(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ステアリングボックスを、プラスチックプラグで超音波を用いてロックする閉栓方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/08 20060101AFI20220704BHJP
【FI】
B29C65/08
(21)【出願番号】P 2019563428
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 FR2018051132
(87)【国際公開番号】W WO2018211198
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-13
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジエール パスカル
(72)【発明者】
【氏名】グージョン ブルーノ
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102009019189(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0115980(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0116183(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251035(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010000866(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B62D 5/00- 5/32
F16H 19/00-49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一条のねじ山(5T)が設けられたねじ山付きハブ(5)を有するプラグ(4)によって、ケーシング(3)
の壁(2)に開けられた中心軸(XX’)を有する孔(1)を塞ぐことを可能にし、
前記壁(2)に対して前記ハブのねじ山(5T)を噛み合わせることにより、前記プラグ(4)の前記ねじ山付きハブ(5)を前記孔(1)にねじ込むねじ込みステップ(a)と、
次に、前記プラグ(4)のねじの締め付けと緩めに抗するために、中心軸(XX’)の周りで前記ねじ山付きハブ(5)の回転が阻止される回転ロックステップ(b)とを有する
閉栓方法であって、
前記回転ロックステップ(b)において、熱可塑性材料で形成された前記プラグ(4)の一部を、その熱可塑性材料を軟化させるように加熱し、軟化した熱可塑性材料を、孔の壁に開けられた雌キャビティ(10)に強制的に侵入させて固化させ、前記雌キャビティの中に入れ子になる雄部材(11)を構成し、前記雌キャビティ(10)は、一方では、前記プラグ(4)のねじの締め付けまたは緩めの回転移動に抗するように、中心軸(XX’)の周りでの前記雄部材(11)、すなわち前記ハブ(5)の回転を阻止するガイドストッパを前記雄部材(11)に対して形成するように配置され、他方では、前記壁(2)に対して前記ハブ(5)及びそのねじ山(5T)が中心軸(XX’)に沿って摺動するのを妨げないように、前記雌キャビティ(10)内での中心軸(XX’)に沿った前記雄部材(11)の軸方向移動の自由度を維持し、
前記雌キャビティ(10)は、前記孔(1)に開口しかつ中心軸(XX’)に実質的に平行な支持面(10A,10B)と呼ばれる面によって、中心軸(XX’)の周りの方位角で区切られた少なくとも一つの切欠(13)によって形成され、
中心軸(XX’)の周りで分けて配置される、区別できる複数の前記切欠(13)を有し、
前記回転ロックステップ(b)において、
ハブに対して径方向へ突出する前記雄部材(1)を形成し、中心軸(XX’)の周りでの回転が阻止され、中心軸(XX’)に沿って軸方向へ自由に摺動するように、前記支持面(10A,10B)を摺動可能に支持する少なくとも一つの突起(14)を形成するように、軟化した熱可塑性材料が前記切欠(13)に径方向へ押し込まれ、
区別できる複数の前記突起(14)が同時に形成され、それぞれが前記切欠(13)の一つに侵入し、且つそれぞれが前記各切欠(13)の前記支持面(10A,10B)を摺動可能に支持することにより、それぞれが前記切欠(13)と協働し、
前記中心軸(XX’)の周りで、形成されるべき前記突起(14)があるのと同じだけ多くのアーム(21)に分割された、侵入方向(D1)への挿入力(F1)を発生する成形ツール(20)が、前記アーム(21)に割り当てられた切欠(23)に対応する角度領域をカバーする前記各アーム(21)を、熱可塑性材料を軟化させてから押し出すように前記プラグ(4)に押しつける
ことを特徴とする閉栓方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ねじ込みステップ(a)では、前記ねじ山付きハブ(5)が前記孔(1)に「侵入方向」D1と呼ばれる方向へ、「抜き出し方向」と呼ばれる反対方向へ向かう付勢力(F2)を前記ハブに加える弾性部材(9,31)に対抗してねじ込まれ、前記弾性部材(9,31)は、前記ハブのねじ山(5T)を前記壁(2)に対して後部で支持するように強く押しつけ、ねじ込みは、「キャリブレーション位置」P0と呼ばれる目的の軸方向位置に前記ハブ(5)が達するまで継続され、その位置で、前記ハブのねじ山(5T)が、前記弾性部材(9,31)によって前記壁(2)に対して後部で支持されるように押しつけられ、
前記回転ロックステップ(b)では、
前記成形ツール(20)が、熱可塑性材料を軟化させて前記雌キャビティ(10)に押し出すように前記プラグ(4)に押し付けられることにより、挿入力(F1)が、前記ハブのねじ山(5T)をその背面支持から引き離し、キャリブレーション位置P0に関して侵入方向(D1)へ前記プラグ(4)を移動させるように作用し、
その後、前記雄部材(11)が形成されると前記成形ツール(20)が取り外されることにより、挿入力(F1)が解除され、且つ前記ハブ(5)と前記雄部材(11)とが前記弾性部材(9,31)の作用のもとで、前記プラグ(4)が、前記ハブのねじ山(5T)が前記壁(2)に対して後部で支持されるように押しつけられる初期のキャリブレーション位置(P0)に戻るまで抜き出し方向(D2)へ戻り動作を行う
ことを特徴とする閉栓方法。
【請求項3】
請求項1
または2において、
前記プラグ(4)の前記ハブ(5)は、熱可塑性材料で形成され、中心軸(XX’)が中心となる中空のシリンダを形成する周辺クラウン(15)を有し、周辺クラウン(15)は、前記ハブのねじ山(5T)を少なくとも部分的に有する径方向外面(15E)を、前記ハブ(5)が前記孔(1)にねじ込まれた時に外側からアクセスできる径方向内面(15I)に加えて有し、
