の存在である。この構造差は、化合物の細胞毒性に重要な影響を有することが示された。
【0262】
本発明について、その具体的な態様または実施形態を参照して記述してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更が為され得るまたは同等物で代用され得ることが、当業者には理解されるであろう。加えて、適用される特許法および規制によって許可される程度まで、本明細書において引用されているすべての刊行物、特許および特許出願は、各文書が参照により本明細書に個々に組み込まれたのと同程度まで、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。