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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-01
(45)【発行日】2022-07-11
(54)【発明の名称】リポソーム製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20220704BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K39/395 N
A61K47/14
A61K9/127
A61P27/02
A61P35/00
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P9/10
A61P27/06
A61P29/00
A61P13/12
A61P11/00
【請求項の数】 29
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020046303
(22)【出願日】2020-03-17
(62)【分割の表示】P 2018088574の分割
【原出願日】2013-08-15
(65)【公開番号】P2020111589
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】61/691,455
(32)【優先日】2012-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/791,693
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/862,300
(32)【優先日】2013-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509067614
【氏名又は名称】オプコ ファーマシューティカルズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】サントス アルトゥロ
(72)【発明者】
【氏名】フロスト フィリップ
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06958160(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0009185(US,A1)
【文献】生物工学,2008年,Vol. 86, No. 8,pp. 382-383
【文献】日本内科学会雑誌,2010年,Vol. 99, No. 9,pp. 2165-2171 (pp. 145-151)
【文献】気管支学,1999年,Vol. 21, No. 5,pp. 358-364
【文献】皮膚,1976年,Vol. 18, No. 3,pp. 326-331
【文献】Otol Jpn,2010年,Vol. 20, No. 3,pp. 251-256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61K 39/00-39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EG系脂質を含む組成物から形成される熱力学的に安定な自己形成リポソーム及び薬品を含む眼への局所投与用の水性の製剤であって
前記製剤の全重量に対して前記脂質の重量パーセンテージが20wt%未満であ
前記薬品が、ラニビズマブ若しくはベバシズマブから選択される抗VEGF抗体、又は、トリアムシノロンアセトニドであ
前記脂質が、PEG-12GDM又はPEG-12GDOから選択される、水性の製剤。
【請求項2】
前記熱力学的に安定な自己形成リポソームが、300~5,000ダルトンの分子量を有するPEG鎖を含み、25℃で液体であり、20℃及び37℃双方で水溶液中に自己形成する脂質を含む組成物から形成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤が局所製剤である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記抗VEGF抗体がラニビズマブである、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記熱力学的に安定な自己形成リポソームを形成する前記脂質が、25℃で液体であり、300~5,000ダルトンの分子量を有するPEG鎖を含み、20℃及び37℃の双方で水溶液中に自己形成する脂質から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
VEGFに関連した疾患又は病態の処置のための、そのような処置を必要としている患者のための、請求項1に記載の製剤を含む医薬。
【請求項7】
前記患者に投与する抗VEGF抗体の毎日又は毎週の投薬量範囲が1μg/kg~50mg/kgの範囲に及ぶ、請求項に記載の医薬。
【請求項8】
VEGFに関連した疾患又は病態を処置するための医薬製剤であって、それらの処置を必要としている患者に、PEG系脂質を含む組成物から形成される熱力学的に安定な自己形成リポソーム及び抗VEGF抗体を薬学的有効量で含み、前記脂質が、PEG-12GDM又はPEG-12GDOからなる群から選択される、眼への局所投与用の医薬製剤。
【請求項9】
抗VEGF抗体が、ラニビズマブ又はベバシズマブから選択される、請求項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
脂質が、25℃で液体であり、300~5,000ダルトンの分子量を有するPEG鎖を含み、20℃及び37℃の双方で水溶液中に自己形成する、熱力学的に安定な自己形成リポソームを形成する、請求項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記製剤が局所製剤である、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記VEGFに関連した疾患又は病態は、腫瘍性の又は非腫瘍性の疾患又は病態から選択される、請求項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記腫瘍性の疾患又は病態が、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肝臓癌、卵巣癌、男性胚細胞腫、子宮頚部癌、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、繊維肉腫、絨毛癌、頭頚部癌、鼻咽頭癌、咽頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、膵臓癌、及びその他の癌からなる群から選択される、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記非腫瘍性の疾患又は病態が、関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、未熟児網膜症を含む糖尿病及び他の増殖性網膜症、後水晶体線維増殖症、新生血管緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫及び他の形態の黄斑浮腫、グレーヴス病を含む甲状腺過形成、慢性炎症、肺炎症、腎炎症候群、子癇前症、腹水症、心膜液貯留、並びに胸水からなる群から選択される、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記疾患又は病態が、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、又は角膜血管新生から選択される、請求項14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
局所の眼科製剤であって、PEG系脂質を含む組成物から形成される熱力学的に安定な自己形成リポソーム及び抗VEGF抗体を含むそれらの処置を必要としている患者の眼への投与に好適な製剤であって、
前記脂質が、PEG-12GDM又はPEG-12GDOである、製剤
【請求項17】
前記抗VEGF抗体が、ラニビズマブ又はベバシズマブから選択される、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
熱力学的に、自己形成リポソームが、25℃で液体であり、300~5,000ダルトンの分子量を有するPEG鎖を含み、20℃及び37℃の双方で水溶液中に自己形成する、脂質を含む組成物から形成される、請求項16に記載の製剤。
【請求項19】
(a)ラニビズマブ、及び
(b)PEG系脂質を含む組成物から形成される熱力学的に安定な自己形成リポソームを含む、点眼液であって、前記自己形成リポソームの重量パーセンテージが点眼液の全重量に対して20wt%未満であり、
前記脂質が、PEG-12GDM又はPEG-12GDOである、点眼液
【請求項20】