前記回転ロックステップ(b)では、一つの前記切欠(13)に対して角度を付けて配置された各領域で、前記クラウン(15)を部分的に軟化させ、その後、このように軟化した各領域において、前記クラウンを構成する熱可塑性材料が、軟化した熱可塑性材料を、対応する前記切欠(13)へ侵入させるように、少なくとも径線上の遠心方向へ押し出され、それによって、前記クラウン(15)と一体化される前記
突起(14)が構成される
ことを特徴とする閉栓方法。
【請求項4】
請求項1
から3の何れか1つにおいて、
前記各アーム(21)の一端は、クラウンの径方向内面(15I)に対応する内径(R15I)と、前記クラウンの径方向外面(15E)に対応する外径(R15E)との間で径方向へ延びる前記クラウン(15)の縁(15A)と接触して、軟化した熱可塑性材料を前記雌キャビティ(10)の中へ徐々に押し込むように、挿入方向D1への軸方向の侵入移動にしたがって前記クラウン(15)に挿入されることを目的とし、前記一端(21)は、中心軸(XX’)を含む縦方向平面の断面にインプリント(23)を有し、
前記インプリント(23)は、
クラウンの縁(15A)の径方向外側部分に最初に支持されるように配置され、内径(R15I)と外径(R15E)の間に正確に含まれる中間径(RM)から径線上の遠心方向へ、前記クラウンの外径(R15E)まで、または外径(R15E)を超えて延び、エネルギー供給を初期には外向きに集中させ、それにより、プラスチック材料の軟化と径線上での遠心方向への移行を進める第1フランジ(24)と、
前記クラウン(15)にツール(20)を軸方向へ挿入する間に、前記クラウンの径方向外面(15E)に突出する突起(14)を形成するために、軟化した熱可塑性材料を径方向外側へ案内して圧縮できる傾斜したデフレクタ(26)と、
を有することを特徴とする閉栓方法。
【請求項5】
請求項1から
4の何れか1つにおいて、
前記プラグ(4)と前記切欠(13)の間の径方向境界で前記突起(14)の基準とみなされる前記各突起(14)の角度領域(A14)は、中心軸(XX’)の周りの方位角において、30°以下であ
る
ことを特徴とする閉栓方法。
【請求項6】
請求項1から
5の何れか1つにおいて、
前記ハブに形成される雄または雌の六角凹みのインプリントのような、前記プラグに設けられる操作部材(30)が係合して、前記ハブが前記雄部材(
11)の破壊により中心軸(XX’)の周りで強制的に回転する強制アンロックステップ(c)と、
前記ハブ(5)が前記孔(1)に対してその軸方向位置を調整するためにねじ込まれるか緩められる、その後の設定ステップ(d)と、
前記ハブの中心軸(XX’)周りでの回転を阻止し、回転軸(XX’)に対して軸方向移動の自由度を高めるために、前記雌キャビティ(10)の中へ同じ前記プラグ(4)の熱可塑性材料からなる新たな部分を軟化させて押し込むことにより、元の前記雄部材(11)に対して角度がシフトされた新たな雄部材(
11’)が形成される新たな回転ロックステップ(b’)と、
を有することを特徴とする閉栓方法。
【請求項7】
請求項1から
6の何れか1つにおいて、
周波数が20kHzより高
い「ソノトロード」と呼ばれる超音波装置が、熱可塑性材料からなるプラグの一部を加熱することによって軟化させ、軟化した熱可塑性材料をその後に前記雌キャビティ(10)の中へ押し込むために、成形ツール(20)として用いられる
ことを特徴とする閉栓方法。
【請求項8】
孔(1)に予めねじ込まれたプラグ(4)の回転をロックすることを目的とする超音波成形ツール(20)であって、
中心軸(XX’)と一致する方向へ延びる本体(22)を備え、中心軸(XX’)の周りで分散した複数の個別のアーム(21)を支持し、前記アームは、前記プラグ(4)に超音波を伝達するように、中心軸(XX’)の周りの、熱可塑性材料からなる個別の角度領域に、配置され、前記アームは、前記プラグの周辺のレベルで、前記プラグの異なる周辺部分を同時に局所的に加熱して軟化させることができ、且つ、関連するそれぞれの角度領域において、少なくとも径線上の一つの遠心方向へ、このようにして軟化した熱可塑性材料を押し出
すことができ、
ツールが挿入力(F1)をプラグに対して加えるように軸方向へ押し付けられるとき、アーム(21)は、突起(14)が、支持面(10A,10B)に対して軸方向への自由な移動を維持しながら、切欠(13)を区切る支持面に対して回転可能に接するような配置に一致して、孔の壁(2)に設けられた対応する前記切欠(13)に嵌まり込む前記突起(14)を、前記角度領域において、前記プラグ(4)上で突出させる
ことを特徴とする超音波成形ツール(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングケーシングなどのケーシングに開けられた孔を、プラスチック材料で形成されたプラグにより閉じることを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステアリングケーシングに摺動可能に装着され、ステアリングホイール及び/または補助モータによって駆動される少なくとも1つのピニオンが噛み合うラックを有するパワーステアリングシステムを、車両に装備することが知られている。
【0003】
ラックとピニオンの間の噛み合いクリアランスを減らすために、バネで付勢されるタペットにより、ラックをピニオンに対して前記ラックの移動の長軸と直角に押し付けることが知られている。
【0004】
前記タペットは、それ自体は知られているように、ピニオンに噛み合うラックの歯と反対側のラックの背面で摺動可能に支持するパッドを備えることができ、前記パッドは、バネタイプの弾性部材によりラックとピニオンの方向に付勢される。
【0005】
パッドとバネは、一般に金属製のジャケットに装着されるとともにガイドされ、ジャケットは、ステアリングケーシングの一部を形成し、プラグにより塞がれる。
【0006】
プラグはケーシングを隙間なく閉じ、バネの支持として機能する。
【0007】
組み立て中に直面する問題の1つは、プラグをステアリングケーシングの孔に、「キャリブレーション位置」と呼ばれる正確な位置に正確に配置する必要があることに関係する。その位置により、一方では、パッドとプラグの間に、前記パッドがラックの径方向の変位に適応可能とするのにちょうど必要かつ十分な機能的なクリアランスが残され、他方では、前記バネの初期の圧縮度のキャリブレーション設定、すなわち前記バネがパッド及びラックに対して作用する付勢力の大きさの設定が保証される。
【0008】
さらに、プラグは、車両の耐用年数の間じゅうケーシングが受ける衝撃、振動または熱変動の影響のもとでも移動したり外れたりしないように、ケーシングに十分堅固にロックしなければならない。
【0009】
それがプラグにねじ山を設けることが特に知られている理由であり、このことにより、プラグをケーシングのジャケットにねじ込むことが可能になる。 次に、プラグを回転させてロックすることは、接着剤により、ねじ山とケーシングの間に接着剤を用いることにより実行され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような解決策は、一般に納得のいくものであるが、それでもいくつかの欠点はある。
【0011】
実際、まず接着剤の重合時間(乾燥時間)を考慮する必要がある。
【0012】
この乾燥時間は、ケーシングへのプラグのキャリブレーション位置に正確に設定し、したがってタペットの機能的なクリアランスを設定するために、ケーシングへのプラグの配置と、その後のプラグのねじ付けの調整を可能にするために、十分に長くなければならない。
【0013】
したがって、この時点では接着剤がまだ硬化していないため、プラグをセットアップするための工業ライン上で、ケーシングへのプラグの締め付けの品質をすぐに確認することはできない。
【0014】
さらに、プラグが一旦接着されると、そのプラグに、またはケーシング自体にまで、回復できない損傷を生じさせずにプラグを取り外すことはほぼ不可能である。そのため、ばねのキャリブレーションをその後に修正することは、もはやできなくなる。
【0015】
その代わりに、プラグをねじ込んだ後に、プラグを中に封じ込むために、ジャケットを楕円形にするようにケーシングを強制的に塑性変形させるクリンプ方法がある。
【0016】
このような方法によれば、プラグのキャリブレーション位置は、一般に、楕円形になったケーシングに対してプラグを後で強制的にねじ込んだり外したりしてセットされる。
【0017】
もちろん、このような方法は、やはり同様にプラグを損傷し、さらにケーシングまで損傷し、あるいはパッドとプラグの間の機能的なクリアランスを乱すおそれがある。
【0018】
したがって、本発明の目的は、ケーシングへのプラグの取り付け、特に金属製のケーシングへのプラスチック材料で形成されたプラグの取り付けを、迅速に、低コストで、しかもコンパクトで正確な方法で行える、ケーシングをプラグで閉じる新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、少なくとも一つのねじ山が形成された設けられたねじ山付きハブを有するプラグによって、ケーシング壁のような壁に開けられた中心軸(XX’)を有する孔を塞ぐことを可能にする閉栓方法によって達成される。この方法は、壁に対して上記ハブのねじ山を噛み合わせることにより、プラグのねじ山付きハブを孔にねじ込むねじ込みステップ(a)と、次に、プラグのねじの締め付けと緩めに対抗するために、中心軸(XX’)の周りでねじ山付きハブの回転が阻止される回転ロックステップ(b)とを有する。この方法は、回転ロックステップ(b)において、熱可塑性材料で形成されたプラグの一部を、その熱可塑性材料を軟化させるように加熱し、軟化した熱可塑性材料を、孔の壁に開けられた雌キャビティに強制的に侵入させて固化させ、前記雌キャビティの中に入れ子になる雄部材を構成し、雌キャビティは、一方では、プラグのねじの締め付けまたは緩めの回転移動に抗するように、中心軸(XX’)の周りでの雄部材、すなわちハブの回転を阻止するガイドストッパを雄部材に対して形成するように配置され、他方では、壁に対してハブ及びねじ山が中心軸(XX’)に沿って摺動するのを妨げないように、前記雌キャビティ内での中心軸(XX’)に沿った雄部材の軸方向移動の自由度を維持する。
【0020】
本発明は、プラグの第1の軸方向保持機能を確保するねじ込みによる締結に、プラグの第2の回転阻止機能を確保する熱可塑性の変形による締結を組み合わせ可能とすることが好ましい。
【0021】
これらの機能を分離することは、それぞれ別々の部材によって達成され、都合のよいことに、2つの機能の間でのよくない干渉を回避することが可能になる。したがって、特に、回転ロックは、ねじを緩めることによるプラグの取り外しに抗するためにねじ込みを完了させるが、軸方向移動に関するプラグのわずかな軸方向位置の調整の抵抗にはならない。このことにより、特にロックステップの後の保持または復元に関し、ケーシングに含まれる一つまたはいくつかの部材に対する、プラグの機能的なクリアランスの微調整が可能になる。
【0022】
本発明の他の目的、特徴、及び効果は、以下の説明を添付の図面とともに読むことにより、より詳細に明らかになるであろう。図面は、単なる例示であり、限定することを目的としていない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明に係る方法によって締結することを目的とするプラグの例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る方法によって締結することを目的とするプラグの例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る方法によって締結することを目的とするプラグの例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、雄部材を形成することを目的とするソノトロードなどの4つのアームを有する成形ツールの例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のツールのアーム端部のインプリントの詳細図である。
【
図6】
図6は、ステアリングケーシング内でプラグを回転ロックするために
図1から
図3に係るプラグに
図4のツールを装着した時の縦断面図である。
【
図7】
図7は、径方向に突出する雄部材を形成した後にケーシングにロックされたプラグの部分平面図である。
【
図8】
図8は、
図1から
図3のプラグのクラウンに
図4のツールが接触していく時の、本発明に係る回転ロックステップ(b)の初期の第1段階を示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、プラグのねじ込み前の、初期に存在する軸方向クリアランスを見えるようにした詳細図である。
【
図10】
図10は、成形ツールによる挿入応力の適用後の、初期に存在する軸方向クリアランスを見えるようにした詳細図である。
【
図11】
図11は、プラグに対してツールを徐々に挿入するのに対応して、プラグのクラウンから径方向へ突出する雄部材が徐々に形成されるのを示す部分縦断面図である。
【
図12】
図12は、プラグに対してツールを徐々に挿入するのに対応して、プラグのクラウンから径方向へ突出する雄部材が徐々に形成されるのを示す部分縦断面図である。
【
図13】
図13は、プラグに対してツールを徐々に挿入するのに対応して、プラグのクラウンから径方向へ突出する雄部材が徐々に形成されるのを示す部分縦断面図である。
【
図14】
図14は、ツールによる挿入応力の作用中に、孔の壁に対してプラグのねじ山が軸方向へ移動する結果、生じる軸方向クリアランスを示す、
図10に対応する詳細図である。
【
図15】
図15は、ツールによる挿入応力の作用中に、孔の壁に対してプラグのねじ山が軸方向へ移動する結果、生じる軸方向クリアランスを示す、
図9に対応する詳細図である。
【
図16】
図16は、ツールを取り外した後にケーシングに回転がロックされたプラグの縦断面図である。
【
図17】
図17は、ステアリングタペットの弾性部材の効果を受けて、壁に対して後部で支持されているプラグの軸方向の戻りを示す、
図16の詳細図である。
【
図18】
図18は、本発明に係る成形ツールの変形例の詳細を示す部分側面図である。