前記ラニビズマブが0.01~1.0mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項19に記載の点眼液。
【請求項21】
薬学的に許容できる賦形剤、及び/又は試薬をさらに含む、請求項20に記載の点眼液。
【請求項22】
前記点眼液のpHが4.5~7.5である、請求項21に記載の点眼液。
【請求項23】
前記脂質が、5~25mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項19に記載の点眼液。
【請求項24】
前記脂質の濃度が10mg/mLである、請求項23に記載の点眼液。
【請求項25】
効果がもたらされる患者の眼に、局所的に投与するための、糖尿病黄斑浮腫を有する患者を処置するための請求項1924に記載の点眼液。
【請求項26】
患者に投与されるラニビズマブの毎日の投薬量が、10μg/日~125μg/日である、請求項25に記載の点眼液。
【請求項27】
用量が、3時間毎に6回/日、ラニビズマブ15~20μg/用量の投薬量で投与するための、請求項26に記載の点眼液。
【請求項28】
15~20μgの用量の6回/日投与が2週間に亘って、次いで、その後、50μg未満の総1日用量で必要に応じて1日1回又は1日2回で投与するための、請求項27に記載の点眼液。
【請求項29】
子体内投与用のトリアムシノロンアセトニドの製剤との併用療法に使用される、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、それぞれ、2012年8月21日;2013年3月15日;及び2013年8月5日に出願された米国仮特許出願61/691,455、61/791,693、及び61/862,300に基づく優先権を主張するものであり、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、典型的には、眼への硝子体内注入によって施される眼科の薬物、及び前記硝子体内薬物の眼への局所適用を可能にするリポソームの送達剤を含む医薬製剤に関する。また、本発明は、例えば、VEGFの働きを阻害する血管内皮増殖因子バインダーであるラニビズマブ、及び/又は多種キナーゼVEGFR及びPDGFR阻害剤、例えばスニチニブ、及び薬学的に許容できるリポソームから選択される送達剤から選択されるモノクローナル抗体又はその断片のような抗血管新生の化合物に関する。その製剤は、動物及びヒトにおける様々な血管新生の障害及び疾患の処置に、好ましくは、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、及び角膜血管新生から選択される眼科の障害に、有用である。
【背景技術】
【0003】
眼科の疾患の処置は、特定の疾患又は病態、並びに特定の薬品及び疾患に関して投与経路の有効性によって、典型的には、局所の投与、又は眼への特定の薬品の硝子体内注入の何れかが必要である。眼の特定の疾患又は病態において、薬品が硝子体内注入により投与される場合のみ、効果的処置が達成され得る。硝子体内注入により効果的に処置される眼の疾患及び病態が嘆願されている。同時に、これらの注入は、眼感染症(眼内炎)、眼炎、網膜剥離、及び眼圧の増加を含む深刻な副作用を起こし得、及び/又は伴う。これらの副作用又はリスクから、眼の局所の処置は、眼の病態を処置するための好ましい薬品の投与経路であり、ほとんど全ての場合において、薬品の局所の投与が、ある眼の病態、とりわけ、眼の後ろ側に生じるこれらの病態を効果的に処置しないから探求の対象であった。従って、前記病態を効果的に処置し、硝子体内注入を使用する必要性を排除する製剤を開発する必要性がある。本発明者らはそのようなビヒクルを発見したと信じる。米国特許公報第6,884,879号は、種々の抗VEGF抗体を開示する。この特許は、認可され、LUCENTIS(登録商標)の商標名で市販されるモノクローナル抗体ラニビズマブを、特に説明し、請求する。そこに開示された抗体は、種々の疾患の症候を予防すること、逆転させること、及び/又は緩和することができるものとして説明され、及びVEGF起因性の内皮細胞の増殖を阻害する能力、及びVEGF起因性の血管新生を阻害する能力を有するものとして説明される。LUCENTIS(登録商標)は、月に1回の硝子体内注入による有効性成分含量0.5mg(0.05mL)で新生血管(ウェット型)の加齢黄斑変性(AMD)のために認可され、効果的ではないが、認可された処置では、少なくとも4ヶ月間、月に1回の最初の投与計画後3ヶ月毎の注入で投与されてもよい。LUCENTIS(登録商標)は、また、月に1回の硝子体内への投与計画において、0.5mg(0.05mL)を用いることが、網膜静脈閉塞症(RVO)に続く黄斑浮腫のために米国において認可される。加えて、LUCENTIS(登録商標)は、注入可能な製剤で糖尿病黄斑浮腫のために欧州及び米国において認可される。
【0004】
スニチニブ(SU-11248、Sutent)は、転移性の腎臓細胞癌及び消化管間質腫瘍の処置のための単剤療法として、FDAによって2006年1月に認可された。スニチニブは、血管内皮増殖因子受容体1~3(VEGFR1~VEGFR3)、血小板由来成長因子受容体(PDGFRα及びPDGFRβ)を含む、少なくとも8種の受容体タンパク質-チロシンキナーゼを阻害する。この化合物は、VEGFR1、VEGFR2、及びPDGFRβを介したシグナル伝達を減らすことによって血管新生を阻害する。PDGFRβは、毛細管内皮細胞を取り囲む周皮細胞で発見される(Roskoski、2007)。いくつかのVEGF関連疾患の処置において、抗PDGFの併用がラニビズマブ単独療法に勝ることの証拠がある。
【0005】
抗VEGF抗体及び他の眼科の薬品の硝子体内注入に伴う患者の不快感を含む多数の副作用又は潜在的な副作用がある。硝子体内注入の処置は専用の通常の無菌の規制を有するクリーンルームを必要とし;蘇生設備が直ちに使用できなければならない。この処置の合併症は、感染性眼内炎;網膜剥離及び外傷性白内障を含む。硝子体内注入における他の可能性のある合併症は眼圧変化、とりわけ眼圧上昇を含む。如何なる種類の薬物及び薬品の注入直後に起こり得る注入に関連した眼圧上昇は、注入後数日又は数月でさえも発見され得る眼圧変化に特別関連した。Seminを参照のこと。Ophthamol.2009年3~4月;24(2):100-5。
【0006】
そのような抗VEGF抗体、及び硝子体内注入を介して投与される薬品の主な種類である抗菌剤、抗ウイルス剤、コルチコステロイド剤、及び抗血管内皮増殖因子剤のような、他の効果的な眼科の薬品の、新しい局所の治療レジメンに対する、切迫した未だ対処されていない医学的な必要性がある。本発明は、前記リポソームと、局所製剤における前記薬品の種類内の何れかの前記薬品との組合せを含む。米国特許第6,884,879号が一般的に種々の可能な送達方法、又はリポソームを含む試薬、及びそのようなVEGFモノクローナル抗体の局所の投与を含む種々の投与の経路を開示する一方、ラニビズマブの認可された形態のみが液体製剤における硝子体中の形態である。眼科の障害を含むVEGF関連障害を有する人を処置することに効果的である局所のラニビズマブ製剤に対する必要性がある。
【0007】
本発明者らはこの満たされていない要求に接し、驚くべきことに、そのようなVEGFモノクローナル抗体を含むあるリポソームの製剤、及びあるリポソームが糖尿病黄斑浮腫を有する患者において効果的な軽減を提供することを見出した。製剤は、罹患した眼へ局所的に効果的に投与され、硝子体内の製剤の局所適用よりも効果的である。米国特許第6,958,160号は、自己形成する熱力学的に安定なリポソームを開示し請求する。参照により本願明細書に援用する、米国特許公報第2010/0076209号は、リポソームに対するPEG-脂質接合体及び薬物送達を開示する。Qsomes(商標)(以下Qsome)の商標名で市販されるそのような自己形成する熱力学的に安定なリポソームを含む、種々の脂質系生産品は、多数の治療用途、及び皮膚への局所の投与によるものを含む種々の投与経路経由のためにBiozone Laboratoriesより販売される。本発明者らは、ラニビズマブ、並びにそのような自己形成する熱力学的に安定なリポソーム及び/又はPEG-脂質接合体を含む医薬組成物がVEGF関連の眼科の疾患及び病態の処置を必要としている患者の眼へ局所的に送達され得ることを発見した。本発明は、本願明細書に開示されるQsome(自己形成する熱力学的に安定なリポソーム)及び薬品を含む局所製剤をさらに含み、製剤が後眼部の眼科の疾患及び/又は前眼部/後眼部疾患の組み合わせである疾患の処置に好適である。請求された製剤は局所の投与に好適であり、典型的には眼周囲の経路により又は硝子体内の投与を経て(眼内送達)処置される眼科の疾患及び病態を処置することにおいて、特に有用である。眼周囲の投与は、結膜下、テノン嚢下、眼球後及び眼球周囲投与を含む。ESBA105、抗TNF-α単鎖抗体;デキサメサゾン;ネパフェナク;メマンチンHCl;ドルゾラミド;ブリモニジン及びベタキソロールを含むこれらの局所の投与によって後眼部に送達されることが可能であるものとして開示されたいくつかの薬品がある。これらのQsome製剤における薬品の局所の投与が、より有効な局所の送達、及びより有効な後眼部の送達との結果となるだろうことが信じられる。しかしながら、好ましくは、請求項に係る発明は、本願明細書に記載されるようなQsomeリポソーム、及び従来は局所の投与を介して効果的に送達されない薬品を含む局所製剤を含む。