【
図19】
図19は、
図18のツールを用いて、プラグのハブから径方向外側へだけ突出する雄部材を形成する部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、少なくとも一条のねじ山5Tが設けられたねじ山付きハブ5を有するプラグ4によって、ケーシング3の壁2のような壁2に開けられた中心軸(XX’)を有する孔1をプラグで塞ぐことを可能にする閉栓方法に関する。
【0025】
壁2は、金属材料、例えばアルミニウム合金で形成するのが好ましい。
【0026】
その代わりに、ケーシング3の壁2は、硬質のプラスチック材料で形成してもよい。
【0027】
その場合、特に、加熱中に、ケーシングの壁にプラグ4が偶発的に溶着されるのを回避するため、ケーシング3の壁2を構成するプラスチック材料は、プラグ4の構成材料とは異なる。
【0028】
ケーシング3は、特に
図6,
図8及び
図16に示すように、特にラック7を含むパワーステアリングシステム6の機械部品を保護するために用いられるステアリングケーシングであることが好ましい。
【0029】
ケーシング3は、より好ましくはタペット8のジャケットを形成でき、さらに好ましくは、例えばつる巻ばね9などのばね9を有するタペットのジャケットを形成できる。ばね9は、ばね9により付勢されたパッド12によって、駆動ピニオンに対してラック7を押し付け、クリアランスと噛み合いノイズを減少させるための部材である。とりわけ、このようなタペットは、摩耗の影響を補うことを可能にする。
【0030】
注目すべきは、パッド12とプラグ4の間に、ばね9に加えて、パッド12の芯出しを保証し、ラック7に対して前記パッド12の弾性的な戻りに寄与するため、ダンパーOリングガスケット31などのエラストマーの緩衝部材31が設けられる。
【0031】
円形断面を有する孔1は、その後に、ケーシング3へのタペット8の導入と、ラックの歯とは反対側であるラックの背面に対するタペットの配置とを可能にするように設計される。
【0032】
プラグ4、より詳しくは中実のハブは、タペット機構8を含むケーシングの内部をケーシング3の外部環境から隔離するように、ケーシング3をプラグで塞ぐ機能を有する。
【0033】
孔を通じてケーシング3の中へ水が侵入するのを防ぎ、一般的にはグリースである潤滑剤をケーシング3の中に保持するように、少なくとも潤滑剤に加えて液体の水が漏れない状態でプラグを取り付けるため、プラグ4は、好ましくはハブ5と孔1の壁の内表面との間に設けられるOリングガスケットなどのシール用ガスケット32を有することが好ましい。
【0034】
説明の便宜上、孔1の中心軸(XX’)は、プラグ4の中心軸(回転軸)、及びラック7の移動の軸Y7に実質的に直角なタペットの押しつけ軸と一致するものとする。
【0035】
同じように、当然ながら、「軸方向」は、中心軸(XX’)と平行または一致する方向であり、「径方向」は、前記中心軸(XX’)に直角の方向である。
【0036】
この方法は、プラグ4のねじ山付きハブ5が、前記ハブのねじ山5Tを、壁2に対して、より詳細には前記壁の適合するねじ山2Tに対して噛み合わせることにより、孔1にねじ込まれる。
【0037】
このねじ込みにより、プラグ4を孔に、外部から視認可能でアクセス可能な壁2の視認可能な面に対して、好ましくは軸方向へ突出しない面一の状態になるように軸方向に侵入させることが可能になり、プラグ4を孔から中心軸(XX’)の方向へ取り出せなくするのを維持できる。
【0038】
この方法は、その後に、プラグ4のねじの締め付けと緩めに抗するために、中心軸(XX’)の周りでのねじ山付きハブ5の回転が阻止される回転ロックステップ(b)を有する。
【0039】
このため、
図6,
図11,
図12,
図13に示されているように、前記回転ロックステップ(b)では、熱可塑性材料で形成されたプラグ4の一部、より詳細にはハブ5に固定されるか、またはハブ5と一体の、熱可塑性材料で形成された一部が加熱され、熱可塑性材料を軟化させる。軟化した熱可塑性材料は、孔1の壁2に開けられた雌キャビティ10に、強制的に侵入させ(
図11から
図13,
図19)、その後に固化させて(
図6,
図16,
図19)、前記雌キャビティ10の中に入れ子になる雄部材11を構成する。
【0040】
望ましくは、ハブ5、より一般的にはプラグ4は、熱可塑性材料で一体的に、好ましくは一部品に作られる。
【0041】
このことにより、特に、プラグを軽量化でき、単純な形状の鋳型により成形することでプラグを製造でき、さらに、プラグを局所的に作り直して雄部材11を形成できる。
【0042】
本発明によれば、雌キャビティ10は、一方では、プラグ4のねじの締め付けまたは緩めの回転移動に抗するように、中心軸(XX’)の周りでの雄部材11、したがってハブ5の回転を阻止するガイドストッパを雄部材11に対して形成するように配置され、他方では、壁2に対してハブ5及びねじ山5Tが中心軸(XX’)に沿って摺動するのを妨げないように、前記雌キャビティ10内での中心軸(XX’)に沿った雄部材11の軸方向移動の自由度を維持する。
【0043】
雌キャビティ10に対して雄部材11によって与えられる回転阻止は、プラグ4をねじの締め付けと緩めの両方に抵抗するために双方向になされる。
【0044】
このプラグ4の双方向の回転阻止は、孔1からプラグ4を取り外すのを阻止するために、ねじ込みを補う。
【0045】
さらに、このような回転阻止により、パワーステアリングシステム6の動作中に、ケーシング3に対するプラグ4の軸方向位置の(望まれないねじの締め付けや緩めに起因する)何らかの不測の変化を回避することが可能になる。したがって、例えば後述する懸架軸方向クリアランスJ_Dampなどの、前記プラグ4の軸方向1に依存する、生じ得る機能的なクリアランスの設定を任意に解除できる。
【0046】
雌キャビティ10は、前記雌キャビティ10に適合する適切な形状を有する雄部材11を形成するための、熱可塑性材料の鋳型として機能する。
【0047】
前記雌キャビティ10の形状は、中心軸(XX’)が雄部材11の離型方向に対応するように選択される。つまり、雌キャビティ10に雄部材11を入れ子にすることにより、雄部材の相対的な摺動移動が許可され、したがって、中心軸(XX’)に一致する移動時に、前記雄部材11を支持するプラグ4のハブは摺動移動が許可される。
【0048】
したがって、プラグ4により、少なくともハブのねじ山5Tと、それに適合する壁のねじ山2T(
図9)との間に設けられる、ねじ山の軸方向クリアランスJTによって許可された限度内で、軸方向移動のいくらかの自由度を確保することが可能になる。
【0049】
もちろん、プラグ4の熱可塑性材料と、好ましくは金属である壁2の材料は、続いて行われる、雌キャビティ10に接触する熱可塑性材料の軟化及び固化の際を含めて、互いに接合されないように選択される。
【0050】
プラグ4内の熱可塑性材料としては、ポリオキシメチレン(POM),ポリアミド(PA),ポリフタルアミド(PPA)を用いることができ、これらには、場合によっては、強化用繊維、例えばガラス繊維を充填できる。
【0051】
「挿入方向」D1は、当然ながら、プラグ4が、特にねじ込み中に孔1に侵入してケーシング3に挿入される方向であり、「抜き出し方向」D2は、当然ながら、ケーシング3の内側から外側へ向かう、反対の方向である。
【0052】
ねじ込みステップ(a)では、ねじ山付きハブは、好ましくは前述したようにダンパーのOリングガスケット31を用いて完成する、前述のタペット8の好ましいばね9のような弾性部材9,31に対抗して、孔に「挿入方向」D1と呼ぶ方向へねじ込まれる。
【0053】
前記弾性部材9,31は、前記ハブ5に、「抜き出し方向」D2と呼ぶ反対方向へ向かう付勢力F2を加える。
【0054】
動作中に、弾性部材9,31とその付勢力F2により、タペット8の固定ライナーを形成するプラグ4と、ラック7の背面を押しつける弾性的に懸架されたパッド12との間の懸架軸方向クリアランスJ_Damp(特に
図8及び
図10に表示)を維持できる。したがって、ラック7は、懸架クリアランスJ_Dampの限度内で、わずかな横方向の移動により生じ得る噛み合いクリアランスに対応できる。
【0055】
より詳細には、特に
図9に示すように、弾性部材9,31は、ハブ5Tのねじ山を壁2に対して後部で支持するように強く押しつける傾向があり、言い換えると、ねじ山5Tの後縁を強く押しつける傾向がある。
図9の上縁は、壁2Tの適合するねじ山の前縁に対してケーシングの外側に向かい、下縁はケーシング3の内側に向かうよう方向が定められる。
【0056】
ねじ込みステップ(a)では、ハブ5が、
図8,
図9及び
図10に対応する「キャリブレーション位置」P0と呼ばれる目的の軸方向位置に到達するまでねじ込みが継続され、その位置では、ハブ5のねじ山5Tが弾性部材9,31によって壁2に対して後部で支持されるように押しつけられる。
【0057】
このキャリブレーション位置P0は、設定位置、すなわちタペット8及びラック7に対するプラグ4の軸方向の位置調整に対応し、これがばね9の圧縮度合い、より一般的には弾性部材9,31の圧縮度合いに影響する。前記圧縮度合いは、軸方向クリアランスが、目的とする公称懸架クリアランスJ_Damp、好ましくは50μmと100μmの間、例えば60μmに対応し、付勢力F2が、選択された公称付勢力、例えば500Nと1000Nの間、好ましくは600Nに対応する。
【0058】
本発明によれば、回転ロックステップ(b)で、挿入力F1を侵入方向D1に及ぼす成形ツール20が、
図6,
図8、
図11~
図13及び
図19に示すように、雌キャビティ10に熱可塑性材料を軟化させて押し込むために、プラグ4に当てられる。
【0059】
したがって、前記挿入力F1は、
図15に示すように、ハブのねじ山5Tをその背面支持から解除し、プラグ4をキャリブレーション位置P0に対して侵入方向D1に変位させる傾向を有する。
【0060】
好ましくは、プラグ4の熱可塑性変形及び雄部材11の形成の工程中、雄部材を適切に形成するのに必要な挿入力F1は、例えば、650Nの範囲の値に達することにより、公称付勢力F2より大きくてもよい。
【0061】
このような場合、挿入力F1はばね9、より広くは、弾性部材9,31をパッド12及びラック7に対して押しつけ、それによって、プラグ4には、キャリブレーション位置P0よりも深い位置P1が一時的に与えられる。
【0062】
そうすることにより、パッド12とプラグ4の間の減衰軸方向クリアランスJ_Dampは、一時的に小さくなり、プラグ4をパッド12に接触させること、すなわち、
図14に示すように前記減衰クリアランスJ_Dampを一時的にゼロに減らすことさえ可能になる。
【0063】
適切な場合、挿入力F1により、ハブのねじ山5Tが、壁の適合するねじ山2Tに対して前方で支持されるように、すなわち、ハブのねじ山5Tの前縁、
図15では下縁を、適合する壁のねじ山2Tの後縁、
図15では上縁に対して押しつけるように移動する。
【0064】
本発明によれば、雄部材11が一旦形成されると、成形ツール20が、挿入力F1を解除するように取り外され、ハブ5と雄部材11が、弾性部材9,31の作用のもとで、抜き出し方向D2の後方へ、プラグ4が初期のキャリブレーション位置P0に戻るまで移動し、ハブのねじ山5Tが壁2に対して後部で支持されるように押しつけられる状態になる。
【0065】
雄部材11と雌キャビティ10の間の協働により許容される軸方向の可動性、より詳細には上記協働によって確保される移動の軸方向ガイドにより、雄部材11を回転ロックした後に、プラグ4が、軸方向後方への摺動と当接により、その原点に自動的に戻ることができると好都合である。
【0066】
したがって、回転ロックを実行することは、公称の減衰軸方向クリアランスJ-dampの初期設定と、キャリブレーション位置P0に対応する公称付勢力F2の大きさに影響しない。
【0067】
そのため、プラグ4を正確にねじ込むことによりキャリブレーション位置P0を微調整し、その後に設定を不用意に変更したり失ったりする危険を冒さずに回転ロックを進めることができる。
【0068】
壁2には、孔1に開口する少なくとも一つの切欠13により形成され、中心軸(XX’)に実質的に平行な支持面10A,10Bと呼ばれる面によって、前記中心軸(XX’) の周りの方位角で区切られる雌キャビティ10を設けることが好ましい。
【0069】
「中心軸(XX’)に実質的に平行」は、支持面10A,10Bが中心軸(XX’)との間に有する傾斜角度が、支持面が前記中心軸(XX’)と正確に平行である場合のゼロの値と、ケーシング3の外側に向かって広がる抜き勾配に対応する、最大値が5°以下、または3°以下、または2°以下の値との間を含むことを表す。
【0070】
便宜上、雌キャビティ10と切欠13を、以下において同一にすることができる。
【0071】
回転ロックステップ(b)では、その後、中心軸(XX’)の周りで回転が阻止され、中心軸(XX’)に沿って軸方向(少なくとも抜き出し方向D2)に摺動自在となるように、ハブ5に対して径方向へ突出する雄部材11を形成し、軟化した熱可塑性材料を前記切欠13に押し込むことを可能にして、
図7に示すように、支持面10A,10Bを摺動可能に支持する少なくとも1つの突起14を形成するのが好ましい。
【0072】
説明の便宜上、雄部材11と突起14を、以下において同一にすることができる。
【0073】
したがって、突起14は、ハブと壁2との間で径方向のブリッジを形成して、ねじ山5Tに対して径方向に突出し、プラグ4と壁2をある種のキーによって回転固定するのが好ましい。
【0074】
中心軸(XX’)と実質的に平行な支持面10A,10Bを有する切欠13、好ましくは抜き出し方向D2において壁2の視認できる外面に軸方向に開口する切欠13を用いると、特にメスキャビティの製造が簡素化される。その理由は、例えば中心軸(XX’)上で交差するクロス配置によれば、壁2の見える面、またはより詳しくは、前記壁2によって定められた円筒状のジャケットの外縁を溝または中空に成形することが、必要な全てになるためである。
【0075】