【0008】
薬品は、典型的には、抗菌剤、抗ウイルス剤、コルチコステロイド剤、及び抗血管内皮増殖因子剤を含む硝子体内注入によって与えられる。本発明は、自己形成する熱力学的に安定なリポソーム及び抗菌剤、抗ウイルス剤、コルチコステロイド、及び抗血管内皮増殖因子剤の何れか又は組合せから選択される活性医薬品を含むリポソームの製剤を含み、前記製剤が眼科の疾患又は病態を処置するための患者の眼への局所の送達に好適である。ジクロフェナク、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン乳酸塩、GCV、デメクロサイクリン、フルルビプロフェン、ドキソルビシン、セレコキシブ、ブデソニド、及びシスプラチンは、経角膜又は経強膜の送達のためにコロイド状の剤形において処方される。ペニシリンG、トロピカミド、及びアセタゾラミドを含有するカチオン性リポソームは、アニオン性及び中性のリポソームより、角膜を横切る最大の薬品輸送を提供するために使用される。Schaefferら、局所の薬品送達におけるリポソーム、Invest.Ophthalmol.Vis Sci.1982:22(2):220-7;Nagarsenkerら、眼内送達のためのトロピカミドのリポソーム製剤の調製及び評価、Int J Pharma.1999:190(1):63-71、及びHathoutら、アセタゾラミドのための眼内送達系としてのリポソーム:インビトロ及びインビボ研究における、AAPS PharmaSciTech.2007;8(1):1を参照のこと。
【0009】
糖尿病性網膜症(DR)は、糖尿病の最も多い微小血管性合併症であり(Fong、2004)、生産年齢の大人の中での失明の新しい症例の主因である。糖尿病黄斑浮腫(DME)は、DRを有する患者における失明の最も多い原因である。DMEの罹患率は、各年、約75,000のDMEの新しい症例の最近の診断で、3%である(米国)。糖尿病を有する全世界の患者の数は、2億8500万の驚くべき数字である。DMEは、網膜黄斑の中心の1乳頭径内で、網膜の肥厚及び硬性白斑に至る、進行性の漏出及び滲出を最終的に起こす、一連の生化学的、及び細胞の変化を生じる。DMEは、糖尿病の患者における視覚障害の、最も多い原因の1つである(Bhagat、2009)。患者のおよそ50%が、2年の経過観察後に、BCVAの2以上のラインの低下を経験する(Meyer、2007)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
DMEにおいて、損傷した血管は、網膜の中央部分に液体が漏れ(黄斑)、膨張に至る。黄斑は鮮明な中心視に関与する。中心窩は黄斑の中心にある。DMEは、1型又は2型糖尿病を有する患者に生じ得る。米国内のおよそ2600万人が糖尿病を有し、190万の新しい症例が、各年で、20歳以上の人において診断される。75,000までのDMEの新しい症例が、各年で、発症すると概算される。DMEは、ほとんどの先進国において、生産年齢の人口の中で、失明の主な原因である。DMEに対する第一選択療法は、網膜において、液体の漏出を排除し、液体の量を減らすため、漏出血管を塞ぐレーザー外科手術である。このように、これらの患者への治療上の救済を提供する新しい製剤を創造するかなりの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、抗血管新生の化合物又は他の眼科の有効成分、及びリポソームを含む医薬製剤である。好ましい抗血管新生の化合物は、抗VEGF抗体である。医薬製剤は、好ましくは、それらの処置を必要としている患者の眼に局所製剤として投与される。医薬製剤は、例えば、加齢性黄斑変性及び糖尿病黄斑浮腫を含むVEGF関連の眼科の障害の処置において、有用である。本発明は、また、局所の投与に好適であり、角膜の新生血管の疾患を処置することに有効である製剤を対象とする。
【0012】
好ましい抗VEGF抗体は、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))から選択され、参照により本願明細書に援用される米国特許第6,884,879号に記載される通り調製されてもよい。この生産品は、硝子体内の液体製剤の処方薬として販売される。ラニビズマブは、組み換えヒト化IgG1κアイソタイプモノクローナル抗体断片である。この抗体は、VEGF-Aに結合し、VEGF-Aを阻害し、およそ48kダルトンの分子量を有する。その生産品は、テトラサイクリンを含有する培養液中の大腸菌発現系において生成される。処方生産品は、0.05mLの10mg/mLラニビズマブを含有する使い捨てのガラスバイアルで提供される。ベバシズマブのような他の抗VEGF抗体は角膜の新生血管の疾患のような、ある疾患及び病態を処置するのに使用されてもよい。本願明細書に開示される局所リポソーム製剤は、異常な新生血管を有する眼の中にベバシズマブのような抗体全体の浸透を容易にする。
【0013】
本発明において有用なリポソームは、好ましくは、その全体を参照により本願明細書に援用する米国特許第6,958,160に記載されるリポソームを含む。そこに記載されている通り、リポソームは自閉の(self-closed)コロイド状の粒子であり、1以上の脂質二重層からなる膜が、それらが懸濁された水溶液の小部分をカプセル化する。また‘160特許に詳述する通り、全てのリポソームは同じものではなく、実際、リポソームはコロイド状の不安定性を含む問題、並びに高圧及び高温、同様に高いせん断条件のような極度な条件(これらの全ては脂質成分を劣化させ得る)のために製造の問題を有する。リポソームに伴う他の問題は、一般に、スケールアップの問題を引き起こし、悩ませ得る、二重層の大きさ及び数の不均一な分布を含み得る。加えて、殺菌条件が、また、リポソームに関する問題を生じ得る。リポソームは、また、懸濁液中で凝集するために、コロイド状の不安定性を有し得る。これは複合問題に至り、典型的には、費用のかかる余分な工程である凍結乾燥でこの問題が解決される。‘160特許に開示されるリポソームは、これらの問題を克服し、驚くべきことに、ラニビズマブのような抗VEGF抗体と組み合わされたとき、これらの特定のリポソームが有効であることが発見された。
【0014】
特に、自己形成する熱力学的に安定なリポソーム、及び抗VEGF抗体を含む製剤は、VEGF関連の眼科の疾患及び病態の処置において、特に、局所適用に好適である。
【0015】
本発明の製剤に有用なリポソームは、ジアシルグリセロール-PEG化合物を含む。これらの化合物の融点は約40℃より下であり、アシル鎖が、長さにおいては、約14個以上の炭素である。これらの化合物は、‘160特許に詳述する通り調製される。好ましい脂質PEG接合体(conjugate)は、PEG-12-GDM(ポリエチレングリコール12-グリセロールジミリステート)である。PEGは、リポソームの外部表面に立体的バリアを作ることによりリポソームを安定化し、PEG鎖は約300ダルトン~5000ダルトンの分子量を有する。リポソームの調製は、脂質を水溶液と単に混合する工程を必要とする。リポソームのこれらの種類は、脂質が水溶液中に存在できる最も低いエネルギー状態で存在し、リポソーム製剤の再現性は問題ない。
【0016】
定義されている脂質、脂質混合物、又は脂質/化合物混合物は、同じ水溶液で混合される場合、毎回、同様のリポソームを形成する。臨界濃度(容量に対して約20重量%)以上で、非リポソームの構造が水溶液に形成し始めるだろう。これらのリポソームは、それらの最も低いエネルギー状態で存在し、熱力学的に安定な、自己形成リポソームである。滅菌ろ過され得るように、PEG-12GDMはかなり小さい小胞を形成する。振とう又はボルテックスのような運動エネルギーが、脂質溶液及び水溶液に提供されてもよい。本発明の製剤は、また、6,958,160特許に一般的に又は具体的に説明されているような他の脂質-PEG接合体を使用してもよい。加えて、他の脂質PEG自己形成する熱力学的に安定な接合体は、また、米国特許公報第2010/0076209号に説明されている化合物を含むものが使用されてもよい。以下の表1は、あるPEG-12GDMの特徴を説明する。
【0017】
表1 PEG-12GDMの特徴
【表1】


分子量:1068g/mol
最適のpH:5~7
可溶性:有機溶媒に可溶。
【0018】
本発明の局所製剤ラニビズマブにおいて、溶液の最終体積に基づく1重量/体積%のPEG-12GDMが使用され、局所溶液のpHが5.5であり、リポソームが作用する適切な範囲内であった。
【0019】
抗血管新生の化合物(例えば抗VEGF抗体)及び熱力学的に安定な自己形成リポソームに加えて、製剤は、付加的な薬学的に許容できる賦形剤をさらに含んでもよい。好ましい賦形剤は、眼への局所の投与に好適な賦形剤からなる群から選択される。これらは界面活性剤、緩衝液試薬、pH調整剤、塩、及び他のそのような成分を含む。