この点において、注目すべきは、機械加工(溝加工)による切欠13 このような解決策は、一般に納得のいくものであるが、それでもいくつかの欠点はある。
【0076】
実際、まず接着剤の重合時間(乾燥時間)を考慮する必要がある。
【0077】
この乾燥時間は、ケーシングへのプラグのキャリブレーション位置に正確に設定し、したがってタペットの機能的なクリアランスを設定するために、ケーシングへのプラグの配置と、その後のプラグのねじ付けの調整を可能にするために、十分に長くなければならない。
【0078】
したがって、この時点では接着剤がまだ硬化していないため、プラグをセットアップするための工業ライン上で、ケーシングへのプラグの締め付けの品質をすぐに確認することはできない。
【0079】
さらに、プラグが一旦接着されると、そのプラグに、またはケーシング自体にまで、回復できない損傷を生じさせずにプラグを取り外すことはほぼ不可能である。そのため、ばねのキャリブレーションをその後に修正することは、もはやできなくなる。
【0080】
その代わりに、プラグをねじ込んだ後に、プラグを中に封じ込むために、ジャケットを楕円形にするようにケーシングを強制的に塑性変形させるクリンプ方法がある。
【0081】
このような方法によれば、プラグのキャリブレーション位置は、一般に、楕円形になったケーシングに対してプラグを後で強制的にねじ込んだり外したりしてセットされる。
【0082】
もちろん、このような方法は、やはり同様にプラグを損傷し、さらにケーシングまで損傷し、あるいはパッドとプラグの間の機能的なクリアランスを乱すおそれがある。、中心軸(XX’)に正確に平行な支持面10A,10Bを得られるが、成形による製造では、上述したように、一般には5°以下、好ましくは3°以下または2°以下のわずかな抜き勾配が必要になることである。
【0083】
支持面10A,10Bを平面にして中心軸(XX’)に平行にするこのような配置により、都合のよいことに、前記支持面が、プラグ4のねじ込みトルクまたは取り外しトルクに対して、径方向成分により、適切な抵抗力で対抗する。
【0084】
図7に示すように、雌キャビティ10は、中心軸(XX’)の周りで分けて配置され、好ましくは均等に配置された、区別できる複数の切欠13を有することが好ましい。
【0085】
回転ロックステップ(b)では、区別できる複数の雄突起14が同時に形成され、それぞれが切欠13の一つに侵入し、且つそれぞれが各切欠13の支持面10A,10Bを摺動可能に支持することにより、切欠13と協働する。
【0086】
回転ロックを行うセット(突起14/切欠13のセット)の数と分配角度により、
ねじ締め付け/緩めの抵抗を、特に調整、特に大きく調整することができ、壁2とプラグ4の間で波形の組み合わせにすることにより、突起を比較的間引く配置にしながら、回転阻止力のバランスをとることもできる。
【0087】
さらに、このような分配により、突起14の製造が簡素化され、後述するように、キャリブレーション位置P0を後に修正する必要があると分かった場合に、プラグ4の再使用が可能になる。
【0088】
中心軸(XX’)の周りで均等に配分した3つまたは4つの切欠13と、同じ数の突起14を設けることが望ましい。
【0089】
回転ロックステップ(b)では、中心軸(XX’)の周りで、形成されるべき雄突起14と同じだけ多くの数のアーム21に分割された成形ツール20が、切欠23に対応する角度領域をカバーするように割り当てられた前記各アーム21(したがって関連する突起14)を、熱可塑性材料を軟化させてから押し出すようにプラグ4に押しつけることが好ましい。
【0090】
角度で分割されたツールを使用することにより、正確に加熱することを目標にすることができ、したがって、突起14を作るのに必要で十分な領域のみでプラグ4を熱可塑性変形させることができる。
【0091】
複数のアーム21を使用することにより、都合のよいことに、全ての突起14を単一の工程で同時に作ることが可能になる。
【0092】
さらに、中心軸(XX’)の周りでのアーム21の数と配分、好ましくは均一の配分により、挿入力F1を加えるときに、優れた安定性と大きな機械的な抵抗がツール20に与えられる。
【0093】
図4に示すように、(好ましくは3つまたは4つの)アーム21は、同じツール本体22によって作られた、好ましくは金属の硬質のピンの形状である。
【0094】
それ自体で発明を構成することのできる好ましい特徴によれば、プラグ4のハブ5は熱可塑性材料で形成され、中心軸(XX’)が中心となる中空のシリンダを形成する周辺クラウン15を有し、周辺クラウン15は、ハブのねじ山5Tを少なくとも部分的に有する径方向外面15Eと、ハブ5が孔1にねじ込まれる時に外側からアクセスできる(そしてアクセスできるままである)、径方向内面15Iとを有する。
【0095】
好ましくは、回転ロックステップ(b)では、その後に一つの切欠13に対して角度を付けて配置された各領域で、クラウン15を部分的に軟化させることができる。その後、このように軟化した各領域において、クラウンを構成する熱可塑性材料が、前記軟化した熱可塑性材料を、対応する切欠13へ侵入させるように、少なくとも径線上の遠心方向へ押し出される。したがって、
図6,
図7,
図11、
図12、
図13,
図16及び
図19に示すように、クラウン15と一体化(したがってより広くはハブ5と一体化)される雄突起14が構成される。
【0096】
このようなクラウン15により、突起14の製造が促進される。その理由は、前記クラウン15が、適切な剛性を有する一方で、特に径方向の厚さが比較的薄いため、実際にツール20によって部分的に変形させるために、少しの熱だけを必要とするからである。したがって、他の角度領域は、強い加熱の対象とはされず、変形に抵抗する適切な抵抗がある。
【0097】
さらに、以下に詳細に説明するように、都合のよいことに、前記クラウン15の外から見える縁15Aを、ツール20のアーム21を当てて熱可塑性変形させることができ、アーム21の適合する形状のおかげで、熱可塑性材料に作用する押しつけ力に加えて、加熱の位置を正しく調整できる。
【0098】
各アーム21の一端は、クラウン15の縁15Aと接触し、挿入方向D1への軸方向の侵入移動にしたがってクラウン15に挿入されることを目的とし、特に
図11,
図12及び
図13の連続動作に示されるように、軟化した熱可塑性材料を雌キャビティ10の中へ徐々に押し込むことが好ましい。
【0099】
説明の便宜上、侵入移動と挿入方向D1を一致させることができる。
【0100】
図5及び
図7に示すように、クラウン15の縁15Aは、クラウンの径方向内面15Iに対応する内径R15Iと、前記クラウンの径方向外面15Eに対応する外径R15Eとの間で径方向へ延びる。
【0101】
アーム21の端部とみなされる部分は、中心軸(XX’)を含む縦方向平面の断面において、
図5に示すインプリント23を有することが好ましい。インプリント23は、以下で明確にするように、少なくとも一つの第1フランジ24及び傾斜デフレクタ26と、場合によっては第2フランジ25を有することが好ましい。
【0102】