【0020】
製剤は、VEGF関連疾患及び病態、並びに/又は他の血管新生の病態を処置することに有用である。従って、本発明は、加齢性黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫及び角膜血管新生を含む糖尿病性網膜症を処置するためのそのような製剤の使用を含む。好ましい実施形態において、本発明は、局所製剤を含み、それらの処置を必要としている患者の眼に、そのような製剤を局所的に投与することによって、そのようなVEGF関連疾患及び病態を処置する方法を包含する。
【0021】
本発明は、以下の図により説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、2週間、1日あたり6滴投薬された後、8週間に亘る光干渉断層撮影(OCT-CFT)を用いる、改良された中心窩厚さの寸法を有するリポソームのラニビズマブ製剤で処置された単一の患者からのデータを示す。8週目で、患者はCFTの増加を示し、1日あたり2滴の1日用量で、10週目で処置が再開された。図1は、12週~14週の期間に再び起こるCFTの改良を示す。
図2図2は、2週間、1日あたり6滴投薬された後、8週間に亘る改良された視力の測定値(ETDRS BCVA)を有するリポソームのラニビズマブ製剤で処置された同じ臨床の患者を示す。8週目で、患者はVAの減少を示し、1日あたり、2滴の1日用量で、10週目で処置が再開された。図1は、12週~14週の期間に再び起こるVAの改良を示す。
図3図3は、多重膜のリポソーム、及び単一膜のリポソームの顕微鏡画像を示す。
図4図4は、経時的な、ラニビズマブのリポソームの製剤で処置した患者の中心窩の厚さのOCT結果を示す。
図5図5は、経時的な、患者の反対側の眼の中心窩の厚さのOCT結果を示す。
図6図6は、3人の患者における実験を行う眼(study eyes)に対する、経時的な、BCVAの結果を示す。
図7図7は、反対側の眼に対する、経時的な、BCVAの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[詳細な説明]
本発明は、医薬製剤及びその使用に関し、好ましい製剤は、抗VEGF抗体、及び自己形成する熱力学的に安定なリポソームを含む。また、本発明は、抗VEGF抗体、及び自己形成する熱力学的に安定なリポソームを含む局所製剤に関する。本発明は、それらの処置を必要としている患者への、抗VEGF抗体、及び自己形成する熱力学的に安定なリポソームを含む製剤の投与を含む、VEGF関連疾患又は病態を処置する方法をさらに含む。好ましい実施形態において、VEGF関連疾患又は病態は、糖尿病性網膜症(DR)から選択される。
【0024】
リポソームが「一般に」種々の有効成分の送達に関連して説明されている一方、従来技術は、抗VEGF抗体と組み合わせた自己形成する熱力学的に安定なリポソームの組合せを開示又は示さない。前記製剤のリポソームは、VEGF関連疾患又は病態、特に、眼科の疾患又は病態の処置を必要としている患者への抗VEGF抗体の送達に、特に好適である。本発明の製剤のリポソームは、例えば、糖尿病黄斑浮腫、又は加齢黄斑変性若しくは角膜血管新生の処置を必要としている患者の眼への局所の投与に特に適している。本発明のリポソームは、とりわけ、これらの局所製剤に好適にする、所望の基礎的性質を備える。リポソーム懸濁液が、製剤の温度で熱力学的に安定である。リポソームを生成する脂質の組成物は、いくつかの基礎的性質を有する。脂質は、リポソームの形成を可能にするパッキングパラメータ(packing parameters)を有する。脂質は、頭部基の一部として、懸濁液においてリポソームを立体的に安定化させる同様の特性のポリエチレングリコール(PEG)、又はポリマーを含む。加えて、リポソームは、水又は水溶液と混合する場合、液状の形態にさせる融点を有する。
【0025】
6,610,322号特許に記載されているように、水溶液中にリポソームの懸濁液を形成する際、エネルギーが加えられる必要はほとんど無いかまったく無い。本発明において、好ましい方法は、抗VEGF抗体の有効成分を含有する水溶液の存在下で、リポソームの懸濁液を形成する工程を伴う。このため、自己組織化(Self-assembly)は、有効成分が懸濁液に加えられる前よりも、好ましくは、有効成分により生じる。脂質分子は分散され、自然な低いエネルギー状態に自己組織化する。Qusomes(商標)についてBiozone Laboratoriesのウェブサイトに記載の通り、リポソームは、大型の若しくは小型の単層小胞体(SUV)又は多層小胞体(MLV)を形成する(図3を参照)。
【0026】
PEG鎖は、好ましくは約300ダルトン~5000ダルトンの分子量を有する。好適な脂質の例は、PEG-12GDO(ジオレイン酸グリセロール)及びPEG-12GDM(ジミリスチン酸グリセロール)を含む。PEG-12GDMは、25℃で液体であり、それぞれ0.853及び0.889の充填パラメータPa及びPvを有する。これらの脂質のそれぞれは、20℃、37℃、及び60℃で、自発的なリポソームを形成する。Paが0.84~0.88の範囲に亘ってもよく、Pvが約0.88~0.93であってもよい。好ましくは、好適な化合物は、例えば、ミセルの代わりにリポソームを形成する。加えて、脂質組成物は、約0℃~100℃の相転移温度を有すべきであり、脂質組成物は、水溶液と混合する際、組成物を液体状にさせる融解温度を有する。また、組成物の曲げ弾性率は、如何なる又はほとんどのエネルギー供給の必要性も無く、水性環境で脂質組成物がリポソームを形成し得るようにするべきである。運動エネルギーはその水溶液に付与されてもよい。好ましい曲げ弾性率は約0kt~15ktである。曲げ弾性率は、主として骨格によって決定され、曲げ弾性率及び好適な官能性の点から如何なる同等の骨格もまた使用されてもよいが、グリセロールが本発明の好ましい骨格である。最終的な水溶液中の脂質の重量による相対的なパーセンテージは、0~約20wt%より大きい範囲でもよい。その範囲は、約1wt%~15wt%、又は約1wt%~10wt%、又は約1wt%~5wt%であってもよく、又は0wt%~4wt%より大きくてもよい。
【0027】
また、他の分子と、12より長いPEG鎖を有する脂質との混合物は、リポソームを形成するそれらを提供する本発明に使用されてもよい。例えば、PEG-45GDS(ジステアリン酸グリセロール)とコレステロールとの混合物はリポソームを形成する。‘322号特許に記載される通り、当業者は、PEG鎖長、及び熱力学的に安定な自由形成するリポソームを調製するための成分を含む可変物を変更でき、抗VEGF抗体と共に組み合わせる際、そのようなものは本発明の範囲内に含まれるものである。リポソームの形成前に、脂質に添加する際のコレステロールの量は約10wt%までである。
【0028】
‘322号特許に記載される脂質に加えて、他の脂質も、また、本発明に利用されてもよい。米国特許公開第2010/0076209号は、具体的に説明される有効成分の薬物送達に好適なリポソームを形成する特定のPEG-脂質接合体を説明する。前記参考文献に、抗VEGF抗体の送達についての教示又は言及はない。特に、‘209号公報に記載されるようなジアシルグリセロール-ポリエチレングリコール化合物は、本発明の製剤において抗VEGF抗体と組み合わせて利用されてもよい。脂質化合物の一般的な構造は、‘209号公報に示され、式(R)(R)グリセロール-X-PEG-R及び/又はR-PEG-X-グリセロール(R)(R)を有する化合物を含み、Rは、好ましくは、-OH又は-OCHの何れかであり;R及びRは、これらに限定されないが、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、及びリノール酸塩を含む脂肪酸であり;及びXは、脂質とPEGとの間において、単一のリンカー、又は繰り返しの(replicate)リンカー、又は2以上のリンカーの組合せを表す。R及びRは、同じであってもよいし異なっていてもよい。もし、RがグリセロールのC1位置であれば、Rは、C2又はC3の何れかに位置してもよい。その一般的な構造は、全てのラセミ体(racemers)、及び構造異性体、及び/又はそれらの機能的等価物を含む。
【0029】
また、R1は、例えば、-NH、-COOH、-OCHCH、-OCHCHCH、-OCHCHOH、-COCH=CH、-OCHCHNH、-OSOCH、-OCH、-OCHCOCHCHCOONC、-CHCH=CH、及び-OCから選択されてもよい。また、R1は、リポソームの表面に治療剤又は標的薬剤を連結するのに役立つ官能基であってもよい。これらは、アミノアルキルエステル、マレイミド、ジグリシジルエーテル、マレイミドプロピオン酸、メチルカルバメート、トシルヒドラゾン塩、アジド、プロパルギル-アミン、プロパルギルアルコール、NHSエステル、ヒドラジド、スクシンイミジルエステル、スクシンイミジル酒石酸塩、スクシンイミジルコハク酸塩、及びトルエンスルホン酸塩を含んでもよい。本発明は、リポソームの組成物内に抗VEGF抗体を有するリポソームの製剤を含み、さらに、R1官能基によりリポソームと共有結合又は連結された抗VEGF抗体を含む任意の他の治療上の化合物を含んでもよい。そのような場合において、本発明は、非共有結合された有効成分、及び共有結合された有効成分の双方を有する混合製剤又は製剤であり、又はそれを含むだろう。前記有効成分は同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0030】
この種類のリポソームの製剤に有用又は好適なリンカーは、参照により本願明細書に援用する、‘209号公報に説明されるものを含む。それにおける表1は、そのような好適なリンカーを記載又は列挙し、アミノ、サクシニルアミノアセトアミド、2-アミノペンタンアミド、2(2’)-R’-アミノアセチル等を含む。何れの場合も、‘209号公報の表4に示される通り、脂質は20及び37℃で、自発的なリポソームを形成する。このように、本発明は、PEG-12-N1-GDO;PEG-23-N2-GDO;PEG-18-N3-GDO;PEG-23-N4-GDO;PEG-8-S1-GDO;PEG-18-S2-GDO;PEG-12-S3-GDO;PEG-18-Ac1-GDO;PEG-12-Ac2-GDO;PEG-12-N1-GDM;PEG-12-N1-GDLO;PEG-12-S3-GDM;PeG-12-S3-GDLO;PEG-12-Ac2-GDM;PEG-12-Ac2-GDLO;PEG-23-N1-GDL;PEG-12kN1-GDP;PEG-23-Ac2-GDL、及びPEG-12-Ac2-GDPとして説明されるそれらの脂質を含む。GDLOはジリノール酸グリセロールを意味し、GDPはジパルミチン酸グリセロールを意味する。それぞれの化合物は25℃で液体であり、0.830~0.869の範囲に及ぶPa、及び0.872~0.924の範囲に及ぶPvである充填パラメータを有する。
【0031】
本発明は、さらに、例えば、25℃で液体であり、20℃及び37℃で自己形成し、機能上同等であるか、或いは同等の充填パラメータを有し、水溶液と合わせる際、エネルギー供給が僅か又は全く無くとも、熱力学的に安定なリポソームを形成する、本願明細書に詳述する様式上の要件にあった既知の脂質を含む。
【0032】
本発明の製剤において有用な抗VEGF抗体は、何れかの公知の抗VEGF抗体を含む。これらの抗体は、必須の抗VEGFの生物学的な特性を有する場合、全抗体又は抗体断片を含む。好ましい実施形態において、その抗体は、必須の抗VEGF生物学的及び薬理学的な特性を有する抗体断片である。米国特許第6,884,879号は、本発明において有用な抗VEGF抗体を開示する。そのような抗体は、VEGFに対する強い結合親和性を含む特性;内皮細胞の増殖を促進させるVEGFを阻害する能力、及び血管新生を引き起こすVEGFを阻害する能力を有する、ヒト化抗VEGF抗体及び抗VEGF抗体バリアントを含む。好ましい結合親和性(Kd)は、約5×10-9M以下であり、インビトロでのVEGF起因性の内皮細胞の増殖を阻害するために、約5nM以下のED50値を有する。抗体は5mgs/kgの抗体用量でA673インビボ腫瘍モデルにおいて、少なくとも約50%の腫瘍成長を阻害するものを含む。最も好ましい抗体は、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)の商標名で販売され、硝子体中の製剤として、加齢黄斑変性及び黄斑浮腫の種々の形態の処置のために、承認される。用語「抗VEGF抗体」は、全抗体及び抗体断片を含む。抗VEGF抗体で処置され得る疾患の範囲は、血管新生に伴うそれらの疾患又は病態、又は病的血管新生の病態を含む。これらは、癌と、増殖網膜症又は加齢黄斑変性(AMD)、関節リウマチ、及び乾癬のような、眼内新生血管の症候群とを含む。好ましい投与経路が眼への局所の処置であり、好ましい疾患の種類が糖尿病黄斑浮腫である一方、本願明細書に詳述する製剤は、他の送達方法(すなわち、注射;静脈内点滴)、及びかなり多くの(litany)VEGF関連疾患及び病態の処置においても有用である。
【0033】
抗VEGF抗体は、親抗体が非ヒト可変領域を含む親抗VEGF抗体のヒト化バリアントをコードする単離した核酸から製造されるものを含み、参照により本願明細書に援用する6,884,879号特許で説明及び請求される通り、前記ヒト化バリアントがヒトVEGFに結合し、それらの重鎖相補性決定領域アミノ酸配列を有する。抗VEGF抗体は、そのようなCDRアミノ酸配列をコードする核酸を有するベクター、及び単離したそのようなベクターを含有する宿主細胞を用いて製造され得るものを含む。宿主細胞は、そのような配列を製造するために培養され、ヒト化抗VEGF抗体はそのような宿主細胞培養から回収され得る。先に詳述する単離された核酸は、さらに、‘879号特許に詳述する通り、それらの配列を備える軽鎖相補性決定領域(CDR)を有するヒト化バリアントをコードできる。そのようなヒト化バリアントは、‘879号特許において配列番号7として示される配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号8として示される配列を有する軽鎖領域を含んでもよい。そのようなヒト化バリアントは、また、‘879号特許に示されるように、配列番号116の重鎖可変領域配列、及び配列番号115の軽鎖可変領域配列も含んでもよい。
【0034】
米国特許第7,060,269号も、参照により本願明細書に援用する。この特許は、ラニビズマブを請求し、開示する。‘269号特許の請求項1は、対象においてVEGF起因性血管新生を抑制するための方法を請求し、約1×10-8以下のKd値を有するヒトVEGFに結合するヒト化抗VEGF抗体の有効量を前記対象に投与する工程を含み、前記ヒト化抗VEGF抗体は、配列番号116の重鎖可変領域配列、及び配列番号115の軽鎖可変領域配列を含む。ラニビズマブは、眼内使用のために設計された、組み換えヒト化IgG1κアイソタイプモノクローナル抗体断片である。このモノクローナル抗体は、ヒト血管内皮増殖因子A(VEGF-A)に結合し、阻害する。ラニビズマブは、約48,000ダルトンの分子量を有し、テトラサイクリンを含有する培養液中の大腸菌発現系において製造される。この生産品は、商品名LUCENTIS(登録商標)で市販され、防腐剤フリー、10mMヒスチジンHCl、10%α,α-トレハロース無水物、0.01%ポリソルベート20を有し、pH5.5で、0.05mLの10mg/mLラニビズマブ水溶液を送達し得る使い捨てのガラスバイアル中の無菌液として供給される。
【0035】
ラニビズマブは、「Selection and Analysis of an Optimized Anti-VEGF Antibody: Crystal Structure of an Affinity-matured Fab in complex with Antigen」(Chenら JMB、293:865-881 (1999))ChenらによるJournal of Molecular Biology(JMB)において、1999年に公開された科学論文で説明される。ラニビズマブの重鎖及び軽鎖配列は、この文献においてYO317として指定され、その文献の図1に示される。この記述に加えて、その文献は、また、VEGFへのこの抗体断片の結合親和性に関してデータも提供する(その文献の870頁の表6)。ラニビズマブは、眼血管新生モデルにおける血管化及び漏出を起こすVEGF-Aの生物活性に結合し、阻害することが知られている。ラニビズマブは、VEGF-Aに結合及びVEGF-Aを阻害し、内皮細胞の表面上のVEGF受容体との相互作用からVEGF-Aを防ぎ、従って、新しい血管の形成(血管新生);血管漏出及び内皮細胞増殖を減らす。ラニビズマブの薬学的有効量の投与は、VEGF起因性血管新生を阻害する。抗VEGF抗体との用語は、完全長抗体並びにFab、Fab’、F(ab)、及びFのような抗体断片を包含する。但し、前記断片は、ヒトVEGFに結合することにより所望の薬理活性を示す。ラニビズマブは約1×10-8M以下、すなわち、約1.4×10-10のVEGFへの結合親和性(Kd)を有する(Chenらの文献870頁を参照)。‘269号特許の図10A及び10Bは、ラニビズマブの軽鎖可変及び重鎖可変領域の配列を提供する(Chenらの文献に示されるようなFab Y0317)。これらの配列は、‘269号特許の配列番号115及び配列番号116と同じである。
【0036】