第1フランジ24は、成形ツール20が挿入方向D1に関してプラグ4と接触する時に、最初にクラウンの縁15Aの径方向外側部分に対して最初に支持されるように配置される。
【0103】
図5に示すように、前記フランジ24は、内径R15Iと外径R15Eの間に正確に含まれる中間径RMから径線上の遠心方向へ(すなわち、中心軸(XX’)から離れることにより、第1フランジ24に沿って進行すると考えられる場合)、または前記クラウンの外径R15Eまでもしくは外径R15Eを超えて延びる。これは、
図11に示された第1ステップで、エネルギー供給を初期には外向きに集中させるためで、それにより、プラスチック材料の軟化と径線上での遠心方向への移行が進められる。
【0104】
「径線上での遠心方向への移行」により、当然のことながら、軟化した熱可塑性材料は、中心軸(XX’)から離れやすい方向、実質的に径方向へ移動し、前記材料の径方向移動はハブ5から外側へ向かって行われる。
【0105】
可能な構成では、第2フランジ25を、第1フランジ24から侵入移動の方向D1に関して軸方向後ろ側に配置して、第2フランジ25が、クラウンの縁15Aの径方向内側部分を径方向に覆い、クラウンの前記縁15Aの径方向外側部分の補完部分を形成するように構成することができる。
【0106】
このため、前記第2フランジ25は、中間径RMから半径線上の中心の方向へ、前記クラウンの内径R15Iまで、または内径R15Iを超えて(すなわち、クラウンの内面15Iと同じか、それより中心軸(XX’)の近くまで)延びる。
【0107】
したがって、第1の実施変形例によれば、第2フランジ25は、第1フランジ24が前記クラウンの径方向外側部分を軸方向へ貫いて塑性変形し始めた後に、クラウン15と接触し、
図12及び
図13に示すように、第2の場所でクラウンの塑性変形を生じさせるように構成される。
【0108】
したがって、第1及び第2フランジ24,25を交互に配置することにより、熱可塑性材料のクラウン15から外側への移動が、外側フランジに続いて内側フランジで開始される2段階の還流で行うことができる。このことにより、ハブ5から主に突出する材料の方向を定めることができ、有用な突起14の形成が可能となり、クラウン15の内面15Iで先端部分15が失われるのを制限できる。
【0109】
第2の実施変形例によれば、
図5の破線または
図18及び
図19に示すように、第2フランジ25は、突起14の形成中にクラウン15と接触しないように、軸方向に十分な距離だけ後ろに位置する配置にしてもよい。
【0110】
この目的のために、第1フランジ24を第2フランジ25から離す軸方向の距離は、突起14を形成するために必要な成形ツール20の(所定の)軸方向ストロークよりも大きくなる。
【0111】
こうすると、ツール20のアーム21がクラウンの縁15Aの径方向内側部分と接触するのが回避され、それにより、この領域で熱可塑性材料が加熱されて変形するのが回避される。
【0112】
この方法では、回転阻止に有用な「生起する」突起14が形成されるだけで、クラウン15の内面の失われる先端を「再び加入させること」はなく、このことにより、プラグ4で塞がれたケーシングの最終的な美観を高めることができる。
【0113】
より詳細には、
図19に示すように、熱可塑性の形成によって影響を受けないクラウン15の径方向内側部分を、軟化した材料がハブ5の内側の凹部に径線上で中心向きに貫くことを阻止する支持バリアとして用いることができ、これにより、クラウン15の元の円筒状の内面15Iに対応する滑らか且つ均一なバリのない仕上げを維持できる。
【0114】
さらに、第2フランジ25が設けられても設けられなくても、及びこの第2フランジがクラウン15の縁15Aに対して当接する配置であってもなくても、インプリント23は(外側の)傾斜したデフレクタを有することが望ましい。
【0115】
径線上の遠心方向における径方向、及び侵入移動の方向D1における軸方向の両方で第1フランジ24を延長する傾斜したデフレクタ26は、中心軸(XX’)に関して抜き勾配(傾斜)A26を形成する。
【0116】
したがって、傾斜したデフレクタ26は、クラウン15にツール20を軸方向へ挿入する間に、クラウン15の径方向外面15Eに突出する突起14を形成するために、軟化した熱可塑性材料を径方向外側へ案内して圧縮できる。
【0117】
もちろん、インプリント23の径方向幅、すなわちアーム21の端部でインプリント23により区切られるくぼんだ開口の径方向の範囲、そしてより詳細には第1フランジ24と第2フランジ25の径方向の範囲の合計は、インプリント23がクラウン全体を完全に覆って軟化した材料を効果的に案内できるように、クラウン15の径方向厚さR15E-R15Iより大きくなる。
【0118】
特に、インプリント23の径方向幅、より詳しくは、クラウンの縁15Aの径方向厚さよりも厳密には所定値大きい第1及び第2フランジ24,25の合計の径方向幅を定めることが可能である。インプリント23、及びより詳しくは第1及び第2フランジ24,25は、プラグ4の製造、及び/またはツール20及びアーム21の位置決めに関して生じ得る、プラグ4及びクラウン15に対する径方向の許容差に相当する径方向のクリアランスに対応する。
【0119】
図18及び
図19の変形例においては、好都合なことに、ツール20の内部への(すなわち中心軸(XX’)軸方向への)第2フランジ25(及びインプリント23)の直接の径方向の開口が、フランジ24及びクラウン15の縁15Aから軸方向に後退する。よって、成形ツール20と前記クラウン15の径方向内面15Iとの間で、どのような干渉も生じないことが保証される。
【0120】
好ましくは、第1フランジ24及び第2フランジ25は中心軸(XX’)と直角であり、より詳しくは、プラグ4の表面の法線に直角であり、ここでは、成形ツール20が接触するクラウン15の上縁15Aの法線に直角である。
【0121】
都合のよいことに、このような直角の配置により、超音波成形ツール20によって、プラグの表面に打撃を与えることで前記エネルギーが伝えられる場合は、プラグ4に加熱エネルギーを特により効果的に与えることができる。
【0122】
インプリント23の径方向の境界を形成する縁は、突起14が変形または破損するどのようなおそれもなく、前記突起14の熱可塑性成形の後にツール20の取り外しやすくするために、中心軸(XX’)に対し、例えば1°から5°の範囲の、またはそれより大きい抜き勾配を有することが好ましい。
【0123】
より一般的には、インプリント23は、クラウン15及び突起14に関して、中心軸(XX’)に一致させて離型できる形状を有する。
【0124】
好ましくは、プラグ4と切欠13の間の径方向境界で前記突起14の基準とみなされる、各突起14の角度領域A14は、中心軸(XX’)の周りの方位角において30°以下であり、好ましくは10℃と20°の間に含まれ、例えば実質的に15°と等しい。
【0125】
補足的に、または同様に、突起14、より詳しくは切欠13は、プラグ4と切欠13の間の径方向境界とみなされる円弧長を有する。その円弧長は、特に35mmと45mmの間の直径を有するハブ、例えばM40のねじ山付きハブ5に対して、10mm以下であり、例えば5mmと7mmの間に含まれる。