前述の文献及び特許において説明されるラニビズマブ及び他の抗VEGF阻害剤又は薬品に加えて、追加の抗VEGF又は抗血管新生の薬品も、本発明の製剤に利用されてもよい。本発明者らは、抗体断片である抗VEGF抗体が、健康な角膜又は角膜の血管新生が僅かであるが、いくつかの他の眼の病態(例えば、加齢性黄斑変性又は糖尿病黄斑浮腫)を有する患者の眼への局所適用を含む疾患及び病態を治療するためのリポソーム製剤に好ましいことを発見したが、全抗VEGF抗体及び自己形成する熱力学的に安定なリポソームを含む製剤も、角膜血管新生及びこれらの他の眼の疾患(両方の疾患を有する患者において)の治療に有用である。但し、角膜血管新生が大きな全抗体及びその製剤の進入を可能にするか、又は促す場合である。インタクトな又は全抗VEGF抗体の例は、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)の商標名で、Genentechにより販売される。この抗体は、VEGFの生物活性を阻害する組み換えヒト化IgG1抗体である。それは、VEGFに結合し、およそ149kDの分子量を有するマウス抗体のヒトフレームワーク領域及び相補性決定領域を含有する。この抗体は、ゲンタマイシン(Gentamycin)を含有する培養液中の哺乳類の細胞(チャイニーズハムスターの卵巣)発現系において製造される。米国特許第6,054,297号(その全体を参照により本願明細書に援用する)は、ベバシズマブ又はベバシズマブを産生するためのプロセスを請求し、開示する(その文献の請求項1、6、7、8、9、10、12、29、及び30参照)。
【0037】
承認された生産品の添付文書に記載される通り、ベバシズマブは、インビトロ及びインビボアッセイシステムにおけるヒト血管内皮増殖因子の生物活性に結合し、ヒト血管内皮増殖因子の生物活性を阻害する、組み換えヒト化モノクローナルIgG1抗体である。この抗体は、VEGFに結合する、マウスの抗体のヒトフレームワーク領域を含有する(L.G.Prestaら(1997)Cancer Res.57:4593-99参照)。ベバシズマブの分子量は、約149kダルトンである。本報は、ヒト化F(ab)抗体断片、「F(ab)1-12」の可変領域の相互作用を開示する。ベバシズマブは、マウス抗体の配列に由来する非ヒトCDRと、軽鎖(V)の46位において、並びに重鎖(V)の49、69、71、73、78、及び94位において可変領域内のフレームワーク置換とを有し、それらは、Prestaらの図1に示される、F(ab)-12の対応する位置に示される置換と同じである。Prestaらは、バシズマブの分子的特徴及び結合特性についての情報を有する。
【0038】
先に示した通り、ラニビズマブ及びベバシズマブに加えて、他の既知の抗VEGF抗体又は抗血管新生の薬品も、本発明に利用されてもよい。本発明の抗VEGF抗体は、同じものに関して前述した特許文献に説明される通り、調製される。一般に、抗体をコードする単離された核酸;その核酸を含むベクターは、作動可能に、ベクターで形質転換された宿主細胞により認識される制御配列に連結され;前記ベクターを有する宿主細胞は、全て、前記細胞を培養、並びに抗体を収集及び精製後、注目する抗体を産生するためのプロセスにおいて、選択的に使用される。如何なる好適な製薬の賦形剤も、抗体に添加されてもよく、その抗体は、所望の場合、凍結乾燥されてもよい。「抗VEGF抗体」は種々の形態を含み、インタクトなヒトFc領域又は抗体断片、例えば、Fab、Fab’、又はF(ab’)を有する全長であってもよい。リポソームの製剤を形成するための本願明細書に開示される脂質と組み合わせるのに好適な他の抗血管新生の薬品は、ペガプタニブ又はエタネルセプト(TNF阻害剤)を含む。後者の場合において、この製剤は種々の自己免疫疾患又は病態を処置するために使用されてもよい。エタネルセプトは商標名Enbrel(登録商標)で販売され、リウマチ、若年性リウマチ及び乾癬性関節炎、尋常性乾癬、並びに強直性脊椎炎を処置するために使用される。他の好適な薬品は、スニチニブ、VEGF及びPDGF受容体タンパク質キナーゼ、並びに参照により本願明細書に援用する米国特許第6,573,293号に説明し、請求される血管新生阻害剤(SUTENT(登録商標)の名称で販売される2-オキシインドール)又はFOVISTA(商標)(以前よりE10030として既知)、血小板由来成長因子B(PDGF-B)のレギュレータ(1.5mgs/0.5mgsラニビズマブ)を含む。組み合わせて使用される他の好適な薬品は、インターフェロン-α-2a、又はテムシロリムス又はラパマイシンのような他のmTOR阻害剤を含む。組み合わせて使用され得る眼性疾患のための薬品の分類は、プロテアソームの阻害剤、自食作用阻害剤、レチノイド、リソソームの阻害剤、熱ショック応答活性化因子、Hsp90シャペロン阻害剤、タンパク質輸送阻害剤、グリコシダーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤も含む。これらの薬品は、リポソームの製剤においてのみ利用されてよく、又は抗VEGF化合物若しくは抗体との混合製剤に使用されてもよく、又は連続して組合わされ、かつ好ましくは局所製剤において使用されてもよい。FOVISTA(商標)(0.5mgラニビズマブ又は他の抗VEGF化合物と組み合わせて、一眼あたり0.03~3.0mgs)(及び/又はPDGF阻害活性を有する他の薬品)及びラニビズマブを組み合わせる際の好ましい効能は、加齢黄斑変性の処置である。アフリベルセプト(2.0mgs/0.05mL)(Eylea(商標))は、また、リポソームの製剤単独、又はラニビズマブ若しくは他の有効成分と組み合わせて使用されてもよい。本発明は、前記有効成分のうちの少なくとも1つが本発明の熱力学的に安定な自己形成リポソームと混ぜ合わされ/組み合わされる場合、さらに、FOVISTA及びアフリベルセプト、並びに/又は任意の他の抗血管新生の薬品を含む、本明細書に詳述するような、局所のリポソームの製剤を含む。FOVISTA(PDGF-Bに対して向けられたアプタマー)は、また、「拮抗薬A」として既知であり、その全体を参照により本願明細書に援用する、米国特許公報第2012/0100136号で説明される。拮抗薬Aの合成は、‘136号公報における実施例4で説明される(その文献の図7も参照)。また、少なくとも1つの作用物質が、熱力学的に安定な自己形成リポソームを形成する、本願明細書に記載される脂質に配合される際、その文献で説明される個々のVEGF拮抗薬及びPDGF拮抗薬のそれぞれは、本発明の範囲に含まれる。本願明細書に詳述する、何れか1つの、又は何れかの組合せの有効成分を有する局所製剤は、硝子体内注入により投与されるそれらの薬品又は組合せよりも有利である。加えて、眼性疾患のための眼への局所適用は、全身性の経口投与より好ましい。本発明における有用な組成物は、リポソームの製剤、又はリポソームの製剤及び/若しくは組合せにおける任意の他の製剤として、含む。
(a)(PDGF阻害剤)ARC-127、拮抗薬A、拮抗薬B、拮抗薬C、拮抗薬D、1B3抗体、CDP860、IMC-3G3、イマチニブ、162.62抗体、163.31抗体、169.14抗体、169.31抗体、αR1抗体、2A1E2抗体、M4TS.11抗体、M4TS.22抗体、A10、ブレフェルジンA、スニチニブ、Hyb120.1.2.1.2抗体、Hyb121.6.1.1.1抗体、Hyb127.5.7.3.1抗体、Hyb127.8.2.2.2抗体、Hyb1.6.1抗体、Hyb1.11.1抗体、Hyb1.17.1抗体、Hyb1.18.1抗体、Hyb1.19.1抗体、Hyb1.23.1抗体、Hyb1.24抗体、Hyb1.25抗体、Hyb1.29抗体、Hyb1.33抗体、Hyb1.38抗体、Hyb1.39抗体、Hyb1.40抗体、Hyb1.45抗体、Hyb1.46抗体、Hyb1.48抗体、Hyb1.49抗体、Hyb1.51抗体、Hyb6.4.1抗体、F3抗体、ヒト化F3抗体、C1抗体、ヒト化C1抗体、6.4抗体、抗-mPGDF-CヤギIgG抗体、C3.1抗体、5-メチル-7-ジエチルアミノ-s-トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、インターフェロン、プロタミン、PDGFR-B1モノクローナル抗体、PDGFR-B2モノクローナル抗体、6D11モノクローナル抗体、Sis 1モノクローナル抗体、PR7212モノクローナル抗体、PR292モノクローナル抗体、HYB9610モノクローナル抗体、HYB9611モノクローナル抗体、HYB9612モノクローナル抗体、HYB9613モノクローナル抗体、4-(2-(N-(2-カルボキシアミド-インドール)アミノエチル)-ベンゼンスルホン酸塩、4-(2-(N-(-2-カルボキサミドインドール(carboxamideindole))アミノエチル)-スルホニル尿素誘導体、CGP53716、ヒト抗体g162、ピラゾロ[3,4-g]キノキサリン、6-[2-(メチルカルバモイル)フェニルスルファニル]-3-E-[2-(ピリジン-2-イル)エテニル]-インダゾール、1-{2-[5-(2-メトキシ-エトキシ)-ベンゾイミダゾール-1-イル]-キノリン-8-イル}-ピペリジン-4-イルアミン、4-{4-[N-(4-ニトロフェニル)カルバモイル]-1-ピペラジニル]-6,7-ジメトキシキナゾリン、4-アミノ-5-フルオロ-3-(6-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)1H-キノリン-2-オン、(4-tert-ブチルフェニル){4-[(6,7-ジメトキシ-4-キノリル)オキシ]フェニル}メタノン(methaneone)、5-メチル-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-イソオキサゾールカルボキサミド(izoxazolecarboxamide)、trans-4-[(6,7-ジメトキシキノキサリン-2-イル)アミノ]シクロヘキサノール、(Z)-3-[(2,4-ジメチル-5-(2-オキソ-1,2-ジヒドロインドール-3-イリデンメチル)-1H-ピロール-3-イル)-プロピオン酸、5-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロインドール-3-イリデンメチル)-2,4-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボン酸、1-(4-クロロアニリノ)-4-(4-ピリジルメチル)フタラジン、N-{4-(3-アミノ-1H-インダゾール-4-イル)フェニル-N”-(2-フルオロ-5-メチルフェニル)尿素、1,2-ジメチル-7-(2-チオフェン)イミダゾール[5,4-g]キノキサリン、1,2-ジメチル-6-フェニル-イミダゾール[5,4-g]キノキサリン、1,2-ジメチル-6-(2-チオフェン)イミダゾール[5,4-g]キノキサリン、AG1295、AG1296、3-アリールキノリン、4-ピリジル-2-アリールピリミジン、ソラフェニブ、MLN518、PKC412、AMN107、スラミン、ネオマイシン、又は薬学的に許容できるそれらの塩、及び