【0126】
さらに、注目すべきは、各切欠13が中心軸(XX’)に対して直角の径方向でツール20の対応するアーム21の端部より大きいため、好ましくは1mmから2mmの範囲の径方向の挿入スキマが設けられ、ケーシング3に干渉せずに成形ツール20で突起14を形成できることである。
【0127】
好都合なことに、各突起14の範囲を制限することにより、熱成形に要するエネルギー量が削減される。
【0128】
さらに、この小さな範囲により、ツールのアーム21の小型化が促進され、したがって、回転ロックステップ(a)におけるプラグ4へのアクセスが容易になる。
【0129】
最後に、突起14の範囲の制限、したがって剪断モーメントの抵抗の制限により、突起14が損壊し得る限界点を定めることができ、それにより、状況によっては、その後にプラグ4のねじ締め付け(または緩め)の再調整が可能になる。
【0130】
したがって、それ自体が発明を構成することができる、本発明でなし得る変形例の方法によれば、少なくとも一つのねじ込みステップ(a)と回転ロックステップ(b)の後に、強制アンロックステップ(c)を有する。強制アンロックステップ(c)中は、ハブに形成される雄または雌の六角凹みのインプリントのような、プラグ4に設けられる操作部材30が係合し、ハブが雄部材の破壊により中心軸(XX’)の周りで強制的に回転する。この変形例は、強制アンロックステップ(c)の後に設定ステップ(d)を有する。設定ステップ(d)中に、ハブ5は孔1に対するその軸方向位置を調整するためにねじ込まれるか緩められ、それから新たな回転ロックステップ(b’)で、ハブ5の中心軸(XX’)周りでの回転を阻止し、前記回転軸(XX’)に対して軸方向移動の自由度を高めるために、ハブが軟化して雌キャビティ10,13の中へ押し込まれ、同じプラグ4の熱可塑性材料からなる新たな部分と、前に破壊された元の雄部材11に対して角度をシフトした新たな雄部材11’,14’が形成される。
【0131】
言い換えると、本発明では、特に車両に影響を及ぼす震動時に、通常の使用条件の下でねじを緩める/ねじを締め付けるのに抵抗するが、キーなどのツールによって予め定められた閾値トルクより大きな操作トルクが加えられると、プラグ4を強制的に回転させることにより破壊できる破壊可能な突起14を設けることが可能になる。
【0132】
新たなロックステップ(b’)は、上述したロックステップ(b)にあらゆる点で対応し、それらが単に繰り返され、突起14の第1のセットを壊して除去した後に、同じ切欠13に対して新たな突起14’のセットを、同じプラグ4の同じクラウン14に、第1のセット14に対して角度をシフトして再生するので、プラグを有効に再利用できる。
【0133】
したがって、特に、最初の設定に不具合がある場合、キャリブレーション位置P0を修正すること、またはタペット8の摩耗をその後に補うことが可能である。
【0134】
参照符号の後の記号(’)の使用は、単に2つの要素を区別することを目的とし、ここでは、同じ性質の2つの突起14,14’は、別々のロックステップ(b),(b’)で作られる。
【0135】
もちろん、操作部材30は、雄であっても雌であっても、任意の適切なインプリントによって形成すればよく、特に、例えば正方形、六角形(六面)、波形、星形などの多角形のインプリントによって形成すればよい。
【0136】
本発明でなし得る実施形態によれば、熱可塑性材料を軟化させるのに必要な加熱は、プラグ4の関連する部分に熱風を吹き付けることによって行える。
【0137】
熱可塑性材料が一旦軟化すると、前記材料は、上述したように、ツール20の1つまたは複数のアーム21によって成形することができる。
【0138】
好都合なことに、このように熱風を吹き付ける技術により、ねじ締め付け/緩めに対して非常に優れた抵抗力を有する、特に中実の突起14を得ることができる。
【0139】
それにもかかわらず、好ましくて可能な実施形態によれば、「ソノトロード」と呼ばれる超音波装置が、熱可塑性材料からなるプラグ4の一部を加熱することによって軟化させ、軟化した熱可塑性材料をその後に雌キャビティ10の中へ押し込むために、成形ツール20として用いられる。
【0140】
アーム21は、その後、振動要素として機能し、ハブ5のクラウン15に打撃を与えることになる。
【0141】
このような超音波成形技術により、熱風を吹き付ける技術に必要な20秒と比較して、サイクルタイムを約6秒に短縮でき、好都合である。
【0142】
特に好ましい方法において、ソノトロードの周波数は20kHzより高く、好ましくは30kHzより高く、さらに好ましくは35kHzである。
【0143】
この周波数の選択により、局所的な加熱が可能になり、特にタペット8のパッド12へのプラグ4の不測の溶着、またはタペット8のパッド12とプラグのハブ5の間に設けられる緩衝材であるOリングガスケット31の劣化を回避でき、好都合である。
【0144】
注目すべき点として、ソノトロード20の周波数は、プラグ4に対してソノトロード20によって加えられる軸方向の力の全てが挿入方向D1加えられるように選択される。前記の力は、プラグ4に対するソノトロードの機械的な作用から(すなわち軸方向への保持及び前進挿入から)、そして超音波により生じる打撃から生じ、前記の力は、(ばね9と緩衝材であるOリングガスケットのセットにより形成される)弾性部材によって加えられる付勢力F2より小さいままであり、前記パッド12も熱可塑性材料から形成される時には、プラグ4がパッド12に局所的且つ不用意に貼着されるのが避けられる。
【0145】
当然ながら、本発明は、本発明の実施の変形例の何れか1つに係る方法にしたがって、プラグ4により塞がれるステアリングケーシング3内に収容された少なくとも一つの機構を含むパワーステアリングシステムに関する。
【0146】
最後に、本発明は、孔1に予めねじ込まれたプラグ4の回転をロックすることを目的とする超音波成形ツール20に関し、前記成形ツール20は、中心軸(XX’)と一致する方向へ延びる本体22を備え、中心軸(XX’)の周りで分散した複数の個別のアーム21を支持し、前記アーム21は、プラグ4に超音波を伝達するように配置される。前記アームは、中心軸(XX’)の周りの、熱可塑性材料からなる個別の角度領域に配置され、前記プラグの周辺のレベルで、プラグ4の異なる周辺部分を同時に局所的に加熱して軟化させることができ、関連するそれぞれの角度領域において、少なくとも径線上の一つの遠心方向へ、このようにして軟化した熱可塑性材料を押し出す。アーム21は、突起14が、前記支持面10A,10Bに対して軸方向への自由な移動を維持しながら、前記切欠13を区切る支持面10A,10Bに対して回転可能に接するような配置に合わせて、前記角度領域において、孔1の壁2に設けられた対応する切欠13にはまり込む突起14が前記プラグ4の径方向に突出するように形成される。
【0147】
当然ながら、本発明は前述の変形例に全く限定されず、特に、当業者は、前述の特徴の何れかを自由に分離したり互いに組み合わせたり、または他の同等物に置き換えたり、自由にすることができる。