(b)(VEGF阻害剤)ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト、KH902VEGF受容体-Fe融合タンパク質、2C3抗体、ORA102、ペガプタニブ、ベバシラニブ(bevasiranib)、平滑末端ベバシラニブ(bevasiranib)、SIRNA-027、デカルシン、デカルシノール、ピクロポドフィリン、ググルステロン、PLG101、イコサノイドLXA4、PTK787、パゾパニブ、アキシチニブ、CDDO-Me、CDDO-Imm、シコニン、β-ヒドロキシイソバレリルシコニン、ガングリオシドGM3、DC101抗体、Mab25抗体、Mab73抗体、4A5抗体、4E10抗体、5F12抗体、VA01抗体、BL2抗体、BECG関連タンパク質、sFLT01、sFLT02、ペプチドB3、TG100801、ソラフェニブ、G6-31抗体、又はVEGF関連血管新生を阻害する他の化合物。
抗体に加えて、角膜疾患のような眼球前面の疾患を含む、眼科の疾患又は病態の処置、又は外科的切開;外傷若しくは潰瘍に必要な治癒に好適な他のタンパク質系有効成分が、例えば、ヒト成長ホルモン若しくは他の既知のペプチドホルモン、又はそれらのバリアントを含む。
【0039】
リポソームの製剤は、任意の順番で、以下の一般的な工程に従って調製される:(1)上記の通り、抗VEGF抗体及び/又は他の有効成分を含有する水溶液の供給;(2)前記工程(1)の水溶液にリポソームを形成することができる熱力学的に安定な自己形成する脂質の添加、及び(3)薬学的に許容できる賦形剤の任意の追加。抗VEGF抗体(又は、VEGF阻害剤若しくはPDGF阻害剤)及び脂質を混合する工程、次いで水溶液を添加する工程又は水溶液に、別々にそれぞれの成分を添加する工程を含む、リポソームの懸濁液製剤を調製するためのプロセスの任意の変更も利用できる。懸濁液は、予想される送達経路(例えば、局所等)に基づき調製され、追加の賦形剤もそのような経路に基づき選択される。担体、安定剤、及び/又は賦形剤は、リン酸塩、クエン酸塩、又は他の無機酸のような緩衝液;アスコルビン酸及び/又はメチオニンのような抗酸化剤;防腐剤;低分子量ポリペプチド;ゼラチン、血清アルブミン、又は免疫グロブリンのようなタンパク質;PVPのような親水性のポリマー;アミノ酸;単糖類若しくは二糖類、又は他の炭水化物;キレート剤;糖類;対イオンを形成する塩;非イオン性界面活性剤等を含む。リポソーム製剤は、また、水溶液の形態であってもよい。
【0040】
本製剤は、VEGF関連疾患及び障害の処置に有用である。本願明細書に記載される製剤で治療されるべき、好ましい疾患又は病態は、眼性疾患である。上記の通り、本発明に対する好ましい疾患又は病態は、糖尿病黄斑浮腫の処置である。前述の通り、DMEは、進行性の漏出及び滲出を最終的に起こし、網膜黄斑の中心の1乳頭径内に、網膜の肥厚及び硬性白斑の形成を導く、一連の生化学的及び細胞性の事象に起因する。レーザー光凝固術は、処置の主軸であり、約505[ETDRSRG、1985]による軽度の視力低下のリスクを防ぐために有効である。レーザー光凝固術は、リーディング・ライン・スコア(reading line scores)の改良を導くが、進行性の瘢痕の拡大、中心暗点、コントラスト感度の低下、及び色覚異常のような合併症を伴う。
【0041】
リポソーム製剤は、VEGF及び/若しくはPDGFを伴う腫瘍若しくはレチナール障害、又は特定の有効成分に依存する、任意の他の眼科疾患若しくは病態を、広く処置し得る。抗VEGF抗体は、VEGFにより生じる1以上の生物活性を阻害する。治療への応用は、特定の疾患又は病態の処置を必要としている患者に投与される薬学的に許容できる剤形を必要とする。好ましくは局所であるが、好適な剤形は、ボーラスとして静脈内手段による、又は持続流入による投与;筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、髄こう内、口腔内投与又は吸入による投与も含んでもよい。また、加えて、そのような抗体製剤は、腫瘍内、腫瘍周囲、病変内、又は病変周囲の経路によって投与されてもよい。抗体製剤で処置することを受け入れられる、腫瘍性の疾患は、乳癌、肺癌、胃癌、食道、結腸直腸、肝臓、卵巣、男性胚細胞腫、子宮頸部、子宮内膜、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭頚部癌、鼻咽頭癌、咽頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、膵臓癌、及び他の種類の癌を含む種々の細胞癌を含む。VEGF関連である非腫瘍性の病態は、関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、並びに、未熟児網膜症、後水晶体線維増殖症、新生血管緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、及び他の形態の黄斑浮腫を含む他の増殖網膜症、グレーヴス病、角膜及び他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、腎炎症候群、子癇前症、腹水症、心膜液貯留、及び胸水を含む甲状腺過形成を含む。好ましい局所製剤で処置される好ましい病態又は疾患は、糖尿病黄斑浮腫である。投与される投薬量、及び投与の頻度は、疾患の類型及び重症度、及び特定の患者の病態に依存するだろう。例えば、抗VEGF抗体は、それらの処置を必要としている患者へ、1μg/kg~約50mg/kg又は約0.1~20mg/kgの範囲の投薬量で投与されてもよい。DMEの処置のための好ましい薬剤投与方式、及びラニビズマブの局所製剤に関しては、本願明細書の実施例3において説明される。有効成分の濃度及び量は、特定の患者に応じて変えられてもよく、処置の日数及び1日又は週又は月あたりに供給される量は、患者の反応及び両眼の視力及びレチナール肥厚における改善の兆候に応じて変えられてもよい。
【0042】
DME又は他のVEGFと関連した眼の病態を処置することの目的のための理想的な処置の種類は、迅速及び長く続く視認力の向上を導く。一般的にDMEの処置に使用される、他の処置の種類は、選択的なPKCβ阻害剤(ルボキシストーリン);ステロイド(トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド);VEGF阻害剤(ベバシズマブ;ラニビズマブ及びペガプタニブ注射剤)及び硝子体茎切除術を含む。本発明のリポソーム製剤は、例えば、現在市販されている硝子体内の製剤を著しく改善したものである、局所治療レジメンを提供する。本発明の製剤は、禁忌でないならば、本願明細書に記載及び/又は上記の通りの、眼科の、若しくはVEGF関連疾患若しくは病態のための他の既知の処置と組み合わせて使用され得る。そのような治療レジメン又は治療上のアプローチは、例えば、ベバシラニブのようなsiRNA分子を、本発明に利用される熱力学的に安定な自己形成リポソームを含む、適切な送達用媒体と共に含む。
【0043】
リポソーム製剤に、単独又は任意の他の有効成分と組み合わせて利用されてもよい眼科のステロイドは、デキサメサゾン、フルオシノロン、ロテプレドノール、ジフルプレドナート、フルオロメトロン、プレドニゾロン、メドリゾン、トリアムシノロンアセトニド、リメキソロン、及び種々のそれらの塩を含む。他の眼科の消炎剤(例えばNSAID)も、また、リポソームの製剤に利用されてもよい。前記有効成分に応じて、熱力学的に安定な自己形成リポソームに加えて又は代替として、他のリポソームが利用されてもよい。
【0044】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をさらに説明することを意図するものであり、限定を意図しない。
【実施例
【0045】
[実施例1-リポソーム及びラニビズマブの溶液]
10mg/mLの濃度で0.5mgのラニビズマブ(0.05mL)を含有するバイアルを得た。0.015gのPEG-12ジミリスチン酸グリセロール(PEG-12GDM)Qsomes(商標)を、この溶液に加えた(「PEG」の後の数字は、PEG鎖におけるCOサブユニットの数を示す)。このリポソームの懸濁液の体積を、リポソームの懸濁液における0.333mg/mLのラニビズマブ濃度、及び約1%の脂質パーセンテージ(10mg/mL)を供給するために、ホスフェート、塩化ナトリウム、及びステアリン酸ポリオキシル40からなる1.45mLの緩衝液を用いて、最終体積1.5mLに希釈した。過ホウ酸ナトリウム(0.28mg/mL)を防腐剤として加えた。1mLのこの懸濁液は20滴に相当する。1滴には、約17μgのラニビズマブを含有する。
【0046】
15mLのステアリン酸ポリオキシル40、塩化ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、及び第二リン酸ナトリウムの溶液と5mLの過ホウ酸ナトリウム溶液(V=20mL、pH5.5)を組み合わせることによって、緩衝液を調製した。次いで、真上で説明する通り、1.45mLのこの溶液を利用した。点眼用のリポソームの懸濁液製剤における賦形剤のそれぞれの濃度は0.142mg/mL(第二リン酸ナトリウム);6.7mg/mL(第一リン酸ナトリウム);50mg/mL(ステアリン酸ポリオキシル40);5.1mg/mL(塩化ナトリウム);0.333mg/mL(ラニビズマブ);10mg/mL(PEG-12GDM)及び2.8mg/mL(過ホウ酸ナトリウム)であった。pHを、HCl又はNaOHで調整してもよく、低分子量アミノ酸又は有機酸も利用してもよい。図3は、脂質を水溶液と混合する際に形成される、少なくとも2種類のリポソーム(Qusomes(登録商標))を示す(Biozone Laboratoriesウェブサイトから)。
【0047】
[実施例2-ウサギの角膜における拡散チャンバーの実験]
ウサギの角膜に施されたリポソーム製剤の拡散チャンバーデータを、以下に説明する方法を用いて生成した。まとめると、10、20、及び30分間で、及び1、2、3、4、5、6、及び24時間で、サンプルを採取した。そのデータは、局所適用したリポソームのラニビズマブ製剤について、34℃でウサギ角膜の房水内へのかなりの割合の浸透を示した。非リポソーム製剤について、ウサギにおいて以前に報告された7及び14日に対して(データは示さない、Chenら、Eye London 2011 Nov;25(11):1504-11.を参照のこと)、リポソーム製剤において、開始して3時間でラニビズマブを確認し、投与後24時間まで現存したままであった。水平流でガラス製のValia-Chenチャンバー内で実験行った。水は34℃の温度で再循環する。膜をチャンバーの接合部間に配置し、この例では、ウサギの角膜を膜として用いた。眼の前側の部分において、房水の中身を再現するために、受容体チャンバーを3.2mLの生理食塩水溶液で満たした。供与体チャンバーにラニビズマブ及び熱力学的に安定な自己形成する脂質を含む3mLの眼科製剤を供給した。拡散チャンバーを、常に振とうした。種々の時点で、受容体チャンバーからサンプルを採集し、それぞれの時間、400μLサンプルを採取し、400μLの生理食塩水溶液で置き換えた。サンプルを10分、20分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、及び24時間の時点で採取した。早くも3番目の時間で、HPLCによりラニビズマブを検出した。Lucentis(登録商標)をHPLC標準のための対照溶液として用いた。ウサギ角膜を通るリポソームの製剤の通過を評価するために電気泳動も用いた。結果はHPLCデータと矛盾していなかった。
【0048】
[実施例3-DMEを有する患者のパイロット臨床実験]
2週間日常的に、製剤の3時間毎1滴で、6回/日、DMEを有する患者を処置した(6×/日)。ラニビズマブの総用量/日は、6×17μg又は102μgであった。平均中心窩の厚さ(CFT)の低下の改善及び視力の上昇が、この2週間の期間後の6週間にわたって見られた(図1及び図2参照)。8週で、網膜の厚さの増加、及び視覚の鮮明さの低下が生じ、10週で、1日あたり2滴で処置を再開した(34μg/日)。14週で、OCT及びBCVAの改善へ向いた明確な傾向を得た(図1及び2参照)。同じ手順を用いて、2名の追加の患者も処置した。3名の患者全ての結果は、図4~7に示し、対照に対してCFT及びVAの改善を示す。
【0049】
[実施例4-トリアムシノロンアセトニドを用いるDMEを有する患者のパイロット臨床実験]
DMEを有する適格な患者は、単一施設、非盲検、パイロット実験において、トリアムシノロン(TA)を含む局所製剤を受けた。DMEを有する3人の患者(平均年齢58歳、範囲53~64歳)の合計3つの眼は、この実験した眼において黄斑の中心及び最良矯正視力(BCVA)に関与し、65~40文字のETDRSテストを用いた。実験を行う眼(study eye)において2時間毎、133μg(マイクログラム)のTAを含有する一滴を施すよう、患者を指示し、一方12週間の期間、管理された処置の間中眠らなかった(6回)。経時的な光干渉断層撮影(OCT)により測定したため、主要評価項目は、眼性及び全身性の有害事象の頻度及び重症度、及び中心窩の厚さ(CFT)のベースラインからの変化のような、3ヶ月に、主要な終点を含めた。二次的な評価は、経時的なベースラインBCVAスコアからの変化、眼底写真(FP)のETDRS網膜症重症度におけるベースラインから3段階進行したものより大きい患者の割合、蛍光眼底血管造影(FA)における漏出が解決した患者の割合、及び経時的な網膜黄斑レーザー処置の必要性であった。TA製剤を、市販の出発物質からのラニビズマブ製剤と同様にして調製した。
【0050】
トリアムシノロン+1%リポソーム眼科の懸濁液
最終的な製剤は無菌の、水性懸濁液である。その内容物は以下の通りである。
【表2】


PEG-12-GDM:リポソーム;ジアシルグリセロールポリエチレングリコール(PEG12)、ジミリスチン酸グリセロール(GDM)。
*TAは完成品である。TAは微粒子化され(およそ12mm)、防腐剤フリーである。
【0051】
[トリアムシノロン+1%リポソーム点眼用の懸濁液の調製手順]
1.最終体積の40%の蒸留水をビーカーに入れ、70~80℃に加熱する。
2.ヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加し、室温に達するまで混合を止め、透明及び均一な混合物となる。
3.それをオートクレーブし、一度無菌化させ、撹拌しながら室温にする。
4.最終体積の40%の蒸留水を別のビーカーに入れる。以下の試薬を完全に溶解するまで、一種ずつ、添加し混合する:
a)第一リン酸ナトリウム
b)第二リン酸ナトリウム
c)EDTA
d)塩化ナトリウム
e)ポリソルベート80。
5.残量10%の水において、50%で塩化ベンザルコニウムを添加し、完全に組み込まれるまで混合する。一度溶解すると、ホスフェート、EDTA、塩化ナトリウム、及びポリソルベート80を含有する上述の水溶液に、この新しい水溶液を添加する。無菌化するために、0.22μmの膜でろ過する。
6.ヒドロキシプロピルメチルセルロースの無菌液を、塩、及び防腐剤塩化ベンザルコニウムを含有する他の無菌液と混合し、透明で均一な混合物を得るまで混合する。
7.その溶液に、緩衝液及び塩化ベンザルコニウムと共に、酢酸トリアムシノロンを添加し、完全に組み込まれるまでかき混ぜる。
8.これにリポソームを添加し、マグネチックスターラーで15分間、混合及びかき混ぜ、最終的な懸濁液を得る。
9.特別な点眼器にその懸濁液を充填する。それぞれの点滴器の容器は、1.5mLのこのトリアムシノロン点眼用の懸濁液を含む。
【0052】
[結果]
中心窩に関与する(center-involving)臨床的に重要なDMEを有する患者における、リポソーム製剤のTAを含む局所製剤の使用は、十分に耐容性があった。眼性又は全身性の何れの有害事象も報告されなかった。2ヶ月で、3人の患者のCFTは、ベースラインに対して減少した。3人の患者のうち2人は、CFTでの少なくとも100μmの減少を有した。3ヶ月で、3人の患者全て、視力の改善を示した。患者のうち1人は、15文字より多く得た。
【0053】
請求項に係る発明が、詳細に及びそれらの特定の実施形態を参照して説明されている一方、種々の変更及び調整が、それらの精神及び範囲から逸脱せずに請求項に係る発明に対してなされることは当業者に明らかであろう。このため、例えば、当業者は、請求項に係る発明の多数の実施形態を、明確に説明されていなかろうが、日常的に過ぎない実験を用いて、認識し又は確認することができる。そのような実施形態は本発明の範囲内である。
【0054】
[参考文献]
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図1
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図3
図4
図5
図6
図7